説明

医薬錯体

【課題】エレトリプタン及びその塩の、鼻腔内経路による投与に適し、安定な医薬製剤の提供。
【解決手段】エレトリプタン及び式(I)のシクロデキストリン誘導体の錯体又はその薬学的に許容しうる塩、及びその錯体の製造方法とそれを含む医薬製剤及びその使用。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、エレトリプタンおよびスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンの錯体またはその薬学的に許容しうる塩、およびこのような錯体の製造方法、それを含む医薬製剤およびその使用に関する。
【0002】
3−([1−メチルピロリジン−2(R)−イル]メチル)−5−(2−フェニルスルホニルエチル)−1H−インドールであるエレトリプタンは、WO−A−92/06973号に開示されている。エレトリプタンの好ましい臭化水素酸塩の形は、WO−A−96/06842号に開示されている。WO−A−99/01135号は、エレトリプタンヘミ硫酸塩およびカフェインを含む医薬製剤を開示している。WO−A−00/06161号は、片頭痛再発の予防のためのエレトリプタンの使用を記載している。
【0003】
エレトリプタンは、5HT1B/1D受容体アゴニストであり、片頭痛の治療および片頭痛再発の予防に極めて有効であることが示されている。エレトリプタンは、高血圧症、嘔吐、うつ病、不安、摂食障害、肥満症、薬物乱用、群発性頭痛、疼痛、慢性発作性片頭痛、および血管障害に関連した頭痛の治療用に開示されてもいる。
【0004】
エレトリプタンまたはその塩を鼻腔内経路によって投与するためには、製剤は、刺激のような、鼻粘膜に許容し得ないレベルの作用を生じないことが望まれる。エレトリプタンヘミ硫酸塩およびカフェインを含むWO−A−99/01135号に記載の製剤は、鼻粘膜に刺激性であることが判明している。
【0005】
したがって、本発明の目的は、鼻腔内経路による投与に適する、エレトリプタンまたはその塩の充分に許容される医薬製剤を提供することである。
本発明のもう一つの目的は、非経口、好ましくは、鼻腔内投与に適していて、しかもその薬物が充分な生物学的利用能および迅速な作用開始を有することを可能にする、エレトリプタンまたはその塩の充分に許容される安定な水性医薬製剤を提供することである。
【0006】
WO−A−91/11172号およびWO−A−94/02518号は、スルホアルキルエーテルシクロデキストリン誘導体を開示している。
WO−A−98/02186号は、(a)インドール選択的セロトニン(5−HT1D)アゴニストまたはその薬学的に許容しうる塩および(b)非置換または置換のβ−またはγ−シクロデキストリンの包接錯体を、その医薬組成物と一緒に開示している。
【0007】
本発明者らは、エレトリプタンまたはその塩は、WO−A−91/11172号に開示された種類の若干のスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン誘導体と一緒に錯体を形成することができるということを見出した。この錯体形成は、望ましくないことに且つ予想外に、エレトリプタンまたはその塩の水への溶解度を減少させるが、それは、鼻腔内投与された場合、主として、WO−A−99/01135号に開示されたエレトリプタンの既知のカフェイン製剤およびエレトリプタンの他のシクロデキストリン錯体のどちらと比較しても、それが鼻粘膜への無視しうる刺激作用しか持たないという理由で、予想外に且つ好都合に、充分に許容される錯体を提供する。
【0008】
したがって、本発明は、エレトリプタンおよび式(I)
【0009】
【化2】

(式中、R1a-g、R2a-gおよびR3a-gは、それぞれ独立して、−OHまたは−O(CH24SO3Hであり;
但し、R1a-gの少なくとも一つは−O(CH24SO3Hであるという条件付きである)
を有するシクロデキストリン誘導体の錯体、またはその薬学的に許容しうる塩を提供する。
【0010】
エレトリプタン成分に関連する特に興味深い薬学的に許容しうる塩は、それらの酸付加塩および塩基塩である。適当な酸付加塩は、無毒性塩を形成する酸から形成され、例は、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、コハク酸塩、糖酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびパモエート塩である。臭化水素酸塩およびヘミ硫酸塩を含めた硫酸塩が好適である。適当な塩基塩は、無毒性塩を形成する塩基から形成され、例は、ナトリウム塩、カリウム塩、アルミニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩およびジエタノールアミン塩である。
【0011】
シクロデキストリン環成分に関連する特に興味深い薬学的に許容しうる塩は、基−O(CH24SO3Hの塩基塩、例えば、ナトリウム塩のようなアルカリ金属塩である。
【0012】
適当な塩に関する論評については、Berge et al, J.Pharm.Sci., 66,1-19,1977 を参照されたい。
薬学的に許容しうる塩は、適宜、エレトリプタン、シクロデキストリンまたは錯体、および所望の酸または塩基の溶液を一緒に混合することによって容易に製造することができる。その塩は、溶液から沈澱し、濾過によって集めることができるし、または溶媒の蒸発によって回収することができる。エレトリプタンの塩および/またはシクロデキストリンを別々に製造する場合、これら/これを、錯体の製造に引き続き用いることができる。
【0013】
エレトリプタンの多型またはその塩も、本発明の目的に用いることができる。
好ましくは、式(I)の分子当たりの基−O(CH24SO3Hの平均数は、6.1〜6.9の範囲内、例えば、6.5または約6.5である。
【0014】
存在する−O(CH24SO3Hはそれぞれ、アルカリ金属塩(ナトリウム塩など)の形であるのが好適である。
好ましくは、エレトリプタン:式(I)のシクロデキストリン誘導体のモル比は、1:1〜15:1、最も好ましくは、1:1〜10:1である。
【0015】
好ましくは、エレトリプタンはヘミ硫酸塩の形で存在する。
その錯体は、単独で投与することができるが、一般的には、予定の投与経路および標準的な医薬慣例に関して選択される薬学的に許容しうる賦形剤、希釈剤または担体との混合物で投与されるであろう。
【0016】
例えば、錯体は、即時放出、遅延放出、徐放性、間断放出、制御放出用途の、着香剤または着色剤を含有してよい錠剤、カプセル剤、小卵剤、エリキシル剤、液剤または懸濁剤の形で経口、口腔内または舌下に投与することができる。
【0017】
このような錠剤は、微結晶性セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウムおよびグリシンのような賦形剤;デンプン(好ましくは、トウモロコシ、バレイショまたはタピオカデンプン)、ナトリウムデンプングリコラート、クロスカルメロースナトリウムおよび若干の錯ケイ酸塩のような崩壊剤;およびポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチンおよびアラビアゴムのような造粒結合剤を含有してよい。更に、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリルおよびタルクのような滑沢剤が包含されていてよい。
【0018】
同様の種類の固形組成物は、ゼラチンカプセル剤中の充填剤として用いることもできる。この点で好ましい賦形剤には、ラクトース、デンプン、セルロース、乳糖または高分子量ポリエチレングリコールが含まれる。水性懸濁剤および/またはエリキシル剤に関して、錯体は、種々の甘味剤または着香剤、着色剤または色素と、乳化剤および/または懸濁化剤と、および水、エタノール、プロピレングリコールおよびグリセリンおよびそれらの組合せのような希釈剤と一緒に混合されていてよい。
【0019】
錯体は、非経口で、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、脊髄内、脳室内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内または皮下に投与することもできるし、またはそれを注入法によって投与してよい。それは、他の物質、例えば、その溶液を血液と等張にする充分な塩類またはグルコースを含有してよい滅菌水性液剤の形で最もよく用いられる。それら水性液剤は、必要ならば、適当に(好ましくは、3〜9のpHまで)緩衝化されるべきである。無菌条件下における適当な非経口用製剤の製造は、当業者に周知の標準的な製剤技術によって容易に行われる。
【0020】
ヒト患者への経口および非経口投与に関して、エレトリプタンの1日量レベルは、通常は、0.001〜0.50mg/kg(1回または分割量で)であろう。
【0021】
したがって、錯体を含有する錠剤またはカプセル剤は、1回のまたは一度に2個またはそれ以上の投与に関して、適宜、5〜240mgのエレトリプタンまたはその塩を含有してよい。いずれにせよ、医師が、いずれの個々の患者にも最も適している実際用量を決定するであろうし、それは、具体的な患者の年齢、体重および応答によって異なるであろう。上の用量は、平均的な場合を代表するものである。当然ながら、より高いまたはより低い用量範囲に価値がある個々の場合がありうるが、これは、本発明の範囲内である。
【0022】
錯体は、鼻腔内にまたは吸入によって投与することもでき、便宜上、適当な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA 134A[商標])または1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFA 227EA[商標])のようなヒドロフルオロアルカン、二酸化炭素または他の適当なガスの使用を伴うまたは伴わない加圧容器、ポンプ、アトマイザー、スプレーまたはネブライザーからのエアゾルスプレー提示または乾燥粉末吸入剤の形で、1回用量または多重用量として供給される。加圧エアゾルの場合、その用量単位は、一定の計測量を供給するバルブを与えることによって決定することができる。加圧容器、ポンプ、アトマイザー、スプレーまたはネブライザーは、例えば、滑沢剤、例えば、ソルビタントリオレアートを更に含有してよい溶媒としてエタノールおよび噴射剤の混合物を用いて、錯体の溶液または懸濁液が入っていてよい。吸入器または吹入器で用いるためのカプセル剤およびカートリッジ(例えば、ゼラチン製)は、錯体の粉末配合物およびラクトースまたはデンプンのような適当な粉末基剤を含有して製剤化することができる。
【0023】
エアゾル剤または乾燥粉末製剤は、好ましくは、計測用量または“一吹き”がそれぞれ、患者に供給するための1〜16mgのエレトリプタンを含有するように用意される。
【0024】
或いは、錯体は、坐剤または膣坐剤の形で投与することができるし、またはそれを、ローション剤、液剤、クリーム剤、軟膏剤または散布剤の形で局所に適用することができる。錯体は、例えば、皮膚パッチの使用によって経皮投与することもできる。
【0025】
皮膚への局所適用に関して、錯体は、例えば、次の、鉱油、流動パラフィン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン配合物、乳化性ワックスおよび水の内の1種類またはそれ以上を含む混合物中に懸濁したまたは溶解した錯体を含有する適当な軟膏剤として製剤化することができる。或いは、それは、例えば、次の、鉱油、ソルビタンモノステアラート、ポリエチレングリコール、流動パラフィン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリールアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水の内の1種類またはそれ以上の混合物中に懸濁したまたは溶解した適当なローション剤またはクリーム剤として製剤化することができる。
【0026】
本発明の錯体は、エレトリプタンまたはその塩およびシクロデキストリンまたはその塩の水溶液または水性スラリーから、慣用法によって製造することができる。固形錯体が必要とされる場合、その溶液またはスラリーを、噴霧乾燥または凍結乾燥(リオフィライゼーション)によって乾燥させることができる。或いは、エレトリプタンまたはその塩およびシクロデキストリンまたはその塩を混合し、その粉末混合物を、水を用いて湿らせることができる。次に、その混合物を激しく混合してペーストを形成させ、高温で、好ましくは、減圧下で乾燥させて水を除去することができる。その乾燥した錯体を破砕し、篩にかけて、所望の粒度にすることができる。
【0027】
次に、その固形錯体は、標準法によって医薬製剤として投与するために製剤化することができ、例えば、水性製剤が必要とされる場合、錯体を水中に撹拌しながら溶解させることができる。追加の適当な賦形剤、希釈剤または担体は、配合または混合工程で製剤中に包含させることができる。或いは、本発明の錯体を含む医薬製剤は、エレトリプタンまたはその塩およびシクロデキストリンまたはその塩を、適当な賦形剤、希釈剤または担体と一緒に、直接的に混合することによって製造することができる。
【0028】
錯体は、前運動性剤(prokinetic)(例えば、メトクロプラミド)または制吐薬と一緒に投与することもできる。
本明細書中の治療の意味は全て、治癒的、待期的および予防的処置を含むということは理解されるはずである。
【0029】
好ましくは、錯体は、医薬製剤として、最も好ましくは、水溶液製剤として投与される。
好ましくは、医薬製剤は、非経口投与、例えば、鼻腔内投与用に製剤化される。
【0030】
好ましくは、医薬製剤、最も好ましくは、水性医薬製剤は、次の賦形剤、希釈剤または担体、
(a)酸化防止剤、例えば、クエン酸またはアスコルビン酸;
(b)補助溶媒、例えば、エタノール、グリセロールまたはPEG200−400;および
(c)有機ポリマー、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースのような水溶性有機ポリマー
の内の1種類またはそれ以上を含む。
【0031】
酸化防止剤の存在は、製剤の安定性を増加させる。
有機ポリマーまたは補助溶媒の存在は、生物学的利用能を最適化し、エレトリプタンの吸収および作用開始を増加させる。
【0032】
好ましくは、本発明は、10〜150mg/gのエレトリプタンまたはその塩(好ましくは、ヘミ硫酸塩)および10〜30%重量/重量のスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンを含む医薬製剤、好ましくは、水性医薬製剤を提供する。
【0033】
好ましくは、1%重量/重量以下のクエン酸またはアスコルビン酸などの酸化防止剤が存在しうる。
好ましくは、30%重量/重量以下のエタノール、グリセロールまたはPEG200−400のような補助溶媒、好ましくは、グリセロールが存在しうる。
【0034】
好ましくは、0.5%重量/重量以下の水溶性ポリマー、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースのような有機ポリマー、好ましくは、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルピロリドンが存在しうる。
【0035】
好ましくは、10〜150mg/gのエレトリプタンヘミ硫酸塩が存在する。
好ましくは、20〜110mg/gのエレトリプタンヘミ硫酸塩が存在する。
好ましくは、50〜120mg/gのエレトリプタンヘミ硫酸塩が存在する。
【0036】
好ましくは、10〜30%重量/重量のスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンが存在する。
好ましくは、15〜25%重量/重量のスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンが存在する。
【0037】
好ましくは、0.10〜1.0%重量/重量のアスコルビン酸が存在する。
好ましくは、0.25〜0.80%重量/重量のアスコルビン酸が存在する。
好ましくは、0.30〜0.60%重量/重量のアスコルビン酸が存在する。
【0038】
好ましくは、5.0〜30.0%重量/重量のグリセロールが存在する。
好ましくは、10.0〜25.0%重量/重量のグリセロールが存在する。
好ましくは、10.0〜20.0%重量/重量のグリセロールが存在する。
【0039】
好ましくは、0.05〜0.5%重量/重量のカルボキシメチルセルロースまたはポリビニルピロリドンが存在する。
好ましくは、0.05〜0.2%重量/重量、最も好ましくは、0.1〜0.2%重量/重量のカルボキシメチルセルロースまたはポリビニルピロリドンが存在する。
【0040】
好ましくは、水性医薬製剤は、4.0〜9.0のpHに調整されている。
好ましくは、水性医薬製剤は、4.0〜7.0のpHに調整されている。
好ましくは、水性医薬製剤は、4.0〜5.0のpHに調整されている。
【0041】
次の実施例は、本発明の錯体を含む水性医薬製剤の製造を詳しく説明する。それら製剤は、エレトリプタンヘミ硫酸塩、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、グリセロールまたはポリビニルピロリドンおよびアスコルビン酸を、水(必要な製剤の最終容量の80%である充分な量)に加えることによって製造された。その混合物を撹拌して固体を溶解させ、得られた溶液を、1M水酸化ナトリウム水溶液を用いて必要なpHに調整した。次に、水を加えて、必要な最終容量を得た。用いられたスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンは、シクロデキストリン分子当たり6.5の平均スルホブチルエーテル置換を有し、それぞれのスルホブチルエーテル単位は、そのナトリウム塩として存在した。
【0042】
実施例1
鼻腔内投与に適した製剤は、
100mg/gのエレトリプタンヘミ硫酸塩;
20%重量/重量のスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン;
15%重量/重量のグリセロール;および
0.5%重量/重量のアスコルビン酸
を含む水性製剤であり、
この製剤は、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH4.0〜5.0、好ましくは、約pH4.5に調整される。
【0043】
実施例2
鼻腔内投与に適した製剤は、
80mg/gのエレトリプタンヘミ硫酸塩;
20%重量/重量のスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン;
0.15%重量/重量のポリビニルピロリドン;および
0.5%重量/重量のアスコルビン酸
を含む水性製剤であり、
この組成物は、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH4.0〜5.0、好ましくは、約pH4.5に調整される。
【0044】
実施例3
鼻腔内投与に適した製剤は、
80mg/gのエレトリプタンヘミ硫酸塩;
20%重量/重量のスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン;
20%重量/重量のグリセロール;および
0.7%重量/重量のアスコルビン酸
を含む水性製剤であり、
この製剤は、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH4.0〜5.0、好ましくは、約pH4.5に調整される。
【0045】
実施例4
鼻腔内投与に適した製剤は、
80mg/gのエレトリプタンヘミ硫酸塩;
20%重量/重量のスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン;
0.10%重量/重量のポリビニルピロリドン;および
0.7%重量/重量のアスコルビン酸
を含む水性製剤であり、
この組成物は、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH4.0〜5.0、好ましくは、約pH4.5に調整される。
【0046】
生物学的活性
本発明の錯体の鼻粘膜への刺激作用について、次の方法によって調べることができる。
【0047】
試験溶液を、次のように調製した。
(1)10%wt/wtヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(0.6の平均数のシクロデキストリン分子当たりのヒドロキシプロピル基を含有する)を含有する水溶液;
(2)17%wt/wtの本発明のスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンを含有する水溶液;
(3)10%wt/wtヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(シクロデキストリン分子当たり0.6の平均数のヒドロキシプロピル基を含有する)および50mg/mlのエレトリプタンヘミ硫酸塩を含有する水溶液;および
(4)17%wt/wtの本発明のスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンおよび50mg/mlのエレトリプタンヘミ硫酸塩を含有する水溶液。
【0048】
上の溶液は全て、pH4.2±0.2に調整した。
雌 Sprague-Dawley ラットを、これら実験に用いた。試験動物は、約7週令で、199gの平均体重であった。それぞれの実験を、5匹のラット群について行った。
【0049】
20マイクロリットル容量の試験溶液を、実験群の各ラットの左外鼻孔中に点滴した。各群のラットを、同様の試験溶液を用いて1日1回7日間処置した。各実験群のラットの致死性および臨床的徴候について毎日観察した。それらを、実験第−2日、第1日および第7日に秤量した。実験第8日に、ラットを屠殺し、そして各ラットの気道組織についてのみ、肉眼的および組織病理学的検査を行った。
【0050】
致死が報告されたものはなかった。それら結果は、試験溶液(1)、(2)および(4)が病変を全く生じなかったことを示した。試験溶液(3)は、最小〜軽度の気道上皮の過形成および化生(metaplasia)および管腔浸出液をもたらした。これら知見は、最小〜軽度の鼻孔介刺激の徴候として解釈された。
【0051】
エレトリプタンヘミ硫酸塩および本発明のスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンの錯体を含有する試験溶液(4)は、鼻腔内経路によって投与された場合、鼻粘膜に非刺激性であると結論付けられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレトリプタンおよび式(I)
【化1】

(式中、R1a-g、R2a-gおよびR3a-gは、それぞれ独立して、−OHまたは−O(CH24SO3Hであり;
但し、R1a-gの少なくとも一つは−O(CH24SO3Hであるという条件付きである)
を有するシクロデキストリン誘導体の錯体、またはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項2】
式(I)の誘導体の分子当たりの基−O(CH24SO3Hの平均数が6.1〜6.9の範囲内である請求項1に記載の錯体。
【請求項3】
式(I)の誘導体中に存在する基−O(CH24SO3Hがそれぞれ、アルカリ金属塩の形である請求項1または請求項2に記載の錯体。
【請求項4】
エレトリプタン:式(I)のシクロデキストリン誘導体のモル比が1:1〜15:1である請求項1〜3のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項5】
エレトリプタン:式(I)のシクロデキストリン誘導体のモル比が1:1〜10:1である請求項4に記載の錯体。
【請求項6】
エレトリプタンがヘミ硫酸塩の形で存在する請求項1〜5のいずれか1項に記載の錯体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の錯体および薬学的に許容しうる賦形剤、希釈剤または担体を含む医薬製剤。
【請求項8】
50〜120mg/gのエレトリプタンヘミ硫酸塩が存在する請求項7に記載の製剤。
【請求項9】
15〜25%重量/重量のスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンが存在する請求項7または8に記載の製剤。
【請求項10】
1種類またはそれ以上の酸化防止剤、補助溶媒および有機ポリマーを含む請求項7、8または9に記載の製剤。
【請求項11】
酸化防止剤がアスコルビン酸である請求項10に記載の製剤。
【請求項12】
0.25〜0.80%重量/重量のアスコルビン酸が存在する請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
補助溶媒がグリセロールである請求項10〜12のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項14】
10.0〜25.0%重量/重量のグリセロールが存在する請求項13に記載の製剤。
【請求項15】
有機ポリマーが、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルピロリドンである請求項10〜14のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項16】
0.05〜0.20%重量/重量のカルボキシメチルセルロースまたはポリビニルピロリドンが存在する請求項15に記載の製剤。
【請求項17】
水溶液の形である請求項7〜16のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項18】
4.0〜5.0のpHを有する請求項17に記載の水性製剤。
【請求項19】
非経口投与に適応する請求項7〜18のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項20】
鼻腔内投与に適応する請求項7〜18のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項21】
吸入に適応する請求項7〜18のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項22】
水溶液であって、
80mg/gのエレトリプタンヘミ硫酸塩;
20%重量/重量の請求項1に定義のスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンであって、シクロデキストリン分子当たり6.5の平均スルホブチルエーテル置換を有し、それぞれのスルホブチルエーテル単位がそのナトリウム塩として存在するもの;
20%重量/重量のグリセロール;および
0.7%重量/重量のアスコルビン酸
を含む水溶液であり、
その製剤が、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH4.0〜5.0、好ましくは、約pH4.5に調整されている請求項7に記載の製剤。
【請求項23】
水溶液であって、
80mg/gのエレトリプタンヘミ硫酸塩;
20%重量/重量の請求項1に定義のスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンであって、シクロデキストリン分子当たり6.5の平均スルホブチルエーテル置換を有し、それぞれのスルホブチルエーテル単位がそのナトリウム塩として存在するもの;
0.10%重量/重量のポリビニルピロリドン;および
0.7%重量/重量のアスコルビン酸
を含む水溶液であり;
その組成物が、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH4.0〜5.0、好ましくは、約pH4.5に調整されている請求項7に記載の製剤。
【請求項24】
薬剤として用いるための、請求項1〜6のいずれか1項に記載の錯体または請求項7〜23のいずれか1項に記載のその薬学的に許容しうる製剤。
【請求項25】
5HT1B/1D受容体アゴニストが必要とされる疾患の治療用薬剤の製造のための、請求項1〜6のいずれか1項に記載の錯体または請求項7〜23のいずれか1項に記載のその薬学的に許容しうる製剤の使用。
【請求項26】
片頭痛の治療用または片頭痛再発の予防用の薬剤の製造のための、請求項1〜6のいずれか1項に記載の錯体または請求項7〜23のいずれか1項に記載のその薬学的に許容しうる製剤の使用。
【請求項27】
5HT1B/1D受容体アゴニストが必要とされる疾患を治療する哺乳動物の治療方法であって、有効量の請求項1〜6のいずれか1項に記載の錯体または請求項7〜23のいずれか1項に記載のその薬学的に許容しうる製剤を用いて該哺乳動物を治療することを含む方法。
【請求項28】
片頭痛を治療するまたは片頭痛再発を予防する哺乳動物の治療方法であって、有効量の請求項1〜6のいずれか1項に記載の錯体または請求項7〜23のいずれか1項に記載のその薬学的に許容しうる製剤を用いて該哺乳動物を治療する方法。
【請求項29】
請求項1に記載の錯体の製造方法であって、エレトリプタンまたはその薬学的に許容しうる塩を、シクロデキストリン誘導体またはその薬学的に許容しうる塩と組み合わせることを含む方法。
【請求項30】
請求項7に記載の製剤の製造方法であって、(i)請求項1に記載の錯体かまたは(ii)エレトリプタンまたはその薬学的に許容しうる塩およびシクロデキストリン誘導体またはその薬学的に許容しうる塩を、薬学的に許容しうる賦形剤、希釈剤または担体と組み合わせることを含む方法。

【公開番号】特開2006−257091(P2006−257091A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−111074(P2006−111074)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【分割の表示】特願2001−505950(P2001−505950)の分割
【原出願日】平成12年6月2日(2000.6.2)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】