説明

医薬製剤

組換えhCG(rhCG)を含有する製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不妊症治療に使用するためのゴナドトロピンに関する。特に、本発明は、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(human chorionic gonadotrophin;hCG)に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴナドトロピンは、雄および雌の生殖腺機能を制御する一群のヘテロ二量体糖タンパク質ホルモンである。それらには卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、および絨毛性ゴナドトロピン(CG)が含まれる。
【0003】
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)は、天然では脳下垂体前葉から分泌され、卵胞発達および排卵を支援する機能を果たす。hCGは、他の糖タンパク質ホルモン、LHおよびFSHにも共通する92個のアミノ酸から成るアルファ・サブユニットと、ホルモンの特異性を決定する145個のアミノ酸から成るベータ・サブユニットを含有する。各サブユニットは翻訳後修飾により、複合糖質残基が付加される。アルファ・サブユニットは2つのN-結合型グリコシル化部位(52位および78位アミノ酸)を有し、ベータ・サブユニットは2つのN-結合型グリコシル化部位(13位および30位のアミノ酸)および4つのO-結合型グリコシル化部位(121位、127位、132位、および138位のアミノ酸)を有する。
【0004】
妊婦の尿から抽出されたhCG(Choragon(Ferring社))は長年にわたって不妊の治療に使用されてきた。尿からの抽出によるhCGの生成は、大量の尿の回収および加工を必要とする。組換え型hCG、Ovitrelle(Serono社)が利用可能である。これはチャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞で発現される。既知の組換えhCG製剤は、ヒト尿から生成されたhCGとは異なる薬物動態プロファイルを示す。ヒト尿から生成されたhCGの薬物動態プロファイルをより高い類似性で再現または模倣するhCG製剤が必要とされている。
【0005】
hCG製剤にはかなりの不均一性が認められ、これは、含有される種々のアイソフォームの量の相違に関係する。個々のhCGアイソフォームは同一のアミノ酸配列を示すが、翻訳後修飾される度合いが異なっている;特定のアイソフォームは糖鎖分枝構造が不均一であること、およびシアル酸(末端糖)の導入量が異なっていることを特徴とし、そのいずれも、特定のアイソフォームの生体活性に影響を与えると考えられる。
【0006】
天然型hCGのグリコシル化は非常に複雑である。天然由来下垂体hCG中のグリカンは、ビ-、トリ-、およびテトラ-アンテナ型(bi-, tri-, and tetra-antennary)グリカンを組み合わせて含有しうる、多様な構造を有する。グリカンは以下のような更なる修飾も有しうる:コアのフコシル化、バイセクティング(bisecting)グルコサミン、アセチルラクトサミン伸長鎖、部分的または完全なシアリル化、α2,3およびα2,6結合型シアリル化、およびガラクトースを置換するグルコサミンサルフェート。更に、グリカン構造の個々のグリコシル化部位の分布は異なっている。
【0007】
組換えhCG(「rhCG」)製剤のグリコシル化は、ホスト細胞系に含まれるグリコシルトランスフェラーゼの種類を反映する。既存のrhCG製剤であるOvitrelleは、組換えチャイニーズ・ハムスターの卵巣細胞(CHO細胞)由来のものである。CHO由来rhCGにおけるグリカン修飾の種類は、尿由来の天然型製剤で見られるものに比較して限られたものである。CHO由来rhCG中に見られる還元型グリカンが異なっている例として、バイセクティンググルコサミンの欠如、並びにコアのフコシル化およびアセチルラクトサミン伸長鎖の含量低下が挙げられる。更に、CHO細胞はα2,3結合によらなければシアル酸を付加することができない(Kagawaら, 1988, Takeuchiら, 1988, Svenssonら, 1990)。これは、天然由来のhCGがα2,3およびα2,6結合型シアル酸を混合して保有するグリカンを含有するのとは異なっている。
【0008】
組換えFSH製剤(Organon社)は、等電点(pI)が4未満である(酸性アイソフォームと見なされる)FSHの量が、下垂体、血清、または閉経後尿FSHとは異なることが明らかになっている(Ulloa-Aguirreら 1995)。尿から生成されたFSH製剤中の酸性アイソフォームの量は、組換え製剤であるGonal-f(Serono社)およびPuregon(Oreganon社)に比較してかなり高い(Andersenら 2004)。FSHでは硫酸で修飾されて負に帯電したグリカンの含量が低いので、これはrFSH中に含有されるシアル酸のモル量が低いことを反映していると考えられる。天然型FSHに比較してシアル酸含量が低いことは市販FSH製剤の両方に共通する特徴であり、これは製造工程の限界を反映していると考えられる(BassettおよびDriebergen, 2005)。FSHの循環寿命は、種々の供与源からの物質について報告されている。これらの物質のいくつかは、分子全体の電荷(pIで表され、酸性度が高いほど負の電荷が高い)に基づいて分画が行われている。分子全体の電荷に寄与する主な要因は各FSH分子の総シアル酸含量である。例えば、rFSH(Oreganon社)のシアル酸含量は約8mol/molであり、尿由来FSHのシアル酸含量はこれより高い(de Leeuwら 1996)。ラットにおけるそれぞれの血漿クリアランス速度は0.34ml/分および0.14ml/分である(Ulloa-Aguirreら 2003)。組換えFSHサンプルを高pI画分および低pI画分に分離した別の例では、高pI(シアル酸含量が低い)画分はインビボにおける有効性が低下しており、血漿中半減期はより短かった(D'Antonioら 1999)。出願人が得た知見では、FSHと同様、既知のCHO由来組換えhCG製剤(例えばOvitrelle)でも、等電点(pI)が4未満である(酸性アイソフォームと見なされる)hCGの量は尿hCGより少なく、これも既知のrhCG製剤のシアル酸含量が尿hCGに比較して低いことを表している。
【0009】
シアル酸は通常、2通りの方法で結合するので、hCGおよびrhCGの総シアル酸含量を直接比較することはできない。下垂体/血清/尿hCGはα2,3およびα2,6結合型シアル酸の両方を含有し、前者が優位である。しかしながら、CHO細胞由来の組換え体はα2,3しか含有しない(Kagawara, 1988, Takeuchiら, 1988, Svenssonら, 1990)。すなわち、CHO系を用いて発現させた組換えタンパク質は末端シアル酸結合のタイプがその天然型とは異なる。天然型製剤および現在使用されている組換え製剤では、後者の方が総シアル酸含量が低いことに加えて、この点が相違している。糖質部分は分子の薬理学的特性に寄与しうるため、これは医薬品用の生物学的製剤を製造する上で考慮すべき重要な点である。
【0010】
従って、ヒト尿から生成される製剤の生理化学的および薬物動態プロファイルをより高い類似性で再現または模倣するrhCG製剤が必要とされている。既知の組換え製剤に比較して、より改善された薬物動態特性(単数または複数)を有するrhCG製剤が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Andersen CY, Westergaard LG, and van Wely M. (2004). FSH isoform composition of commercial gonadotrophin preparations: a neglected aspect? Reprod Biomed Online. 9(2), 231-236.
【非特許文献2】Bassett RM, and Driebergen R. (2005). Continued improvements in the quality and consistency of follitropin alfa, recombinant human FSH. Reprod Biomed Online. 10(2), 169-177.
【非特許文献3】D'Antonio M., Borrelli F. , Datola A., Bucci R. , Mascia M. , Polletta P., Piscitelli D., and Papoian R. (1999) Biological characterization of recombinant human follicle stimulating hormone isoforms. Human Reproduction 14, 1160-1167
【非特許文献4】Fiddes, J. C. and Goodman, H. M. (1979) Isolation, cloning and sequence analysis of the cDNA for the alpha-subunit of human chorionic gonadotropin. Nature, 281, 351-356.
【非特許文献5】Fiddes, J. C. and Goodman, H. M. (1980) The cDNA for the beta-subunit of human chorionic gonadotropin suggests evolution of a gene by readthrough into the 3'-untranslated region. Nature, 286, 684-387.
【非特許文献6】Kagawa Y, Takasaki S, Utsumi J, Hosoi K, Shimizu H, Kochibe N, and Kobata A. (1988). Comparative study of the asparagine-linked sugar chains of natural human interferon-beta 1 and recombinant human interferon-beta 1 produced by three different mammalian cells. J Biol Chem. 263(33), 17508-17515.
【非特許文献7】Lowry OH, Rosebrough NJ, Farr AL, Randall RJ. (1951) Protein measurement with the Folin phenol reagent. J Biol Chem. 193(1), 265-75.
【非特許文献8】Lowry, PJ, McLean, C, Jones RL and Satgunasingam N. (1976) Purification of anterior pituitary and hypothalamic hormones Clin Pathol Suppl (Assoc Clin Pathol). 7, 16-21.
【非特許文献9】Royle L, Radcliffe CM, Dwek RA and Rudd PM (2006) Methods in Molecular Biology, ed I Brockhausen-Schutzbach (Humana Press), 347: Glycobiology protocols, 125-144.
【非特許文献10】Steelman SL, and Pohley FM. (1953) Assay of the follicle stimulating hormone based on the augmentation with human chorionic gonadotropin. Endocrinology. 53(6), 604-616.
【非特許文献11】Svensson EC, Soreghan B, and Paulson JC. (1990) Organization of the beta-galactoside alpha 2,6-sialyltransferase gene. Evidence for the transcriptional regulation of terminal glycosylation. J Biol Chem. 265(34):20863-20868.
【非特許文献12】Takeuchi M, Takasaki S, Miyazaki H, Kato T, Hoshi S, Kochibe N, and Kobata A (1988). Comparative study of the asparagine-linked sugar chains of human erythropoietins purified from urine and the culture medium of recombinant Chinese hamster ovary cells. J Biol Chem. 263(8), 3657-3663.
【非特許文献13】Ulloa-Aguirre A, Midgley AR Jr, Beitins IZ, and Padmanabhan V. (1995). Follicle-stimulating isohormones: characterization and physiological relevance. Endocr Rev.16(6), 765-787.
【非特許文献14】Ulloa-Aguirre A, Timossi C, Barrios-de-Tomasi J, Maldonado A, and Nayudu P. (2003). Impact of carbohydrate heterogeneity in function of follicle-stimulating hormone: studies derived from in vitro and in vivo models. Biol Reprod. 69(2), 379-389.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では、α2,3-シアリル化およびα2,6-シアリル化を含有し、任意にα2,8シアリル化を含有していてもよい組換えhCG(「rhCG」または「rechCG」)を提供する。本発明にかかるrhCG(またはrhCG製剤)のシアル酸含量は、(タンパク質のモル数に対するシアル酸のモル数の比で)15 mol/molまたはそれ以上、例えば15 mol/molから25 mol/mol、例えば17 mol/molから24 mol/mol、例えば17.7 mol/molから23 mol/mol、例えば18 mol/molから22 mol/mol、例えば19 mol/molから21 mol/mol、例えば19 mol/molから20 mol/molであってもよい。本発明にかかるrhCG(またはrhCG製剤)は、総シアリル化の10%以上がα2,3-シアリル化であってもよい。例えば、総シアリル化の45%から80%がα2,3-シアリル化であってもよく、総シアリル化の50%から70%がα2,3-シアリル化であってもよく、総シアリル化の55%から65%がα2,3-シアリル化であってもよい。例えば総シアリル化の65-85%がα2,3-シアリル化であってもよい。本発明のrhCG(またはrhCG製剤)は、総シアリル化の50%またはそれ未満がα2,6-シアリル化であってもよい。例えば総シアリル化の20-55%がα2,6-シアリル化であってもよく、例えば総シアリル化の30-50%がα2,6-シアリル化であってもよく、例えば総シアリル化の35-45%がα2,6-シアリル化であってもよい。例えば総シアリル化の15-35%がα2,6-シアリル化であってもよい。本発明のrhCG(またはrhCG製剤)は、総シアリル化の5%またはそれ未満がα2,8-シアリル化であってもよく、例えば総シアリル化の0-4%、例えば0.1-4%がα2,8-シアリル化であってもよい。本発明のrhCG(またはrhCG製剤)は、α2,8-シアリル化を含有しなくてもよい。
【0013】
出願人は、CHO由来製剤、Ovitrelleに比較してより酸性度の高いプロファイルを示し、シアル酸含量がより高いヒト由来組換えhCGを開発した。出願人の研究によれば、シアル酸の結合のタイプ(α2,3またはα2,6)は、hCGの生物学的クリアランスに劇的な影響を与えうる。ヒト細胞系は、CHO細胞系とは異なり、α2,3およびα2,6結合型シアル酸の両方を含有する組換えhCGを発現できる。
【0014】
rhCGおよびα2,3-シアリルトランスフェラーゼの両方を発現するようにヒト細胞系を遺伝子操作することによって、α2,3およびα2,6結合型シアル酸の両方を混合して含有する組換えhCGを作製した(実施例4、5a、および5b)。発現産物は酸性度が高く、α2,3およびα2,6結合型シアル酸の両方を併せて含有する;後者は内因性シアリルトランスフェラーゼ活性によって生成される。これには、慣例的なCHO細胞で発現されるrhCGより優れた点が2つある:1つは、2つのシアリルトランスフェラーゼの複合活性によって物質がより高度にシアリル化されることである;また2つめは、物質が天然型hCGとより高い類似性を有することである。これは、CHO細胞由来の組換え産物(α2,3結合型シアル酸しか生成せず、シアル酸含量が低い)に比較して、生物学的により好適であると考えられる。
【0015】
出願人は、驚くべきことに、本発明のrhCGが、他の組換え製剤に比較して、天然型ヒト尿製剤の生理学的および薬物動態学的プロファイルをより高い類似性で再現または模倣しうることを発見した。すなわち、本発明のrhCGはより「天然の」hCGに類似している。これは投与等に関して、重要な利点となり得る。更に、より「天然」であるか、またはより「ヒト」に近い製剤であること、ある意味では人工的であるが可能な限り「天然」であることは、治療を必要とする患者によってより好ましい。また、他の組換え製剤より天然型(例えばヒト尿)hCGに近い糖鎖(例えばグリカン)構造を有する組換えhCG製剤には、他の利点(例えば薬物動態学的利点)もあり得る。
【0016】
従って、本発明は、α2,3およびα2,6結合型シアル酸を混合して保有し、そのため天然型hCGとの類似性がより高い組換えhCGを提供する。予想されるように、この化合物を制御された卵巣刺激、IVF法、および排卵誘発に使用することにより、既存の組換え製剤に比較してより天然に近い卵巣刺激を行うことができる。
【0017】
本発明では、α2,3-シアリル化およびα2,6-シアリル化を含有する組換えhCG(「rhCG」または「rechCG」)(および/または組換えhCG製剤)を提供する。rhCGまたはrhCG製剤は、任意にα2,8-シアリル化を更に含んでもよい。
【0018】
本明細書において「組換えhCG製剤」は、例えば組換えhCGを含有する医薬品に使用するための製剤を含む。本発明のいくつかの態様では、rhCGは単一のアイソフォームであるか、または複数のアイソフォームの混合物であってもよい。
【0019】
本発明にかかるrhCG(またはrhCG製剤)のシアル酸含量は、(タンパク質のモル数に対するシアル酸のモル数の比で)15 mol/mol以上(実施例8)、例えば15 mol/molから25 mol/mol、例えば17 mol/molから24 mol/mol、例えば17.7 mol/molから23 mol/mol、例えば18 mol/molから22 mol/mol、例えば19 mol/molから21 mol/mol、例えば19 mol/molから20 mol/molであってもよい。本発明のrhCGはヒト細胞系で生成または発現させてもよい。
【0020】
本発明にかかるrhCG(またはrhCG製剤)は総シアリル化の10%またはそれ以上がα2,3-シアリル化であってもよい。例えば、総シアリル化の20、30、40、45、50、55、60、70、80、もしくは90%、またはそれ以上がα2,3-シアリル化であってもよい。rhCG(またはrhCG製剤)は、総シアリル化の45%から80%、例えば総シアリル化の50%から70%、例えば総シアリル化の55%から65%の量のα2,3-シアリル化を含有してもよい。rhCG(またはrhCG製剤)は、総シアリル化の65%から85%、例えば総シアリル化の70%から80%、例えば総シアリル化の71%から79%の量のα2,3-シアリル化を含有してもよい。本発明のrhCG(またはrhCG製剤)は、総シアリル化の50%またはそれ未満のα2,6-シアリル化を含有してもよい。例えば総シアリル化の45、40、30、20、10、5%、またはそれ未満がα2,6-シアリル化であってもよい。rhCG(またはrhCG製剤)は、総シアリル化の20%から55%、例えば総シアリル化の30-50%、例えば総シアリル化の35-45%の量のα2,6-シアリル化を含有してもよい。rhCG(またはrhCG製剤)は、総シアリル化の15%から35%、例えば総シアリル化の20%から30%、例えば総シアリル化の21%から29%の量のα2,6-シアリル化を含有してもよい。本発明のrhCG(またはrhCG製剤)は、総シアリル化の5%またはそれ未満のα2,8-シアリル化を含有してもよい。例えば、総シアリル化の2.5%またはそれ未満がα2,8-シアリル化であってもよい。rhCG(またはrhCG製剤)は、総シアリル化の0%から4%、例えば総シアリル化の0.1から4%、例えば総シアリル化の0.5から3%、例えば総シアリル化の0.5から3%の量のα2,8-シアリル化を含有してもよい。本発明のrhCG(またはrhCG製剤)はα2,8-シアリル化を含有しなくてもよい。シアリル化は、hCGの糖鎖構造上に存在するシアル酸残基の量を表す。α2,3-シアリル化は(当該分野で知られるように)2,3位がシアリル化されていることを意味し、α2,6-シアリル化は(当該分野で知られるように)2,6位がシアリル化されていることを意味する。従って、「総シアリル化のX%がα2,3-シアリル化であってもよい」とは、hCG中に存在するシアル酸残基総数のX%が2,3位でシアリル化されていることを意味する。「総シアリル化のX%がα2,6-シアリル化である」とは、hCG中に存在するシアル酸残基総数のX%が2,6位でシアリル化されていることを意味する。
【0021】
本発明にかかるrhCG(またはrhCG製剤)のシアル酸含量(hCG分子当たりのシアリル化の量)は、(タンパク質+糖鎖の質量ではなく、タンパク質の質量ベースで)6重量%またはそれ以上(例えば6%から15%、例えば7%から13%、例えば8%から12%、例えば11%から15%、例えば12%から14%)であってもよい。チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞で発現させた組換えhCGはα2,3-シアリル化のみを含有する。本発明のrhCGはヒト細胞系で生成または発現させることができる。これによって製造法が簡易(かつより効率的)になり得る。これは、例えば細胞増殖培地を操作または制御してシアリル化を維持することが、既知の方法に比較して重要ではないためである。また、この方法はより効率的でもあり得る。これは、既知のrhCG製剤生成の場合に比較して、生成される塩基性rhCGが少なく;より多くの酸性rhCGが生成され、塩基性hCGの分離/除去がさほど問題とならないためである。rhCGはPer.C6細胞系、Per.C6由来細胞系、または改変型Per.C6細胞系で生成または発現させてもよい。細胞系をα2,3-シアリルトランスフェラーゼを用いて改変してもよい。rhCGは、(細胞系の)内因性シアリルトランスフェラーゼ活性によって生成されたα2,6結合型シアル酸(α2,6-シアリル化)を含有してもよい。あるいは、または、更に、細胞系をα2,6-シアリルトランスフェラーゼを用いて改変してもよい。
【0022】
rhCGはα2,3-シアリルトランスフェラーゼを用いて生成してもよい。rhCGは内因性シアリルトランスフェラーゼ活性によって生成されたα2,6結合型シアル酸(α2,6-シアリル化)を含有してもよい。rhCGはα2,3-および/またはα2,6-シアリルトランスフェラーゼを用いて生成してもよい。
【0023】
本発明の更なる観点では、本明細書に(本発明の種々の観点について)記載するrhCGおよび/またはrhCG製剤の製造法を提供し、この方法はヒト細胞系、例えばPer.C6細胞系、Per.C6由来細胞系、または改変型Per.C6細胞系(例えばα2,3-シアリルトランスフェラーゼを用いて改変した細胞系)においてrhCGを生成または発現させる段階を含む。
【0024】
rhCG構造はグリカン部分を含有する。グリカンが1、2、3、4、またはそれ以上の末端糖残基または「アンテナ」を保有することによって分枝が生じることは当該分野で知られる通りである。本発明のrhCGは、モノ-アンテナおよび/またはジ-アンテナおよび/またはトリ-アンテナおよび/またはテトラ-アンテナ構造上にシアリル化を保有するグリカンを含有してもよい。rhCGはモノ-シアリル化、ジ-シアリル化、トリ-シリアル化、およびテトラ-シリアル化グリカン構造を、例えば以下の相対量で含有してもよい:0.1-4%のモノ-シアリル化;35-45%のジ-シアリル化;0.5-8%のトリ-シアリル化;および0-1%のテトラ-シアリル化(例えば実施例8Dに記載する帯電性グリカンのWAX分析に示すように)。好ましくは、本発明の組換えhCGはモノ(1S)、ジ(2S)、トリ(3S)、およびテトラ(4S)シアリル化構造を含有する。好ましくは、シアリル化構造の相対量は以下である(1S:2S:3S:4S):0.2-1%:35-40%:2.5-7%:0.5-1%(例えば実施例8Dに記載する帯電性グリカンのWAX分析に示すように)。
【0025】
本発明の更なる観点では、ヒト細胞系で生成した(例えば発現させた)rhCGを提供する。rhCGはα2,3-およびα2,6-シアリル化を含有してもよい。rhCGはPer.C6細胞系、Per.C6由来細胞系、または改変型Per.C6細胞系で生成または発現させてもよい。α2,3-シアリルトランスフェラーゼを用いて細胞系を改変してもよい。rhCGは(細胞系の)内因性シアリルトランスフェラーゼ活性によって生成されたα2,6結合型シアル酸(α2,6-シアリル化)を含有してもよい。あるいは、または、更に、細胞系をα2,6-シアリルトランスフェラーゼを用いて改変してもよい。本発明にかかるrhCG(またはrhCG製剤)のシアル酸含量は、(タンパク質のモル数に対するシアル酸のモル数の比で)15 mol/molまたはそれ以上、例えば15 mol/molから25 mol/mol、例えば17 mol/molから24 mol/mol、例えば17.7 mol/molから23 mol/mol、例えば18 mol/molから22 mol/mol、例えば19 mol/molから21 mol/mol、例えば19 mol/molから20 mol/molであってもよい。rhCG(またはrhCG製剤)は、総シアリル化の10%またはそれ以上がα2,3-シアリル化であってもよく、例えば、総シアリル化の45%から80%がα2,3-シアリル化であってもよく、例えば総シアリル化の50%から70%がα2,3-シアリル化であってもよく、例えば総シアリル化の55%から65%がα2,3-シアリル化であってもよい。例えば総シアリル化の65%から85%がα2,3-シアリル化であってもよい。本発明のrhCG(またはrhCG製剤)は、総シアリル化の50%またはそれ未満がα2,6-シアリル化であってもよい。例えば総シアリル化の20-55%がα2,6-シアリル化であってもよく、例えば総シアリル化の30-50%がα2,6-シアリル化であってもよく、例えば総シアリル化の35-45%がα2,6-シアリル化であってもよい。例えば総シアリル化の15-35%がα2,6-シアリル化であってもよい。本発明のrhCG(またはrhCG製剤)は、総シアリル化の5%またはそれ未満のα2,8-シアリル化を含有してもよく、例えば総シアリル化の0-4%、例えば0.5-4%がα2,8-シアリル化であってもよい。本発明のrhCG(またはrhCG製剤)は、α2,8-シアリル化を含有しなくてもよい。
【0026】
本発明の更なる観点では、(例えば上記のように)α2,3-シアリル化およびα2,6-シアリル化を保有するrhCGを含有する医薬組成物を提供する。医薬組成物はFSHおよび/またはLHを更に含有してもよい。
【0027】
FSHは当該分野で知られる方法によって得ることができる。本明細書で使用するFSHはヒト由来および組換えFSHを含む。ヒト由来FSHの精製は、好適な供与源(例えば尿)から当該分野で知られる任意の方法によって行ってもよい。FSHは(例えばヒト細胞系で発現させた)組換えFSHであってもよい。組換えFSHの発現および精製の方法は当該分野で知られている。
【0028】
LHは当該分野で知られる方法によって得ることができる。本明細書で使用するLHはヒト由来および組換えLHを含む。ヒト由来LHの精製は、好適な供与源(例えば尿)から当該分野で知られる任意の方法によって行ってもよい。組換えLHの発現および精製の方法は当該分野で知られている。
【0029】
医薬組成物は、不妊症治療のためのもの、例えば生殖補助医療技術(ART)、排卵誘発、または子宮腔内授精(IUI)に使用するためのものであってもよい。医薬組成物を、例えば既知のhCG製剤を使用する医学的適応に使用してもよい。また、本発明は、不妊症治療のための、または不妊症治療のための薬剤を製造するための、本明細書に記載する(本発明の観点の)rhCGおよび/またはrhCG製剤の使用法を提供する。本発明の医薬組成物を調剤して、任意の薬剤投与経路(例えば経口、直腸、非経口、経皮(例えばパッチ法)、静脈内、筋肉内、皮下、胸骨内、膣内、腹腔内、局所(パウダー、軟膏、または滴下剤)のための既知の組成物、またはバッカルもしくは鼻腔内スプレーとしてもよい。一般的な組成物には医薬的に許容されるキャリアー、例えば水溶液、非毒性賦形剤(塩を含む)、保存剤、バッファーなど、特にRemington's Pharmaceutical Sciences(第15版、Matt Publishing Company, 1975, 1405-1412ページおよび1461-87ページ)およびnational formulary XIV(第14版、American Pharmaceutical Association, 1975)に掲載されているものがある。
【0030】
好適な水溶性および非水溶性医薬キャリアー、希釈剤、溶媒、または賦形剤の例には、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、カルボキシメチルセルロース、およびそれらの好適な混合物、植物油(例えばオリーブ油)、そして注射用有機エステル(例えばオレイン酸エチル)がある。
【0031】
また、本発明の組成物は添加物(例えば、それに限定される訳ではないが、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤)を含有してもよい。抗菌薬および抗真菌薬を含有して微生物の増殖を抑制してもよく、それらには例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などがある。更に、任意に等張剤、例えば糖、塩化ナトリウムなどを含有してもよい。
【0032】
場合によっては、持続的効果を得るために皮下または筋肉内注射からのhCG(および(含有される場合は)他の活性成分)の吸収を遅延させることが望まれる。これは、難水溶性の結晶または非結晶性物質の懸濁液を使用することによって行うことができる。この場合、hCGの吸収速度は溶解速度に依存し、溶解速度は結晶のサイズおよび形態に依存する。あるいはまた、非経口投与されたhCG配合剤の吸収遅延を、hCG配合剤を油性賦形剤に溶解または懸濁することによって行う。
【0033】
デポー注射剤の調製は、生分解性ポリマー(例えばポリラクチド-ポリグリコリド)中でhCG(および(含有される場合は)他の物質)のマイクロカプセル・マトリクスを形成することによって行うことができる。hCGとポリマーの比率、および使用する特定ポリマーの性質に基づいて、hCGの放出速度を制御できる。他の生分解性ポリマーの例として、ポリビニルピロリドン、ポリ・オルトエステル、ポリ酸無水物などがある。また、デポー注射剤は、体組織と適合性のあるリポソームまたはマイクロエマルションにhCGを封入させることによって調製する。
【0034】
注射用製剤の滅菌を、例えば細菌除去フィルターでのろ過、または滅菌剤(滅菌された固形の組成物であり、使用の直前にこれを滅菌水または他の滅菌注射用溶媒に溶解または分散させる)の導入によって行ってもよい。注射用製剤は任意の好適な容器、例えばバイアル、薬剤充填済み注射器、注射カートリッジなどに封入して提供してもよい。
【0035】
注射用製剤は、hCGを(任意にFSH、LHなどと共に)含有する医薬組成物を含む製品として提供してもよい。活性成分が1つより多い場合(すなわち、hCGと、例えばFSHまたはLH)、これらは個別投与または共投与に好適なものであってもよい。個別投与の場合、投与は連続的であってもよい。製品は任意の好適な包装で提供してもよい。例えば、製品はhCG、FSH、またはFSHおよびhCGの両者を併せて含有する薬剤充填済み注射器を複数含有し、注射器が滅菌を保つためにブリスター包装または他の方法で包装されていてもよい。製品には、任意にhCGおよびFSH製剤を使用するための説明書が含まれてもよい。
【0036】
医薬組成物の種々の成分のpHおよび正確な濃度は、当該分野での慣例的な実施に従って調整する。GOODMAN and GILMAN's THE PHARMACOLOGICAL BASIS FOR THERAPEUTICES(第7版)参照。好ましい態様では、本発明の組成物を非経口投与のための組成物として提供する。非経口製剤の一般的な調製法は当該分野で知られており、また、REMINGTON; THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY(上記。780-820ページ)に記載されている。非経口組成物は液体製剤として提供するか、または固形であって、投与の直前に滅菌注射用溶媒と混合してもよい。特に好ましい態様では、非経口組成物を投与ユニット形態で提供し、投与を容易にし、また投薬量を均一にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】phCGα/β発現ベクターのプラスミド・マップを示す。
【図2】α2,3-シアリルトランスフェラーゼ(ST3GAL4)発現ベクターを示す。
【図3】α2,6-シアリルトランスフェラーゼ(ST6GAL1)発現ベクターを示す。
【図4】本発明のヒト細胞系由来組換えhCG製剤中のrhCGアイソフォーム(レーン3、4)のクマシーブルー染色によるIEFでの検出を、従前技術による製剤(レーン1、2)と比較して示す。
【図5】α2,3-シアリルトランスフェラーゼ操作したPer.C6 hCGサンプルの代謝クリアランス速度(MCR)を示す。
【図6】α2,3-シアリルトランスフェラーゼ操作したPer.C6 rhCGサンプルの長期MCRを示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
発明の詳細な説明
以下に、本発明について以下の実施例および添付の図面を用いてより詳細に記載する。
【0039】
配列の選択
ヒトhCG
FiddesおよびGoodman (1979)に従い、hCGαポリペプチド遺伝子のコード領域を使用した。配列はAH007338として登録されており、構築の時点で、このタンパク質配列には他の変異体は存在しなかった。本明細書ではこの配列をSEQ ID 1と称する。
【0040】
FiddesおよびGoodman (1980)に従い、hCGβポリペプチド遺伝子のコード領域を使用した。配列はNP_000728として登録されており、CGベータ3、CGベータ5、およびCGベータ7のタンパク質配列と一致する。本明細書ではこの配列をSEQ ID 2と称する。
【0041】
シアリルトランスフェラーゼ
α2,3-シアリルトランスフェラーゼ: KitagawaおよびPaulson (1994)に従い、βガラクトシドα2,3-シアリルトランスフェラーゼ4(α2,3-シアリルトランスフェラーゼ、ST3GAL4)遺伝子のコード領域を使用した。この配列はL23767として登録されており、本明細書ではSEQ ID 3と称する。
【0042】
α2,6-シアリルトランスフェラーゼ: Grundmannら (1990)に従い、βガラクトサミドα2,6-シアリルトランスフェラーゼ1(α2,6-シアリルトランスフェラーゼ、ST6GAL1)を使用した。この配列はNM_003032として登録されており、本明細書ではSEQ ID 4と称する。
【実施例】
【0043】
実施例1 hCG発現ベクターの構築
hCGαポリペプチドのコード配列(AH007338, SEQ ID 1)およびhCGβポリペプチドのコード配列(NP_000728, SEQ ID 2)をPCRで増幅した(プライマーはそれぞれ、CGa-fwおよびCGa-rev、CGb-fwおよびCGb-revの組み合わせで使用)。
CGa-fw 5'-CCAGGATCCGCCACCATGGATTACTACAGAAAAATATGC-3'
CGa-rev 5'-GGATGGCTAGCTTAAGATTTGTGATAATAAC-3'
CGb-fw 5'-CCAGGCGCGCCACCATGGAGATGTTCCAGGGGCTGC -3'
CGb-rev 5'- CCGGGTTAACTTATTGTGGGAGGATCGGGG-3'
【0044】
得られたhCGβDNA増幅産物を制限酵素、AscIおよびHpaIで消化し、ネオマイシン選択マーカーを保有するCMV駆動性哺乳動物細胞発現ベクターのAscI/HpaI部位に挿入した。同様に、hCGαDNAをBamHIおよびNheIで消化し、既にhCGβポリペプチドDNAを含有させた発現ベクターのBamHI/NheI部位に挿入した。
【0045】
このベクターDNAをE.coliのDH5α株に形質導入した。コロニーを採取して増殖し、hCGαおよびβの両方を含有するベクターを含むもののうち20個を選択してシーケンシングを行った。シーケンシング用に選択したコロニーの全てがSEQ ID 1およびSEQ ID 2と一致する正しい配列を含有した。プラスミドphCG A+Bをトランスフェクションに使用した(図1)。
【0046】
実施例2 ST3発現ベクターの構築
βガラクトシドα-2,3-シアリルトランスフェラーゼ4のコード配列(ST3、L23767、SEQ ID 3)のPCR増幅を、プライマー、2,3STfwおよび2,3STrevを使用して行った。
2,3STfw 5'-CCAGGATCCGCCACCATGTGTCCTGCAGGCTGGAAGC-3'
2,3STrev 5'-TTTTTTTCTTAAGTCAGAAGGACGTGAGGTTCTTG-3'
【0047】
得られたST3 DNA増副産物を制限酵素、BamHIおよびAflIIで消化し、ハイグロマイシン耐性マーカーを保有するCMV駆動性哺乳動物細胞発現ベクターのBamHI/AflII部位に挿入した。ベクターを上記のように増幅し、シーケンシングを行った。クローンpST3#1(図2)はSEQ ID 3と一致する正しい配列を含有し、これをトランスフェクションに使用した。
【0048】
実施例3 ST6発現ベクターの構築
βガラクトサミドα-2,6-シアリルトランスフェラーゼ1のコード配列(ST6、NM_003032、SEQ ID 4)のPCR増幅を、プライマー、2,6STfwおよび2,6STrevを使用して行った。
2,6STfw 5'-CCAGGATCCGCCACCATGATTCACACCAACCTGAAG-3'
2,6STrev 5'-TTTTTTTCTTAAGTTAGCAGTGAATGGTCCGG-3'
【0049】
ST6 DNA増副産物を制限酵素、BamHIおよびAflIIで消化し、ハイグロマイシン耐性マーカーを保有するCMV駆動性哺乳動物細胞発現ベクターのBamHI/AflII部位に挿入した。ベクターを上記のように増幅し、シーケンシングを行った。クローンpST6#11(図3)はSEQ ID 4と一致する正しい配列を含有し、これをトランスフェクションに使用した。
【0050】
実施例4 PER.C6細胞におけるphCG A+Bの安定発現
クローンのトランスフェクション、単離、およびスクリーニング
hCGを生成するPer.C6クローンを作製するために、1つのプラスミドからhCGの両ポリペプチド鎖を発現させた(実施例1参照)。
【0051】
安定発現クローンを得るために、リポソーム型トランスフェクション試薬をphCG A+Bコンストラクトと共に使用した。G418を含有する10% FCS含有Per.C6選択培地中で、安定発現クローンを選択培養した。トランスフェクションの3週間後、G418耐性クローンが増殖した。合計389個のクローンを単離した。単離したクローンを選択培地中、70-80%の集密度まで培養した。hCG選択的ELISAを用いて上清のhCGタンパク質含量を測定し、クローン化した細胞系におけるhCG受容体の薬理活性をcAMP蓄積アッセイによって測定した。機能性タンパク質を発現するクローン(118個)を24ウェル、6ウェル、およびT80フラスコに順次、拡大培養した。
【0052】
47個のクローンからの物質の生産性およびクオリティーを測定する試験を行うために、まずT80フラスコで十分量の物質を生成させた。細胞を上記の補足培地中で7日間培養し、上清を回収した。生産性はhCG選択的ELISAを用いて測定した。物質の等電点プロファイルを測定した(実施例6に記載する方法を使用)。IEFの情報を用いて、代謝クリアランス速度分析に供するクローンの選択を行った。十分な生産性およびクオリティーを有するクローンを選択し、シアリルトランスフェラーゼ操作に使用した。
【0053】
実施例5a α2,3-シアリルトランスフェラーゼを過剰発現する細胞ではシアリル化のレベルが増加する。hCG発現Per.C6細胞におけるpST3の安定発現;クローンのトランスフェクション、単離、およびスクリーニング
高度にシアリル化されたhCGを生成するPer.C6クローンを作製するために、既にhCGの両ポリペプチド鎖を発現することが確認されているPer.C6細胞(実施例4参照)において、別のプラスミド(実施例2参照)からα2,3-シアリルトランスフェラーゼを発現させた。実施例4に記載するPER.C6(登録商標)細胞から作製したクローンについて、その特性(生産性、良好な増殖プロファイル、機能性タンパク質の生成、および生成されるシアリル化含有hCG)に基づく選択を行った。
【0054】
安定発現クローンを上記実施例4のように作製した。α2,3-シアリルトランスフェラーゼ・プログラムからのクローンを単離、拡大培養、およびアッセイを行った。α2,3に関する試験のためのクローン数は最終的に5個であった。α2,3-シアリルトランスフェラーゼ・クローンを懸濁条件で無血清培地に馴化させた。
【0055】
前記のようにhCG選択的ELISA、hCG受容体細胞系における機能性応答、およびIEFを用いてクローンのアッセイを行った(実施例6)。また、代謝クリアランス速度(実施例9)およびUSP hCGバイオアッセイ(実施例10)についての評価も行った。結果を市販の組換えhCG(Ovitrelle、Serono社)および親hCG Per.C6細胞系と比較した。代表的なサンプルを実施例および図に示す。
【0056】
結論として、Per.C6細胞におけるhCGおよびα2,3-シアリルトランスフェラーゼの共発現により、hCGのみを発現する細胞に比較して、高レベルのシアリル化hCGが得られる。
【0057】
実施例5b hCG発現PER.C6細胞におけるpST3の安定発現-別法
上記のように作製したα、βヘテロダイマー(実施例4)はシアリル化のレベルが低く、非常に塩基性の高いIEFプロファイルを示した。上記(実施例5a)のように、Per.C6細胞におけるhCGおよびα2,3-シアリルトランスフェラーゼの共発現により、hCGのみを発現する細胞に比較して、高レベルのシアリル化hCGが得られる。
【0058】
懸濁細胞培養法で、Per.C6細胞へのhCGαおよびβサブユニット遺伝子とα2,3-シアリルトランスフェラーゼ酵素遺伝子の2重トランスフェクションを行った。hCGベクター(2元(α/β)発現ベクター、実施例1)およびα2,3-シアリルトランスフェラーゼをコードするベクター(実施例2)の共トランスフェクションにより、無血清条件下において細胞系を作製した。PER.C6(登録商標)細胞から作製したクローンについて、その特性(生産性、良好な増殖プロファイル、機能性タンパク質の生成、および生成されるシアリル化含有hCG)に基づく選択を行った。クローンを単離、拡大培養、およびアッセイした。
【0059】
前記のように、hCG選択的ELISA、hCG受容体細胞系における機能性応答、およびIEFを用いてクローンのアッセイを行った(実施例6)。また、代謝クリアランス速度(実施例9)およびUSP hCGバイオアッセイ(実施例10)についての評価も行った。結果を市販の組換えhCG(Ovitrelle、Serono社)および親hCG Per.C6細胞系と比較した。代表的なサンプルを実施例および図に示す(実施例6、9、10、図4、および5参照)。クローンによって生成された組換えhCG(すなわち、本発明にかかる組換えhCG)は、α2,3-シアリルトランスフェラーゼ無しで発現させたhCGおよびOvitrelleと比較して、著しく向上したシアリル化を示す(すなわち平均して、多数のシアル酸を有するhCGアイソフォームがより多い)(実施例6および8、図4参照)。
【0060】
実施例6 等電点電気泳動によるPer.C6生成hCGアイソフォームの等電点(pI)分析
電気泳動は、電場による溶媒中での荷電分子の移動と定義される。電場による生体分子の移動度は電場の強度、分子の正味荷電、分子のサイズおよび形状、分子が移動する溶媒のイオン強度および特性に依存する。
【0061】
等電点電気泳動法(IEF)は、タンパク質をそのpIに基づいて分離するための電気泳動法である。pIは、タンパク質が正味の荷電を有さず、電場を移動しないpHである。hCGアイソフォームのシアル酸含量により各アイソフォームのpIがわずかに変化するため、これを用いて各クローンからのPer.C6 hCGアイソフォームを可視化することができる。
【0062】
細胞培養上清中のPer.C6生成hCGアイソフォームの等電点を、等電点電気泳動法を用いて分析した。Per.C6 hCGクローンからの細胞培養液を実施例4、5a、および5bに記載するように調製した。
【0063】
Per.C6 hCGサンプルの分離を、Novex(登録商標)IEFゲル(5%ポリアクリルアミド含有)上、ネイティブ条件下、pH 3.0-7.0のグラジエント、両性電解質溶液(pH 3.0-7.0)中で行った。当該分野で知られる方法により、クマシーブルー染色を用いてタンパク質を可視化した。
【0064】
図4に、本発明の組成物(レーン3(10μg)およびレーン4(15μg))および従前技術によるCHO由来組成物(レーン1(Ovitrelle 10μg)およびレーン2(Ovitrelle 15μg))中のrhCGアイソフォームをクマシーブルー染色によるIEFで検出したものを示す。バンドは異なる数のシアル酸分子を含有するhCGアイソフォームを示す。この方法を用いて、より多くのシアル酸分子を保有するhCGアイソフォームを生成するクローンを同定した。図4に示すように、α2,3-シアリルトランスフェラーゼ操作したヒト細胞系由来組換えhCG(本発明の組成物)は、Ovitrelleに比較して、より酸性度の高いプロファイルを示す。
【0065】
実施例7 Per.C6 hCGのシアル酸結合の分析
レクチンに基づくグリカン識別法を用いて、複合糖質の分析を行った。この方法によれば、ニトロセルロースに結合した糖タンパク質および複合糖質を特性決定することができる。レクチンは特定の部分(例えばα2,3結合型シアル酸)を選択的に認識する。適用したレクチンはステロイド・ハプテンであるジゴキシゲニンとコンジュゲートし、これによって結合したレクチンの免疫学的検出が可能となる。
【0066】
親クローン(更なるシアリルトランスフェラーゼを発現させていない)およびα2,3-シアリルトランスフェラーゼ導入クローン由来の精製Per.C6 hCGを、標準的なSDS-PAGE法を用いて分離した。市販の組換えhCG(Ovitrelle、Serono社)を標準物質として用いた。
【0067】
DIG Glycan Differentiation Kit(Roche社、カタログ番号11 210 238 001)を製造者の説明書に従って使用し、シアル酸の分析を行った。セイヨウニワトコ凝集素(Sambucus nigra agglutinin、SNA)との陽性反応は末端結合(2,6)シアル酸の存在を示す。イヌエンジュ凝集素(Maackia amurensis agglutinin II、MAA)との陽性反応は末端結合(α2,3)シアル酸の存在を示す。
【0068】
要約すると、親クローンはα2,3およびα2,6シアル酸のいずれも、含有レベルが低かった。α2,3-シアリルトランスフェラーゼ操作したクローンでは、α2,3シアル酸結合の含有レベルが高く、α2,6シアル酸結合の含有レベルが低かった。標準物質であるOvitrelleはα2,3シアル酸結合しか含有しない。これは、チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞で生成された組換えタンパク質についての知見と一致している(Kagawaら, 1988, Takeuchiら, 1988, Svenssonら, 1990)。
【0069】
結論として、α2,3-シアリルトランスフェラーゼによるPer.C6 hCG細胞の操作により、サンプル中の組換えhCGにコンジュゲートするシアル酸分子の数を増加することができた。
【0070】
実施例8Aおよび8B 総シアル酸の定量
シアル酸はタンパク質に結合した炭水化物であってモノサッカライドと見なされ、他のモノサッカライド(例えばガラクトース、マンノース、グルコサミン、ガラクトサミン、およびフコース)と化合して存在する。本発明の精製rhCG上の総シアル酸を、Stantonらの方法に基づく方法を用いて測定した(J. Biochem. Biophys. Methods. 30 (1995), 37 - 48)。
【0071】
実施例8A
α2,3-シアリルトランスフェラーゼで改変したPer.C6組換えhCG(例えば実施例5a、実施例5b)の総シアル酸含量を測定したところ、(タンパク質のモル数に対するシアル酸のモル数の比で)15 mol/mol以上、例えば18 mol/mol以上、例えば19.1 mol/molであった。これはOvitrelle(総シアル酸含量 17.6 mol/mol)に匹敵する。
【0072】
実施例8B
α2,3-シアリルトランスフェラーゼで改変したPer.C6組換えhCG(080019-19)(上記実施例5bの方法で調製したもの)の総シアル酸含量を測定したところ、(タンパク質のモル数に対するシアル酸のモル数の比で)20 mol/molであった。この場合も、これはOvitrelle(総シアル酸含量 17.6 mol/mol)を凌ぐものである。この事例(080019-19)について試験を行い、α2,3およびα2,6シアル酸の相対量を定量した(実施例8C)。
【0073】
実施例8C α2,3およびα2,6シアル酸の相対量の定量
精製rhCG((080019-19)の例および実施例5で調製した他の2つの例)上のα2,3およびα2,6シアル酸の相対量(%)を、既知の方法、すなわち順相(NP-)HPLCを用いて測定した。
【0074】
O-結合型グリカン中のα2,3およびα2,6シアル酸を定量するために、以下の分析を実施した。Orela Glycan Release Kitを用いてO-結合型グリカンをhCGサンプルから開裂し、NP-HPLCで分離した。抽出およびプールしたグリカン・サンプル(上記のように抽出)を異なるシアリダーゼで消化し、結合を確認した。このグリカンの酵素消化は、α2-3,6,8シアリダーゼおよびα2-3シアリダーゼを用いて行った。その後、酵素消化したグリカンをNPカラムで再分離し、調製した標準物質を用いてNP-HPLCでO-グリカンを同定した。算出した相対%を以下の表に示す(SA=シアル酸)。
【0075】
【表1】

【0076】
相対%は、α2,3-シアリル化では55-65%の範囲(例えば59%);α2,6-シアリル化では35-45%の範囲(例えば41%)であった。
【0077】
実施例8D モノ-、ジ-、トリ-、およびテトラ-アンテナ型シアリル化構造の相対量の定量
精製rhCG(実施例8Cで使用した3つのサンプル)から抽出したグリカン上のモノ-、ジ-、トリ-、およびテトラ-シアリル化構造の相対量(%)を既知の方法で測定した。
【0078】
各rhCGサンプルを固定化(ゲルブロック)、洗浄、還元、およびアルキル化し、PNGase Fで一晩消化した。その後、N-グリカンを抽出および処理した。NP-HPLCおよびWAX−HPLC分析に用いるN-グリカンを、Royleらに詳述されているように、フルオロフォア2ABで標識した。
【0079】
電荷によってN-グリカンを分離する弱アニオン交換(WAX)HPLC(実施例8C)をRoyleらの報告に従い、Fetuin N-グリカン標準物質を参照として行った。含有されるシアル酸数に従ってグリカンを溶出した。全てのサンプルはモノ(1S)、ジ(2S)、トリ(3S)、およびテトラ(4S)シアリル化構造を含有した。シアリル化構造の相対量は以下の比率であった;1S:2S:3S:4S=0.1-4%:35-45%:0.5-8%:0-1%。
【0080】
好ましい例(080019-19)では、モノ(1S)、ジ(2S)、トリ(3S)、およびテトラ(4S)シアリル化構造を含有した。シアリル化構造の相対量は以下の比率であった;1S:2S:3S:4S=0.1-4%:35-45%:0.5-8%:0-1%。
【0081】
実施例9 rhCGの代謝クリアランス速度の測定
α2,3-シアリルトランスフェラーゼを用いて操作したPer.C6組換えhCGサンプル(例えば実施例5a、5b)の代謝クリアランス速度(MCR)を測定するために、意識のあるメス・ラット(クローン毎に3検体)の尾静脈にrhCGをボーラス注射し(サンプルのELISA定量(DRG社、EIA 1288)に基づき、1-10 μg/ラット)、時間=0とした。試験サンプル注射の1、2、4、8、12、24、および32時間後に、尾の先端部から血液サンプル(400μL)を採取した。遠心分離によって血清を回収し、ELISA(DRG社、EIA 1288)によってhCG含量のアッセイを行った。α2,3-シアリルトランスフェラーゼで操作したPer.C6 hCGサンプルのMCRは、半減期が標準物質と同程度であることを示した(図5)。図6は、α2,3-シアリルトランスフェラーゼで操作した他のhCGサンプルの半減期が標準物質と比較して向上されることを示している(図6)。
【0082】
実施例10 USPにかかるhCGバイオアッセイ
hCGバイオアッセイを実施し、hCG特異的活性を測定した。活性の測定はUSP(USP Monographs:Chorionic Gonadotropin, USPC Official 8/1/09-11/30/09)に従い、Ovitrelleを標準物質として用いて行った。Ovitrelleの生体活性は26,000 IU/mgである(Curr Med Res Opin. 2005 Dec; 21(12): 1969 - 76)。許容限界(acceptance limit)は>21,000 IU hCG/mgである。α2,3-シアリルトランスフェラーゼで操作したヒト細胞系由来組換えhCGサンプル(シアル酸含量 19.1 mol/mol、実施例8参照)の生体活性は27,477 IU hCG/mgであった。
【0083】
実施例11 生成および精製の概要
無血清培地中で懸濁培養したPER.C6細胞において組換えhCGを生成させる方法を開発した。方法は以下に記載するが、いくつかのhCG生成PER.C6細胞系に適用される。
【0084】
Lowryら(1976)の方法の変法を用いて、α2,3-クローンから組換えhCGを作製した。
【0085】
PER.C6-hCGを作製するために、細胞系を無血清培地(すなわちExewll 525(JRH Biosciences社))に馴化させた。まず、細胞をT80培養フラスコ中、単層で70-90%の集密度まで培養した。継代の際は、細胞を無血清培地(Excell 525+4mM L-グルタミン)中に再懸濁し、0.3x106細胞/mlの密度とした。25mlの細胞懸濁液を250mlの振とうフラスコに採取し、100rpm、37℃、5% CO2で振とう培養した。細胞密度が>1x106細胞/mlに達した後、細胞を継代して0.2または0.3x106 細胞/mlの密度とし、更に37℃、5% CO2、100rpmで振とう培養した。
【0086】
hCGを生成するために、細胞を無血清培養用培地(すなわちVPRO(JRH Biosciences社))に移した。この培地では、PER.C6細胞は非常に高い細胞密度(バッチ培養で通常、>107細胞/ml)まで増殖できる。まず細胞をExcell 525中、>1x106細胞/mlまで培養し、次いで1000rpmで5分間遠心分離した後、VPRO培地+6mM L-グルタミンに懸濁して1x106細胞/mlとした。その後、振とうフラスコ中、37°C、5% CO2、100rpmで7-10日間培養した。この間に、細胞は>107細胞/mlの密度まで増殖した。細胞生存率が低下し始めた後、培地を回収した。細胞を1000rpmで5分間遠心分離し、上清を用いてhCGの定量および精製を行った。hCGの濃度をELISA(DRG社、EIA 1288)で測定した。
【0087】
その後、Lowryら(1976)の方法の変法を用いてhCGを精製した。これは、DEAEセルロースでのクロマトグラフィー、Sephadex G100でのゲルろ過、ヒドロキシアパタイトでの吸着クロマトグラフィー、および調製用ポリアクリルアミド電気泳動によって行った。
【0088】
全てのクロマトグラフィー操作で、免疫反応性組換えhCGの存在をRIA(DRG社、EIA 1288)およびIEF(実施例6)で確認した。
【0089】
参考文献
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
α2,3-およびα2,6-シアリル化を含有する組換えhCG(rhCG)。
【請求項2】
シアル酸含量が(タンパク質のモル数に対するシアル酸のモル数の比で)15 mol/molまたはそれ以上である、請求項1記載の組換えhCG。
【請求項3】
シアル酸含量が15 mol/molから25 mol/molである、請求項1または2記載の組換えhCG。
【請求項4】
総シアリル化の10%もしくはそれ以上がα2,3-シアリル化であり、および/または、総シアリル化50%もしくはそれ未満がα2,6-シアリル化である、請求項1−3のいずれかに記載される組換えhCG。
【請求項5】
総シアリル化の45%から80%がα2,3-シアリル化である、請求項1−4のいずれかに記載される組換えhCG。
【請求項6】
総シアリル化の20%から55%がα2,6-シアリル化である、請求項1−5のいずれかに記載される組換えhCG。
【請求項7】
α2,8-シアリル化を更に含有する、請求項1−6のいずれかに記載される組換えhCG。
【請求項8】
シアル酸含量が6重量%またはそれ以上である、請求項1−7のいずれかに記載される組換えhCG。
【請求項9】
ヒト細胞系で生成または発現させた、請求項1−8のいずれかに記載される組換えhCG。
【請求項10】
Per.C6細胞系、Per.C6由来細胞系、または改変型Per.C6細胞系で生成または発現させた、請求項1−9のいずれかに記載される組換えhCG。
【請求項11】
細胞系がα2,3-シアリルトランスフェラーゼを用いて改変したものである、請求項9または10記載の組換えhCG。
【請求項12】
内因性シアリルトランスフェラーゼ活性によって生成されたα2,6結合型シアル酸(α2,6-シアリル化)を含有する、請求項9から11のいずれかに記載される組換えhCG。
【請求項13】
ヒト細胞系で発現させた組換えhCG。
【請求項14】
α2,3-およびα2,6-シアリル化を有する、組換えhCG製剤。
【請求項15】
α2,3-シアリル化およびα2,6-シアリル化を有するrhCGを含有する医薬組成物。
【請求項16】
シアル酸含量が(タンパク質のモル数に対するシアル酸のモル数の比で)15 mol/molまたはそれ以上であり、任意に総シアリル化の10%もしくはそれ以上がα2,3-シアリル化であってもよく、および/または、任意に総シアリル化の50%もしくはそれ未満がα2,6-シアリル化であってもよい、請求項13記載の組換えhCGまたは請求項14記載の製剤または請求項15記載の医薬組成物。
【請求項17】
請求項1から13もしくは16のいずれかに記載されるrhCGおよび/または請求項14もしくは16に記載される製剤を含有し、任意にFSHおよび/またはLHを更に含有していてもよい、(必要により不妊症の治療に使用するための)医薬組成物。
【請求項18】
請求項1から13もしくは16のいずれかに記載されるrhCGを含有する組成物および/または請求項14もしくは16に記載される製剤および/または請求項15もしくは17に記載される医薬組成物を被験体に投与する段階を含む、不妊症の治療法。
【請求項19】
請求項1から13もしくは16に記載されるrhCGおよび/または請求項14もしくは16に記載されるrhCG製剤の、不妊症治療薬の製造における使用法。
【請求項20】
請求項1から13もしくは16に記載されるrhCGおよび/または請求項14もしくは16に記載されるrhCGの製造法であって、ヒト細胞系においてrhCGを生成または発現させる段階を含む、上記方法。
【請求項21】
モノ(1S)、ジ(2S)、トリ(3S)、およびテトラ(4S)シアリル化構造を含有する、請求項1から13または16のいずれかに記載される組換えhCG。
【請求項22】
シアリル化構造の相対量が1S:2S:3S:4S=0.2-1:35-40:2.5-7:0.5-1の比率である、請求項21記載の組換えhCG。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−506708(P2013−506708A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532657(P2012−532657)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001854
【国際公開番号】WO2011/042688
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(500297535)フェリング ベスローテン フェンノートシャップ (36)
【Fターム(参考)】