説明

半導体の酸化インジウム膜の製造法、該方法に従って製造された酸化インジウム膜及び該膜の使用

本発明は、基材を、a)少なくとも1種のインジウムアルコキシド及びb)少なくとも1種の溶媒を包含する液状の無水組成物でコーティングし、任意に乾燥し、かつ250℃より高い温度で熱的に処理する半導体の酸化インジウム膜の製造法、この方法に従って製造可能な膜及び該膜の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の酸化インジウム膜の製造法、本発明による方法により製造可能な半導体のインジウム膜並びに該膜の使用に関する。
【0002】
印刷プロセスによる半導体の電子素子膜の製造は、多くの他の方法、例えば化学蒸着法(CVD)と比較して、ずっと低い製造コストを可能にする。なぜなら、この場合、半導体の堆積を連続的な印刷プロセスにおいて行うことができるからである。その上また、低いプロセス温度では、フレキシブルな基材上で作業し、かつ場合により(なかでも、非常に薄い膜の場合と、殊に酸化物半導体の場合に)印刷された膜の光学的な透明性を得る可能性が開ける。半導体の膜とは、これ以降、ゲート・ソース電圧50V及びソース・ドレイン電圧50Vにて20μmのチャネル長さ及び1cmのチャネル幅を有する素子にて1〜50cm2/Vsの電荷担体移動度を有する膜と解される。
【0003】
印刷法により製造される素子膜の材料は、そのつどの成膜特性を大きく決定づけるものであるので、その選択は、この素子膜を含有する各々の素子に重要な影響を及ぼす。印刷された半導体膜の重要なパラメーターは、該半導体の膜のそのつどの電荷担体移動度並びに該半導体の膜の製造に際して使用される印刷可能な前駆体の加工性及び加工温度である。材料は、多数の適用及び基材に適しているように、良好な電荷担体移動度を有し、かつ溶液から、そして500℃を明らかに下回る温度で製造可能であることが望ましい。同様に、多くの新しい適用に所望されていることは、作製された半導体の膜の光学的な透明性である。
【0004】
酸化インジウム(酸化インジウム(III)、In23)は、3.6〜3.75eVの大きなバンドギャップ(蒸着膜について測定)[H.S.Kim,P.D.Byrne,A.Facchetti,T.J.Marks;J.Am.Chem.Soc.2008,130,12580−12581]に基づき、将来有望とされる半導体である。その上また、数百ナノメートルの厚みの薄い膜は、550nmにて90%より大きい可視スペクトル領域中での高い透過率を有することができる。極めて高度に規則正しい配列を持った酸化インジウムの単結晶中では、おまけに160cm2/Vsまでの電荷担体移動度を測ることができる。しかしながら、これまで、かかる値を溶液からの処理によって達成することは依然としてできていない[H.Nakazawa,Y.Ito,E.Matsumoto,K.Adachi,N.Aoki,Y.Ochiai;J.Appl.Phys.2006,100,093706及びA.Gupta,H.Cao,Parekh,K.K.V.Rao,A.R.Raju,U.V.Waghmare;J.Appl.Phys.2007,101,09N513]。
【0005】
しばしば、酸化インジウムは、なかでも酸化スズ(IV)(SnO2)と一緒に半導体の混合酸化物ITOとして使用される。可視スペクトル領域中での透過性を同時に併せ持つITO膜の比較的高い導電性に基づき、とりわけ液晶表示(LCD;liquid crystal display)の分野での使用、殊に"透明電極"としての使用が見出される。たいていの場合ドープされたこれらの金属酸化物膜は、工業的には、なかでも高真空中での費用の掛かる蒸着法によって製造される。ITOコーティングされた基材への経済的な大きな関心に基づき、その間に、なかでもゾル・ゲル法に拠った、酸化インジウム含有膜のための幾つかのコーティング法が存在している。
【0006】
原則的に、印刷法による酸化インジウム半導体の製造には2つの可能性がある:1)(ナノ)粒子が印刷可能な分散液中に存在し、かつ印刷プロセス後に焼結プロセスによって所望の半導体の膜に転化する粒子構想、並びに2)少なくとも1種の可溶性の前駆生成物を印刷後に酸化インジウム含有膜へと変える前駆体構想。粒子構想は、前駆体の使用に比べて2つの重大な欠点を有している:1つ目は、粒子の分散液がコロイド不安定性を有し、これは(後の成膜特性に関して欠点である)分散添加剤の使用を必要としており、2つ目は、使用可能な粒子の多くが(例えばパッシベーション膜に基づき)焼結によって不完全な膜しか形成せず、その結果、該膜中で部分的になお粒状の構造が発生することである。これらの粒子境界では、電荷担体の移動度を抑制し、かつ一般的な膜抵抗を高める、多大な粒子−粒子−抵抗が生じる。
【0007】
酸化インジウム膜を製造するために種々の前駆体が存在する。そうしてインジウム塩以外に、例えばインジウムアルコキシドも、酸化インジウム含有膜を製造するための前駆体として使用することができる。
【0008】
例えば、Marks他は、InCl3並びにメトキシエタノール中に溶解された塩基のモノエタノールアミン(MEA)からなる前駆体溶液を製造に際して使用した素子を記載している。溶液の遠心分離(スピンコーティング)後に、相応する酸化インジウム膜が400℃での熱的な処理によって作製される[H.S.Kim,P.D.Byrne,A.Facchetti,T.J.Marks;J.Am.Chem.Soc.2008,130,12580−12581及び補足情報]。
【0009】
インジウム塩の溶液と比べて、インジウムアルコキシドの溶液は、該溶液が、より低い温度で酸化インジウム含有コーティングへと変換されることができるという利点を提供する。
【0010】
インジウムアルコキシドとその合成は、すでに前世紀の70年代から記載されている。Mehrotra他は、塩化インジウム(III)(InCl3)とNa−ORとからのインジウムトリスアルコキシドIn(OR)3の製造を記載しており、その際、Rは、−メチル、−エチル、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基及びn−ペンチル基、s−ペンチル基、t−ペンチル基を表す[S.Chatterjee,S.R.Bindal,R.C.Mehrotra;J.Indian Chem.Soc.1976,53,867]。
【0011】
Bradley他は、Mehrotra他と似た反応を報告しており、そして、ほぼ同一の出発材料(InCl3、イソプロピルナトリウム)と反応条件にて、中心原子として酸素を有するインジウムオキソクラスターを得ている[D.C.Bradley,H.Chudzynska,D.M.Frigo,M.E.Hammond,M.B.Hursthouse,M.A.Mazid;Polyhedron 1990,9,719]。
【0012】
Hoffman他は、インジウムイソプロポキシドを得るための代替的な合成経路を示しており、そして、Mehrotra他とは対照的に不溶性の白色の固体を得ている。彼らは、高分子物質[In(O−iPr)3nであると推測している[S.Suh,D.M.Hoffman;J.Am.Chem.Soc.2000,122,9396−9404]。
【0013】
前駆体法による酸化インジウム含有コーティングの多くの製造法は、前駆体から製造可能なメタレートゲルが転化工程によって相応する酸化物膜へと変換されるゾル・ゲル法に拠っている。
【0014】
そうしてJP11−106934A(Fuji Photo Film Co.Ltd.)は、ゾル・ゲル処理による透明な基材上での透明な導電性金属酸化物フィルムの製造法を記載しており、該製造法の場合、0℃より下で、金属アルコキシド又は金属塩、有利にはインジウムアルコキシド又はインジウム塩が、溶相で加水分解され、次いで加水分解物が加熱される。
【0015】
JP06−136162A(Fujimori Kogyo K.K.)は、基材上での溶液からの金属酸化物フィルムの製造法を記載しており、該製造法の場合、金属アルコキシド溶液、殊にインジウムイソプロポキシド溶液が金属酸化物ゲルへと変えられ、基材上に施与、乾燥され、かつ熱により処理され、その際、乾燥工程及び熱処理工程の前、該工程の間又は該工程の後にUV線で照射される。
【0016】
JP09−157855A(Kansai Shin Gijutsu Kenkyusho K.K.)も、基材上に施与され、かつUV線によって、そのつどの金属酸化物へと変換される、金属酸化物ゾルの中間段階を介した金属アルコキシド溶液からの金属酸化物フィルムの製造を記載する。結果生じる金属酸化物は、酸化インジウムでありうる。
【0017】
CN1280960Aは、ゾル・ゲル法による溶液からのインジウム・スズ酸化物膜の製造を記載しており、その際、金属アルコキシドの混合物が、溶媒中に溶解、加水分解され、次いで基材のコーティングのために使用され、あとに乾燥及び硬化が続けられる。
【0018】
しかしながら、ゾル・ゲル法に共通していることは、それらのゲルが、高い粘度に基づき印刷処理における使用には適しておらず及び/又は、殊に僅かに濃縮された溶液の場合には、結果生じる酸化インジウム含有膜が不均質性ひいては不十分な成膜パラメーターを有することである。不均質性とは、本件の場合、個々のドメイン中での結晶形成と解され、これは表面でRms=5nm(二乗平均平方根粗さ;英語rms−roughness=root−mean−squared roughness:平均二乗根;原子間力顕微鏡により測定)を上回る粗さをもたらす。この粗さは、一方では、酸化インジウム膜の成膜特性にマイナス作用を及ぼし(なかでも、半導体適用には小さすぎる電荷担体移動度が結果生じる)、かつ他方では、素子を作製するための更なる膜の施与にとってマイナス作用を及ぼす。
【0019】
これまでに記載されたゾル・ゲル法とは対照的に、JP11−106953A(Fuji Photo Film Co.Ltd)には、透明な基材上での導電性金属酸化物フィルムの製造法が記載されており、該製造法の場合、250℃を下回る、有利には100℃を下回る硬化温度を得るために、金属アルコキシド及び/又は金属塩を含有するコーティング組成物が透明な基材上で熱的に乾燥され、引き続きUV線又はVIS線で転化される。
【0020】
しかしながら、この方法の場合に使用される電磁線による転化は、結果生じる表面の膜に起伏があり、かつ平らでないという欠点を有する。これは、均一かつ一様なビーム分布を基材上で得ることが困難であることから生まれる。
【0021】
JP2007−042689Aは、亜鉛アルコキシドを不可避的に含有し、そのうえインジウムアルコキシドを含有していてよい金属アルコキシド溶液、並びにこれらの金属アルコキシド溶液を使用する半導体素子の製造法を記載している。金属アルコキシドフィルムは、熱的に処理され、かつ酸化物膜へと変換される。
【0022】
しかしながら、純粋な酸化インジウムフィルムは、JP2007−042689Aに記載された金属アルコキシド溶液と方法により製造されることはできない。その上また、酸化インジウム・酸化スズ膜とは対照的に、純粋な酸化インジウム膜は、すでに言及した、電荷担体移動度の低下につながる(部分)結晶化の傾向がある。
【0023】
従って、本発明が基礎とする課題は、公知の先行技術と比べて、上記先行技術の欠点を回避し、かつ殊に比較的低い温度でも半導体の、高い均質性及び僅かな粗さ(殊に粗さ≦5nm Rms)を有する透明な酸化インジウム膜を作製し、かつ印刷処理にて使用可能である、酸化インジウム膜の製造法を提供することである。
【0024】
これらの課題は、基材を、a)少なくとも1種のインジウムアルコキシド及びb)少なくとも1種の溶媒を包含する液状の無水組成物でコーティングし、任意に乾燥し、かつ250℃より高い温度で熱的に処理する、半導体の酸化インジウム膜の製造法によって解決される。
【0025】
本発明の意味における酸化インジウム膜とは、その際、言及した酸化インジウムから製造可能な金属含有膜と解され、該金属含有膜は本質的にインジウム原子もしくはインジウムイオンを有し、その際、インジウム原子もしくはインジウムイオンは本質的に酸化物で存在する。場合により、酸化インジウム膜は、完全ではない転化からのカルベン割合もしくはアルコキシド割合もなお有していてよい。
【0026】
これらの本発明により製造可能な半導体の酸化インジウム膜は、1〜50cm2/Vsの電荷担体移動度(ゲート・ソース電圧50V、ドレイン・ソース電圧50V、チャネル長さ1cm及びチャネル幅20μmにて測定)を有し、その際、これは"傾斜チャネル近似"のモデルにより測定されることができる。このために、古典的なMOSFETから公知の式が使用される。線形領域においては:
【数1】

が適用され、式中、IDはドレイン電流、UDSはドレイン・ソース電圧、UGSはゲート・ソース電圧、Ciは絶縁体の単位面積当たりの容量、Wはトランジスタ−チャネルの幅、Lはトランジスタのチャネル長さ、μは電荷担体移動度及びUTは閾値電圧である。
【0027】
飽和領域においては、ドレイン電流とゲート電圧の2乗の関係が適用され、該関係はここで電荷担体移動度を測定するために使用される:
【数2】

【0028】
本発明の意味における液状の組成物とは、SATP条件("標準環境温度及び圧力"、T=25℃及びp=1013hPa)にて液状で存在する組成物と解される。本発明の意味における無水組成物は、H2O 200ppm未満を有する組成物である。相応して溶媒の低い含水量の調整をもたらす相応する乾燥工程は当業者に公知である。
【0029】
インジウムアルコキシドは、有利にはインジウム(III)アルコキシドである。更に有利には、インジウム(III)アルコキシドは、少なくとも1個のC1〜C15−アルコキシ基又は−オキシアルキルアルコキシ基、特に有利には少なくとも1個のC1〜C10−アルコキシ基又は−オキシアルキルアルコキシ基を有するアルコキシドである。極めて有利には、インジウム(III)アルコキシドは、一般式In(OR)3のアルコキシドであり、式中、RはC1〜C15−アルキル基又は−アルキルオキシアルキル基、更にずっと有利にはC1〜C10−アルキル基又は−アルキルオキシアルキル基である。特に有利には、このインジウム(III)アルコキシドは、In(OCH33、In(OCH2CH33、In(OCH2CH2OCH33、In(OCH(CH323又はIn(O(CH333である。更にずっと有利には、In(OCH(CH323(インジウムイソプロポキシド)が使用される。
【0030】
インジウムアルコキシドは、有利には、組成物の全体の質量に対して、1〜15質量%の割合、特に有利には2〜10質量%の割合、極めて有利には2.5〜7.5質量%の割合で存在する。
【0031】
調製物は、そのうえ少なくとも1種の溶媒を含有しており、すなわち、該調製物は、1種の溶媒のみならず又は種々の溶媒の混合物も含有していてよい。好ましくは、本発明による調製物中で使用可能なのは、非プロトン性溶媒及び弱プロトン性溶媒、すなわち、非プロトン性無極性溶媒の群、すなわち、アルカン、置換されたアルカン、アルケン、アルキン、脂肪族又は芳香族の置換基を有するか又は有さない芳香族化合物、ハロゲン化された炭化水素、テトラメチルシランの群から、非プロトン性極性溶媒の群、すなわち、エーテル、芳香族エーテル、置換されたエーテル、エステル又は酸無水物、ケトン、第三級アミン、ニトロメタン、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)又はプロピレンカーボネートの群及び弱プロトン性溶媒の群、すなわち、アルコール、第一級アミン及び第二級アミン及びホルムアミドの群から選択された溶媒である。特に有利には使用可能な溶媒は、アルコール並びにトルエン、キシレン、アニソール、メシチレン、n−ヘキサン、nーヘプタン、トリス−(3,6−ジオキサヘプチル)−アミン(TDA)、2−アミノメチルテトラヒドロフラン、フェネトール、4−メチルアニソール、3−メチルアニソール、メチルベンゾエート、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、テトラリン、エチルベンゾエート及びジエチルエーテルである。極めて有利な溶媒は、イソプロパノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、t−ブタノール及びトルエン並びにそれらの混合物である。
【0032】
有利には、本発明による方法で使用される組成物は、特に良好な印刷能を得るために、DIN53019 Part1〜2に従って測定し、かつ室温にて測定して1mPa・s〜10Pa・sの粘度、殊に1mPa・s〜100mPa・sの粘度を有する。相応する粘度は、ポリマー、セルロース誘導体、又は、例えば商品名Aerosilで入手可能なSiO2の添加によって、そして殊にPMMA、ポリビニルアルコール、ウレタン増粘剤又はポリアクリレート増粘剤によって調整されることができる。
【0033】
本発明による方法で使用される基材は、有利には、ガラス、シリコン、二酸化シリコン、金属酸化物又は遷移金属酸化物、金属又は高分子材料、殊にPE又はPETから成る基材である。
【0034】
本発明による方法は、特に好ましくは、印刷法(殊にフレキソ/グラビア印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷、デジタルオフセット印刷及びスクリーン印刷)、噴霧法、回転コーティング法("スピンコーティング")及び浸漬法("ディップコーティング")から選択されるコーティング法である。極めて有利には、本発明による方法は印刷法である。
【0035】
コーティング後かつ転化前に、コーティングされた基材を、そのうえ乾燥させてよい。これに関しての相応する措置及び条件は当業者に公知である。
【0036】
酸化インジウムへの転化は、本発明によれば250℃より高い温度によって行われる。しかしながら、特に良好な結果は、転化のために250℃〜360℃の温度が使用される場合に得られることができる。
【0037】
その際、一般に、数秒ないし数時間にかけてまでの転化時間が用いられる。
【0038】
転化はそのうえ、熱的な処理中に、UV線、IR線又はVIS線を照射するか又はコーティングされた基材を空気もしくは酸化で処理することによって補うこともできる。同様に、コーティング工程後に得られた膜を熱的な処理前に水及び/又は過酸化水素と接触させ、かつ該膜を中間工程でまず金属水酸化物へと変換し、その後に熱的な変換を行うことが可能である。
【0039】
そのうえ本発明による方法に従って作製された膜の品質は、転化工程に続けて組み合わされた温度処理とガス処理(H2又はO2による)、プラズマ処理(Ar−、N2、O2又はH2プラズマ)、レーザー処理(UV領域、VIS領域又はIR領域中での波長を有する)又はオゾン処理によって更に改善することができる。
【0040】
本発明の対象は、そのうえ本発明による方法により製造可能な酸化インジウム膜である。
【0041】
そのうえ本発明による方法により製造可能な酸化インジウム膜は、電子素子の製造、殊に(薄膜)トランジスタ、ダイオード又は太陽電池の製造のために有利に適している。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明によるコーティングのIn23膜のSEM写真を示す図
【図2】比較例のコーティングのIn23膜のSEM写真を示す図
【0043】
以下の実施例は、本発明の対象を詳細に説明するものである。
【0044】
実施例1:水の影響
本発明による実施例
約15mmのエッジ長さ及び約200nmの厚さの酸化シリコン−コーティング及びITO/金からのフィンガー構造を有するドープされたシリコン基材を、イソプロパノール中で5質量%のインジウム(III)イソプロポキシド溶液100μlでスピンコーティング(2000rpm)によりコーティングした。水を排除するために、乾燥した溶媒(水200ppm未満)を使用し、そのうえコーティングをグローブボックス内で(H2O 10ppm未満にて)実施した。
【0045】
コーティングプロセス後に、コーティングされた基材を空気中で350℃の温度で1時間のあいだ焼鈍した。
【0046】
比較例:
約15mmのエッジ長さ及び約200nmの厚さの酸化シリコン−コーティング及びITO/金からのフィンガー構造を有するドープされたシリコン基材を、上記と同じ条件下で、イソプロパノール中で5質量%のインジウム(III)イソプロポキシド溶液100μlでスピンコーティング(2000rpm)によりコーティングしたが、その際、乾燥した溶媒を使用せず(含水量>1000ppm)、かつコーティングをグローブボックス内ではなく、空気中で実施するという点で相違していた。
【0047】
コーティングプロセス後に、コーティングされた基材を空気中で350℃の温度にて1時間のあいだ焼鈍した。
【0048】
図1は、結果生じる本発明によるコーティングのIn23膜のSEM写真を示し、図2は、比較例の相応するSEM写真を示す。本発明による膜の粗さはずっと少ないことが明らかに認められる。そのうえ、比較例の膜は本発明による実施例よりずっと不均質である。
【0049】
本発明によるコーティングは、2.2cm2/Vsの電荷担体移動度(ゲート・ソース電圧50V、ソース・ドレイン電圧50V、チャネル幅1cm及びチャネル長さ20μm)を示す。それに比べて、比較例の膜における電荷担体移動度は0.02cm2/Vs(ゲート・ソース電圧50V、ソース・ドレイン電圧50V、チャネル幅1cm及びチャネル長さ20μm)でしかない。
【0050】
実施例2:温度影響
約15mmのエッジ長さ及び約200nmの厚さの酸化シリコン−コーティング及びITO/金からのフィンガー構造を有するドープされたシリコン基材を、実施例1と同じ条件下で、イソプロパノール中で5質量%のインジウム(III)イソプロポキシド溶液100μlでスピンコーティング(2000rpm)によりコーティングした。
【0051】
コーティングプロセス後に、コーティングされた基材を空気中で種々の温度で1時間にわたって焼鈍した。以下の第1表にまとめられている種々の電荷担体移動度(ドレイン・ゲート電圧50V、ソース・ドレイン電圧50V、チャネル幅1cm及びチャネル長さ20μmにて測定)が結果生じる。
【0052】
【表1】

【0053】
250℃より低い温度での温度調節工程の場合、使用可能な半導体は得られない。250℃より高い温度での温度調節によって初めて、適した半導体が作製される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体の酸化インジウム膜の製造法であって、その際、
− 基材を、
− 以下のa)、b)を包含する液状の無水組成物
a)少なくとも1種のインジウムアルコキシド及び
b)少なくとも1種の溶剤
でコーティングし、任意に乾燥し、かつ250℃より高い温度で熱的に処理する、半導体の酸化インジウム膜の製造法。
【請求項2】
前記インジウムアルコキシドが、インジウム(III)アルコキシドであることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記インジウム(III)アルコキシドが、少なくとも1個のC1〜C15−アルコキシ基又は−オキシアルキルアルコキシ基、有利には少なくとも1個のC1〜C10−アルコキシ基又は−オキシアルキルアルコキシ基を有するアルコキシドであることを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記インジウム(III)アルコキシドが、一般式In(OR)3[式中、RはC1〜C15−アルキル基又は−アルキルオキシアルキル基、更にずっと有利にはC1〜C10−アルキル基又は−アルキルオキシアルキル基である]のアルコキシドであることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記インジウム(III)アルコキシドが、In(OR)3、In(OCH33、In(OCH2CH33、In(OCH2CH2OCH33、In(OCH(CH323又はIn(O(CH333、有利にはIn(OCH(CH323であることを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記インジウムアルコキシドが、前記組成物の全体の質量に対して、1〜15質量%の割合で、特に有利には2〜10質量%の割合で、極めて有利には2.5〜7.5質量%の割合で存在することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種の溶媒が、非プロトン性又は弱プロトン性の溶媒であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1種の溶媒が、イソプロパノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、t−ブタノール又はトルエンであることを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が1mPa・s〜10Pa・sの粘度を有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記基材が、ガラス、シリコン、二酸化シリコン、金属酸化物又は遷移金属酸化物又は高分子材料から成ることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記コーティングを、印刷法、噴霧法、回転コーティング法又は浸漬法により行うことを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
熱的な処理を250℃〜360℃の温度で行うことを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項記載の方法によって製造可能な酸化インジウム膜。
【請求項14】
電子素子を製造するための、殊に(薄膜)トランジスタ、ダイオード又は太陽電池を製造するための、請求項13記載の少なくとも1種の酸化インジウム膜の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−518088(P2012−518088A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550512(P2011−550512)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051432
【国際公開番号】WO2010/094583
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】