医薬
多くの治療効果を有するヤギ血清の分析を開示する。調製物は、プロオピオメラノコルチン(POMC)およびコルチコトロピン放出因子(CRF)ペプチド、ならびに、これらの分解ペプチド生成物を含むと同定された。我々は、これらのペプチドおよび調製物を使用した、ガン、多発性硬化症および神経障害を含む病気の治療方法、ならびに、このようなペプチドを含む医薬およびペプチドの製造方法を開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、特に医薬組成物に関する。この医薬は、特に神経障害の治療に適すると考えられるが、多くの他の疾患も本発明により治療することができる。本発明の態様は、また、このような医薬の製造方法、および前記医薬を用いた疾患の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PCT公開WO03/004049号およびWO03/064472号では、多くの驚くべき有益な効果を有する血清組成物に基づいた治療物質および治療法を記載している。これら2種の文献のそれぞれの各内容は、明確な参照によって、完全に組み込まれる。特に、治療物質を調製することができる方法の理解のために、また、治療することができる適応症に関して、読者はそれらを参照されたい。
【0003】
典型的には、ヤギは、H9細胞中で作製したHIV-3Bウイルスライセートで免疫される。結果として生じる血清は、他の疾患の中でも、多発性硬化症に対して活性であると考えられる。血清の作製に関するさらなる詳細については、読者はさらに、「ヤギ血清の作製の実施例(Example of Production of Goat Serum)」という標題のWO03/004049号の3頁および4頁の項を特に参照されたい。この項は、参照により本明細書に組み入れられる。簡単な要約を以下に示す。
【0004】
<血清の作製>
約400ccの血液を、滅菌手法で、ヤギから採血する。ヤギは、いったん血液の量が補充されれば、典型的には、10から14日間で、再び採血することができる。プレ採血方法は、血清の活性成分の産生を刺激するのに有用であるかもしれない。その後、血液を遠心して血清を分離し、血清をろ過して、大きな塊および特定の物質を除去する。その後、血清を、過剰に飽和させた硫酸アンモニウム(4℃で47%溶液)を用いて処理して、抗体および他の物質を沈殿させる。得られる溶液を、Beckman J6M/E遠心分離機を用いて、350rpmで45分間遠心して、その後、上清溶液を除去する。沈殿したイムノグロブリンおよび他の固体物質を、沈殿物を再溶解するのに十分なPBSバッファー(生理用リン酸緩衝液)で再懸濁する。
【0005】
その後、溶液を、4℃で、PBSバッファーに対して、10,000ダルトンの分子量カットオフ値を有する膜分離法に供する。膜分離後に、生成物を0.2ミクロンのフィルターを介してろ過して、滅菌したコンテナーに入れ、タンパク質濃度を4mg/mlに調整する。溶液をバイアルに入れて1回投与量である1mlとし、使用前に-22℃で保存する。この生成物を、本明細書では、血清組成物、組成物または調製物と称し、患者の治療には、適切な経路で(通常は皮下に)組成物を患者へ投与することを含む。
【0006】
免疫原としてのHIV-3Bウイルスライセートの使用は、活性な血清の産生に不可欠であるとは考えられていない;ウイルス培養物の増殖のために使用される、またはこのような増殖に適した培地を免疫原として使用した場合に、適した応答をもたらすことができると考えられる。HIV-3Bを増殖するのに使用するPBMCまたは不死化ガン細胞などの細胞培養増殖培地の上清を、例として上げる。HIVまたは他のウイルスは、組成物を得るための効果的な免疫原を産生するのに必ずしも存在する必要はない。他の適した免疫原は、WO03/0064472号の12頁および13頁が開示されている。
【0007】
パイロジェニック物質(例えば、RIBIまたはフロイントアジュバンド)を、血清中の活性成分の産生を促進するのに使用することができる。他の可能性ある因子としては、動物の日光への曝露があり、日光照射時間(または、日光相当物への曝露)を増すことにより、血清の活性成分レベルを増すことができる。
【0008】
<血清組成物の使用>
組成物は、多くの疾患、特に多発性硬化症に対して有効であると考えられる。関節リウマチなどの炎症性疾患;視神経炎;運動ニューロン疾患;自己免疫疾患;軸索または神経損傷;およびガンの治療に有用である組成物については、既知出版物を参照せよ。組成物は、また、HIV患者においてウイルス量を減少させ、CD4+細胞を増加すると考えられる。
【0009】
組成物によって治療することができる幾つかの他の疾患が開示されている。治療することができる疾患の範囲および特性についての完全な理解のためには、読者は、これらのより早期の出版物を参照せよ。特に、WO03/004049号およびWO03/064472号の中身は、参照によって、特別に組み込まれる。
【0010】
血清組成物が有効であると考えられる疾患の非制限的なリストには、前記に加えて、ガン、特に骨髄腫、メラノーマおよびリンパ腫;心臓血管疾患;ならびに脱髄性および非脱髄性の神経障害を含む。
【0011】
本発明によって治療することができる疾患の例としては、脳血管の虚血性疾患;アルツハイマー病;ハンチントン舞踏病;混合性結合組織疾患;強皮症;アナフィラキシー;敗血症ショック;心臓炎および心内膜炎;創傷治癒;接触性皮膚炎;職業性肺疾患;糸球体腎炎;移植拒絶反応;側頭動脈炎;血管炎性疾患;肝炎;ならびに熱傷が含まれる。これらの疾患はすべて、炎症性の要素を有し得るが、障害の非脱髄性神経の態様に基づいてさらに治療可能であると考えられる。治療することができ、かつ、変性の要素を有すると考えられる、さらなる非脱髄性障害としては、多系統萎縮症;てんかん;筋ジストロフィー;精神分裂病;双極性障害;およびうつが挙げられる。治療することができる他の非脱髄性障害としては、チャネル病;重症筋無力症;悪性新生物に起因する疼痛;慢性疲労症候群;線維筋炎;過敏性腸症候群;作業関連性上肢障害;群発頭痛;片頭痛;および慢性の日常的な頭痛が含まれる。
【0012】
治療することができる脱髄性疾患は、神経系の感染症;神経絞扼および局所性損傷;外傷性脊髄損傷;腕神経叢障害(特発性および外傷性、腕神経炎、パーソナージュ・ターナー(Parsonage Turner)症候群、神経痛性筋萎縮);神経根障害;チャネル病;ならびに疼痛性チックが含まれる。
【0013】
組成物は、狼瘡、乾癬、湿疹、甲状腺炎、および多発性筋炎を含む自己免疫疾患の治療に有用である。
【0014】
組成物は、また、炎症性疾患に対しても有効であると考えられる。
【0015】
組成物は、全ての型の遺伝性運動感覚性神経障害を含む全ての種類の軸索脱髄型の抹消神経障害;シャルコー-マリー-トゥース病(CMT)型CMT1A、CMT1B、CMT2、CMT3(デジェリーヌ ソッタス病)、CMT4(A、B、CおよびD型)、X連鎖性シャルコー-マリー-トゥース病(CMTX);遺伝性圧脆弱性神経障害(HNPP)-ソーセージ様神経障害(Tomaculous neuropathy)とも呼ばれる;難聴を有する遺伝性運動感覚性神経障害-運動制限(HMSNL; Hereditary Motor and Sensory Neuropathy with Deafness - Lom);遺伝性近位筋優位運動神経障害/神経細胞障害(HMSNP; Proximal Hereditary Motor and Sensory Neuropathy/Neuronopathy);遺伝性神経痛性筋萎縮症;遺伝性感覚自立性神経障害(HSAN1、HSAN2、HSAN3(ライリー-デイ症候群または家族性自律神経失調症とも呼ばれる)、HSAN4、HSAN5);家族性アミロイド多発神経障害(I型、II型、III型、IV型);異染色白質ジストロフィー;クラッベ病;ファブリー病;副腎白質ジストロフィー;レフスム病(HMSN IV);タンジェール病;フリードライヒ失調症;脊髄小脳失調症(SCA)の全ての型-SCA1、SCA2、SCA3、SCA4、SCA5、SCA6、SCA7、SCA8、SCA10、SCA11、SCA12、SCA13、SCA14、SCA16;脊髄小脳変性症;コケイン症候群;および巨大軸索神経障害の治療に有用である。
【0016】
組成物は、また、慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP)およびギラン-バレー症候群の治療においても有用である。
【0017】
組成物は、また、分子トロンボスポンジン-1(TSP-1)および血小板第4因子(PF-4)によって引き起こされる抗-血管新生特性も有する。
【0018】
組成物は、また、動物の治療、特に、これらに制限されないが、イヌのアトピー性皮膚炎、イヌの口腔内メラノーマ、およびウマの肺疾患の治療に有効であると考えられる。
【特許文献1】WO03/004049号
【特許文献2】WO03/064472号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
<血清の特性>
血清組成物は、多くの驚くべき効果を示し、非常に研究されているにもかかわらず、今まで、血清の活性成分は単離されていない。このことは、更なる研究のために活性成分を単離すること、および、活性成分の可能性のある代替的な供給源を探索することについて、不都合である。更に、血清を、患者に投与することが必要であり、この場合、血清は、注入することが必要であり、組成物の取り扱い、および加工に対して一定の制限が課される。血清は、プロテアーゼ分解を受けやすい生物活性成分を有すると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
我々は、この度、多くの有望な血清の活性成分を同定した。この同定により、1つまたは複数の活性成分を様々な形態で含む新規の医薬組成物の製造、ならびに、活性成分を使用することにより、前記した、および我々のより早期の特許出願における1つまたは複数の疾患の治療が可能となる。同定により、また、活性成分に基づき、単純に血清それ自身に基づかない様々な病気を治療するための新規の方法を開拓する。
【0021】
本発明は、治療患者において、分子カスケードを誘発する生物活性組成物に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の第一の態様によれば、コルチコトロピン放出因子(CRF)ペプチドを含む医薬組成物を供給する。CRFは、また、コルチコトロピン放出ホルモン(CRH)としても知られている。
【0023】
CRFは、視床下部で産生するペプチドであり、ストレス応答に関与すると考えられている。ヒトCRFは、OMIM(online mendelian inheritance in man, accessible through http://ncbi.nim.nih.gov/)のentry 122560に詳細に開示されている。ヒトCRFのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列も知られており、GENBANK accession number BC011031で入手できる。ヒトCRFの配列およびサイズデータの知識により、当業者は、ヤギCRFを含む非-ヒトCRFについての同等な情報を求めることが可能となる。
【0024】
「CRFペプチド」については、対応する配列、構造、または機能を有する任意のペプチドを意味する。前記したGENBANK entryにおいてヒトCRFとして得られる基準ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列が、ペプチドの構造または機能に影響を与えることなく、ある程度変化することができることは、当業者にとっては明らかであろう。特に、アレル変異および機能変異が、この定義に含まれる。変異は、保存的アミノ酸置換;CRFの断片および誘導体を含むことができる。
【0025】
患者へのCRFの投与により、内因性CRFの産生が刺激され、順に、プロオピオメラノコルチン(POMC)および関連する成分ペプチドの産生が刺激されると考えられる。
【0026】
POMCは、下垂体において(下垂体だけでなく、他の組織、メラノーマなどの特定の腫瘍、および通常の皮膚細胞でも)産生するペプチド(プロホルモン)であり、宿主に対して多くの効果をもたらす一連のコルチコトロピン性ホルモンの前駆体である。POMCは、α、βおよびγメラノサイト刺激ホルモン(MSH);アドレノコルチコトロピン(ACTH);βおよびγリポトロピン(LPH);ならびにβエンドロフィンの前駆体である。これら全てのホルモンは、ただ1つの大きな前駆体POMCから切断され、本明細書においては、「POMC生成物」と称する。
【0027】
好ましくは、医薬組成物は、非ヒトのCRF;好都合には、有蹄類のCRF;最も好ましくは、ヤギのCRFを含む。驚くべきことに、ヤギの血清が、特に生理学的ストレス(採血または免疫など)により刺激を受けたときに、CRFを含むことが同定された。ヤギ血清により、本発明の医薬組成物のためのCRFの便利な供給源が提供される。また、CRFは、CRFの最初の投与によって、患者において内因性のCRF産生がもたらされるという点において、患者において自ら継続する効果を有することができると考えられる;それゆえ、低レベルのCRF初期投与によって、POMCペプチドレベルの増加を含む、患者に対する顕著な効果をもたらしうる。
【0028】
本発明の医薬組成物の投与は、経口または非経口で達成することができる。非経口伝達方法には、局所、動脈内、筋肉内、皮下、髄内、くも膜下腔内、脳室内、静脈内、腹腔内、または経鼻投与が含まれる。活性成分に加えて、このような組成物は、医薬投与に適した調製物への活性成分の加工を容易にする賦形剤および他の成分を含む、医薬的に許容可能な適した担体を含みうる。
【0029】
経口投与のための医薬組成物は、経口投与に適した調剤において当業者に知られた医薬的に許容可能な担体を使用して、調合することができる。このような担体により、錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁物、および対象による消化に適した薬剤として、組成物を調合することが可能となる。
【0030】
活性化合物を固体賦形剤と組み合わせて、場合によって得られた混合物を粉砕し、望むならば適した追加の化合物を添加後に、顆粒の混合物を加工して、タブレットまたは糖衣錠のコアを得ることを介して、経口使用ための医薬組成物を得ることができる。適した賦形剤には、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトールを含む糖類;トウモロコシ、小麦、米、ジャガイモ、または他の植物に由来するデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース;ならびに、アラビアゴムおよびトラガカントゴムを含むゴムなどの炭化水素またはタンパク質フィラーだけでなく、ゼラチンおよびコラーゲンなどのタンパク質が含まれる。望むならば、架橋化ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはそれらの塩などの崩壊剤または可溶化剤を投与することもできる。
【0031】
糖衣錠のコアは、濃縮糖溶液などの適したコーティングを用いて提供することができ、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、ジオキシド、ラッカー溶液、および適した有機溶媒、または溶媒混合物も含むことができる。成分の識別のために、または、活性成分の量を特徴付けるために、色素または顔料を、タブレットまたは糖衣錠のコーティングに加えることができる。
【0032】
経口で使用することができる医薬調製物には、ゼラチンで作製したプッシュフィット型のカプセルだけでなく、ゼラチンで作製した柔らかい密閉カプセル、およびグリセロールまたはソルビトールなどのコーティングが含まれる。プッシュフィット型のカプセルは、ラクトースまたはデンプンなどのフィラーまたはバインダー、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑剤、および場合によっては安定化剤と混合した活性成分を含むことができる。柔らかいカプセルにおいては、活性成分は、脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの適した液体に、安定化剤の存在下または非存在下で、溶解、または懸濁させることができる。
【0033】
非経口投与のための医薬調合物には、活性化合物の水性溶液が含まれる。注入のために、本発明の医薬組成物は、水性溶液、好ましくはHanks溶液、Ringer溶液または緩衝生理食塩水などの生理学的に適合可能な緩衝液において調合することができる。水性懸濁注入物は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランなどの懸濁物の粘度を増す物質を含むことができる。付加的に、活性化合物の懸濁物を、適切な油状注入懸濁物として調製することができる。適した脂肪溶媒またはベヒクルには、ゴマ油、または、エチルオレエートもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステルなどの脂肪油、または、リポソームが含まれる。場合によっては、懸濁物には、組成物の可溶性を高め、高度に濃縮された溶液の調製を可能とするのに適した安定化剤または薬剤も含むことができる。
【0034】
局所または経鼻投与のために、浸透すべき特定の障壁に適した浸透剤を、調合物に使用することができる。
【0035】
本発明の医薬組成物は、この業界で知られた標準的な製造方法に従って、実質的に製造することができる。
【0036】
組成物は、また、患者の様々な細胞による更なるペプチドの放出のカスケードを含むことができる、1つまたは複数のペプチド制御または放出因子を含むことができる。このような追加の因子は、好ましくは、CRFと同じ供給源、特にヤギ血清に由来する。適した因子には、とりわけ、α-HLA、TGF-βおよびIL-10が含まれる。
【0037】
好ましい実施態様においては、組成物は、バソプレシン、βエンドルフィン、およびエンケファリンの1つまたは複数を含むことができる。特定の実施態様においては、組成物は、CRF結合タンパク質、CRF-BPを含むことができる。このタンパク質は、CRFに結合し、患者へのCRFの事後的な放出ための貯蔵庫として作用することができる。
【0038】
組成物は、更に、POMCペプチドまたはPOMC生成物を含むことができる;特定のPOMC生成物は、更なる産生を刺激するために、または、内因性POMCが産生することができる前に望む応答を得るために、患者への投与に役立つ。
【0039】
ヒトPOMCは、OMIM(online mendelian inheritance in man、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/によりアクセス可能)のentry 176830に詳細に開示されている。ヒトPOMCのヌクレオチドおよびアミノ酸配列も知られており、GENBANK accession number BC065832で入手できる。ヒトPOMCにより、分子量31kDaを有するグリコシル化タンパク質前駆体が生じる。
【0040】
「POMCペプチド」については、対応する配列、構造、または機能を有する任意のペプチドを意味する。前記したGENBANK entryにおいてヒトPOMCとして得られる基準ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列が、ペプチドの構造または機能に影響を与えることなく、ある程度変化するかもしれないことは、当業者にとっては明らかであろう。特に、アレル変異および機能変異が、この定義に含まれる。変異は、保存的アミノ酸置換を含むことができる。本明細書において使用される「POMCペプチド」は、MSH、ACTHの少なくとも1つの形態、LPH、βエンドロフィン、met-エンケファリンおよびleu-エンケファリンの少なくとも1つの形態;ならびに、好ましくは、α、βおよびγMSHの全て;ACTH;βおよびγLPH;ならびにβエンドルフィン、met-エンケファリンおよびleu-エンケファリンに対する前駆体として作用する任意のペプチドを指す。
【0041】
POMCペプチドの個々の生成物の医薬的有用性に対する研究が実施されているにも関わらず、POMCそれ自身の投与が、如何なる医学的用途を有していることは実証されていないと思われる。POMCそれ自身は不活性であり、活性を有する前に、その生成物へと切断されなければならない可能性がある。
【0042】
好ましくは、医薬組成物は、非ヒトのPOMC;好都合には、有蹄類のPOMC;最も好ましくは、ヤギのPOMCを含む。POMCは、下垂体で産生され、それ故、血清には少なくとも顕著なレベルでは存在するとは予期されていないのにも関わらず、驚くべきことに、ヤギの血清が、特に生理学的ストレス(採血または免疫など)により刺激を受けたときに、POMC、POMC関連ペプチド、およびPOMCカスケードと関連した分子を含むことが同定されている。ヤギ血清により、本発明の医薬組成物のためのPOMCの便利な供給源が提供される。また、POMCは、POMCの最初の投与によって、患者において内因性のPOMC産生がもたらされるという点において、患者において自ら継続する効果を有することができると考えられる;それゆえ、低レベルのPOMC初期投与によって、患者に顕著な効果をもたらしうる。
【0043】
対象へのPOMCおよびPOMC関連分子の投与により、このペプチドがタンパク質分解を受け、対象に容易に利用できる形態で、1つまたは複数のPOMC生成物が提供されると思われる;また、視床下部-下垂体前葉副腎皮質系(HPA)を刺激する分子カスケードの誘導も生じる。このことは、未精製のヤギ血清において以前に観察された効果と一致する;例えば、舌下投与での迅速な「buzz」効果は、POMCのタンパク質分解によってβエンドロフィンが放出し、その後、粘膜を介して吸収されることが原因である可能性が有る。加えて、αMSHは、IL-10およびTGF-β産生に対して効果を有し、これが抗炎症効果をもたらすことが知られている。このことは、ヤギ血清で観察されたことと一致する。αMSHは、また、炎症誘発性サイトカインの放出を阻害することが知られている。
【0044】
組成物は、また、抗炎症特性を有する。我々は、抗炎症応答の、血清を産生するのに使用したヤギまたは他の動物から患者への受動的な伝達が存在すると考えられる。このことは、様々な活性因子が血清中に存在する組成物を調製するのに使用した精製方法による。組成物は、また、抗炎症効果をもたらす追加の活性成分を含むことができる。
【0045】
前記したように、POMCの最初の投与により(場合によってはCRFおよび/またはバソプレシンとともに)、POMCおよびその調節ペプチドの産生を刺激することができると考えられる。それ故、本発明の更なる態様は、患者への外因性POMCを投与することを含む、患者においてPOMC産生を刺激する方法を提供する。外因性POMCは、好ましくは、非ヒトPOMCであり、より好ましくはヤギPOMCである。便利なことには、投与は皮下である;これにより、患者へ事後的な持続放出のための活性組成物の皮下沈着物がもたらされる。
【0046】
本発明の更なる態様は、POMCペプチドを含む医薬組成物を提供する。
【0047】
本発明の更なる態様により、α、β、およびγメラノサイト刺激ホルモン(MSH);アドレノコルチコトロピン(ACTH);βおよびγリポトロピン(LPH);ならびにβエンドロフィンの2つ以上を含む医薬組成物が提供される。投与におけるPOMCのタンパク質分解により、POMCに由来する個別のホルモンの2つ以上の投与によって得られるのと類似の効果が達成できる可能性がある。医薬組成物は、個別のペプチドとして、または、1つもしくは複数の前駆体分子(例えば、POMCの部分的に分解した生成物)として表されるホルモンを提供することができる。好ましくは、3つ、4つ、5つ、6つ、または7つのホルモンが、(場合によってはCRFとともに)このような分子の連続的な産生のためのカスケードを誘導する医薬組成物に含まれる。様々な成分については、1つまたは複数の成分に結合してこの成分の放出のための沈着物または貯蔵庫として作用する1つまたは複数の担体分子と組み合わせて、提供することができる。担体分子は、また、POMCおよびその関連ペプチドと組み合わせて使用することができる。
【0048】
本発明の更なる態様によれば、多発性硬化症;リウマチ性関節炎;視神経炎;運動ニューロン疾患;狼瘡、乾癬、湿疹、甲状腺炎、および多発性筋炎を含む自己免疫疾患;軸索または神経損傷;ガン、特に骨髄腫、メラノーマおよびリンパ腫;脱髄性および非脱髄性の神経障害;炎症疾患;肥満;神経伝導障害;ならびに性機能障害、特に勃起不全から選択される病気の治療方法であって、治療を必要とする患者にCRFを投与することを含む治療方法を提供する。代替的には、この方法は、POMCを投与することを含みうる。
【0049】
治療物の最適な投薬量は、まだ実証されていない;しかしながら、対象へ、0.01から10mg/kg、より好ましくは0.01から5mg/kg、0.025から2mg/kg、最も好ましくは0.05から1mg/kgの投薬量で治療を行なうことが適切であろう。予備的な研究においては、血清調製物を、総タンパク質濃度4mg/mlで患者に投与した。
【0050】
投与すべき正確な投薬量は、患者の年齢、性別、および体重などの因子、投与の方法および処方、ならびに治療しようとする疾患の性質および重症度に応じて変更してよい。食生活、投与時間、患者の状態、薬物の組合せ、および反応感度など他の因子も考慮してよい。
【0051】
治療を担当する臨床家によって、効果的な治療計画が決定され得る。1回または複数回の投与を行ってよく、典型的には、少なくとも3回、5回、またはそれ以上の一連の投与後に効果が認められる。投与を繰り返すことが、組成物の有益な効果を維持するために望ましいであろう。
【0052】
治療物は、有効な任意の経路、好ましくは皮下注射によって投与することができるが、使用し得る代替経路としては、筋肉内もしくは病巣内注射、経口、エアロゾル、非経口、または局所が挙げられる。
【0053】
治療物は、好ましくは液体製剤として投与されるが、他の製剤も使用してよい。例えば、治療物は、製薬上許容される適切な担体と混合してよく、また、経口、局所、または非経口投与に適した組成で、固形物(錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤など)として調製してもよい。
【0054】
本発明により、また、前記した病気の1つまたは複数の治療のための医薬の製造における、CRFの使用が提供される。また、前記した病気の1つまたは複数の治療のための医薬の製造における、POMCの使用が提供される。CRFまたはPOMCは単離することができ、精製CRFまたはPOMCとすることができるが、前記した様々な他の成分と組み合わせて投与することが好ましい。特に、生物活性な担体タンパク質およびバソプレシンを使用することができる。
【0055】
本発明の更なる態様によれば、CRFを製造する方法であって、ヤギから血液サンプルを得る工程;血清を、残りの血液成分から分離する工程;および、固体物の沈殿により血清を精製する工程を含む方法を提供する。
【0056】
沈殿は、更に、生理学的に許容可能なバッファー、例えばPBSで再懸濁することができる。再懸濁させた沈殿物を、更に、透析またはろ過透析、例えば、分子量50,000Da、好ましくは40,000Da、より好ましくは31,000Daの分子量カットオフ値で精製することができる。
【0057】
沈殿を、更なる精製、例えば抗体または他のアフィニティ精製に供して、CRFを単離することができる。CRFは、CRFに対する抗体により、または、CRF-BPの使用により結合させることができる。
【0058】
血清の分離は、遠心分離によって達成することができる。
【0059】
血清は、ウイルスろ過によって精製することができる;使用する任意の精製方法は、CRF/POMC以外の成分を含む血清の任意の生物活性成分を、不活性化または除去しないことが好ましい。
【0060】
沈殿は、硫酸アンモニア沈殿によって、または、カプリル酸精製によって実施することができる。他の適した沈殿化剤を使用することができる。
【0061】
好ましくは、ヤギは免疫されたヤギである。ヤギの免疫により、CRFおよびバソプレシンがより高いレベルで血清に存在するように、CRFおよびバソプレシンの産生を刺激すると考えられる。この方法は、また、ヤギを免疫化する工程も含むことができる。代替的に、ヤギを、生理学的なストレス、例えば採血に供することができる。
【0062】
また、幾つかの状況下では、免疫原の使用は必要なく、有用な調製物が、非-免疫動物(すなわち、特定の免疫原で予め免疫していない動物)から得ることができると考えられる。通常のヤギは、周囲免疫原に予め曝露されており、このようなヤギが、本発明の組成物の製造に使用することができることは、一般に認められる。それ故、本発明は、また、非-免疫化のヤギから得られた血清を含む医薬組成物を包含することが意図される。本発明は、また、このような組成物または血清の、見出しが「血清組成物の使用」である項目において前記した様々な疾患または病気の治療における使用、または治療のための医薬の製造における使用にまで及ぶ。本発明は、更に、非-免疫化のヤギから得られた血清に由来するPOMCおよび/またはCRFの製造にまで及ぶ。
【0063】
本発明のこれらの態様および他の態様を、添付の図を参照することのみにより、実施例によって記載する。
【実施例】
【0064】
(血清組成物の製造)
約400ccの血液を、滅菌環境下でヤギから取り出す。ヤギは、典型的には、血液の容量が再び満たされると、10から14日で再採血することができる。事前の採血は、血清の活性成分の産生を刺激するのに有用であろう。その後、血液を遠心することにより血清を分離し、血清をろ過して、大きな塊および沈殿物質を除去する。その後、血清を、飽和硫酸ナトリウム(4℃で47%溶液)で処理して、抗体および他の物質を沈殿させる。得られた溶液を、Beckman J6M/E遠心機で、3500rpmで45分間遠心し、その後、上清を除去する。沈殿したイムノグロブリンおよび他の固体物質を、沈殿物を再溶解するのに十分なPBSバッファー(リン酸緩衝生理食塩水)で再懸濁する。
【0065】
その後、溶液を、分子量10,000ダルトンのカットオフ値で、PBSバッファーに対して4℃で透析ろ過に供する。透析ろ過後、生成物を、0.2マイクロフィルターに通して滅菌した容器に入れ、タンパク質濃度を4mg/mlに調整する。溶液をバイアルに入れ、単回投与1mlとして、使用するまで-22℃で保存する。
【0066】
(考察)
血清の効果は、以前に開示されているが、活性成分の実証は、以前には達成されていない。
【0067】
<血清組成物の分析>
組成物サンプルをゲル上でサイズにより分離し、βエンドロフィンに対する抗体を使用してウエスタンブロットを行なった。βエンドルフィンの存在を示す強いシグナルが検出されたが、推定分子量は約31kDaであり、βエンドルフィンの予測サイズよりもかなり大きかった。このことは、より大きなペプチドとしてサンプルに存在していることを示唆していた;そのサイズは、POMCのサイズと一致した。
【0068】
我々は、また、組成物を質量分析に供し、少なくとも2つの、POMC誘導ペプチドであるβエンドルフィンおよびコルチコトロピン関連分子を検出した。CRH-BP(コルチコトロピン放出ホルモン結合タンパク質)も同定した。
【0069】
<図1から4>
POMCペプチドおよびCRF-BPが、Thermofinnegan LCQ質量分析によって、調製物で同定された。CRFは、主に下垂体前葉でACTHの合成および分泌を調節する。CRFおよびCRF-BPに加えて、POMCおよび/またはその成分ペプチドの投与は、POMCペプチドの全身的且つ持続的な濃度上昇をもたらすカスケード効果を開始すると考えられている。CRF-BPは、CRFのための貯蔵庫として作用する能力を有する。
【0070】
図1から4は、夾雑タンパク質からSDS-PAGEによって分離した調製物に由来するトリプシン消化物の質量分析から得られた結果を示す。前記したように、これらの分子の幾つかは、POMCカスケードの誘導因子および調節因子である。より焦点を絞った分析(例えば、ペプチド分画、免疫沈降および濃縮)を使用した更なる調査により、より多くの存在するペプチドが明らかになるであろう。図1は、POMC由来コルチコトロピンの存在を示し、図2は、CRF-BPの存在を示し、図3は、プロエンケファリンAの存在を示し、図4は、プロエンケファリンBの存在を示す。CRF-BPの存在により、調製物が幾つかのCRFを含む一方で、POMCおよび関連ペプチドも明らかに存在していることが示唆される。
【0071】
我々は、また、患者自身の血清に対する、血清組成物を用いた治療の効果を調べた。これらの効果を以下に記す。
【0072】
<治療による患者血清でのタンパク質/ペプチド発現の誘導>
図5は、治療前後の患者の血清の質量分析を示す。2から10kDのスペクトルを比較する。この分子量範囲は、対象とする生物活性ペプチドに関連する。治療前および治療後血清のプロファイルを比較することにより、2から6kD領域でのペプチド発現の明確な差異が見出すことができる。比較を容易にするために、重ねたプロファイルも提供する。
【0073】
図6は、6人の治療した患者における、ペプチド/タンパク質発現の比較を示す。それぞれの患者は、誘導されたペプチド/タンパク質発現のレベルが、特に4kD領域において増加したことを示す。
【0074】
図7aは、ワクチン接種前の非処理ヤギ血清(免疫前プロファイル、上部パネル)、免疫後53日目の非処理血清、および処理済み調製物の質量分析プロファイルを示す。下2つのパネルにおいては、血清のプロファイルが、免疫前のプロファイルと比較して顕著に異なっており、タンパク質発現の誘導が示唆されることを示すことができる。ここで示すプロファイルにより、活性生成物が表され、特定の免疫化/採血方法が、この血清プロファイルの誘導に有用であることが示された。重ねたプロファイルを示す(図7b)。
【0075】
<POMCペプチドの誘導の証拠>
図8は、治療を受ける前後の患者の血清における、ACTHレベルの比較を示す。健康なボランティアに由来する血清および患者に投与した調製物における、ACTHレベルも比較した。血清を1:100に希釈し、調製物と比較して、血清ELISAによって定量した。データは、3回の測定における平均値+/-標準誤差である。治療後はn=5;治療前はn=3;通常のヒト血清はn=5であった。データは、治療によりACTHレベルが増加したことを示す。
【0076】
図9は、治療した患者の血清におけるβエンドルフィンのレベルを、治療前の同じ患者の血清と比較する。健康なボランティアの血清および調製物におけるレベルと比較する。血清を1:100に希釈し、調製物と比較して、血清ELISAによって定量した。データは、3回の測定における平均値+/-標準誤差である。データは、治療によりβエンドルフィンレベルが増加したことを示す。
【0077】
<治療した患者における炎症誘発性TH-1プロファイルから抗炎症性TH-2サイトカインプロファイルへの転換の証拠>
図10は、治療前後の2つの群の患者の血清におけるTGF-βのレベルを示す。2つの群の患者(各群n=3)は、産生したTGF-βの濃度に関して異なる応答を示すが、全ての患者は、治療に応答して血清レベルにおける増加を示した(治療前血清=治療前の患者の血清レベル;2回目治療後および5回目治療後=2回目および5回目の投与後)。データは、治療により、抗炎症性サイトカインTGF-βの濃度増加が誘導されることを示す。
【0078】
図11は、治療前(治療前-血清)および治療後の1つの群の患者の血清における、IL-4のレベルを示す。治療後(2回目治療後)、IL-4のレベルが、患者の血清(n=5)において顕著に増加することを示すことができる。しかしながら、5回目の投与後は、IL-4のレベルは全ての患者で減少するが、治療前よりも高いレベルを維持していた。IL-4は、TH-1細胞に由来する炎症誘導性サイトカインの産生を下方調節することが知られている。全ての患者に見られた濃度の一致した変化は、TH-1からTH-2への転換におけるIL-4の役割と一致するかもしれない。
【0079】
図12は、治療前後の1つの群の患者の血清におけるIL-6のレベルを示す。治療後(2回目治療後および5回目治療後)、IL-6のレベルが、患者の血清(n=4)において減少することを示すことができる。
【0080】
図13は、治療前後の1つの群の患者の血清におけるIFN-γのレベルを示す。治療後(2回目治療後および5回目治療後)、IFN-γのレベルが、患者の血清において減少することを示すことができる。
【0081】
図14は、ヒトの末梢血細胞(PBMC)の処理により、単球亜群における抗炎症性サイトカインIL-10の産生を誘導することを示す。Tリンパ球およびBリンパ球および単球を、ヒトのボランティアから得られたPBMCから分離した。全ての細胞タイプを等量の調製物で16時間処理し、ELISAを用いて、上清をIL-10についてアッセイした。T細胞群によって産生したIL-10レベルは、処理によって影響を受けることは無く、B細胞においては、IL-10の少量の増加のみ誘導されたことを示すことができる。しかしながら、IL-10の顕著な増加が、単球群における処理によって誘導された。全ての測定値は、三回測定値+/-標準偏差で求めた。これらのデータは、少なくとも3つの別々の実験の代表値である。
【0082】
<バソプレシンおよびCRF誘導の証拠>
図15は、調製物、コントロール患者、調製物で治療した患者、および治療前の患者におけるバソプレシンのレベルの比較を示す。図15は、如何なる血清群の間にも顕著な差異は存在しないが、調製物は、患者に応答を誘発するのに十分な顕著なレベルのバソプレシンを含むことを示す。バソプレシンは、相乗的にCRFと作用し、POMCを放出することが知られている。全ての測定値は、三回測定値+/-標準偏差で求めた。これらのデータは、少なくとも3つの別々の実験の代表値である。治療前の患者n=3;治療した患者n=6である。
【0083】
図16は、プラセボと比較して調製物のCRFの存在が増加すること、および、非治療個体と比較した治療した患者における増加を示す;後者は、治療に応答して患者内でCRFの誘導されたことの証拠である。全ての測定値は、三回測定値+/-標準偏差で求めた。これらのデータは、少なくとも3つの別々の実験の代表値である。コントロール個体n=4;治療した患者n=13である。
【0084】
<要約および結論>
予備的ではあるが、これまでの証拠は、主要な活性成分が他の成分と協同で作用するCRFであることと一致しており、CRFが、POMC産生を誘導すると考えられる。また、POMCそれ自身およびPOMC由来ペプチドが、治療剤として使用することができる証拠も存在する。このことは、CRFおよびPOMCについての新規な医薬組成物および使用を示唆するだけでなく、CRFおよびPOMCを使用して治療可能である更なる疾患にも見て取れる。我々は、また、ヤギからのCRFおよびPOMCを産生する便利な方法を提供する。
【0085】
データは、今までのところ、調製物は、CRF、POMCペプチドおよび抗炎症性サイトカイン(IL-10およびTGF-β)を含むだけでなく、患者において、CRFの発現および放出、および、それによりもたらされるPOMCの発現および放出がもたらされることが示唆され、これにより、患者の免疫プロファイルを、TH-1炎症性プロファイルから圧倒的なTH-2抗炎症性プロファイルへと転換させる。
【0086】
組成物の効果の他の結果は、活性成分がPOMC産生を誘導するCRFであることと一致する。例えば、白血球接着に対する効果は、βエンドルフィンに起因するであろう。血清調製物は、ヒトPBMCにIL-10を増加させる;αMSHは、IL-10産生に影響を与える。神経伝導および神経保護作用に対する効果は、ACTHおよびバソプレシンに起因するであろう;食欲に対する効果は、αMSHが原因であろう。調製物それ自身は、また、顕著なレベルのIL-10およびTGF-βも含む(データは示さず)。
【0087】
αMSHは、全ての主要な形態の炎症において有効な抗炎症効果を有し、TNF-αおよびIL1-βなどの炎症性サイトカインの効果を中和する。サイトカインシステムおよびPOMCシステムとの間にはクロストークが存在し、これは、組成物で治療した患者で観察され、炎症性サイトカインの減少、ならびに、IL-10およびTGF-βのレベルの上昇を含むTH-2抗炎症サイトカインプロファイルの樹立(治療期間にわたり維持された)をもたらした。我々は、また、血清調製物において、IL1-βのレベルが上昇することを同定した。
【0088】
血清調製物は、以前から、タンパク質分解に非常に敏感であることが見出されていた;このことは、POMCが投与によりタンパク質分解され、個々のホルモンをもたらすが、更なる分解により活性が消失してしまうという理論と一致する。特に、αMSHは、末端のトリペプチド配列が取り除かれると、顕著に活性を減少させると考えられている;再度、このことは、POMCを含む活性成分と一致する。調製物それ自身は、その活性成分の寿命が短いので、その性質上不活性であるが、強力な効果を示す。
【0089】
我々は、また、血清が白血球による一酸化窒素産生を調節することを示唆する実験も行なった;このことは、βエンドルフィンの効果と一致する。我々は、また、血清がPHA-誘導性PBMC増殖を阻害すると考えており、このことは、血清の免疫調節効果についての説明を示唆する。我々は、また、調製物の存在下での、LPS-誘導性刺激および混合リンパ球応答へのPBMCの応答が減少することを見出した(データを示さず)。
【0090】
調製物は、また、ヒトの脳の小グリア細胞においてチロシンリン酸化を誘導することができ、NFκB経路を調節することをウェスタンブロッティングによって見出した(データを示さず)。NFκβは、炎症性サイトカインの調節に関与する遺伝子の転写を調節することが知られており、それゆえ、NFκBの阻害は、自己免疫疾患において炎症性サイトカイン応答を減少させ、炎症応答を減少させるように作用するであろう。このことを調べるための更なる実験を実施中である。
【0091】
幾つかのPOMCペプチドについての受容体(MCR3およびMCR4)が、視神経を形成する網膜の神経節細胞に見出されており、治療後に産生するPOMCペプチドによって刺激されることができる。このことにより、以前から記載されている視神経炎を患うMP患者が経験した視力の迅速な回復の幾つかが説明される。ACTHが、20から30分もの短い時間で効果をもたらすことができるコルチコステロイド経路を誘導することが知られている。
【0092】
予備的なデータは、調製物におけるペプチドの濃度では、患者の血液容量での希釈後においては、治療応答を誘発するには不十分であろうことを示唆する。しかしながら、調製物を、局所的に作用させ(皮下ボーラスで注入するように)、治療した患者において生物活性ペプチドの合成および放出を誘発する生物化学的カスケードを誘導することができた。例えば、HPAにおいて受容体と競合することによる、または分子をブロックすることによる、調製物と相互作用する任意な医科的治療は、避けるべきであると、現在、知られている。
【0093】
この仮説の裏づけとして、調製物の質量分析により、そのうちの幾つかがコルチコトロピンシステムの誘導および調節に関与している更なる分子を同定した:すなわち、CRH結合タンパク質およびleu-エンケファリン、コルチコトロピン-リポトロピン前駆体およびプロ-エンケファリンA前駆体を同定した(図1から4を参照)。加えて、恐らくはより重要なことに、我々は、2つの主要なPOMCペプチドが、治療した患者の血清において、治療前のレベルと比較して、そして健康なコントロールボランティアと比較しても、顕著に上方調節されることを見出した。この知見は、免疫学的データとともに、この治療が患者におけるPOMCペプチドの発現および放出を誘導し、その後に、患者の免疫学的プロファイルをTH-1炎症性プロファイルからTH-2抗-炎症性プロファイルへと転換することを示唆する。患者におけるカスケードメカニズムの更なる解明は、現在のところ、調査中である。
【0094】
調製物が、本来は抗炎症性であるが、完全には炎症応答を阻害しないことは注目すべきである。我々のデータは、調製物が、自己免疫疾患に見られる好ましくないTH-1サイトカインプロファイルから、より好ましいバランスの取れたサイトカインレベルへ転換を誘導することを示唆する。この誘導は、TH-1ネットワークがオフになるので、治療後の最初に、迅速な抗-炎症性TH-2転換として現れる。治療後に、TH-1ネットワークが、低いレベルではあるが、動き出す。
【0095】
腫瘍に対する血清調製物の報告した効果により、我々は、血清の抗血管新生効果の可能性を導き出した。この点に関しては、タンパク質トロンボスポンジン-1(TSP-1)および血小板第4因子(PF-4)は、SDS-PAGEゲルに由来するトリプシン分解物の質量分析により、調製物において同定した。ペプチド同定のためのBiowork Browserを用いたコンピューターデータベースのサーチにより、ヒト種を含む幾つかの種にまたがって強いマッチが示された。調製物のTSP-1およびPF-4タンパク質含量の正確な定量は、いまだに確立されていないが、SDS-PAGEゲル上のタンパク質の可視化されたバンドの特徴は、タンパク質が生物学的に顕著な量(ナノグラムを超える)で存在していることを示す。
【0096】
調製物の仮説的な成分の要約、およびその作用機構を、図17に示す。調製物は、ある程度のCRF-BP、βエンドルフィン、バソプレシン、およびエンケファリンとともに、CRFを含むと考えられる。βドンドルフィンおよびエンケファリンが行なうように、CRFは、患者において更なるCRFの産生を誘導する。内因性CRFが、POMCの誘導を導き、これにより、他のACTHの中で、αMSHおよびβエンドルフィンを引き起こす。この最後の生成物は、フィードバックループで作用し、低いレベルでは更なるCRF放出を刺激するのに対して、高いレベルではCRF放出を阻害する。この全体的なCRF/POMCカスケードは、患者における免疫学的転換を誘導すると考えられ、これにより、様々な病気における驚くべき有益な効果を明らかとすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】図1は、血清組成物のトリプシン分解物の質量分析を示す。
【図2】図2は、血清組成物のトリプシン分解物の質量分析を示す。
【図3】図3は、血清組成物のトリプシン分解物の質量分析を示す。
【図4】図4は、血清組成物のトリプシン分解物の質量分析を示す。
【図5】図5は、組成物を用いた治療前後の患者血清の質量分析を示す。
【図6】図6は、組成物を用いた治療前後の患者血清の質量分析を示す。
【図7】図7は、組成物を用いた治療前後の患者血清の質量分析を示す。
【図8】図8は、組成物を用いた治療によるPOMCペプチドの誘導分析を示す。
【図9】図9は、組成物を用いた治療によるPOMCペプチドの誘導分析を示す。
【図10】図10は、組成物を用いた治療後の患者の炎症プロファイルにおける転換のための証拠を示す。
【図11】図11は、組成物を用いた治療後の患者の炎症プロファイルにおける転換のための証拠を示す。
【図12】図12は、組成物を用いた治療後の患者の炎症プロファイルにおける転換のための証拠を示す。
【図13】図13は、組成物を用いた治療後の患者の炎症プロファイルにおける転換のための証拠を示す。
【図14】図14は、組成物を用いた治療後の患者の炎症プロファイルにおける転換のための証拠を示す。
【図15】図15は、ヒト血清および組成物におけるバソプレシンのレベルを示す。
【図16】図16は、ヒト血清および組成物におけるCRFのレベルを示す。
【図17】図17は、組成物の提案されたエレメントおよびその作用機構の要約図を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、特に医薬組成物に関する。この医薬は、特に神経障害の治療に適すると考えられるが、多くの他の疾患も本発明により治療することができる。本発明の態様は、また、このような医薬の製造方法、および前記医薬を用いた疾患の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PCT公開WO03/004049号およびWO03/064472号では、多くの驚くべき有益な効果を有する血清組成物に基づいた治療物質および治療法を記載している。これら2種の文献のそれぞれの各内容は、明確な参照によって、完全に組み込まれる。特に、治療物質を調製することができる方法の理解のために、また、治療することができる適応症に関して、読者はそれらを参照されたい。
【0003】
典型的には、ヤギは、H9細胞中で作製したHIV-3Bウイルスライセートで免疫される。結果として生じる血清は、他の疾患の中でも、多発性硬化症に対して活性であると考えられる。血清の作製に関するさらなる詳細については、読者はさらに、「ヤギ血清の作製の実施例(Example of Production of Goat Serum)」という標題のWO03/004049号の3頁および4頁の項を特に参照されたい。この項は、参照により本明細書に組み入れられる。簡単な要約を以下に示す。
【0004】
<血清の作製>
約400ccの血液を、滅菌手法で、ヤギから採血する。ヤギは、いったん血液の量が補充されれば、典型的には、10から14日間で、再び採血することができる。プレ採血方法は、血清の活性成分の産生を刺激するのに有用であるかもしれない。その後、血液を遠心して血清を分離し、血清をろ過して、大きな塊および特定の物質を除去する。その後、血清を、過剰に飽和させた硫酸アンモニウム(4℃で47%溶液)を用いて処理して、抗体および他の物質を沈殿させる。得られる溶液を、Beckman J6M/E遠心分離機を用いて、350rpmで45分間遠心して、その後、上清溶液を除去する。沈殿したイムノグロブリンおよび他の固体物質を、沈殿物を再溶解するのに十分なPBSバッファー(生理用リン酸緩衝液)で再懸濁する。
【0005】
その後、溶液を、4℃で、PBSバッファーに対して、10,000ダルトンの分子量カットオフ値を有する膜分離法に供する。膜分離後に、生成物を0.2ミクロンのフィルターを介してろ過して、滅菌したコンテナーに入れ、タンパク質濃度を4mg/mlに調整する。溶液をバイアルに入れて1回投与量である1mlとし、使用前に-22℃で保存する。この生成物を、本明細書では、血清組成物、組成物または調製物と称し、患者の治療には、適切な経路で(通常は皮下に)組成物を患者へ投与することを含む。
【0006】
免疫原としてのHIV-3Bウイルスライセートの使用は、活性な血清の産生に不可欠であるとは考えられていない;ウイルス培養物の増殖のために使用される、またはこのような増殖に適した培地を免疫原として使用した場合に、適した応答をもたらすことができると考えられる。HIV-3Bを増殖するのに使用するPBMCまたは不死化ガン細胞などの細胞培養増殖培地の上清を、例として上げる。HIVまたは他のウイルスは、組成物を得るための効果的な免疫原を産生するのに必ずしも存在する必要はない。他の適した免疫原は、WO03/0064472号の12頁および13頁が開示されている。
【0007】
パイロジェニック物質(例えば、RIBIまたはフロイントアジュバンド)を、血清中の活性成分の産生を促進するのに使用することができる。他の可能性ある因子としては、動物の日光への曝露があり、日光照射時間(または、日光相当物への曝露)を増すことにより、血清の活性成分レベルを増すことができる。
【0008】
<血清組成物の使用>
組成物は、多くの疾患、特に多発性硬化症に対して有効であると考えられる。関節リウマチなどの炎症性疾患;視神経炎;運動ニューロン疾患;自己免疫疾患;軸索または神経損傷;およびガンの治療に有用である組成物については、既知出版物を参照せよ。組成物は、また、HIV患者においてウイルス量を減少させ、CD4+細胞を増加すると考えられる。
【0009】
組成物によって治療することができる幾つかの他の疾患が開示されている。治療することができる疾患の範囲および特性についての完全な理解のためには、読者は、これらのより早期の出版物を参照せよ。特に、WO03/004049号およびWO03/064472号の中身は、参照によって、特別に組み込まれる。
【0010】
血清組成物が有効であると考えられる疾患の非制限的なリストには、前記に加えて、ガン、特に骨髄腫、メラノーマおよびリンパ腫;心臓血管疾患;ならびに脱髄性および非脱髄性の神経障害を含む。
【0011】
本発明によって治療することができる疾患の例としては、脳血管の虚血性疾患;アルツハイマー病;ハンチントン舞踏病;混合性結合組織疾患;強皮症;アナフィラキシー;敗血症ショック;心臓炎および心内膜炎;創傷治癒;接触性皮膚炎;職業性肺疾患;糸球体腎炎;移植拒絶反応;側頭動脈炎;血管炎性疾患;肝炎;ならびに熱傷が含まれる。これらの疾患はすべて、炎症性の要素を有し得るが、障害の非脱髄性神経の態様に基づいてさらに治療可能であると考えられる。治療することができ、かつ、変性の要素を有すると考えられる、さらなる非脱髄性障害としては、多系統萎縮症;てんかん;筋ジストロフィー;精神分裂病;双極性障害;およびうつが挙げられる。治療することができる他の非脱髄性障害としては、チャネル病;重症筋無力症;悪性新生物に起因する疼痛;慢性疲労症候群;線維筋炎;過敏性腸症候群;作業関連性上肢障害;群発頭痛;片頭痛;および慢性の日常的な頭痛が含まれる。
【0012】
治療することができる脱髄性疾患は、神経系の感染症;神経絞扼および局所性損傷;外傷性脊髄損傷;腕神経叢障害(特発性および外傷性、腕神経炎、パーソナージュ・ターナー(Parsonage Turner)症候群、神経痛性筋萎縮);神経根障害;チャネル病;ならびに疼痛性チックが含まれる。
【0013】
組成物は、狼瘡、乾癬、湿疹、甲状腺炎、および多発性筋炎を含む自己免疫疾患の治療に有用である。
【0014】
組成物は、また、炎症性疾患に対しても有効であると考えられる。
【0015】
組成物は、全ての型の遺伝性運動感覚性神経障害を含む全ての種類の軸索脱髄型の抹消神経障害;シャルコー-マリー-トゥース病(CMT)型CMT1A、CMT1B、CMT2、CMT3(デジェリーヌ ソッタス病)、CMT4(A、B、CおよびD型)、X連鎖性シャルコー-マリー-トゥース病(CMTX);遺伝性圧脆弱性神経障害(HNPP)-ソーセージ様神経障害(Tomaculous neuropathy)とも呼ばれる;難聴を有する遺伝性運動感覚性神経障害-運動制限(HMSNL; Hereditary Motor and Sensory Neuropathy with Deafness - Lom);遺伝性近位筋優位運動神経障害/神経細胞障害(HMSNP; Proximal Hereditary Motor and Sensory Neuropathy/Neuronopathy);遺伝性神経痛性筋萎縮症;遺伝性感覚自立性神経障害(HSAN1、HSAN2、HSAN3(ライリー-デイ症候群または家族性自律神経失調症とも呼ばれる)、HSAN4、HSAN5);家族性アミロイド多発神経障害(I型、II型、III型、IV型);異染色白質ジストロフィー;クラッベ病;ファブリー病;副腎白質ジストロフィー;レフスム病(HMSN IV);タンジェール病;フリードライヒ失調症;脊髄小脳失調症(SCA)の全ての型-SCA1、SCA2、SCA3、SCA4、SCA5、SCA6、SCA7、SCA8、SCA10、SCA11、SCA12、SCA13、SCA14、SCA16;脊髄小脳変性症;コケイン症候群;および巨大軸索神経障害の治療に有用である。
【0016】
組成物は、また、慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP)およびギラン-バレー症候群の治療においても有用である。
【0017】
組成物は、また、分子トロンボスポンジン-1(TSP-1)および血小板第4因子(PF-4)によって引き起こされる抗-血管新生特性も有する。
【0018】
組成物は、また、動物の治療、特に、これらに制限されないが、イヌのアトピー性皮膚炎、イヌの口腔内メラノーマ、およびウマの肺疾患の治療に有効であると考えられる。
【特許文献1】WO03/004049号
【特許文献2】WO03/064472号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
<血清の特性>
血清組成物は、多くの驚くべき効果を示し、非常に研究されているにもかかわらず、今まで、血清の活性成分は単離されていない。このことは、更なる研究のために活性成分を単離すること、および、活性成分の可能性のある代替的な供給源を探索することについて、不都合である。更に、血清を、患者に投与することが必要であり、この場合、血清は、注入することが必要であり、組成物の取り扱い、および加工に対して一定の制限が課される。血清は、プロテアーゼ分解を受けやすい生物活性成分を有すると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
我々は、この度、多くの有望な血清の活性成分を同定した。この同定により、1つまたは複数の活性成分を様々な形態で含む新規の医薬組成物の製造、ならびに、活性成分を使用することにより、前記した、および我々のより早期の特許出願における1つまたは複数の疾患の治療が可能となる。同定により、また、活性成分に基づき、単純に血清それ自身に基づかない様々な病気を治療するための新規の方法を開拓する。
【0021】
本発明は、治療患者において、分子カスケードを誘発する生物活性組成物に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の第一の態様によれば、コルチコトロピン放出因子(CRF)ペプチドを含む医薬組成物を供給する。CRFは、また、コルチコトロピン放出ホルモン(CRH)としても知られている。
【0023】
CRFは、視床下部で産生するペプチドであり、ストレス応答に関与すると考えられている。ヒトCRFは、OMIM(online mendelian inheritance in man, accessible through http://ncbi.nim.nih.gov/)のentry 122560に詳細に開示されている。ヒトCRFのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列も知られており、GENBANK accession number BC011031で入手できる。ヒトCRFの配列およびサイズデータの知識により、当業者は、ヤギCRFを含む非-ヒトCRFについての同等な情報を求めることが可能となる。
【0024】
「CRFペプチド」については、対応する配列、構造、または機能を有する任意のペプチドを意味する。前記したGENBANK entryにおいてヒトCRFとして得られる基準ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列が、ペプチドの構造または機能に影響を与えることなく、ある程度変化することができることは、当業者にとっては明らかであろう。特に、アレル変異および機能変異が、この定義に含まれる。変異は、保存的アミノ酸置換;CRFの断片および誘導体を含むことができる。
【0025】
患者へのCRFの投与により、内因性CRFの産生が刺激され、順に、プロオピオメラノコルチン(POMC)および関連する成分ペプチドの産生が刺激されると考えられる。
【0026】
POMCは、下垂体において(下垂体だけでなく、他の組織、メラノーマなどの特定の腫瘍、および通常の皮膚細胞でも)産生するペプチド(プロホルモン)であり、宿主に対して多くの効果をもたらす一連のコルチコトロピン性ホルモンの前駆体である。POMCは、α、βおよびγメラノサイト刺激ホルモン(MSH);アドレノコルチコトロピン(ACTH);βおよびγリポトロピン(LPH);ならびにβエンドロフィンの前駆体である。これら全てのホルモンは、ただ1つの大きな前駆体POMCから切断され、本明細書においては、「POMC生成物」と称する。
【0027】
好ましくは、医薬組成物は、非ヒトのCRF;好都合には、有蹄類のCRF;最も好ましくは、ヤギのCRFを含む。驚くべきことに、ヤギの血清が、特に生理学的ストレス(採血または免疫など)により刺激を受けたときに、CRFを含むことが同定された。ヤギ血清により、本発明の医薬組成物のためのCRFの便利な供給源が提供される。また、CRFは、CRFの最初の投与によって、患者において内因性のCRF産生がもたらされるという点において、患者において自ら継続する効果を有することができると考えられる;それゆえ、低レベルのCRF初期投与によって、POMCペプチドレベルの増加を含む、患者に対する顕著な効果をもたらしうる。
【0028】
本発明の医薬組成物の投与は、経口または非経口で達成することができる。非経口伝達方法には、局所、動脈内、筋肉内、皮下、髄内、くも膜下腔内、脳室内、静脈内、腹腔内、または経鼻投与が含まれる。活性成分に加えて、このような組成物は、医薬投与に適した調製物への活性成分の加工を容易にする賦形剤および他の成分を含む、医薬的に許容可能な適した担体を含みうる。
【0029】
経口投与のための医薬組成物は、経口投与に適した調剤において当業者に知られた医薬的に許容可能な担体を使用して、調合することができる。このような担体により、錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁物、および対象による消化に適した薬剤として、組成物を調合することが可能となる。
【0030】
活性化合物を固体賦形剤と組み合わせて、場合によって得られた混合物を粉砕し、望むならば適した追加の化合物を添加後に、顆粒の混合物を加工して、タブレットまたは糖衣錠のコアを得ることを介して、経口使用ための医薬組成物を得ることができる。適した賦形剤には、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトールを含む糖類;トウモロコシ、小麦、米、ジャガイモ、または他の植物に由来するデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース;ならびに、アラビアゴムおよびトラガカントゴムを含むゴムなどの炭化水素またはタンパク質フィラーだけでなく、ゼラチンおよびコラーゲンなどのタンパク質が含まれる。望むならば、架橋化ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはそれらの塩などの崩壊剤または可溶化剤を投与することもできる。
【0031】
糖衣錠のコアは、濃縮糖溶液などの適したコーティングを用いて提供することができ、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、ジオキシド、ラッカー溶液、および適した有機溶媒、または溶媒混合物も含むことができる。成分の識別のために、または、活性成分の量を特徴付けるために、色素または顔料を、タブレットまたは糖衣錠のコーティングに加えることができる。
【0032】
経口で使用することができる医薬調製物には、ゼラチンで作製したプッシュフィット型のカプセルだけでなく、ゼラチンで作製した柔らかい密閉カプセル、およびグリセロールまたはソルビトールなどのコーティングが含まれる。プッシュフィット型のカプセルは、ラクトースまたはデンプンなどのフィラーまたはバインダー、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑剤、および場合によっては安定化剤と混合した活性成分を含むことができる。柔らかいカプセルにおいては、活性成分は、脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの適した液体に、安定化剤の存在下または非存在下で、溶解、または懸濁させることができる。
【0033】
非経口投与のための医薬調合物には、活性化合物の水性溶液が含まれる。注入のために、本発明の医薬組成物は、水性溶液、好ましくはHanks溶液、Ringer溶液または緩衝生理食塩水などの生理学的に適合可能な緩衝液において調合することができる。水性懸濁注入物は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランなどの懸濁物の粘度を増す物質を含むことができる。付加的に、活性化合物の懸濁物を、適切な油状注入懸濁物として調製することができる。適した脂肪溶媒またはベヒクルには、ゴマ油、または、エチルオレエートもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステルなどの脂肪油、または、リポソームが含まれる。場合によっては、懸濁物には、組成物の可溶性を高め、高度に濃縮された溶液の調製を可能とするのに適した安定化剤または薬剤も含むことができる。
【0034】
局所または経鼻投与のために、浸透すべき特定の障壁に適した浸透剤を、調合物に使用することができる。
【0035】
本発明の医薬組成物は、この業界で知られた標準的な製造方法に従って、実質的に製造することができる。
【0036】
組成物は、また、患者の様々な細胞による更なるペプチドの放出のカスケードを含むことができる、1つまたは複数のペプチド制御または放出因子を含むことができる。このような追加の因子は、好ましくは、CRFと同じ供給源、特にヤギ血清に由来する。適した因子には、とりわけ、α-HLA、TGF-βおよびIL-10が含まれる。
【0037】
好ましい実施態様においては、組成物は、バソプレシン、βエンドルフィン、およびエンケファリンの1つまたは複数を含むことができる。特定の実施態様においては、組成物は、CRF結合タンパク質、CRF-BPを含むことができる。このタンパク質は、CRFに結合し、患者へのCRFの事後的な放出ための貯蔵庫として作用することができる。
【0038】
組成物は、更に、POMCペプチドまたはPOMC生成物を含むことができる;特定のPOMC生成物は、更なる産生を刺激するために、または、内因性POMCが産生することができる前に望む応答を得るために、患者への投与に役立つ。
【0039】
ヒトPOMCは、OMIM(online mendelian inheritance in man、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/によりアクセス可能)のentry 176830に詳細に開示されている。ヒトPOMCのヌクレオチドおよびアミノ酸配列も知られており、GENBANK accession number BC065832で入手できる。ヒトPOMCにより、分子量31kDaを有するグリコシル化タンパク質前駆体が生じる。
【0040】
「POMCペプチド」については、対応する配列、構造、または機能を有する任意のペプチドを意味する。前記したGENBANK entryにおいてヒトPOMCとして得られる基準ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列が、ペプチドの構造または機能に影響を与えることなく、ある程度変化するかもしれないことは、当業者にとっては明らかであろう。特に、アレル変異および機能変異が、この定義に含まれる。変異は、保存的アミノ酸置換を含むことができる。本明細書において使用される「POMCペプチド」は、MSH、ACTHの少なくとも1つの形態、LPH、βエンドロフィン、met-エンケファリンおよびleu-エンケファリンの少なくとも1つの形態;ならびに、好ましくは、α、βおよびγMSHの全て;ACTH;βおよびγLPH;ならびにβエンドルフィン、met-エンケファリンおよびleu-エンケファリンに対する前駆体として作用する任意のペプチドを指す。
【0041】
POMCペプチドの個々の生成物の医薬的有用性に対する研究が実施されているにも関わらず、POMCそれ自身の投与が、如何なる医学的用途を有していることは実証されていないと思われる。POMCそれ自身は不活性であり、活性を有する前に、その生成物へと切断されなければならない可能性がある。
【0042】
好ましくは、医薬組成物は、非ヒトのPOMC;好都合には、有蹄類のPOMC;最も好ましくは、ヤギのPOMCを含む。POMCは、下垂体で産生され、それ故、血清には少なくとも顕著なレベルでは存在するとは予期されていないのにも関わらず、驚くべきことに、ヤギの血清が、特に生理学的ストレス(採血または免疫など)により刺激を受けたときに、POMC、POMC関連ペプチド、およびPOMCカスケードと関連した分子を含むことが同定されている。ヤギ血清により、本発明の医薬組成物のためのPOMCの便利な供給源が提供される。また、POMCは、POMCの最初の投与によって、患者において内因性のPOMC産生がもたらされるという点において、患者において自ら継続する効果を有することができると考えられる;それゆえ、低レベルのPOMC初期投与によって、患者に顕著な効果をもたらしうる。
【0043】
対象へのPOMCおよびPOMC関連分子の投与により、このペプチドがタンパク質分解を受け、対象に容易に利用できる形態で、1つまたは複数のPOMC生成物が提供されると思われる;また、視床下部-下垂体前葉副腎皮質系(HPA)を刺激する分子カスケードの誘導も生じる。このことは、未精製のヤギ血清において以前に観察された効果と一致する;例えば、舌下投与での迅速な「buzz」効果は、POMCのタンパク質分解によってβエンドロフィンが放出し、その後、粘膜を介して吸収されることが原因である可能性が有る。加えて、αMSHは、IL-10およびTGF-β産生に対して効果を有し、これが抗炎症効果をもたらすことが知られている。このことは、ヤギ血清で観察されたことと一致する。αMSHは、また、炎症誘発性サイトカインの放出を阻害することが知られている。
【0044】
組成物は、また、抗炎症特性を有する。我々は、抗炎症応答の、血清を産生するのに使用したヤギまたは他の動物から患者への受動的な伝達が存在すると考えられる。このことは、様々な活性因子が血清中に存在する組成物を調製するのに使用した精製方法による。組成物は、また、抗炎症効果をもたらす追加の活性成分を含むことができる。
【0045】
前記したように、POMCの最初の投与により(場合によってはCRFおよび/またはバソプレシンとともに)、POMCおよびその調節ペプチドの産生を刺激することができると考えられる。それ故、本発明の更なる態様は、患者への外因性POMCを投与することを含む、患者においてPOMC産生を刺激する方法を提供する。外因性POMCは、好ましくは、非ヒトPOMCであり、より好ましくはヤギPOMCである。便利なことには、投与は皮下である;これにより、患者へ事後的な持続放出のための活性組成物の皮下沈着物がもたらされる。
【0046】
本発明の更なる態様は、POMCペプチドを含む医薬組成物を提供する。
【0047】
本発明の更なる態様により、α、β、およびγメラノサイト刺激ホルモン(MSH);アドレノコルチコトロピン(ACTH);βおよびγリポトロピン(LPH);ならびにβエンドロフィンの2つ以上を含む医薬組成物が提供される。投与におけるPOMCのタンパク質分解により、POMCに由来する個別のホルモンの2つ以上の投与によって得られるのと類似の効果が達成できる可能性がある。医薬組成物は、個別のペプチドとして、または、1つもしくは複数の前駆体分子(例えば、POMCの部分的に分解した生成物)として表されるホルモンを提供することができる。好ましくは、3つ、4つ、5つ、6つ、または7つのホルモンが、(場合によってはCRFとともに)このような分子の連続的な産生のためのカスケードを誘導する医薬組成物に含まれる。様々な成分については、1つまたは複数の成分に結合してこの成分の放出のための沈着物または貯蔵庫として作用する1つまたは複数の担体分子と組み合わせて、提供することができる。担体分子は、また、POMCおよびその関連ペプチドと組み合わせて使用することができる。
【0048】
本発明の更なる態様によれば、多発性硬化症;リウマチ性関節炎;視神経炎;運動ニューロン疾患;狼瘡、乾癬、湿疹、甲状腺炎、および多発性筋炎を含む自己免疫疾患;軸索または神経損傷;ガン、特に骨髄腫、メラノーマおよびリンパ腫;脱髄性および非脱髄性の神経障害;炎症疾患;肥満;神経伝導障害;ならびに性機能障害、特に勃起不全から選択される病気の治療方法であって、治療を必要とする患者にCRFを投与することを含む治療方法を提供する。代替的には、この方法は、POMCを投与することを含みうる。
【0049】
治療物の最適な投薬量は、まだ実証されていない;しかしながら、対象へ、0.01から10mg/kg、より好ましくは0.01から5mg/kg、0.025から2mg/kg、最も好ましくは0.05から1mg/kgの投薬量で治療を行なうことが適切であろう。予備的な研究においては、血清調製物を、総タンパク質濃度4mg/mlで患者に投与した。
【0050】
投与すべき正確な投薬量は、患者の年齢、性別、および体重などの因子、投与の方法および処方、ならびに治療しようとする疾患の性質および重症度に応じて変更してよい。食生活、投与時間、患者の状態、薬物の組合せ、および反応感度など他の因子も考慮してよい。
【0051】
治療を担当する臨床家によって、効果的な治療計画が決定され得る。1回または複数回の投与を行ってよく、典型的には、少なくとも3回、5回、またはそれ以上の一連の投与後に効果が認められる。投与を繰り返すことが、組成物の有益な効果を維持するために望ましいであろう。
【0052】
治療物は、有効な任意の経路、好ましくは皮下注射によって投与することができるが、使用し得る代替経路としては、筋肉内もしくは病巣内注射、経口、エアロゾル、非経口、または局所が挙げられる。
【0053】
治療物は、好ましくは液体製剤として投与されるが、他の製剤も使用してよい。例えば、治療物は、製薬上許容される適切な担体と混合してよく、また、経口、局所、または非経口投与に適した組成で、固形物(錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤など)として調製してもよい。
【0054】
本発明により、また、前記した病気の1つまたは複数の治療のための医薬の製造における、CRFの使用が提供される。また、前記した病気の1つまたは複数の治療のための医薬の製造における、POMCの使用が提供される。CRFまたはPOMCは単離することができ、精製CRFまたはPOMCとすることができるが、前記した様々な他の成分と組み合わせて投与することが好ましい。特に、生物活性な担体タンパク質およびバソプレシンを使用することができる。
【0055】
本発明の更なる態様によれば、CRFを製造する方法であって、ヤギから血液サンプルを得る工程;血清を、残りの血液成分から分離する工程;および、固体物の沈殿により血清を精製する工程を含む方法を提供する。
【0056】
沈殿は、更に、生理学的に許容可能なバッファー、例えばPBSで再懸濁することができる。再懸濁させた沈殿物を、更に、透析またはろ過透析、例えば、分子量50,000Da、好ましくは40,000Da、より好ましくは31,000Daの分子量カットオフ値で精製することができる。
【0057】
沈殿を、更なる精製、例えば抗体または他のアフィニティ精製に供して、CRFを単離することができる。CRFは、CRFに対する抗体により、または、CRF-BPの使用により結合させることができる。
【0058】
血清の分離は、遠心分離によって達成することができる。
【0059】
血清は、ウイルスろ過によって精製することができる;使用する任意の精製方法は、CRF/POMC以外の成分を含む血清の任意の生物活性成分を、不活性化または除去しないことが好ましい。
【0060】
沈殿は、硫酸アンモニア沈殿によって、または、カプリル酸精製によって実施することができる。他の適した沈殿化剤を使用することができる。
【0061】
好ましくは、ヤギは免疫されたヤギである。ヤギの免疫により、CRFおよびバソプレシンがより高いレベルで血清に存在するように、CRFおよびバソプレシンの産生を刺激すると考えられる。この方法は、また、ヤギを免疫化する工程も含むことができる。代替的に、ヤギを、生理学的なストレス、例えば採血に供することができる。
【0062】
また、幾つかの状況下では、免疫原の使用は必要なく、有用な調製物が、非-免疫動物(すなわち、特定の免疫原で予め免疫していない動物)から得ることができると考えられる。通常のヤギは、周囲免疫原に予め曝露されており、このようなヤギが、本発明の組成物の製造に使用することができることは、一般に認められる。それ故、本発明は、また、非-免疫化のヤギから得られた血清を含む医薬組成物を包含することが意図される。本発明は、また、このような組成物または血清の、見出しが「血清組成物の使用」である項目において前記した様々な疾患または病気の治療における使用、または治療のための医薬の製造における使用にまで及ぶ。本発明は、更に、非-免疫化のヤギから得られた血清に由来するPOMCおよび/またはCRFの製造にまで及ぶ。
【0063】
本発明のこれらの態様および他の態様を、添付の図を参照することのみにより、実施例によって記載する。
【実施例】
【0064】
(血清組成物の製造)
約400ccの血液を、滅菌環境下でヤギから取り出す。ヤギは、典型的には、血液の容量が再び満たされると、10から14日で再採血することができる。事前の採血は、血清の活性成分の産生を刺激するのに有用であろう。その後、血液を遠心することにより血清を分離し、血清をろ過して、大きな塊および沈殿物質を除去する。その後、血清を、飽和硫酸ナトリウム(4℃で47%溶液)で処理して、抗体および他の物質を沈殿させる。得られた溶液を、Beckman J6M/E遠心機で、3500rpmで45分間遠心し、その後、上清を除去する。沈殿したイムノグロブリンおよび他の固体物質を、沈殿物を再溶解するのに十分なPBSバッファー(リン酸緩衝生理食塩水)で再懸濁する。
【0065】
その後、溶液を、分子量10,000ダルトンのカットオフ値で、PBSバッファーに対して4℃で透析ろ過に供する。透析ろ過後、生成物を、0.2マイクロフィルターに通して滅菌した容器に入れ、タンパク質濃度を4mg/mlに調整する。溶液をバイアルに入れ、単回投与1mlとして、使用するまで-22℃で保存する。
【0066】
(考察)
血清の効果は、以前に開示されているが、活性成分の実証は、以前には達成されていない。
【0067】
<血清組成物の分析>
組成物サンプルをゲル上でサイズにより分離し、βエンドロフィンに対する抗体を使用してウエスタンブロットを行なった。βエンドルフィンの存在を示す強いシグナルが検出されたが、推定分子量は約31kDaであり、βエンドルフィンの予測サイズよりもかなり大きかった。このことは、より大きなペプチドとしてサンプルに存在していることを示唆していた;そのサイズは、POMCのサイズと一致した。
【0068】
我々は、また、組成物を質量分析に供し、少なくとも2つの、POMC誘導ペプチドであるβエンドルフィンおよびコルチコトロピン関連分子を検出した。CRH-BP(コルチコトロピン放出ホルモン結合タンパク質)も同定した。
【0069】
<図1から4>
POMCペプチドおよびCRF-BPが、Thermofinnegan LCQ質量分析によって、調製物で同定された。CRFは、主に下垂体前葉でACTHの合成および分泌を調節する。CRFおよびCRF-BPに加えて、POMCおよび/またはその成分ペプチドの投与は、POMCペプチドの全身的且つ持続的な濃度上昇をもたらすカスケード効果を開始すると考えられている。CRF-BPは、CRFのための貯蔵庫として作用する能力を有する。
【0070】
図1から4は、夾雑タンパク質からSDS-PAGEによって分離した調製物に由来するトリプシン消化物の質量分析から得られた結果を示す。前記したように、これらの分子の幾つかは、POMCカスケードの誘導因子および調節因子である。より焦点を絞った分析(例えば、ペプチド分画、免疫沈降および濃縮)を使用した更なる調査により、より多くの存在するペプチドが明らかになるであろう。図1は、POMC由来コルチコトロピンの存在を示し、図2は、CRF-BPの存在を示し、図3は、プロエンケファリンAの存在を示し、図4は、プロエンケファリンBの存在を示す。CRF-BPの存在により、調製物が幾つかのCRFを含む一方で、POMCおよび関連ペプチドも明らかに存在していることが示唆される。
【0071】
我々は、また、患者自身の血清に対する、血清組成物を用いた治療の効果を調べた。これらの効果を以下に記す。
【0072】
<治療による患者血清でのタンパク質/ペプチド発現の誘導>
図5は、治療前後の患者の血清の質量分析を示す。2から10kDのスペクトルを比較する。この分子量範囲は、対象とする生物活性ペプチドに関連する。治療前および治療後血清のプロファイルを比較することにより、2から6kD領域でのペプチド発現の明確な差異が見出すことができる。比較を容易にするために、重ねたプロファイルも提供する。
【0073】
図6は、6人の治療した患者における、ペプチド/タンパク質発現の比較を示す。それぞれの患者は、誘導されたペプチド/タンパク質発現のレベルが、特に4kD領域において増加したことを示す。
【0074】
図7aは、ワクチン接種前の非処理ヤギ血清(免疫前プロファイル、上部パネル)、免疫後53日目の非処理血清、および処理済み調製物の質量分析プロファイルを示す。下2つのパネルにおいては、血清のプロファイルが、免疫前のプロファイルと比較して顕著に異なっており、タンパク質発現の誘導が示唆されることを示すことができる。ここで示すプロファイルにより、活性生成物が表され、特定の免疫化/採血方法が、この血清プロファイルの誘導に有用であることが示された。重ねたプロファイルを示す(図7b)。
【0075】
<POMCペプチドの誘導の証拠>
図8は、治療を受ける前後の患者の血清における、ACTHレベルの比較を示す。健康なボランティアに由来する血清および患者に投与した調製物における、ACTHレベルも比較した。血清を1:100に希釈し、調製物と比較して、血清ELISAによって定量した。データは、3回の測定における平均値+/-標準誤差である。治療後はn=5;治療前はn=3;通常のヒト血清はn=5であった。データは、治療によりACTHレベルが増加したことを示す。
【0076】
図9は、治療した患者の血清におけるβエンドルフィンのレベルを、治療前の同じ患者の血清と比較する。健康なボランティアの血清および調製物におけるレベルと比較する。血清を1:100に希釈し、調製物と比較して、血清ELISAによって定量した。データは、3回の測定における平均値+/-標準誤差である。データは、治療によりβエンドルフィンレベルが増加したことを示す。
【0077】
<治療した患者における炎症誘発性TH-1プロファイルから抗炎症性TH-2サイトカインプロファイルへの転換の証拠>
図10は、治療前後の2つの群の患者の血清におけるTGF-βのレベルを示す。2つの群の患者(各群n=3)は、産生したTGF-βの濃度に関して異なる応答を示すが、全ての患者は、治療に応答して血清レベルにおける増加を示した(治療前血清=治療前の患者の血清レベル;2回目治療後および5回目治療後=2回目および5回目の投与後)。データは、治療により、抗炎症性サイトカインTGF-βの濃度増加が誘導されることを示す。
【0078】
図11は、治療前(治療前-血清)および治療後の1つの群の患者の血清における、IL-4のレベルを示す。治療後(2回目治療後)、IL-4のレベルが、患者の血清(n=5)において顕著に増加することを示すことができる。しかしながら、5回目の投与後は、IL-4のレベルは全ての患者で減少するが、治療前よりも高いレベルを維持していた。IL-4は、TH-1細胞に由来する炎症誘導性サイトカインの産生を下方調節することが知られている。全ての患者に見られた濃度の一致した変化は、TH-1からTH-2への転換におけるIL-4の役割と一致するかもしれない。
【0079】
図12は、治療前後の1つの群の患者の血清におけるIL-6のレベルを示す。治療後(2回目治療後および5回目治療後)、IL-6のレベルが、患者の血清(n=4)において減少することを示すことができる。
【0080】
図13は、治療前後の1つの群の患者の血清におけるIFN-γのレベルを示す。治療後(2回目治療後および5回目治療後)、IFN-γのレベルが、患者の血清において減少することを示すことができる。
【0081】
図14は、ヒトの末梢血細胞(PBMC)の処理により、単球亜群における抗炎症性サイトカインIL-10の産生を誘導することを示す。Tリンパ球およびBリンパ球および単球を、ヒトのボランティアから得られたPBMCから分離した。全ての細胞タイプを等量の調製物で16時間処理し、ELISAを用いて、上清をIL-10についてアッセイした。T細胞群によって産生したIL-10レベルは、処理によって影響を受けることは無く、B細胞においては、IL-10の少量の増加のみ誘導されたことを示すことができる。しかしながら、IL-10の顕著な増加が、単球群における処理によって誘導された。全ての測定値は、三回測定値+/-標準偏差で求めた。これらのデータは、少なくとも3つの別々の実験の代表値である。
【0082】
<バソプレシンおよびCRF誘導の証拠>
図15は、調製物、コントロール患者、調製物で治療した患者、および治療前の患者におけるバソプレシンのレベルの比較を示す。図15は、如何なる血清群の間にも顕著な差異は存在しないが、調製物は、患者に応答を誘発するのに十分な顕著なレベルのバソプレシンを含むことを示す。バソプレシンは、相乗的にCRFと作用し、POMCを放出することが知られている。全ての測定値は、三回測定値+/-標準偏差で求めた。これらのデータは、少なくとも3つの別々の実験の代表値である。治療前の患者n=3;治療した患者n=6である。
【0083】
図16は、プラセボと比較して調製物のCRFの存在が増加すること、および、非治療個体と比較した治療した患者における増加を示す;後者は、治療に応答して患者内でCRFの誘導されたことの証拠である。全ての測定値は、三回測定値+/-標準偏差で求めた。これらのデータは、少なくとも3つの別々の実験の代表値である。コントロール個体n=4;治療した患者n=13である。
【0084】
<要約および結論>
予備的ではあるが、これまでの証拠は、主要な活性成分が他の成分と協同で作用するCRFであることと一致しており、CRFが、POMC産生を誘導すると考えられる。また、POMCそれ自身およびPOMC由来ペプチドが、治療剤として使用することができる証拠も存在する。このことは、CRFおよびPOMCについての新規な医薬組成物および使用を示唆するだけでなく、CRFおよびPOMCを使用して治療可能である更なる疾患にも見て取れる。我々は、また、ヤギからのCRFおよびPOMCを産生する便利な方法を提供する。
【0085】
データは、今までのところ、調製物は、CRF、POMCペプチドおよび抗炎症性サイトカイン(IL-10およびTGF-β)を含むだけでなく、患者において、CRFの発現および放出、および、それによりもたらされるPOMCの発現および放出がもたらされることが示唆され、これにより、患者の免疫プロファイルを、TH-1炎症性プロファイルから圧倒的なTH-2抗炎症性プロファイルへと転換させる。
【0086】
組成物の効果の他の結果は、活性成分がPOMC産生を誘導するCRFであることと一致する。例えば、白血球接着に対する効果は、βエンドルフィンに起因するであろう。血清調製物は、ヒトPBMCにIL-10を増加させる;αMSHは、IL-10産生に影響を与える。神経伝導および神経保護作用に対する効果は、ACTHおよびバソプレシンに起因するであろう;食欲に対する効果は、αMSHが原因であろう。調製物それ自身は、また、顕著なレベルのIL-10およびTGF-βも含む(データは示さず)。
【0087】
αMSHは、全ての主要な形態の炎症において有効な抗炎症効果を有し、TNF-αおよびIL1-βなどの炎症性サイトカインの効果を中和する。サイトカインシステムおよびPOMCシステムとの間にはクロストークが存在し、これは、組成物で治療した患者で観察され、炎症性サイトカインの減少、ならびに、IL-10およびTGF-βのレベルの上昇を含むTH-2抗炎症サイトカインプロファイルの樹立(治療期間にわたり維持された)をもたらした。我々は、また、血清調製物において、IL1-βのレベルが上昇することを同定した。
【0088】
血清調製物は、以前から、タンパク質分解に非常に敏感であることが見出されていた;このことは、POMCが投与によりタンパク質分解され、個々のホルモンをもたらすが、更なる分解により活性が消失してしまうという理論と一致する。特に、αMSHは、末端のトリペプチド配列が取り除かれると、顕著に活性を減少させると考えられている;再度、このことは、POMCを含む活性成分と一致する。調製物それ自身は、その活性成分の寿命が短いので、その性質上不活性であるが、強力な効果を示す。
【0089】
我々は、また、血清が白血球による一酸化窒素産生を調節することを示唆する実験も行なった;このことは、βエンドルフィンの効果と一致する。我々は、また、血清がPHA-誘導性PBMC増殖を阻害すると考えており、このことは、血清の免疫調節効果についての説明を示唆する。我々は、また、調製物の存在下での、LPS-誘導性刺激および混合リンパ球応答へのPBMCの応答が減少することを見出した(データを示さず)。
【0090】
調製物は、また、ヒトの脳の小グリア細胞においてチロシンリン酸化を誘導することができ、NFκB経路を調節することをウェスタンブロッティングによって見出した(データを示さず)。NFκβは、炎症性サイトカインの調節に関与する遺伝子の転写を調節することが知られており、それゆえ、NFκBの阻害は、自己免疫疾患において炎症性サイトカイン応答を減少させ、炎症応答を減少させるように作用するであろう。このことを調べるための更なる実験を実施中である。
【0091】
幾つかのPOMCペプチドについての受容体(MCR3およびMCR4)が、視神経を形成する網膜の神経節細胞に見出されており、治療後に産生するPOMCペプチドによって刺激されることができる。このことにより、以前から記載されている視神経炎を患うMP患者が経験した視力の迅速な回復の幾つかが説明される。ACTHが、20から30分もの短い時間で効果をもたらすことができるコルチコステロイド経路を誘導することが知られている。
【0092】
予備的なデータは、調製物におけるペプチドの濃度では、患者の血液容量での希釈後においては、治療応答を誘発するには不十分であろうことを示唆する。しかしながら、調製物を、局所的に作用させ(皮下ボーラスで注入するように)、治療した患者において生物活性ペプチドの合成および放出を誘発する生物化学的カスケードを誘導することができた。例えば、HPAにおいて受容体と競合することによる、または分子をブロックすることによる、調製物と相互作用する任意な医科的治療は、避けるべきであると、現在、知られている。
【0093】
この仮説の裏づけとして、調製物の質量分析により、そのうちの幾つかがコルチコトロピンシステムの誘導および調節に関与している更なる分子を同定した:すなわち、CRH結合タンパク質およびleu-エンケファリン、コルチコトロピン-リポトロピン前駆体およびプロ-エンケファリンA前駆体を同定した(図1から4を参照)。加えて、恐らくはより重要なことに、我々は、2つの主要なPOMCペプチドが、治療した患者の血清において、治療前のレベルと比較して、そして健康なコントロールボランティアと比較しても、顕著に上方調節されることを見出した。この知見は、免疫学的データとともに、この治療が患者におけるPOMCペプチドの発現および放出を誘導し、その後に、患者の免疫学的プロファイルをTH-1炎症性プロファイルからTH-2抗-炎症性プロファイルへと転換することを示唆する。患者におけるカスケードメカニズムの更なる解明は、現在のところ、調査中である。
【0094】
調製物が、本来は抗炎症性であるが、完全には炎症応答を阻害しないことは注目すべきである。我々のデータは、調製物が、自己免疫疾患に見られる好ましくないTH-1サイトカインプロファイルから、より好ましいバランスの取れたサイトカインレベルへ転換を誘導することを示唆する。この誘導は、TH-1ネットワークがオフになるので、治療後の最初に、迅速な抗-炎症性TH-2転換として現れる。治療後に、TH-1ネットワークが、低いレベルではあるが、動き出す。
【0095】
腫瘍に対する血清調製物の報告した効果により、我々は、血清の抗血管新生効果の可能性を導き出した。この点に関しては、タンパク質トロンボスポンジン-1(TSP-1)および血小板第4因子(PF-4)は、SDS-PAGEゲルに由来するトリプシン分解物の質量分析により、調製物において同定した。ペプチド同定のためのBiowork Browserを用いたコンピューターデータベースのサーチにより、ヒト種を含む幾つかの種にまたがって強いマッチが示された。調製物のTSP-1およびPF-4タンパク質含量の正確な定量は、いまだに確立されていないが、SDS-PAGEゲル上のタンパク質の可視化されたバンドの特徴は、タンパク質が生物学的に顕著な量(ナノグラムを超える)で存在していることを示す。
【0096】
調製物の仮説的な成分の要約、およびその作用機構を、図17に示す。調製物は、ある程度のCRF-BP、βエンドルフィン、バソプレシン、およびエンケファリンとともに、CRFを含むと考えられる。βドンドルフィンおよびエンケファリンが行なうように、CRFは、患者において更なるCRFの産生を誘導する。内因性CRFが、POMCの誘導を導き、これにより、他のACTHの中で、αMSHおよびβエンドルフィンを引き起こす。この最後の生成物は、フィードバックループで作用し、低いレベルでは更なるCRF放出を刺激するのに対して、高いレベルではCRF放出を阻害する。この全体的なCRF/POMCカスケードは、患者における免疫学的転換を誘導すると考えられ、これにより、様々な病気における驚くべき有益な効果を明らかとすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】図1は、血清組成物のトリプシン分解物の質量分析を示す。
【図2】図2は、血清組成物のトリプシン分解物の質量分析を示す。
【図3】図3は、血清組成物のトリプシン分解物の質量分析を示す。
【図4】図4は、血清組成物のトリプシン分解物の質量分析を示す。
【図5】図5は、組成物を用いた治療前後の患者血清の質量分析を示す。
【図6】図6は、組成物を用いた治療前後の患者血清の質量分析を示す。
【図7】図7は、組成物を用いた治療前後の患者血清の質量分析を示す。
【図8】図8は、組成物を用いた治療によるPOMCペプチドの誘導分析を示す。
【図9】図9は、組成物を用いた治療によるPOMCペプチドの誘導分析を示す。
【図10】図10は、組成物を用いた治療後の患者の炎症プロファイルにおける転換のための証拠を示す。
【図11】図11は、組成物を用いた治療後の患者の炎症プロファイルにおける転換のための証拠を示す。
【図12】図12は、組成物を用いた治療後の患者の炎症プロファイルにおける転換のための証拠を示す。
【図13】図13は、組成物を用いた治療後の患者の炎症プロファイルにおける転換のための証拠を示す。
【図14】図14は、組成物を用いた治療後の患者の炎症プロファイルにおける転換のための証拠を示す。
【図15】図15は、ヒト血清および組成物におけるバソプレシンのレベルを示す。
【図16】図16は、ヒト血清および組成物におけるCRFのレベルを示す。
【図17】図17は、組成物の提案されたエレメントおよびその作用機構の要約図を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コルチコトロピン放出因子(CRF)ペプチドを含む医薬組成物。
【請求項2】
ヤギCRFを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
バソプレシン、βエンドルフィン、およびエンケファリンの1つまたは複数を更に含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
CRF結合タンパク質を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
POMCペプチドを更に含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
α、βおよびγMSH;ACTH;βおよびγLPH;met-エンケファリン、leu-エンケファリンおよびβエンドロフィンの1つまたは複数を更に含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
外因性POMCを患者に投与する工程を含む、患者におけるPOMC産生を刺激する方法。
【請求項8】
外因性CRFを患者に投与する工程を更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
外因性バソプレシンを患者に投与することを更に含む、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
POMCペプチドを含む医薬組成物。
【請求項11】
医薬の製造における、単離されたCRFペプチドの使用。
【請求項12】
医薬の製造における、単離されたPOMCペプチドの使用。
【請求項13】
CRFを、必要とする患者に投与する工程を含む、多発性硬化症;リウマチ性関節炎;視神経炎;運動ニューロン疾患;狼瘡、乾癬、湿疹、甲状腺炎、および多発性筋炎を含む自己免疫疾患;軸索または神経損傷;ガン、特に骨髄腫、メラノーマおよびリンパ腫;脱髄性および非脱髄性の神経障害;炎症疾患;肥満;神経伝導障害;ならびに性機能障害、特に勃起不全から選択される病気の治療方法。
【請求項14】
POMCを、必要とする患者に投与する工程を含む、多発性硬化症;リウマチ性関節炎;視神経炎;運動ニューロン疾患;狼瘡、乾癬、湿疹、甲状腺炎、および多発性筋炎を含む自己免疫疾患;軸索または神経損傷;ガン、特に骨髄腫、メラノーマおよびリンパ腫;脱髄性および非脱髄性の神経障害;炎症疾患;肥満;神経伝導障害;ならびに性機能障害、特に勃起不全から選択される病気の治療方法。
【請求項15】
ヤギに由来する血液サンプルを得る工程;残留血液成分から血清を分離する工程;および固形物の沈殿によって血清を精製する工程を含む、CRFを製造する方法。
【請求項16】
CRFを、患者に投与する工程を含む、
リウマチ性関節炎;視神経炎;運動ニューロン疾患;軸索または神経損傷;
ガン、特に骨髄腫、メラノーマおよびリンパ腫;
脳血管の虚血性疾患、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、混合性結合組織疾患、強皮症、アナフィラキシー、敗血症ショック、心臓炎および心内膜炎、創傷治癒、接触性皮膚炎、職業性肺疾患、糸球体腎炎、移植拒絶反応、側頭動脈炎、血管炎性疾患、肝炎、熱傷、多系統萎縮症、てんかん、筋ジストロフィー、精神分裂病、双極性障害、うつ、チャネル病、重症筋無力症、悪性新生物に起因する疼痛、慢性疲労症候群、線維筋炎、過敏性腸症候群、作業関連性上肢障害、群発頭痛、片頭痛、および慢性の日常的な頭痛を含む非脱髄性神経障害;
神経系の感染症、神経絞扼および局所性損傷、外傷性脊髄損傷、腕神経叢障害(特発性および外傷性、腕神経炎、パーソナージュ・ターナー症候群、神経痛性筋萎縮);神経根障害;チャネル病;ならびに疼痛性チックを含む脱髄性疾患;
狼瘡、乾癬、湿疹、甲状腺炎、および多発性筋炎を含む自己免疫疾患;
炎症性疾患;
全ての型の遺伝性運動感覚性神経障害;シャルコー-マリー-トゥース病(CMT)型CMT1A、CMT1B、CMT2、CMT3(デジェリーヌ ソッタス病)、CMT4(A、B、CおよびD型)、X連鎖性シャルコー-マリー-トゥース病(CMTX);遺伝性圧脆弱性神経障害(HNPP)-ソーセージ様神経障害とも呼ばれる;難聴を有する遺伝性運動感覚性神経障害-運動制限(HMSNL);遺伝性近位筋優位運動神経障害/神経細胞障害(HMSNP);遺伝性神経痛性筋萎縮症;遺伝性感覚自立性神経障害(HSAN1、HSAN2、HSAN3(ライリー-デイ症候群または家族性自律神経失調症とも呼ばれる)、HSAN4、HSAN5);家族性アミロイド多発神経障害(I型、II型、III型、IV型);異染色白質ジストロフィー;クラッベ病;ファブリー病;副腎白質ジストロフィー;レフスム病(HMSN IV);タンジェール病;フリードライヒ失調症;脊髄小脳失調症(SCA)の全ての型-SCA1、SCA2、SCA3、SCA4、SCA5、SCA6、SCA7、SCA8、SCA10、SCA11、SCA12、SCA13、SCA14、SCA16;脊髄小脳変性症;コケイン症候群;および巨大軸索神経障害;
慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP)およびギラン-バレー症候群;
イヌのアトピー性皮膚炎、イヌの口腔内メラノーマ、およびウマの肺疾患;
から選択される病気の治療、改善または予防的治療のための方法。
【請求項17】
POMCを、患者に投与する工程を含む、
リウマチ性関節炎;視神経炎;運動ニューロン疾患;軸索または神経損傷;
ガン、特に骨髄腫、メラノーマおよびリンパ腫;
脳血管の虚血性疾患、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、混合性結合組織疾患、強皮症、アナフィラキシー、敗血症ショック、心臓炎および心内膜炎、創傷治癒、接触性皮膚炎、職業性肺疾患、糸球体腎炎、移植拒絶反応、側頭動脈炎、血管炎性疾患、肝炎、熱傷、多系統萎縮症、てんかん、筋ジストロフィー、精神分裂病、双極性障害、うつ、チャネル病、重症筋無力症、悪性新生物に起因する疼痛、慢性疲労症候群、線維筋炎、過敏性腸症候群、作業関連性上肢障害、群発頭痛、片頭痛、および慢性の日常的な頭痛を含む非脱髄性神経障害;
神経系の感染症、神経絞扼および局所性損傷、外傷性脊髄損傷、腕神経叢障害(特発性および外傷性、腕神経炎、パーソナージュ・ターナー症候群、神経痛性筋萎縮);神経根障害;チャネル病;ならびに疼痛性チックを含む脱髄性疾患;
狼瘡、乾癬、湿疹、甲状腺炎、および多発性筋炎を含む自己免疫疾患;
炎症性疾患;
全ての型の遺伝性運動感覚性神経障害;シャルコー-マリー-トゥース病(CMT)型CMT1A、CMT1B、CMT2、CMT3(デジェリーヌ ソッタス病)、CMT4(A、B、CおよびD型)、X連鎖性シャルコー-マリー-トゥース病(CMTX);遺伝性圧脆弱性神経障害(HNPP)-ソーセージ様神経障害とも呼ばれる;難聴を有する遺伝性運動感覚性神経障害-運動制限(HMSNL);遺伝性近位筋優位運動神経障害/神経細胞障害(HMSNP);遺伝性神経痛性筋萎縮症;遺伝性感覚自立性神経障害(HSAN1、HSAN2、HSAN3(ライリー-デイ症候群または家族性自律神経失調症とも呼ばれる)、HSAN4、HSAN5);家族性アミロイド多発神経障害(I型、II型、III型、IV型);異染色白質ジストロフィー;クラッベ病;ファブリー病;副腎白質ジストロフィー;レフスム病(HMSN IV);タンジェール病;フリードライヒ失調症;脊髄小脳失調症(SCA)の全ての型-SCA1、SCA2、SCA3、SCA4、SCA5、SCA6、SCA7、SCA8、SCA10、SCA11、SCA12、SCA13、SCA14、SCA16;脊髄小脳変性症;コケイン症候群;および巨大軸索神経障害;
慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP)およびギラン-バレー症候群;
イヌのアトピー性皮膚炎、イヌの口腔内メラノーマ、およびウマの肺疾患;
から選択される病気の治療、改善または予防的治療のための方法。
【請求項1】
コルチコトロピン放出因子(CRF)ペプチドを含む医薬組成物。
【請求項2】
ヤギCRFを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
バソプレシン、βエンドルフィン、およびエンケファリンの1つまたは複数を更に含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
CRF結合タンパク質を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
POMCペプチドを更に含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
α、βおよびγMSH;ACTH;βおよびγLPH;met-エンケファリン、leu-エンケファリンおよびβエンドロフィンの1つまたは複数を更に含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
外因性POMCを患者に投与する工程を含む、患者におけるPOMC産生を刺激する方法。
【請求項8】
外因性CRFを患者に投与する工程を更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
外因性バソプレシンを患者に投与することを更に含む、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
POMCペプチドを含む医薬組成物。
【請求項11】
医薬の製造における、単離されたCRFペプチドの使用。
【請求項12】
医薬の製造における、単離されたPOMCペプチドの使用。
【請求項13】
CRFを、必要とする患者に投与する工程を含む、多発性硬化症;リウマチ性関節炎;視神経炎;運動ニューロン疾患;狼瘡、乾癬、湿疹、甲状腺炎、および多発性筋炎を含む自己免疫疾患;軸索または神経損傷;ガン、特に骨髄腫、メラノーマおよびリンパ腫;脱髄性および非脱髄性の神経障害;炎症疾患;肥満;神経伝導障害;ならびに性機能障害、特に勃起不全から選択される病気の治療方法。
【請求項14】
POMCを、必要とする患者に投与する工程を含む、多発性硬化症;リウマチ性関節炎;視神経炎;運動ニューロン疾患;狼瘡、乾癬、湿疹、甲状腺炎、および多発性筋炎を含む自己免疫疾患;軸索または神経損傷;ガン、特に骨髄腫、メラノーマおよびリンパ腫;脱髄性および非脱髄性の神経障害;炎症疾患;肥満;神経伝導障害;ならびに性機能障害、特に勃起不全から選択される病気の治療方法。
【請求項15】
ヤギに由来する血液サンプルを得る工程;残留血液成分から血清を分離する工程;および固形物の沈殿によって血清を精製する工程を含む、CRFを製造する方法。
【請求項16】
CRFを、患者に投与する工程を含む、
リウマチ性関節炎;視神経炎;運動ニューロン疾患;軸索または神経損傷;
ガン、特に骨髄腫、メラノーマおよびリンパ腫;
脳血管の虚血性疾患、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、混合性結合組織疾患、強皮症、アナフィラキシー、敗血症ショック、心臓炎および心内膜炎、創傷治癒、接触性皮膚炎、職業性肺疾患、糸球体腎炎、移植拒絶反応、側頭動脈炎、血管炎性疾患、肝炎、熱傷、多系統萎縮症、てんかん、筋ジストロフィー、精神分裂病、双極性障害、うつ、チャネル病、重症筋無力症、悪性新生物に起因する疼痛、慢性疲労症候群、線維筋炎、過敏性腸症候群、作業関連性上肢障害、群発頭痛、片頭痛、および慢性の日常的な頭痛を含む非脱髄性神経障害;
神経系の感染症、神経絞扼および局所性損傷、外傷性脊髄損傷、腕神経叢障害(特発性および外傷性、腕神経炎、パーソナージュ・ターナー症候群、神経痛性筋萎縮);神経根障害;チャネル病;ならびに疼痛性チックを含む脱髄性疾患;
狼瘡、乾癬、湿疹、甲状腺炎、および多発性筋炎を含む自己免疫疾患;
炎症性疾患;
全ての型の遺伝性運動感覚性神経障害;シャルコー-マリー-トゥース病(CMT)型CMT1A、CMT1B、CMT2、CMT3(デジェリーヌ ソッタス病)、CMT4(A、B、CおよびD型)、X連鎖性シャルコー-マリー-トゥース病(CMTX);遺伝性圧脆弱性神経障害(HNPP)-ソーセージ様神経障害とも呼ばれる;難聴を有する遺伝性運動感覚性神経障害-運動制限(HMSNL);遺伝性近位筋優位運動神経障害/神経細胞障害(HMSNP);遺伝性神経痛性筋萎縮症;遺伝性感覚自立性神経障害(HSAN1、HSAN2、HSAN3(ライリー-デイ症候群または家族性自律神経失調症とも呼ばれる)、HSAN4、HSAN5);家族性アミロイド多発神経障害(I型、II型、III型、IV型);異染色白質ジストロフィー;クラッベ病;ファブリー病;副腎白質ジストロフィー;レフスム病(HMSN IV);タンジェール病;フリードライヒ失調症;脊髄小脳失調症(SCA)の全ての型-SCA1、SCA2、SCA3、SCA4、SCA5、SCA6、SCA7、SCA8、SCA10、SCA11、SCA12、SCA13、SCA14、SCA16;脊髄小脳変性症;コケイン症候群;および巨大軸索神経障害;
慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP)およびギラン-バレー症候群;
イヌのアトピー性皮膚炎、イヌの口腔内メラノーマ、およびウマの肺疾患;
から選択される病気の治療、改善または予防的治療のための方法。
【請求項17】
POMCを、患者に投与する工程を含む、
リウマチ性関節炎;視神経炎;運動ニューロン疾患;軸索または神経損傷;
ガン、特に骨髄腫、メラノーマおよびリンパ腫;
脳血管の虚血性疾患、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、混合性結合組織疾患、強皮症、アナフィラキシー、敗血症ショック、心臓炎および心内膜炎、創傷治癒、接触性皮膚炎、職業性肺疾患、糸球体腎炎、移植拒絶反応、側頭動脈炎、血管炎性疾患、肝炎、熱傷、多系統萎縮症、てんかん、筋ジストロフィー、精神分裂病、双極性障害、うつ、チャネル病、重症筋無力症、悪性新生物に起因する疼痛、慢性疲労症候群、線維筋炎、過敏性腸症候群、作業関連性上肢障害、群発頭痛、片頭痛、および慢性の日常的な頭痛を含む非脱髄性神経障害;
神経系の感染症、神経絞扼および局所性損傷、外傷性脊髄損傷、腕神経叢障害(特発性および外傷性、腕神経炎、パーソナージュ・ターナー症候群、神経痛性筋萎縮);神経根障害;チャネル病;ならびに疼痛性チックを含む脱髄性疾患;
狼瘡、乾癬、湿疹、甲状腺炎、および多発性筋炎を含む自己免疫疾患;
炎症性疾患;
全ての型の遺伝性運動感覚性神経障害;シャルコー-マリー-トゥース病(CMT)型CMT1A、CMT1B、CMT2、CMT3(デジェリーヌ ソッタス病)、CMT4(A、B、CおよびD型)、X連鎖性シャルコー-マリー-トゥース病(CMTX);遺伝性圧脆弱性神経障害(HNPP)-ソーセージ様神経障害とも呼ばれる;難聴を有する遺伝性運動感覚性神経障害-運動制限(HMSNL);遺伝性近位筋優位運動神経障害/神経細胞障害(HMSNP);遺伝性神経痛性筋萎縮症;遺伝性感覚自立性神経障害(HSAN1、HSAN2、HSAN3(ライリー-デイ症候群または家族性自律神経失調症とも呼ばれる)、HSAN4、HSAN5);家族性アミロイド多発神経障害(I型、II型、III型、IV型);異染色白質ジストロフィー;クラッベ病;ファブリー病;副腎白質ジストロフィー;レフスム病(HMSN IV);タンジェール病;フリードライヒ失調症;脊髄小脳失調症(SCA)の全ての型-SCA1、SCA2、SCA3、SCA4、SCA5、SCA6、SCA7、SCA8、SCA10、SCA11、SCA12、SCA13、SCA14、SCA16;脊髄小脳変性症;コケイン症候群;および巨大軸索神経障害;
慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP)およびギラン-バレー症候群;
イヌのアトピー性皮膚炎、イヌの口腔内メラノーマ、およびウマの肺疾患;
から選択される病気の治療、改善または予防的治療のための方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2008−505878(P2008−505878A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519893(P2007−519893)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【国際出願番号】PCT/GB2005/050108
【国際公開番号】WO2006/021814
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(504000937)エイムスコ・リミテッド (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【国際出願番号】PCT/GB2005/050108
【国際公開番号】WO2006/021814
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(504000937)エイムスコ・リミテッド (5)
【Fターム(参考)】
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