説明

半二重通信システムにおいてダウンリンクサブフレーム及びアップリンクサブフレームを通信する方法

【課題】半二重通信システムにおいてダウンリンク及びアップリンクサブフレームを通信する方法を提供する。
【解決手段】アップリンクサブフレームの有効部分の受信の開始が、第1のダウンリンクサブフレームの有効部分の送信の終了から隔てられるようになっており、単一アイドル期間は、ダウンリンク/アップリンク所要最小アイドル継続時間とアップリンク/ダウンリンク所要最小アイドル継続時間との合計以上の継続時間を有し、第1のダウンリンクサブフレームの末尾、若しくはアップリンクサブフレームの先頭、又はその双方の、いずれかに確保され、インクリメンタルタイミング進み値は、アップリンク/ダウンリンク所要最小アイドル継続時間以上であり、且つ、単一アイドル期間の継続時間とダウンリンク/アップリンク所要最小アイドル継続時間との間の差以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、半二重通信システムにおいて基地局と少なくとも1つのユーザ機器との間でダウンリンクサブフレーム及びアップリンクサブフレームを通信する方法に関する。また、本発明は、そのハードウェアに係る態様では、通信装置、ユーザ機器、及び半二重通信システムに関する。最後に、本発明は、半二重通信システムのフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、たとえば、時分割複信(TDD)通信システム又は半二重周波数分割複信(HD FDD)通信システムであり得る半二重通信システムSYSの概要を表している。この通信システムSYSは、基地局BSと半二重ユーザ機器UE(i=1,2)との間で半二重通信を可能にする。これ以降、当該半二重ユーザ機器は、ユーザ機器と呼ばれ、基地局BSから異なる距離に位置することができる。図1に示す例では、ユーザ機器UEは、ユーザ機器UEよりも基地局BSに近い。
【0003】
基地局BSには、ダウンリンクサブフレームDL及びDLをユーザ機器UEに送信する通信手段(図1に図示せず)、及び、それらのユーザ機器からアップリンクサブフレームULを受信する通信手段(図1に図示せず)が備えられている。また、基地局BSは、フレームアイドル期間確保(frame idle periods reservation)を規定する手段(FIPRM)及びタイミング進み手段(timing advance means)(TAM)も含む。FIPRMの機能は後に説明される。TAMは、同様に後に説明されるタイミング進みメカニズムを実施する。
【0004】
基地局BSとユーザ機器UEとの間の半二重通信の期間中、ダウンリンクサブフレームDLは、基地局BSによってユーザ機器UEに送信される。この送信の後には、このユーザ機器UEによって基地局BSに送信されるアップリンクサブフレームULの送信が続く。これ以降、ULという表記を、アップリンクサブフレームを送信するユーザ機器UEから独立して、アップリンクサブフレームを示すのに使用する。
次に、アップリンクサブフレームULの送信の後には、別のダウンリンクサブフレームDLの送信が続く。これ以降、ダウンリンクサブフレームDLの後にアップリンクサブフレームULが続き、その後にダウンリンクサブフレームDLが続く一連のものをフレームと呼ぶ。
【0005】
図2は、現行の技術水準による半二重通信システムのフレームの送信を示すクロノグラムを表している。フレームは、所定の継続時間TDL1を有するダウンリンクサブフレームDL、このサブフレームの後に続く所定の継続時間TULを有するアップリンクサブフレームUL、及びこのサブフレーム自体の後に続く所定の継続時間TDL2を有する別のダウンリンクサブフレームDLを含む。
これらのサブフレームは、必ずしも、同じ所定の継続時間を有するとは限らないことに留意されたい。すなわち、TDL1はTDL2と異なる場合があり、TDL1はTULと異なる場合があり、TDL2はTULと異なる場合がある。
【0006】
第1のダウンリンクサブフレームDLの送信が時刻tで開始するとき、ユーザ機器UEでのダウンリンクサブフレームDLの受信は、基地局BSとユーザ機器UEとの間の距離に応じて、時刻tで開始する。
【0007】
2つの連続したサブフレーム間の干渉を回避し、連続したサブフレームの受信及び送信を同時に行うようにするいかなる要件も半二重の基地局BS及びユーザ機器UEに課すことを回避するために、フレームの2つの連続したサブフレームの各送信の間には、FIPRM手段によって、通例、アイドル期間が確保される。
現行の技術水準によれば、ダウンリンク/アップリンクアイドル期間と呼ばれるアイドル期間IPDLULは、ダウンリンクサブフレームDLとアップリンクサブフレームULとの間に規定され、アップリンク/ダウンリンクアイドル期間と呼ばれる別のアイドル期間IPULDLは、アップリンクサブフレームULとダウンリンクサブフレームDLとの間に規定される。
その結果、フレームに組み込まれたシンボル(symbol)が送信される有効送信継続時間Tは、そのフレームの全送信継続時間Tよりも短い。したがって、あらかじめ定められた一定の値である全フレーム送信継続時間Tは、以下の式によって定義される。
【0008】
【数1】

【0009】
ここで、Tは、基地局BSが非アクティブであるフレームアイドル期間継続時間である。フレームアイドル期間継続時間Tは、フレーム内に確保されたアイドル期間継続時間の合計である。
有効送信継続時間Tは、ダウンリンクサブフレームDLに組み込まれたシンボルの有効送信継続時間TEDL1と、アップリンクサブフレームULに組み込まれたシンボルの有効送信継続時間TEULと、ダウンリンクサブフレームDLに組み込まれたシンボルの有効送信継続時間TEDL2との合計である。
【0010】
2つの連続したサブフレームを送信する間のアイドル期間(IPDLUL又はIPULDL)は、各ユーザ機器との通信において基地局BSが各ユーザ機器との通信を正しく管理できるようにするために、このアイドル期間の所要最小アイドル継続時間(required minimum idle duration)を定義するいくつかの要件を順守することになる。
これらの要件は、ダウンリンクサブフレームの後にアップリンクサブフレームが続くサブフレームの送信シナリオ(DL/ULシナリオ)、又はアップリンクサブフレームの後にダウンリンクサブフレームが続くサブフレームのシナリオ(UL/DLシナリオ)のいずれかに依存する。
【0011】
基地局BSは、ユーザ機器UEによって送信されたアップリンクサブフレームULの有効部分を基地局BSが受信するためのスケジューリングされた開始時刻前の所要最小アイドル継続時間TDLULの期間中は、ユーザ機器UEに送信できない。
これ以降、この所要最小アイドル継続時間TDLULは、ダウンリンク/アップリンク所要最小アイドル継続時間と呼ばれる。
基地局BSがその期間中ユーザ機器UEに対してアクティブでないこのダウンリンク/アップリンク所要最小アイドル継続時間TDLULは、基地局BSとユーザ機器UEとの間の伝搬時間Tpropを2倍したものに、ユーザ機器UEが受信モードから送信モードにスイッチングするためのスイッチング継続時間TRTUEを加えたものよりも長くなければならない。
RTUEは、無線周波数デバイススイッチング継続時間だけでなく、次のアップリンク送信を適合させるためにダウンリンク制御情報の即時処理を可能にするいくつかの追加マージンも含む場合があることに留意されたい。
したがって、最大値2×Tprop−maxが、基地局BSと、基地局BSによってカバーされるセルの境界に位置するユーザ機器UEmaxとの間のラウンドトリップ遅延であるとき、ダウンリンク/アップリンク所要最小アイドル継続時間TDLULは、以下の式によって、近似的にセル半径に従って寸法が決定される。
【0012】
【数2】

【0013】
ここで、cは光の速度(celerity of the light)であり、Rは有効セル半径である。
【0014】
有効セル半径Rは、シャドウフェージングの変動が増加するにつれて増加する。場合によっては、チャネルの遅延広がりを追加しなければならないことに留意されたい。
【0015】
その上、基地局BSは、無線周波数スイッチング(注記:ここでは、対になっていないスペクトルで動作する半二重基地局が仮定されている;全二重基地局は無線周波数スイッチング継続時間を有しない)を可能にするために、基地局BSがアップリンクサブフレームULの有効部分を受信するためのスケジューリングされた終了時刻の後の所要最小アイドル継続時間TULDLの期間中は、ユーザ機器UEに送信できない。
これ以降、この所要最小アイドル継続時間TULDLは、アップリンク/ダウンリンク所要最小アイドル継続時間と呼ばれる。
図2に示すように、基地局がその期間中アクティブでないアップリンク/ダウンリンク所要最小アイドル継続時間TULDLは、図2に示すように、基地局BSが受信モードから送信モードにスイッチングするためのスイッチング継続時間TRTBSよりも長くなければならない。
TRUEは、ユーザ機器UEのスイッチング継続時間であり、これは、図2の場合、継続時間TRTBSよりも大きい。
RTBSは、無線周波数スイッチング継続時間だけでなく、次のダウンリンク送信を適合させるためにアップリンク制御情報の即時処理を可能にするためのいくつかの追加マージンも含む場合があることに留意されたい。
【0016】
したがって、ユーザ機器スイッチング継続時間TTRUE及び基地局BSスイッチング継続時間TRTBS並びに伝搬遅延Tpropの関数であるアップリンク/ダウンリンク所要最小アイドル継続時間TULDLは、以下の式によって定義される。
【0017】
【数3】

【0018】
propが増加するにつれて、TULDLに対するユーザ機器UEのスイッチング継続時間のどの影響も削減される。
実際には、通信システムは、Tprop≒0に至るまでを含めて、Tpropの値の範囲を処理する必要があり、その結果、アップリンク/ダウンリンク所要最小アイドル継続時間TULDLは、ユーザ機器UEスイッチング継続時間又は基地局BSスイッチング継続時間の最大値によって設定される。
しかしながら、これらのスイッチング継続時間は、無視できるものと予想される。
(1)及び(2)から、TDLULよりもはるかに短いTULDLを有することができる。
実際には、セル半径Rが5kmに等しい場合に、TULDLは通例8μsに近く、TDLULは通例30μsに近い。
【0019】
たとえば、サイクリックプレフィックスを有する若しくは有しない直交波周波数分割多重(OFDM)変調技法、インターリーブド周波数分割多元接続(Interleaved Frequency Division Multiple Access)(IFDMA)やDFT拡散OFDMのような単一搬送波周波数領域多元接続(Single-Carrier Frequency Domain Multiple Access)(SC−FDMA)技法、又は符号分割多元接続(CDMA)ベースの技法を使用して、ブロック単位の送信が半二重通信システムSYSで行われるときに、データのブロック構造は、アイドル期間の寸法決定に有利に考慮することができる。
たとえば、各アイドル期間は、シンボル継続時間(アップリンクサブフレーム又はダウンリンクサブフレームのいずれかによって運ばれるシンボルの継続時間)の倍数として選ぶことができる。なお、シンボルは、サンプルのブロックである(たとえば、OFDMシンボルは、サイクリックプレフィックスを含み、SC−FDMAシンボルは、サイクリックプレフィックスを含む等)。
アップリンクサブフレーム及びダウンリンクサブフレームは、シンボルの倍数から構成されるので、アイドル期間の確保によって、同じリンクのサブフレーム間で同じ送信パラメータ(たとえば、サンプリング周波数、FFTサイズ、サイクリックプレフィックスの長さ等)を保ちながら、セル範囲に関して各アイドル期間をそれぞれ適合させることが可能になる。
これは、アイドル期間がサブフレームの通信中に必要とされないときに、これらのアイドル期間をシンボルに置き換えることができるので有利である。さらに、ブロック単位の送信が全二重送信にも使用されているときは、半二重と全二重との間の共通性がより高く保証される。
【0020】
通例、(1)及び(2)で与えられる所要最小アイドル継続時間は、シンボル継続時間の倍数と正確には一致しない場合がある。これは、アイドル期間の寸法を過剰に決定することにつながる。すなわち、その所要最小アイドル継続時間から規定すべき各アイドル期間について、その所要最小アイドル継続時間以上であり、且つ、シンボル継続時間の倍数である最小アイドル期間を見つけることにつながる。
【0021】
大まかに言えば、アイドル期間は、図3及び図4においてより正確に示すように、ダウンリンクサブフレーム、若しくはアップリンクサブフレーム、又はその双方、のいずれかから取ることができる。
【0022】
図3及び図4は、半二重通信システムSYSのフレームアイドル期間確保を示すクロノグラムの例を表している。
【0023】
ダウンリンク/アップリンクアイドル継続時間IPDLULは、図3aに示すように先行するダウンリンクサブフレームDL、若しくは図3bに示すように次のアップリンクサブフレーム、又は図3cに示すようにその双方、のいずれかに確保することができる。
【0024】
アイドル期間IPDLULがダウンリンクサブフレームDLから取られるときは、ダウンリンクサブフレームDLに組み込まれたシンボルは、図3aに示すように、有効送信継続時間TEDL1の期間中にのみ送信される。
その場合、上述した要件及びダウンリンクサブフレームDLに組み込まれたシンボルの継続時間TSDL1に従った、ダウンリンク/アップリンク所要最小アイドル継続時間TDLULの適した寸法決定を考慮することによって、アイドル期間IPDLULは、
【0025】
【数4】

【0026】
により与えられる。ここで、
【0027】
【数5】

【0028】
は、xよりも大きな最小の整数を規定する。
【0029】
或いは、アイドル期間IPDLULがアップリンクサブフレームULから取られるときは、アップリンクサブフレームULに組み込まれたシンボルは、図3bに示すように、有効送信継続時間TEULの期間中にのみ送信される。
その場合、上述した要件及びアップリンクシンボル継続時間TSULに従った、ダウンリンク/アップリンクアイドル期間IPDLULの適した寸法決定を考慮することによって、アイドル期間IPDLULは、
【0030】
【数6】

【0031】
により与えられる。
【0032】
或いは、アイドル期間IPDLULがダウンリンクサブフレームDL及びアップリンクサブフレームULの双方から取られるときは、ダウンリンク/アップリンク所要最小アイドル継続時間TDLULは、ダウンリンクサブフレームDLから取られたダウンリンク/アップリンク所要継続時間TDLULと、アップリンクサブフレームULから取られたダウンリンク/アップリンク所要継続時間TDLULとの合計に等しい。
したがって、図3cに示すように、ダウンリンクサブフレームDLに組み込まれたシンボルは、有効送信継続時間TEDL1の期間中にのみ送信され、アップリンクサブフレームULに組み込まれたシンボルは、有効送信継続時間TEULの期間中にのみ送信される。
上述した要件、並びに、ダウンリンクサブフレームDLのアイドル期間の部分のダウンリンクシンボル継続時間TSDL1、及びアップリンクサブフレームのアイドル期間の部分のアップリンクシンボル継続時間TSULに従った、ダウンリンク/アップリンク所要最小アイドル継続時間TDLULの適した寸法決定を考慮することによって、アイドル期間IPDLULは、
【0033】
【数7】

【0034】
により与えられる。
【0035】
アップリンク/ダウンリンクアイドル期間IPULDLも、(図4aに示すように)先行するアップリンクサブフレーム、若しくは(図4bに示すように)次のダウンリンクサブフレーム、又は(図4cに示すように)双方、のいずれかから取ることもできる。
【0036】
アップリンク/ダウンリンクアイドル期間IPULDLがアップリンクサブフレームULから取られるときは、アップリンクサブフレームULに組み込まれたシンボルは、図4aに示すように、有効送信継続時間TEULの期間中にのみ送信される。
その場合、上述した要件及び継続時間TSULに従った、アップリンク/ダウンリンク所要最小アイドル継続時間TULDLの適した寸法決定を考慮することによって、アイドル期間IPULDLは、
【0037】
【数8】

【0038】
により与えられる。
【0039】
或いは、アップリンク/ダウンリンクアイドル期間IPULDLがダウンリンクサブフレームDLから取られるときは(図4b参照)、ダウンリンクサブフレームDLに組み込まれたシンボルは、図4bに示すように、有効送信継続時間TEDL2の期間中にのみ送信される。
その場合、上述した要件及びダウンリンクシンボル継続時間TSDL2に従った、アップリンク/ダウンリンク所要最小アイドル継続時間TULDLの適した寸法決定を考慮することによって、アイドル期間IPULDLは、
【0040】
【数9】

【0041】
により与えられる。
【0042】
或いは、アップリンク/ダウンリンクアイドル期間IPULDLがダウンリンクサブフレームDL及びアップリンクサブフレームULの双方から取られるときは、アップリンク/ダウンリンク所要最小アイドル継続時間TULDLは、アップリンクサブフレームULから取られたアップリンク/ダウンリンク所要継続時間TULDLと、ダウンリンクサブフレームDLから取られたアップリンク/ダウンリンク所要継続時間TULDLとの合計に等しい。
図4cに示すように、ダウンリンクサブフレームDLに組み込まれたシンボルは、有効送信継続時間TEDL2の期間中にのみ送信され、アップリンクサブフレームULに組み込まれたシンボルは、有効送信継続時間TEULの期間中に送信される。
上述した要件、並びに、アップリンクサブフレームULのアイドル期間の部分のアップリンクシンボル継続時間TSUL、及びダウンリンクサブフレームDLのアイドル期間の部分のダウンリンクシンボル継続時間TSDL2に従った、アップリンク/ダウンリンク所要最小アイドル継続時間TULDLの適した寸法決定を考慮することによって、アイドル期間IPULDLは、
【0043】
【数10】

【0044】
により与えられる。
【0045】
アイドル期間は、図3に示す1つの構成と図4に示す1つの構成とを組み合わせたものを使用してフレームに確保される。
たとえば図3aに示す構成のように、図3の構成がアップリンクサブフレームULの有効継続時間を全継続時間TULに等しくなるように規定するときは、この有効送信継続時間は、たとえば図4aに示す構成のように、アイドル期間IPULDL(又はその一部)がアップリンクサブフレームULの最後に確保されることを図4の構成が規定する場合に、削減されることに留意されたい。
【0046】
アイドル期間IPDLUL及びIPULDLの検討されている確保が何であっても、ダウンリンクサブフレーム及び/又はアップリンクサブフレームの全通信継続時間のいくつかの部分は、アイドル期間の寸法を過剰に決定することによって失われる。
その結果、特に、大きなシンボル継続時間TSDL1,TSDL2,及び/又はTSULの場合に、有効送信継続時間Tが大幅に減少するおそれがある。
【0047】
通例、アイドル期間確保とは独立して、各ユーザ機器UEによって送信されたアップリンクサブフレームULの有効部分は、基地局BSにおいて同期させるために、すべて同じ時刻に受信される。この時刻は、アップリンクサブフレームの同期時刻と呼ばれる。
これによって、基地局の処理が最適化される。
ユーザ機器UEは、ダウンリンクサブフレームDLの受信の開始時刻t、有効ダウンリンクサブフレーム継続時間TEDL1、及びアイドル期間IPDLULの継続時間のみを知っており、したがって、時刻t+TEDL1+TRTUEにアップリンクサブフレームULの有効部分を送信すると仮定される。
図2に示すように、時刻tは基地局BSとユーザ機器UEとの間の距離の関数であるので、時刻t+TEDL1+TRTUEにそのアップリンクサブフレームULの有効部分を送信したのでは、同期時刻において基地局ですべてのアップリンクサブフレームを同期させることは可能でない。そのために、タイミング進み手段TAMが使用される。
【0048】
図5は、現行の技術水準に従ってアップリンクサブフレームを同期させるために基地局BSにより使用されるタイミング進みメカニズムを示すクロノグラムを表している。
【0049】
ユーザ機器の観点からすれば、タイミング位置合わせメカニズムの本質は、ユーザ機器UEによるアップリンクサブフレームULの有効部分の送信の開始前で、第1のダウンリンクサブフレームDLの受信の終了後に、一定の時間量を待つことにある。
これは、基地局BSにおいて、ユーザ機器UEから送信されるアップリンクサブフレームULの有効部分の受信開始時刻TSTULを、このメカニズムを同様に実行する他のユーザ機器によって送信されるアップリンクサブフレームの有効部分の受信開始時刻と共に位置合わせするためである。
このタイミング位置合わせメカニズムも、タイミング進みメカニズムと呼ばれる。
【0050】
このようなメカニズムでは、ユーザ機器UEは、以下の式によって規定された基準時刻からタイミング進み値tAiだけ進められた時刻に、自身のアップリンクサブフレームULを送信する。
【0051】
【数11】

【0052】
そのために、基地局BSは、各ユーザ機器UEにタイミング進み値tAiを送信し、各ユーザ機器UEは、このタイミング進み値tAiから、アップリンクサブフレームULの有効部分の送信を開始することになる時刻を定める。
したがって、タイミング進みメカニズムは、このようなタイミング進み値tAiを規定するために、基地局BSから各ユーザ機器UEまでの伝搬遅延を基地局BSで推定することを要する。
したがって、図5に示すように、ユーザ機器UEは、時刻ti=1+TEDL1+IPDLUL−tA1に自身のアップリンクサブフレームULの有効部分を送信し、基地局BSからより遠距離に位置するユーザ機器UEは、時刻ti=2+TEDL1+IPDLUL−tA2に自身のアップリンクサブフレームULの有効部分を送信する。
【0053】
ブロック単位の送信では、タイミング進み値は、シンボル継続時間のごく一部となる場合がある。
【0054】
上述したように、有効送信継続時間Tは、アイドル期間IPDLUL及びIPULDLの寸法を過剰に決定することによって大幅に削減されるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0055】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1213855号公報
【0056】
本発明は、半二重通信システムにおいて基地局と少なくとも1つの半二重ユーザ機器との間でダウンリンクサブフレーム及びアップリンクサブフレームを通信する方法を開示することにより、この課題を解決することを意図しており、
当該方法は、
第1の送信ステップであって、当該第1の送信ステップの期間中に、第1のダウンリンクサブフレームが、基地局によって上記少なくとも1つの半二重ユーザ機器に送信される、第1の送信ステップと、
上記第1の送信ステップの後に続く受信ステップであって、当該受信ステップの期間中に、上記少なくとも1つの半二重ユーザ機器から送信されたアップリンクサブフレームが、上記第1のダウンリンクサブフレームの有効部分の送信の終了と上記アップリンクサブフレームの有効部分の受信の開始との間に規定される少なくともダウンリンク/アップリンク所要最小アイドル継続時間の後に、上記基地局によって受信されることが期待される、受信ステップと、
上記受信ステップの後に続く第2の送信ステップであって、当該第2の送信ステップの期間中に、第2のダウンリンクサブフレームが、上記アップリンクサブフレームの有効部分の受信の終了と上記第2のダウンリンクサブフレームの有効部分の送信の開始との間に規定される少なくともアップリンク/ダウンリンク所要最小アイドル継続時間の後に、基地局によって上記少なくとも1つの半二重ユーザ機器に送信される、第2の送信ステップと、
タイミング進み値規定ステップであって、当該タイミング進み値規定ステップの期間中に、上記少なくとも1つの半二重ユーザ機器のそれぞれによって送信されたアップリンクサブフレームの有効部分の先頭が、同じスケジューリングされた同期時刻に受信されるように、タイミング進み値が上記少なくとも1つの半二重ユーザ機器のそれぞれについて規定されると、タイミング進み値が上記少なくとも1つの半二重ユーザ機器のそれぞれに送信される、タイミング進み値規定ステップと
を含み、
当該方法は、
上記スケジューリングされた同期時刻が、単一アイドル期間(single idle period)とインクリメンタルタイミング進み値(incremental timing advance value)との間の差に等しい継続時間だけ、上記アップリンクサブフレームの有効部分の受信の開始が、上記第1のダウンリンクサブフレームの有効部分の送信の終了から隔てられるようになっており、
上記単一アイドル期間が、上記ダウンリンク/アップリンク所要最小アイドル継続時間と上記アップリンク/ダウンリンク所要最小アイドル継続時間との合計以上の継続時間を有し、上記第1のダウンリンクサブフレームの末尾、若しくは上記アップリンクサブフレームの先頭、又はその双方、のいずれかに確保され、
上記インクリメンタルタイミング進み値が、上記アップリンク/ダウンリンク所要最小アイドル継続時間以上であり、且つ、上記単一アイドル期間の継続時間と上記ダウンリンク/アップリンク所要最小アイドル継続時間との間の差以下であることを特徴とする。
【0057】
この方法は、所要最小アップリンク/ダウンリンクアイドル継続時間の寸法を個別に過剰決定することを回避し、そのようにして有効送信継続時間若しくは基地局のカバレッジ(coverage)又はその双方のいずれかを増加するので、有利である。
【0058】
本発明の別の態様によると、
上記通信システムは、上記基地局と少なくとも1つの全二重ユーザ機器との間でダウンリンクサブフレーム及びアップリンクサブフレームを全二重でも通信するようになっており、
当該方法は、上記少なくとも1つの全二重ユーザ機器が、上記少なくとも1つの全二重ユーザ機器のそれぞれによって送信されたアップリンクサブフレームの有効部分の先頭が上記スケジューリングされた同期時刻に受信されるように、上記タイミング進み値規定ステップの期間中に規定されたタイミング進み値を基地局によって通知されることを特徴とする。
【0059】
これは、たとえば、上記単一アイドル期間が、(半二重通信において)ダウンリンクサブフレームにのみ確保されるときに有利である。その理由は、その場合に、全二重通信又は半二重通信のいずれかを使用してすべてのユーザ機器から送信されたアップリンクサブフレームの有効部分が、同じ時刻に同期され、基地局BSにおける復号性能の増加を提供するからである。
【0060】
本発明の別の態様によると、
上記半二重ユーザ機器又は上記全二重ユーザ機器のそれぞれに送信されたタイミング進み値は、2つの成分によって規定され、これらの2つの成分の合計が、上記タイミング進み値に等しく、これらの2つの成分の一方が、上記インクリメンタルタイミング進み値に等しく、
当該方法は、上記2つの成分の合計が基地局によって実行されることを特徴とする。
【0061】
これは、ユーザ機器が上記加算の計算のためにバッテリーや計算能力等の資源を消費することを回避するので有利である。
【0062】
本発明の別の態様によると、
上記半二重ユーザ機器又は上記全二重ユーザ機器のそれぞれに送信されたタイミング進み値は、2つの成分によって規定され、これらの2つの成分の合計が、上記タイミング進み値に等しく、これらの2つの成分の一方が、上記インクリメンタルタイミング進み値に等しく、
上記2つの成分の加算が、上記少なくとも1つの半二重ユーザ機器又は上記少なくとも1つの全二重ユーザ機器のそれぞれによって計算され、
当該方法は、上記2つの成分が、上記少なくとも1つの半二重ユーザ機器又は上記少なくとも1つの全二重ユーザ機器のそれぞれに送信されることを特徴とする。
【0063】
これは、基地局が上記加算の計算をサポートすることを回避し、通信中に上記インクリメンタルタイミング進み値が動的に進化(dynamic evolution)することを可能にするので有利である。
【0064】
本発明の別の態様によると、
上記半二重ユーザ機器又は上記全二重ユーザ機器のそれぞれに送信されたタイミング進み値は、2つの成分によって規定され、これらの2つの成分の合計が、上記タイミング進み値に等しく、これらの2つの成分の一方が、上記インクリメンタルタイミング進み値に等しく、
上記2つの成分の加算が、上記少なくとも1つの半二重ユーザ機器又は上記少なくとも1つの全二重ユーザ機器のそれぞれによって計算され、
当該方法は、上記インクリメンタルタイミング進み値が、上記少なくとも1つの半二重ユーザ機器又は上記少なくとも1つの全二重ユーザ機器のメモリから得られることを特徴とする。
【0065】
これは、基地局が上記インクリメンタルタイミング進み値を複数回送信することを回避するので有利である。
【0066】
上記半二重通信システムは、ブロック単位の送信を可能にし、上記単一アイドル期間は、シンボル継続時間の倍数である。
【0067】
これは、アイドル期間がサブフレームの通信中に必要とされないときに、これらのアイドル期間を制御シンボル又はデータシンボルに置き換えることができるので、有利である。さらに、ブロック単位の送信を全二重送信にも使用することができるときは、半二重と全二重との間の共通性がより高く保証される。
【0068】
本発明の別の態様によると、上記半二重通信システムは、ブロック単位の送信を可能にし、上記単一アイドル期間は、上記第1のダウンリンクサブフレームに組み込まれたシンボルの継続時間の倍数と、上記アップリンクサブフレームに組み込まれたシンボルの継続時間の倍数との合計であることを特徴とする。
【0069】
本発明の一ハードウェアに係る態様によると、
本発明はまた、
通信システムの少なくとも1つの半二重ユーザ機器とダウンリンクサブフレーム及びアップリンクサブフレームの通信を行う上記通信システムに含まれる通信装置であって、
当該通信装置は、
第1のダウンリンクサブフレームを上記少なくとも1つの半二重ユーザ機器に送信し、
上記第1のダウンリンクサブフレームの有効部分の送信の終了と上記アップリンクサブフレームの有効部分の受信の開始との間に規定される少なくともダウンリンク/アップリンク所要最小アイドル継続時間の後に、上記少なくとも1つの半二重ユーザ機器から送信されたアップリンクサブフレームを受信し、
上記アップリンクサブフレームの有効部分の受信の終了と第2のダウンリンクサブフレームの有効部分の送信の開始との間に規定される少なくともアップリンク/ダウンリンク所要最小アイドル継続時間の後に、上記第2のダウンリンクサブフレームを上記少なくとも1つの半二重ユーザ機器に送信し、且つ、
上記少なくとも1つの半二重ユーザ機器のそれぞれによって送信されたアップリンクサブフレームの有効部分の先頭が、同じスケジューリングされた同期時刻に受信されるように、タイミング進み値が上記少なくとも1つの半二重ユーザ機器のそれぞれについて規定されると、タイミング進み値を上記少なくとも1つの半二重ユーザ機器のそれぞれに送信するように意図される、通信装置に関し、
上記通信装置は、
上記アップリンクサブフレームの有効部分の受信の開始が、上記第1のダウンリンクサブフレームの有効部分の送信の終了から、単一アイドル期間とインクリメンタルタイミング進み値との間の差に等しい継続時間だけ隔てられるように、上記スケジューリングされた同期時刻を規定する手段であって、
上記単一アイドル期間が、上記ダウンリンク/アップリンク所要最小アイドル継続時間と上記アップリンク/ダウンリンク所要最小アイドル継続時間との合計以上の継続時間を有し、上記インクリメンタルタイミング進み値が、上記アップリンク/ダウンリンク所要最小アイドル継続時間以上であり、且つ、上記単一アイドル期間の継続時間と上記ダウンリンク/アップリンク所要最小アイドル継続時間との間の差以下である、上記スケジューリングされた同期時刻を規定する手段と、
上記第1のダウンリンクサブフレームの末尾、若しくは上記アップリンクサブフレームの先頭、又はその双方、のいずれかに上記単一アイドル期間を確保する手段と
を備えることを特徴とする。
【0070】
本発明の別の態様によると、
上記通信装置は、上記通信装置と少なくとも1つの全二重ユーザ機器との間でダウンリンクサブフレーム及びアップリンクサブフレームを全二重でも通信するようになっており、
当該通信装置は、上記少なくとも1つの全二重ユーザ機器のそれぞれによって送信されたアップリンクサブフレームの有効部分の先頭が、上記スケジューリングされた同期時刻に受信されるように、上記少なくとも1つの全二重ユーザ機器のそれぞれにタイミング進み値を通知する手段を備えることを特徴とする。
【0071】
本発明の一実施の形態によると、
上記半二重ユーザ機器又は上記全二重ユーザ機器のそれぞれに送信されたタイミング進み値は、2つの成分によって規定され、これらの2つの成分の合計が、上記タイミング進み値に等しく、これらの2つの成分の一方が、上記インクリメンタルタイミング進み値であり、
上記通信装置は、上記2つの成分を加算する手段を備える。
【0072】
本発明の一実施の形態によると、
上記半二重ユーザ機器又は上記全二重ユーザ機器のそれぞれに送信されたタイミング進み値は、2つの成分によって規定され、これらの2つの成分の合計が、上記タイミング進み値に等しく、これらの2つの成分の一方が、上記インクリメンタルタイミング進み値に等しく、
上記少なくとも1つの半二重ユーザ機器又は上記少なくとも1つの全二重ユーザ機器のそれぞれが、上記2つの成分を加算するようになっており、
上記通信装置は、上記少なくとも1つの半二重ユーザ機器又は上記少なくとも1つの全二重ユーザ機器のそれぞれに上記2つの成分を送信する手段を備えることを特徴とする。
【0073】
本発明のハードウェアに係る別の態様では、
本発明は、
通信システムにおいて上述の通信装置とダウンリンクサブフレーム及びアップリンクサブフレームを通信するように意図されるユーザ機器であって、
送信されたタイミング進み値は、2つの成分によって規定され、これらの2つの成分の合計が、上記タイミング進み値に等しく、これらの2つの成分の一方が、上記インクリメンタルタイミング進み値に等しい、ユーザ機器に関し、
当該ユーザ機器は、上記2つの成分を加算する手段を備えることを特徴とする。
【0074】
上記ユーザ機器の一変形形態によると、ユーザ機器は、上記インクリメンタルタイミング進み値を記憶する手段をさらに備える。
【0075】
さらに、本発明のハードウェアに係る別の態様では、本発明は、少なくとも1つのユーザ機器と、少なくとも1つの上述の通信装置とを含む通信システムに関する。
【0076】
上記通信システムの一変形態様によると、
送信されたタイミング進み値は、2つの成分によって規定され、これらの2つの成分の合計が、上記タイミング進み値に等しく、これらの2つの成分の一方が、上記インクリメンタルタイミング進み値に等しく、
上記通信装置は、上記2つの成分を加算する手段をさらに備える。
【0077】
上記通信システムの別の変形によると、
送信されたタイミング進み値は、2つの成分によって規定され、これらの2つの成分の合計が、上記タイミング進み値に等しく、これらの2つの成分の一方が、上記インクリメンタルタイミング進み値に等しく、
上記通信装置は、上記2つの成分を送信する手段をさらに備えることを特徴とし、上記少なくとも1つのユーザ機器は、上記2つの成分を加算する手段を備える。
【0078】
上記通信システムの別の変形態様によると、上記少なくとも1つのユーザ機器は、上記インクリメンタルタイミング進み値を記憶する手段を備える。
【0079】
最後に、本発明のハードウェアに係る別の態様では、
本発明は、
基地局と少なくとも1つの半二重ユーザ機器との間で交換される信号のフレームであって、当該フレームが、第1のダウンリンクサブフレームと、その後に続く少なくともダウンリンク/アップリンク所要最小アイドル継続時間と、その後に続くアップリンクサブフレームと、その後に続く少なくともアップリンク/ダウンリンク所要最小アイドル継続時間と、その後に続く第2のダウンリンクサブフレームとを含む、フレームに関し、
基地局においてアップリンクサブフレームの有効部分の先頭を同期させるためのスケジューリングされた同期時刻が規定され、
当該フレームは、
上記スケジューリングされた同期時刻が、単一アイドル期間とインクリメンタルタイミング進み値との間の差に等しい継続時間だけ、上記アップリンクサブフレームの有効部分の先頭が、上記第1のダウンリンクサブフレームの有効部分の末尾から隔てられるようになっており、
上記単一アイドル期間が、上記ダウンリンク/アップリンク所要最小アイドル継続時間と上記アップリンク/ダウンリンク所要最小アイドル継続時間との合計以上の継続時間を有し、上記第1のダウンリンクサブフレームの末尾、若しくは上記アップリンクサブフレームの先頭、又はその双方の、いずれかに確保され、
上記インクリメンタルタイミング進み値が、上記アップリンク/ダウンリンク所要最小アイドル継続時間以上であり、且つ、上記単一アイドル期間の継続時間と上記ダウンリンク/アップリンク所要最小アイドル継続時間との間の差以下であることを特徴とする。
【0080】
本発明の特徴は、一例の実施形態の以下の説明を読むことによってより明らかになる。上記説明は、添付図面に関して作成されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】半二重通信システムSYSの概要を示す図である。
【図2】現行の技術水準による通信システムのフレームの送信を示すクロノグラムの一例である。
【図3】半二重通信システムSYSのフレームアイドル期間確保を示すクロノグラムの例である。
【図4】半二重通信システムSYSのフレームアイドル期間確保を示すクロノグラムの例である。
【図5】現行の技術水準に従ってアップリンクサブフレームを同期させるために基地局BSにより使用されるタイミング進みメカニズムを示すクロノグラムである。
【図6】本発明による半二重通信システムのフレームの一例を示すクロノグラムである。
【図7】本発明による、アップリンクサブフレームを同期させるためのタイミング進みメカニズムの使用を示すクロノグラムである。
【図8】本発明による半二重通信システムSYSの概要を示す図である。
【図9】本発明による、全二重通信システムにおいてアップリンクサブフレームを同期させるためのタイミング進みメカニズムの使用を示すクロノグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0082】
図6は、本発明による半二重通信システムのフレームの一例を示すクロノグラムを表している。このフレームは、所定の継続時間TDL1を有する第1のダウンリンクサブフレームDL、このサブフレームの後に続く所定の継続時間TULを有するアップリンクサブフレームUL、このサブフレーム自体の後に続く所定の継続時間TDL2を有する別のダウンリンクサブフレームDLを含む。
これらのサブフレームは、必ずしも、同じ所定の継続時間を有するとは限らないことに留意されたい。すなわち、TDL1はTDL2と異なる場合があり、TDL1はTULと異なる場合があり、TDL2はTULと異なる場合がある。
【0083】
フレームは、単一アイドル期間IPを含む。この単一アイドル期間IPは、少なくとも、ダウンリンク/アップリンク所要最小アイドル継続時間TDLULとアップリンク/ダウンリンク所要最小アイドル継続時間TULDLとの合計に等しい。
単一アイドル期間IPは、冒頭のパラグラフで説明したようにこの合計の寸法を過剰に決定することによって規定される。
この単一アイドル期間IPは、第1のダウンリンクサブフレームDLの末尾、若しくはアップリンクサブフレームULの先頭、又はその双方の、いずれかから取られる。
【0084】
フレームは、アップリンクサブフレームULの末尾から取られたアイドル期間も、第2のダウンリンクサブフレームDLの先頭から取られたアイドル期間も含まないことに留意されたい。
【0085】
冒頭のパラグラフで上述したタイミング進みメカニズムを図6に示すフレーム構造に適用すると、すべてのユーザ機器から送信されたアップリンクサブフレームの有効部分が、基地局BSにおいて時刻T’STUL=t+TEDL1+IPで同期して受信される。その場合、アップリンクサブフレームの有効部分の受信は、時刻t+T−TDL2に終了する。
したがって、第2のダウンリンクサブフレームDLが一定有効継続時間TEDL2=TDL2を有するとき、時刻t+Tでのフレームの終了前に、無線周波数スイッチング及び第2のダウンリンクサブフレームDLの送信の双方を行うのに十分な時間は残っていない。
【0086】
図7は、本発明によるアップリンクサブフレームの有効部分を同期させるためのタイミング進みメカニズムの使用を示すクロノグラムを表している。図5及び図6に示す要素の参照子であって、図7に示す要素の参照子と一致するものは、同じ要素に割り当てられている。
【0087】
アップリンクサブフレームULの有効部分の受信の終了と、第2のダウンリンクサブフレームDLの有効部分の送信の開始との間に十分な時間を得るために、同期時刻T’STULは、インクリメンタルタイミング進み値Δtだけ進められる。したがって、この新しい同期時刻T’’STULは、t+TEDL1+IP−Δtに等しい。
【0088】
インクリメンタルタイミング進み値Δtは、スイッチングを可能にするために、アップリンク/ダウンリンク所要最小アイドル継続時間TULDL以上となる。
さらに、第1のダウンリンクサブフレームDLの有効部分の送信の終了と、アップリンクサブフレームULの有効部分の受信の開始との間の継続時間IP−Δtは、ダウンリンク/アップリンク所要最小アイドル継続時間TDLUL以上となる。
したがって、インクリメンタルタイミング進み値Δtは、継続時間IP−TDLUL以下となる。
【0089】
すべてのユーザ機器から送信されたアップリンクサブフレームの有効部分を同期時刻T’’ STULに同期させるために、インクリメンタルタイミング進み値Δtは、各ユーザ機器UEでタイミング進みメカニズムを実行するのに使用されるために各タイミング進み値ΔtAiに加算される。
【0090】
本発明は、TULDLとTDLULとの合計の寸法を過剰に決定することが、これらの継続時間の寸法を個別に過剰に決定するよりも効率的であり得るので、フレームアイドル期間継続時間Tを削減することによって、スペクトル効率を改善することができる。
【0091】
たとえば、TDLUL=43μs、TULDL=8μs、TSDL1=70μs、TSUL=60μsであり、且つ、アイドル期間が先のサブフレームから取られるものと仮定すると、ダウンリンク/アップリンクアイドル期間IPDLULは70μsに等しくなり、アップリンク/ダウンリンクアイドル期間IPULDLは60μsに等しくなり、アイドル期間IPは70μsに等しくなる。したがって、本発明により、フレームアイドル期間継続時間は削減される。
【0092】
また、本発明は、IP−Δtがダウンリンク/アップリンクアイドル期間IPDLULよりも大きいときに、基地局BSのカバレッジも改善することができる。これによって、基地局BSは、有効セル半径Rよりも遠くに位置するユーザ機器と通信することが可能になる。
【0093】
たとえば、TDLUL=43μs、TULDL=8μs、TSDL1=47μs、TSUL=45μsであり、且つ、アイドル期間が先行するサブフレームから取られるものと仮定すると、ダウンリンク/アップリンクアイドル期間IPDLULは47μsに等しくなり、アップリンク/ダウンリンクアイドル期間IPULDLは45μsに等しくなり、アイドル期間IPは94μsに等しくなる。
その上、ΔtがTULDLに等しいと仮定すると、第1のダウンリンクサブフレームの有効部分の送信の終了と、基地局におけるアップリンクサブフレームの有効部分の受信の開始との間の継続時間は、47μsから94−8=86μsに増加する。
の増加はわずかであるにもかかわらず、本発明により、基地局BSのカバレッジは、39×10−6×3×10/2=5.85km分改善される(式1参照)。
【0094】
本発明の好ましい実施形態によれば、タイミング進み値tAi及びインクリメンタルタイミング進み値Δtの加算が行われ、その結果が基地局によって各ユーザ機器UEに送信される。
【0095】
本発明の別の実施形態によれば、インクリメンタルタイミング進み値Δtが、基地局によって上記ユーザ機器のそれぞれに送信される。
【0096】
本発明の別の実施形態によれば、インクリメンタルタイミング進み値Δtが、上記ユーザ機器のそれぞれによって記憶される。
【0097】
本発明の別の実施形態によれば、半二重通信システムがブロック単位の送信を可能にし、アイドル期間IPは、TSDL1又はTSULのいずれかであるシンボル継続時間の倍数である。
【0098】
本発明の別の実施形態によれば、半二重通信システムがブロック単位の送信を可能にし、アイドル期間IPは、第1のダウンリンクサブフレームに組み込まれたシンボルの継続時間TSDL1の倍数と、アップリンクサブフレームに組み込まれたシンボルの継続時間TSULの倍数との合計である。
【0099】
図8は、本発明による半二重通信システムSYSの概要を表している。この通信システムSYSは、たとえば、時分割複信(TDD)通信システム又は半二重周波数分割複信(HD FDD)通信システムである。
通信システムSYSは、通信装置BSと、少なくとも1つのユーザ機器UE及び/又は少なくとも1つのユーザ機器UEとの間で半二重通信を可能にする。通信装置BSは、たとえば基地局であり、ユーザ機器UE及びユーザ機器UEは、共に、たとえば移動電話又は固定ワイヤレス端末である。
【0100】
通信装置BSは、ダウンリンクサブフレームDL及びDL並びにアップリンクサブフレームULの通信をユーザ機器UE(又はUE)と行うための半二重通信システムSYSに含まれている。
第1のダウンリンクサブフレームDLは、通信装置BSによってユーザ機器UE(又はUE)に送信され、その後に続いて、アップリンクサブフレームULが、ユーザ機器UE(又はUE)から通信装置BSに送信される。次に、アップリンクサブフレームフレームUL自体の後に、第2のダウンリンクサブフレームDLが、ユーザ機器UE(又はUE)に送信される。
第1のダウンリンクサブフレームDLの有効部分の送信は、アップリンクサブフレームULの有効部分の受信から、少なくともダウンリンク/アップリンク所要最小アイドル継続時間TDLULだけ隔てられ、上記アップリンクサブフレームULの有効部分の受信は、上記第2のダウンリンクサブフレームDLの有効部分の送信から、少なくともアップリンク/ダウンリンク所要最小アイドル継続時間TULDLだけ隔てられている。
【0101】
本発明によれば、上記通信装置BSは、
上記第1のダウンリンクサブフレームDLの末尾、若しくは上記アップリンクサブフレームULの先頭、又はその双方の、いずれかから取られる単一アイドル期間IPを確保する手段FIPRMであって、上記単一アイドル期間IPが、上記ダウンリンク/アップリンク所要最小アイドル継続時間TDLULと上記アップリンク/ダウンリンク所要最小アイドル継続時間TULDLとの合計以上の継続時間を有する、手段FIPRMと、
上記ユーザ機器のそれぞれによって送信されたアップリンクサブフレームの有効部分が、スケジューリングされた同期時刻T’STULに受信されるように、ユーザ機器UE(又はUE)のタイミング進み値tAi(又はtAj)を規定する手段TAMであって、当該スケジューリングされた同期時刻T’STULは、上記アップリンクサブフレームの有効部分の受信の開始が、上記第1のダウンリンクサブフレームの有効部分の送信の終了から、上記単一アイドル期間IPの継続時間だけ隔てられるようになっている、手段TAMと、
ユーザ機器UE(又はUE)のタイミング進み値tAi(又はtAj)に対するインクリメンタルタイミング進み値Δtを規定する手段IATMであって、上記インクリメンタルタイミング進み値Δtが、上記アップリンク/ダウンリンク所要最小アイドル継続時間TULDL以上であり、且つ、上記単一アイドル期間IPの継続時間と上記ダウンリンク/アップリンク所要最小アイドル継続時間TDLULとの間の差以下である、手段IATMと
を備える。
【0102】
本発明の一実施形態によれば、通信装置BSは、上記インクリメンタルタイミング進み値Δtをユーザ機器の一方UEのタイミング進み値tAiに加算する手段ADMを備える。
【0103】
本発明の一実施形態によれば、通信装置BSは、上記インクリメンタルタイミング進み値Δtを送信する手段を備える。
【0104】
ユーザ機器UEは、インクリメンタルタイミング進み値Δtをタイミング進み値tAjに加算する手段ADMを備える。
【0105】
図9は、本発明による、全二重通信システムにおいてアップリンクサブフレームを同期させるためのタイミング進みメカニズムの使用を示すクロノグラムを表している。
【0106】
全二重通信では、ダウンリンクサブフレーム及びアップリンクサブフレームが同時に送信される。その上、同じ継続時間TDLを有する一組のダウンリンクサブフレームDL及び一組のアップリンクサブフレームULとして図9に示されるフレームには、アイドル期間が確保されない。
【0107】
全二重通信システムでは、各ユーザ機器UEによって送信されるアップリンクサブフレームの先頭は、タイミング進みメカニズムによって同時刻に受信される。
【0108】
本発明によれば、インクリメンタルタイミング進み値Δtは、各ユーザ機器でタイミング進みメカニズムを実行するのに使用されるために各タイミング進み値ΔtAiに加算される。
【0109】
これは、アイドル期間(IP−Δt)が、(半二重通信において)ダウンリンクサブフレームDLにのみ確保されるときに有利である。その理由は、その場合に、全二重通信又は半二重通信のいずれかを使用してすべてのユーザ機器から送信されたアップリンクサブフレームの有効部分が同じ時刻T’’STULに同期され、基地局BSにおける復号性能の増加を提供するからである。
たとえば、OFDMベースの送信等の周波数多重ベースの送信が使用されるときは、通例、基地局BSに存在するアップリンクサブフレームを復号するのに、複数の高速フーリエ変換(FFT)が必要とされる。本発明によれば、アップリンクサブフレームがすべて同時刻に同期されるので、時刻T’’STULに受信機端に存在する各アップリンクサブフレームから情報を取り出すのに必要とされるFFTは1つだけである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半二重通信システムにおいて基地局と少なくとも1つの半二重ユーザ機器との間でダウンリンクサブフレーム及びアップリンクサブフレームを通信する方法であって、
該方法は、
第1の送信ステップであって、該第1の送信ステップの期間中に、第1のダウンリンクサブフレーム(DL)が、前記基地局によって前記少なくとも1つの半二重ユーザ機器に送信される、第1の送信ステップと、
前記第1の送信ステップの後に続く受信ステップであって、該受信ステップの期間中に、前記少なくとも1つの半二重ユーザ機器から送信されたアップリンクサブフレーム(UL)が、前記第1のダウンリンクサブフレーム(DL)の有効部分の送信の終了と前記アップリンクサブフレーム(UL)の有効部分の受信の開始との間に規定される少なくともダウンリンク/アップリンク所要最小アイドル継続時間(TDLUL)の後に、前記基地局によって受信されることが期待される、受信ステップと、
前記受信ステップの後に続く第2の送信ステップであって、該第2の送信ステップの期間中に、第2のダウンリンクサブフレーム(DL)が、前記アップリンクサブフレーム(UL)の前記有効部分の前記受信の終了と前記第2のダウンリンクサブフレーム(DL)の有効部分の送信の開始との間に規定される少なくともアップリンク/ダウンリンク所要最小アイドル継続時間(TULDL)の後に、前記基地局によって前記少なくとも1つの半二重ユーザ機器に送信される、第2の送信ステップと、
タイミング進み値規定ステップであって、該タイミング進み値規定ステップの期間中に、前記少なくとも1つの半二重ユーザ機器のそれぞれによって送信された前記アップリンクサブフレーム(UL)の前記有効部分の先頭が、同じスケジューリングされた同期時刻に受信されるように、タイミング進み値(tAi)が前記少なくとも1つの半二重ユーザ機器のそれぞれについて規定されると、前記タイミング進み値(tAi)が前記少なくとも1つの半二重ユーザ機器のそれぞれに送信される、タイミング進み値規定ステップと
を含み、
該方法は、
前記スケジューリングされた同期時刻(T’’STUL)が、単一アイドル期間(IP)とインクリメンタルタイミング進み値(Δt)との間の差に等しい継続時間だけ、前記アップリンクサブフレーム(UL)の前記有効部分の前記受信の前記開始が、前記第1のダウンリンクサブフレーム(DL)の前記有効部分の前記送信の前記終了から隔てられるようになっており、
前記単一アイドル期間(IP)が、前記ダウンリンク/アップリンク所要最小アイドル継続時間(TDLUL)と前記アップリンク/ダウンリンク所要最小アイドル継続時間(TULDL)との合計以上の継続時間を有し、前記第1のダウンリンクサブフレーム(DL)の末尾、若しくは前記アップリンクサブフレーム(UL)の先頭、又はその双方、のいずれかに確保され、
前記インクリメンタルタイミング進み値(Δt)が、前記アップリンク/ダウンリンク所要最小アイドル継続時間(TULDL)以上であり、且つ、前記単一アイドル期間(IP)の継続時間と前記ダウンリンク/アップリンク所要最小アイドル継続時間(TDLUL)との間の差以下であることを特徴とする、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−19258(P2011−19258A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181317(P2010−181317)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【分割の表示】特願2008−536958(P2008−536958)の分割
【原出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(503163527)ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ (175)
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】Capronilaan 46, 1119 NS Schiphol Rijk, The Netherlands
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】