説明

医薬組成物

前立腺肥大症に伴う膀胱刺激症状の治療等に有用な、3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドまたはその薬理学的に許容される塩とαアドレナリン受容体遮断剤とを含有する医薬組成物等を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミド[3,3,3−trifluoro−2−hydoxy−2−methyl−N−(5,5,10−trioxo−4,10−dihydrothieno−[3,2−c][1]benzothiepin−9−yl)propanamide](以下、必要に応じて化合物(I)ともいう)またはその薬理学的に許容される塩とαアドレナリン受容体遮断剤とを含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
前立腺肥大症は、尿道を取り囲むように存在する前立腺の移行領域より発生する良性腺腫である。前立腺肥大症患者は、膀胱閉塞症状および/または膀胱刺激症状を訴える。膀胱閉塞症状としては、排尿開始の遅れ、いきみ、尿線の勢いの低下、尿線の途切れ、排尿後の漏れ、排尿時間の延長、溢流性尿失禁等が挙げられる。膀胱刺激症状としては、日中頻尿、夜間頻尿、尿意切迫感、残尿感、1回排尿量の低下等が挙げられる。これらの症状発現には、肥大した前立腺によってもたらされる尿道の機能的閉塞、機械的閉塞が関与する。
現在、前立腺肥大症の治療方法としては、経尿道的前立腺切除等の外科手術、およびαアドレナリン受容体遮断剤をはじめとする薬物の投与が用いられている。前立腺肥大症治療における外科手術には、患者が高齢者であることに基づく適用の制限、費用が高額であることに加えて、閉塞症状および刺激症状の存続または再発の問題点がある。概して、高齢者または、軽症もしくは中程度の前立腺肥大症患者には主に薬物治療が施されている。
前立腺肥大症に伴う尿道閉塞には交感神経系の活性化が関与している。交換神経終末から遊離されるノルアドレナリンが前立腺平滑筋および尿道平滑筋を収縮させ、尿道抵抗を増加させ、尿流量を減少させる。
中枢神経系、末梢神経系および腺組織から遊離されるノルアドレナリンは、生体内で種々の生理活性を示すが、その受容体のひとつであるαアドレナリン受容体の遮断剤が前立腺肥大症治療に用いられている。しかし、一般にはαアドレナリン受容体遮断剤では前立腺肥大症の閉塞症状には中等度の改善効果が認められるが、膀胱刺激症状に対する改善効果は不充分である。
機能的閉塞および機械的閉塞による尿道抵抗の増大は、さらに二次的な排尿筋、知覚神経系および自律神経系の組織学的および機能的変化を引き起こして、膀胱刺激症状および閉塞症状の複雑な病態を惹起する。これら排尿筋および神経系の機能的変化に伴い、特発性排尿筋過活動がしばしば、前立腺肥大症患者で認められる。
知覚神経や膀胱排尿筋には種々のカリウム・チャネルが存在しており、神経興奮や排尿筋収縮を制御している[ザ・ジャーナル・オブ・フィジオロジー(The Journal of Physiology)、494巻、1号、1−16頁(1996年)、カレント・ドラッグ・ターゲッツ(Current Drug Targets)、2巻、1号、1−20頁(2001年)、アクタ・フィジオロジカ・スカンジナビカ(Acta Physiologica Scandinavica)、173巻、3号、323−333頁(2001年)]。前立腺肥大症に伴う膀胱刺激症状には知覚神経の興奮や排尿筋収縮の上昇が関与しており、これは排尿筋過活動の発現にも関与している。
従来、化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩が尿失禁治療作用を有することが知られており(WO98/46587)、化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩はA型カリウム・チャネル開口作用を有し前立腺肥大症に伴う膀胱刺激症状の治療作用を有することが知られている(WO02/078633およびWO02/078712)。
【発明の開示】
本発明の目的は、化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩とαアドレナリン受容体遮断剤とを含有する医薬組成物等を提供することにある。
本発明は、以下の(1)〜(21)に関する。
(1)(a)式(I)

で表される3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドまたはその薬理学的に許容される塩と(b)αアドレナリン受容体遮断剤とを含有する医薬組成物、
(2)3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドが式(Ia)

で表される(S)−(+)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドである第(1)項記載の医薬組成物、
(3)αアドレナリン受容体遮断剤がタムスロシン、プラゾシン、テラゾシン、ウラピジル、ドキサゾシン、アルフゾシン、ナフトピジル、マフトピジル、アバノキルおよびインドラミンならびにこれらの薬理学的に許容される塩から選択されるいずれか1つ以上である第(1)項または第(2)項記載の医薬組成物、
(4)(a)式(I)

で表される3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドまたはその薬理学的に許容される塩と(b)αアドレナリン受容体遮断剤を有効成分とする、同時にまたは時間を置いて別々に投与するための前立腺肥大症に伴う膀胱刺激症状治療剤、
(5)3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドが式(Ia)

で表される(S)−(+)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドである第(4)項記載の前立腺肥大症に伴う膀胱刺激症状治療剤、
(6)αアドレナリン受容体遮断剤がタムスロシン、プラゾシン、テラゾシン、ウラピジル、ドキサゾシン、アルフゾシン、ナフトピジル、マフトピジル、アバノキルおよびインドラミンならびにこれらの薬理学的に許容される塩から選択されるいずれか1つ以上である第(4)項または第(5)項記載の前立腺肥大症に伴う膀胱刺激症状治療剤、
(7)(a)式(I)

で表される3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドまたはその薬理学的に許容される塩を含有する第1成分と(b)αアドレナリン受容体遮断剤を含有する第2成分を有することを特徴とするキット、
(8)3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドが式(Ia)

で表される(S)−(+)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドである第(7)項記載のキット、
(9)αアドレナリン受容体遮断剤がタムスロシン、プラゾシン、テラゾシン、ウラピジル、ドキサゾシン、アルフゾシン、ナフトピジル、マフトピジル、アバノキルおよびインドラミンならびにこれらの薬理学的に許容される塩から選択されるいずれか1つ以上である第(7)項または第(8)項記載のキット、
(10)(a)式(I)

で表される3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドまたはその薬理学的に許容される塩を含有する第1成分と(b)αアドレナリン受容体遮断剤を含有する第2成分を有することを特徴とする前立腺肥大症に伴う膀胱刺激症状の治療用キット、
(11)3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドが式(Ia)

で表される(S)−(+)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドである第(10)項記載の前立腺肥大症に伴う膀胱刺激症状の治療用キット、
(12)αアドレナリン受容体遮断剤がタムスロシン、プラゾシン、テラゾシン、ウラピジル、ドキサゾシン、アルフゾシン、ナフトピジル、マフトピジル、アバノキルおよびインドラミンならびにこれらの薬理学的に許容される塩から選択されるいずれか1つ以上である第(10)項または第(11)項記載の前立腺肥大症に伴う膀胱刺激症状の治療用キット、
(13)αアドレナリン受容体遮断剤と同時にまたは時間を置いて別々に併用するための式(I)

で表される3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドまたはその薬理学的に許容される塩、
(14)3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドが式(Ia)

で表される(S)−(+)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドである第(13)項記載の3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドまたはその薬理学的に許容される塩、
(15)αアドレナリン受容体遮断剤がタムスロシン、プラゾシン、テラゾシン、ウラピジル、ドキサゾシン、アルフゾシン、ナフトピジル、マフトピジル、アバノキルおよびインドラミンならびにこれらの薬理学的に許容される塩から選択されるいずれか1つ以上である第(13)項または第(14)項記載の3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドまたはその薬理学的に許容される塩、
(16)αアドレナリン受容体遮断剤と同時にまたは時間を置いて別々に併用するための式(I)

で表される3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドまたはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物、
(17)3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドが式(Ia)

で表される(S)−(+)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドである第(16)項記載の医薬組成物、
(18)αアドレナリン受容体遮断剤がタムスロシン、プラゾシン、テラゾシン、ウラピジル、ドキサゾシン、アルフゾシン、ナフトピジル、マフトピジル、アバノキルおよびインドラミンならびにこれらの薬理学的に許容される塩から選択されるいずれか1つ以上である第(16)項または第(17)項記載の医薬組成物、
(19)(a)式(I)

で表される3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドまたはその薬理学的に許容される塩および(b)αアドレナリン受容体遮断剤を同時にまたは時間を置いて別々に投与することを特徴とする前立腺肥大症に伴う膀胱刺激症状の治療方法、
(20)3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドが式(Ia)

で表される(S)−(+)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドである第(19)項記載の前立腺肥大症に伴う膀胱刺激症状の治療方法、
(21)αアドレナリン受容体遮断剤がタムスロシン、プラゾシン、テラゾシン、ウラピジル、ドキサゾシン、アルフゾシン、ナフトピジル、マフトピジル、アバノキルおよびインドラミン、ならびにこれらの薬理学的に許容される塩から選択されるいずれか1つ以上である第(19)項または第(20)項記載の前立腺肥大症に伴う膀胱刺激症状の治療方法。
化合物(I)の薬理学的に許容される塩は、例えば薬理学的に許容される酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等を包含する。
化合物(I)の薬理学的に許容される酸付加塩としては、塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、メシル酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩等の有機酸塩があげられ、薬理学的に許容される金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等があげられ、薬理学的に許容されるアンモニウム塩としては、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の塩があげられ、薬理学的に許容される有機アミン付加塩としては、モルホリン、ピペリジン等の付加塩があげられ、薬理学的に許容されるアミノ酸付加塩としては、グリシン、フェニルアラニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸等の付加塩があげられる。
次に、化合物(I)の製造方法について説明する。
化合物(I)は、WO98/46587に記載の方法またはそれらに準じて製造することができる。
化合物(I)には、立体異性体(例えば、互変異性体、鏡像異性体等)が存在し得るが、本発明の医薬組成物、前立腺肥大症に伴う膀胱刺激症状治療剤、キット、前立腺肥大症に伴う膀胱刺激症状の治療用キットおよび前立腺肥大症に伴う膀胱刺激症状の治療方法には、これらを含め、全ての可能な異性体およびそれらの混合物を使用することができる。本発明の化合物(I)には、これらを含め、全ての可能な異性体およびそれらの混合物が包含される。
化合物(I)の塩を取得したいとき、化合物(I)が塩の形で得られるときはそのまま精製すればよく、また、遊離の形で得られるときは、化合物(I)を適当な溶媒に溶解または懸濁し、酸または塩基を加えて単離、精製すればよい。
また、化合物(I)およびその薬理学的に許容される塩は、水または各種溶媒との付加物の形で存在することもあるが、これらの付加物も本発明の医薬組成物、前立腺肥大症に伴う膀胱刺激症状治療剤、キット、前立腺肥大症に伴う膀胱刺激症状の治療用キットおよび前立腺肥大症に伴う膀胱刺激症状の治療方法に使用することができ、本発明の化合物(I)およびその薬理学的に許容される塩に包含される。
αアドレナリン受容体遮断剤としてはタムスロシン、プラゾシン、テラゾシン、ウラピジル、ドキサゾシン、アルフゾシン、ナフトピジル、マフトピジル、アバノキル、インドラミン等、これらの立体異性体(例えば鏡像異性体等)、およびこれらの薬理学的に許容される塩、ならびにこれらの水和物等があげられ、これらは単独でまたは組み合わせて用いてもよい。これらの薬理学的に許容される塩としては、例えば、前記化合物(I)の薬理学的に許容される塩として例示した塩等があげられる。
本発明の医薬組成物または前立腺肥大症に伴う膀胱刺激症状治療剤で使用される化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩とαアドレナリン受容体遮断剤は、これらそれぞれの有効成分を含有するように製剤化したものであれば、単剤(合剤)としてでも複数の製剤の組み合わせとしてでも使用または投与することができるが、中でも2つ以上の製剤の組み合わせが好ましい。複数の製剤の組み合わせとして使用または投与する際には、同時にまたは時間を置いて別々に使用または投与することができる。
化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩とαアドレナリン受容体遮断剤との用量比(重量/重量)は、使用するαアドレナリン受容体遮断剤との組み合わせ、αアドレナリン受容体遮断剤の効力等に応じて適宜調整すればよいが、具体的には例えば1/500(化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩/αアドレナリン受容体遮断剤)〜5000/1、好ましくは1/300〜1000/1、より好ましくは1/200〜500/1、さらに好ましくは1/100〜100/1の間の比である。
複数の製剤の組み合わせとして投与する際には、例えば(a)化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩を含有する第1成分と、(b)αアドレナリン受容体遮断剤を含有する第2成分とを、それぞれ上記のように別途製剤化し、キットとして作成しておき、このキットを用いてそれぞれの成分を同時にまたは時間を置いて、同一対象に対して同一経路または異なった経路で投与することができる。
該キットとしては、例えば保存する際に外部の温度や光による内容物である成分の変性、容器からの化学成分の溶出等がみられない容器であれば材質、形状等は特に限定されない2つ以上の容器(例えばバイアル、バッグ等)と内容物からなり、内容物である上記第1成分と第2成分が別々の経路(例えばチューブ等)または同一の経路を介して投与可能な形態を有するものが用いられる。具体的には、錠剤、注射剤等のキットがあげられる。
また、本発明の前立腺肥大症に伴う膀胱刺激症状の治療方法は、上記で記載した医薬組成物または前立腺肥大症に伴う膀胱刺激症状治療剤で使用される化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩とαアドレナリン受容体遮断剤の使用または投与方法と同様にして実施できる。つまり、化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩とαアドレナリン受容体遮断剤を、それぞれの有効成分を含有するように製剤化し、例えば単剤としてまたは複数の製剤の組み合わせとして、好ましくは2つ以上の製剤を組み合わせて投与することにより実施できる。複数の製剤を組み合わせて投与する際には、これら製剤は、同時にまたは時間を置いて別々に投与することができ、上記で記載したようなキットを用いて投与することもできる。
次に、化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩およびαアドレナリン受容体遮断剤を同時投与することによる前立腺肥大症に伴う膀胱刺激症状の治療効果について試験例により具体的に説明する。なお、下記の試験例では、化合物(I)として、(S)−(+)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミド[(S)−(+)−N−3,3,3−trifluoro−2−hydoxy−2−methyl−(5,5,10−trioxo−4,10−dihydro−thieno[3,2−c][1]benzothiepin−9−yl)propanamide](以下、必要に応じて化合物(Ia)という)を使用した。
試験例:排尿筋過活動抑制作用
実験はマルムグレン(Malmgren)らの方法[ジャーナル・オブ・ユーロロジー(J.Urol.)、142巻、1134−1138頁(1989年)]に準じて行った。
実験には、雌性SD系ラット8〜9週令(日本チャールス・リバー供給)を使用した。ラットは室温19〜25℃、湿度30〜70%、一日12時間照明(午前7時〜午後7時)の飼育室にて、金属ケージに5−7匹ずつ収容し、市販の固形飼料と水を自由に摂取させて飼育した。
ラットに部分的尿道閉塞手術を行った。ラットをペントバルビタール・ナトリウム(東京化成)50mg/kgの腹腔内投与により麻酔し、下腹部部分の皮膚および筋肉を正中切開した。尿道口から、ポリエチレンチューブ(PE−20;ベクトンディッキンソン)を膀胱頸部まで挿入した。尿道基部を剥離して二重結紮した後、ポリエチレンチューブを引き抜くことにより、尿道の部分閉塞を作製した。切開部分を手術用絹糸で縫合した。抗生物質アンピシリン(ampicillin、シグマ社製)の筋肉内投与(150mg/kg;1日1回、3日間投与)を行った。
部分的尿道閉塞手術後6週間経過し、膀胱が肥大したラットに膀胱カテーテル手術を施した。ペントバルビタール・ナトリウム麻酔下に、腹部正中を切開して膀胱を露出した。組織を傷つけないよう、先端を鈍化させたポリエチレンチューブ(PE−50;ベクトンディッキンソン)に生理食塩液(大塚製薬工場)を満たし、膀胱頂部より挿入した。この膀胱カテーテルを手術用絹糸で固定、留置した。また、他端は皮下を通して背頸部より導出して栓を取り付け、皮膚に手術用糸で固定した。
膀胱カテーテル手術4〜7日後にシストメトリー試験を行った。ラットをボールマンケージ(夏目製作所)に入れ、膀胱カテーテルに三方活栓を連結し、一方を圧トランスデューサー(日本光電)に連結し、他方は生理食塩液注入用にインフュージョンポンプ(KDサイエンティフィック)にセットした50mL注射筒(テルモ)に連結した。圧トランスデューサーからの膀胱内圧信号を、接続したひずみ圧力アンプ(AP−621G;日本光電)にて増幅し、これを収納したポリグラフシステム(RMP−6008;日本光電)を介してサーマルアレイレコーダー(RTA−1200;日本光電)上に記録した。測定準備終了60〜90分後、室温の生理食塩液を10mL/時間の流速で膀胱内に30分間持続注入し、排尿収縮および排尿前収縮(排尿筋過活動)が発現するのを確認した。注入停止30分後に再び膀胱内に生理食塩液を30分間注入し、薬物投与前値測定期間とした。化合物(Ia)は0.5w/v(重量/容量)%メチルセルロース水溶液で1mg/mLとなるように懸濁させた。この懸濁液を0.5w/v%メチルセルロース水溶液でさらに希釈し、0.01mg/mLの投与用溶液[化合物(Ia)投与用溶液]を調製し、1mL/kgの容量で経口投与した。塩酸タムスロシンは0.5w/v%メチルセルロース水溶液で0.03mg/mLとなるように溶解し(タムスロシン投与用溶液)、1mL/kgの容量で経口投与した。また、併用効果の検討のために、化合物(Ia)投与用溶液とタムスロシン投与用溶液をそれぞれ1mL/kgの容量で同時に経口投与した。投与後1、3、5時間を溶媒または薬物投与後の測定時点とし、各時点の前後15分間(薬物投与後45〜75分、165〜195分、285〜315分)に生理食塩液の膀胱内注入を行った。
排尿機能の指標として排尿収縮を、排尿筋過活動の指標として排尿前収縮を測定した。各30分間の測定期間に観察されるすべての排尿収縮高の平均、各排尿収縮間に発現する最大排尿前収縮の収縮高の平均をそれぞれ、各時点の排尿収縮および排尿前収縮の大きさとした。また、排尿直前2分間の排尿前収縮の数を計測し、排尿前収縮頻度とした。なお、両収縮値および頻度については、チャート紙に記録された膀胱内圧波形からコンピューター(PC−9801NS/R;NEC社製)で制御したデジタイザー(KW4620;グラフテック社)で読み取り、DAT形式ファイルまたはWJ2形式ファイルとして保存した。データ・ファイルは、Excel 2000(マイクロソフト社製)に取り込んだ。排尿前収縮の大きさ、排尿前収縮頻度および排尿収縮の大きさを、薬物投与前の値を100としたときの相対値に換算し、群毎に平均±標準誤差を求めた。
結果については、第1表に溶媒または薬物投与後における排尿前収縮の大きさの値(%)を、第2表に排尿前収縮頻度の値(%)を、第3表に排尿収縮の大きさの値(%)を示す。



試験例の結果によれば、化合物(Ia)およびタムスロシンは、排尿前収縮(排尿前収縮の大きさおよび排尿前収縮頻度)を抑制した。また、化合物(Ia)およびタムスロシンの併用投与によりさらなる排尿前収縮(排尿前収縮の大きさおよび排尿前収縮頻度)の抑制作用が認められた。また、化合物(Ia)単独投与、タムスロシン単独投与ならびに化合物(Ia)およびタムスロシンの併用投与のいずれも、排尿収縮には影響を与えない、すなわち排尿機能自体には影響を与えないことが確認された。
以上のことから、化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩とαアドレナリン受容体遮断剤の併用は、前立腺肥大症に伴う膀胱刺激症状の治療に有用であると考えられる。
上述したように、本発明に使用される医薬組成物または前立腺肥大症に伴う膀胱刺激症状治療剤は、化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩とαアドレナリン受容体遮断剤それぞれの有効成分を含有するように製剤化したものであれば、単剤としてでも複数の製剤の組み合わせとしてでも使用、投与または製造することができる。これらの医薬組成物または前立腺肥大症に伴う膀胱刺激症状治療剤は、錠剤、カプセル剤等の経口的投与に対して適する単位服用形態、または注射剤等の非経口的投与に対して適する単位服用形態にあることが望ましい。また、複数の製剤の組み合わせとして使用または投与する際には、同時にまたは時間を置いて別々に使用または投与することができる。
これら製剤は、それぞれ有効成分の他に製剤学的に許容される希釈剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、界面活性剤、水、生理食塩水、植物油可溶化剤、等張化剤、保存剤、抗酸化剤等を用いて常法により作成することができる。
錠剤およびカプセル剤の調製にあたっては、例えば乳糖等の賦形剤、澱粉等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、ヒドロキシプロピルセルロース等の結合剤、脂肪酸エステル等の表面活性剤、グリセリン等の可塑剤等を常法に従って用いればよい。
注射剤の調製にあたっては、例えば蒸留水、塩溶液、グルコース溶液または塩水とグルコース溶液の混合物からなる担体、可溶化剤、等張化剤、保存剤、抗酸化剤等を常法により用いればよい。
上記の目的で、化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩とαアドレナリン受容体遮断剤を複数の製剤の組み合わせとして使用または投与する場合には、それぞれの用量および投与回数は投与形態、患者の年齢、体重、症状等により異なるが、通常一日当たり、化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩とαアドレナリン受容体遮断剤を、以下の用量で投与するのが好ましい。
化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩は、経口的にまたは注射剤等として非経口的に投与することができ、成人一人当たり、0.01〜900mg/60kg/日、好ましくは0.1〜200mg/60kg/日が適当である。αアドレナリン受容体遮断剤は、成人一人当たり、0.01〜500mg/60kg/日、好ましくは0.2〜100mg/60kg/日が適当である。
以下に、実施例によって本発明の態様を説明するが、本発明の範囲はこれら実施例により限定されることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
実施例1:錠剤(化合物(Ia))
常法により、次の組成からなる錠剤を調製した。
化合物(Ia)250g、マンニトール1598.5g、澱粉グリコール酸ナトリウム100g、軽質無水ケイ酸10g、ステアリン酸マグネシウム40gおよび黄色三二酸化鉄1.5gを常法により混合した。この混合物を用い、径8mmの杵を有する打錠機(菊水社製Purepress Correct−12型)で打錠を行って、錠剤(1錠あたり活性成分25mgを含有する)を得た。
処方 化合物(Ia) 25 mg
マンニトール 159.85 mg
澱粉グリコール酸ナトリウム 10 mg
軽質無水ケイ酸 1 mg
ステアリン酸マグネシウム 4 mg
黄色三二酸化鉄 0.15 mg
200 mg
実施例2:カプセル剤(化合物(Ia))
常法により、次の組成からなるカプセル剤を調製した。
化合物(Ia)500g、乳糖300g、軽質無水ケイ酸100gおよびラウリル硫酸ナトリウム100gを常法により混合した。この混合物をカプセル充填機(Zanasi社製、LZ−64型)により、ハードカプセル1号(1カプセルあたり100mg容量)に充填し、カプセル剤(1カプセルあたり活性成分50mgを含有する)を得た。
処方 化合物(Ia) 50 mg
乳糖 30 mg
軽質無水ケイ酸 10 mg
ラウリル硫酸ナトリウム 10 mg
100 mg
実施例3:注射剤(化合物(Ia))
常法により、次の組成からなる注射剤を調製する。
化合物(Ia)1gおよびD−マンニトール5gを注射用蒸留水に添加して混合し、さらに塩酸水溶液および水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを6に調整した後、注射用蒸留水で全量を1000mlとする。得られた混合液をガラスバイアルに2mlずつ無菌的に充填して、注射剤(1バイアルあたり活性成分2mgを含有する)を得る。
処方 化合物(Ia) 2 mg
D−マンニトール 10 mg
塩酸水溶液 適量
水酸化ナトリウム水溶液 適量
注射用蒸留水 適量
2.00 ml
実施例4:錠剤(塩酸タムスロシン)
常法により、次の組成からなる錠剤を調製する。
塩酸タムスロシン0.4g、乳糖303.6gおよび馬鈴薯澱粉68gを混合し、これにヒドロキシプロピルセルロースの10%水溶液200gを加える。この混合物を常法により練合し、造粒して乾燥させた後、整粒し打錠用顆粒とする。これにステアリン酸マグネシウム8.0gを加えて混合し、径8mmの杵をもった打錠機(菊水社製RT−15型)で打錠を行って、錠剤(1錠あたり活性成分0.2mgを含有する)を得る。
処方 塩酸タムスロシン 0.2 mg
乳糖 151.8 mg
馬鈴薯澱粉 34 mg
ヒドロキシプロピルセルロース 10 mg
ステアリン酸マグネシウム 4 mg
200 mg
実施例5:錠剤(化合物(Ia)と塩酸タムスロシンの単剤)
常法により、次の組成からなる錠剤を調製する。
化合物(Ia)40g、塩酸タムスロシン0.4g、乳糖289.6gおよび馬鈴薯澱粉56gを混合し、これにヒドロキシプロピルセルロースの10%水溶液120gを加える。この混合物を常法により練合し、造粒して乾燥させた後、整粒し打錠用顆粒とする。これにステアリン酸マグネシウム2gを加えて混合し、径8mmの杵をもった打錠機(菊水社製RT−15型)で打錠を行って、錠剤(1錠あたり化合物(Ia)20mgおよび塩酸タムスロシン0.2mgを含有する)を得る。
処方 化合物(Ia) 20 mg
塩酸タムスロシン 0.2 mg
乳糖 144.8 mg
馬鈴薯澱粉 28 mg
ヒドロキシプロピルセルロース 6 mg
ステアリン酸マグネシウム 1 mg
200 mg
【産業上の利用可能性】
本発明により、3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドまたはその薬理学的に許容される塩とαアドレナリン受容体遮断剤とを含有する医薬組成物等が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式(I)

で表される3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドまたはその薬理学的に許容される塩と(b)αアドレナリン受容体遮断剤とを含有する医薬組成物。
【請求項2】
3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドが式(Ia)

で表される(S)−(+)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドである請求の範囲第1項記載の医薬組成物。
【請求項3】
αアドレナリン受容体遮断剤がタムスロシン、プラゾシン、テラゾシン、ウラピジル、ドキサゾシン、アルフゾシン、ナフトピジル、マフトピジル、アバノキルおよびインドラミンならびにこれらの薬理学的に許容される塩から選択されるいずれか1つ以上である請求の範囲第1項または第2項記載の医薬組成物。
【請求項4】
(a)式(I)

で表される3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドまたはその薬理学的に許容される塩と(b)αアドレナリン受容体遮断剤を有効成分とする、同時にまたは時間を置いて別々に投与するための前立腺肥大症に伴う膀胱刺激症状治療剤。
【請求項5】
3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドが式(Ia)

で表される(S)−(+)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドである請求の範囲第4項記載の前立腺肥大症に伴う膀胱刺激症状治療剤。
【請求項6】
αアドレナリン受容体遮断剤がタムスロシン、プラゾシン、テラゾシン、ウラピジル、ドキサゾシン、アルフゾシン、ナフトピジル、マフトピジル、アバノキルおよびインドラミンならびにこれらの薬理学的に許容される塩から選択されるいずれか1つ以上である請求の範囲第4項または第5項記載の前立腺肥大症に伴う膀胱刺激症状治療剤。
【請求項7】
(a)式(I)

で表される3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドまたはその薬理学的に許容される塩を含有する第1成分と(b)αアドレナリン受容体遮断剤を含有する第2成分を有することを特徴とするキット。
【請求項8】
3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドが式(Ia)

で表される(S)−(+)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドである請求の範囲第7項記載のキット。
【請求項9】
αアドレナリン受容体遮断剤がタムスロシン、プラゾシン、テラゾシン、ウラピジル、ドキサゾシン、アルフゾシン、ナフトピジル、マフトピジル、アバノキルおよびインドラミンならびにこれらの薬理学的に許容される塩から選択されるいずれか1つ以上である請求の範囲第7項または第8項記載のキット。
【請求項10】
(a)式(I)

で表される3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドまたはその薬理学的に許容される塩を含有する第1成分と(b)αアドレナリン受容体遮断剤を含有する第2成分を有することを特徴とする前立腺肥大症に伴う膀胱刺激症状の治療用キット。
【請求項11】
3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドが式(Ia)

で表される(S)−(+)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドである請求の範囲第10項記載の前立腺肥大症に伴う膀胱刺激症状の治療用キット。
【請求項12】
αアドレナリン受容体遮断剤がタムスロシン、プラゾシン、テラゾシン、ウラピジル、ドキサゾシン、アルフゾシン、ナフトピジル、マフトピジル、アバノキルおよびインドラミンならびにこれらの薬理学的に許容される塩から選択されるいずれか1つ以上である請求の範囲第10項または第11項記載の前立腺肥大症に伴う膀胱刺激症状の治療用キット。
【請求項13】
αアドレナリン受容体遮断剤と同時にまたは時間を置いて別々に併用するための式(I)

で表される3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドまたはその薬理学的に許容される塩。
【請求項14】
3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドが式(Ia)

で表される(S)−(+)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドである請求の範囲第13項記載の3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドまたはその薬理学的に許容される塩。
【請求項15】
αアドレナリン受容体遮断剤がタムスロシン、プラゾシン、テラゾシン、ウラピジル、ドキサゾシン、アルフゾシン、ナフトピジル、マフトピジル、アバノキルおよびインドラミンならびにこれらの薬理学的に許容される塩から選択されるいずれか1つ以上である請求の範囲第13項または第14項記載の3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドまたはその薬理学的に許容される塩。
【請求項16】
αアドレナリン受容体遮断剤と同時にまたは時間を置いて別々に併用するための式(I)

で表される3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドまたはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物。
【請求項17】
3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドが式(Ia)

で表される(S)−(+)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドである請求の範囲第16項記載の医薬組成物。
【請求項18】
αアドレナリン受容体遮断剤がタムスロシン、プラゾシン、テラゾシン、ウラピジル、ドキサゾシン、アルフゾシン、ナフトピジル、マフトピジル、アバノキルおよびインドラミンならびにこれらの薬理学的に許容される塩から選択されるいずれか1つ以上である請求の範囲第16項または第17項記載の医薬組成物。
【請求項19】
(a)式(I)

で表される3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドまたはその薬理学的に許容される塩および(b)αアドレナリン受容体遮断剤を同時にまたは時間を置いて別々に投与することを特徴とする前立腺肥大症に伴う膀胱刺激症状の治療方法。
【請求項20】
3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドが式(Ia)

で表される(S)−(+)−3,3,3−トリフルオロ−2−ヒドロキシ−2−メチル−N−(5,5,10−トリオキソ−4,10−ジヒドロチエノ[3,2−c][1]ベンゾチエピン−9−イル)プロパンアミドである請求の範囲第19項記載の前立腺肥大症に伴う膀胱刺激症状の治療方法。
【請求項21】
αアドレナリン受容体遮断剤がタムスロシン、プラゾシン、テラゾシン、ウラピジル、ドキサゾシン、アルフゾシン、ナフトピジル、マフトピジル、アバノキルおよびインドラミン、ならびにこれらの薬理学的に許容される塩から選択されるいずれか1つ以上である請求の範囲第19項または第20項記載の前立腺肥大症に伴う膀胱刺激症状の治療方法。

【国際公開番号】WO2005/007155
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【発行日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511924(P2005−511924)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010533
【国際出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【Fターム(参考)】