説明

半導体‐ナノ結晶/複合ポリマー薄膜の製造方法

【課題】無機半導体‐ナノ結晶を高配合量で半導体ポリマーに分散させた薄膜の製造方法を提供する。
【解決手段】この製造方法は、界面活性剤被覆半導体‐ナノ結晶を溶媒で少くとも1回洗浄し、洗浄された半導体‐ナノ結晶および半導体ポリマーを二元溶媒混合物に共溶解させ、該混合物を沈着させることを含んでなる。別な態様では、2以上のアスペクト比を有する半導体‐ナノ結晶を半導体複合ポリマーに分散させてポリマー・ナノ結晶が5wt%以上でポリマーに埋め込まれるようにその複合材の薄膜を沈着させることからなる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願とのクロスリファレンス】
【0001】
本出願は、2002年3月19日付で出願されたUS仮特許出願No.60/365,401;2002年3月17日付で出願された60/381,660および同じく2002年3月17日付で出願された60/381,667に基づく非仮出願である。これらのUS仮特許出願は、あらゆる目的のためにそれら全体で参考としてここに組み込まれる。
同時係属US特許出願は、2001年11月30日付で出願されたUSSN60/335,435の優先権を主張する2002年11月20日付で出願されたUSSN10/301,510;および2002年7月12日付で出願されたUSSN60/395,064および2001年10月24日付で出願された60/346,253の優先権を主張するUSSN10/280,135である。両実用出願およびすべての仮出願の内容は、あらゆる目的のためにそれら全体で参考として組み込まれる。
【連邦政府後援の研究又は開発下で行われた発明の権利に関する説明】
【0002】
ここで記載および特許請求された発明は、米国エネルギー省とカリフォルニア大学評議委員会との契約No.DE‐AC03‐76SF000‐98に基づき米国エネルギー省から供与された資金を利用して、一部が行われた。政府は本発明にある権利を有している。
【発明の背景】
【0003】
最初の太陽電池は1950年代中期に結晶シリコンウェハから作製された。その当時、最も効率的なデバイスはソーラーパワーの6%を電気に変換した。過去50年間にわたる太陽電池技術の進展で、最も効率的なSi電池で25%に、および電池のアレー、市販Siモジュールで10%に到達した。結晶および多結晶型のSiが太陽電池で用いられる材料の最も一般的なタイプであるが、ヒ化ガリウム、リン化インジウムおよびテルル化カドミウムのような他の半導体も次世代の高効率太陽電池として研究されている。特に、GaInP、GaAsおよびGeを用いて多数のバンドギャップが単一デバイスで積層されたタンデム電池のような高効率構造は、34%の記録的高率を達成した。
【0004】
これらの感銘的な高率にもかかわらず、従来の太陽電池の高い製造コストはパワー源として広範囲に及ぶ使用を制限している。従来の市販シリコン太陽電池の構築には、4つの主要プロセス:半導体材料の成長、ウェハへの分離、デバイスの形成およびその接続、および封入を要する。電池作製のみに関して、13のステップが太陽電池を製造する上で必要とされ、これら13ステップのうち5つは高温(300〜1000℃)、高真空または双方を要する。加えて、溶融物から半導体の成長は不活性アルゴン雰囲気下において1400℃以上の温度である。高効率(>10%)デバイスを得るためには、デバイスのマルチ半導体へ日光を集中させるためのコンセントレーターシステムと、GaAsおよびInPのようなより軽いまたは高性能の半導体を吸収するための量子井戸とを伴う構造が、必要とされる。性能の向上は製造コストの増加を招くが、これは作製ステップ数の増加から生じている。現在までのところ、これらの高性能構築物は、単位重量当たりの効率が作製コストと同様に重要な、スペースシャトルおよび人工衛星のような地球大気圏外の用途で主に用いられてきた。
【0005】
従来のソーラーデバイスに伴うもう1つの問題は、材料の高い製造コストである。1kWのモジュール出力に必要なシリコンの量は約20kgである。$20/kgのとき、電子グレードシリコンの材料コストはチップ製造セクターから一部が助成される。高毒性ガスで合成されるGaAsのような他の材料は、コストが$400/kgと20倍高い。太陽電池は大面積デバイスであるため、このような材料コストは安価な電池の生産を妨げる。結果的に、数ミクロン厚の非晶質Si、CdTeおよびCuInSeの活性層を有する薄膜デバイスが求められている。1991年に、O’Reganらは安価なTiOナノ結晶および有機色素から構成される新規光化学太陽電池の発明について報告した(O’Regan et al.Nature 353,737(1991))。
【0006】
ポリチオフェンの誘導体をスピンキャストして、その上にC60の層が蒸着された二層デバイスは、23%の最大外部量子効率(EQE)に達することができた。50%の高い効率が、単層デバイス用の均一フィルム中にC60およびMEH‐PPVの誘導体をブレンドすることで得られた。効率の更なる改善は、ホッピングで特徴付けられるC60の電子輸送性不足、およびデバイス吸収と太陽発光スペクトルとの低オーバーラップにより制限されている(Greenham.N.C.et al.,Phys Rev.B,Vol.54,No.24,Dec 1996)。
【0007】
ポリ(3‐ヘキシルチオフェン)中にCdSe粒子を用いることが、以前に提案された(Alivisatos et al.Adv. Mater.1999,11,No.11)。この研究はサイズが13mm以下のナノ結晶の使用のみを開示しており、生産されたデバイスは本発明の場合の効率に近づいていない。更に、この先行技術ではナノロッドの溶解化学問題を認めており、ここで記載された発明により解決された問題への解答を示していない。良い輸送性と近赤外へも及びうる吸収スペクトルとを有した、本発明による無機ナノロッドに基づく太陽電池は、バルク無機半導体に基づく従来の太陽電池と競えるほどの効率に達しうる可能性がある。上記の問題に対する解答を与えるのは、本発明の態様により半導体‐ナノ結晶を配合した薄膜である。
【発明の要旨】
【0008】
ここで記載された本発明は、無機半導体‐ナノ結晶を高配合量で半導体ポリマーに分散させた薄膜およびその製造方法を提供する。本発明はその薄膜を取り入れた光電デバイスについても記載している。
【好ましい態様の詳細な説明】
【0009】
本発明の一態様において、少くとも5wt%の半導体‐ナノ結晶を埋め込んだ半導体複合ポリマーを含んでなる薄膜が開示されている。
【0010】
別な態様では、本発明の薄膜を含んでなる光電デバイスが開示されている。
【0011】
本発明の別な態様では、界面活性剤被覆半導体‐ナノ結晶を溶媒で少くとも1回洗浄し、洗浄された半導体‐ナノ結晶および半導体ポリマーを二元溶媒混合物に共溶解させ、その混合物を沈着させることからなる、ポリマー薄膜の製造方法が開示されている。
【0012】
本発明の別な態様では、2以上のアスペクト比を有する半導体‐ナノ結晶を半導体複合ポリマーに分散させてポリマー‐ナノ結晶複合材を得、ナノ結晶が5wt%以上でポリマーに埋め込まれるようにその複合材の薄膜を沈着させることからなる、光活性薄膜の製造方法が開示されている。
【0013】
本発明の別な態様では、デバイスがAM1.5グローバル照明で1%以上のパワー変換効率を有している、半導体‐ナノ結晶を分散させた複合導電性ポリマー層を含んでなる光電デバイスが開示されている。
【0014】
本発明の別な態様では、第一平面電極、半導体‐ナノ結晶を埋め込んだ半導体複合ポリマーを含んでなる薄膜(その薄膜は第一平面電極上に沈着されている)、第一電極と反対側の第二電極、および薄膜ポリマー層と第一平面電極との間に配置されたホール注入層を含んでなる、光電デバイスが開示されている。
【0015】
本発明の好ましい態様において、半導体‐ナノ結晶は2以上、好ましくは5以上、更に好ましくは約5〜50のアスペクト比を有している。最も好ましくは約10である。
【0016】
本発明の好ましい態様では、半導体ポリマーへの半導体‐ナノ結晶の分散または埋込が開示されている。好ましくは、この“配合”は5wt%以上の量である。更に好ましくは、この量は20〜約95wt%である。更に一層好ましくは、量は50〜約95wt%である。
最も好ましくは、量は約90wt%である。
【0017】
本発明の好ましい態様において、半導体ポリマーは、トランス‐ポリアセチレン類、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリ(p‐フェニレン)類およびポリ(p‐フェニレン‐ビニレン)類、ポリフルオレン類、ポリ芳香族アミン類、ポリ(チエニレン‐ビニレン)類およびそれらの可溶性誘導体から選択されるポリマーまたはブレンドである。好ましくは(ポリ(2‐メトキシ‐5‐(2′‐エチルヘキシルオキシ)p‐フェニレンビニレン)(MEH‐PPV)およびポリ(3‐ヘキシルチオフェン)(P3HT)であり、P3HTが最も好ましい。
【0018】
好ましい態様において、半導体‐ナノ結晶は約20nm以上の長さを有するロッドを含んでなる。更に好ましくは、20〜200nmの長さを有するロッドである。更に一層好ましくは、約60〜110nmの長さを有するロッドである。
【0019】
更に好ましい態様において、本発明はII‐VI族、III‐V族、IV族半導体および三元系カルコパイライトの使用を開示している。更に好ましくはCdSe、CdTe、InP、GaAs、CuInS、CuInSe、AlGaAs、InGaAs、GeおよびSiであり、更に一層好ましくはCdSeである。
【0020】
半導体ナノ結晶は分岐ナノ結晶であることが好ましい。更に好ましいナノ結晶は4本のアームと四面体対称を有している。
【0021】
本発明の薄膜は約200nmの厚さを有していることが好ましい。
【0022】
本発明の薄膜の製造方法では二元溶媒混合物を用いることが好ましく、その溶媒のうち少くとも1種はピリジン、クロロホルム、トルエン、キシレン、ヘキサン、水、ジクロロベンゼン、塩化メチレン、アルキルアミン(アルキル鎖は分岐でもまたは非分岐でもよく、長さ2〜20炭素である)、ブタノール、メタノールおよびイソプロパノールからなる群より選択される。最も好ましくは、クロロホルム中のピリジンである。
【0023】
二元溶媒混合物は1〜15vol%の量であることが好ましく、更に好ましい範囲は4〜12vol%、最も好ましくは8vol%である。
【0024】
ここで記載された本発明の別な態様では、界面活性剤被覆半導体ナノ結晶を溶媒で、好ましくはピリジンで少くとも1回洗浄するステップがある、半導体ナノ結晶を取り入れたポリマー薄膜を製造するための方法がここでは開示されている。
【0025】
本発明の別な態様では、60〜約200℃の温度で沈着膜の熱アニーリングを含んでなるポリマー薄膜の製造方法が、ここでは開示されている。好ましくは約120℃である。
【0026】
本発明の別な態様では、PEDOT:PSS(ポリ(エチレンジオキシ)チオフェン:ポリ(スチレンスルホン酸))ホール輸送層をITO電極の上に取り入れた光電デバイスが、ここでは開示されている。
【0027】
“半導体‐ナノ結晶”とは、すべての形状およびサイズの半導体結晶粒子を含めた意味である。好ましくは、それらは約100ナノメーター以下の少くとも1つの寸法を有しているが、それらはそれほど限定されない。ロッドはいかなる長さでもよい。“ナノ結晶”、“ナノロッド”および“ナノ粒子”は、ここでは互換的に用いることができ、かつ用いられている。本発明の一部の態様において、ナノ結晶粒子は約100ナノメーター以下の2以上の寸法を有してもよい。ナノ結晶はコア/シェルタイプでもまたはコアタイプでもよい。例えば、本発明の一部態様による一部の分岐ナノ結晶粒子は、約1以上のアスペクト比を有するアームを有しうる。他の態様では、アームは約5以上、一部の場合には約10以上などのアスペクト比を有しうる。アームの幅は、一部の態様において、約200、100、更には50ナノメーター以下でもよい。例えば、コアおよび4アーム付きの例示テトラポッドにおいて、コアは約3〜約4ナノメーターの直径を有し、各アームは約4〜約50、100、200、500、更には約1000ナノメーター以上の長さを有しうる。もちろん、ここで記載されたテトラポッドおよび他のナノ結晶粒子は他の適切な寸法を有してもよい。本発明の態様において、ナノ結晶粒子は性質上単結晶でもまたは多結晶でもよい。本発明では、文献で記載されたプロセスに従い形成された、20以上で50以内のアスペクト比および100nm以上の長さを有するCdSeおよびCdTeのナノロッドを用いることも考慮している(Peng,X.G.et al.Nature 404,59(2000)およびPeng,Z.A.et al.J.Am.Chem.Soc.123,183(2001)参照)。
【0028】
ここで用いられている半導体‐ナノ結晶ロッドの長さは、20〜200nmの長さを有している。好ましい態様において、半導体‐ナノ結晶は約20nm以上の長さを有したロッドを含んでなる。更に好ましくは、20〜200nmの長さを有したロッドである。更に一層好ましくは、約60〜110nmの長さを有したロッドである。
【0029】
“半導体‐ナノ結晶の少くとも一部は約2以上のアスペクト比を有している”とは、半導体‐ナノ結晶が非分岐ロッドであるならば、ロッドの全量のうち少くとも一部が約2以上のアスペクト比を有していることを意味する。その量は100%もの多さでもよい。しかも、ナノ結晶が分岐半導体‐ナノ結晶(もちろん、テトラポッドを含む)であるならば、“少くとも一部”とは少くとも1つの分岐が2以上のアスペクト比を有していることを意味する。アスペクト比とは、ロッドの最大寸法の長さ/その直径として定義される。分岐ナノ結晶の場合に、分岐ナノ結晶のアスペクト比は最長分岐の長さ/最長分岐直径として定義される。
【0030】
“半導体‐ナノ結晶の一部が分岐ナノ結晶である”とは、ナノ結晶の少くとも1重量%が分岐ナノ結晶であることを意味する。ここで定義されているような“一部”という用語は100%、即ち“全部分”も含む、と理解されている。
【0031】
CdSeおよびCdTe半導体‐ナノ結晶が好ましいが、ナノ結晶粒子は他の適切な半導体材料を含んで、ロッド、成形粒子または球体であってもよい。例えば、粒子は化合物半導体のような半導体を含んでもよい。適切な化合物半導体には、II‐VI族半導体化合物、例えばMgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSeおよびHgTeがある。他の適切な化合物半導体には、III‐V族半導体、例えばGaAs、GaP、GaAs‐P、GaSb、InAs、InP、InSb、AlAs、AlP、AlGaAs、InGaAsおよびAlSbがある。ゲルマニウムまたはシリコンのようなIV族半導体の使用も、ある条件下では可能である。他の態様において、粒子は誘電体、例えばSiC、SiNまたは多型性を示しうるいずれか他の材料を含んでもよい。三元系カルコパイライト、例えばCuInSおよびCuInSeも含まれる。一部の金属、例えばFe、Ni、Cu、Ag、Au、Pd、Pt、Coおよびその他も多型性を示しうるため、各態様のロッド、矢、涙滴およびテトラポッド型半導体ナノ結晶で用いうるが、これらはManna et al.J.Am.Chem.Soc.2000,12,12700-12706で定義されており、その内容はすべての目的のために参考としてここに組み込まれる。
【0032】
本発明の態様によるナノ結晶粒子は独特な光学的、電気的、磁気的、触媒的および機械的性質を有しうるため、いくつかの適切な目的用途に用いうる。それらは、例えば、複合材のフィラー、触媒、光学機器の機能性要素、光電デバイス(例えば、太陽電池)の機能性要素、電子機器の機能性要素などとして用いうる。
【0033】
“P3HT”とは、頭‐頭および頭‐尾立体規則性P3HTを含む立体規則性P3HTを含めた、ポリ(3‐ヘキシルチオフェン)を意味する。好ましくは頭‐尾P3HTである。
【0034】
本発明では、溶液からプロセッシングしうるいかなる半導体複合ポリマーも本発明に従い機能する、と考えている。“半導体ポリマー”とは、π電子系を有したすべてのポリマーを意味する。非制限例として、トランス‐ポリアセチレン類、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリ(p‐フェニレン)類およびポリ(p‐フェニレン‐ビニレン)類、ポリフルオレン類、ポリ芳香族アミン類、ポリ(チエニレン‐ビニレン)類および上記の可溶性誘導体がある。例は(ポリ(2‐メトキシ‐5‐(2′‐エチルヘキシルオキシ)p‐フェニレンビニレン)(MEH‐PPV)およびポリ(3‐アルキルチオフェン)である。特に好ましくはポリ(3‐ヘキシルチオフェン)、P3HTである。本発明では、複合主鎖へ結合したバルク側基のせいで、または1種以上の成分が複合化されていないコポリマー構造中への複合ポリマーの含有により、溶液プロセッシングまたは溶融物プロセッシング可能な複合ポリマーを用いることも考慮している。非制限例として、ポリ(4′‐ジフェニレンジフェニルビニレン)、ポリ(1,4‐フェニレン‐1‐フェニルビニレン)、ポリ(1,4‐フェニレンジフェニルビニレン)、ポリ(3‐アルキルピロール)およびポリ(2,5‐ジアルコキシ‐p‐フェニレンビニレン)がある。
半導体複合ポリマーとはポリマーのブレンドの混合物を意味し、そのうち1種は半導体複合ポリマーである、と理解されている。こうして、ナノ結晶がブレンドまたは混合物に埋込みまたは分散されるか、またはされることになる。
【0035】
本発明は、半導体‐ナノ結晶、ロッドが結晶の整列に関して当業界で知られたいかなる技術でも整列させうる、と更に考えている。
【0036】
“光電デバイス”とは、当業界で知られた典型的デバイス構築物を含めた意味である。
例示の光電デバイスは、例えばScience,Vol.295,pp.2425-2427,March 29,2002で記載されており、その内容は参考のため組み込まれる。例示の光電デバイスは、バインダー中にナノ結晶粒子を有してもよい。この組合せは、光電デバイスを形成するために、基板上で2電極(例えば、アルミニウム電極およびインジウムスズオキシド電極)間に挟んでもよい。
【0037】
“二元溶媒系”とは2溶媒の系を含んだ意味であり、1つはリガンドでもよく、これも溶媒である。例えば、クロロホルム中ピリジン。“二元溶媒系”とは、少くとも1種の溶媒、および溶媒ではないリガンド、例えばキシレンおよびホスホン酸の系も含んだ意味である。キシレンは半導体ナノ結晶用の溶媒であり、ホスホン酸はリガンドであって、溶媒ではない。
【0038】
ここで記載されたような薄膜を製造するために適した方法は公知である。溶液からの様々なコーティングおよびプリンティング技術の非制限例には、スピンコーティング、ブレードコーティング、浸漬コーティング、インクジェットプリンティングおよびスクリーンプリンティングがある。これらすべての技術が、一般的に、ここでは“沈着(depositing)”と称されている。即ち、本発明の薄膜はある形の基板上へ“沈着(deposited)”されねばならない。
【0039】
無機および有機半導体の補足的電子性質は、電気的に活性な接続の形成に用いうる。電荷移動は、高電子親和性無機半導体と比較的低いイオン化電位の有機分子およびポリマーとの間で好都合である。本発明の一態様では、界面の多い電荷移動接続を生じさせて、効率が改善された光電デバイスをもたらすために、CdSeナノ結晶のような半導体ナノ粒子がP3HTのような複合ポリマーと組み合わされる。CdSeナノ結晶およびP3HTに関するエネルギーレベル図から、CdSeは電子受容性で、P3HTがホール受容性であるとみられる(図1)。ナノ結晶の表面上におけるリガンドの存在は、ポリマーとの相互作用を仲介する。我々は、ナノ結晶の化学洗浄によるか、またはそれらがキャストされた後でCdSe‐P3HTブレンド膜の熱処理により、CdSeの表面上にあるリガンドを置換または除去しうる。
【0040】
電荷移動および輸送の有効性は、ブレンドの形態により決まる。溶液中およびポリマー中の双方におけるナノ結晶の凝集は、粒子間のファンデルワールス相互作用の強さ、ひいてはナノ結晶とそれらサイズとの分離に依存している。電子の輸送のための凝集とより効率的な電荷移動のための分散とのバランスが必要とされる。本発明者らは、意外にも、形態の巧みな制御により溶媒混合物の使用から得られることを発見した。リガンドであってナノ結晶を安定化させるピリジンを含有した、本発明の態様による溶媒混合物は、溶液中におけるナノ結晶の分散に影響を与えうる。スピンキャスティングは非平衡プロセスであるため、溶液中ナノ結晶の分散はポリマー中で維持しうる。
【0041】
本発明の一態様によると、溶媒混合物はナノメータースケールに至るまで相分離を抑制するために用いられる。本発明者らは、意外にも、ナノメータースケールに至るまでポリマー、特にP3HT中高濃度(90〜95重量%以内)でナノ結晶が存在する膜の相分離を抑制するために、溶媒混合物を用いることが可能であることを発見した。その目的は、溶液プロセッシングのために、ナノ結晶、特にCdSe用の良い溶媒およびリガンドと、ポリマー用の良い溶媒とを同時に用いることにより、ナノ結晶の溶解性を高めることである。好ましい例は、容易な除去の目的でナノ結晶用のリガンドとして選択された、116℃の比較的低い沸点を有する、弱結合性ルイス塩基のピリジンである。様々な形状およびサイズのピリジン処理ナノ結晶(図3)が、スピンキャストされたときにポリマー中分散粒子からなる均一膜を作製するために、クロロホルム中4〜12容積%(vol%)ピリジンの混合物にP3HTと共溶解された。ナノ結晶表面を覆うために好ましいピリジン量は、ナノ粒子上に存在する非不動態化Cd表面部位の数により決定される。ピリジンはクロロホルムに混和性であるため、ナノ結晶に対して2倍の溶解度増加がある:(a)ピリジン被覆ナノ結晶はそれらの裸相当物よりもクロロホルムに可溶性である;および(b)それらはナノ結晶と結合していない過剰ピリジンへ高度に可溶性である。しかしながら、多すぎるピリジンは避けるべきであり、クロロホルムに非常に可溶性でピリジンに不溶性であるP3HTの沈殿を仲介するからである。したがって、3つの溶解法がある:
I.低ピリジン濃度法:ナノ結晶の不十分な溶解性が、ナノ結晶フロキュレーションにより促進される、ブレンド膜における大規模な相分離をもたらす。
II.中ピリジン濃度法:ポリマーが2種溶媒の混和性ブレンドになお十分可能性であるならば、ブレンド溶液のナノ結晶成分における溶解度増加が2半導体の完全混合をもたらす、したがってスピンコーティングに際して相分離を防止することになる。
III.高ピリジン濃度法:ピリジンはポリマー成分の非溶媒であるため、我々はポリマー鎖のフロキュレーションにより促進される大規模な相分離を予想している。
【0042】
ナノ結晶‐ポリマーの形態を調べるために、原子間力顕微鏡法(AFM)のような膜感受性技術、および透過型電子顕微鏡法(TEM)のようなバルク敏感性技術が用いられる。I法の例は、クロロホルムの単一溶媒からスピンされたP3HT中90wt%7nm×7nmナノ結晶のブレンドについて、図4で示されている。図4は数ミクロンのスケールで相分離を示しており、これは膜散乱光として光学顕微鏡下で、更には裸眼でも検出しうる。光散乱は薄膜光電池で望ましくなく、それが吸収される光の割合を減少させるからである。
【0043】
ナノ結晶‐ポリマーブレンド膜の表面の研究は、タッピングモード(TM)でAFMを用いることによりかなり促進されるが、これは位相およびトポグラフィー像を比較することで膜組成の局所的差異を識別することが多くの場合に可能となるからである。I法からIII法への変遷を説明するために、図5は、低および中ピリジン濃度の溶媒混合物からスピンされた9nm×13nmナノロッド‐P3HTブレンド膜の5μmスキャンエリアについて、AFM‐TMトポグラフィーおよび位相像を示している。これら膜のトポグラフィーは低ピリジン濃度の場合非常に粗いが、中濃度ではかなり滑らかな膜を形成する。対応するAFM‐TM位相像は、表面粗さが相分離と関連していることを証明している。ナノ結晶とポリマーとの相分離で単一材料領域を生じることはなく、そのため個別のポリマーおよびナノ結晶エリアを識別することは不可能である。低ピリジン濃度のときは膜組成の局所的偏差に明白な証拠があるが、中ピリジン濃度のとき位相像は非常に滑らかである。したがって、我々はこれら2種の濃度を各々IおよびII法に属するとみている。
【0044】
本発明の更に別の態様において、本発明による複合ポリマー中で半導体‐ナノ結晶の高配合は“平滑”薄膜表面をもたらす、と考えられている。これは定量しうる。定量的にこれらの結果を表わすために、膜粗さの二乗平均(RMS)がピリジン濃度の関数としてAFMトポグラフィー像から求められる(図6)。ピリジン濃度が0から5vol%へ増加すると、RMS粗さの程度は減少する。5〜12vol%ピリジン濃度のとき、RMS粗さにほんのわずかな増加があるが、ピリジン濃度が12から20vol%になると、その程度は増加する。上記のスキームを用いて、我々は濃度範囲0〜5vol%をI法、5〜12vol%をII法、および12から20vol%をIII法に属するとみなせる。これらの濃度値は、二元溶液中でナノ結晶およびポリマーの一定な全体濃度のときのものである。ここで用いられているP3HT中90wt%CdSeナノ結晶の場合、部分濃度は各々5g/Lおよび45g/Lであった。洗浄に関して表示される濃度は20%も変動しうるが、それでもなお有効である、と理解すべきである。
【0045】
電荷の分離は、ナノ結晶‐ポリマー界面の励起子拡散範囲内で生み出される励起子に関してのみ生じる。単一材料領域サイズが良いナノ結晶分散の結果として減少すると、外部量子効率(EQE)の増加が予想される。次の量:(i)入射光強度、(ii)吸収光の割合、および(iii)電極の選択で主にもたらされる電極の集電荷効率が、一連のデバイスで比較しうるならば、EQEは電荷分離の効率の尺度として用いうる。これら3つの条件は、EQEデータが図6で示されたデバイスで満たされる。図6はP3HTおよび9nm×13nm CdSeナノ結晶のブレンドに関するEQEのピリジン依存性を示している。
EQEはI法からII法へ移行すると1.4倍増加し、次いで再びIII法で減少する。好ましい態様において、35%の最大EQEは溶媒混合物、即ち二元溶媒系で8vol%のピリジン濃度のときにみられる。
【0046】
二元溶媒系でピリジン濃度へのEQEの類似依存性は、P3HTに分散された球状ナノ結晶で存在する。最大EQEも8vol%ピリジン濃度のときであり、上記の低アスペクト比ナノロッドでみられる値に匹敵する。一定のナノ結晶濃度の場合、ピリジンの最良濃度はナノ結晶の表面/容積比により決まる。3〜100nmナノロッドから構成されるデバイスの場合、最良のデバイスは12vol%ピリジンを含有した溶液からキャストされるが、7nm×60nmナノロッドのデバイスではわずか4vol%のピリジンで済む。3nm径ナノロッドは、7nmナノロッドより2倍高い表面/容積比を有している。ピリジンで覆われた薄いナノロッドの表面を維持するためには更に多くのピリジンが必要とされるが、これらの結合ピリジン分子が溶液中の遊離ピリジンと動的平衡状態にあるためである。
【0047】
本発明の別な態様では、ピリジンを別なリガンドと置き換えることにより、本発明に従い用いられる二元溶媒混合物を変えることが可能である。例えば、CdSe、CdTeおよびInPナノ結晶は、主としてTOPOまたはTOPおよび様々なホスホン酸からなる混合物で合成される。ナノ結晶が回収および貯蔵された後には、生成物中に大過剰のTOPO(またはTOP)が存在し、ナノ結晶はこの有機界面活性剤で不動態化されている。
TOPOのシェル付きナノ結晶は酸化しずらく、トルエン、クロロホルム、ヘキサン、THF、ピリジンおよびブタノールを含めた様々な溶媒へ容易に溶解する。TOPOはカドミウムの場合に他のリガンド、例えばチオール類、アミン類および他のホスフィンオキシド類およびホスホン酸類で置き換えてもよい。下記参照。
【化1】

【0048】
非複合リガンドは電磁スペクトルの可視部分で吸収せず、太陽電池の光起電流を増加させない。ホスフィンオキシドまたはホスホン酸官能基が結合したオリゴチオフェン類は、CdSeおよび他の半導体‐ナノ結晶の表面へ結合しうる。4モノマー単位を超えて長く接合したこれらの複合リガンドは、電磁スペクトルの可視部分で吸収し、光電流に寄与するため、それらの使用が本発明の一態様で考えられる。フェニルホスホン酸が、好ましい使用のリガンドの非制限例である。10モノマー単位以上のオリゴチオフェン類のエネルギーレベルは、親ポリマーP3HTの場合に近い。TnPAはチオフェン(チオフェン環の数n)ホスホン酸として知られており、以下で示されている。本発明には3タイプの好ましいチオフェン誘導体リガンドが考えられる。チオフェン環の数は変えられ、それらはホスホン酸、ホスフィンオキシドまたはオリゴチオフェンアミンを用いる。
【化2】

【0049】
大きなオリゴマーはナノ結晶と密接に結合して、ポリマーと深く相互作用しうるため、それらは2半導体間の電荷移動率を改善する上で役立つ。ポリマーに類似の側鎖を有したオリゴマーも、大きなナノ結晶が互いに排斥しあい、ポリマーによく分散する上で役立つ。好ましい場合には、ナノ結晶と結合するホスフィンおよびホスフィンオキシドのような化学官能基を含有したポリマーと、ナノ結晶がブレンドされる。この場合には、迅速で効率的な電荷移動を促せるよう、ナノ結晶のすぐ近くにポリマーが連れてこられる。
【0050】
TOPOまたは他の合成溶媒を置き換えるため、ナノ結晶はナノ結晶上の具体的界面活性剤に適した溶媒で洗浄される。次いで、ナノ結晶は用いられる過剰の望ましいリガンド入りの溶媒に溶解され、高温で数時間にわたり還流される。高温であればナノ結晶表面へ着脱するリガンドの移動を確実に行わせられ、過剰であればナノ結晶表面上で新たなリガンドの平衡を維持しうる。高温で酸素および水へのナノ結晶の暴露を減少させる他の有効な化学処理では、過剰の置換リガンドにナノ結晶を溶解させ、次いでTOPOまたは他の合成溶媒に代わる溶媒で粒子を沈殿させ、遠心後に上澄を捨てる。沸点116℃のピリジンが最も置き換え易いリガンドの1つであり、CdSe向けには好ましい。ピリジンで不動態化されたナノ結晶はTOPOで覆われたものより溶解しずらいが、それらはナノ結晶を乾燥または加熱することでピリジンを容易に除去しうる。
【0051】
ナノ結晶‐ポリマーブレンドで作製された光電デバイスでは、ナノ結晶上のリガンドが膜の形態およびミクロ相分離の程度を決める。TOPO、ピリジンおよび1つのオクチル部分がチオフェン環で置き換えられた修飾TOPO(T1)を含めた様々なリガンドとCdSeとのブレンドの形態が、図22で比較されている。
【0052】
非制限例として、非極性アルキル鎖付きTOPOで不動態化されたCdSeナノ結晶は、P3HTの非極性マトリックス中へ均一に分散させうる。粒子間の間隔は、TOPO分子のおおよその長さ、11Åに相当する(図22a)。1つのオクチル鎖をチオフェン環で置き換えてT1を得るようにTOPOが修飾されたとき、これらのナノ結晶は、P3HTに分散されたとき、TOPO被覆粒子とは異なって挙動する(図22b)。T1で被覆されたナノ結晶はTOPO被覆粒子よりも多く凝集し、CdSeナノ結晶の凝集物はナノ粒子の各ラインに集合する。いかなる特定の理論または原理にも拘束されたくないが、T1分子上のチオフェン環はポリマー上のチオフェン環とπ積層して、ポリマー鎖に沿いナノ結晶を整列させることが可能である。ナノ結晶表面上における界面活性剤の存在は、凝集物内とナノ結晶の鎖中における粒子間の分離から識別しうる。逆に、ピリジンで被覆されたナノ結晶はP3HT中で凝集している(図22c)。いかなる特定の理論または原理にも拘束されたくないが、ピリジンは弱ルイス塩基であるため、膜がキャストされたとき溶媒の蒸発に際してピリジンの一部がナノ結晶表面から除去されることはありうる。結果として、非極性P3HT中における大きな極性ナノ結晶間のファンデルワールス相互作用は、複合材の有機および無機成分間で小規模な相分離を招いてしまう。ピリジン洗浄ナノ結晶は隣接粒子とより密に接触しているため、TOPO被覆粒子で観察されるような明瞭な分離は膜中のナノ結晶間にない。TOPOとピリジン被覆ナノ結晶との凝集挙動に関する類似の差異は、P3HTより極性であるポリマーMEH‐PPVでも観察された。
【0053】
本発明では、好ましい態様として、合成プロセッシングから存在している界面活性剤の95%をロッド上で現実に置き換えることはないと考えている、と理解される。直観的に、3回の洗浄で残留する界面活性剤を除去しうると考えるであろうが、界面活性剤は電荷移動を妨げることからこれは好ましいことであろう。しかしながら、本発明者らは、わずか1回の洗浄ステップでは一部の界面活性剤が残留するが、そのことが予想された以上に相当大きな予想外の結果を有する光電デバイスをもたらすことを、意外にも発見したのである。このようなデバイスのEQEは3回洗浄されたデバイスよりも3〜5倍改善されている。
【0054】
直径5nmのナノ結晶は過剰のTOPOを除去するためにメタノールで3回洗浄され、次いで最少のピリジン(50μL/100mg CdSe)に溶解され、表面にピリジンの付着した粒子を得るためにヘキサンで3回沈殿される。メタノール洗浄ナノ結晶はTOPOに置き換わるように最初はピリジンと還流され、ヘキサンで沈殿され、次いでT1被覆粒子を得るために、トルエンに溶解されたT1の溶液中で12時間還流された。クロロホルムに溶解されたP3HT中40wt%ナノ結晶からなる溶液からNaCl IRウインドー上へスピンキャストすることにより、膜が得られた。これらのサンプルはブレンド膜を浮き上がらせるために水に浸漬され、穴あきカーボン付き銅TEMグリッドが膜を取り出すために用いられた。
【0055】
本発明の別な態様において、本発明者らは、熱処理が無機表面に結合した有機分子の移動度を高めるために有効な方法であり、ポリマーのガラス転移温度近くでのナノ複合材の処理が膜内におけるこれら分子の動きを表面に向けられることを、意外にも発見した。有機ブレンドにおいて、熱アニーリングはスピンキャスト膜の平衡形態を促進し、一部の場合には複合材内の相分離および結晶化を高めるために用いられてきた。ナノ結晶‐ポリマーブレンドの場合には、熱処理はナノ結晶‐ナノ結晶およびナノ結晶‐ポリマー界面の修飾を行って、光電デバイスの性能を改善する上で電荷移動および輸送を予想外に高める。
ポリマー中ナノ結晶の分散を制御するために用いられる二元溶媒中の過剰ピリジンは、P3HTで生じる励起子の非輻射再結合中心として作用することが示されるであろう。結果として、これらの励起子は光電流に寄与しない。本発明の態様による膜の熱アニーリングは、界面ピリジンとポリマー領域内で過剰の未結合ピリジンとを除去させる。EQEの有意な増加が加熱後にデバイスで観察され、これは電荷移動および光電流発生におけるこれら消失励起子の回収と関連しうる。
【0056】
クロロホルム中10vol%ピリジンの溶媒からスピンキャストされたP3HT中90wt%3nm×60nm CdSeナノロッドについて測定された標準化光電流が、図7aで示されている(白丸、アニール前;黒四角、アニール後)。絶対最大EQEは、アルゴン流下455nmで0.1mW/cm照度下15%である。約50mTorrの減圧下で3時間にわたり120℃で加熱し、8時間かけて室温まで冷却させると、同デバイスの光電流は有意に高められ(図7a)、これは通常予想されるよりも高い。
【0057】
いかなる特定の理論または原理にも拘束されたくないが、予想外の結果は次のように説明できるかもしれない。加熱デバイスの光電流対加熱前デバイスの光電流の比率は、全体で2.5倍の増加と、650nm近くで6倍以上の特に強い増加と、700nmでショルダーを示している(図7b)。この赤色EQE増加ピークの原因を理解するために、わずか3nm×60nm CdSeナノロッドのデバイスが作製され、同一条件下で加熱された。熱処理前後における光電流の分析では、700nm付近を中心とした唯一の増加特徴があることを示している。したがって、我々はブレンド光電流におけるこの赤色シフトがナノロッドに起因していると考えられる。結果的に、操作の特定の理論またはメカニズムに拘束されることなく、熱処理は界面ピリジンの除去とナノロッドの相互接近の双方に役立つとみられ、こうして予想外の意外に優れた効率をもたらしていると思われる。隣接ナノロッドのこの凝集がナノロッド間の電子輸送を改善しているようであり、それに合わせてホッピングステップ間の分離間隔が減少している。更に、界面ピリジンの除去は、2材料を密に電子的接触させることで、CdSeとP3HTとの電荷移動を高める効果も有せる。これら2つの効果は、ほぼ間違いなく、全吸収波長にわたり約2.5倍の全体光電流増加をもたらした。
【0058】
最大の光電流増加は500〜700nmの領域で生じ、そこでは6倍以上の増加が90wt%CdSeブレンドデバイスで得られ、CdSeおよびP3HTの双方が光の吸収に有意に寄与している。相対的寄与度を調べるために、我々は吸収される光の割合と各材料成分により生じる光電流の割合とを比較しうる。様々なCdSe濃度の一連のデバイスの吸収スペクトルが、個別CdSeおよびP3HTスペクトルの直線的組合せにあてはめられる(図8)。
【0059】
加熱後において、ブレンドデバイスの400〜700nmの吸収には有意の変化がない。濃度40wt%以上の場合、光電流へのP3HTの寄与度はポリマーにより吸収される光の割合より有意に低い。90wt%CdSeデバイスでは、P3HTは吸収光の61%に関与するが、そのポリマーは光電流の8%に寄与するだけである。これは、P3HTにより吸収された光の実質量が電流の発生に寄与せず、非輻射または輻射再結合経路に失われたことを示している。しかしながら、120℃でこれらデバイスを熱処理すると、光電流スペクトルの変化は吸収する光の割合に近いP3HT寄与度をもたらす。90wt%CdSeデバイスの場合、光電流のP3HT分は、P3HTにおける吸収光の61%と比較して、66%へと劇的に増加する。外部量子効率のこの増幅は60〜160℃で観察され、アルミニウムが膜を介し移動してデバイスが劣化する際に180℃で再び一度減少する(図9)。それに対応して、処理温度の関数として60wt%CdSeブレンド膜のPL効率は、120℃まで上昇し、その後減少して、それ以上の温度では一定のままである(図9差し込み図)。本発明では、熱アニーリング温度が200℃にもなりうることを考慮している。
【0060】
これら予想外の結果は次のように説明される。ブレンド中CdSeのPL効率は0.1%以下であるため、サンプルのPLはP3HTから主に生じている。P3HTの加熱は、PL効率を抑制する結晶度の増加につながることが知られている。この効果は、40℃の低い温度でも、P3HTの加熱膜で観察される。したがって、結晶度の増加は120℃以上のブレンド膜で観察されるPL効率のわずかな減少の説明になるが、120℃以下のPL効率の実質的増加に関する説明にはならない。低温のときには、ポリマー内における過剰ピリジンの除去が、処理温度の上昇に伴うP3HT PL効率の増加について考えられる原因である。可能性として考えられるのは、P3HTに吸収された光子の一部が未処理膜におけるポリマー内のピリジン部位で非輻射再結合をうけて、PLに寄与しないからである。熱処理後、これらの光子は放射性崩壊および電荷移動の双方に寄与しうる。結果的に、過剰ピリジンの除去が光電流への大きなP3HT寄与をもたらし、500〜700nmの領域で観察されるEQEの増加に至るのである。
【0061】
本発明の好ましい態様による熱処理は、高い表面/容積比を有して、スピンキャスティング溶液で高濃度(>8vol%)のピリジンを要する、高アスペクト比ナノロッドデバイスにおいて、EQEを高める上で特に重要である。これらのナノロッドからなるデバイスには、ピリジンおよび過剰ピリジンの実質量を含有した、大きなナノロッド‐ナノロッドおよびナノロッド‐ポリマー界面エリアが存在する。このピリジンの除去は、図7で観察されるような、6倍に達する大きなEQE改善をもたらした。逆に、寸法7nm×60nmのナノロッドがわずか4vol%ピリジンの溶媒中でP3HTとブレンドされたとき、その最大EQE増加は加熱後にわずか1.3倍である(図10)。
【0062】
本発明では低い表面/容積比のナノロッドの使用も考えており、そのため薄膜(<200nm)からのピリジン除去は低圧(<10−6mbar)でサンプルの単なるポンプ吸引から行えるが、性能の改善は熱処理で観察されない。更に、アルミニウムが相当部分のデバイス全体に拡散するため、薄膜の熱処理は開回路およびフィルファクターに有害である。
【0063】
厚さ100〜350nmのP3HTデバイスにおける一連の90wt%7nm×60nmナノロッドCdSeで、200nm厚以上のものは120℃の熱処理で改善する(図11)。
【0064】
デバイスの厚さが増すと、EQEの相対的増加も増す(図12a)。処理後におけるEQEの絶対的改善率も厚さと共に増すが(図12b)、最厚デバイスの輸送性が低いせいで346nm厚さで制限される。ハイブリッドナノロッド‐ポリマー太陽電池はナノロッドの整列および長さ100nm以上のロッドの合成のおかげでより効率的になるため、日光を多く吸収する上でより高い光学濃度でより厚い膜が用いうる。これらの厚膜のとき、熱処理は高性能デバイスを実現する上で好ましい。
【0065】
本発明の更に別な態様において、本発明者らは、キャリア移動度の増加と集電荷の改善で電池性能の向上をもたらす、予想外の戦略を意外にも実現したのである。電子輸送材とホール輸送材とのブレンドでは、パーコレーション経路の作製が電荷を運ぶために必要である。ナノ結晶とポリマーとの分散物では、電子経路の末端が捕捉または再結合中心として作用する。ナノ結晶のサイズが増すと、これら末端の数を減らし、ひいては性能を高めることになる。しかしながら、市販太陽電池で観察される効率を達成するためには、より高いキャリア移動度とより低い再結合速度を有することが望ましい。デバイスの厚さと類似した長さを有するナノロッドの場合には、キャリア移動度が一次元ワイヤの場合と類似した指向経路を有することが可能である。そのため、パーコレーションおよびホッピング輸送の問題は解消される。P3HTに分散されるCdSeナノロッドのアスペクト比を制御することにより、本発明者らは長さスケールおよび電子輸送の方向が薄膜PVデバイスに合わせられることを意外にも発見したのである。
【0066】
ナノ結晶は球状からロッド様へとアスペクト比が増加するため、それらは一次元ワイヤの場合に近い分子法から移動して、それらは易溶性でなくなる。図13aでは、膜がクロロホルムからキャストされたときに、ナノロッドは数ミクロンの単一アイランドを形成するようにP3HT中で凝集している。しかしながら、同濃度の場合、ピリジン/クロロホルム溶媒混合物からキャストされたとき、ナノロッドはポリマー膜内で均一に分散する(図13b)。ピリジンおよびクロロホルム中におけるナノロッドのこの分散は、均一膜のキャスティングと、励起子再結合減少向けのP3HTとの大きな電荷移動界面の作製にとり、不可欠である。
【0067】
これら太陽電池の構築物は、電場が平面よりもむしろデバイスの厚さ方向に広がるようなものであるため、断面でブレンド膜の形態を特徴付けることも重要である。これを行うために、P3HT中60wt%10nm×10nm CdSeナノ結晶の溶液が、Polybedエポキシディスク上に溶液からスピンキャストされた。次いで、そのディスクは60nm厚膜を得るためにダイヤモンドナイフで切片化された。これらの超薄膜は、一端において、ナノ結晶‐P3HTブレンドの断面を含有している。図14の膜のTEM像において、ナノ結晶のない暗所セクションはエポキシ基板であり、その上には約100nmにわたりナノ結晶を含有したP3HT膜がみられる。ナノ結晶は膜厚全体で均一に広がり、横方向の相分離は多くない。
【0068】
長いナノロッド‐ポリマー膜の断面を得ることは非常に難しかった。ナノロッドは大きなサイズであるため切断に抵抗し、ブレンド膜はナイフで引き裂かれ引きずり込まれる傾向を有している。結果的に、膜がエポキシディスク上にスピンされたら、切片化に際して更なるサポートをもたらすために、膜は2日間にわたりエポキシ樹脂に埋め込んで、硬化させた。P3HT中40wt%7nm×60nm CdSeナノロッドで得られる断面は、ナノロッドが膜の厚さの実質部分にわたることを示している(図15b)。
【0069】
ナノロッドの長さが増して光電デバイスの厚さ全体にまたがると、電子輸送は実質的に改善すると予想される。しかしながら、輸送で予想される改善では、ナノロッドが基板の面へ垂直に整列して、電子が完全に1本のナノロッド内で輸送される程それらが十分に長い、と仮定している。図15はナノロッドがランダムに分散されていることを示しているが、それにもかかわらず電子輸送の方向に沿い一部の粒子が有意成分と共に向けられている。ナノロッドの部分的整列と電子輸送の有益効果に関する更なる証拠は、光電流で観察される。
【0070】
次の量:(i)入射光強度、(ii)吸収光の割合、(iii)電極の選択で主にもたらされる電極の集電荷効率、および(iv)光ルミネッセンスクエンチングから調べられる電荷移動効率が、一連のデバイスで比較しうるならば、EQEは電荷移動の効率の尺度として用いうる。これら4つの条件は、EQEデータが図16で示されたデバイスで満たされる。
したがって、我々は、ナノロッドのアスペクト比が1から10へ増すと(図17)、電荷輸送が有意に改善するはずであり、約3倍のEQE増加をもたらす、と結論付けられる。
短いナノ粒子からなるネットワークでは、集電子電極への経路を形成する個別粒子間のホッピングにより電子輸送が抑制されてしまう。しかしながら、長い粒子からなるデバイスでは、経路が単一ナノロッドから形成しうるため、バンド伝導性は優勢である。デバイスにおけるナノロッド‐ポリマー膜の厚さは約200nmであるため、60nm長ナノロッドはデバイスの相当部分にまたがるが、30nmおよび7nm長粒子は順次有効性が少なくなる(図16)。7nm×60nmナノロッドを含有した最良のデバイスは、485nmで0.1mW/cm照度下55%の最大EQEで機能し、この値は著しく再現性があった。報告された結果は、合計で57個の個別太陽電池になる、CdSeの異なる3種合成バッチから別々の機会に作製された5組のデバイスの中央値を表わしている。これら57デバイスの各々の最大外部量子効率は、すべて〜0.1mW/cm単色照度下において、最高効率59%の中央値と比較して、すべて10%以内にある。個別のデバイスは数ヶ月間にわたり何度も特徴付けられたが、測定間で有意な変化を示さなかった。
【0071】
半導体有機ポリマーおよび小分子と比較して無機半導体ナノロッドの優れたキャリア輸送性のおかげで、これらのハイブリッドナノロッド‐ポリマー太陽電池は、これまでポリマー含有電池について報告された、低強度照度下における最高EQEで機能する。
【0072】
本発明による光電デバイスでは、高度分岐ナノロッドを取り入れることが考慮されている。高度分岐ナノロッドは、10回の先駆物質注入から、従来公知の技術に従い合成された。合成では次の注入に際して、これらのナノロッドは、長さの増加に加えて、分岐用の多くの核形成部位を作り出した。これら多くの分岐ナノロッドは100nm以上の長さを有するため、ナノロッド‐ポリマーPVデバイスで用いられたときに、EQEの更なる増加が予想された。ナノロッドの長さ方向にねじれをもたせる欠陥の積重ねと類似した、ロッドのウルツ鉱型構造の低エネルギー閃亜鉛鉱欠陥により、分岐が生じている。結果として、分岐ナノロッド内におけるキャリアの移動度は非分岐ロッドと類似していると予想される。更に、ナノロッドの分岐および本体間の相互作用は、物理的に接触する2つの個別ナノロッド間よりも強い。そのため、バンド輸送は分岐ナノロッド内で優勢であり、電子のホッピングが個別ナノロッド間で生じる。
【0073】
本発明の態様では更に一層複雑な形状のナノ結晶粒子を含有することが、理解されている。本発明の態様において、初回の核形成現象は立方体結晶構造(例えば、閃亜鉛鉱結晶構造)のコアを生じる。その後で、六方晶構造(例えば、ウルツ鉱型)のアームがそのコアから成長しうる。しかしながら、立方体および六方晶構造の形成を統計的に変え、ひいては不規則な分岐に至らせる、異なる成長条件も提示しうる。反応全体にわたる温度の正確な制御で、分岐“無機デンドリマー”を連続的に作り出せる(Mana et al.,J.Am.Chem.Soc.,2000,122,12700-2706および2002年11月20日付で出願された現在係属中のUSSN10/301,510参照)。
【0074】
CdTeのような低いバンドギャップ材料と組み合わされた、基板上に自己整列して1本のアームが1電極の方へ常に向くテトラポッドの属性のおかげで、特に好ましい態様では、テトラポッド半導体‐ナノ結晶を複合ポリマーへ埋め込める。ランダムに配向したナノ結晶粒子と比較して、本発明の態様によるテトラポッドは整列されるため、ランダム配向ナノ結晶粒子よりも一方向電流路を作りやすい。
【0075】
様々なピリジン濃度のP3HT中90wt%CdSe分岐ナノロッドのブレンドに関する光電流スペクトルが、図18で示されている。分岐ナノロッドで好ましいピリジン濃度は12%であり、これは8%以下である短い非分岐ロッドの場合よりも有意に高い。これらデバイスの最大EQEは、450nmで約0.1mW/cm照度下31%である。予想された結果に反して、このEQEは60nmナノロッドからのデバイスよりほぼ1/2と低い。
【0076】
P3HT中長いナノロッド(>100nm)の分散は、ピリジン‐クロロホルムへの溶解性により制限される。分岐ナノロッドは、ピリジン‐クロロホルムへ溶解されたとき、ゼリー状の粘稠溶液を形成した。これは、分岐物の低い溶解性と、ナノロッド‐溶媒相互作用と比較して高いナノロッド‐ナノロッド相互作用の指標である。これら分岐物の場合、CdSe‐P3HT膜キャストは、マクロ相分離の明確な指標である、不均一な散乱光であった。輸送効率の増加は、ナノロッドとP3HTとの界面の減少に起因した、電荷分離効率の低下により損なわれる。
【0077】
溶液中高濃度の、ピリジンにより不動態化された、長いセレン化カドミウムナノロッドは、小さな間隔で、一部の場合にはピリジンの直径で離されている。このような近接下で、容積および間隔として測られるファンデルワールス引力は非常に強く、凝集を促進する。PVデバイスで十分に厚い膜を作製するために必要な高濃度で長いナノロッドを溶解させることは、難問である。大きさサイズおよび長い鎖のリガンドが、ポリマーに加えられるナノロッドの長さを伸ばすために要される。これらのリガンドがバリア層として作用することを防ぐために、それらは電気的に活性でなければならず、エネルギーレベルはCdSeおよびP3HT間の電荷移動が容易となるようなものでなければならない。
【0078】
電子の完全なバンド伝導には、輸送が単ナノ結晶内で完全に含まれていることを要する。輸送の更なる改善は、膜厚全体にわたるナノロッドの整列に依存している。ナノロッド整列のための方法には電場および延伸整列があり、その双方とも現行デバイスプロセッシングおよび構築法の相当な改造を要する。4本の同一ナノロッドアームが立方体中心に付いたテトラポッドは、図19でみられるように、表面上で自ら自然に配向して、1本のアームが基板面に垂直となっている。したがって、次世代のハイブリッド太陽電池では、電子を効率的に輸送するため、自己整列ナノ結晶としてテトラポッドを取り入れるであろう。
【0079】
本発明の別な態様は、本発明のナノロッド/ポリマー光電デバイスが機能する、意外な膜厚である。ナノ結晶およびポリマーを用いる多くの利点のうち1つは、バルク無機半導体と比較して高い吸光係数である。これらは、入射光の90%以上を吸収しうる、典型的には300nm以下の薄膜を形成する。光を吸収する上で数ミクロン以上の厚さを要する従来の無機半導体太陽電池とは異なり、低い材料取扱性でフレキシブルなデバイスがナノ結晶およびポリマーで可能となる。いかなる特定の理論またはメカニズムにも拘束されたくないが、ナノロッドの長さが膜の相当部分にまたがるとき、ナノロッドの良い輸送性が利用しうるため、膜厚へのナノロッドポリマーPVデバイスの効率の依存性はキャリア輸送の性質に関する情報を更にもたらす。
【0080】
吸収が上記されたデバイスの光電流スペクトルは、図20で示されている。膜厚が100nmから350nmへ増すと、それに対応したEQEの増加とそれに続く減少は、吸収光の増加から単に生じているわけではない。スペクトルの形状はデバイスの厚さに依存し、スペクトルの赤色領域における光応答性は厚い膜ほど増す。これは、光電流に寄与しない膜の部分に起因した、弱いフィルター効果のせいかもしれない。厚膜のとき、物理的に接触したナノロッドのネットワークは低キャリア移動度で電子を輸送するため、全体的に1粒子に含まれる輸送と比較して、PEDOT:PSS電極近くで生じた電子は、集アルミニウム電極に到達する上で多くのナノロッドを横切らなければならない。透明電極の近くで吸収された青色光は、さほど強く光電流へ寄与しない。加えて、電荷分離に関与するデバイスにかかる電場は、薄いものと比較して、厚い膜の場合に所定の電圧バイアスで減少する。
【0081】
本発明者らは、ナノロッドの分散特徴がうまく制御されて、ナノロッドの輸送性が前記有機材料よりも効率的であることから、ナノロッド‐ポリマーデバイスが光の吸収を多くするために200nmで有意に厚く作れることを、意外にも発見した。
【0082】
P3HTデバイス中90wt%7nm球状ナノ結晶の光電流スペクトルも類似した性質を示す(図21a)。様々な厚さの一連のデバイスの吸収スペクトルが図21bで示されている。デバイスの厚さが増すと、EQEは波長の関数として、スペクトルの赤色領域でより顕著な応答を示す。これら球状ナノ結晶の場合、最良のデバイス厚さは160nmであり、長いナノロッドデバイスで最良の212nmと比較される。長いナノロッドは短寸法の球体と比較して改善された電子輸送性を示すため、ホッピング輸送が優位になり始める前に、デバイスは厚くして光を多く吸収させられる。これは、輸送を改善するために一次元ナノロッドを用いる効果について、証拠を更に提示している。
【0083】
本発明の別な態様において、PEDOT:PSS(ポリ(エチレン‐ジオキシ)チオフェン:ポリ(スチレンスルホン酸))ホール輸送層をITO電極の上に取り入れた光電デバイスが、ここでは開示されている。例えばスピンキャスティングにより、ナノ複合材層を沈着させられる、かなり滑らかな表面をもたらし、その作働機能がITOの場合よりもかなり良く伝導性ポリマー(P3HT)の価電子帯と合い、それによりホール伝導を促せることなどを含めて、ITO電極上へのホール伝導層(PEDOT:PSS)の取入れはいくつかの有益な効果をもたらす。もちろん、用いられる電極材料の作働機能に応じて、様々な異なるホール伝導層を選択しうる。このデバイスの非制限例は図4で示されている。本発明の最も好ましい態様は、トップコンタクトとしてアルミニウム入りPEDOT:PSSで被覆されたITOガラス基板上に、P3HT中90wt%7nm×60nmCdSeナノロッドの溶液をスピンキャストすることにより構築された、半導体ナノ結晶‐ポリマー太陽電池である。6.9%のパワー変換効率が、アルゴン流の不活性雰囲気内において、515nmで約0.1mW/cm照度下のときに得られた。この強度のとき、開回路電圧は0.5V、最大出力点の光電圧は0.4V、フィルファクターは0.6である(図23a)。プラスチックPVデバイスの場合、この単色パワー変換効率は報告された最高値の1つである。非常に少数のポリマーベース太陽電池が、2%以上の単色パワー変換効率に到達しうるにすぎない。最も信頼しうる例は、5%の効率に達した、C60およびMEH‐PPVの可溶性誘導体からのブレンドの場合である。
【0084】
本発明の別な態様では、膜厚全体にわたる半導体‐ナノ結晶の整列が外部の介助で更に制御しうる。整列の介助には、当業者に公知の介助がある。これらには、電場、磁場または延伸整列を生じさせて、ナノ結晶を整列させるために用いうるような、介助を含む。本発明の目的にとり、10〜99%のナノ結晶がそれらの縦軸を薄膜面へ法線から20度以下で整列させているかどうかで、整列が決められる。
【実験例】
【0085】
上記ではここで詳述された本発明の多くの態様を有している。上記態様の一部パラメーターが表1でまとめられている。本発明の別な非制限例は以下で詳述されている。ピリ/クロロはクロロホルム中ピリジン混合物である。
【0086】
【表1】

【0087】
当業界で公知の技術(Peng et al.Nature 2000,404,59;Peng et al.J.Am.Chem.Soc.2001,123,1389参照)により、主にトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)およびトリブチル‐またはトリオクチルホスフィンおよび少量の様々なホスホン酸からなる混合物中で有機金属先駆物質の熱分解を用いて、ナノ結晶を合成した。回収された生成物を分散させ、メタノールで3回洗浄して、過剰の界面活性剤を除去した。粒子をピリジンに溶解させてからヘキサン中で沈殿させることにより、ナノロッドの合成に用いられた界面活性剤を除去するためのナノ結晶のピリジン処理を行った。TOPO被覆CdSeナノ結晶はヘキサンに可溶性であるが、ピリジン被覆粒子はヘキサンに不溶性である。ピリジン処理を2〜3回繰り返すと、ナノ結晶表面でTOPOの95%以上をピリジンで有効に置き換えられる。
【0088】
CdTeテトラポッドを2002年11月20日付で出願された現在係属中のUSSN10/301,510で記載されたように、実質的には次のように合成した。酸化カドミウム(CdO)(99.99+%)、テルル(Te)(99.8%、200メッシュ)およびトリ‐n‐オクチルホスフィンオキシド(C2451OPまたはTOPO、99%)をAldrichから購入した。n‐オクタデシルホスホン酸(C1839PまたはODPA、99%)をOryza Laboratories,Inc.から購入した。トリオクチルホスフィン(TOP)(90%)をFlukaから購入した。用いられたすべての溶媒は無水であり、Aldrichから購入し、更なる精製なしに用いた。すべての操作は標準エアフリー技術を用いて行った。Cd/Teモル比は1:1〜5:1で変え、Cd/ODPAモル比は1:2〜1:5で変えた。Te先駆物質溶液は、テルル粉末をTOPに溶解させることで調製した(Te濃度10wt%)。混合物を250℃で30分間攪拌し、次いで冷却および遠心して、いかなる残留不溶性粒子も除去した。CdTeテトラポッドの典型的合成に際して、ODPA、TOPOおよびCdOの混合物をLiebigコンデンサーに接続された50ml三首フラスコ中120℃で20分間脱気させた。CdOが分解して、溶液が透明無色になるまで、それをAr下でゆっくり加熱した。次いで、トリオクチルホスフィン(TOP)1.5gを加え、温度を320℃まで更に上げた。その後、Te:TOP先駆物質溶液を速やかに注入した。温度が315℃に下がり、合成中ずっとこの値で維持した。加熱マントルを取除き、フラスコを速やかに冷却することにより、すべての合成を5分後に止めた。溶液を70℃に冷却した後、無水トルエン3〜4mlをフラスコへ加え、分散液をArドライボックスに移した。遠心後にナノ結晶粒子を沈殿させるために用いられる最少量の無水メタノールをその分散液に加えた。こうして、生じうるCd‐ホスホネート複合体の共沈を防いだ。上澄を除去した後、沈殿物をトルエンに2回再溶解させ、メタノールで再沈殿させた。上澄を除去した後、最終沈殿物をドライボックスに保管した。得られたすべてのCdTeテトラポッドは、クロロホルムまたはトルエンのような溶媒に易溶性であった。
【0089】
例1.本発明の一態様に従い、図2で表わされた構造を得るために、不活性雰囲気下でピリジン‐クロロホルム溶媒混合物中CdSeナノ結晶およびP3HTの溶液をITO被覆ガラス基板上にスピンキャストし、<10−6mbar下で12時間ポンプ吸引し、アルミニウムを上に蒸着させて、光電デバイスを作製した。
【0090】
例2.a.ナノ結晶合成:本発明の別な態様に従い、P3HT中長CdSeナノロッド(90wt%CdSe)を次のように合成した:Cdストック:ジメチルカドミウム0.161gをトリオクチルホスフィン(TOP)0.34gに溶解した。Seストック:Se0.2gをTOP2.367gに溶解した。三首フラスコで、トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)3.536g、ヘキシルホスホン酸(HPA)0.187gおよびテトラデシルホスホン酸(TDPA)0.357gを混合した。この混合物を加熱し、アルゴン下360℃で脱気した。Cdストックをゆっくり注入し、次いで温度を330℃に下げ、Seストックを速やかに注入した。反応を290℃で18分間進行させ、次いで熱を除去した。40℃で、メタノール約15mlをフラスコに加えた。混合物を遠心し、上澄を捨てた。メタノール8mlを加え、攪拌し、再び遠心し、上澄を捨てた。
【0091】
b.基板調製:一連の溶媒で超音波処理により、ガラス基板上のインジウムスズオキシド(ITO)を洗浄する。最終溶媒洗浄後、サンプルを乾燥させ、それらを前清浄プラズマ室中へ入れる。サンプルをプラズマで4分間フェースダウン処理する。サンプルを室から取り出した直後に、PEDOT:PSS(Bayerから購入‐電子グレード)の沈着を始める。0.2ミクロンアセテートフィルターで濾過後に3000rpmでスピンキャストによりPEDOT:PSSを沈着させる。アルゴン流下120℃で1時間の加熱により膜を乾燥させる。
【0092】
c.ナノ結晶洗浄:合成ナノロッドを半分に分割し、メタノール8mlを各半分へ加える。遠心し、上澄を捨て、次いでこのプロセスを再び繰返す。ピリジン0.35mlを各半分へ加えてナノロッドを溶解させ、120℃で加熱し、10分間にわたり随時攪拌する。各半分についてヘキサン8mlで沈殿させる。遠心し、上澄を捨てる。9.2%ピリジン含有のクロロホルム/ピリジン混合物にナノロッドを溶解して、濃度83mg/mlのナノ結晶を得る。
【0093】
d.活性層沈着:立体規則性ポリ(3‐ヘキシルチオフェン)(P3HT)をクロロホルムに30mg/mlで溶解する。この溶液と上記のナノロッド溶液(上記III参照)を用いて、ナノロッド対P3HTの9:1質量比および4.55mg/mlのP3HT濃度でクロロホルム/ピリジン混合物中ナノロッドおよびP3HTの共溶液を調製する。この溶液から、調製済み基板(上記II参照)上へ薄膜を1350rpmでスピンキャストする。
【0094】
e.電極沈着:サンプルを蒸発室中へ入れ、それらを真空下で少くとも8時間ポンプ吸引し、10−6torr以下の圧力にする。トップ電極を得るために、シャドーマスクを介して約100nm厚のアルミニウム膜を熱沈着させる。
【0095】
例3:P3HT中CdTeテトラポッド
コアおよび長さ約80nmの4アームを有するCdTeテトラポッドナノ結晶を合成し、次いでテトラヒドロフラン(THF)および酢酸エチルで数回の溶解/沈殿ステップにより洗浄した。次いで、ナノ結晶をフェニルホスホン酸リガンド含有のクロロホルム溶媒に共溶解させ、約100℃で数時間加熱した。次いで、ナノ結晶をメタノールで沈殿させ、クロロホルムに再溶解した。ナノ結晶溶液を例2で記載されたようにP3HTと混合し、スピンキャストして薄膜を作製した。基板および電極を例2のようにプロセッシングした。このサンプルのEQE値は10%以下であった。
【0096】
例4:P3HT中CdTeテトラポッド
CdTeテトラポッドを合成し、例3(THFおよび酢酸エチル)のようにトルエンおよびメタノールで洗浄した。次いで、ナノ結晶(約50mg)をヘキシルホスホン酸(HPA)リガンド約1000mg含有クロロホルム溶媒約2mlに共溶解させ、数時間加熱した。残りの操作は例3に従った。このサンプルのEQE値は10%以下であった。
【0097】
例5:P3HT中CdTeテトラポッド
例4のように進めたが、但し更にナノ結晶をトリブチルホスフィン(TBP)に溶解させ、20時間攪拌してから、メタノールで沈殿させた。次いで、例3のように進めた。このサンプルのEQE値は10%以下であった。
【0098】
例6:MEH‐PPV中CdTeテトラポッド
例3のように進めるが、但し最終メタノール沈殿後にp‐キシレン溶媒にナノ結晶を再溶解させる。そのため、この例ではフェニルホスホン酸リガンドを有することになる。p‐キシレン中MEH‐PPVの溶液を調製し、これをナノ結晶と混合すると、これは例2のように膜中へキャストブレンドしうる。
【0099】
例7:P3HT中CdSeナノロッド
例2のように進めるが、但しリガンドのピリジンはすべてのステップでn‐ブチルアミンまたはn‐ヘキシルアミンと置き換えられる。
【0100】
例8:P3HT中CdSeナノロッド
例4のように進めるが、但しCdTeナノ結晶をCdSeナノ結晶と置き換える。しかも、リガンドとして使用のためにHPAをT1と置き換える。
【0101】
例9:P3HT中CdSeまたはCdTeナノ結晶
CdSeまたはCdTeナノ結晶で例8のように進める。HPAをT5‐PAと置き換える。
【0102】
サンプルの特徴
ナノ結晶サイズ、形態および構造を、FEI Tecnai 12 120kV顕微鏡を用いてTEMにより調べた。膜をNaCl IRウィンドー上にキャストし、膜を水に浮かべ、それを銅TEMグリッドで拾い上げることにより、TEMを用いて約50〜100nm厚のCdSe‐P3HT(Aldrich製の立体規則性P3HT)ブレンドの薄膜を調べた。ブレンド膜の形態も、Digital Instruments製のNanoscope IIIaを用いて、タッピングモードで原子間力顕微鏡法により、デバイスで直接特徴付けた。膜厚はAFMで調べた。
【0103】
CdSe‐P3HTブレンド膜の吸収をAgilent Chemstation UV/Vis分光光度計で調べた。光電流測定は、電流および電圧を得るために、照明源としてActon SP150モノクロメーターへ接続された250Wタングステン光源およびKeithley 236 Source Measure Unitを用いて行った。光強度を検定Grasebyシリコンフォトダイオードで測定した。
【0104】
光ルミネッセンスクエンチング実験を、ガラス基板にスピンキャストされた厚さ100〜200nmのCdSe‐P3HT膜で行った。サンプルの絶対光ルミネッセンスを、アルゴンイオンレーザーから514nmの励起下で、deMello et al,Adv.Mater.1997,9,230で記載された方法に従い積分球で測定した。
【0105】
光電デバイスの効率は2通りで記載しうる(Rostalski,J.Sol.Energy Mater.Sol.Cells 61,87(2000)参照;その内容は参考のためその全体でここに組み込まれる)。第一は、電子に変換される光子の数を表わす数効率、外部量子効率(EQE)である。第二は、どの程度の電力が入射輻射力の単位当たりで生じるかを表わす、パワー変換効率である。EQEは電流発生のメカニズムを理解する上で重要であるが、それは市販太陽電池の効率の尺度としてまれに示される。これら市販デバイスで更に重要なことは、ソーラー条件下におけるデバイスのパワー変換効率である。
【0106】
商業用の場合、最も重要なパラメーターは光電池のパワー変換効率ηである。電力は電流および電圧の積であるため、パワー変換効率は電圧の関数として電流を測定することで求められる。パワー変換効率は入射光Plightのパワーおよび電池の電気出力Poutの式から表わせる:
【数1】

【0107】
最大理論的出力は、短絡光電流Iscおよび開回路電圧Vocの積から求められる。図24は、実験でみられる理想的および典型的双方のI‐V曲線を示している。四角内の面積は実際のデバイスの(最大出力点における)最大出力に相当し、軸および理想I‐V曲線で形成される四角外の面積は最大理想出力に相当する。実際のI‐V特性は湾曲しており、我々は最大出力を得るために電流および電圧の積を最大化しなければならない。最大理論出力と実際最大出力との比率がI‐V特性の重要な特徴である。この比率はフィルファクターFFと称され、次のように規定される:
【数2】

我々がフィルファクターを用いて光電池の最大出力を表わすと、パワー変換効率は次のようになる:
【数3】

【0108】
多量の情報がデバイスのI‐V特性内に含まれている。IscはEQEと比例し、VocおよびFFと関連しているため、それは電池のパワー効率を特徴付けるために必要なすべてのパラメーターを提供する。
【0109】
ここで記載された発明では、ここで記載された光電池が少くとも1%AM1.5グローバル照明以上のパワー変換効率を有している、とみている。更に好ましくは、その量は5%以上である。更に一層好ましくは、量は10%以上である。最も好ましくは、量は30%以内である。
【0110】
パワー変換効率は単色または白色光照明下で求められる。単色パワー変換効率は太陽電池を特徴付ける上で十分でないが、特定波長におけるデバイスの性能の尺度となる。これは、デバイスが太陽以外の条件下での使用向けである場合、例えば環境室内光下でまたはレーザー光用のパワー計として機能する小型電子機器および時計で有用である。太陽電池を特徴付ける標準法はAir Mass 1.5またはAM1.5条件下(地球の大気圏の1.5倍の距離を通過した後における太陽の発光スペクトル)のものである。標準AM1.5条件は非理想気象条件のせいで信頼しうるものとして得ることが難しいため、この太陽照明は通常シミュレートされる。
【0111】
ここで用いられた用語および表現は、制限のためではなく、説明のために用いられており、示されおよび記載された特徴の相当物またはその一部を除外するような用語および表現を用いるつもりはなく、様々な修正が請求された発明の範囲内で可能であることが認められるであろう。更に、本発明の態様の1以上の特徴が、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明のいずれか他の態様の1以上の他の特徴と組み合わせうる。
【0112】
上記すべての特許、特許出願および文献は、あらゆる目的のためにそれら全体で参考としてここに組み込まれる。上記された特許、特許出願および文献はいずれも、先行技術であるとは認められない。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】5nm CdSeおよびP3HT間における電荷移動のプロセスの概略を示した、CdSeおよびP3HTに関するエネルギーレベル図を示している。
【図2】本発明の一態様によるナノロッド‐ポリマーブレンド光電デバイスの構造の概略を示している。
【図3】a)7nm×7nm、b)8nm×13nm、c)3nm×60nm、およびd)7nm×60nm CdSeナノ結晶の低分解TEM像を示している。
【図4】クロロホルムからスピンキャストされた、P3HTに分散された90wt%7nm×7nm CdSeナノ結晶からなる膜のAFM‐TMトポグラフィー像を示している。スキャンエリアは5μmである。
【図5】クロロホルム中1vol%および8vol%ピリジンからスピンキャストされた、P3HTに分散された90wt%9nm×13nm CdSeナノ結晶からなる膜のAFM‐TMa)トポグラフィーおよびb)位相像を示している。画像は、5μmのスキャンエリアについて同一スケールで示されている。
【図6】クロロホルム中様々な濃度のピリジンからスピンキャストされた、P3HTに分散された90wt%9nm×13nm CdSeナノ結晶からなる膜の表面粗さ(白丸)を示している。これらの膜から作られたデバイスの最大EQE(黒菱形)が示されている。ラインは目のガイドとして働く。
【図7a】P3HTデバイス中(白丸)および120℃でアニーリング後(黒四角)における、90wt%3nm×60nm CdSeナノロッドに関する標準化光電流スペクトルを示している。
【図7b】P3HTデバイスおよびナノロッドのみのデバイスにおける、90wt%3nm×60nm CdSeナノロッドに関する、波長の関数として熱処理前後のEQEの比率を示している。差し込み図は、3nm×60nm CdSeおよびP3HTに関する個別l‐透過スペクトルを示している。
【図8】様々なナノロッド濃度でP3HT中における一連の3nm×60nmナノロッドデバイスの吸収(黒菱形、点線)、光電流(白丸、実線)および120℃熱処理後の光電流(黒四角、点線)に対するP3HTの相対的寄与度を示している。
【図9】515nmで〜0.1mW/cm照度下におけるP3HT中90wt%7nm×14nm CdSeのEQEを示している。差し込み図は、様々な温度で熱処理後の514nm励起下におけるP3HTサンプル中60wt%7nm×14nm CdSeのPL効率を示している。
【図10】P3HT中(白丸)および120℃熱処理後(黒四角)における、90wt%7nm×60nm CdSeナノロッドのEQEスペクトルを示している。差し込み図:0.4Vの開回路電圧および0.5のフィルファクターを含めた、このデバイスにおける、515nmで0.1mW/cm照度下の対応電流‐電圧特性
【図11a】120℃熱処理前における、厚さ212nm、271nmおよび346nmのP3HT中90wt%7nm×60nm CdSeナノロッドからのデバイスのEQEスペクトルを示している。
【図11b】120℃熱処理後における、厚さ212nm、271nmおよび346nmのP3HT中90wt%7nm×60nm CdSeナノロッドからのデバイスのEQEスペクトルを示している。
【図12a】図11aおよび11bのデバイスで120℃の加熱前後におけるEQEの相対的増加について示している。
【図12b】熱処理前後におけるEQEの絶対差を示している。
【図13a】クロロホルムからスピンキャストされた20wt%3nm×60nm CdSeナノロッドおよびP3HTの薄膜のTEMを示している。
【図13b】クロロホルム溶液中10vol%ピリジンからキャストされたときにおける、図13aの同一ナノ結晶のTEMを示している。
【図14】P3HT中60wt%10nm×10nm CdSeナノ結晶からなる100nm膜の断面のTEMを示している。
【図15a】7nm×60nm CdSeナノロッドを示している。
【図15b】P3HT中40wt% CdSeナノロッドからなる100nm膜の断面のTEMを示している。
【図16】直径7nmナノロッドの長さが7nmから30nmおよび60nmへと連続的に増加すると、515nmで0.084mW/cm照度下、ほぼ3〜54%の率で増大する、P3HTデバイス中90wt% CdSeのEQEを示している。
【図17】図17a〜cは、長さa)7nm、b)30nmおよびc)60nmの直径7nmナノ結晶のTEMを示している。スケールバーは50nmであり、すべてのTEMが同一スケールである。
【図18】ピリジン濃度の関数としてP3HTデバイス中90wt%3nm×100nm分岐CdSeナノロッドのEQEを示している。
【図19a】整列していないテトラポッドナノ結晶を示している。
【図19b】整列したテトラポッドナノ結晶を示している。
【図20】異なる膜厚のP3HTデバイス中で一連の90wt%7nm×60nm CdSeに関するEQEスペクトルを示している。
【図21a】様々な膜厚のP3HT中90wt%7nm×7nm CdSeに関するEQEスペクトルを示している。
【図21b】漸増厚さの関数として示された、これらデバイスの対応吸収スペクトルを示している。
【図22a】TOPO処理ナノ結晶に関するP3HT中40wt%5nm CdSeナノ結晶のTEMを示している。
【図22b】T1処理ナノ結晶に関するP3HT中40wt%5nm CdSeナノ結晶のTEMを示している。
【図22c】ピリジン処理ナノ結晶に関するP3HT中40wt%5nm CdSeナノ結晶のTEMを示している。
【図23a】515nmで0.1mW/cm照度下、P3HT中90wt%7nm×60nm CdSeナノロッドに関するI‐V特性を示している。
【図23b】1.7%のソーラーパワー変換効率を生じるような、5.7mA/cmの短絡電流、0.42のFFおよび0.67Vの開回路電圧を含む、シミュレートAM1.5グローバル光源で測定された、同図23aデバイスの太陽電池特性を示している。
【図24】実験でみられる理想的および典型的双方のI‐V曲線を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤被覆半導体‐ナノ結晶を溶媒で少くとも1回洗浄し、
洗浄された半導体‐ナノ結晶および半導体ポリマーを二元溶媒混合物に共溶解させ、および
該混合物を沈着させる
ことを含んでなる、ポリマー薄膜の製造方法。
【請求項2】
半導体‐ナノ結晶の少くとも一部が、約2以上のアスペクト比を有している、請求項に記載のポリマー薄膜の製造方法。
【請求項3】
半導体‐ナノ結晶の少くとも一部が、約5以上のアスペクト比を有している、請求項に記載のポリマー薄膜の製造方法。
【請求項4】
半導体‐ナノ結晶の少くとも一部が、約10以上のアスペクト比を有している、請求項に記載のポリマー薄膜の製造方法。
【請求項5】
半導体‐ナノ結晶の少くとも一部が、約5〜約50のアスペクト比を有している、請求
に記載のポリマー薄膜の製造方法。
【請求項6】
半導体‐ナノ結晶の少くとも一部が、約2〜約10のアスペクト比を有している、請求
に記載のポリマー薄膜の製造方法。
【請求項7】
半導体複合ポリマーが、約5〜約99wt%の半導体‐ナノ結晶をその中に埋め込んでな
る、請求項に記載のポリマー薄膜の製造方法。
【請求項8】
半導体複合ポリマーが、約20〜95wt%の半導体‐ナノ結晶をその中に埋め込んでな
る、請求項に記載のポリマー薄膜の製造方法。
【請求項9】
半導体複合ポリマーが、約50〜95wt%の半導体‐ナノ結晶をその中に埋め込んでな
る、請求項に記載のポリマー薄膜の製造方法。
【請求項10】
半導体複合ポリマーが、約90wt%の半導体‐ナノ結晶をその中に埋め込んでなる、請
求項に記載のポリマー薄膜の製造方法。
【請求項11】
半導体複合ポリマーが、トランス‐ポリアセチレン類、ポリピロール類、ポリチオフェ
ン類、ポリアニリン類、ポリ(p‐フェニレン)類およびポリ(p‐フェニレン‐ビニレ
ン)類、ポリフルオレン類、ポリ芳香族アミン類、ポリ(チエニレン‐ビニレン)類およ
びそれらの可溶性誘導体からなる群より選択される、請求項に記載のポリマー薄膜の
製造方法。
【請求項12】
複合ポリマーが、(ポリ(2‐メトキシ‐5‐(2′‐エチルヘキシルオキシ)p‐フ
ェニレンビニレン)(MEH‐PPV)およびポリ(3‐ヘキシルチオフェン)(P3H
T)からなる群より選択される、請求項11に記載のポリマー薄膜の製造方法。
【請求項13】
半導体‐ナノ結晶が、約20nm以上の長さを有するロッドを含んでなる、請求項に記載のポリマー薄膜の製造方法。
【請求項14】
半導体‐ナノ結晶が、約20〜約200nmの長さを有するロッドを含んでなる、請求
に記載のポリマー薄膜の製造方法。
【請求項15】
半導体‐ナノ結晶が、約60〜約110nmの長さを有するロッドを含んでなる、請求
14に記載のポリマー薄膜の製造方法。
【請求項16】
半導体‐ナノ結晶が、約7nm×60nmであるロッドを含んでなる、請求項に記
載のポリマー薄膜の製造方法。
【請求項17】
半導体‐ナノ結晶が、II‐VI族、III‐V族、IV族半導体および三元系カルコパイライ
トからなる群より選択される半導体を含んでなる、請求項に記載のポリマー薄膜の製
造方法。
【請求項18】
半導体‐ナノ結晶が、CdSe、CdTe、InP、GaAs、CuInS、CuI
nSe、AlGaAs、InGaAs、GeおよびSiからなる群より選択される、請
求項17に記載のポリマー薄膜の製造方法。
【請求項19】
半導体‐ナノ結晶が、CdSeおよびCdTeからなる群より選択される、請求項に記載のポリマー薄膜の製造方法。
【請求項20】
半導体‐ナノ結晶の一部が分岐ナノ結晶である、請求項に記載のポリマー薄膜の製
造方法。
【請求項21】
分岐ナノ結晶の一部が少くとも2本のアームを有し、該アームがすべて同一長さという
わけではない、請求項20に記載のポリマー薄膜の製造方法。
【請求項22】
分岐ナノ結晶が、すべて同一形状を有するわけではない、請求項20に記載のポリマー
薄膜の製造方法。
【請求項23】
分岐ナノ結晶が4本のアームを有し、四面体対称を有している、請求項20に記載のポ
リマー薄膜の製造方法。
【請求項24】
分岐ナノ結晶がCdSeまたはCdTeであり、約90wt%の量で埋め込まれている、
請求項23に記載のポリマー薄膜の製造方法。
【請求項25】
膜が約100〜約350nmの厚さを有している、請求項に記載のポリマー薄膜の
製造方法。
【請求項26】
膜が約200nmの厚さを有している、請求項25に記載のポリマー薄膜の製造方法。
【請求項27】
二元溶媒混合物が、ピリジン、クロロホルム、トルエン、キシレン、ヘキサン、水、ジ
クロロベンゼン、塩化メチレン、アルキルアミン:ここでアルキル鎖は分岐でもまたは非
分岐でもよく、長さ2〜20炭素である、ブタノール、メタノールおよびイソプロパノー
ルからなる群より選択される、少くとも1種の溶媒を含んでなる、請求項に記載のポ
リマー薄膜の製造方法。
【請求項28】
二元溶媒混合物の濃度が約1〜約15vol%である、請求項に記載のポリマー薄膜
の製造方法。
【請求項29】
二元溶媒混合物の濃度が約4〜約12vol%である、請求項28に記載のポリマー薄膜
の製造方法。
【請求項30】
二元溶媒混合物の濃度が約8vol%である、請求項29に記載のポリマー薄膜の製造方
法。
【請求項31】
二元溶媒混合物がクロロホルム中ピリジンを含んでなる、請求項27に記載のポリマー
薄膜の製造方法。
【請求項32】
沈着された薄膜が約60〜約200℃の温度で加熱される、請求項に記載のポリマ
ー薄膜の製造方法。
【請求項33】
沈着された薄膜が約80〜約130℃の温度で加熱される、請求項32に記載のポリマ
ー薄膜の製造方法。
【請求項34】
沈着された薄膜が約120℃の温度で加熱される、請求項33に記載のポリマー薄膜の
製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12a】
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【図12b】
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【図13a】
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【図13b】
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【図14】
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【図15a】
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【図15b】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19a】
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【図19b】
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【図20】
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【図21a】
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【図21b】
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【図22a】
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【図22b】
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【図22c】
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【図23a】
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【図23b】
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【図24】
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【公開番号】特開2009−137832(P2009−137832A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265536(P2008−265536)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【分割の表示】特願2003−579291(P2003−579291)の分割
【原出願日】平成15年3月19日(2003.3.19)
【出願人】(500210903)ザ、リージェンツ、オブ、ザ、ユニバーシティ、オブ、カリフォルニア (31)
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF CALIFORNIA
【Fターム(参考)】