説明

半合成GLP−1ペプチド−Fc融合コンストラクト、その方法及び使用

本発明は、GLP−1ペプチドとヒト多量体タンパク質又はタンパク質断片、例えば非ペプチド結合で結合された抗体Fcとの共役物である、半合成生物分子に関する。コストラクトは、生物活性を示し、かつ血糖コントロールの欠如を特徴とする糖尿病の処置に使用するための治療用組成物及び治療用製剤の製造に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫グロブリンFcタンパク質と化学的に結合した生理活性ペプチドを含む組成物に関する。更に具体的には、本発明は、GLP−1ペプチドと抗体Fcに化学的に結合された修飾ペプチド類縁体とのコンストラクトを含む、特異的インスリン分泌性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の説明)
遺伝子組み換えタンパク質は、治療薬の新たな分野である。そうした遺伝子組み換え治療薬は、タンパク質製剤と化学修飾とに進歩をもたらした。そのような修飾は、半減期を高める(例えば、それがタンパク質分解酵素へ暴露するのを防ぐ)か、生物活性を高めるか、又は不必要な副作用を軽減することによって、治療用タンパク質の治療的有用性を潜在的に高めることができる。そのような修飾の1つは、エンテラセプト(enteracept)等の、受容タンパク質と融合した免疫グロブリンの使用である。治療用タンパク質はまた、Fcドメインを用いて構築することで、より長い半減期を付与するか又はFc受容体結合、タンパク質A結合及び相補体結合等の機能を組み込むことを試みてきた。
【0003】
糖尿病は、効果的な薬剤的治療法が解決されなければ、2025年までに3億超の人が発症すると推定される、広まりつつある流行病である。全症例の90〜95%を2型糖尿病が占めている。持続性の高血漿グルコース値によってもたらされる合併症としては、心臓血管疾患、腎症、神経障害、及び網膜症が挙げられる。更には、膵臓のβ細胞が死ぬと、その結果、2型糖尿病後期においてインスリンが分泌されなくなる。現在の糖尿病治療は、低血糖及び体重増加を包含する様々な有害な副作用を伴う。加えて、現在の2型糖尿病の治療は、病気を治療するのではなく、患者がインスリン治療を必要とするまでの時間を単に引き伸ばすものである。
【0004】
ペプチド−1(GLP−1)と同種のグルカゴンは、グルコース経口チャレンジ後に腸のL細胞から分泌される、37のアミノ酸のペプチドである。6番目と7番目の間でその後生じる内因性開裂によって、生物学的に活性なGLP−1(7−37)ペプチドが産生される。GLP−1(7−37)ペプチド配列は、2つの構造ドメインに分けることができる。ペプチドのアミノ末端ドメインは、シグナル伝達に関与しているが、残りのペプチドは、ヘリカル構造のGLP−1受容体の細胞外ループと結合していると考えられる。グルコースに反応して、活性なGLP−1は、膵臓でGLP−1受容体と結合して、インスリン分泌を増大させる(インスリン分泌促進作用)。更に、GLP−1は、胃内容物排出を軽減し、血液循環に排出されて食物摂取を低下させるかもしれないグルコースボーラスを低下させることが分かっている。これら作用の組み合わせによって、血糖値が低下する。GLP−1はまた、アポトーシスを抑制して、膵臓でのβ細胞の増殖を高めることも分かっている。したがって、GLP−1は、血糖を下げて、糖尿病患者の膵臓のβ細胞を保護する、魅力的な治療薬である。更に、GLP−1活性は、血糖値で制御される。血糖値が一定の閾値まで下がると、GLP−1は活性でなくなる。したがって、GLP−1を用いた治療に伴う低血糖の危険性は全くない。
【0005】
GLP−1療法の生存率は、病院で立証されている。2型糖尿病患者では、6週間のGLP−1注入によって、空腹時及び8時間後の平均血漿グルコース値が効果的に低下した。GLP−1療法はまた、β細胞の機能向上をももたらした。エクセナチドは、現在治験中のGLP−1類縁体である。エクセナチドは、ドクトカゲの唾液中で最初見出されたものであり、GLP−1と53%同一である。エクセナチドは、GLP−1受容体と結合して、GLP−1(7−37)に起因していた非常に多くの活動に関与するシグナル伝達カスケードを開始することができる。現時点では、2型糖尿病患者のHbA1c値と血中フルクトサミン値とを低下させることが分かっている。更にそれは、健常人では胃内容物排出を遅延させて、食物摂取を抑制した。
【0006】
しかしながら、GLP−1は、プロテアーゼであるジペプチジルペプチターゼIV(DPP−IV)によって生体内で急速に不活性化される。そのため、GLP−1ペプチドを用いた治療の有効性は、その急速なクリアランスと短い半減期によって制限されていた。例えば、GLP−1(7−37)の血清半減期は、ほんの3〜5分である。GLP−1(7−36)アミドの時間作用は、皮下投与の場合、約50分である。内因性プロテアーゼ開裂に抵抗性のある類縁体や誘導体でさえ、24時間に亘る連続投与を避ける程長い半減期は有しない。例えば、エクセナチドは、DPP−IV耐性を有するにもかかわらず、半減期が短くかつインビボ薬物動態学上かなり変動するために一日2回食前投与する必要がある。現在治験中の別の化合物であるNN2211は、脂質化GLP−1類縁体である。これは、1日1回の投与が見込まれている。
【0007】
治療薬の急速な消滅は、薬剤の高い血中濃度を長期間維持することが望ましい場合には、その後連続投与する必要があるため、不都合である。その上、長時間作用型の化合物は、過去の治療レジメンによって経口薬のみを服用する必要があった糖尿病患者らにとって特に重要である。こうした患者らは、多くの場合、薬剤を複数回注射する必要があるレジメンへ移行するのに非常に苦労している。半減期が長いGLP−1療法は、開発中の他のGLP−1ペプチド類及び化合物類よりも有意な利点があるということになる。
【0008】
様々な位置に置換、欠失及び修飾を有する多数のGLP−1類縁体が開示されてきた。例えば、D.I.バックリー(Buckley, D.I.)、J.F.ハバナー(Habener, J.F.)、J.B.マロリー(Mallory, J.B.)及びS.モイソフ(Mojsov, S.)、糖尿病治療に有用なDLP−1類縁体(GLP-1 analogs useful for diabetes treatment)、PCT国際公開特許WO91/11457を参照のこと。これに加えて、多数のハイブリッドペプチド類も調製されてきた。GLP−1と、グルカゴンと、ドクトカゲ(アメリカドクトカゲ)の唾液腺から単離された、GLP−1と53%の相同性を有する高親和性GLP−1受容体作用物質であるエキセンディン−4とのセグメントを含有するハイブリッドペプチド類が、多重受容体結合のために調製されている。N末端でのグルカゴン配列の付加により、DPP−IV開裂が防げる。導入されたシステインによるC末端のペグ化では、活性損失が生じなかった。
【0009】
改善された半減期を有するGLP−1変種は、マレイミド基をトリエチレングリコールを介して、C末端に付加されたリジンのε−アミノ基と結合することによって調製された。生体内では、これはアルブミンと結びついて、アルブミンシステインと共有結合を形成する。
【0010】
半減期を延長させようという意図で、GLP−1又はその類縁体を含む融合タンパク質が、ペプチドのC末端カルボン酸基をIgG4のN末端アミノ酸とGly−Ser−リッチなリンカーによって融合する遺伝子組み換え技術によって調製されている。アルブミン及びFc融合コンストラクトはどちらも、GLP−1及びその類縁体と共に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、当該技術分野では、GLP−1活性を有し、長い血清半減期を有する、T2D治療用組成物が必要とされている。天然GLP−1ペプチド配列系分子を生み出すためのいくつかの取り組みとしては、プロテアーゼ耐性を有する類縁体類及び誘導体類、又は脂質やPEG等の親水性ポリマーを組み込んだ共役物類、あるいは前述の免疫グロブリン融合コンストラクトが包含される。
【0012】
そのため、GLP−1ペプチド又はその類縁体を免疫グロブリンFcと融合する取り組みは、ペプチドの半減期を延ばす1つの方法である。しかしながら、そのような融合タンパク質は、遺伝子組み換え技術によって発現するため、天然の哺乳類アミノ酸を20個含有するものに限られる。遺伝子コードの操作によって非天然型アミノ酸をタンパク質に組み込むことが可能な技術も存在するが、これらの方法はNα−L−アミノ酸の使用に限られている。D−アミノ酸、Nβ−アミノ酸又はより高次の同族体、非アミノ酸部分及び環状ペプチドを、非システイン側鎖を用いて含有する、生物学的に活性なペプチド類縁体は多数存在する。更に、一部の生物学的に活性なペプチドは、活性のために遊離カルボン酸基をも必要とする。これらの構造物はいずれも、遺伝子組み換え技術によって産生されるものを使用して融合タンパク質に組み込むことができない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、遺伝子組み換え技術では入手できないGLP−1類縁体ペプチドの上述の変種をいずれも組み込むことが可能な、GLP−1ペプチド半合成免疫グロブリンFc融合タンパク質類に関する。活性GLP−1ペプチド類が保有する生物学的活性だけでなく、免疫グロブリンFc骨格上の2つのペプチドの特異的な表示によっても、GLP−1の構造−活性関係についての現時点での理解では予測又は説明されない生物学的活性を表すことができる。
【0014】
したがって、一態様において、本発明は、抗体Fc断片との非ペプチジル結合によって結合されたGLP−1ペプチド又はその類縁体を含む、医学的用途のための生物活性共役物に関する。この生物活性治療薬は、その反応性カルボニルがアルデヒド又はケトンであり、抗体Fcの酸化アミノ酸部分との共有結合によって抗体Fc断片と直接又は間接的に結合している。別の態様の生物活性共役物では、GLP−1ペプチドをFcと直接的又は間接的に結合している共有結合は、一級アミン、ヒドラジン、アシルヒドラジド、カルバジド、セミカルバジド及びチオカルバジドからなる群より選択される求核基と、Fcの反応性カルボニル含有部分との反応によって形成される。
【0015】
本発明は更に、次の一般式の組成物に関する。
B−(L)n−(F) (I)
式中、Bは、少なくとも1つの生物活性なGLP−1ペプチド、その変異体若しくは誘導体を表しており、Fは、構造F(X)m−(D)p−CH2−CH3から構成される抗体Fcを表しており、式中、Xは、標準的な分子生物工学技術によって組み込まれて産生され得るいずれかの天然型アミノ酸を表し、mは、0〜20までの整数であり、Dは多量体形成又は二量体形成ドメイン、例えば免疫グロブリンのヒンジ領域の少なくとも一部であり、pは0か1の整数であり、及びCH2は、免疫グロブリンCH3定常部の少なくとも一部と結合した免疫グロブリンCH2定常部の少なくとも一部を表している。Lは、実質的に非免疫原性でありかつ生物活性部分とFとの間に柔軟な結合を付与する、ポリマー構造を含むリンカーであって、コンストラクトに代替の配向性を持たせることができるリンカーを表しており、式中、nは、0又は1の整数であり得る。nが0の場合、BとFとの結合は、非ペプチジル共有結合である。nが1の場合、LとFとの結合は、非ペプチジル結合である。一実施態様では、Lは、ポリエチレングリコール等のポリ(アルキレンオキシド)残基から構成される。結果として得られるコンストラクトを更に、所望により、同一の又は他のポリペプチド類、ポリマー類、標識類、放射性同位体類若しくは活性物質類と、限定されないがCys−Cysジスルフィド結合等の会合又は共有結合によって結合することも可能である。
【0016】
特定の実施形態では、本発明には、次の式の化合物類を含む式Iの共役物も包含される。
B−F(II)及びその多量体であって、BのC末端がFのN末端に結合しているか又はBのN末端がFのN末端に結合しており、かつFが二量体形成ドメインを有しないもの、
B−L−F(III)及びその多量体であって、Fが二量体形成ドメインを持たないFcドメインであってかつN末端でLに結合しており、Lが更に代替部位でBのC末端にも結合しているもの、あるいはFが、Fcドメインを形成することが可能な前述のポリペプチドでありかつ更にはN末端でLに結合しており、Lが更に、代替部位でBのN末端にも結合しているもの、及び
1−F−B2(IV)であって、B1及びB2が、同一又は異なるGLP−1ペプチドであるか、あるいは同一GLP−1上の代替部位を介してFと結合しており、また、Fが二量体形成ドメインを有しているもの、並びに
1−L1−F−L2−B2(V)であって、B1及びB2が、同一又は異なるGLP−1ペプチドであるかあるいはそれぞれがB1及びB2上の代替部位を介してL1及びL2と結合しており、並びにFが二量体形成ドメインを有しているもの。いずれの場合にも、BとFとの結合又はLとFとの結合は、非ぺプチジル結合である。
【0017】
GLP−1共役物がGLP−1と結合していない免疫グロブリン重鎖と多量化している組成物類もまた、当該組成物に包含される。一価の組成物等のそうした組成物類は、式I〜Vの共役物と遊離重鎖との、共有又は非共有結合的な会合、あるいは予備成形されたFc領域内でのように既に会合した重鎖の一価の結合による、結合の結果であり得る。
【0018】
一実施形態では、本発明は、GLP−1ペプチドを化学修飾して、部位特異的な方法で、分子の生物活性を低下させずに、その血清半減期を増大させる方法に関する。本発明の方法は、抗体FcのN末端で反応性カルボニルを形成して、それとGLP−1ペプチドとを非ペプチジル結合によって結合する工程を含んでいる。一実施形態では、その方法は、GLP−1ペプチドを、PEGポリマーのように第1及び第2結合部位を有するポリマーと結合することであって、GLP−1ペプチドは、第1部位と結合させることと、求核性官能基を有するPEGの第2結合部位を抗体Fc上に存在するアルデヒドとN末端で結合することを包含しており、アルデヒドは、遺伝子組み換えタンパク質技術によって発現するようなN末端セリン又はトレオニン残基の酸化的開裂によって生じる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】GLP−1受容体結合性の誘導cAMPを試験物品と接触したINS−1E細胞内で測定する生物化学アッセイにおいて、生物活性GLP−1ペプチド1の活性を野生型GLP−1ペプチドと比較して表すグラフが図示されている。
【図2】図2のようなcAMPアッセイにおいて野生型GLP−1ペプチドと比較したときの、ペプチド3の相対的なcAMP誘導活性を表すグラフ。
【図3】cAMPアッセイで測定したときの、GLP−1ペプチド−Fc共役物のいくつかの変種の活性を表すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
略語
FMOC:9−フルオレニルメトキシカルボニル、Boc、t−ブトキシカルボニル、GLP−1グルカゴンと同種のペプチド−1;
【0021】
定義
「共役物」という用語は、分子、例えば生物学的に活性なペプチドと抗体Fcとの、Fc上の反応性カルボニルとの反応によって形成されたヒドラジン又はセミカルバゾン結合による共役結合であって、分子と抗体Fcとの間にポリ(エチレングリコール)等の合成ポリマー分子を組み込ませることによって成されてもよくかつ存在する場合は、Fc上の反応性カルボニルとの反応によって形成されたヒドラゾン又はセミカルバゾン結合によってポリマーをFcに結合させる、共有結合の結果として形成されるもの全てを指すものとする。
【0022】
本明細書で使用するとき、「Fc」、「Fc含有タンパク質」又は「Fc含有分子」という用語は、少なくとも免疫グロブリンCH2及びCH3ドメインを有する単量体、二量体、又はヘテロ二量体タンパク質を指す。CH2及びCH3ドメインは、抗体ヒンジ領域等の二量体形成又は多量体形成ドメインに機能的に結合されると、タンパク質分子(例えば、抗体)の二量体領域の少なくとも一部を形成することができる。抗体分子のFc部分(結晶化可能な断片又は相補体結合する断片)は、様々なペプチダーゼ(この場合はペプシン)による抗体の消化によって産生される断片と十分に特徴付けられたもののうち1つを示す。様々な抗体断片が正常な抗体の消化の点から見て定義されているが、当業者には、このようなFc断片が、化学的に又は組み換えDNA方法論、ペプチド表示等のいずれかによって新たに合成される可能性があることが自明であろう。CH2−及びCH3ドメインは、PCT国際公開特許WO2005/005604に開示されているように、ヒト生殖系配列由来であることが好ましい。
【0023】
本明細書で使用するとき、「ペプチド」と「タンパク質」は、ペプチド結合によって互いに結合されたアミノ酸残基のポリマーを指すのに互換的に使用される。用語は、あらゆる大きさ、構造又は機能のタンパク質、ポリペプチド及びペプチドを包含するものとする。しかしながら、典型的には、ペプチドはアミノ酸少なくとも6個分の長さであり、タンパク質はアミノ酸少なくとも50個分の長さである。ペプチドの分子量は、典型的に約10,000Daまである一方で、それを超える分子量のペプチドは通常、タンパク質と呼ばれる。グリコシル化、ヒドロキシル化等に加えて、ペプチド側鎖の修飾が存在する場合もある。更に、脂質及び小さな薬剤分子を包含する他の非ペプチド性分子が、ポリペプチドに結合していてもよい。タンパク質は、天然、遺伝子組み換え、又は合成であっても、あるいはこれらのいずれかの組み合わせであってもよい。ペプチドはまた、天然型タンパク質又はペプチドの断片であってもよい。タンパク質は、単一分子であっても、複数の分子の複合体であってもよい。タンパク質という用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然型アミノ酸の人工的な化学的類縁体である、アミノ酸ポリマーにも適用され得る。1つ以上のアミノ酸残基が「非天然」アミノ酸であるアミノ酸ポリマーであって、いかなる天然型アミノ酸にも対応していないものは更に、本明細書中の「ペプチド」及び「タンパク質」という用語を用いることによっても包含される。
【0024】
「血清半減期の増加」又は「増大したt1/2」とは、修飾された生物活性分子の、その非修飾形に対する循環半減期の正の変化を表す。血清半減期は、生物学的に活性な分子を投与した後のあらゆる時点で血液試料を採取し、そして各試料中の分子の濃度を測定することによって測定される。血清濃度の変化を経時的に測定することにより、血清半減期を算出することができる。修飾された分子、例えば結合した分子の血清半減期を非修飾分子と比較することで、血清半減期又はt1/2の相対的な増加を求めることもできる。増加は、少なくとも約2倍であることが望ましいが、より小さな増加が有用な場合もある。
【0025】
「融合タンパク質」という用語は、2つ以上のポリペプチドから構成されたタンパク質であって、一般にその天然状態では非結合であるが、ペプチド結合を介してそのアミノ末端及びカルボキシル末端それぞれで結合されて単一の連続ポリペプチドを形成しているものを指す。2つ以上のポリペプチド構成成分は、スペーサとして役立ちかつ柔軟性を付与し得る1つ以上のアミノ酸の配列を介して直接結合できるか又は間接的に結合できるかが分かる。
【0026】
「官能基」、「活性部分」、「反応性部位」、「化学反応性基」及び「化学反応性部分」は、当該技術分野において使用され、また、本明細書では、分子の明確に限定できる部分又は単位を指すために使用される。これらの用語は、化学技術分野ではある程度同義であり、また、本明細書では、一部の機能又は活性を実行しかつ他の分子と反応する分子の部分を指すために用いられる。「活性」という用語は、官能基と併用される場合、反応するために強い触媒又は極めて非現実的な反応条件を必要とする基(すなわち、「非反応性」又は「不活性」基)とは対照的に、他の分子上の電子吸引基又は求核基と容易に反応する官能基を包含するものとする。例えば、当該技術分野で理解されているように、「活性エステル」という用語には、アミン類等の求核基と容易に反応するエステルが包含される。代表的な活性エステル類としては、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル類又は1−ベンゾトリアゾリルエステル類が挙げられる。一般に活性エステルは水性媒体中でアミンと短時間で反応するが、メチルエステル又はエチルエステル等の特定のエステル類は、求核基と反応するために強い触媒を必要とする。本明細書で使用するとき、「官能基」という用語には、保護された官能基が包含される。
【0027】
「保護された官能基」又は「保護基」若しくは「保護用の基」とは、特定の反応条件下での分子中の特別な化学反応性官能基の反応を抑制又は阻害する部分(すなわち、保護基)の存在を指す。保護基は、保護される化学反応性基の種類だけでなく、使用される反応条件や、存在する場合は分子中の追加の反応性基又は保護基の存在に応じても異なる。当該技術分野において既知の保護基は、T.W.グリーン(Greene, T. W.)ら、有機合成における保護基(Protective Groups In Organic Synthesis)、第3版、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)、ニューヨーク州ニューヨーク(1999年)に見出すことができる。
【0028】
「結合」又は「リンカー」(L)という用語は、好ましくは1つ以上の共有結合によって結合するのに用いられる原子又は原子群、2つのポリマー断片又はポリマー末端等の相互接続部分、及びポリペプチドのように生物活性剤上に存在する反応性官能基を指す。
【0029】
「残基」とは、1つ以上の分子との反応後に残留している分子の一部を表す。例えば、ポリペプチド鎖内のアミノ酸残基は、隣接するアミノ酸残基と共にペプチド結合を形成した後に残留しているアミノ酸の一部である。グリオキシリル官能基は、ポリペプチド上のN−末端セリン又はトレオニンを過ヨード酸塩処理することによって形成される残基である。
【0030】
本明細書で使用するとき、「GLP−1ぺプチド」又は「GLP−1ペプチド、変異体又は誘導体」は、GLP−1ペプチド、GLP−1断片、GLP−1同族体、GLP−1類縁体又はGLP−1誘導体のうち少なくとも1つであり得る。GLP−1ペプチドは、膵臓でβ細胞上のGLP−1受容体と結合することによってインスリン分泌促進作用を発現するように天然GLP−1(7−37)と十分な相同性を有する約25〜約45の天然型又は非天然型アミノ酸を有する。GLP−1(7−37)のアミノ酸配列は、HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRGである(SEQ ID NO:1)である。
【0031】
GLP−1断片は、GLP−1(7−37)のN末端及び/又はC末端からの1つ以上のアミノ酸のトランケーション後に得られるポリペプチド又はその類縁体若しくは誘導体である。GLP−1同族体は、GLP−1(7−37)のN末端及び/又はC末端に1つ以上のアミノ酸が付加されたペプチド、又はその断片若しくは類縁体である。GLP−1類縁体は、GLP−1(7−37)の1つ以上のアミノ酸が修飾及び/又は置換されたペプチドである。GLP−1類縁体は、この類縁体がインスリン分泌促進作用を有するようにGLP−1(7−37)又はGLP−1(7−37)断片と十分な相同性を有する。GLP−1誘導体は、GLP−1ペプチド、GLP−1同族体又はGLP−1類縁体のアミノ酸配列を有する分子と定義されるが、それに加えて、そのアミノ酸側基、α−炭素原子、末端アミノ基又は末端カルボン酸基のうち1つ以上の化学修飾をも有する分子とも定義される。
【0032】
GLP−1ペプチド類
多数の活性GLP−1断片、類縁体及び誘導体が当該技術分野において既知であり、任意のこれらの類縁体及び誘導体は、本発明のGLP−1模倣物質(mimetibody)の一部でもあり得る。当該技術分野において既知の一部のGLP−1類縁体及びGLP−1断片は、米国特許第5,118,666号、同第5,977,071号及び同第5,545,618号、並びにエーデルホースト(Adelhorst)ら、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J. Biol. Chem.)、第269巻、6275頁(1994年)に開示されている。例としては、GLP−1(7−34)、GLP−1(7−35)、GLP−1(7−36)、Gln9−GLP−1(7−37)、D−Gln9−GLP−1(7−37)、Thr16−Lys18−GLP−1(7−37)及びLys18−GLP−1(7−37)が挙げられるが、これらに限定されない。任意のGLP−1化合物は、そのGLP−1化合物自体がGLP−1受容体を介して結合してシグナル伝達を生じさせることができるのであれば、本発明の非相同の融合タンパク質の一部であることができる。GLP−1受容体結合及びシグナル伝達は、欧州特許第619,322号及び米国特許第5,120,712号にそれぞれ記載されているようなインビトロアッセイを用いて評価することができる。
【0033】
多数の活性GLP−1断片、類縁体及び誘導体は、当該技術分野において既知であり、これら類縁体及び誘導体のうちいずれかは更に、本発明の非相同の融合タンパク質の一部でもあり得る。新規GLP−1類縁体並びに当該技術分野において既知のGLP−1類縁体及び誘導体についてのいくつかの例を本明細書に提示する。
【0034】
DPP−IVによる分解及び不活性化を抑制するために、Nα−メチル−His1を包含する多数のGLP−1類縁体が調製されており、α−メチル−His1、デサミノ−His1及びイミダゾール−乳酸−GLP−1が調製された(サロウステ・デ・メンティエール(Sarrauste de Menthiere)ら、2004年、欧州医化学会誌(Eur. Med. Chem.)、39巻、473〜480頁)。α−MetiruHis1−GLP−1以外の類縁体は全て、生体外ではDPP−IVの存在下で安定であった。これらはいずれも、RINm5F細胞内の天然GLP−1に相当する受容体親和性及びインビトロ生物活性を示した。デサミノ−His1−GLP−1のみが、天然GLP−1よりも15倍低い受容体親和性を示した。類縁体はいずれも、GLP−1に匹敵する濃度において、RINm5F細胞内で細胞内cAMP産生を誘導した。
【0035】
DPP−IVによる分解を抑制する別の取り組みは、天然GLP−1配列中の選択されたアミノ酸残基を修飾又は置換することである。別の例では、DPP−IVによる認識及び開裂を抑制するためにN−末端アミノ基をアシル化、例えばアセチル化してもよい。
【0036】
本発明の好適なGLP−1ペプチド、変異体及び誘導体の非限定的な例は、SEQ ID NO:2:His−Xaa2−Xaa3−Gly−Xaa5−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9−Xaa10−Xaa11−Xaa12−Xaa13−Xaa14−Xaa15−Xaa16−Xaa17−Xaa18−Xaa19−Xaa20−Xaa21−Phe−Xaa23−Xaa24−Xaa25−Xaa26−Xaa27−Xaa28−Xaa29−Xaa30−Xaa31で表示され、式中、Xaa2は、Ala、Gly、Ser、Thr、Leu、Ile、Val、Glu、Asp又はLysであり、Xaa3は、Glu、Asp又はLysであり、Xaa5は、Thr、Ala、Gly、Ser、Leu、Ile、Val、Arg、His、Glu、Asp又はLysであり、Xaa6は、Phe、His、Trp又はTyrであり、Xaa7は、Thr又はAsnであり、Xaa8は、Ser、Ala、Gly、Thr、Leu、Ile、Val、Glu、Asp又はLysであり、Xaa9は、Asp又はGluであり、Xaa10は、Val、Ala、Gly、Ser、Thr、Leu、Ile、Met、Tyr、Trp、His、Phe、Glu、Asp又はLysであり、Xaa11は、Ser、Val、Ala、Gly、Thr、Leu、Ile、Glu、Asp又はLysであり、Xaa12は、Ser、Val、Ala、Gly、Thr、Leu、Ile、Glu、Asp又はLysであり、Xaa13は、Tyr、Phe、Trp、Glu、Asp又はLysであり、Xaa14は、Leu、Ala、Met、Gly、Ser、Thr、Leu、Ile、Val、Glu、Asp又はLysであり、Xaa15は、Glu、Ala、Thr、Ser、Gly、Gln、Asp又はLysであり、Xaa16は、Gly、Ala、Ser、Thr、Leu、Ile、Val、Gln、Asn、Arg、Cys、Glu、Asp又はLysであり、Xaa17は、Gln、Asn、Arg、His、Glu、Asp又はLyであり、Xaa18は、Ala、Gly、Ser、Thr、Leu、Ile、Val、Arg、Glu、Asp又はLysであり、Xaa19は、Ala、Gly、Ser、Thr、Leu、Ile、Val、Met、Glu、Asp又はLysであり、Xaa20は、Lys、Arg、His、Gln、Trp、Tyr、Phe、Glu又はAspであり、Xaa21は、Glu、Leu、Ala、His、Phe、Tyr、Trp、Arg、Gln、Thr、Ser、Gly、Asp又はLysであり、Xaa23は、Ile、Ala、Val、Leu又はGluであり、Xaa24は、Ala、Gly、Ser、Thr、Leu、Ile、Val、His、Glu、Asp又はLysであり、Xaa25は、Trp、Phe、Tyr、Glu、Asp又はLysであり、Xaa26は、Leu、Gly、Ala、Ser、Thr、Ile、Val、Glu、Asp又はLysであり、Xaa27は、Val、Leu、Gly、Ala、Ser、Thr、Ile、Arg、Glu、Asp又はLysであり、Xaa28は、Lys、Asn、Arg、His、Glu又はAspであり、Xaa29は、Gly、Ala、Ser、Thr、Leu、Ile、Val、Arg、Trp、Tyr、Phe、Pro、His、Glu、Asp又はLysであり、Xaa30は、Arg、His、Thr、Ser、Trp、Tyr、Phe、Glu、Asp又はLysであり、及びXaa31は、Gly、Ala、Ser、Thr、Leu、Ile、Val、Arg、Trp、Tyr、Phe、His、Glu、Asp、Lysである。
【0037】
GLP−1ペプチド、変異体又は誘導体の別の好ましい基は、SEQ ID NO:3:His−Xaa2−Xaa3−Gly−Thr−Xaa6−Xaa7−Xaa8−Xaa9−Xaa10−Ser−Xaa12−Tyr−Xaa14−Glu−Xaa16−Xaa17−Xaa18−Xaa19−Lys−Xaa21−Phe−Xaa23−Ala−Trp−Leu−Xaa27−Xaa28−Gly−Xaa30で例示され、式中、Xaa2は、Ala、Gly又はSerであり、Xaa3は、Glu又はAspであり、Xaa6は、Phe又はTyrであり、Xaa7は、Thr又はAsnであり、Xaa8は、Ser、Thr又はAlaであり、Xaa9は、Asp又はGluであり、Xaa10は、Val、Leu、Met又はIleであり、Xaa12は、Ser又はLysであり、Xaa14は、Leu、Ala又はMetであり、Xaa16は、Gly、Ala、Glu又はAspであり、Xaa17は、Gln又はGluであり、Xaa18は、Ala又はLysであり、Xaa19は、Ala、Val、Ile、Leu又はMetであり、Xaa21は、Glu又はLeuであり、Xaa23は、Ile、Ala、Val、Leu又はGluであり、Xaa27は、Val又はLysであり、Xaa28は、Lys又はAsnであり、及びXaa30は、Arg又はGluである。
【0038】
エクセンディン−4ペプチドの基は、米国特許第7223725号に開示されているように、SEQ ID NO:4の式His Xaa2 Xaa3 Gly Thr Phe Thr Xaa8 Asp Xaa10 Ser Lys Gln Xaa14 Glu Glu Glu Ala Val Arg Leu Xaa22 Xaa23 Glu Xaa25 Leu Lys Xaa28 Gly Gly Pro Ser Ser Gly Ala Pro Pro Pro−Zで示され、式中、Xaa2は、Ser、Gly又はThrであり、Xaa3は、Asp又はGluであり、Xaa8は、Ala、Ser又はThrであり、Xaa10は、Leu、Ile、Val、ペンチルグリシン又はMetであり、Xaa14は、Ala、Leu、Ile、ペンチルグリシン、Valであり、Xaa22は、Phe、Tyr又はナフチルアラニンであり、Xaa23は、Ile、Val、Leu、ペンチルグリシン、tert−ブチルグリシン又はMetであり、Xaa25は、Ala、Trp、Phe、Tyr又はナフチルアラニンであり、Xaa28は、Ala又はAsnであり、及びZは、−OH又はNH2である。
【0039】
これらぺプチドは、開示された方法及び/又は当該技術分野において既知の方法によって調製可能である。配列中(及び本明細書全体を通じて)Xaasには、(特定の場合における別段の記載がない限り、)特定のアミノ酸残基、その誘導体又は修飾アミノ酸が包含される。酵素であるジペプチジル−ペプチダーゼIV(DPP−IV)が、投与されたGLP−1の観察された急速なインビボ不活性化に関与する場合があるため、GLP−1ペプチド、同族体、類縁体及び誘導体は、DPP−IVの活性から保護されていることが好ましい。
【0040】
ペプチドは更に、それらのアミノ酸配列に置換若しくは追加された、修飾された、非天然型異常アミノ酸を含む場合がある。代表的な修飾された、非天然型異常アミノ酸の一覧を以下に記す。
【0041】
【表1】

【0042】
ポリペプチド内の機能上不可欠なアミノ酸は、部位特異的突然変異誘発又はアラニン走査突然変異誘発等の、当該技術分野において既知の方法で同定可能である(例えば、上記のオースベル(Ausubel)、第8章、15頁、及びカニンガム(Cunningham)及びウェルズ(Wells)、サイエンス(Science)、第244巻、1081〜1085頁(1989年))。後者の手順によれば、分子内の全ての残基に単一アラニン突然変異が導入される。次に、結果として得られた変異分子の生物活性、例えば、同族受容体を有する細胞がポリペプチドと接触しているときにシグナル伝達を生じさせる能力を試験する。
【0043】
そのような変異体は、代替アミノ酸配列を有しており、作用物質(模倣物質)として又は拮抗物質として機能し得る。変異体は、変異誘発により、例えば離散点突然変異又はトランケーションにより生じる可能性がある。作用物質は、天然型タンパク質の生物学的活性を実質上そのまま保持するか又はその一部を保持することができる。タンパク質の拮抗物質は、例えば、対象タンパク質を包含する細胞のシグナル伝達カスケードの上流又は下流部材と競合的に結合することによって、天然型タンパク質の活性の1つ以上を抑制することができる。このようにして、特異的な生物学的効果は、限られた機能の変異体で処理することによって導き出すことができる。天然型タンパク質の生物活性の一部を有する変異体で被験者を処置することにより、天然型タンパク質で処理することに比べて、被験者に副作用をほとんど発症させない可能性がある。
【0044】
融合タンパク質の一部であるGLP−1化合物が、GLP−1(7−37)、GLP−1(7−36)又はエキセンディン−4中の対応アミノ酸とは異なる6個以下のアミノ酸を有することが一般に好ましい。
【0045】
Fcの代替鎖と結合されて、所望によりその間にリンカー部分を有する生物活性ペプチド類は、同一であっても異なってもよい。生物活性ペプチド類は、最終共役物が所望の生物活性を示すのであれば、介在するリンカーと又はペプチド上のいずれかの残基から生じるFcと結合していてもよい。生物活性は、例えば、結合活性についてはインビトロアッセイにより、又は動物の疾病モデルでのようにインビボ活性により、あるいは共役物を投与した後の被験者の反応により、測定することができる。
【0046】
好ましい実施形態では、遺伝子組み換え技術では組み込むことができない基を含有するGLP−1ペプチドを合成することができる。例えば、以下の活性化ペプチド−リンカー1及び2は、GLP−1ペプチドの第2位にD−アミノ酸を含有している。この修飾は、N−末端ペプチドを開裂させてGLP−1を不活性化するDPP−IV(ジペプチジルペプチダーゼIV)の作用に対してペプチドを安定化させるのに用いられている。3種のペプチドにはいずれも、Fcからペプチドを分離するためのスペーサとして機能する短鎖ポリエチレングリコール基が含有されている。
【0047】
【化1】

【0048】
抗体Fc
本発明では、コンストラクトの抗体Fc部分は、無傷で天然型の単離された抗体から、又は単離されたモノクローナル抗体から得ることができるか、あるいは遺伝子組み換え技術によって若しくは化学的に又はこれら方法の組み合わせによって新たに合成することができる。抗体Fc領域は、無傷の抗体、好ましくはヒト抗体又はヒト定常部を含む抗体から、重鎖のタンパク質分解開裂によって都合よく調製される。植物酵素であるパパインは、システイン等の還元剤の存在下で、重鎖のCH1領域とCH2領域の間(HisとThrの間)のヒトIgG1分子を開裂することで、N−末端残基としてトレオニンを残す。パパインの消化がc7E3として既知の抗体においてシステインの存在下で実行される場合、ヒスチジン残基はアブシキシマブのC−末端位にある。長期治療又は過剰量のパパインによって、一般には、Fcの過剰消化が生じるが、Fabドメインは多くの場合、パパインによる分解に対して抵抗性を維持する。そのため、無傷のFc−領域の回復が望ましい場合は、条件を注意深く制御する必要がある。Fc領域は、タンパク質Aとの結合能力を保持しており、タンパク質A親和性クロマトグラフィを用いて精製することができる。共同出願された特許出願(PCT国際公開特許WO2007/024743)には、グリコシル化AbsのFcが、脱グリコシル化又は非グリコシル化又は無グリコシル化Absよりもパパイン消化に対して高い抵抗性を有することが開示されている。そのため、Fc領域を脱グリコシル化しようとする場合、パパインの消化後に工程を行う必要がある。
【0049】
別の実施形態では、Fc−は(Fc-may)、遺伝子組み換え法によって合成されて、要望通りの任意のヒトクラス/サブクラス又は別の種を代表する場合もある。ヒト及び/又は動物免疫グロブリンの配列は、一般には刊行物、例えば、カバット(Kabat)ら、免疫学的に関心のアルタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)は、米国保健福祉省(U.S. Dept. Health)(1983年)において入手し易く、又はオンラインでも入手可能である。ヒト生殖細胞系列の情報から得られる配列、並びに既知の有用な治療用ヒト抗体配列及びその変種は、PCT国際公開特許WO2005005604にまとめられており、この公報を本明細書中に参照として組み込む。特に、ヒト抗体Fc領域の合成についての情報源を提示しているPCT国際公開特許WO2005005604の図32〜40についての欄に示されかつSEQ ID NO:32〜40に列挙されたヒト免疫グロブリンクラスIgA1、IgA2、IgD、IgE、IgG1、IgG21、IgG31、IgG24及びIgM重鎖の配列及び変種が挙げられる。
【0050】
抗体のFc−領域又はドメインは、抗体に対し、「エフェクター機能」と呼ばれる非抗原性結合作用、例えば相補体結合、抗体依存性細胞障害(ADCC)、及びこの二量体構造の小領域と、免疫細胞表面の受容体であるFc−受容体との結合によって媒介される他の作用を付与する。代替のエフェクター機能を有するFc−領域ポリペプチド配列の特定の天然及び合成変異体としては、サブクラス変異体、例えば、IgG1、IgG21、IgG31、IgG24、並びに例えば米国特許第5624821号、同第6528624号、同第6737356号、同第7183387号、及びPCT国際公開特許WO04099249A2に記載されているような変異ポリペプチドが挙げられる。
【0051】
これらの機能は主に、対象の(抗原表示)細胞を崩壊することによって抗体の中和能を生じさせるが、これら機能はまた、CH2ドメイン内のFcに結合したグリカン類にも左右される(例えば、ジェフリーズ(Jefferis)及びランド(Lund)、2002年、免疫学会誌レター(Immunology Letters)、第82巻(第1〜2号)、57〜65頁、2002年を参照のこと)。そのため、Fcがグリカン類を除去すると、キラー機能がなくなる。Fcは、細菌の宿主細胞内で遺伝子組み換え技術によって発現される場合は自然に産生することができ、又は必要に応じて、グリコシダーゼ酵素を用いて酵素的に除去することも可能である。
【0052】
m−D−CH2−CH3を含むFcを使用する場合、Xの天然型アミノ酸類は、融合タンパク質に別の配向及び結合特性を持たせることによって構造柔軟性を付与する。
【0053】
リンカー類
リンカーは、好ましくは、ペプチド結合によって互いに結合したアミノ酸から構成されている。そのため、好ましい実施形態では、リンカーは、ペプチド結合によって結合された1〜20のアミノ酸から構成されており、ここで、アミノ酸は、20の天然型アミノ酸から選択される。これらのアミノ酸の一部は、当業者にはよく理解されているように、グリコシル化され得る。更に好ましい実施形態では、その1〜20のアミノ酸は、グリシン、アラニン、セリン、プロリン、アスパラギン、グルタミン及びリジンから選択される。なお更に好ましくは、リンカーは、グリシンやアラニンのように立体障害のない大部分のアミノ酸から構成されている。それゆえ、好ましいリンカーは、ポリ(Gly−Ser)、ポリグリシン類(特に(Gly)4、(Gly)5)、ポリ(Gly−Ala)、及びポリアラニン類である。リンカーの他の具体的な例は、(Gly)3Lys(Gly)4(SEQ ID NO:5)、(Gly)3AsnGlySer(Gly)2(SEQ ID NO:6)、
(Gly)3Cys(Gly)4(SEQ ID NO:7)、及びGlyProAsnGlyGly(SEQ ID NO:8)である。
【0054】
前述の用語を説明するために、例えば、(Gly)3Lys(Gly)4は、Gly−Gly−Gly−Lys−Gly−Gly−Gly−Glyを表す。GlyとAlaの組み合わせも好ましい。本明細書で示すリンカーは例示であって、本発明の範疇のリンカー類は更に長くてもよく、また、他の残基を包含してもよい。
【0055】
非ペプチドリンカー類も利用できる。例えば、−NH−(CH2)s−C(O)−等のアルキルリンカー類を使用することができ、式中、s=2〜20が使用され得る。これらのアルキルリンカー類は更に、低級アルキル(例えば、C1〜C6)低級アシル、ハロゲン(例えば、Cl、Br)、CN、NH2、フェニル等のような非立体障害性基で置換されていてもよい。代表的な非ペプチドリンカーは、分子量が100〜5000kD,好ましくは100〜500kDのPEGリンカーである。ペプチドリンカー類を変化させて、前述と同様の方法で誘導体類を形成することもできる。
【0056】
リンカーは、好ましくはポリマーである。好適なポリマーとしては、例えば、ポリエチレングリコール(PE)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアミノ酸類、無水マレイン酸ジビニルエーテル、N−(2−ヒドロキシプロピル)−メタクリルアミド、デキストラン、硫酸デキストランを包含するデキストラン誘導体、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチル化ポリオール、ヘパリン、ヘパリン断片、多糖類、セルロース、メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースを包含するセルロース誘導体、デンプン及びデンプン誘導体、ポリアルキレングリコール及びその誘導体、ポリアルキレングリコール類のコポリマー及びその誘導体、ポリビニルエチルエーテル類、並びにα,β−ポリ[(2−ヒドロキシエチル)−DL−アスパルタミド等、又はこれらの混合物が挙げられる。本発明の一態様では、ポリマーは定義された化学組成及び分子量範囲のものである。好ましい実施形態であるポリマーはPEGである。
【0057】
リンカー類は、1〜20のアミノ酸からなるペプチド、1〜50のエチレンオキシ単位から構成されており及び場合により末端アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基及び/又はカルボキシ基で誘導体化されたポリエチレングリコール、分子量300〜40,000で、場合により末端アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基及び/又はカルボキシ基で誘導体化された多分散性ポリエチレングリコール類、場合により末端ヒドロキシル基、アミノ基及び/又はカルボキシ基で誘導体化されたC2〜20アルキル、並びに場合により末端ヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基及び/又はカルボキシ基で誘導体化された置換C2〜20アルキルからなる群より選択される1つ以上の部分から構成されていてよい。前述のように好適な反応性求核試薬から構成された連結部分はまた、GLP−1ペプチドと結合する前に、N−末端においてコンストラクトの生物学的に生成された担体分子、例えば抗体Fcに結合されていてもよい。
【0058】
リンカー(L)は、式Iの共役物中に存在する場合、生物学上安定な又は生分解性のポリマー鎖又は単位を包含していてよい。例えば、反復結合を有するポリマーは、結合の不安定性に応じて、生理学的条件下での安定度を変化させることができる。そのような結合を有するポリマーは、低分子量類縁体類の既知の加水分解速度に基づく生理学的条件下でのその相対的な加水分解速度で分類することができ、例えば、不安定なものからより安定なものまでであって、ポリカーボネート類(−−O−−C(O)−−O−−)>ポリエステル類(−−C(O)−−O−−)>ポリウレタン類(−−NH−−C(O)−−O−−)>ポリオルトステル類(−−O−−C((OR)(R’))−−O−−)>ポリアミド類(−−C(O)−−NH−−)であり得る。同様に、水溶性ポリマーを対象分子に結合させる結合系、例えば、より不安定なものからより安定なもの順でカーボネート(−−O−−C(O)−−O−−)>エステル(−−C(O)−−O−−)>ウレタン(−−NH−−C(O)−−O−−)>オルトエステル(−−O−−C((OR)(R’))−−O−−)>アミド(−−C(O)−−NH−−)は、生物学的に安定又は生分解性であってよい。これらの結合は、例示した方法で付与されるものであって、本発明の水溶性ポリマーのポリマー鎖又はリンカー中に用いることができる結合の種類を制限するものではない。
【0059】
共役物の調製方法
本発明の組成物は、当該技術分野において既知の手段又は未発見の手段のいずれかで調製することができるが、本明細書では、組成物の生成に特に適した特定のプロセスを提供する。
【0060】
Fcタンパク質の調製及び結合のための準備
生物学的に生成された多量体担体分子、例えばヒンジとして既知のシステイン含有領域のうち少なくとも一部を含む抗体Fcは、多量体(二量体)形態で分泌された、遺伝子組み換え技術によって発現したタンパク質生成物から調製される。ヒト宿主細胞を用いてタンパク質を発現する場合、最終産物はグリコシル化されていてよい。原核生物の宿主細胞、例えば大腸菌を用いてタンパク質を発現するとき、グリコシル化は通常生じない。
【0061】
タンパク質がN−又はO−結合グリコシル基を含有する場合、炭化水素は、用いられる酸化剤によって酸化を生じ易く、N−末端グリオキサル基の形成に影響を及ぼして、追加の反応性カルボニル種を生成する。炭化水素は、PNGアーゼを用いて化学結合する前に除去され、続いて、疎水性相互作用HPLCで精製することができる。
【0062】
Fc−ドメインのN−末端残基は、Fc−ドメインの少なくとも1つの重鎖をN−末端で第1ペプチド結合するよりも前に残基中に反応性(電子求引性)カルボニルを生成することによって結合反応に対応できるように準備されている。本発明のコンストラクト調製方法に適した電子吸引分子として包含される反応性カルボニル構造としては、アルデヒド及びケトンが挙げられる。ケトンを形成する場合、末端ラジカルは、炭素数1〜6の直鎖又は分枝低級アルキル、炭素数1〜6の置換された直鎖又は分枝低級アルキル、アリール、あるいは置換アリールから選択される。
【0063】
抗体Fcは、必然的にセリン又はトレオニンを含んでいてよく、当該技術分野において周知の方法によって操作されてもよく、あるいはN−末端にセリン又はトレオニンを表示するように化学的に変化されていてもよい。
【0064】
本発明の方法の態様の1つでは、抗体Fcは、N−末端Thrを有するヒトIgG1−Fcであり、N−末端Thrは、パパインによるいずれかの全長ヒトIgG1抗体調製法からの開裂生成物である。植物由来酵素であるパパイン(E.C.4.3.22.2)は、Fc−領域を形成する2つ以上の鎖と、HisとThrの間とを連結するヒンジ領域(側のN−末端)上方の抗体の重鎖を開裂し、その結果、ThrをN−末端残基として残す。本発明の別の態様では、プロテアーゼは、プラスミン、ペプシン、MMP−7を包含するマトリックスメタロプロテナーゼ、好中球エラスターゼ(HNE)、ストロメリシン(MMP−3)、マクロファージエラスターゼ(MMP−12)、トリプシン、及びキモトリプシン、並びにフィシン(EC.3.4.22.3)及びブロモライン(E.C.3.4.4.24)等の他の植物酵素からなる群より選択される。他のタンパク質分解酵素を用いる場合、ヒンジドメイン上で開裂するもの、例えばプラスミン、HNE又はパパインを選択することが好ましい。
【0065】
一態様では、GLP−1ペプチド半合成免疫グロブリンFc融合タンパク質は、抗体FcのN−末端アミノ酸を過ヨウ素酸で選択的化学酸化することにより調製して、N−末端グリオキシル酸を生成することができる(スキームI)。グリオキシル酸は、標準状態ではアミノ基と反応しない。しかしながら、それは、ヒドラジン類、カルボヒドラゾン類及びオキシム類と迅速にかつ選択的に反応して、シッフ塩基(すなわち、−C=N−)を生成する。この基は、加水分解には適度に安定であって、ペプチドを放出させるが、NaBH3CN等の試薬を用いて穏やかに還元することによって完全に安定にすることも可能である。
【0066】
スキームI:FCとN−末端トレオニンとの酸化及び結合。
【0067】
【化2】

【0068】
そのため、生物学的に生成された成熟ポリペプチドのN−末端がセリン又はトレオニンである具体的な実施形態では、特に有用な方法は、過ヨウ素酸での選択的化学酸化を利用してN−末端グリオキシル酸を生成するものである(ゴーガン(Geoghegan)及びストロー(Stroh)、1992年、バイオコンジュゲート・ケム(Bioconjugate Chem)、第3巻、138〜146頁、及び米国特許第5362852号(ガンター(Garnter)ら、1996年、バイオコンジュゲート・ケム、第7巻、38〜44頁及びPCT国際公開特許WO98/05363(1998年2月12日))。2−アミノアルコール構造物−CH(NH2)CH(OH)−は、タンパク質及びペプチドのN−末端Ser又はThr中及びヒドロキシリジン中に存在する。pH7において過ヨウ素酸でのその極めて迅速な酸化によって、N−末端にアルデヒドが生成される。したがって、部位特異的結合のための反応性カルボニルの過ヨウ素酸調製法は、N−末端位に特有なものであって、以下のスキームIIに従う。
【0069】
【化3】

【0070】
N−末端トレオニン又はセリンを含有するタンパク質のみを過ヨウ素酸で酸化することで、N−末端グリオキシル酸誘導体を生成することができるが、Fmoc−保護されたα、α’−ジアミノ酢酸誘導体(Fmoc−NH2CHCO2H)を利用するグリオキシリルペプチド類の合成は報告されている(ファー(Far)及びメルニク(Melnyk)、2005年、ジャーナル・オブ・ペプチド・サイエンス(J Peptide Sci)、第11巻(第7号)、424〜430頁)。タンパク質のN−末端グリシル残基は、例えばグリオキシレートを用いた比較的穏やかな条件下での、アミノ基転移によってアルデヒドに変換され得る(H.B.F.ジオキソン(Dixon, H.B.F.)及びR.フィールズ(Fields, R.)、1979年、メソッズ・エンザイモロジー(Methods Enzymol.)、第25巻、409〜419頁)。アミノ酸残基を添加するもう1つの方法は、ローズ(Rose)(ローズら、1983年、バイオケミストリー・ジャーナル(Biochem J.)、第211巻、671〜676頁)に記載されているように、トリプシン、カルボキシペプチダーザY等のタンパク質分解酵素を用いた逆タンパク質分解によるものである。
【0071】
アルデヒド又はケトンのカルボニル基は、水性条件において還元剤の存在下でアミノ基と反応させると、アミドを生成する場合がある。アルデヒド又はケトンは、穏やかな条件でヒドラジン類、ヒドラジド類及びO−アルキルヒドロキシルアミン類等の求核基と迅速かつ選択的に反応することで、シッフ塩基(すなわち、−C=N−)、アゾメチン類、ヒドラゾン類及びオキシム類を生成し、NaBH3CN等の試薬で還元することによって完全に安定にさせることもできる。
【0072】
グリオキシリル−Fc、アルデヒド−Fc又はケト−Fcは生成すると直ぐに、アミノオキシ基、ヒドラジン基、ヒドラジド基、又は他の分子上のセミカルバジド基からなる群より選択される求核部分と反応して結合される可能性もある(フィールズ(Fields)及びディクソン(Dixon)、(1968年)、バイオケミストリー・ジャーナル(Biochem. J.)、第108巻、883〜887頁;ゲートナー(Gaertner)ら、(1992年)、バイオコンジュゲート・ケミストリー(Bioconjugate Chem.)、第3巻、262〜268頁;ゴーガン(Geoghegan)及びストロー(Stroh)、(1992年)、バイオコンジュゲート・ケミストリー、第3巻、138〜146頁;ゲートナーら、(1994年)、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J. Biol. Chem.)、第269巻、7224〜7230頁)。「ヒドラジン」という用語には、ヒドラジンのヒドロカルビル誘導体(H2NNH2)も包含される。1つ以上の置換基がアシル基である場合、化合物はヒドラジドである。N−アルキリデン誘導体類は、構造R2C=NNR2を有するヒドロラゾン類である。ヒドラゾン類は形式上、=Oを=NNH2(又は置換類縁体)で置き換えることによってアルデヒド類又はケトンから生成される。グルオキシリル基とヒドラジンとの反応によって、ヒドロラゾンが形成される。
【0073】
そのため、本発明では、グリオキシリル−Fc(HCO−CO−Fc)、ケト−Fc又は単純アルデヒド−Fc(HCO−Fc)を、ヒドラジン又はヒドラジド官能基を有する活性化GLP−1ペプチドと反応させて、Fc構造物のN−末端の片方又は両方にヒドラゾンを形成することもでき、それを更には、次のスキーム(III)に従ってヒドラジン化合物へと還元することもできる。
【0074】
【化4】

【0075】
グリオキシリルを包含する限定されるものではないこれに限定されないアルデヒド、又はケトンによる二番目の反応は、ウィッティヒ反応として知られている。ウィッティヒ反応は、アルデヒド又はケトンとトリフェニルホスホニウムイリド(しばしばウィッティヒ試薬と呼ばれる)とのあるいはトリ−n−ブチルホスフィンとの化学反応であって、アルケン及びトリアルキルホスフィンオキシドが生成される(G.ウィッティヒ(Wittig, G.)、U.Ber.シェルコフ(Schollkopf, U. Ber.)、1954年、第87巻、1318頁、G.ウィッティヒ、W.Ber.ハーグ(Haag, W. Ber.)、1955年、第88巻、1654年)。
【0076】
遺伝子組み換え又は天然の単離された多量体タンパク質、例えばFcを用いる場合、結合は、生理活性ペプチドに対して多価の任意のコンストラクトをもたらし、更にタンパク質の複数のN−末端に結合したペプチドに対してはヘテロマー的でもあり得ることが分かるであろう。抗体Fcを担体分子として使用する実施例では、生理活性ペプチドをFc−二量体のN−末端の両方に結合することができる。別の実施形態では、生理活性ペプチド1つのみを抗体FcのN−末端の片方に結合する。更に別の実施形態では、2つの別個の生理活性ペプチドを、抗体FcのN−末端に結合して、「二元的な生物活性」を有し得る「二重特異性」共役物を構築する。
【0077】
ペプチドをN−末端を介して結合する実施形態では、ペプチドは、標準的な固相化学を利用して合成することができる。ペプチドを樹脂へアセンブリしてN−末端保護基を外した後で、好適に保護された2官能性リンカーを脱保護されたN−末端アミノ基に結合させる。
【0078】
N−末端結合ペプチドの別の実施形態では、樹脂上での最終結合によって、アルデヒド基又はケトン基と選択的に反応し得るリンカーを組み込むことができ、リンカー−ペプチドを樹脂から引き離して残留保護基を外すことにより、結合に好適なペプチド組成物が得られる。あるいは、ペプチドとの結合後に、リンカーの残りの官能基を更に誘導体化することで、アルデヒド基又はケトン基と反応し得る官能価を生成することもできる。液相を利用する同様の方法を用いて、同様のペプチド組成物を生成することも可能である。
【0079】
C−末端を介したペプチドの結合を目的とする実施形態では、ペプチドを固相化学によって合成し、ヒドラジン又はヒドラジン誘導体によって樹脂から開裂した後で保護基を外すことにより、好適に官能化されたペプチドを得てもよい。リンカーをC−末端で結合させようとする場合、リンカーは、樹脂に直接結合させてから、ペプチドをアセンブリしてもよい。ペプチド−リンカーは、ヒドラジン又はヒドラジン誘導体によって樹脂から切り離した後、保護基を外すことで、適度に官能化されたペプチド−リンカーを得ることもできる。あるいは、ペプチドは、ユニバーサルPEGノバタグ(Universal PEG NovaTag)樹脂(ノババイオケム(Novabiochem)製)等の樹脂上に調製されてもよい。ユニバーサルPEGノバタグ(Universal PEG NovaTag)樹脂上のMmt基を外して、遊離アミノ基を得ることもできる。このアミノ基を誘導体化して、アルデヒド基又はケトン基と反応する官能基を得ることも可能である。あるいは、好適に保護された2官能リンカーをアミノ基に結合する。液相化学を利用する同様の方法を用いて、同様のペプチド組成物を生成することも可能である。
【0080】
GLP−1ペプチド及びペプチドリンカーコンストラクトの調製
当該組成物のGLP−1ペプチドは、合成化学法又は遺伝子組み換え法のいずれか、あるいはこれら両方の方法の組み合わせによって生成することができる。GLP−1ペプチドは、全長ポリマーとして調製されても、非全長の断片として合成されたものを結合してもよい。ペプチドの化学合成は、固相若しくは液相ペプチド合成のいずれかにおいて、当業者に周知の、定常的に行われる方法である。固相ペプチド合成では、ポリアミド又はポリスチレン樹脂上のN−末端保護基に関する、いわゆるt−Boc(tert−ブチルオキシカルボニル)及びFmoc(フルオレニル−メトキシ−カルボニル)化学が常套法となっている(それぞれ、RB.メリフィールド(Merrifield, RB.)、1963年、及びRC.シェパード(Sheppard, RC.)、1971年)。リボソームタンパク質の合成とは異なり、固相ペプチド合成は、C−末端からN−末端に向かって進行する。アミノ酸モノマー類のN−末端は、これら2つの基で保護されて、脱保護されたアミノ酸鎖に付加される。t−Bocの脱保護にはトリフルオロ酢酸等の強酸が、及びFmocの脱保護にはピペリジン等の塩基が必要である。アミノ酸類を順に少しずつ結合していく逐次延長は、2〜100のアミノ酸残基を含有する小さなペプチドに適している。
【0081】
非天然型残基は、GLP−1ペプチド又はタンパク質に組み込まれる。本発明に従って利用してかつ更にペプチド主鎖を形成し得る、非リボソーム性に導入されたアミノ酸類の例としては、D−アミノ酸類、β−アミノ酸類、擬似グルタメート、γ−アミノブチレート、オルニチン、ホモシステイン、N−置換アミノ酸類(R.サイモン(R. Simon)ら、米国科学アカデミー紀要(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.)(1992年)第89巻、9367〜71頁、PCT国際公開特許WO9119735(バートレット(Bartlett)ら)、米国特許第5,646,285号(ベインダー(Baindur))、α−アミノメチレンオキシ酢酸類(アミノ酸−Glyジペプチド等量式)、及びα−アミノオキシ酸類、並びに非遺伝的に符号化された側鎖官能基を有する他のアミノ酸誘導体類等が挙げられる。チオアミド、ビニル性アミド、ヒドラジノ、メチレンオキシ、チオメチレン、ホスホアミド、オキシアミド、ヒドロキシエチレン、還元アミド、及び置換還元アミド等量式、並びにβ−スルホンアミド(類)を含有するペプチド類縁体を利用してもよい。
【0082】
別のプロセスでは、非天然型アミノ酸は、遺伝祖組み換え技術により生成されたタンパク質にコドン抑制法によって導入されていた。一態様では、コドン抑制法の利用は、アルデヒド又はケトン官能基あるいは任意の他の官能基をいずれかの好適な位置で結合のためのポリペプチド鎖内に導入するように構成することも可能である(例えば、アンブルクス(Ambrx)、PCT国際公開特許WO2006/132969を参照のこと)。
【0083】
あるいは、遺伝子組み換え生成法が特に有用である。宿主細胞(ペプチド配列をコード化する核酸を含むように合成操作された細胞であって、ペプチドを転写及び翻訳して、所望によりペプチドを細胞増殖培地へ分泌するもの)を用いた遺伝子組み換えタンパク質の生成は、当該技術分野では定常的に使用される。遺伝子組み換え製造法では、ペプチドのアミノ酸配列のコード化する核酸は、一般に、従来法で合成されて、発現ベクターに組み込まれる。そのような方法は、追加のポリペプチド配列に融合されたペプチドあるいは他のタンパク質又はタンパク質断片若しくはドメインを含むポリペプチド組成物の製造において特に好ましい。宿主細胞は所望により、大腸菌COS−1、COS−7、HEK293、BHK21、CHO、BSC−1、Hep G2,653、SP2/0,293、HeLa、骨髄腫、リンパ腫、酵母、昆虫若しくは植物細胞、又はそれらの任意の誘導体、不死化細胞若しくは形質編幹細胞から選択される少なくとも1つであり得る。少なくとも1つのペプチドを産生する方法であって、ペプチドが検出可能な又は回収可能な量で発現するようにインビトロ、インビボ又はインサイツ条件下で核酸をコード化するペプチドを翻訳することを含んでなる方法もまた提供される。当該技術分野において周知の技術は、例えば次のものを参照のこと:オーサベル(Ausubel)ら、分子生物学における現在のプロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ社(John Wiley & Sons, Inc.)、ニューヨーク州ニューヨーク(NY, NY)(1987〜2001年);サンブロック(Sambrook)ら、分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)第2版、コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor)、ニューヨーク(1989年)。
【0084】
共役物の調整
N−末端アルデヒド又はケトンを含むFcポリペプチドが単離された時点で、好適な求核基を含むGLP−1分子をFc−領域と水性条件下で反応させて、共役物を単離する。そのため、GLP−1分子は、本明細書に定義されたようなリンカーLを含んでいてよい。代替法では、式IのリンカーLとして機能する部分は、水性条件下でアルデヒド又はケトンと反応し得る求核試薬を含んでおり、Fc−領域に結合されてもよく、共役物は、その後、当該技術分野において既知のいずれかの好適な方法でGLP−1分子と結合する。
【0085】
本発明の方法の一実施形態において、本発明の方法で見込まれるようなタンパク質又はペプチドの一般的な結合方法には、次の工程が包含される:(1)GLP−1部分上に第1の反応基を組み込む工程、(2)GLP−1部分とポリマーとを反応させて、GLP−1部分上の第1反応構成成分と共有結合を形成する工程、(3)ポリマーを、酸化された抗体Fcと反応させて、共有結合したGLP−1−Fc共役物を形成する工程、及び(4)GLP−1−Fc共役物を精製する工程。GLP−1ペプチドの場合にGLP−1部分上に第1の反応基を組み込む場所は、残留ペプチド内に存する反応基、例えば、遊離カルボキシル基、N−末端の遊離α−アミノ基、又はペプチド鎖内の残基の反応性側基であってよい。
【0086】
リンカーと先に合成された本発明の全長GLP−1ペプチドとの結合は、当該技術分野において教示されるいずれかの方法で進めることができる。Fc−ドメインへの結合のためのGLP−1ペプチドの活性化は、ヒドラジン誘導体化ペプチドを生成するために樹脂から開裂させる前の、最終残基にトリ−Boc−ヒドラジノ酢酸を用いた固相合成プロセス中に好都合に達成することができるか、あるいはGLP−1ペプチドを前述のリンカーと結合する場合もあり、リンカーは、Fcの反応性カルボニルと反応し得る官能基を含んでいる。
【0087】
PEGを部位特異的又は選択的に結合させるいくつかの方法は記載されている。例えば、PCT国際公開特許WO99/45026には、N−末端セリン残基を化学修飾して、末端にヒドラジド又はセミカルバジド官能基を有するポリマーとの反応に好適なアルデヒド官能基を形成することが示唆されている。米国特許第5,824,784号及び同第5,985,265号には、還元性アルキル化条件下及びN−末端での選択的攻撃を促進するpHでカルボニル基を有するポリマーとタンパク質のアミノ末端とを反応させることが示唆されている。PCT国際公開特許WO99/03887及び米国特許第5,206,344号及び同第5,766,897号は、タンパク質のアミノ酸配列中に操作されたシステイン残基(システイン添加変異体)の部位特異的なペグ化に関する。これらの方法は、ポリマーとペプチドの官能部からの残留末端部とを戦略的に結合することによってGLP−1ペプチドのドメイン及び構造を保存することができるので、非特異的結合よりも優れた利点をもたらす。あるいは、反応基をペプチドに、好ましくはペプチドの生理活性を保存する部位に導入した後、遺伝子組み換え又は化学合成法のいずれかによってペプチドを調製してもよい。
【0088】
「反応基」又は「官能基」は、好適な条件下で第2化学官能基と反応することで、第1官能基を表す種と第2官能基を表す種との間に共有結合を生じさせることができる原子の配置である。例えば、アミン(−NR2)と反応する活性化基としては、トシレート、メシレート、ハロゲン(クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード)、N−ヒドロキシスクシニミジルエステル類(NHS)等の求電子性基が挙げられる。チオール類と反応可能な活性化基としては、例えば、マレイミド、ヨードアセチル、アクリロリル、ピリジルジスルフィド、5−チオール−2−ニトロ安息香酸チオール(TNB−チオール)等が挙げられる。アルデヒド官能基は、アミン−又はヒドラジド−含有分子と結合することができ、また、アジド基は、三価リン基と反応してホスホルアミデート又はホスホルイミド結合を形成することができる。分子中に活性化基を導入するのに適切な方法は、当該技術分野において既知である(例えば、G.T.ハーマソン(Hermanson, G. T.)、バイオコンジュゲート・テクニクス(Bioconjugate Techniques)、アカデミック・プレス(Academic Press)、カルフォルニア州サンディエゴ(1996年))。
【0089】
化学反応性官能基は、一級又は二級アミン、ヒドロキシ、チオール、カルボキシル、アルデヒド及びケトンからなる群より選択される。
【0090】
組成物の試験法
本発明の共役物は、任意のインビトロ若しくはインビボによってあるいは当該技術分野において適切でかつ当業者に既知の任意の代理マーカー又は対応によって試験、アッセイ又は測定することが可能な、所望の生物活性を保持又は表示する。例えば、典型的に望ましい生物活性は、タンパク質−タンパク質相互作用、例えば、配位子結合又は標的結合であって、ELISA等の固相捕捉アッセイ類によって容易に測定されるものである。その他の場合、生物活性は、Ca2+遊離又は細胞内cAMP濃度のように細胞内プロセスに及ぼす作用で定量され得る受容体活性化を測定することによる等の、共役物を標的タンパク質又は細胞と接触させることによって測定される。なお更に複雑な共役物試験法では、細胞、臓器又は動物への下流作用を観察することもできる。
【0091】
本発明の半合成GLP−1類縁体共役物の場合、天然又は「野生型」GLP−1に関するあらゆる作用を用いて、共役物の生物活性を解明することができる。そのような測定値には、GLP−1受容体結合、細胞内cAMPで示されるようなGLP−1受容体活性化、例えば単離された膵島若しくは全膵臓でのインスリン分泌量又はその変化の程度、あるいは共役物の投与後に動物の血清中で測定されるようなインスリン分泌量又はその変化の程度が挙げられる。GLP−1受容体は、他の「B族」受容体と配列同一性を共有するGタンパク質結合受容体(GPCR)であって、例えば、セクレチン、グルカゴン及び血管活性腸管ペプチド等である。GLP−1生物活性をモニターする別の方法は、(リュー(Liu)ら、2004年、セル・バイオロジー・インターナショナル(Cell Biol. Internat.)、第28巻、69〜73頁)に教示されているような膵管細胞分化アッセイである。
【0092】
医薬品及び製品
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の半合成GLP−1 Fc融合コンストラクトであって、有機部分を共有結合することによって修飾されたものに関する。そのような修飾によって、高い薬物動態学特性(例えば、延長されたインビボ血清半減期)を有するGLP−1タンパク質を生成することができる。有機部分は、直線状又は分枝鎖親水性ポリマー基、脂肪酸基、又は脂肪酸エステル基であり得る。特定の実施形態では、親水性ポリマー基は、分子量が約800〜約120,000ダルトンであって、ポリアルカングリコール(例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG))、炭水化物ポリマー、アミノ酸ポリマー又はポリビニルピロリドンである可能性もあり、また、脂肪酸基又は脂肪酸エステル基の炭素原子数は、約8〜約40であり得る。
【0093】
本発明の修飾された模倣物質(mimetibodies)及び配位子結合断片は、GLP−1模倣物質(mimetibodies)又は特定のタンパク質若しくは変異体と直接又は間接的に共有結合した1つ以上の有機部分を含むことができる。本発明のGLP−1模倣物質(mimetibody)又は配位子結合断片と結合している有機部分はそれぞれ独立して、親水性ポリマー基、脂肪酸基又は脂肪酸エステル基であり得る。本明細書で使用するとき、「脂肪酸」という用語は、モノカルボン酸類及びジカルボン酸類を包含する。本明細書で使用するとき、「親水性ポリマー基」という用語は、オクタンよりも水に対する溶解度が高い有機ポリマーを意味する。例えば、ポリリシンは、オクタンよりも水に対する溶解度が高い。そのため、ポリリシンを共有結合することによって修飾されたGLP−1模倣物質(mimetibody)は、本発明に包含される。本発明の模倣物質(mimetibodies)を修飾するのに適した親水性ポリマー類は、直鎖又は分枝鎖であることができ、例えば、ポリアルカングリコール(例えば、PEG、モノメトキシ−ポリエチレングリコール(mPEG)、PPG等)、炭水化物(例えば、デキストラン、セルロース、オリゴ糖、多糖類等)、親水性アミノ酸のポリマー類(例えば、ポリリシン、ポリアルギニン、ポリアスパルテート等)、ポリアルカンオキシド類(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等)、並びにポリビニルピロリドンを挙げることができる。好ましくは、本発明のGLP−1模倣物質(mimetibody)を修飾する親水性ポリマーは、個別の分子的実体として、約800〜約150,000ダルトンの分子量を有する。例えば、PEG2500、PEG5000、PEG7500、PEG9000、PEG10000、PEG12500、PEG15000、及びPEG20,000を使用することができ、ここで下付き文字は当該ポリマーの平均分子量(ダルトン)である。
【0094】
親水性ポリマー基は、1〜約6個のアルキル基、脂肪酸基又は脂肪酸エステル基で置換することができる。脂肪酸又は脂肪酸エステル基で置換された親水性ポリマー類は、適切な方法を利用することによって調製することができる。例えば、アミン基を含むポリマーは、脂肪酸又は脂肪酸エステルのカルボキシレートとカップリングさせることができ、脂肪酸又は脂肪酸エステル上の活性化カルボキシレート(例えば、N,N−カルボニルジイミダゾールで活性化されたもの)は、ポリマー上のヒドロキシル基とカップリングさせることができる。
【0095】
本発明の模倣物質(mimetibodies)類を修飾するのに適した脂肪酸及び脂肪酸エステルは、飽和状態であり得るか、又は1個以上の不飽和単位を含有し得る。本発明の模倣物質(mimetibodies)類を修飾するのに適した脂肪酸類としては、例えば、n−ドデカノエート(C12、ラウレート)、n−テトラデノエート(C14、ミリステート)、n−オクタデカノエート(C18、ステアレート)、n−エイコサノエート(C20、アラキデート)、n−ドコサノエート(C22、ベヘネート)、n−トリアコンタノエート(C30)、n−テトラコンタノエート(C40)、cis−Δ9−オクタデカノエート(C18、オレエート)、全てのcis−Δ5,8,11,14−エイコサテトラエノエート(C20、アラキドネート)、オクタンジオン酸、テトラデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、ドコサンジオン酸等が挙げられる。適切な脂肪酸エステル類には、直鎖又は分枝鎖低級アルキル基を含むジカルボン酸のモノエステルが包含される。低級アルキル基は、1〜約12個、好ましくは1〜約6個の炭素原子を含むことができる。
【0096】
本発明のGLP−1タンパク質組成物類は更に、任意の適切な助剤のうち少なくとも1つ、例えば希釈剤、結合剤、安定剤、緩衝剤、塩、親油性溶媒、保存料、アジュバント等を含むことができるが、これらに限定されない。製薬上許容できる助剤が好ましい。かかる滅菌溶液を調製する方法及びその非限定例は、当該技術分野において周知であり、例えばジェナーロ(Gennaro)編、レミントンの薬学(Remington's Pharmaceutical Sciences)、第18版、マーク・パブリッシング社(Mack Publishing Co.)(ペンシルバニア州イーストン(Easton))、1990年が挙げられるが、これに限定されない。製薬上許容できる担体類は、GLP−1模倣物質(mimetibody)の投与方法、溶解性及び/又は安定性に適したものが、当該技術分野において周知の如く又は本明細書に記載されている通り通常選択することができる。
【0097】
本発明の組成物で有用な医薬賦形剤及び添加剤には、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質、及び炭水化物(例えば、糖であって、単糖類、二糖類、三糖類、四糖類及びオリゴ糖、アルジトール、アルドン酸、エステル化糖等の誘導化糖類、並びに多糖類又は糖ポリマーが挙げられる)が包含されるが、これらに限定されず、これらは、単独で又は組み合わせて存在することができ、単独で又は1〜99.99重量%又は体積%での組み合わせを含んでいる。代表的なタンパク質賦形剤には、ヒト血清アルブミン(HSA)等の血清アルブミン、組換えヒトアルブミン(rHA)、ゼラチン、カゼイン等が挙げられる。代表的なアミノ酸/GLP−1模倣物質(mimetibody)又は特定部分若しくは異なる成分であって、緩衝能でも機能し得るものには、アラニン、グリシン、アルギニン、ベタイン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、リジン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパルテーム等が含まれる。好ましいアミノ酸の1つはグリシンである。
【0098】
本発明での使用に適した炭水化物賦形剤には、例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D−マンノース、ソルボース等の単糖類、ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオース等の二糖類、ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプン等の多糖類、及びマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトールソルビトール(グルシトール)、ミオイノシトール等のアルジトール類が挙げられる。本発明で使用するのに好ましい炭水化物賦形剤は、マンニトール、トレハロース及びラフィノースである。
【0099】
GLP−1模倣物質(mimetibody)組成物は、緩衝液又はpH調整剤を包含することも可能であり、典型的に、緩衝液は有機酸又は塩基から調製された塩である。代表的な緩衝剤には、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、炭酸、酒石酸、コハク酸、酢酸又はフタル酸の塩等の有機酸塩、トリス、塩酸トロメタミン又はリン酸緩衝剤が挙げられる。本発明の組成物で使用するのに好ましい緩衝剤は、クエン酸塩等の有機酸塩である。
【0100】
更に、本発明のGLP−1模倣物質(mimetibody)若しくは特定部分又は変異組成物には、ポリビニルピロリドン、フィコール(ポリマー糖)、デキストレート(dextrates)(例えば、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン等のシクロデキストリン)、ポリエチレングリコール、着香剤、抗菌剤、甘味料、抗酸化剤、帯電防止剤、界面活性剤(例えば、「TWEEN 20」及び「TWEEN 80」等のポリソルベート)、脂質(例えば、リン脂質、脂肪酸)、ステロイド(例えば、コレステロール)、及びキレート剤(例えば、EDTA)等のようなポリマー賦形剤/添加剤を挙げることができる。
【0101】
本発明によるGLP−1模倣物質(mimetibody)組成物での使用に適するこれら及び追加の既知の医薬賦形剤及び/又は添加剤は、当該技術分野では既知であって、例えば、「レミントン:薬学の科学と実務(Remington:The Science & Practice of Pharmacy)」、第19版、ウィリアムズ・アンド・ウィリアムズ(Williams & Williams)、(1995年)、及び「医師用の卓上参考書(Physician's Desk Reference)」、第52版、メディカル・エコノミクス(Medical Economics)、ニュージャージー州モントベール(Montvale)に列挙されている通りであり、開示内容を全て参照により本明細書に組み込む。好ましい担体又は賦形剤材料は、炭水化物(例えば、単糖類及びアルジトール類)並びに緩衝剤(例えばクエン酸)又は高分子試薬である。
【0102】
上述の通り、本発明は、安定な製剤を提供するものであって、製剤には、好ましくは生理食塩水又は選択された塩を含む好適な緩衝剤だけでなく、保存料を含有する任意に保存加工された溶液及び製剤、並びに薬学的用途又は家畜への使用に適した多目的の保存加工された製剤を包含することができ、製薬上許容できる製剤には少なくとも1つのGLP−1模倣物質(mimetibody)若しくは特定部分又は変異体が含まれている。保存加工された製剤は、少なくとも1つの既知の保存料あるいは所望により、少なくとも1のフェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、亜硝酸フェニル水銀、フェノキシエタノール、ホルムアルデヒド、クロロブタノール、塩化マグネシウム(例えば、六水和物)、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチル等)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、及びチメロサール、又は水性希釈剤中のこれらの混合物からなる群より選択されるものを含有する。当該技術分野において既知の、任意の好適な濃度又は混合物、例えば0.001〜5%、あるいはいずれかの範囲若しくはその中の値、例えば限定されないが、0.001、0.003、0.005、0.009、0.01、0.02、0.03、0.05、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.3、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、又はいずれかの範囲若しくはその中の値を使用することができる。非限定例としては、保存料を全く含まないもの、0.1〜2%のm−クレゾール(例えば、0.2、0.3、0.4、0.5、0.9、1.0%)、0.1〜3%のベンジルアルコール(例えば、0.5、0.9、1.1、1.5、1.9、2.0、2.5%)、0.001〜0.5%のチメロサール(例えば、0.005、0.01)、0.001〜2.0%のフェノール(例えば、0.05、0.25、0.28、0.5、0.9、1.0%)、0.0005〜1.0%のアルキルパラベン(類)(例えば、0.00075、0.0009、0.001、0.002、0.005、0.0075、0.009、0.01、0.02、0.05、0.075、0.09、0.1、0.2、0.3、0.5、0.75、0.9、1.0%)等が挙げられる。
【0103】
所望により、1つ以上の製薬上許容できる抗菌剤も添加してよい。メタ−クレゾール及びフェノールは、好ましい製薬上許容できる抗菌剤である。1つ以上の製薬上許容できる塩類を加えて、イオン強度又は張度を調節することもできる。1つ以上の賦形剤を加えて、製剤の等張性を更に調節することもできる。グリセリンは、等張性調節用賦形剤の一例である。製薬上許容できるとは、ヒト又は他の動物への投与に好適であることを表しており、そのため、毒性成分又は望ましくない汚染物質を含有せず、また、その中の活性化合物の活性をも妨げない。
【0104】
本発明では、本発明のGLP−1融合タンパク質の許容される塩の形態を使用してもよい。酸付加塩を形成するのに通常用いられる酸類は、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸等、及び有機酸類、例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p−ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、酢酸等である。好ましい酸付加塩は、塩酸及び臭化水素酸のような鉱酸から形成されるものである。塩基付加塩には、無機塩基から生成されるもの、例えば、アンモニウム又はアルカリ若しくはアルカリ土類金属水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩等が包含される。本発明の塩基を調製するのに有用なそのような塩基には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
【0105】
薬学的用途及び投与方法
投与は、通常の技量を持った医師によって有効であることが分かっている任意の経路によるものであってよい。末梢性の非経口的(投与)は、そのような方法の1つである。非経口的投与は、医療文献では、滅菌注射器又はいくつかの他の機械装置、例えば輸液ポンプによって体内へ剤形を注入することとして、一般には理解されている。末梢性の非経口的経路には、静脈内、筋肉内、皮下、及び腹腔内の投与経路を挙げることができる。
【0106】
本発明の異種融合タンパク質は更に、経口、直腸、鼻、又は下気道経路であって、非経口ではない経路による投与にも適している場合がある。これらの非経口ではない経路のうち、下気道経路と経口経路が好ましい。
【0107】
本発明の融合タンパク質を用いて、多種多様な疾病及び状態を処置することができる。本発明の融合タンパク質は主に、その生物学的効果を、「GLP−1受容体」と呼ばれる受容体に作用することによって発揮する。したがって、GLP−1受容体刺激作用に又はGLP−1化合物類の投与に好ましい効果を示す疾患及び/又は状態を有する被験者らを、本発明のGLP−1融合タンパク質で処置することができる。これらの被験者らは、「GLP−1化合物での処置を必要としている」又は「GLP−1受容体刺激作用を必要としている」と考えられる。インスリン非依存性糖尿病、インスリン依存性糖尿病、脳卒中(PCT国際公開特許WO00/16797参照)、心筋梗塞(PCT国際公開特許WO98/08531参照)、肥満症(PCT国際公開特許WO98/19698参照)、術後の代謝の変化(米国特許第6,006,753号参照)、機能性胃腸症及び/又は過敏性腸症候群(PCT国際公開特許WO99/64060参照)を有する被験者らが包含される。更には、GLP−1化合物での予防処置を必要とする被験者ら、例えば、インスリン非依存性糖尿病発症する危険のある被験者ら(PCT国際公開特許WO00/07617参照)も包含される。耐糖能異常又は空腹時血糖異常のある被験者ら、体重が、被験者の身長と体質に関する標準体重から約25%超過している被験者ら、膵部分切除を受けた被験者ら、インスリン非依存性糖尿病の親を1人以上有する被験者ら、妊娠性糖尿病を患ったことのある被験者ら、及び急性又は慢性膵炎を患ったことのある被験者らは、インスリン非依存性糖尿病を発症するリスクがある。
【0108】
GLP−1化合物の「有効量」とは、GLP−1受容体刺激作用を必要とする被験者に投与した場合に、許容できない副作用を生じさせずに所望の治療効果及び/又は予防効果をもたらす量である。「所望の治療効果」には、次の1つ以上の効果が包含される:1)疾病又は状態に関わりのある症状の回復、2)疾患又は状態に関わりのある症状の発症の遅延、3)処置を受けていない場合に比べて長寿命であること、及び4)処置を受けていない場合と比べて生活の質が高いこと。例えば、糖尿病の治療におけるGLP−1化合物の「有効量」は、処置を受けていない場合よりも優れた血糖値制御を生じさせ、その結果、網膜症、神経障害、腎臓病等の糖尿病性合併症の発症を遅延する量である。糖尿病の予防におけるGLP−1化合物の「有効量」は、処置を受けていない場合と比べて、スルホニル尿素類、チアゾリジンジオン類、インスリン及び/又はビスグアニジン類等の血糖降下薬による治療が必要な高血糖値の発症を遅延させる量である。
【0109】
被験者の血糖を正常値へ戻すのに有効な融合タンパク質の投与量は多数の要因に依存しており、要因としては、限定されないが、被験者の性別、体重及び年齢、血糖制御不能の重症度、投与経路及び生物学的利用能、融合タンパク質の薬物動態学上の特性並びにその有効性及び処方が挙げられる。
【0110】
本発明を一般的な用語で説明してきたが、本発明の実施形態を、以下の実施例で更に明らかにするものとする。
【実施例】
【0111】
実施例1:活性化GLP−1ペプチドSの調製
実施例1A
(His−[D−Ala]−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Gly−Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile− Ala−Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Arg−Gly−(N−3−アミノプロピル)−PEG3−NH−CO−CH2−NH−NH2)。
【0112】
前述(シーゲル(Siegel)ら、1999年、規制ペプチド(Regulatory Peptides)、第79巻、93〜102頁)の第2残基にD−Ala置換基を含むGLP−1(7−36、NH2)類縁体ペプチドを合成して活性化した(ペプチド1)。
【0113】
ペプチドは、ABI 433Aペプチド・シンセサイザにおいて、Fastmoc0.25mMモニタリング・プレビアス・ピーク(Monitoring Previous Peak)ソフトウェアによるFmoc/HBTU化学用シンスアシスト(SynthAssist)バージョン2.0を用いて調製した。ユニバーサルPEGノバタグ(Universal PEG NovaTag)樹脂(549mg、252ミリモル)を合成に用いた。配列の第6及び第7アミノ酸位置ではFmoc−Phe−Thr(YMe,MePro)−OHを用いた。配列の第11及び第12アミノ酸位置ではFmoc−Ser(But)−Ser(YMe,MePro)−OHを用いた。当該樹脂の最終重量は1.18gであった。
【0114】
その樹脂に、エタノールで2分洗浄を3回、そして塩化メチレンで2分洗浄を3回行った。ペンダントMmt基を除去するために、HOBt−水和物(9.186グラム、0.6M)を塩化メチレン/2,2,2−トリフルオロエタノール100mLに溶解し、25mLをこの樹脂に加えて穏やかに1時間混合させた。溶媒を濾過で除去し、その順序を3回繰り返した。その樹脂に、塩化メチレンで2分洗浄を3回、N−メチルピロリドン中塩化メチレンで2分洗浄を1回、そしてN−メチルピロリドンで2分洗浄を3回行った。その樹脂に、トリ−Boc−ヒドラジノ酢酸(911.0mg、2.33mM)と、HBTU(884.3mg、2.38mM)と、HOBt/N−メチルピロリドン(2.33mL、1M)と、N−メチルピロリドン2.3mLとを加えて、成分が全て溶解するまで混合し、4−メチルモルホリン(0.769mL、3mM)を加えて、湿式試験紙法でpHを調べて(pH8.5)、周囲温度において19時間攪拌した。
【0115】
次にその樹脂に、N−メチルピロリドンで2分洗浄を、塩化メチレン/N−メチルピロリドンで2分洗浄を1回、塩化メチレンで2分洗浄を3回、メタノールで2分洗浄を3回、エチルエーテルで2分洗浄を1回行い、減圧下で2時間乾燥させた。樹脂の重量は1.14gであった。
【0116】
ペプチドは、トリフルオロ酢酸(30mL)とフェノール(2.25g)とジチオトリエトール(1.5g)とチオアニソール(1.5mL)とトリイソプロピルシラン(1.5mL)と水(1.5mL)との開裂混合物20mLを用いてシンチレーションバイアル瓶内で周囲温度において2時間攪拌することによって、樹脂から開裂させた。その樹脂を濾過によって除去し、予め冷却したエチルエーテル(600mL)を加えることでペプチドを沈殿させた。得られた固体は、濾過で単離して、エチルエーテルで洗浄した。粗ペプチドを減圧下において乾燥させることで、535mgが生成した。
【0117】
粗ペプチドは、ヴァイダック(Vydac)C−18カラム(10mm、2.5×25cm)2本において、0〜40%までのグラジエント(80%アセトニトリル/0.1%水中トリフルオロ酢酸)を5分間用いて、40〜60%までのグラジエント(80%アセトニトリル/0.1%水中トリフルオロ酢酸)に流量6mL/分で60分間溶出させて精製した。画分を回収し、HPLCで分析し、純粋な画分をプールして凍結乾燥させることで、白色生成物54.0mgが得られた。キャピラリー電気泳動法によって93%を超えるピーク面積が示された。(分子量:計算値3,630.1、モノアイソトピックMW3,627.9)測定値:LC−MS:3,630.8Da[M+H]+、SELDI−MS:3,627.5Da[M+H]+、3,724/8Da[M+97]+
【0118】
実施例1B
(His−[D−Ala]−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Gly−Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile− Ala−Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Arg−Gly−NH−CH2−CH2−(O−CH2−CH212−CO−Gly−NH−NH2)。
【0119】
上記のように2つのD−Alaを含有するGLP−1(7−36、NH2)類縁体ペプチドを用いて、代替の活性化試薬であるペプチド2を調製した。
【0120】
そのペプチドは、ABI 433Aペプチド・シンセサイザにおいて、Fastmoc 0.1mMモニタリング・プレビアス・ピーク・ソフトウェアによるFmoc/HBTU化学用シンスアシスト・バージョン2.0を用いて調製した。合成には、Fmoc−Gly−SASRIN樹脂(139mg、110ミリモル)を用いた。配列の第6及び第7アミノ酸位置では、Fmoc−Phe−Thr(YMe,MePro)−OHを用いた。配列の第11及び第12アミノ酸位置では、Fmoc−Ser(But)− Ser(YMe,Mepro)−OHを用いた。
【0121】
結合部分の場合、配列の第32アミノ酸位置ではO−(N−Fmoc−2−アミノエチル)−0’−(2−カルボキシエチル)−ウンデカエチレングリコールを用いた。樹脂をエタノールで洗浄して、減圧下で一晩乾燥させた。樹脂の最終重量は0.480gであった。
【0122】
樹脂(189mg)をジメチルホルムアミド中10%ヒドラジン(無水物)5mLと混合して、周囲温度で2時間攪拌した。樹脂を濾別して、ジメチルホルムアミド1mLで洗浄して、この濾液に温水(70℃)100mLを加えた。濾液を周囲温度まで1時間冷却させた後、10℃の冷蔵庫に2時間保存した。白色沈殿物をろ過し、水(20mLで3回)及びエチルエーテル(40mLで3回)で洗浄した後、減圧下で乾燥させることで、白色固体126mgを得た。保護されたペプチド(120mg)をトリフルオロ酢酸(20mL)とフェノール(1.5g)とジチオトレイトール(1.0g)とチオアニソール(1.0mL)とTIS(1.0mL)と水(1.0mL)との開裂混合物15mLを用い、周囲温度において2時間で脱保護した。樹脂を濾過によって除去して、予め冷却させたエチルエーテル(400mL)を加えることによってぺプチドを沈殿させ、濾過で単離して、エチルエーテルで洗浄した。粗ペプチドを減圧下で乾燥させて、白色固体95mgが得られた。
【0123】
粗ペプチドは、ヴァイダック(Vydac)C−18カラム(10mm、2.5×25cm)に2回注入して、0〜30%までのグラジエント(80%アセトニトリル/0.1%水中トリフルオロ酢酸)を5分間用いて、30〜60%までのグラジエント(80%アセトニトリル/0.1%水中トリフルオロ酢酸)に流量6mL/分で60分間溶出させて精製した。画分を回収してHPLCで分析し、純粋な画分をプールして凍結乾燥させることで、白色生成物23mgが得られた。キャピラリー電気泳動法によって94%を超えるピーク面積が示された。(分子量:計算値4,026.5、モノアイソトピック4,024.1)。測定値:LC−MS:4,028.0Da[M+H]+。
【0124】
実施例1C
(NH2−NH−CH2−CO−NH−CH2−CH2−O−(CH2−CH2−O)10− CH2−CH2−O−CH2−CH2-CO− His−[D−Ala]−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Gly−Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile− Ala−Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Arg−Gly−NH2)。
【0125】
上記の通り2つのD−Alaを含有するGLP−1(7−36、NH2)類縁体ペプチドを用いて、代替の活性化試薬であるペプチド3を調製した。
【0126】
ペプチドは、ABI 433Aペプチド・シンセサイザにおいて、Fastmoc 0.25mMモニタリング・プレビアス・ピークソフトウェアによるFmoc/HBTU化学用シンスアシスト・バージョン2.0を用いて調製した。合成にはリンク(Rink)樹脂(833mg、250ミリモル)を用いた。第21位置、第23位置及び第24位置では、Fmoc−Gly−Thr(YMe,MePro)−OH、Fmoc−Phe−Thr(YMe,MePro)−OH及びFmoc−Val−Ser(YMe,MePro)−OHをそれぞれ使用した。第29位置では、O−(N−Fmoc−2−アミノエチル)−0’−(2−カルボキシエチル)−ウンデカエチレングリコールを第28位置で、また、トリ−Boc−ヒドラジノ酢酸を使用した。樹脂の最終重量は1.74gであった。ペプチドを、フェノール1.5gとエタンジオール3mLとチオアニソール0.5mLと水0.5mLとTFA 10mLとの混合液を用いて周囲温度において4時間で脱保護と樹脂からの除去を同時に行った。樹脂を濾過によって除去して、ジエチルエーテルを添加することでペプチドを沈殿させた。固体を遠心分離で単離し、エーテルで十分に乾燥させて、減圧下で乾燥させた。
【0127】
材料は、ヴァイダック(Vydac)C−18カラム(10mm、2.5×25cm)2本を用い、40〜90%までのグラジエント(80%アセトニトリル/0.1%水中トリフルオロ酢酸)を用いて流量6mL/分で90分間精製した。画分を回収してHPLCで分析し、純粋な画分をプールして凍結乾燥させることで、ペプチドが白色生成物として得られた。分子量:計算値:4028.5、モノアイソトピック4026.1。測定値:4027.2[M+H]+。
【0128】
実施例1D
GLP−1(7−36)ペプチド−リンカー−ヒドラジド(NH2−NH−CH2−CO−His−Ala−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Gly−Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Arg−Gly−NH2)の調製。
【0129】
ペプチドは、ABI 433Aペプチド・シンセサイザにおいて、Fastmoc0.25mMモニタリング・プレビアス・ピークソフトウェアによるFmoc/HBTU化学用シンスアシスト・バージョン2.0を用いて調製した。合成にはリンク(Rink)樹脂を用いた。Fmoc−Gly−Thr(ΨMe,MePro)−OH、Fmoc−Phe−Thr(ΨMe,MePro)−OH及びFmoc−Val−Ser(ΨMe,MePro)−OHをそれぞれ、Gly−Thr、Phe−Thr及びVal−Ser配列で使用した。
【0130】
GLP−1配列のHis1を添加した後、Boc3−ヒドラジノ酢酸を樹脂ペプチドにカップリングする。ペプチドを、フェノール1.5gとエタンジオール3mLとチオアニソール0.5mLと水0.5mLとTFA 10mLとの混合液を用いて周囲温度において4時間で脱保護と樹脂からの除去とを同時に行う。樹脂を濾過によって除去して、ジエチルエーテルを添加することでペプチドを沈殿させた。固体を遠心分離で単離し、エーテルで十分に乾燥させて、減圧下で乾燥させた。
【0131】
材料は、ヴァイダックC−18カラム(10mm、2.5×25cm)2本を用い、0.1%トリフルオロ酢酸水溶液中80%アセトニトリルの40〜90%までのグラジエントを用いて流量6mL/分で90分間精製した。画分を回収してHPLCで分析し、純粋な画分をプールして凍結乾燥させることで、所望のペプチドヒドラジンが白色生成物として得られた。
【0132】
実施例1E
GLP−1(7−36)ペプチド−リンカー−ヒドラジン(NH2−NH−CH2−CO−NH−CH2−CH2−(O−CH2−CH212−CO−His−Ala−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Gly−Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Arg−Gly−NH2)の調製。
【0133】
ABI 433シンセサイザをFastMoc化学(0.25mミリモル規模)と共に用いた。擬似プロリンジペプチド類Fmoc−Gly−Thr(ΨMe,MePro)−OH、Fmoc−Phe−Thr(ΨMe,MePro)−OH及びFmoc−Val−Ser(ΨMe,MePro)−OHをそれぞれ、ジペプチドであるGly−Thr、Phe−Thr及びVal−Serで使用した。使用した保護基は、N−末端Fmoc、His(Trt)、Glu(O−t−ブチル)、Ser(O−t−ブチル)Asp(O−t−ブチル)Tyr(O−t−ブチル)、Gln(Trt)、Lys(BOC)及びTrp(BOC)であった。0.53meq/gのリンク・アミド・ケムマトリクス(Rink Amide ChemMatrix)樹脂0.20gを合成で使用した。His1を樹脂とカップリングした後、O−(N−Fmoc−2−アミノエチル)−O’−(2−カルボキシエチル)−ウンデカエチレングリコール(Fmoc−PEG12−CO2H)を、ペプチド樹脂とカップリングし、次いでBoc3−ヒドラジノ酢酸をカップリングした。ペプチド樹脂の最終重量は0.677gである。
【0134】
ペプチドを、TFA 10mLとエタンジチオール3mLとフェノール1.5gと水0.5mLとチオアニソール0.5mLとの混合液を用いて周囲温度において4時間で脱保護と樹脂からの除去を同時に行う。樹脂を濾過によって除去し、濾液を、冷ジエチルエーテル250mLに直接流し込む。得られた固体は、遠心分離で単離し、エーテルに懸濁させて遠心分離することによってジエチルエーテルで洗浄し、減圧下で乾燥させることで、白色固体400mgが得られる。
【0135】
粗ペプチドを、縦一列に並べたヴァイダックC−18カラム(4.6×250mm、10m)2本にアリコート状で注入し、0.1%TFA水溶液中80%アセトニトリルの30〜60%までの線形グラジエントを用いて流量5mL/分において90分間で溶出させる。カラムは214nmでモニターする。画分を分析して、正確な生成物を含有するものをプールして凍結乾燥させることで、所望の生成物を白色固体として得た。(分子量:C1802864460の計算値4,026.55、測定値4,026.90)
【0136】
実施例1F
GLP−1(7−36)ペプチド−リンカー(NH2−NH−CO−CH2−CH2−CO−His−Ala−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Gly−Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Arg−Gly−NH2)の調製。
【0137】
ABI 433シンセサイザを、FastMoc化学(0.25ミリモル規模)と共に使用する。擬似プロリンジペプチド類Fmoc−Gly−Thr(ΨMe,MePro)−OH、Fmoc−Phe−Thr(ΨMe,MePro)−OH及びFmoc−Val−Ser(ΨMe,MePro)−OHをそれぞれ、ジペプチド類Gly−Thr、Phe−Thr及びVal−Serに使用した。使用した保護基は、N−末端Fmoc,His(Trt)、Glu(O−t−ブチル)、Ser(O−t−ブチル)、Asp(O−t−ブチル)、Tyr(O−t−ブチル)、Gln(Trt)、Lys(BOC)及びTrp(BOC)であった。0.53meq/gリンク・アミド・ケムマトリクス(Rink Amide ChemMatrix)樹脂0.20gを合成に使用した。His1を樹脂にカップリングした後、ブタンジオン酸モノメチルエステルをペプチド樹脂とカップリングする。得られたペプチド樹脂を、N−メチルピロリドン及びエタノールで洗浄し、減圧下で一定重量まで乾燥させる。
【0138】
ペプチド樹脂は、ジメチルホルムアミド中10%ヒドラジン(無水物)5mLと混合して、周囲温度において2時間攪拌する。樹脂を濾別して、ジメチルホルムアミド1mLで洗浄し、温水(70℃)100mLを濾液に添加する。濾液を4℃において24時間冷蔵保存した。得られた固体を濾過し、水(20mLで3回)及びエチルエーテル(40mLで3回)で洗浄した後、減圧下で乾燥させることで、白色固体が得られる。保護されたペプチドは、トリフルオロ酢酸(20mL)とフェノール(1.5g)とジチオトレイトール(1.0g)とチオアニソール(1.0mL)とトリイソプロピルシラン(1.0mL)と水(1.0mL)との開裂混合物15mLを用い、周囲温度において2時間で脱保護する。樹脂を濾過により除去して、冷エチルエーテル(400mL)を添加することでペプチドを沈殿させて、濾過で単離し、エチルエーテルで洗浄して、減圧下で乾燥させる。
【0139】
粗ペプチドを、縦一列に並べたヴァイダックC−18カラム(4.6×250mm、10m)2本にアリコート状で注入し、0.1% TFA水溶液中80%アセトニトリルの20〜70%までの線形グラジエントを用いて流量5mL/分で90分間で溶出させる。カラムは214nmでモニターする。画分を分析して、正確な生成物を含有するものをプールして凍結乾燥させることで、所望のペプチドヒドラジドを白色固体として得た。
【0140】
実施例1G
GLP−1(7−36)ペプチド−リンカー−ヒドラジン(NH2−NH−CO−CH2−CH2−CO−NH−CH2−CH2−(O−CH2−CH212−CO−His−Ala−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Gly−Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Arg−Gly−NH2)の調製。
【0141】
ABI 433シンセサイザを、FastMoc化学(0.25ミリモル規模)と共に使用する。擬似プロリンジペプチド類Fmoc−Gly−Thr(ΨMe,MePro)−OH、Fmoc−Phe−Thr(ΨMe,MePro)−OH及びFmoc−Val−Ser(ΨMe,MePro)−OHをそれぞれ、Gly−Thr、Phe−Thr及びVal−Serに使用した。使用した保護基は、N−末端Fmoc、His(Trt)、Glu(O−t−ブチル)、Ser(O−t−ブチル)、Asp(O−t−ブチル)、Tyr(O−t−ブチル)、Gln(Trt)、Lys(BOC)及びTrp(BOC)であった。0.53meq/gリンク・アミド・ケムマトリクス(Rink Amide ChemMatrix)0.175gを合成で使用した。His1を樹脂とカップリングした後、O−(N−Fmoc−2−アミノエチル)−O’−(2−カルボキシエチル)−ウンデカエチレングリコール(Fmoc−PEG12−CO2H)をペプチド樹脂とカップリングし、次いでブタンジオン酸モノメチルエステルをカップリングする。
【0142】
得られたペプチドを、ジメチルホルムアミド中10%ヒドラジン(無水物)5mLと混合して、周囲温度で2時間攪拌する。樹脂を濾別し、ジメチルホルムアミド1mLで洗浄し、この濾液に温水(70℃)100mLを添加する。濾液を4℃で一晩冷蔵保存する。得られた沈殿物をろ過し、水(20mLで3回)及びエチルエーテル(40mLで3回)で洗浄した後、減圧下で乾燥させて、白色固体が得られた。保護基は、トリフルオロ酢酸(20mL)とフェノール(1.5g)とジチオトレイトール(1.0g)とチオアニソール(1.0mL)とトリイソプロピルシラン(1.0mL)と水(1.0mL)との開裂混合物15mLを用い、周囲温度において2時間でペプチドから除去した。樹脂を濾過により除去し、予め冷却させたエチルエーテル(400mL)を加えることによりペプチドを沈殿させて、濾過で単離し、エチルエーテルで洗浄して、減圧下で乾燥させた。
【0143】
粗ペプチドを、縦一列に並べたヴァイダックC−18カラム(4.6×250mm、10m)2本にアリコート状で注入し、0.1%TFA水溶液中80%アセトニトリルの20〜70%までの線形グラジエントを用いて流量5mL/分で90分間で溶出させる。カラムは、214nmでモニターする。画分を分析して、正確な生成物を含有するものをプールして凍結乾燥させることで、所望のペプチドヒドラジドを白色生成物として得た。
【0144】
実施例1H
GLP−1(7−36)ペプチド−ヒドラジン(His−Ala−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Gly−Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Arg−Gly−NH−NH2)の調製。
【0145】
ペプチドは、ABI 433Aペプチド・シンセサイザにおいて、Fastmoc 0.25mMモニタリング・プレビアス・ピーク・ソフトウェアによるFmoc/HBTU化学用シンスアシスト・バージョン2.0を用いて調製する。合成ではリンク樹脂を使用する。Fmoc−Gly−Thr(ΨMe,MePro)−OH、Fmoc−Phe−Thr(ΨMe,MePro)−OH及びFmoc−Val−Ser(ΨMe,MePro)−OHをそれぞれ、Gly−Thr、Phe−Thr及びVal−Serを使用した。
【0146】
得られたペプチド樹脂を、10%ヒドラジン(無水物)5mLと混合して、周囲温度で2時間攪拌する。樹脂を濾別し、ジメチルホルムアミド1mLで洗浄し、この濾液に温水(70℃)125mLを添加する。濾液を4℃で一晩冷蔵保存する。得られた沈殿物をろ過し、水(20mLで3回)及びエチルエーテル(40mLで3回)で洗浄した後、減圧下で乾燥させると白色固体が得られる。保護ペプチドは、トリフルオロ酢酸(20mL)とフェノール(1.5g)とジチオトレイトール(1.0g)とチオアニソール(1.0mL)とトリイソプロピルシラン(1.0mL)と水(1.0mL)との開裂混合物15mLを用い、周囲温度において2時間で脱保護する。樹脂を濾過により除去し、予め冷却させたエチルエーテル(400mL)を加えることによりペプチドを沈殿させて、濾過で単離し、エチルエーテルで洗浄して、減圧下で乾燥させた。
【0147】
粗ペプチドを、縦一列に並べたヴァイダックC−18カラム(4.6×250mm、10m)2本にアリコート状で注入し、0.1%TFA水溶液中80%アセトニトリルの20〜70%までの線形グラジエントを用いて流量5mL/分で90分間で溶出させる。カラムを214nmでモニターする。画分を分析して、正確な生成物を含有するものをプールして凍結乾燥させることで、所望のペプチドヒドラジドを白色固体として得た。
【0148】
実施例1I
GLP−1(7−36)ペプチド誘導体−リンカー−ヒドラジン(His−[D−Ala]−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Gly−Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Arg−Gly−NH−CH2−CH2−(O−CH2−CH212−CO−Gly−NH−NH2)の調製。
【0149】
ペプチドは、ABI 433Aペプチド・シンセサイザにおいて、Fastmoc 0.1mMモニタリング・プレビアス・ピーク・ソフトウェアによるFmoc/HBTU化学用シンスアシスト・バージョン2.0を用いて調製した。合成ではFmoc−Gly−SASRIN樹脂を使用する。Fmoc−Phe−Thr(ΨMe,MePro)−OH及びFmoc−Ser(t−Bu)−Ser(ΨMe,MePro)−OHをそれぞれ、Phe−Thr及びSer−Serで使用した。
【0150】
O−(N−Fmoc−2−アミノエチル)−0’−(2−カルボキシル)−ウンデカエチレングリコール(Fmoc−PEG12−CO2H)を樹脂とカップリングし、次いで個々のアミノ酸をカップリングすることで、保護されたペプチド−リンカー−樹脂が得られる。その樹脂を、エタノールで洗浄して、減圧下で一晩乾燥させる。
【0151】
ペプチド樹脂は、ジメチルホルムアミド中10%ヒドラジン(無水物)5mLと混合して、周囲温度で2時間攪拌する。樹脂を濾別し、ジメチルホルムアミド1mLで洗浄して、この濾液に温水(70℃)100mLを加える。濾液を周囲温度まで1時間で冷却した後、4℃で22時間冷蔵保存した。白色沈殿物をろ過し、水(20mLで3回)及びエチルエーテル(40mLで3回)洗浄し、次いで減圧下で乾燥させることで、白色固体を得る。保護されたペプチドは、トリフルオロ酢酸(20mL)とフェノール(1.5g)とジチオトレイトール(1.0g)とチオアニソール(1.0mL)とトリイソプロピルシラン(1.0mL)と水(1.0mL)との開裂混合物15mLを用い、周囲温度において2時間で脱保護する。樹脂を濾過により除去し、予め冷却させたエチルエーテル(400mL)を加えることによりペプチドを沈殿させて、濾過で単離して、エチルエーテルで洗浄する。粗ペプチドを減圧下で乾燥させる。
【0152】
粗ペプチドを、ヴァイダックC−18カラム(10mm、2.5×25cm)2本にアリコート状で注入し、0.1%トリフルオロ酢酸水溶液中80%アセトニトリルの30〜70%までのグラジエントを用いて流量6mL/分で60分間で精製する。画分を回収し、HPLCで分析し、純粋な画分をプールして凍結乾燥させることで、白色生成物23mgを得た。キャピラリー電気泳動法によって94%を超えるピーク面積が示された。(分子量:計算値4,026.5、モノアイソトピック4,024.1)。測定値:LC−MS:4,028.0Da[M+H]+。
【0153】
実施例1J
GLP−1(7−36)ペプチド誘導体−リンカー−ヒドラジン(His−[D−Ala]−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Gly−Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Arg−Gly−PEG3−CO−CH2−NH−NH2)の調製。
【0154】
ペプチドは、ABI 433Aペプチド・シンセサイザにおいて、Fastmoc 0.25mMモニタリング・プレビアス・ピーク・ソフトウェアによるFmoc/HBTU化学用シンスアシスト・バージョン2.0を用いて調製する。ユニバーサルPEGノバタグ(Universal PEG NovaTag)樹脂(549mg、252ミリモル)を合成に用いた。Fmoc−Phe−Thr(ΨMe,MePro)−OH及びFmoc−Ser(But)−Ser(ΨMe,MePro)−OHをそれぞれ、Phe−The及びSer−Ser配列に使用した。樹脂の最終重量は1.18gであった。
【0155】
その樹脂に、エタノールで2分洗浄を3回及び塩化メチレンで2分洗浄を3回行う。Mmt基を除去するために、HOBt−水和物(9.186gm、0.6M)を塩化メチレン/2,2,2−トリフルオロエタノール100mLに溶解し、その25mLを樹脂に添加して、穏やかに1時間混合する。溶媒を濾過により除去して、その順序を3回繰り返す。その樹脂に、塩化メチレンで2分洗浄を3回、N−メチルピロリドン中の塩化メチレンで2分洗浄を1回、及びN−メチルピロリドンで2分洗浄を3回行う。樹脂に、Boc3−ヒドラジノ酢酸(911.0mg、2.33mM)、HBTU(884.3mg、2.38mM)、N−メチルピロリドン中のHOBt(2.33mL、1M)及びN−メチルピロリドン2.3mLを加えて、成分が全て溶解するまで十分に混合する。N−メチルピロリドン(0.769mL、3mM)を加えて、pHを湿式ペーパーストリップで調べて(pH8.5)、周囲温度で19時間攪拌する。
【0156】
次にその樹脂に、N−メチルピロリドンで2分洗浄を3回、塩化メチレン/N−メチルピロリドンで2分洗浄を1回、塩化メチレンで2分洗浄を3回、メタノールで2分洗浄を3回、エチルエーテルで2分洗浄を1回行い、減圧下で2時間乾燥させる。樹脂の重量は1.14gである。
【0157】
ペプチドは、トリフルオロ酢酸(30mL)とフェノール(2.25g)とジチオトリエトール(1.5g)とチオアニソール(1.5mL)とトリイソプロピルシラン(1.5mL)と水(1.5mL)との開裂混合物20mLを用いてシンチレーションバイアル瓶内で周囲温度において2時間攪拌することによって、樹脂(0.371g)から開裂させた。樹脂を濾過により除去し、予め冷却させたエチルエーテル(600mL)を加えることによりペプチドを沈殿させる。得られた固体を、濾過で単離し、エチルエーテルで洗浄する。粗ペプチドを減圧下で乾燥させることで、535mg得られる。
【0158】
粗ペプチドを、ヴァイダックC−18カラム(10mm、2.5×25cm)2本において、0.1%TFA水溶液中80%アセトニトリルの40〜60%までのグラジエントを用いて流量6mL/分で60分間で精製する。画分を回収し、HPLCで分析し、純粋な画分をプールして凍結乾燥させることで、白色生成物54.0mgを得た。キャピラリー電気泳動法によって93%を超えるピーク面積が示された(分子量:計算値3,630.1、モノアイソトピックMW3,627.9)測定値:LC−MS:3,630.8Da[M+H]+SELDI−MS:3,627.5Da[M+H]+3,724/8Da[M+97]+。
【0159】
実施例1K
GLP−1(7−36)ペプチド−リンカー−ヒドラジン(His−Ala−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Gly−Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Arg−Gly−PEG3−CO−(CH2−CH2−O)12−CH2−CH2−NH−CO−CH2−CH2−CO−NH−NH2)の調製。
【0160】
ペプチドは、ABI 433Aペプチド・シンセサイザにおいて、Fastmoc0.25mMモニタリング・プレビアス・ピーク・ソフトウェアによるFmoc/HBTU化学用シンスアシスト・バージョン2.0を用いて調製する。ユニバーサルPEGノバタグ(Universal PEG NovaTag)樹脂(549mg、252ミリモル)を合成に用いた。Fmoc−Phe−Thr(ΨMe,MePro)−OH及びFmoc−Ser(But)−Ser(ΨMe,MePro)−OHをそれぞれ、Phe−The及びSer−Ser配列に使用した。樹脂の最終重量は1.18gである。
【0161】
その樹脂に、エタノールで2分洗浄を3回及び塩化メチレンで2分洗浄を3回行う。Mmt基を除去するために、HOBt−水和物(9.186gm、0.6M)を塩化メチレン/2,2,2−トリフルオロエタノール100mLに溶解し、その25mLを樹脂に添加して、穏やかに1時間混合する。溶媒を濾過により除去し、その順序を3回繰り返す。その樹脂に、塩化メチレンで2分洗浄を3回、N−メチルピロリドン中の塩化メチレンで2分洗浄を1回、及びN−メチルピロリドンで2分洗浄を3回行う。ペプチド樹脂の遊離アミノ基に、O−(N−Fmoc−2−アミノエチル)−0’−(2−カルボキシエチル)−ウンデカエチレングリコール(Fmoc−PEG12−CO2H)を加え、次いでブタンジオン酸モノメチルエステルをHBTU及びN−メチルピロリドン中HOBtを用いて加える。
【0162】
その樹脂に、N−メチルピロリドンで2分洗浄を3回、塩化メチレン/N−メチルピロリドンで2分洗浄を1回、塩化メチレンで2分洗浄を3回、メタノールで2分洗浄を3回、エチルエーテルで2分洗浄を1回行い、減圧下で2時間乾燥させる。
【0163】
ペプチドを、ジメチルホルムアミド中10%ヒドラジン(無水物)25mLと混合し、周囲温度で2時間攪拌する。樹脂を濾別し、ジメチルホルムアミド1mLで洗浄して、この濾液に温水(70℃)250mLを加える。濾液を周囲温度まで1時間冷却させた後、4℃で16時間冷蔵保存する。白色沈殿物を濾過し、水(20mLで3回)及びエチルエーテル(40mLで3回)で洗浄した後、減圧下で乾燥させることで、白色固体が得られる。保護されたペプチドは、トリフルオロ酢酸(20mL)とフェノール(1.5g)とジチオトリエトール(1.0g)とチオアニソール(1.0mL)とトリイソプロピルシラン(1.0mL)と水(1.0mL)との開裂混合物を用いて周囲温度において2時間で脱保護する。樹脂を濾過により除去し、予め冷却させたエチルエーテル(400mL)を加えることによりペプチドを沈殿させて、濾過で単離して、エチルエーテルで洗浄する。粗ペプチドを減圧下で乾燥させる。
【0164】
粗ペプチドを、ヴァイダックC−18カラム(10mm、2.5×25cm)2本において、0.1%TFA水溶液中80%アセトニトリルの40〜80%までのグラジエントを用いて流量6mL/分で60分間で精製する。画分を回収し、HPLCで分析し、純粋な画分をプールして凍結乾燥させることで、所望のペプチド誘導体を得た。
【0165】
実施例1L
GLP−1(7−36)ペプチド−リンカー−ヒドラジン(His−Ala−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Gly−Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Arg−Gly−PEG3−CO−(CH2−CH2−O)12−CH2−CH2−NH−CO−CH2−NH−NH2)の調製。
【0166】
ペプチドは、ABI 433Aペプチド・シンセサイザにおいて、Fastmoc0.25mMモニタリング・プレビアス・ピーク・ソフトウェアによるFmoc/HBTU化学用シンスアシスト・バージョン2.0を用いて調製する。ユニバーサルPEGノバタグ(Universal PEG NovaTag)樹脂を合成に用いた。Fmoc−Phe−Thr(ΨMe,MePro)−OH及びFmoc−Ser(But)−Ser(ΨMe,MePro)−OHをそれぞれ、Phe−The及びSer−Ser配列に使用した。
【0167】
その樹脂に、エタノールで2分洗浄を3回及び塩化メチレンで2分洗浄を3回行う。Mmt基を除去するために、HOBt−水和物(9.186gm、0.6M)を塩化メチレン/2,2,2−トリフルオロエタノール100mLに溶解し、その25mLを樹脂に添加して、穏やかに1時間混合する。溶媒を濾過により除去し、その順序を3回繰り返す。その樹脂に、塩化メチレンで2分洗浄を3回、N−メチルピロリドン中の塩化メチレンで2分洗浄を1回、及びN−メチルピロリドンで2分洗浄を3回行う。ペプチド樹脂の遊離アミノ基に、O−(N−Fmoc−2−アミノエチル)−0’−(2−カルボキシエチル)−ウンデカエチレングリコール(Fmoc−PEG12−CO2H)を添加し、次いでBoc3−ヒドラジノ酢酸をHBTU及びN−メチルピロリドン中のHOBtを用いて添加する。
【0168】
その樹脂に、N−メチルピロリドンで2分洗浄を3回、塩化メチレン/N−メチルピロリドンで2分洗浄を1回、塩化メチレンで2分洗浄を3回、メタノールで2分洗浄を3回、エチルエーテルで2分洗浄を1回行い、減圧下で2時間乾燥させる。
【0169】
ペプチドは、トリフルオロ酢酸(30mL)とフェノール(2.25g)とジチオトリエトール(1.5g)とチオアニソール(1.5mL)とトリイソプロピルシラン(1.5mL)と水(1.5mL)との開裂混合物を用いて周囲温度において2時間で樹脂から開裂させる。樹脂を濾過により除去し、予め冷却させたエチルエーテル(600mL)を加えることによりペプチドを沈殿させる。得られた固体を濾過で単離して、エチルエーテルで洗浄する。粗ペプチドを減圧下で乾燥させて、白色固体を得る。
【0170】
粗ペプチドをアリコート状で、ヴァイダックC−18カラム(10mm、2.5×25cm)2本において、0.1%TFA水溶液中80%アセトニトリルの20〜70%までのグラジエントを用いて流量6mL/分で60分間で精製する。画分を回収し、HPLCで分析し、純粋な画分をプールして凍結乾燥させることで、所望のペプチド誘導体を得た。
【0171】
実施例1M
アミド化GLP−1(7−36)ペプチド−リンカー−ヒドラジン(NH2−NH−CH2−CH2−(O−CH2−CH212−CO−His−Ala−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Gly−Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Arg−Gly−NH2)の調製。
【0172】
ABI 433シンセサイザを、FastMoc化学(0.25ミリモル規模)と共に使用する。擬似プロリンジペプチド類Fmoc−Gly−Thr(ΨMe,MePro)−OH、Fmoc−Phe−Thr(ΨMe,MePro)−OH及びFmoc−Val−Ser(ΨMe,MePro)−OHをそれぞれ、ジペプチド類Gly−Thr、Phe−Thr及びVal−Serに使用した。使用した保護基は、N−末端Fmoc、His(Trt)、Glu(O−t−ブチル)、Ser(O−t−ブチル)、Asp(O−t−ブチル)、Tyr(O−t−ブチル)、Gln(Trt)、Lys(BOC)及びTrp(BOC)であった。合成では0.53meq/gのリンク・アミド・ケムマトリクス(Rink Amide ChemMatrix)樹脂(resincwas)0.20gを使用した。His1を樹脂にカップリングした後、O−(Boc3−2−ヒドラジノエチル)−0’−(2−カルボキシエチル)−ウンデカエチレングリコール(Boc3−ヒドラジノ−PEG12−CO2H)をペプチド樹脂にカップリングする。
【0173】
ペプチドは、TFA10mLとエタンジオール3mLとフェノール1.5gと水0.5mLとチオアニソール0.5mLとの混合物を用いて周囲温度において4時間で脱保護と樹脂からの開裂を同時に行う。樹脂を濾過によって除去して、濾液を冷ジエチルエーテル250mLへ直接流し込む。得られた固体を、濾過で単離して、エーテル中で懸濁して遠心分離することによってジエチルエーテルで洗浄し、減圧下で乾燥させることで白色固体400mgが得られた。
【0174】
粗ペプチドを、縦に並べたヴァイダックC−18カラム(4.6×250mm、10m)2本にアリコート状で注入して、0.1%TFA水溶液中80%アセトニトリルの20〜70%までの線形グラジエントを用いて流量5mL/分で90分間溶出させる。カラムは214nmでモニターする。画分を分析して、正確な生成物を含有するものをプールして凍結乾燥させることで、所望の生成物を白色生成物として得た。
【0175】
実施例1N
GLP−1(7−36)ペプチド−リンカー−ヒドラジン(His−Ala−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Gly−Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Arg−Gly−PEG3−CO−(CH2−CH2−O)12−CH2−CH2−NH−NH2)の調製。
【0176】
ペプチドは、ABI 433Aペプチド・シンセサイザにおいて、Fastmoc0.25mMモニタリング・プレビアス・ピーク・ソフトウェアによるFmoc/HBTU化学用シンスアシスト・バージョン2.0を用いて調製する。ユニバーサルPEGノバタグ(Universal PEG NovaTag)樹脂を合成に用いた。Fmoc−Phe−Thr(ΨMe,MePro)−OH及びFmoc−Ser(But)−Ser(ΨMe,MePro)−OHをそれぞれ、Phe−The及びSer−Ser配列で使用した。
【0177】
その樹脂に、エタノールで2分洗浄を3回及び塩化メチレンで2分洗浄を3回行う。Mmt基を除去するために、HOBt−水和物を塩化メチレン/2,2,2−トリフルオロエタノール100mLに溶解し、その25mLを樹脂に添加して、穏やかに1時間混合する。溶媒を濾過により除去し、その順序を3回繰り返す。その樹脂に、塩化メチレンで2分洗浄を3回、N−メチルピロリドン中塩化メチレンで2分洗浄を1回、及びN−メチルピロリドンで2分洗浄を3回行う。ペプチド樹脂の遊離アミノ基に、O−(Boc3−2−ヒドラジノエチル)−0’−(2−カルボキシエチル)−ウンデカエチレングリコール(Boc3−ヒドラジノ−PEG12−CO2H)を、HBTU及びN−メチルピロリドン中HOBtを用いて添加する。
【0178】
次にその樹脂に、N−メチルピロリドンで2分洗浄を3回、塩化メチレン/N−メチルピロリドンで2分洗浄を1回、塩化メチレンで2分洗浄を3回、メタノールで2分洗浄を3回、エチルエーテルで2分洗浄を1回行い、減圧下で2時間乾燥させる。
【0179】
ペプチドは、トリフルオロ酢酸(30mL)とフェノール(2.5g)とジチオトリエトール(1.5g)とチオアニソール(1.5mL)とトリイソプロピルシラン(1.5mL)と水(1.5mL)との開裂混合物を用いて周囲温度において2時間で樹脂から開裂させる。樹脂を濾過により除去し、予め冷却させたエチルエーテル(600mL)を加えることによりペプチドを沈殿させる。得られた固体を、濾過で単離して、エチルエーテルで洗浄する。粗ペプチドを、減圧下で乾燥させることで、白色固体が得られる。
【0180】
粗ペプチドをアリコート状で、ヴァイダックC−18カラム(10m、2.5×25cm、10m)2本に、0.1%トリフルオロ酢酸水溶液中80%アセトニトリルの20〜70%までのグラジエントを用いて流量6mL/分において60分間で精製する。画分を回収して、HPLCで分析した。純粋な画分をプールして、凍結乾燥させることで、所望のペプチド誘導体が得られた。
【0181】
実施例1O
アミド化GLP−1(7−36)ペプチド−リンカー−ヒドラジン(NH2−NH−CH2−CO−NH−CH2−CH2−CH2−(O−CH2−CH22−O−CH2−CH2−CH2−NH−CH2−O−CH2−CO−His−Ala−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Gly−Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Arg−Gly−NH2)の調製。
【0182】
ABI 433シンセサイザを、Fastmoc化学(0.25ミリモル規模)と共に使用する。擬似プロリンジペプチド類Fmoc−Gly−Thr(ΨMe,MePro)−OH、Fmoc−Phe−Thr(ΨMe,MePro)−OH及びFmoc−Val−Ser(ΨMe,MePro)−OHをそれぞれ、ジペプチド類Gly−Thr、Phe−Thr及びVal−Serに使用した。使用した保護基は、N−末端Fmoc、His(Trt)、Glu(O−t−ブチル)、Ser(O−t−ブチル)、Asp(O−t−ブチル)、Tyr(O−t−ブチル)、Gln(Trt)、Lys(BOC)及びTrp(BOC)であった。リンク・アミド・ケムマトリクス(Rink Amide ChemMatrix)樹脂を合成で使用した。His1を樹脂にカップリングした後、{3−[2−(2−{2−[3−(9H−フローレン−9−イルオキシカルボニルアミノ)−プロポキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エチルアミノ]−1−メチル−2−オキソ−プロポキシ}−酢酸(Fmoc−PEG2−CO2H)をペプチド樹脂にカップリングし、次いでBoc3−ヒドラジノ酢酸をカップリングする。
【0183】
ペプチドは、TFAとエタンジオール3mLとフェノール1.5gと水0.5mLとチオアニソール0.5mLとの混合物を用いて、周囲温度において4時間で脱保護と樹脂からの開裂を同時に行う。樹脂を濾過によって除去して、濾液を冷ジエチルエーテル250mLへ直接流し込む。得られた固体を、遠心分離で単離して、エーテルに懸濁して遠心分離することによってジエチルエーテルで洗浄し、減圧下で乾燥させることで、粗ペプチドが白色固体として得られる。
【0184】
粗ペプチドを、縦に並べたヴァイダックC−18カラム(4.6×250mm、10m)2本にアリコート状で注入して、0.1%TFA水溶液中80%アセトニトリルの30〜60%までの線形グラジエントを用いて流量5mL/分で90分間溶出させる。カラムを214nmでモニターする。画分を分析して、正確な生成物を含有するものをプールして凍結乾燥させることで、所望の生成物を白色固体として得た。
【0185】
実施例2:グリオキシリル−Fcの調製
IgG1クラス/サブクラスのヒト抗体は、パパインによって、N−末端トレイニンを有するFc断片を生成する重鎖上の部位で開裂可能である。本研究では、IgG4抗体のヒト定常部7E3を含むマウス−ヒトキメラをFcとして使用する(コームラ(Kohmura)ら、1993年、動脈硬化トロンビン(Arterioscler Thromb.)、第13巻、1837〜42頁、欧州特許第418316号)。
【0186】
7E3 IgG Fcの脱グリコシル化
FC135mL(5mg/mL)をpH7.5のトリス10mMに透析する。透析するために、PNGアーゼF(500,000u/mL)100mLを加えて、得られる溶液を37°で3日間インキュベートする。脱グリコシル化されたFcを、TosoHaasフェニル5PWカラム(5.5×200mm、10m)において0〜50%Bのグラジエントで流量11mL/分で溶出して精製する。(緩衝液A:0.1Mリン酸ナトリウム、1M硫酸アンモニウム、pH6.5;緩衝液B:0.1Mリン酸ナトリウム、pH 6.5)。分子量:計算値49,864.4、測定値49,868.4。
【0187】
脱グリコシル化Fcの酸化
脱グリコシル化Fc(実験番号205から8.9mg/mL)55mLをpH8.4の1% NaHCO3に透析することで、8.6mg/mLが56.3mL得られる。これを、pH8.4の1%NaHCO3を40.6mL加えることによって、5.1mg/mLに調節する(タンパク質/mL 10−4ミリモルミリモル、これは、N−末端トレオニン/mL 2×10−4ミリモルに相当する)1% NaHCO3中メチオニン12.5mg/mLの溶液(pH8.4)を調製し、この11.9mLをFc溶液に加える。
【0188】
20mg/mLのNaIO4水溶液を調製する。この2.12mL(42.4mg)をFcに加える。反応混合物を、周囲温度で15分間穏やかに攪拌する。エチレングリコール(2.8g、2.3mL)を加えて、反応物を更に20分間穏やかに攪拌する。この溶液を0.1M NaOAc(pH4.5)に透析して、4.0mg/mLを120mL得る。この溶液は、2.5mLのアリコートに分けて、−20℃に冷凍して、それ以上精製せずに使用する。
【0189】
実施例3:ペプチド−Fc共役物の調製
実施例1Aのペプチド1の利用:
グリオキシリル−Fc(2.5mL、4mg/mL)に、活性化GLP−1類縁体であるペプチド1A 12mLを加える。試験管を4℃の冷蔵庫内で24時間保存する。NaBH3CNの1mg/mL溶液の溶液を調製し、その100mLを反応物に加えて、反応物を冷蔵庫に戻して一晩保存する。この試料に、硫酸アンモニウム100mgを加える。試料をTosoHaasフェニル5PWカラム(5.5×200mm、10m)に注入して、0〜100%Bまでのグラジエントにより、流量11mL/分で溶出させる(緩衝液A:リン酸ナトリウム0.1M、硫酸アンモニウム1M、pH6.5;緩衝液B:リン酸ナトリウム0.1M、pH6.5)。画分をプールして、約8mLまで濃縮して、PBSに透析する。分子量:計算値57,005.8、モノアイソトピック56,970.4、測定値57,004.3。
【0190】
実施例1Bのペプチド2の利用:
グリオキシリル−Fc(2.5mL、4mg/mL)に、活性化GLP−1類縁体であるペプチド1Bを10mg加える。試験管を4℃の冷蔵庫内で24時間保存する。NaBH3CNの1mg/mL溶液の溶液を調製し、その100mLを反応物に加えて、反応物を冷蔵庫に戻して一晩保存する。この試料に、硫酸アンモニウム100mgを加える。試料をTosoHaasフェニル5PWカラム(5.5×200mm、10m)に注入して、0〜100%Bまでのグラジエントにより、流量11mL/分で溶出させる(緩衝液A:リン酸ナトリウム0.1M、硫酸アンモニウム1M、pH6.5;緩衝液B:リン酸ナトリウム0.1M、pH6.5)。画分をプールして、約8mLまで濃縮して、PBSに透析する。分子量:計算値57,883.8、モノアイソトピック57,850.9。測定値57,796.5。
【0191】
実施例1Cのペプチド3の利用。
【0192】
グリオキシリル−Fc(2.5mL、4mg/mL)に、ペプチド1Cを8mg加える。試験管を4℃の冷蔵庫内で24時間保存する。NaBH3CNの1mg/mL溶液の溶液を調製し、その100mLを反応物に加えて、反応物を冷蔵庫に戻して一晩保存する。この試料に、硫酸アンモニウム100mgを加える。試料をTosoHaasフェニル5PWカラム(5.5×200mm、10m)に注入して、0〜100%Bまでのグラジエントにより、流量11mL/分で溶出させる(緩衝液A:リン酸ナトリウム0.1M、硫酸アンモニウム1M、pH6.5;緩衝液B:リン酸ナトリウム0.1M、pH6.5)。画分をプールして、約8mLまで濃縮して、PBSに透析する。分子量:計算値57,802.6、モノアイソトピック57,766.8。計算値57,811.1。
【0193】
ペプチド3からの一価のコンストラクト:
グリオキシルアルデヒド−Fc(2.5mL、4mg/mL)にペプチド3を1.5mg加える。試験管を4℃の冷蔵庫内で24時間保存する。NaBH3CNの1mg/mL溶液の溶液を調製し、その100mLを反応物に加えて、反応物を冷蔵庫に戻して一晩保存する。この試料に、硫酸アンモニウム100mgを加える。試料をTosoHaasフェニル5PWカラム(5.5×200mm、10m)に注入して、50〜100%Bまでのグラジエントにより、流量11mL/分で溶出させる(緩衝液A:リン酸ナトリウム0.1M、硫酸アンモニウム1M、pH6.5;緩衝液B:リン酸ナトリウム0.1M、pH6.5)。画分をプールして、約8mLまで濃縮して、PBSに透析する。分子量:計算値53,792.2、モノアイソトピック53,758.5。測定値53,803.7。
【0194】
実施例4:ペプチド−Fc共役物の生物活性
ペプチド−共役物の活性を、GPCR類によってアデニリルシクラーゼ活性を調整した時に産生されるcAMPを測定する、cAMPアッセイを用いて試験した。
【0195】
cAMPアッセイ ランス(商標)(LANCE)cAMPアッセイ(I.ヘミラ(Hemmila I.)、1999、ランス(商標):HTSのための均一系アッセイ基盤(Homogeneous Assay Platform for HTS)、ジャーナル・オブ・バイオモレキュラー・スクリーニング(J Biomol Screen.)、第4巻(第6号)、303〜308頁)は、同次時間分解蛍光共鳴エネルギー転移(TR−FRET)イムノアッセイである。アッセイは、染料アレクサ・フルール(登録商標)(Alexa Fluor)647で標識されたcAMP−特異性抗体上の結合部位におけるユーロピウム標識されたcAMPトレーサと試料cAMPとの競合に基づいている。ユーロピウム標識されたトレーサ錯体は、ビオチンcAMPと、ユーロピウム−W8044キレートで標識されたストレプチアビジンとの強い相互作用によって形成されている。抗体がEu−SA/b−cAMPに結合すると、光パルス340nmがトレーサのEu−キレート分子を励起する。Eu−キレートが発するエネルギーは、抗体上のアレクサ(Alexa)分子へと移動し、その結果、665nmで発光する。665nmでの蛍光強度測度は、試験試料からのcAMP存在下で低下し、その結果、得られるシグナルは、試料のcAMP濃度と反比例する(ランス(LANCE)cAMPマニュアル)。
【0196】
細胞及びアッセイ。INS−1E細胞(スイス・ジュネーブのクレス・ヴォルハイム(Claes Wollheim)、内分泌学(Endocrinology)、1992年、第130巻(第1号)、167〜178頁)をRPMI 1640/10% FBS/1% L−グルタミン/1%ピルビン酸ナトリウム/1%非必須アミノ酸/50μM β−メルカプトエタノール中で培養して、5%CO2を含む加湿インキュベータにおいて37℃に保持した。細胞は、トリプシン処理に通して、7日ごとに継代培養した。
【0197】
アッセイでは、INS−1E細胞を96穴プレート(コスター(Costar)3610)にコンフルエンスで配置し、適正な成長培地で4日間回復させた。培地を穴から吸引して、アレクサ・フルール(登録行表)647抗cAMP抗体24μL(ランスcAMPキット(LANCE cAMP Kit)、マサチューセッツ州ボストンのパーキン・エルマー(Perkin Elmer))を加え、次いで(PBS/0.5%BSA/0.5mM IBMX中の)一連の試験物品の希釈液24μLを加えた。細胞を室温で7分間刺激した後、Eu−SA/b−cAMPトレーサを含む緩衝液に溶解させた。プレートは、室温で1時間インキュベートした後、665nmでの蛍光強度を測定した。サイクリックAMP濃度は、標準曲線と対照して求めた。
【0198】
結果
図1に示すような及び実施例1Aで調製した通りのペプチド1の、INS−1E細胞内の誘導cAMPを、野生型GLP−1と比較した。図2のグラフに示す結果は、修飾ペプチドの生物活性は低下しなかったことを実証している。
【0199】
実施例3で説明したヒトFc−領域に結合した修飾GLP−1ペプチドの、INS−1E細胞内の誘導cAMPに対する能力を、図4のグラフに示すように比較した。図から分かるように、コンストラクトはいずれも活性を発現した。N−末端結合したGLP−1類縁体(ペプチド3)の活性は、2個のアミノ酸によるGLP−1のN−末端のトランケーションが弱い作用物質活性を生じ、及び8個のアミノ酸によるN−末端トランケーションがペプチドを不活性化することは予め確認されたので、予想外であった(モントローズ−ラフィザデー(Montrose-Rafizadeh)ら、1997年、バイオロジカル・ケミストリー(Biol. Chem.)、第272巻、21201〜21206頁)。しかしながら、ペプチド3の一価共役物を同じアッセイで調べたとき、アッセイにおいて100nMまでの濃度を使用した場合には活性が検出できなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬組成物の調製に有用な免疫グロブリン融合タンパク質であって、次の一般式を有する、前記タンパク質。
B−(L)n−(F) (I)
式中、Bは、少なくとも1つの生物活性GLP−1ペプチド、変異体又は誘導体を表し、Fは、構造(X)m−(D)p−CH2−CH3を含む抗体Fc(Xは、標準的な分子生物工学的技法で組み込まれて産生され得る任意の天然型アミノ酸を表し、mは、0〜20までの整数であり、Dは、多量体形成又は二量体形成ドメインであり、pは、0又は1の整数であり、及びCH2は、免疫グロブリンCH3定常部の少なくとも一部と結合した免疫グロブリンCH2定常部の少なくとも一部を表す)であって、Lは、実質的に非免疫原生でありかつ生物活性部分とFとの間に柔軟な結合を付与するポリマー構造を含むリンカーを表し、nは、0又は1の整数であって、nが0の場合、BとFとの間の結合は非ペプチド性共有結合であり、また、nが1である場合、LとFとの間の結合は、非ペプチド結合である。
【請求項2】
式B−F及びその多量体の請求項1に記載のタンパク質であって、BのC−末端がFのN−末端と結合しているか、又はBのN−末端がFのN−末端に結合してFが二量体形成ドメインを有しない、前記タンパク質。
【請求項3】
式B−L−F及びその多量体の請求項1に記載のタンパク質であって、Fが、二量体形成ドメインを有しないFcドメインでありかつN−末端でLと結合しており、Lが更に、代替部位でBのC−末端に結合しているか、あるいはFが、Fcドメインを形成することができるポリペプチドでありかつN−末端でLと結合しており、Lが更に、代替部位でBのN−末端と結合している、前記タンパク質。
【請求項4】
式B1−F−B2(IV)の請求項1に記載のタンパク質であって、B1及びB2が同一又は異なる前記GLP−1類であるかあるいは同じGLP−1上の代替部位を介して前記Fと結合しており、並びに前記Fが、二量体形成ドメインを有している、前記タンパク質。
【請求項5】
式B1−L1−F−L2−B2(V)の請求項1に記載のタンパク質であって、B1及びB2が、同一又は異なるGLP−1類であるか、あるいはL1及びL2それぞれとB1及びB2上の代替部位を介して結合しており、並びにFが二量体形成ドメインを有している、前記タンパク質。
【請求項6】
BとFとの間の結合又はLとFとの間の結合が、ヒドラジン基及び炭化水素基から選択される、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項7】
前記ヒドラジン結合が、ヒドラジン又はヒドラジド官能性を有する活性化GLP−1ペプチドと反応して、Fc構造のN−末端の片方又は両方でヒドラゾンを形成し、該ヒドラゾンが更に還元されると前記ヒドラジン結合を形成することもできる、グリオキシリル−FC(HCO−CO−Fc)、ケト−Fc、又は単純アルデヒド−Fc(HCO−Fc)の反応によって形成される、請求項6に記載のタンパク質の調製方法。
【請求項8】
前記グリオキシリル−Fcが、前記GLP−1ペプチドと予め結合しているリンカーと反応し、該リンカーが、ヒドラジン部分及びヒドラジド部分からなる群より選択される求核基を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記グリオキシリル−Fcが、リンカー(L)上のヒドラジンと反応し、該リンカーが、ヒドラジン以外の第2の反応基を更に含んでいる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記リンカーが、エチレングリコール単位を少なくとも1つ含む、請求項1〜6のいずれかに記載のたんぱく質。
【請求項11】
前記ポリペプチドBがSEQ ID NO:2の配列を有する、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項12】
Bが、SEQ ID No.1のGLP−1(7−36)又はその類縁体からなる群より選択されるペプチドを含む、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項13】
Dが、免疫グロブリンヒンジ領域の少なくとも一部である、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項14】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のタンパク質を、製薬上許容できる担体と組み合わせて含む、医薬組成物。
【請求項15】
処置を必要としている患者の代謝疾患を処置する方法であって、請求項1に記載のタンパク質を含む医薬組成物の治療的に有効な量を投与することを含む、方法。
【請求項16】
前記疾患が、血糖コントロールの欠如を特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記疾患が、1型糖尿病、前糖尿病状態及び2型糖尿病からなる群より選択される、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−503000(P2011−503000A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532313(P2010−532313)
【出願日】平成20年11月3日(2008.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2008/082209
【国際公開番号】WO2009/059278
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(509087759)セントコア・オーソ・バイオテツク・インコーポレーテツド (77)
【Fターム(参考)】