説明

半固体送達賦形剤および薬学的組成物

【課題】ポリオルトエステルおよび補形剤を含む半固体送達賦形剤ならびにこの送達賦形剤および活性因子を含む制御放出薬学的組成物を提供すること。
【解決手段】半固体送達賦形剤はポリオルトエステルおよび補形剤を含有し、半固体薬学的組成物は活性因子およびこの送達賦形剤を含有する。この薬学的組成物は、局所用の、注射器使用可能な、または注射可能な処方物であり得;活性因子の局所送達のために適している。1つの実施形態において、化学療法薬によって、放射能誘起性悪心および嘔吐によって、および/または手術後誘起性悪心および嘔吐によって誘起された嘔吐の、この治療が必要な患者における治療のための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、ポリオルトエステルおよび補形剤を含む半固体送達賦形剤ならびにこの送達賦形剤および活性因子を含む制御放出薬学的組成物に関する。この薬学的組成物は、活性因子の局所制御送達のための局所用の、注射器使用可能な、または注射可能な形態であり得る。
【背景技術】
【0002】
(従来技術の説明)
抗生物質、防腐薬、コルチコステロイド、抗腫瘍剤および局所麻酔剤などの大きな部類の活性因子が、局所塗布によってまたは注射によって皮膚または粘膜に投与され得る。活性因子は、局所的にまたは全身的に作用し得る。局所送達は、軟膏、クリーム、エマルジョン、水剤、懸濁液その他などの組成物の使用を通じて達成され得る。活性因子の送達のための注射剤としては、水剤、懸濁液およびエマルジョンが挙げられる。これらの調合薬のすべてが、何年もの間、活性因子の送達のために広範囲に使用されてきた。しかし、これらの調合薬は、短時間作用性でありそしてそれゆえ、これらを、活性/治療が必要な部位の血流中に治療上有効な投与濃度で維持するために、たびたび、一日に数回投与しなければならないという不利益をこうむっている。
近年、投与後長期にわたり治療上の反応を提供する剤形を開発するために、多くの進歩がなされた。これらの製品は、リポソーム、マイクロカプセル、ミクロスフェア、ミクロパーティクルおよびその他などの、マイクロカプセル化によって達成され得る。この型の剤形については、活性因子を、典型的にマイクロカプセル、リポソームまたはミクロパーティクル中に閉じ込めまたはカプセル化し、これらを次に生体内に注射を経てまたは移植物の形態で導入する。この型の剤形からの活性因子の放出速度は制御され、これは頻繁に投薬する必要を排除する。しかし、これらの製造は煩わしく、たびたび高コストに終わっている。加えて、これらは、多くの場合、低い再現性しか有さず、それゆえにこれらの放出のパターンは信頼性を欠く。さらに、有機溶媒を製造過程において使用している場合、組成物中に有機溶媒残渣が存在し得、これは非常に有毒であり得る。有機溶媒の使用は、環境上の理由および火災危険上の理由からもまた望ましくない。
治療因子の送達のための合成生分解性ポリマーに対する関心は、1970年代初期に、ポリ(乳酸)を使用した(非特許文献1)の仕事ともに始まった。この時より、非常に多くの他のポリマーが調製され、活性因子の制御放出のための生腐食性(bioerodible)マトリックスとして研究されてきた。(特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7および特許文献8)は、活性因子の制御送達に使用され得る様々な型の生分解性または生腐食性(bioerodible)ポリマーを開示している。これらポリマーの多くが、半固体の形態で出現し得る。しかし、半固体ポリマー材料は、しばしば粘着性がありすぎる。その結果、活性因子は、たびたび、半固体ポリマー材料から容易にはおよび信頼性を持っては放出され得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4,079,038号明細書
【特許文献2】米国特許第4,093,709号明細書
【特許文献3】米国特許第4,131,648号明細書
【特許文献4】米国特許第4,138,344号明細書
【特許文献5】米国特許第4,180,646号明細書
【特許文献6】米国特許第4,304,767号明細書
【特許文献7】米国特許第4,946,931号明細書
【特許文献8】米国特許第5,968,543号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Yollesら,Polymer News,1970年,第1巻,pp.9−15
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(発明の概要)
本発明の第1の目的は、ポリオルトエステルおよび補形剤を含む半固体送達賦形剤を提供することである。補形剤は、ポリオルトエステルと容易に混和し、そして結果として生じた半固体送達賦形剤は、滑らかで流動可能なテクスチャーを有する。本発明に適切なポリオルトエステルは、下の式Iおよび式IIによって表される。
【0006】
本発明の別の目的は、活性因子の局所制御送達のための制御放出半固体薬学的組成物を提供することである。組成物は、活性因子および半固体送達賦形剤を含む。
【0007】
本発明のさらなる目的は、局所的に作用する活性因子(特に局所麻酔剤)の制御送達のための、半固体の注射器使用可能なまたは注射可能な組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ポリオルトエステルを、補形剤と室温下で、溶媒の使用なしに均一に混合し得る。この工程の別の変形形態では、ポリオルトエステルを補形剤と、約5℃および200℃の間で、より好ましくは約20℃および150℃の間で、もっとも好ましくは約25℃および100℃の間で、均一に混合し得る。一つの変形形態では、ポリオルトエステルを一つの温度下、例えば約70℃下に置き得、補形剤を違う温度下、例えば約120℃下に置き得、そしてこの二つの成分を混合して、室温より高い最終温度を得る。この二つの成分のそれぞれに望まれる温度は、選択されたポリオルトエステルおよび補形剤の型に基づく。結果として生じる半固体送達賦形剤および制御放出薬学的組成物は、有用なテクスチャーおよび粘性を有し、そして組成物からの活性因子の放出速度はまた、望まれる治療効果に適応するように、便利におよび確実に調節され得る。
【0009】
このように、第一の局面では、本発明は:
(a)式Iまたは式IIのポリオルトエステルであって
【0010】
【化8】

式中、
Rは、結合、−(CH−または−(CH−O−(CH−であり;式中aは1〜10の整数、ならびにbおよびcは、独立に1〜5の整数であり;
*はC1〜4アルキルであり;
nは少なくとも5の整数であり;および
Aは、R、R、RまたはRであり、
は:
【0011】
【化9】

であり
式中:
pは1〜20の整数であり;
は水素またはC1〜4アルキルであり;および
は:
【0012】
【化10】

であり
式中:
sは0〜30の整数であり;
tは2〜200の整数であり;および
は水素またはC1〜4アルキルであり;
は:
【0013】
【化11】

であり、
は:
【0014】
【化12】

であり
式中:
xは0〜30の整数であり;
yは2〜200の整数であり;
は水素またはC1〜4アルキルであり;
およびR10は独立にC1〜12アルキレンであり;
11は水素またはC1〜6アルキルであり、およびR12はC1〜6アルキルであり;またはR11およびR12は一緒になってC3〜10アルキレンであり;
ならびに
は、アミド基、イミド基、尿素基およびウレタン基から独立に選択される少なくとも一つの官能基を含むジオールであり;
A単位の少なくとも0.01モル%が、式Rである、ポリオルトエステル、ならびに
(b)200から4000の間の分子量を有するポリエチレングリコールエーテル誘導体、400から4000の間の分子量を有するポリエチレングリコールコポリマー、C2〜19脂肪族カルボン酸のモノグリセリド、ジグリセリドまたはトリグリセリドまたはこのような酸の混合物、アルコキシル化テトラヒドロフルフリルアルコールおよびこれらのC1〜4アルキルエーテルおよびC2〜19脂肪族カルボン酸エステル、および生体適合性オイルから選択される、薬学的に許容可能な、ポリオルトエステル適合性液体補形剤
を含む半固体送達賦形剤を提供する。
【0015】
第2の局面では、本発明は
(a)活性因子;および
(b)送達賦形剤として、上記の半固体送達賦形剤
を含む制御放出半固体薬学的組成物を提供する。
【0016】
第3の局面では、本発明は、活性因子の制御放出局所投与によって治療可能な疾患状態を治療する方法、特に局所麻酔剤の投与によって痛みを治療する方法であって、治療的に有効な量の活性因子を上記の薬学的組成物の形態で局所投与する工程を含む方法、を提供する。
【0017】
第4の局面では、本発明は、活性因子の制御放出局所投与によって治療可能な疾患状態を治療する方法、特に制吐薬の投与によって悪心および/または嘔吐を治療するまたは予防する方法であって、治療的に有効な量の活性因子を上記の薬学的組成物の形態で局所投与する工程を含む方法、を提供する。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
薬学的組成物であって、
(A)半固体送達賦形剤であって:
(i)式Iまたは式IIのポリオルトエステルであって
【化1】


式中、
Rは、結合、−(CH−または−(CH−O−(CH−であり;式中aは1〜10の整数、ならびにbおよびcは、独立に1〜5の整数であり;
*はC1〜4アルキルであり;
nは少なくとも5の整数であり;および
Aは、R、R、RまたはRであり、
は:
【化2】


であり
式中:
pは1〜20の整数であり;
は水素またはC1〜4アルキルであり;および
は:
【化3】


であり
式中:
sは0〜30の整数であり;
tは2〜200の整数であり;および
は水素またはC1〜4アルキルであり;
は:
【化4】


であり、
は:
【化5】


であり
式中:
xは0〜30の整数であり;
yは2〜200の整数であり;
は水素またはC1〜4アルキルであり;
およびR10は独立にC1〜12アルキレンであり;
11は水素またはC1〜6アルキルであり、およびR12はC1〜6アルキルであり;またはR11およびR12は一緒になってC3〜10アルキレンであり;
ならびに
は、アミド基、イミド基、尿素基およびウレタン基から独立に選択される少なくとも一つの官能基を含むジオールの残基であり;
A単位の少なくとも0.01モル%が、該式Rである、ポリオルトエステル;ならびに
(ii)200から4000の間の分子量を有するポリエチレングリコールエーテル誘導体、400から4000の間の分子量を有するポリエチレングリコールコポリマー、C2〜19脂肪族カルボン酸のモノグリセリド、ジグリセリドまたはトリグリセリドまたはこのような酸の混合物、アルコキシル化テトラヒドロフルフリルアルコールおよびこれらのC1〜4アルキルエーテルおよびC2〜19脂肪族カルボン酸エステル、および生体適合性オイルから選択される、薬学的に許容可能な、ポリオルトエステル適合性液体補形剤
を含む半固体送達賦形剤;ならびに
(B)制吐薬、および/または麻酔薬
を含む薬学的組成物。
(項目2)
前記ポリオルトエステルの濃度が1重量%から99重量%までの範囲である、項目1に記載の半固体送達賦形剤。
(項目3)
前記ポリオルトエステルが1,000から20,000の間の分子量を有する、項目1に記載の半固体送達賦形剤。
(項目4)
前記A単位が前記式Rである部分が1モル%から90モル%の間である、項目1に記載の半固体送達賦形剤。
(項目5)
前記ポリオルトエステルが式Iであり、
式中:
AがRに等しい単位はなく;
は:
【化6】


であり、
式中:
xは0〜10の整数であり;
yは2〜30の整数であり;および
は:
【化7】


であり、
式中:
sは0〜10の整数であり、tは2〜30の整数であり;ならびに
、RおよびRは、独立に水素またはメチルである、項目1に記載の半固体送達賦形剤。
(項目6)
およびRは両方とも−(CH−CH−O)−(CH−CH)−であり;
はメチルであり;および
pは1または2である、項目5に記載の半固体送達賦形剤。
(項目7)
およびRは両方とも−(CH−CH−O)−(CH−CH)−であり;
はメチルであり;および
pは1または2である、項目5に記載の半固体送達賦形剤。
(項目8)
前記麻酔薬が、ブピバカイン、リドカイン、メピバカイン、ピロカインおよびプリロカインからなる群から選択される、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目9)
前記組成物中の前記麻酔薬の濃度が約1wt.%〜約5wt.%である、項目8に記載の薬学的組成物。
(項目10)
前記制吐薬がグラニセトロンである、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目11)
前記制吐薬の割合が、前記組成物の0.1重量%から80重量%である、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目12)
前記制吐薬の割合が、前記組成物の1重量%から5重量%である、項目11に記載の薬学的組成物。
(項目13)
前記組成物が局所用、注射器使用可能または注射可能形態である、項目10に記載の薬学的組成物。
(項目14)
前記制吐薬が、5−HT拮抗剤、ドーパミン拮抗剤、抗コリン作用性薬、GABAレセプター作用薬、NKレセプター拮抗剤、GABAαレセプター作用薬および/またはGABAαレセプター作用薬からなる群から選択される、項目1に記載の薬学的組成物。
(項目15)
前記制吐薬が、5−HT拮抗剤である、項目14に記載の薬学的組成物。
(項目16)
前記5−HT拮抗剤が、オンダンセトロン、グラニセトロンおよびトロピセトロンからなる群から選択される、項目15に記載の薬学的組成物。
(項目17)
さらに第2の制吐薬を含み、組み合わせ組成物を形成する、項目16に記載の薬学的組成物。
(項目18)
前記第2の制吐薬が、α−2−アドレノレセプター作用薬、ドーパミン拮抗剤、抗コリン作用性薬、GABAレセプター作用薬、NKレセプター拮抗剤、GABAαレセプター作用薬および/またはGABAαレセプター作用薬からなる群から選択される、項目17に記載の薬学的組成物。
(項目19)
前記α−2−アドレノレセプター作用薬が、クロニジン、アプラクロニジン、パラ−アミノクロニジン、ブリモニジン、ナファゾリン、オキシメタゾリン、テトラヒドロゾリン、トラマゾリン、デトミジン、メデトミジン、デクスメデトミジン、B−HT920、B−HIT933、キシラジン、リルメニジン、グアナベンズ、グアンファシン、ラベタロール、フェニレフリン、メフェンテルミン、メタラミノール、メトキサミンおよびキシラジンからなる群から選択される、項目18に記載の薬学的組成物。
(項目20)
化学療法薬によって、放射能誘起性悪心および嘔吐によって、および/または手術後誘起性悪心および嘔吐によって誘起された嘔吐の、この治療が必要な患者における治療のための方法であって、項目15に記載の前記5−HT拮抗剤を含む前記組成物を該患者に投与する工程を含む、方法。
(項目21)
前記5−HT拮抗剤が、オンダンセトロン、グラニセトロンおよびトロピセトロンからなる群から選択される、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記患者がヒトである、項目20に記載の方法。
(項目23)
前記投与が、外科手術部位へ前記5−HT拮抗剤を含む前記組成物を配置する工程を含む、項目22に記載の方法。
(項目24)
化学療法薬によって誘起された嘔吐の、この予防が必要な患者における予防のための方法であって、項目15に記載の前記5−HT拮抗剤を含む前記組成物を該患者に投与する工程を含む、方法。
(項目25)
前記5−HT拮抗剤が、オンダンセトロン、グラニセトロンおよびトロピセトロンからなる群から選択される、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記患者がヒトである、項目24に記載の方法。
(項目27)
化学療法薬によって、放射能誘起性悪心および嘔吐によって、および/または手術後誘起性悪心および嘔吐によって誘起された嘔吐に伴う症状を患者において改善するための方法であって、この改善が必要な該患者に、項目15に記載の前記5−HT拮抗剤を含む前記組成物を投与する工程を含む、方法。
(項目28)
前記5−HT拮抗剤が、オンダンセトロン、グラニセトロンおよびトロピセトロンからなる群から選択される、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記患者がヒトである、項目27に記載の方法。
(項目30)
化学療法薬によって、放射能誘起性悪心および嘔吐によって、および/または手術後誘起性悪心および嘔吐によって誘起された嘔吐の、この予防が必要な患者における予防のための方法であって、項目15に記載の前記5−HT拮抗剤を含む前記組成物および第2の制吐薬を該患者に投与する工程を含む、方法。
(項目31)
前記第2の制吐薬が、α−2−アドレノレセプター作用薬、ドーパミン拮抗剤、抗コリン作用性薬、GABAレセプター作用薬、NKレセプター拮抗剤、GABAαレセプター作用薬および/またはGABAαレセプター作用薬からなる群から選択される化合物である、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記成分(A)および(B)を、溶媒なしで、約20℃および約150℃の間の温度下で混合する工程を含む、項目1の前記送達賦形剤を調製するためのプロセス。
(項目33)
前記制吐薬および/または麻酔薬が固体形態である項目1に記載の前記薬学的組成物を調製するためのプロセスであって、
(1)随意に、前記活性因子の粒子サイズを減少させるために該活性因子を粉砕する工程;
(2)前記活性因子および前記送達賦形剤を混合する工程;および
(3)随意に、前記活性因子の粒子サイズを減少させるために該組成物を粉砕する工程を含むプロセス。
(項目34)
前記制吐薬および/または前記麻酔薬が固体の形態である、項目1に記載の前記薬学的組成物を調製するためのプロセスであって、
(1)前記ポリオルトエステルを70℃まで温める工程;
(2)120℃〜150℃下で前記補形剤中に前記活性因子を溶解する工程;および
(3)該70℃のポリオルトエステルを120℃の該活性因子の補形剤溶液へ、攪拌器を用いて、成分の均一な分布を得るように、以下の条件下:
(a)不活性雰囲気下で、
(b)随意に、混合容器を70℃まで加温して;または
(c)随意に、混合工程中に混合物の温度を周囲の条件下で平衡化させる
で混合する工程
を含むプロセス。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
(定義)
本明細書において他の定義がなされない限り、全ての専門用語および科学用語は、本明細書においては、合成化学、薬理学および美容術の分野の当業者によって一般に使用されかつ理解されているそれらの通常の定義に従って、使用される。
【0019】
「活性因子(active agent)」は、有益なまたは有用な結果を生み出すどんな化合物または化合物の混合物でも包含する。活性因子は、賦形剤、担体、希釈剤、潤滑剤、結合剤および他の処方補助剤ならびにカプセル化成分またはそれ以外の保護成分のような成分と区別可能である。活性因子およびそれらの薬学的に許容される塩の例としては、薬学的因子、農学的因子または美容術的因子が挙げられる。適切な薬学因子は、局所的にまたは全身的に作用する薬学活性因子を包含し、これらは被験体に、局所塗布または病変内局所塗布(例えば、擦過した皮膚、裂傷、刺創その他への塗布、ならびに外科的創中への塗布を包含する)によって、または、皮下注射、皮内注射、筋肉内注射、眼内注射または関節内注射などの注射によって投与され得る。これらの因子の例としては、これらだけに限られるわけではないが、抗感染薬(抗生物質、抗ウイルス薬、抗真菌薬、抗疥癬虫薬または殺シラミ薬を包含する)、防腐薬(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、酢酸マフェナイド、塩化メチルベンゼトニウム、ニトロフラゾン、ニトロメルソールおよびその他)、ステロイド(例えば、エストロゲン、プロゲスチン、アンドロゲン、アドレノコルチコイド、およびその他)、治療ポリペプチド(例えば、インスリン、エリトロポイエチン、骨形態発生タンパク質などの形態発生タンパク質、およびその他)、鎮痛薬および抗炎症薬(例えば、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、ケトロラク、COX−1阻害薬、COX−2阻害薬、およびその他)、癌化学療法薬(例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、フルオロウラシル、チオグアニン、カルムスチン、ロムスチン、メルファラン、クロラムブシル、ストレプトゾシン、メトトレキサート、ビンクリスチン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ビンデシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、タモキシフェン、およびその他)、麻酔薬(例えば、モルヒネ、メペリジン、コデイン、およびその他)、局所麻酔薬(例えば、ブピバカイン、ジブカイン、メピバカイン、プロカイン、リドカイン、テトラカイン、およびその他などのアミド型局所麻酔薬またはアニリド型局所麻酔薬)、オンダンセトロン、グラニセトロン、トロピセトロン、メトクロプラミド、ドンペリドン、スコポラミン、およびその他などの制吐薬、抗血管新生薬(例えばコンブレスタチン、コントルトロスタチン、抗VEGF薬、およびその他)、多糖類、ワクチン、抗原、DNAおよび他のポリヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、およびその他、が挙げられる。本発明は、収れん薬、制汗薬、刺激薬、発赤薬、発泡薬、硬化薬、焼灼薬、腐食薬、角質溶解薬,遮光剤および色素脱失薬および止痒薬を含む種々の皮膚用薬などの、他の局所作用活性因子にも適用し得る。用語「活性因子」はさらに、殺真菌薬、殺虫薬および除草薬などの殺生物薬、植物成長促進剤または阻害剤、保存剤、消毒薬、空気洗浄剤および栄養素を包含する。活性因子のプロドラッグ(pro−drug)が、本発明の範囲内に包含される。
【0020】
「アルキル(alkyl)」は、1個から示された数までの炭素原子を有する直鎖飽和ヒドロカルビルまたは3個から示された数までの炭素原子を有する分枝または環状ヒドロカルビルを意味する(例えば、C1〜4アルキル)。アルキルの例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、n−ブチル、t−ブチル、シクロプロピルメチル、およびその他が挙げられる。
【0021】
「アルキレン(alkylene)」は、1個から示された数までの炭素原子を有する、直鎖または分枝鎖の二価、三価または四価のアルキレンラジカル、または3個から示された数までの炭素原子を有する分枝飽和シクロアルキレニルまたは環状飽和シクロアルキレニル(例えば、C1〜4アルキレニルまたはC3〜7シクロアルキレニル)を意味し、例えば、1,2−エチレン、1,3−プロピレン、1,2−プロピレン、1,4−ブチレン、1,5−ペンチレン、1,6−へキシレン、1,2,5−へキシレン、1,3,6−へキシレン、1,7-へプチレン、およびその他を包含する。
【0022】
「生腐食性(bioerodible)」および「生腐食性(bioerodibility)」は、生きた生物体の作用ならびに最も注目に値する生理学的pHおよび温度を含む、生物学的環境の作用によるポリオルトエステルの劣化、分解または消化を言う。本発明のポリオルトエステルの生腐食の主な機構は、ポリオルトエステルの単位間および単位内の結合の加水分解である。
【0023】
「含む(comprising)」は、包括的な用語で、この用語に続いて列挙される要素を含み(containing)、にわたり(embracing)、に及び(covering)またはを包含する(including)が、しかし他の未列挙要素を除外しないことを意味すると解釈される。
【0024】
「制御された放出(controlled release)」、「持続的放出(sustained release)」および同様の用語は、活性因子が、塗布または注射の直後に直ちに分散するのではなく、送達賦形剤からある時間の期間にわたり実否確認可能かつ制御可能な速度で放出される場合に起こる活性因子送達の様式を意味するのに使用される。制御された放出または持続的放出は、何時間、何日または何ヶ月にも及び得、非常に多くの要因の関数として変化し得る。本発明の薬学的組成物については、放出速度は、選択された補形剤の型および組成物中の補形剤の濃度に依存する。別の放出速度の決定因子は、ポリオルトエステルの単位間および単位内の結合の加水分解の速度である。加水分解の速度は、次に、ポリオルトエステルの組成およびポリオルトエステル中の加水分解可能結合の数によって制御され得る。本発明の薬学的組成物からの活性因子の放出速度を決定する他の要因としては、粒子サイズ、活性因子の溶解度、媒体の酸度(マトリックスの内部かまたは外部かのどちらでも)ならびにマトリックス中の活性因子の物理学的特性及び化学的特性が挙げられる。
【0025】
「送達賦形剤(delivery vehicle)」は、活性因子を関心のある部位へ輸送する働き、隔離または他の方法によって活性因子へのアクセス速度をまたは活性因子の放出速度を制御する働き、および因子の活性が必要とされる領域への因子の塗布を促進する働きを包含する機能を有する組成物を意味する。
【0026】
「マトリックス(matrix)」は、ポリオルトエステルが腐食するまたは分解するまで、活性因子の放出を阻止する仕方で活性因子を本質的に保持する、ポリオルトエステルまたは送達賦形剤の物理的構造を意味する。
【0027】
「ポリオルトエステル適合性(polyorthoester-compatible
)」とは、ポリオルトエステルと混合した場合、単一相を形成しかつポリオルトエステルのいかなる物理的または化学的変化も引き起こさない補形剤の特性を言う。
【0028】
「プロドラッグ(pro−drug)」は、望まれる薬理学的効果を生み出すために、投与後インビボで(例えば生物学的液体または酵素によって)被験体によって薬理学的に活性のあるまたはより活性のある型の化合物へ変化または代謝されなければならない、薬理学的に不活性なまたはより活性のない型の化合物を意味する。化合物のプロドラッグは、修飾がインビボで開裂して親化合物を放出し得るように、化合物中に存在する一つ以上の官能基を修飾することによって調製し得る。プロドラッグは、化合物中のヒドロキシ基、アミノ基、スルフヒドリル基、カルボキシ基またはカルボニル基を何らかの基と結合させた(この結合がインビボで開裂して、それぞれ遊離のヒドロキシ基、アミノ基、スルフヒドリル基、カルボキシ基またはカルボニル基を再生し得る)化合物を含む。プロドラッグの例としては、これらだけに限られるわけではないが、化合物中の、エステル(例えば酢酸エステル、ジアルキルアミノ酢酸エステル、ギ酸エステル、リン酸エステル、硫酸エステルおよび安息香酸エステル誘導体)およびヒドロキシ官能基のカルバミン酸エステル(例えばN,N−ジメチルカルボニル)、カルボキシル官能基のエステル(例えば、エチルエステル、モルホリノエタノールエステル)、N−アシル誘導体(例えばN−アセチル)、N−マンニッヒ塩基、シッフ塩基およびアミノ官能基のエナミノン、オキシム、アセタール、ケタール、ならびにケトンおよびアルデヒド官能基のエノールエステルなどが挙げられる。
【0029】
「半固体(semi−solid)」とは、中位の圧力下で流動可能な材料の機械的物理的状態を意味する。より具体的には、半固体材料は、約10,000cpsと約3,000,000cpsとの間の粘性、特に約50,000cpsと約500,000cpsとの間の粘性を有するべきである。好ましくは処方は、容易に注射器使用可能または注射可能である(これは、処方を、局所用または眼科用の処方では周知の種類の従来型のチューブから、針なし注射器から、または、16〜25ゲージなどの、16ゲージまたはそれよりより小さい針を有する注射器から、容易にディスペンスし得ることを意味する)。
【0030】
「隔離(sequestration)」は、ポリオルトエステルマトリックスの内部の空間内への活性因子を閉じ込めまたは保持である。活性因子のマトリックス内への隔離は、因子の毒性効果を制限し、制御された様式で因子の作用時間を長くし、生物中の正確に限定された位置における因子の放出を可能にし、または不安定な因子を環境の作用から保護し得る。
【0031】
「治療的に有効な量(therapeutically effective amount)」は、動物に疾患を治療するために投与する場合、その疾患の処置をもたらすのに十分である量を意味する。
【0032】
疾患を「処置する(treating)」ことまたは疾患の「処置(treatment)」は、疾患の素因を与えられており得るが、疾患の症状をまだ経験していないまたは症状をまだ示していない動物において疾患が生じるのを予防すること(予防的処置)、疾患を阻害すること(疾患の発達を遅らせるまたは阻止する)、疾患の症状または副作用の軽減を提供すること(待期療法を含む)、疾患を軽減すること(疾患の後退を引き起こす)を包含する。本発明の目的のためには、「疾患」は痛みを含む。
【0033】
「単位(unit)」は、ジケテンアセタール分子の残基およびポリオールの残基からなる、ポリオルトエステル鎖の個々の分節を意味する。
【0034】
「α−ヒドロキシ酸含有」単位は、AがRである単位を意味する、即ち、α−ヒドロキシ酸またはこの環状ジエステルおよび式HO−R−OHのジオールからポリオールが調製される。α−ヒドロキシ酸含有単位であるポリオルトエステルの小部分はポリオルトエステルの加水分解(生腐食)速度、そして次には、活性因子の放出速度にも影響する。
【0035】
(ポリオルトエステル)
ポリオルトエステルは式Iまたは式IIであり
【0036】
【化13】

式中、
Rは、結合、−(CH−または−(CH−O−(CH−であり;式中aは1〜10の整数、ならびにbおよびcは、独立に1〜5の整数であり;
*はC1〜4アルキルであり;
nは少なくとも5の整数であり;および
Aは、R、R、RまたはRであり、
は:
【0037】
【化14】

であり
式中:
pは1〜20の整数であり;
は水素またはC1〜4アルキルであり;および
は:
【0038】
【化15】

であり
式中:
sは0〜30の整数であり;
tは2〜200の整数であり;および
は水素またはC1〜4アルキルであり;
は:
【0039】
【化16】

であり、
は:
【0040】
【化17】

であり
式中:
xは0〜30の整数であり;
yは2〜200の整数であり;
は水素またはC1〜4アルキルであり;
およびR10は独立にC1〜12アルキレンであり;
11は水素またはC1〜6アルキルであり、およびR12はC1〜6アルキルであり;またはR11およびR12は一緒になってC3〜10アルキレンであり;ならびに
は、アミド基、イミド基、尿素基およびウレタン基から独立に選択される少なくとも一つの官能基を含むジオールの残基であり;
A単位の少なくとも0.01モル%が、式Rである。
【0041】
本発明のために有用なポリオルトエステルの構造は、式Iおよび式IIに示されているように、ジケテンアセタールおよびジオールの残基を交互にする構造であり、それぞれの隣接したジケテンアセタール残基の対は一つのポリオール、好ましくはジオールの残基によって分離されている。
【0042】
水の存在下、α−ヒドロキシ酸含有単位は、体温の37℃下および生理学的pH下で容易に加水分解し、対応するヒドロキシ酸を生成する。これらのヒドロキシ酸は、次に、酸性触媒として作用し、ポリオルトエステルの加水分解速度(外来の酸の添加なしでの)の制御をする。ポリオルトエステルを送達賦形剤または活性因子を閉じ込めるマトリックスとして使用する場合、ポリオルトエステルの加水分解は、活性因子の放出を引き起こす。
【0043】
より高いモルパーセンテージの「α−ヒドロキシ酸含有」単位を有するポリオルトエステルは、より高い生腐食速度を有する。好ましいポリオルトエステルは、「α−ヒドロキシ酸含有」単位のモルパーセンテージが、少なくとも0.01モル%、約0.01モル%〜約50モル%の範囲にあるものであり、より好ましくは約0.05モル%から約30モル%まで、例えば約0.1モル%から約25モル%、特に約1モル%から約20モル%である。望まれる組成物を成し遂げるために適切な、「α−ヒドロキシ酸含有」単位のモルパーセンテージは、処方によって変化する。
【0044】
好ましいポリオルトエステルは:
nが、5〜1000の整数であり;
ポリオルトエステルは、1000〜20,000、好ましくは1000〜10,000、より好ましくは1000〜8000の分子量を有し;
が、水素またはメチルであり;
が:
【0045】
【化18】

であり、式中、sは、0〜10、特に1〜4の整数であり;tは、2〜30、特に2〜10の整数であり;Rは、水素またはメチルであり;
が:
【0046】
【化19】

であり、式中、xは、0〜10、特に1〜4の整数であり;yは、2〜30、特に2〜10の整数であり;およびRは、水素またはメチルであり;
が、1個または2個のアミド基、イミド基、尿素基またはウレタン基で割り込まれた、2個〜20個の炭素原子、好ましくは2個〜10個の炭素原子の脂肪族ジオールの残基から選択され;
AがRである単位の割合が、約0.01モル%〜約50モル%、好ましくは0.05モル%〜30モル%、より好ましくは0.1モル%〜25モル%であり;
AがRである単位の割合が、20%より少なく、好ましくは10%、特に5%より少なく、および
AがRである単位の割合が、20%より少なく、好ましくは10%、特に5%より少ない。
【0047】
これらの選好のどれかが存在することによって、同じポリオルトエステルであっても、その選好を満たさないものより、より好ましいポリオルトエステルとなるが、これらの選好は概して独立しており、そして、より多くの数の選好を満たすポリオルトエステルは、概して、より少ない数の選好を満たすものより、より好ましいポリオルトエステルとなる。
【0048】
(ポリオルトエステルの調製)
ポリオルトエステルを、米国特許第4,549,010号明細書および米国特許第5,968,543号明細書に記載されている方法に従い調製する。具体的に言うと、ポリオルトエステルを、式IIIまたは式IVのジケテンアセタール:
【0049】
【化20】

(式中、Lは、水素またはC1〜3アルキルである)、
と式HO−R−OHのジオールおよび式HO−R−OH、式HO−R−OHまたは式HO−R−OHのうちの少なくとも一つのジオールと反応させることにより、調製する。
【0050】
二つの型のジオールの混合物を使用してポリオルトエステルを形成するために、ポリオルトエステルの望まれる特徴に基づいて選択される混合比で、混合物を形成する。AがRであるジオールの使用量を増加させると、ポリオルトエステルの生腐食性は増加し、そしてRがポリエチレンオキシド部分またはアルカンであるようなジオールの使用は、ポリマーの柔軟性を増加する;AがRであるジオールの使用量を増加させると、ポリオルトエステルの硬度を増加する(そしてそれゆえ概して望ましくない、それは特別な状況においては有用であり得るのだが);AがRであるジオールの使用は、ポリオルトエステルの柔軟性を増加し、特にこれらのジオールが低分子量ポリエチレングリコールまたは脂肪族ジオールである場合はそうである。AがRであるジオールの使用もまた概して、ポリオルトエステルの近接する鎖間の水素結合のため、ポリオルトエステルの硬度を増加し、使用される他のジオールによって望ましくもまたは望ましくなくもあり得る。
【0051】
式IIIおよび式IVの型のジケテンアセタールの調製は、米国特許第4,304,767号明細書、米国特許第4,532,335号明細書および米国特許第5,968,543号明細書において開示されており;当業者に公知である。典型的な方法は、式V(即ち、ペンタエリトリトール)または式VIのビス(ジオール):
【0052】
【化21】

を2当量の、2−ブロモアセトアルデヒドジエチルアセタールなどの2−ハロカルボキシアルデヒドジアルキルアセタールと縮合させ、続けて脱ハロゲン化水素し、ジケテンアセタールを得るものである。グリコールのジエチルブロモアセタールとの縮合は、Roberts et al.,J.Am.Chem.Soc.,80、1247−1254(1958)に記載されており、そして脱ハロゲン化水素は、Beyerstedt et al.,J.Am.Chem.Soc.,58,529−553(1936)に記載されている。
【0053】
ジケテンアセタールは、ジビニルアセタールの異性化によっても調製し得る。このように、例えば、3,9−ジ(エチリデン)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(DETOSU)を、n−ブチルリチウムのエチレンジアミン溶液を使用した、3,9−ジビニル−2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン
の異性化によって調製し得る。二重結合の異性化は、Corey et al.,J.Org.Chem.,38,3224(1973)に記載されている。これらのジビニルアセタールは、式Vまたは式VIのビス(ジオール)と、2当量の、アクロレインまたはクロトンアルデヒドなどのビニルアルデヒドまたは、アクロレインジメチルアセタールなどのこれらのジアルキルアセタールとの縮合によって調製し得、このような縮合反応は周知である。
【0054】
Rが結合である式VIのビス(ジオール)は、エリトルトールである。Rが−(CH−である式VIのビス(ジオール)は、1,3−ブタジエンまたは1,5−ヘキサジエンなどの、α,ω−ジエンを、四酸化オスミニウム/過酸化水素などの酸化剤を用いることによって、または当該分野で公知の他の方法によって、酸化することで、これらのビス(ジオール)を与え、調製し得る。Rが−(CH−O−(CH−である式VIのビス(ジオール)は、アリルアルコールなどのω−ヒドロキシ−α−オレフィンを、エピクロロヒドリンなどの、ω−ハロアルキルオキシランと反応させ、2−アリルオキシメチルオキシランなどの、バックボーンが酸素原子によって割り込まれたω−エポキシ−α−オレフィンを形成させ、これを次に四酸化オスミニウム/過酸化水素などの酸化剤を用いることによって、または当該分野で公知の他の方法によって、酸化することで、このビス(ジオール)を与え、調製し得る。
【0055】
式HO−R−OH、式HO−R−OH、式HO−R−OHおよび式HO−R−OHのジオールは、当該分野で公知の方法にしたがって、および例えば米国特許第4,549,010号明細書および米国特許第5,968,543号明細書中に記載されているようにして、調製し得る。ジオールのうちのいくつかは市販のものが入手可能である。ポリエステル部分を構成する式HO−R−OHのジオールは、式HO−R−OHのジオールと0.5モル当量および10モル当量の間のα−ヒドロキシ酸の環状ジエステル(例えばラクチドまたはグリコリド)を、反応させ、反応を100℃〜200℃下で約12時間〜約48時間進行させることで調製され得る。この反応のために特別な溶媒は必要とされないが、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ピロリドン、テトラヒドロフランおよびメチルブチルエーテルなどの有機溶媒が使用され得る。ジオールの調製、特に式HO−R−OHのジオールの調製は、一般に、Heller et al.,J.Polymer Sci.,Polymer Letters Ed.18:293−297(1980)に開示されており、適切なジビニルエーテルと過剰量の適切なジオールを反応させることによるものである。式HO−R−OHのジオールは、RがR’CONR”R’(アミド)、R’CONR”COR’(イミド)、R’NR”CONR”R’(尿素)およびR’OCONR”R’(ウレタン)のジオールを包含する(式中各R’は、独立に脂肪族、芳香族または芳香族/脂肪族の直鎖または分枝鎖ヒドロカルビルであり、特に2〜22炭素原子の直鎖または分枝鎖アルキルであり、特に2〜10炭素原子であり、より特別には2〜5炭素原子である、そしてR”は、水素またはC1〜6アルキルであり、特に水素またはメチルであり、より特別には水素である)。いくつかの代表的、式HO−R−OHのジオールとしては、N,N’−ビス−(2−ヒドロキシエチル)テレフタルアミド、N,N’−ビス−(2−ヒドロキシエチル)ピロメリットジイミド、1,1’−メチレンジ(p−フェニレン)ビス−[3−(2−ヒドロキシエチル)尿素]、N,N’−ビス−(2−ヒドロキシエチル)オキサミド、1,3−ビス(2−ヒドロキシエチル)尿素、3−ヒドロキシ−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド、4−ヒドロキシ−N−(3−ヒドロキシプロピル)ブチルアミドおよびビス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジカーバメートが挙げられる。これらのジオールは、報告された合成として当該分野で公知であり、市販のものが入手可能である。式HO−(CH−NHCO-(CH−OH(式中、nは2〜6の整
数、およびmは2〜5の整数)の代表的ジオールは、2−アミノエタノール、3−アミノプロパノール、4−アミノブタノール、5−アミノペンタノールまたは6−アミノヘキサノールを、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトンまたはε−カプロラクトンと反応させることによって生成する。式HO−(CH−NHCOO−(CH−OH(式中nおよびmはそれぞれ2〜6の整数)の代表的ジオールは、今述べたものと同じアミノアルコールを式
【0056】
【化22】

の環状炭酸エステルと、例えば炭酸エチレンなどと反応させることによって生成する。式HO−A−NHCO−B−CONH−A−OHのビス−アミドジオールは、二酸(随意に、ジアシルジハライドなどの活性化型でよい)を、2当量のヒドロキシ−アミンと反応させることによって調製される。式HO−R−OHのジオールの調製の他の方法が、当該分野において公知である。
【0057】
一旦作ると、望まれる割合の式HO−R−OHのジオールならびに式HO−R−OH、式HO−R−OHおよび式HO−R−OHのジオールを、式IIIまたは式IVのジケテンアセタールと、ジケテンアセタールの全モル数のジオールの全モル数に対する比が1:1より少し少ない比(例えば0.5:1〜0.9:1)となるようにして、適切な溶媒中で周囲の温度下で混合する。ジケテンアセタールおよびジオールの間の縮合反応は、例えば米国特許第4,304,767号明細書、米国特許第4,549,010号明細書および米国特許第5,968,543号明細書に記載されている条件;および当業者に周知である条件下;および反応物それ自体の構造からも容易に明らかになる条件下で行う。適切な溶媒は、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、酢酸エチル、ピロリドン、テトラヒドロフランおよびメチルブチルエーテルその他などの、非プロトン性溶媒である。この反応のために触媒は必要ではないが、しかし使用する場合は、適切な触媒は、ヨウ素のピリジン溶液、p-トル
エンスルホン酸;サリチル酸、ルイス酸(三塩化ホウ素、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素エーテル錯体、三フッ化ホウ素エーテル錯体、オキシ塩化第2スズ、オキシ塩化リン、塩化亜鉛、五塩化リン、五フッ化アンチモン、第1スズオクテート,塩化第2スズ、ジエチル亜鉛およびこれらの混合物など);ブレンステッド触媒(ポリリン酸、架橋ポリスチレンスルホン酸、酸性シリカゲルおよびこれらの混合物など)である。使用される触媒の典型的な量は、ジケテンアセタールに対し約0.2重量%である。ジケテンアセタールに対して0.005重量%〜約2.0重量%などの、より少ないまたはより多い量もまた使用し得る。反応が一旦完了すると、反応混合物を冷却させ、そして真空中でrotoevaporationによって濃縮する。濃縮した混合物をさらに、真空中で、高められた温度下で乾燥し得る。
【0058】
ポリオルトエステルはまた、ジケテンアセタールを選択されたジオールと、同様な反応条件下で、しかし「連鎖停止剤(chain stopper)」(ポリオルトエステルの連鎖形成を終了する試薬)の存在下で、反応させることによって調製し得る。適切な連鎖停止剤は、C5〜20アルカノール、特にC10〜20アルカノールである。連鎖停止剤は、好ましくは、ジケテンアセタールに基づいて1モル%から20モル%までで存在している。このようにして調製されたポリオルトエステルは、低い分子量を有し、ジオールのみを用いたジケテンアセタールとの反応によって調製されるものに比較して、より低い分子量分散を有しており、そしてそれゆえ本発明のために特に適切である。
【0059】
(補形剤)
本発明のために適切な補形剤は、薬学的に許容可能およびポリオルトエステル適合可能な材料である。これらは、室温下で液体であり、そしてポリオルトエステルと容易に混和可能である。
【0060】
適切な補形剤としては、ポリ(エチレングリコール)モノアルキルエーテルまたはジアルキルエーテル、好ましくはポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテル550またはポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル250などの、200〜4,000の間の分子量を有するポリ(エチレングリコール)エーテル誘導体;ポリ(エチレングリコール−コ−ポリプロピレングリコール)などの400〜4,000の間の分子量を有するポリ(エチレングリコール)コポリマー;ジカプリル酸プロピレングリコールまたはジカプリン酸プロピレングリコールなどの、C2〜19脂肪族カルボン酸とプロピレングリコールのモノエステルもしくはジエステルまたはこのような酸の混合物;カプリル酸グリセル、カプリン酸グリセル、カプリル酸/カプリン酸グリセル、カプリル酸/カプリン酸/ラウリン酸グリセルなどの、C2〜19脂肪族カルボン酸のモノグリセリド、ジグリセリドもしくはトリグリセリドまたはこのような酸の混合物、グリコフロールおよび同様のエトキシル化テトラヒドロフルフリルアルコールならびにこれらのC1〜4アルキルエーテルおよびC2〜19脂肪族カルボン酸エステル;および、ヒマワリ油、ゴマ油および他の非水素化または部分水素化植物油などの生体適合可能油が挙げられる。
【0061】
これらの材料のほとんどは、市販のものが入手可能であり、例えば,Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)からならびにAbitec Corporation(Columbus,OH),LIPO Chemicals Inc.(Paterson,NJ),およびJarchem Industries,Inc.(Newark,NJ)から入手可能である。
【0062】
(送達賦形剤)
送達賦形剤は、先行する節に記載されているものから選択される、ポリオルトエステルおよび補形剤を含む。
【0063】
送達賦形剤中のポリオルトエステルおよび補形剤の濃度は変わり得る。例えば、賦形剤中の補形剤の濃度は、賦形剤の1重量%〜99重量%の範囲に、好ましくは5重量%〜80重量%の範囲に、特に20重量%〜60重量%の範囲にあり得る。
【0064】
本出願ではポリオルトエステルおよび補形剤を説明するのに単一の型が用いられてきたが、上記の群から選択される一つをこえるポリオルトエステルおよび補形剤を送達賦形剤中で使用し得ることが理解される。
【0065】
送達賦形剤は、ポリオルトエステルおよび補形剤を一緒に混合(mixing)または調合(blending)することによって調製される。混合または調合は、例えば室温下などの、約50℃より低い温度下で、溶媒なしで、室温下で均一な、流動可能なおよびタッキーでない(non−tacky)半固体調合物を達成する何らかの適切な装置を用いて、何かの方法で実行され得る。本発明の別の局面では、混合または調合は、上記の、選択される出発材料の性質に依存して、約5℃〜200℃の間の温度下で、より好ましくは約20℃〜150℃の間の温度下で、そしてより好ましくは約25℃〜100℃の間の温度下で、何らかの方法によって実行し得、均一な、流動可能なおよびタッキーなまたはタッキーでない半固体調合物を室温下で達成する。
【0066】
(半固体薬学的組成物)
もし活性因子がそれ自体液体または半固体である場合は、送達賦形剤を形成したものと同じ方法によって、即ち半固体処方物の従来の調合法によって、活性因子を送達賦形剤と混合し得る。このような調合は、処方物中の成分の均一な分布を得るのに適した方法で実行される(このような均一性を達成するために必要なあらゆる順番で成分を混合することによって)。しかし、活性因子は典型的には固体である。生じる組成物が滑らかになるように、活性因子の粒子サイズは十分に小さいものである(例えば、1〜100μm、特に5〜50μm)ことが望まれる。それゆえ、活性因子がすでにミクロサイズの粉末形態でない限り、これは、概して最初に粉砕して、好ましくは100μmより小さい細かい粒子として、そして他の成分と混合する前に篩いにかける。機械的混合工程を、室温下で、好ましくは気泡を避けるために真空中で、実行する。この工程の別の局面では、機械的混合工程を、室温下でまたは室温より高い温度下でいかなる真空も使用せずに、実行し得る。もし望むなら、活性因子の粒子サイズのさらなるサイズ縮小を、この半固体混合物をボールミルまたはローラーミルに通すことによって行い得、均一で一様な薬学的組成物が達成される。
【0067】
活性因子を、すでに形成された送達賦形剤と混合し得、またはポリオルトエステルおよび補形剤と一緒に直接混合し得る。本発明の別の局面では、活性因子、送達賦形剤、ポリオルトエステルおよび補形剤を、均一であり望まれる特徴を有する生成物を得るために適切なあらゆる順番で一緒に混合し得る。
【0068】
活性因子は、組成物中に、望まれる生物学的または治療上の効果を提供するのに有効な量だけ存在する。組成物の持続的放出特性のために、活性因子は通常、従来の一回投与量よりも多い量で存在する。半固体ポリオルトエステル組成物中の活性因子の濃度は、広範囲(例えば、組成物全体に基づいて0.1wt.%〜80wt.%、好ましくは0.3wt.%〜60wt.%、より好ましくは0.5wt.%〜40wt.%、例えば1wt.%〜30wt.%)にわたって変化し得、種々の要因に、例えば組成物の放出プロフィール、活性因子の治療上の有効投与量および活性因子が放出される時間の期間の望まれる長さなどに依存する。本発明の一つの局面では、半固体ポリオルトエステル組成物中の活性因子の濃度は、約1wt.%〜5wt.%の間、より好ましくは約2wt.%〜3wt.%の間である。
【0069】
ポリオルトエステルの濃度は、組成物の1wt.%〜99wt.%、好ましくは5wt.%〜40wt.%であり得る。補形剤の全濃度は、組成物の1wt.%〜90wt.%、好ましくは5wt.%〜60wt.%、より好ましくは10wt.%〜50wt.%である。
【0070】
必要とされるわけではないが、着色剤および保存料などの、他の薬学的に許容可能な不活性の因子もまた本組成物中に組み込み得ることもまた理解される。
【0071】
本発明の半固体薬学的組成物は、タッキーではなく流動可能な改善されたテクスチャーを有する。本発明の別の局面では、本発明の半固体薬学的組成物は、タッキーでありそしてまた流動可能である改善されたテクスチャーを有する。本明細書で使用されるときは、用語「タッキーな(tacky)」とは、軽く触ったとき組成物が粘着する組成物の物理的性質を言う。組成物はそれゆえに、従来のクリームまたはジェルのような様式で、皮膚または粘膜に便利に塗布し得る。好ましくは処方物は、容易に注射器使用可能または注射可能である(これは、処方物を、局所用または眼病用の処方では周知の種類の従来型のチューブから、針なし注射器から、または、16〜25ゲージなどの、16ゲージまたはそれよりより小さい針を有する注射器から、容易にディスペンスし得、そして容易に皮下、皮内または筋肉内注射し得ることを意味する)。処方物は、当技術分野で周知の種々の方法(注射器(注射可能)またはチューブディスペンサーによって、例えば、皮膚または傷に直接または間接に塗布する方法を包む)を用いて塗布され得る。
【0072】
局所塗布、注射による投与またはあらゆる他のルートの投与(開口した傷への表面または皮下塗布を含む)の後、活性因子は組成物から持続的および制御された様式で放出される。放出の速度は、種々の様式で調節しまたは制御し得、望まれる治療効果のために便宜を図る。この速度は、ポリオルトエステル中のα−ヒドロキシ酸含有単位のモルパーセンテージを変えることによって、または特定の補形剤を選択することによって、または選択する補形剤の量を変えることによって、またはこれらの組み合わせによって、増加または減少させ得る。
【0073】
この組成物はまた安定である。活性因子の放出速度は、滅菌のための照射による影響を受けない。
【0074】
(特定の組成物とそれらの利用法)
本発明の例示的組成物、およびそれらの利用法は以下を含む:
(1)随意に、デキサメタゾン、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、フルニソリド、フルオシノロン、アセトニド、フルオシノニド、トリアムシノロンなどのグルココルチコステロイドと組み合わせて、局所麻酔薬を含有する組成物であって、局所痛の長い軽減または長い神経ブロックのために、外科手術部位およびその他へ組成物を配置する利用法を含む。この利用法は、以下でさらに論ぜられる;
(2)注射器による配置、または腫瘍へのもしくは腫瘍が切除された手術部位への注射による配置のための、腫瘍の制御または治療および/または腫瘍の切除後の残余腫瘍細胞から腫瘍が再生するのを抑制するための、(上で「活性因子」の項の下に列挙されているものなどの)癌化学療法薬を含有する組成物;
(3)性周期の同調または避妊のための、フルロゲストン、メドロキシプロゲステロン、ノルゲストレル、ノルゲスチメート、ノルエチンドロンおよびその他などのプロゲストゲンを含有する組成物;
(4)緑内障濾過外科手術への添加物としての、フルオロウラシルおよびその他などの代謝拮抗物質を含有する組成物;黄斑変性および網膜血管新生の治療のための、コンブレスタチンなどの抗血管新生薬を含有する組成物;眼への眼科用薬の制御された放出のための、他の組成物;
(5)インスリン、LHRH拮抗剤およびその他などの治療ポリペプチド(タンパク質)を含有する組成物であって、これらのポリペプチドの制御された送達のためのものであり、毎日のまたは他の頻繁な注射の必要性を回避する組成物;
(6)関節内の塗布または注射のための、例えばイブプロフェン、ナプロキセン、COX−1阻害剤またはCOX−2阻害剤およびその他などのNSAIDまたはグルココルチコステロイドなどの、抗炎症薬を含有する組成物;
(7)感染症の予防または治療のための、特に、手術後の感染症を抑制するための
外科手術部位への配置、または感染症(例えば傷中の異物からの)の抑制のための傷中または傷上への配置のための、抗生物質を含有する組成物;
(8)骨形態発生タンパク質などの形態発生タンパク質を含有する組成物;
(9)アンチセンスオリゴヌクレオチドなどの、DNAまたは他のポリヌクレオチドを含有する組成物;
(10)制吐薬を含有する組成物;
(11)ワクチン中に抗原を含有する組成物;および
(12)同時に発生する治療適用のために、2種以上の上記の活性因子の組み合わせを含む組成物。
【0075】
(制御放出制吐薬の送達)
本発明はさらに、5−HT拮抗剤を投与する工程を含む、患者の嘔吐の治療または予防の方法に関する(ここで、5−HT拮抗剤は、他の薬理学的因子に関係する悪心および/または嘔吐の副作用を最小にする)。
【0076】
本発明のさらなる局面では、少なくとも1種の薬学的に許容可能な担体または補形剤とともに、嘔吐の治療または予防のためのHT拮抗剤を含む薬学的組成物が提供される。
【0077】
本明細書で使用されるときは、用語「嘔吐(emesis)」は悪心(nausea)および嘔吐(vomiting)を含む。本発明の半固体注射可能形態のHT拮抗剤は、化学療法によって、放射能によって、毒によって、ウイルスまたは細菌の感染によって、妊娠によって、前庭の障害(例えば乗り物酔い、めまい、眩うんおよびメニエール病)によって、手術によって、片頭痛によっておよび頭蓋内圧の変化によって誘起される嘔吐を包含する、急性の、遅延の、または先行の嘔吐の治療に有益である。本発明中で使用されるHT拮抗剤は、例えば、癌の治療中または放射線宿酔中などの、放射線によっておよび/または化学療法によって誘起される嘔吐の治療において;および手術後の悪心および嘔吐の治療において特に有益である。本発明の半固体注射可能形態のHT拮抗剤は、癌化学療法でルーチンで使用されるものを含む、抗腫瘍(細胞毒)薬によって誘起される嘔吐の治療において、および、例えば、ヨヒンビン、MK−912およびMK−467などのα−2−アドレノセプター拮抗剤、ならびにRS14203、CT−2450およびロリプラムなどのIV型サイクリックヌクレオチドホスホジエステラーゼ(PDE4)阻害剤などの他の薬理学的因子によって誘起される嘔吐の治療において有益である。
【0078】
化学療法薬の特定の例が、例えば、D.J.Stewart in Nausea and Vomiting:Recent Research and Clinical
Advances,ed.J.Kucharczyk et al.,CRC Press Inc.,Boca Raton,Fla.,USA,1991,pages177-203(ページ188を見よ)によって記載されている。一般に使用される化学療法
薬の例としては、シスプラチン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、ストレプトゾシン、シクロホスファミド、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ダウノルビシン、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキサート、5−フルオロウラシル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシンおよびクロラムブシルが挙げられる(R.J.Gralle et al.in Cancer Treatment Reports,1984,68,163-172を見よ
)。
【0079】
制吐薬の多数が、水性の注射媒体中での溶解を提供するので、その酸付加塩の形態で従来から使用されている。しかし、そのような局所の制吐酸付加塩内の大量の酸の存在は、ポリオルトエステルのより急速な分解そして制吐薬のより急速な放出に終わるので、遊離の塩基の形態で制吐薬を使用することが一般的に望ましい。代替として、酸付加塩が少しの割合でのみ存在する状態で、制吐薬を使用し得る(少量の酸付加塩の添加は、もし望むなら、放出を促進し得る)
本発明の制吐薬の半固体注射可能形態は、上記した方法で送達賦形剤中に制吐薬を組み込むことによって、調製される。制吐薬の濃度は、約0.1wt.%から80wt.%までで、好ましくは約0.2wt.%から60wt.%までで、より好ましくは約0.5wt.%から40wt.%までで、最も好ましくは約1wt.%から5wt.%までで、例えば約2wt.%〜約3wt.%で変化し得る。半固体組成物は、次に16〜25ゲージの針を有する注射器に満たされ、そして最も有効であると決定された部位に注射される。本発明の半固体注射可能組成物は、少し溶解できる制吐薬および溶解できる制吐薬の両方の制御された送達のために利用できる。
【0080】
本発明で使用される制吐薬の適切な種類としては、例えば、オンダンセトロン、グラニセトロンまたはトロピセトロンなどの5-HT拮抗剤;メトクロプラミドまたはドンペ
リドンなどのドーパミン拮抗剤;スコポラミンなどの抗コリン作用性薬;バクロフェンなどのGABAレセプター作用薬;例えば、WO97/49710において記載されているようなNKレセプター拮抗剤;または、WO99/67245において記載されるようなGABAαレセプター作用薬および/またはGABAαレセプター作用薬が挙げられる。
【0081】
本発明で使用される5−HT拮抗剤はまた、当技術分野で周知の他の制吐薬の使用と共に行う嘔吐の治療または嘔吐の予防のために有用である。
【0082】
一つの特別な局面において、本発明と共に使用される他の制吐薬の適切な種類としては、例えばクロニジン、アプラクロニジン、パラ−アミノクロニジン、ブリモニジン、ナファゾリン、オキシメタゾリン、テトラヒドロゾリン、トラマゾリン、デトミジン、メデトミジン、デクスメデトミジン、B−HT920、B−HIT933、キシラジン、リルメニジン、グアナベンズ、グアンファシン、ラベタロール、フェニレフリン、メフェンテルミン、メタラミノール、メトキサミンおよびキシラジンを包含するα−2−アドレノレセプター作用薬が、例えば挙げられる。
【0083】
記述されているように、本発明で使用される化合物または因子はまた、5-HT拮抗
剤、ドーパミン拮抗剤、抗コリン作用性薬、GABAレセプター作用薬、NKレセプター拮抗剤、GABAαレセプター作用薬および/またはGABAαレセプター作用薬などの当技術分野で周知の別の制吐剤と共に用いることで、嘔吐の治療または嘔吐の予防のために有用である。
【0084】
本発明の別の局面では、単一薬としてのまたは組み合わせとしての制吐薬は、独立に、塩もしくは塩類または薬と薬の塩との混合物の形態で使用され得る。本発明で使用される化合物の適切な薬学的に許容可能な塩は、酸付加塩を含み、これは例えば、化合物の溶液と、塩酸、ヨウ素酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、炭酸、リン酸、硫酸およびその他などの薬学的に許容可能な非毒性の酸の溶液とを混合することによって形成し得る。アミン基の塩はまた、アミノ窒素原子がアルキル、アルケニル、アルキニルまたはアラルキル基を保持する、第四級アンモニウム塩を含む。化合物が酸性基を、例えばカルボン酸基を保持する場合、本発明はまた、それらの塩、好ましくは、それらのナトリウム、カリウムおよびカルシウム塩などの、それらの非毒性の薬学的に許容可能な塩を、予想する。
【0085】
本発明の組み合わせを使用する場合に、5−HT拮抗剤およびその他の制吐薬は患者に、共に本発明の半固体注射可能形態で投与されることが理解される。本発明の一つの局面では、化合物は、同じ薬学的に許容可能な担体中に存在し得、そしてそれゆえ同時に投与し得る。
【0086】
組み合わせで投与する場合、半固体注射可能形態で単一製品として投与する場合かまたは別々の薬学的組成物として投与する場合かどちらの場合でも、5−HT拮抗剤およびその他の制吐薬は、望まれる効果の出現と矛盾しない比で存在させる。特に、5−HT拮抗剤およびその他の制吐薬の重量比は、適切には0.001対1および1000対1の間、そして特に0.01対1および100対1の間である。
【0087】
本発明はさらに、患者に5-HT拮抗剤を投与する工程を含む、患者における嘔吐に
伴う症状を改善する方法に向けられている。本発明に従い、5−HT拮抗剤を、患者に、患者における嘔吐に関係する症状および/または根元的病因を治療しまたは予防するのに十分な量、投与する。
【0088】
(制御放出局所麻酔薬の送達)
局所麻酔薬は、一時的な神経伝導ブロックを誘起し、そして数分から数時間持続する痛みの軽減を提供する。これらは、外科手術処置、歯科操作または傷害における痛みを防ぐのに、たびたび使用される。
【0089】
合成局所麻酔薬は、二つの群に分けられ得る:わずかに溶解性の化合物と溶解性の化合物である。従来の使用法では、溶解性の局所麻酔薬は、局所用におよび注射によって適用し得、わずかに溶解性の局所麻酔薬は表面塗布のみに使用する。従来から注射によって投与されている局所麻酔薬はまた、エステルおよび非エステルの、二つの群に分け得る。このエステルとしては、(1)安息香酸エステル(ピペロカイン、メプリルカインおよびイソブカイン);(2)パラ−アミノ安息香酸エステル(プロカイン、テトラカイン、ブテタミン、プロポキシカイン、クロロプロカイン);(3)メタ−アミノ安息香酸エステル(メタブテタミン、プリマカイン);および(4)パラ−エトキシ安息香酸エステル(パレトキシカイン)が挙げられる。非エステルは、アニリド(アミドまたは非エステル)であり、ブピバカイン、リドカイン、メピバカイン、ピロカインおよびプリロカインを包含する。
【0090】
局所麻酔薬の多数は、それらの酸付加塩の形態で、従来から使用されている。それはこれが、水性の注射媒体中の溶解を提供するからである。しかし、そのような局所麻酔酸付加塩内の大量の酸の存在は、ポリオルトエステルのより急速な分解そして局所麻酔薬のより急速な放出に終わるので、遊離の塩基の形態で、または酸付加塩が少しの割合でのみ存在する状態で(少量の酸付加塩の添加は、もし望むなら、促進された放出を提供し得る)、局所麻酔薬を使用するのが一般的に望まれる。
【0091】
本発明の局所麻酔薬の半固体注射可能形態は、上記した方法で送達賦形剤中に局所麻酔薬を組み込むことによって、調製される。局所麻酔薬の濃度は、約0.1wt.%から80wt.%までで、好ましくは約1wt.%から60wt.%までで、より好ましくは約0.5wt.%から40wt.%までで、最も好ましくは約1wt.%から5wt.%までで、例えば約2wt.%〜約3wt.%で変化し得る。半固体組成物は、外科手術切開部位に直接、または適切なサイズの針を経て皮下に投与し得る。別の局面では、半固体組成物は、次に16〜25ゲージの針を有する注射器に満たされ、そして痛む部位または外科手術処置にさらされる部位に注射される。本発明の半固体注射可能組成物は、少し溶解できる局所麻酔薬および溶解できる局所麻酔薬の両方の制御された送達のために利用できる。
【0092】
局所麻酔薬の作用の持続期間は、局所麻酔薬が神経組織に実際に接触している時間に比例するので、本発明の注射可能送達システムは、麻酔薬の神経での延長した期間の局在化を維持し得る(それは麻酔薬の効果を大いに長くする)。
【0093】
Berdeらを含む多数の著者、米国特許第6,046,187号明細書および関連する特許が、グルココルチコステロイドの共同投与が、局所麻酔薬、特に制御放出局所麻酔薬の効果を長くし得るまたはさもなくば促進し得ることを示唆している;そして局所麻酔薬およびグルココルチコステロイドを含有する処方物、ならびにそれらの制御放出局所麻酔のための使用は、本発明の範囲内である。
【0094】
(本発明の態様)
本発明の一つの態様では、薬学的組成物であって、
(A)半固体送達賦形剤であって:
(i)式Iまたは式IIのポリオルトエステルであって
【0095】
【化23】

式中、
Rは、結合、−(CH−または−(CH−O−(CH−であり;式中aは1〜10の整数、ならびにbおよびcは、独立に1〜5の整数であり;
*はC1〜4アルキルであり;
nは少なくとも5の整数であり;および
Aは、R、R、RまたはRであり、
は:
【0096】
【化24】

であり
式中:
pは1〜20の整数であり;
は水素またはC1〜4アルキルであり;および
は:
【0097】
【化25】

であり
式中:
sは0〜30の整数であり;
tは2〜200の整数であり;および
は水素またはC1〜4アルキルであり;
は:
【0098】
【化26】

であり、
は:
【0099】
【化27】

であり
式中:
xは0〜30の整数であり;
yは2〜200の整数であり;
は水素またはC1〜4アルキルであり;
およびR10は独立にC1〜12アルキレンであり;
11は水素またはC1〜6アルキルであり、およびR12はC1〜6アルキルであり;またはR11およびR12は一緒になってC3〜10アルキレンであり;
ならびに
は、アミド基、イミド基、尿素基およびウレタン基から独立に選択される少なくとも一つの官能基を含むジオールの残基であり;
A単位の少なくとも0.01モル%が、式Rである、ポリオルトエステル;ならびに
(ii)200から4000の間の分子量を有するポリエチレングリコールエーテル誘導体、400から4000の間の分子量を有するポリエチレングリコールコポリマー、C2〜19脂肪族カルボン酸のモノグリセリド、ジグリセリドまたはトリグリセリドまたはこのような酸の混合物、アルコキシル化テトラヒドロフルフリルアルコールおよびこれらのC1〜4アルキルエーテルおよびC2〜19脂肪族カルボン酸エステル、および生体適合性オイルから選択される、薬学的に許容可能な、ポリオルトエステル適合性液体補形剤
を含む半固体送達賦形剤;ならびに
(B)制吐薬、および/または麻酔薬
を含む薬学的組成物を提供する。
【0100】
本発明の別の態様では、半固体送達賦形剤に対するポリオルトエステルの濃度が1重量%から99重量%までの範囲にわたる半固体送達賦形剤が提供される。一つの変形形態では、ポリオルトエステルは1,000および20,000の間の分子量を有する。別の態様では、式RであるA単位部分が1モル%および90モル%の間である。
【0101】
本発明の一つの態様では、ポリオルトエステルは式Iであるが、AがRに等しい単位はなく、Rは:
【0102】
【化28】

であり、式中xは0〜10の整数であり;yは2〜30の整数であり;およびRは:
【0103】
【化29】

であり、式中sは0〜10の整数であり、tは2〜30の整数であり、R、RおよびRは、独立に水素またはメチルである。一つの変形形態では、RおよびRは両方とも−(CH−CH−O)−(CH−CH)−であり、Rはメチルであり、およびpは1または2である。別の変形形態では、RおよびRは両方とも−(CH−CH−O)−(CH−CH)−であり、Rはメチルであり、およびpは1または2である。
【0104】
本発明の一つの態様では、麻酔薬が、ブピバカイン、リドカイン、メピバカイン、ピロカインおよびプリロカインからなる群から選択される、薬学的組成物が提供される。一つの変形形態では、組成物中の麻酔薬の濃度は、約1wt.%〜約5wt.%である。
【0105】
本発明の一つの態様では、制吐薬がグラニセトロンである、上記の組成物が提供される。一つの変形形態では、制吐薬の部分は、組成物の0.1重量%から80重量%である。別の変形形態では、制吐薬の部分は、組成物の1重量%から5重量%である。
【0106】
本発明の別の態様では、組成物は局所用、注射器使用可能または注射可能形態である。
【0107】
本発明のさらに別の態様では、制吐薬が、5−HT拮抗剤、ドーパミン拮抗剤、抗コリン作用性薬、GABAレセプター作用薬、NKレセプター拮抗剤、GABAαレセプター作用薬および/またはGABAαレセプター作用薬からなる群から選択される組成物を提供する。一つの変形形態では、制吐薬は、5−HT拮抗剤である。別の変形形態では、5−HT拮抗剤は、オンダンセトロン、グラニセトロンおよびトロピセトロンからなる群から選択される。
【0108】
さらに別の態様では、さらに第2の制吐薬を含み、組み合わせ組成物を形成する上記の薬学的組成物が提供される。一つの変形形態では、第2の制吐薬は、α−2−アドレノレセプター作用薬、ドーパミン拮抗剤、抗コリン作用性薬、GABAレセプター作用薬、NKレセプター拮抗剤、GABAαレセプター作用薬および/またはGABAαレセプター作用薬からなる群から選択される。別の変形形態では、α−2−アドレノレセプター作用薬は、クロニジン、アプラクロニジン、パラ−アミノクロニジン、ブリモニジン、ナファゾリン、オキシメタゾリン、テトラヒドロゾリン、トラマゾリン、デトミジン、メデトミジン、デクスメデトミジン、B−HT920、B−HIT933、キシラジン、リルメニジン、グアナベンズ、グアンファシン、ラベタロール、フェニレフリン、メフェンテルミン、メタラミノール、メトキサミンおよびキシラジンからなる群から選択される。
【0109】
本発明の別の態様では、化学療法薬によって、放射能誘起性悪心および嘔吐によって、および/または手術後誘起性悪心および嘔吐によって誘起された嘔吐の治療(この治療が必要な患者における)のための方法を提供する(この方法は、本発明の5−HT拮抗剤を含む上記の組成物をこれらの患者に投与する工程を含む)。上記方法の一つの変形形態では、5−HT拮抗剤は、オンダンセトロン、グラニセトロンおよびトロピセトロンからなる群から選択される。上記方法の別の変形形態では、患者はヒトである。本方法のさらに別の変形形態では、投与は、外科手術部位への5−HT拮抗剤の配置を含む。
【0110】
本発明の別の態様では、化学療法薬によって誘起された嘔吐の予防(この予防が必要な患者における)のための方法を提供する(この方法は、本発明の5−HT拮抗剤を含む上記の組成物をこれらの患者に投与する工程を含む)。一つの変形形態では、5−HT拮抗剤は、オンダンセトロン、グラニセトロンおよびトロピセトロンからなる群から選択される。上記方法の別の変形形態では、患者はヒトである。
【0111】
別の態様では、化学療法薬によって、放射能誘起性悪心および嘔吐によって、および/または手術後誘起性悪心および嘔吐によって誘起された嘔吐に伴う症状を患者において改善するための方法を提供する(この方法は、この改善が必要な患者に、5−HT拮抗剤を含む本発明の組成物を投与する工程を含む)。一つの変形形態では、5−HT拮抗剤は、オンダンセトロン、グラニセトロンおよびトロピセトロンからなる群から選択される。上記方法の一つの変形形態では、患者はヒトである。
【0112】
本発明の別の態様では、化学療法薬によって、放射能誘起性悪心および嘔吐によって、および/または手術後誘起性悪心および嘔吐によって誘起された嘔吐の予防(この予防が必要な患者における)のための方法を提供し、この方法は、5−HT拮抗剤を含む本発明の組成物および第2の制吐薬をこれらの患者に投与する工程を含む。ひとつの変形形態では、第2の制吐薬は、α−2−アドレノレセプター作用薬、ドーパミン拮抗剤、抗コリン作用性薬、GABAレセプター作用薬、NKレセプター拮抗剤、GABAαレセプター作用薬および/またはGABAαレセプター作用薬からなる群から選択される化合物である。
【0113】
本発明のさらに別の態様では、成分(A)および(B)を、溶媒なしで、約20℃および約150℃の間の温度下で混合する工程を含む、本発明の送達賦形剤を調製する工程が提供される。
【0114】
さらに別の態様では、制吐薬が固体形態である薬学的組成物を調製する工程であって、(1)随意に、活性因子の粒子サイズを減少させるために活性因子を粉砕する工程;(2)活性因子および送達賦形剤を混合する工程;および(3)随意に、活性因子の粒子サイズを減少させるために組成物を粉砕する工程を含む工程が提供される。
【0115】
さらに別の態様では、制吐薬および/または麻酔薬が固体の形態である、本発明の薬学的組成物を調製する工程であって、(1)ポリオルトエステルを70℃まで温める工程;(2)120℃〜150℃下で補形剤中に活性因子を溶解する工程;および(3)70℃のポリオルトエステルを120℃の活性因子の補形剤溶液へ、攪拌器を用いて、成分の均一な分布を得るように、以下の条件下で混合する工程を含む工程が提供される。条件とは、(a)アルゴン雰囲気または窒素雰囲気などの不活性雰囲気下で、(b)随意に、混合容器を70℃まで温めて;または(c)随意に、混合工程中に混合物の温度を周囲の条件下で平衡化させる条件である。
【実施例】
【0116】
(実施例1)
(ポリオルトエステルの調製)
以下の合成は、代表的ポリオルトエステルの調製を例示する。出発材料は、市販のものが入手可能かまたは先行する節ならびに米国特許第4,549,010号明細書および米国特許第5,968,543号明細書に記載されているようにして調製し得る。
【0117】
1(a)この例のポリオルトエステルは、3,9−ジ(エチリデン)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(DETOSU)、トリエチレングリコール(TEG)、およびトリエチレングリコールモノグリコリド(TEG−mGL)から調製した。三成分のモル比(DETOSU:TEG:TEG−mGL)は、65:95:5であった。
【0118】
厳正に無水の条件下で、DETOSU(6.898g、32.5mmol)、TEG(7.133g、47.5mmol)およびTEG−mGL(0.521g、2.5mmol)を250mL丸底フラスコに量り取り、混合物は無水の酢酸エチル(16mL)中に溶解した。この溶液に、サリチル酸の酢酸エチル溶液(12滴、10mg/mL)を加えて、重合を開始させた。数分以内に、この溶液を沸騰させた。溶液を室温まで冷やし、次に、40℃〜50℃下でrotoevaporationし、濃縮した。フラスコを真空オーブンに移し、40℃下で2時間乾燥し、続けて70℃下でさらに3時間乾燥した。材料は約4000の分子量を有する半固体であった。
【0119】
1(b)この例のポリオルトエステルは、DETOSU、TEGおよびトリエチレングリコールジグリコリド(TEG−diGL)から調製した。三成分のモル比(DETOSU:TEG:TEG−diGL)は、65:80:20であった。実施例1(a)の手順に従い、DETOSU(6.898g、32.5mmol)、TEG(6.007g、40mmol)およびTEG−diGL(2.662g、10mmol)を反応させた。反応は、約2000の分子量を有する半固体の材料を産出した。
【0120】
1(c)この例のポリオルトエステルは、DETOSU、TEGおよびTEG−diGLから調製した。三成分のモル比(DETOSU:TEG:TEG−diGL)は、60:70:30であった。実施例1(a)の手順に従い、DETOSU(25.470g、120mmol)、TEG(21.024g、140mmol)およびTEG−diGL(15.973g、60mmol)を反応させた。反応は、約2000の分子量を有する半固体の材料を産出した。
【0121】
他のポリオルトエステルを、例えば式IVのジケテンアセタールを含有するものおよび/または式HO−R−OH、式HO−R−OH、式HO−R−OHおよび式HO−R−OHの他のジオールを含有するものを同様の方法によって調製する。
【0122】
1(d)この例のポリオルトエステルは、DETOSU、TEGおよびTEG−diGL)から調製した。三成分のモル比(DETOSU:TEG:TEG−diGL)は、90:80:20であった。厳正に無水の条件下で、DETOSU(114.61g、540mmol)を2Lのフラスコ中で450mLの無水THFおよびTEG(72.08g、480mmol)に溶解し、そしてTEG−diGL(31.95g、120mmol)を500mL丸底フラスコに量り取り、そして無水THF(50mL)中に溶解した。TEG−diGL溶液を、DETOSUおよびTEGの溶液に加え、重合を開始させた。数分以内に、この溶液を沸騰させた。溶液を室温まで冷やし、次に、50℃下でロータリーエバポレーションによって濃縮し、続けて80℃下でロータリーエバポレーションによって濃縮した。材料は約6,500の分子量を有する半固体であった。
【0123】
(実施例2)
(薬学的組成物の調製)
2(a)ブピバカインを活性因子とする半固体薬学的組成物を、最初にブピバカインを粉砕して細かい粒子にし、ふるいにかけ、次に選択された量のポリオルトエステルおよび補形剤と混合することによって、調製した。混合工程は、室温下で真空中で行った。ブピバカイン粒子のさらなるサイズ縮小を、半固体組成物をボールミルに通すことによって実施した。
A.60wt.%ポリオルトエステル(DETOSU/TEG/TEG−mGL 60:95:5)
40wt.%ブピバカイン(対照)
B.40wt.%ポリオルトエステル(DETOSU/TEG/TEG−mGL 60:95:5)
40wt.%ブピバカイン
20wt.%ポリエチレングリコールモノメチルエーテル550
C.60wt.%ポリオルトエステル(DETOSU/TEG/TEG−diGL 60:80:20)
40wt.%ブピバカイン(対照)
D.40wt.%ポリオルトエステル(DETOSU/TEG/TEG−diGL 60:80:20)
40wt.%ブピバカイン
20wt.%ポリエチレングリコールモノメチルエーテル550
E.20wt.%ポリオルトエステル(DETOSU/TEG/TEG−diGL 60:70:30)
40wt.%ブピバカイン
40wt.%ポリエチレングリコールモノメチルエーテル550。
【0124】
組成物B、DおよびEは、タッキーでなく、流動可能なテクスチャーを有した。組成物AおよびCは非常に粘着性のテクスチャーを有し、取り扱うのが困難で貧弱な注射器使用可能性を示した。
【0125】
2(b)メピバカインを活性因子として有する半固体薬学的組成物を、120℃および150℃の間の温度下で一つの容器中でメピバカインを補形剤エーテル550中に溶解し、別の容器で流動可能となるようにあらかじめ70℃まで温められた、指定された量のポリオルトエステル中で混合することによって、調製した。処方物を、そのうえ一回二つの容器間で移し替えをし、全ての成分の一つの容器への完全な移動を確保し、さらにアルゴン環境下または窒素環境下で混合した。この混合は、処方物中のすべての成分の均一な分布のために必要な流動特性を維持するために、混合容器の70℃下の加温はありかまたはなしかで、行い得る。このような処方物の組成物の例を以下に示す:
77.6 重量%ポリオルトエステル(DETOSU:TEG:TEG−diGLのモル比/90:80:20)
19.4 重量%ポリエチレングリコールモノメチルエーテル550
3.0 重量%メピバカイン。
【0126】
2(c)グラニセトロンを活性因子として有する半固体薬学的組成物を、例2(b)に記載されているようにして調製し、以下の組成物を得た:
78.4 重量%ポリオルトエステル(DETOSU:TEG:TEG−diGLのモル比/90:80:20)
19.6 重量%ポリエチレングリコールモノメチルエーテル550
2.0 重量%グラニセトロン。
【0127】
2(d)半固体送達賦形剤を、例2(b)に記載されているのと同様の方法(ただし活性薬学的成分を補形剤中に溶解するステップを省略している)で調製した。半固体送達賦形剤の組成物の例を以下に示す:
80 重量%ポリオルトエステル(DETOSU:TEG:TEG−diGLのモル比/90:80:20)
20 重量%ポリエチレングリコールモノメチルエーテル550。
【0128】
例えば式IVのジケテンアセタールを含有するものおよび式HO−R−OH、式HO−R−OH、式HO−R−OHおよび式HO−R−OHの他のジオールを含有するものなどの他のポリオルトエステルと、違う活性因子とを、および/または違う割合で含有する他の組成物も、同様の方法により調製する。
【0129】
(実施例3)
(薬学的組成物の放出プロフィール)
実施例2の半固体組成物を量り取り、スクリューキャップを有するボトルに配置した。100mLの50mM PBS(pH7.4)を、各ボトルに加えた。このテストボトルを37℃インキュベーターへ移し、ローターシェーカー(36rpm)の頂部に設置した。種々の時点で、ボトルをインキュベーターから取り出して、そして約5mLのサンプルを採取し、そしてHPLCで263nmでブピバカイン濃度を分析した。残った量の緩衝液は取り除き、そして100mLの新鮮な緩衝液と入れ替えた。
【0130】
組成物Bは、対照の組成物Aよりも増加した放出速度を有した。
【0131】
組成物Dは、対照の組成物Cと同様の放出速度を有した。
【0132】
これらのテスト結果は、本発明の薬学的組成物が、組成物の放出速度を種々の様式で調節および制御し得るという利点を有していることを証明した。放出速度を、米国特許第5,968,543号明細書に開示されているようにポリオルトエステル中のα−ヒドロキシ酸含有単位のモルパーセンテージを変えることによってか、または特定の補形剤を選択することによってか、または組成物中の補形剤の濃度を変えることによってか、またはこれら全ての要因の組み合わせによってかのどれかによって、望まれる治療効果のために便宜を図るよう調節し得る。
【0133】
組成物は照射し得、照射前の組成物Eおよび照射後の組成物Eの放出速度には、12日間にわたって有意な差は見られなかった(上記のテストを使用した)。
【0134】
前記のものは、第1に例示の目的のために提供された。当業者に容易に明白であるように、分子構造、送達賦形剤または薬学的組成物中の種々の成分の割合、製造方法および本明細書に記載される本発明の他のパラメーターは、本発明の精神と範囲から外れることなく、さらに種々の方法で変形または置換し得る。例えば、本明細書において上で示された特定の投与量以外の有効投与量(effective dosage)は、上で示された本発明の化合物を用い、なにかの適応症を治療されている哺乳動物の反応の変動の結果として、適用可能である。同様に、観察される特定の薬理学的反応は、選択される特定の活性化合物または製薬担体が存在するか否か、同様に使用される処方物の型および投与の様式に従いかつ依存して変動し得る。そして結果におけるこのような予想される変動または差異は、本発明の目的および実践に従い予期される。それゆえ、本発明は続く特許請求の範囲の範囲によって定義されること、およびこのような特許請求の範囲は理にかなっている限り広く解釈されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【公開番号】特開2012−107064(P2012−107064A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−45876(P2012−45876)
【出願日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【分割の表示】特願2007−533786(P2007−533786)の分割
【原出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(501315821)エーピー ファーマ, インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】