説明

半導体ウェーハの保持用グリッパー及び保持方法並びに形状測定装置

【課題】ウェーハを保持するときにグリッパーの傾きがあっても、一定の状態で安定してウェーハを保持できるグリッパー、及び保持方法、並びに形状測定装置を提供する。
【解決手段】半導体ウェーハ6の形状測定の際に半導体ウェーハ6を保持するための短冊形状の保持用グリッパー1であって、半導体ウェーハ6を保持する側がラウンド形状であり、ラウンド形状部4の側面に、側面に沿って半導体ウエーハ6のエッジ7を保持するための溝5を有し、ウェーハ6の周囲から溝5が半導体ウェーハ6のエッジ7に当接して半導体ウェーハ6を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハの形状測定に関し、特にシリコンウェーハを保持するグリッパー及びこれを用いた形状測定装置並びに半導体ウェーハの保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なウェーハ形状測定装置として例えば、直径300mmのシリコンウェーハのエッジ3箇所(120°間隔)を厚さ1mm程度の短冊状のグリッパーと呼ばれる保持具で保持し、ウェーハを回転させながら、静電容量センサでウェーハの全面をスキャンさせ、ウェーハの厚みと形状を計測することを原理とするものがあげられる。ウェーハを保持するグリッパーのウェーハとの接触部分は、短冊の直線状の一辺に曲率半径0.7mmの溝を切った形をしており、この溝にウェーハをはめて、おさえつけることによって、測定時の高速回転によるウェーハの脱落を防いでいる(特許文献1参照)。
【0003】
前記形状測定装置では、ウェーハの回転による脱落を防ぐために、グリッパーは一定の応力を以ってウェーハをおさえつけているが、その際にウェーハの形状は応力によって歪むことがある。歪みの程度を最小限に留めるためにウェーハに均等に応力がかかるよう、ウェーハの外周120度間隔でグリッパーが配置されている。
【0004】
この時、グリッパーの中心線がウェーハの半径の延長線上に位置していれば、理想位置でウェーハをグリップすることができ、ウェーハの歪みも最小限に抑えられ、形状測定値の再現性、及び装置間の相関性が良好に保たれることになる。
しかしながら、グリッパーを固定するフレクスチャーと呼ばれる部材には、調整代が設けられているため、実際、グリッパーは若干の傾きを持って取り付けられているが、グリッパーの傾きを定量的に計測することは困難である。グリッパーに傾きが生じた場合、グリッパーはグリッパーの中心でウェーハを保持することができなくなり、保持位置(グリッパーと半導体ウェーハの当接部)も120度間隔ではなくなってしまう。
【0005】
そのため、ある方向に応力の集中が発生し、ウェーハの元々の形状と応力の集中が干渉した場合、グリッパーはウェーハを、実際の形状から歪ませて保持することとなり、測定値の再現性、及び装置間の相関性を悪化させてしまう。したがって、形状測定値の再現性、及び装置間の相関性が安定しないことで、測定値に差異が生じてしまう問題が発生している。
グリッパーの基部であるフレクスチャーの傾きをコントロールすることが難しいので、グリッパーの傾きがない状態を維持管理することは極めて困難である。
【0006】
【特許文献1】特表2002−539621
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、たとえウェーハを保持するときにグリッパーの傾きがあっても、安定してウェーハを保持できるグリッパー、及び保持方法、並びに形状測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、半導体ウェーハの形状測定の際に該半導体ウェーハを保持するための短冊形状の保持用グリッパーであって、前記半導体ウェーハを保持する側がラウンド形状であり、該ラウンド形状部の側面に、該側面に沿って前記半導体ウエーハのエッジを保持するための溝を有し、ウェーハの周囲から前記溝が該半導体ウェーハのエッジに当接して半導体ウェーハを保持するものであることを特徴とする保持用グリッパーを提供する(請求項1)。
【0009】
このような、半導体ウェーハの形状測定の際に該半導体ウェーハを保持するための短冊形状の保持用グリッパーであって、前記半導体ウェーハを保持する側がラウンド形状であるものであれば、グリッパーに傾きが生じてもラウンド形状であるため、安定して半導体ウェーハを保持することができ、特定方向への応力の集中が発生するのを和らげ、半導体ウェーハが歪むのを抑えることができる。それにより、正確な測定を可能とし、測定値の再現性、及び装置間の相関性を向上させることができる。このようなラウンド形状としては、例えば、前記保持用グリッパーの長さ以上から支持ウェーハの半径以下の範囲の長さを半径とするものとすればよい。
【0010】
このとき、前記ラウンド形状が、前記保持用グリッパーの長さを半径とするものであることが望ましい(請求項2)。
【0011】
このように、前記ラウンド形状が、特にグリッパーの長さを半径とするものであれば、傾き前と同等な効果を有する当接状態で常に安定して半導体ウェーハを保持することができる。
【0012】
そして、前記溝の断面形状が、前記半導体ウェーハのエッジ形状の曲率半径よりも大きな曲率半径であることが望ましい(請求項3)。
【0013】
このように、保持用グリッパーの溝の断面形状が、前記半導体ウェーハのエッジ形状の曲率半径よりも大きな曲率半径であれば、半導体ウェーハのエッジと保持用グリッパーとが接触する部分を1箇所だけに留めることが可能であり、これにより、半導体ウェーハの形状を変形させる可能性のある応力を最小限にすることができる。
【0014】
また、前記保持用グリッパーの、少なくともウェーハのエッジに当接する溝を形成する部分の材質が合成樹脂であることが望ましい(請求項4)。
【0015】
このように、前記保持用グリッパーの、ウェーハのエッジに当接する溝を形成する部分の材質を合成樹脂にすることで、ウェーハに傷をつけたり、汚染させることがないとともに、半導体ウェーハに掛かる応力をより小さくすることができる。
【0016】
そして、半導体ウェーハを保持して形状測定する半導体ウェーハの形状測定装置であって、少なくとも前記保持用グリッパーを具備するものが望ましい(請求項5)。
【0017】
このように、半導体ウェーハを保持して形状測定する半導体ウェーハの形状測定装置であって、少なくとも前記保持用グリッパーを具備するものであれば、半導体ウェーハの測定の際の高速回転時においても、本発明の保持用グリッパーは半導体ウェーハを安定しておさえ、各グリッパーの間隔を常に一定に固定できるため、特定方向への応力の集中の発生を抑え、それによってウェーハが歪むのを防ぎ、正確な測定を可能とし、測定値の再現性、及び装置間の相関性を高いものとすることができる。
【0018】
さらに、半導体ウェーハの形状測定の際に該半導体ウェーハを、前記各保持用グリッパーの溝と前記半導体ウェーハを120°間隔で当接して保持することを特徴とする半導体ウェーハの保持方法を提供する(請求項6)。
【0019】
このように、半導体ウェーハの形状測定の際に該半導体ウェーハを前記各保持用グリッパーの溝と前記半導体ウェーハを120°間隔で当接して保持すれば、グリッパーが傾いても安定して半導体ウェーハを保持し、各グリッパーとウェーハの当接部が120°間隔で一定なので特定方向への応力の集中の発生を抑えることができる。そのため、正確な測定を可能とし、測定値の再現性、及び装置間の相関性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のように、半導体ウェーハの形状測定の際に該半導体ウェーハを保持するための短冊形状の保持用グリッパーであって、前記半導体ウェーハを保持する側がラウンド形状であり、該ラウンド形状部の側面に、該側面に沿って前記半導体ウエーハのエッジを保持するための溝を有し、ウェーハの周囲から前記溝が該半導体ウェーハのエッジに当接して半導体ウェーハを保持する保持用グリッパーであれば、たとえウェーハを保持するときにグリッパーに傾きが生じても、安定して半導体ウェーハを保持することができ、特定方向への応力の集中が発生するのを和らげ、半導体ウェーハが歪むのを抑えることができる。それにより、ウェーハ形状を正確に測定でき、測定値の再現性、及び装置間の相関性も向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下では、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
従来の保持用グリッパーでは、ウェーハの形状測定の際に、ウェーハの回転による脱落を防ぐために、グリッパーは一定の応力を以ってウェーハを抑えつけているが、その際にウェーハの形状が応力によって歪むことがある。
【0022】
グリッパーを固定するフレクスチャーには、調節代が設けられているため、実際、グリッパーは若干の傾きを持って取り付けられている。グリッパーの傾きを定量的に計測することは困難で、グリッパーに傾きが生じた場合、グリッパーはグリッパーの中心でウェーハを保持できなくなり、保持位置も120°間隔ではなくなってしまう。そのため、ある方向に応力の集中が発生し、ウェーハの元々の形状と応力の集中が干渉した場合、グリッパーはウェーハを、実際の形状から歪ませて保持することとなり、測定値の再現性、及び、装置間の相関性を悪化させてしまう。
【0023】
そこで本発明者らは、半導体ウェーハの形状測定の際に該半導体ウェーハを保持するための短冊形状の保持用グリッパーであって、前記半導体ウェーハを保持する側がラウンド形状であり、該ラウンド形状部の側面に、該側面に沿って前記半導体ウエーハのエッジを保持するための溝を有し、前記半導体ウェーハの周囲に主面に平行に配置されて、ウェーハの周囲から前記溝が該半導体ウェーハのエッジに当接して半導体ウェーハを保持する保持用グリッパーを考え出した。
【0024】
このような保持用グリッパーであれば、グリッパーに傾きが生じても、常にグリッパーでウェーハを等角度間隔で保持することができる。従って、安定した状態で半導体ウェーハを保持することができ、特定方向への応力の集中が発生するのを和らげ、半導体ウェーハが歪むのを抑制することができる。そのため、ウェーハ形状を正確に測定することができ、測定値の再現性、及び装置間の相関性を向上させることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0025】
以下では、本発明の保持用グリッパーについて図を用いて説明する。
図1(A)は本発明のウエーハ保持用グリッパーの概略図であり、図1(B)は本発明のグリッパーと半導体ウェーハの当接部の概略図である。
本発明の保持用グリッパー1は、グリッパー本体2と、半導体ウエーハ6を保持する側のウェーハ保持部3からなり、ウェーハ保持部3の端部はグリッパー1の長さを半径としたラウンド形状となっている(ラウンド形状部4)。また、ラウンド形状部4の側面には、その側面に沿ってウエーハ6を保持するための溝5が設けられている。
尚、本発明で言う保持用グリッパーの長さとは、グリッパーの固定側の中心Oから、ウェーハ保持側の端部までの長さRのことを言い、ラウンド形状は、Oを中心とした半径Rの円弧を描くように形成されている。
【0026】
ここで、少なくとも溝5を形成する部分の材質が合成樹脂であれば、半導体ウェーハ6を保持する際により応力を吸収しやすく、半導体ウェーハ6の変形をより軽減することが可能である。また、合成樹脂であれば、半導体ウェーハに傷をつけることもないし、重金属等で汚染させることもない。樹脂としては例えばフッ素樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等が挙げられる。
【0027】
また、図1(B)のように、溝5の曲率半径が半導体ウェーハ6のエッジ7の曲率半径よりも大きければ、エッジ7と溝5は一部分でのみ当接し、半導体ウェーハ6の形状の変形を生じさせる可能性のある応力の発生を最小限に留めることができる。
【0028】
次に図2に本発明の保持用グリッパーを用いる形状測定装置の概略図、図3にグリッパーの保持機構を示す。
この形状測定装置8は測定主要部として、グリッパー1(グリッパー1a、グリッパー1b、グリッパー1c)、ローター9、センサ10、アーム11で構成されている。エアーベアリングで保持されるローター9にグリッパー1が120°間隔で配設され、グリッパー1によって半導体ウェーハ6が鉛直の向きに保持される。ローター9を回転させることによって、グリッパーに保持されたウェーハを回転できるようになっている。
この場合、グリッパー1は図3に示すようにフレクスチャー14に取りつけられ、さらに板バネ15を介してローター9に配設されている。板バネ15はノーマルグリップであり、ウェーハ6をグリッパー1から開放する場合はエアシリンダー等を用いて板バネ15を押さえることによりグリッパー1からウェーハ6を取り外すことができるようになっている。
【0029】
このように、ウェーハはグリッパー1によってしっかりと保持されているため、測定時のローター9の高速回転でも、グリッパー1に保持されたウェーハ6が振り飛ばされることはない。そして、センサ10がアーム11によってウェーハ6の面に対して平行に、ウェーハ中心部12からウェーハ端部13へと水平移動し、ウェーハの表面を走査する。このような少なくとも本発明のグリッパーを具備する形状測定装置であれば、半導体ウェーハの測定の際の高速回転時においても、本発明の保持用グリッパーは半導体ウェーハを安定しておさえ、各グリッパーの間隔を常に一定に固定できるため、特定方向への応力の集中の発生を抑え、それによってウェーハが歪むのを防ぎ、測定精度の向上、測定値の再現性、及び装置間の相関性を高いものとすることができる。
【0030】
次に図4(A)を用いて、本発明のグリッパーを使用した保持方法の有効性を説明する。
いま、半導体ウェーハ6のエッジ7がグリッパー1の溝5にはまって当接し、半導体ウェーハ6がグリッパー1に保持されている。ここで、グリッパー1はフレクスチャー14によって固定されているが、フレクスチャー14には調節代があり、グリッパー1は左右に振れる。グリッパー1が左右に振れても当接部である溝5は、上記したようにラウンド形状部4の側面部に沿って形成されているため、中心Oからの距離Rは変わらず、振れがない場合と同様にウェーハを保持することができる。このためウェーハ6を押し上げたりして変形させることなく安定して保持することができる。
また、半導体ウェーハ6の周囲に120°間隔でグリッパー1を配置した場合、グリッパー1が傾いても半導体ウェーハ6を安定しておさえて、各当接部の間隔はグリッパー1の配置間隔と同様120°で一定であり、特定方向への応力の集中の発生を抑制し、半導体ウェーハ6の歪みを抑えることができる。
【0031】
一方、図4(B)には、比較のため従来のウェーハ保持側端面が直線状の平坦面を有するグリッパーを示した。このグリッパーでは、フレクスチャーの傾き等によりグリッパーがわずかでもずれた場合、図のようにウェーハを保持することになり、ウェーハの押し上げ、変形等が生じてしまい、正確な測定が難しくなる。
【実施例】
【0032】
以下に本発明の実施例および比較例をあげてさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
サンプルウェーハとして、直径300mmのシリコンウェーハを9枚を用意した。半導体ウェーハの形状測定装置として、ADE社製AFS3220を使用して、従来のグリッパーと本発明のグリッパーを用意して、Bow(Bow−3p)、及びWarp(Warp−bf)をそれぞれのグリッパーで測定して従来と本発明のグリッパーの比較を行う。
【0033】
なお、Bow−3pとは、厚み方向の中心面上の3点により中心基準面を定め、その中心基準面に対するウェーハ中心点における中心面までの変位とその方向を示す値を指す。
また、Warp−bfとは、厚み方向の中心面の最小自乗法により中心基準面を定め、その中心基準面に対するウェーハ中心面の最大変位と最小変位の差を示す値を指す。
【0034】
(実施例1、2・比較例1、2)
サンプルのシリコンウェーハを本発明のグリッパーを用いて保持して、Bow−3pの値を測定する。次に、ウェーハの表裏を反転し、同様に本発明のグリッパーで保持して、Bow−3pの値を測定する。この測定を9枚のサンプルウェーハに対してそれぞれ行った(実施例1)。
また、従来のグリッパーを用いて実施例1と同様の測定を行った(比較例1)。
さらに、Warp−bfの値についても同様の測定を行った(実施例2、比較例2)
【0035】
図5、6に比較例1、実施例1の測定結果を、図8、9に比較例2、実施例2の測定結果を示す。また、図7に比較例1と実施例1の比較を、図10に比較例2と実施例2の比較を示した。
図5、6より、表裏反転して測定すると、本発明及び従来のグリッパーを使用した場合のどちらにおいてもBow−3pの測定値に差がでていることが判る。
また、図7はそれらの表裏反転した測定値の差を、本発明のグリッパーを使用した場合と従来のグリッパーを使用した場合とで分けてグラフ化したものであり、本発明のグリッパーを用いた場合のほうが、表裏反転した測定値の差が全般的にやや小さくなっていることが判る。
このように、本発明のグリッパーを使用すれば、安定してウェーハを保持することができ、そのため表裏反転して保持してもその影響の差を抑えることができる。このため、測定値の再現性が従来よりも高く、装置間の相関性を向上させることができる。
【0036】
また、図8、9から、表裏反転して測定すると、本発明及び従来のグリッパーを使用した場合のどちらにおいてもWarp−bfの測定値に差がでていることが判る。しかし、図10により、本発明のグリッパーを使用した場合のほうが、全般的にその差が小さいことが確認できる。
このように、本発明のグリッパーを使用することにより、表裏反転して保持してもその影響の差を抑えることができ、このため、測定値の再現性が従来よりも高く、装置間の相関性を向上させることができる。
【0037】
(実施例3、4・比較例3、4)
次に、9枚のサンプルウェーハを、本発明のグリッパーで保持してぞれぞれサンプルウェーハ1枚につき各10回繰り返し測定してBow−3pを求め、各10回分のデータの最大値と最小値の差を求める(実施例3)。
そして、従来のグリッパーを使用して、実施例3と同様の測定を行った(比較例3)。
さらに、Warp−bfの値についても、本発明と従来のグリッパーを用いて同様に測定を行った(実施例4、比較例4)。
【0038】
実施例3、4、比較例3、4の測定結果を図11、12に示す。
図11から、Bow−3pの最大値と最小値の差において本発明のグリッパー使用時のほうが従来のものを使用した場合よりも、各サンプルウェーハのデータが全て小さい値を示していることがわかる。
これより、本発明のグリッパーの方が最大値と最小値の差が極めて小さく、すなわち、それだけ各サンプルウェーハの各測定時においてBow−3pの値の変動が小さいということを示しており、このことから測定値の再現性が従来よりも高いことが判る。
【0039】
また図12より、Warp−bfの最大値と最小値の差においても同様に本発明のグリッパーの場合の方が従来のものを使用した場合よりも、小さな値を示している。つまり上記と同様、Warp−bfの値の変動が小さいということを示している。このことより、本発明のグリッパーはさらに安定して押さえつけることができるため、再現性をより高めることが可能であることが判る。
【0040】
(実施例5、6・比較例5、6)
次に、サンプルウェーハのノッチの位置をずらして本発明のグリッパーを使用してBow−3pを測定した。ノッチの位置を0°から315°まで、45°ずつ回転させてサンプルウェーハを保持して測定を行い、その8回の測定値の中の最大値と最小値の差を求め、これを9枚のサンプルウェーハに対してそれぞれ行った。(実施例5)
そして、従来のグリッパーを使用して、実施例5と同様の測定を行った(比較例5)。
さらに、サンプルウェーハのWarp−bfの値についても、本発明と従来のグリッパーを用いて同様に測定を行った(実施例6、比較例6)。
【0041】
実施例5、6、比較例5、6の測定結果を図13、14に示す。
図13において、Bow−3pの最大値と最小値の差が本発明のグリッパー使用の場合のほうが従来のものを使用した場合よりも小さな値を示していることが判る。
本発明のグリッパーと従来のグリッパーを用いてノッチを45°間隔で回転させて保持させて測定をすることにより、本発明のグリッパーを使用した場合ではウェーハの保持位置に対するBow−3pの値の変動をより抑えられることがわかった。このように、本発明のグリッパーを使用することにより、測定値の安定性をより高めることができ、これは、装置間の差が低減されることを示唆している。
【0042】
図14より、Warp−bfの最大値と最小値の差においても、本発明のグリッパー使用時のほうが小さな値を示してることが判る。
上記同様、Warp−bfの値の変動が小さいことを示している。このことより、本発明のグリッパーはさらに安定度も高く、再現性をより高めるものであることが判る。
【0043】
実施例、比較例より、本発明の保持用グリッパーを用いてウェーハを保持すれば、従来のグリッパーの場合に比べて安定してウェーハを保持することができる。したがって、BowやWarpなどの測定値の変動を小さくすることができ、再現性や装置間の相関性を高めることができる。
【0044】
なお、本発明は、上記形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】(A)本発明の保持用グリッパーの概略図である。(B)本発明の保持用グリッパーと半導体ウェーハの当接部の概略図である。
【図2】形状測定装置の概略図である。
【図3】本発明の保持用グリッパーの保持機構を示す図である。
【図4】(A)本発明の保持方法の有効性を示す説明図である。(B)従来の保持方法の問題点を示す説明図である。
【図5】比較例1の表裏反転時のBow−3p測定結果である。
【図6】実施例1の表裏反転時のBow−3p測定結果である。
【図7】実施例1と比較例1の比較図である。
【図8】比較例2の表裏反転時のWarp−bf測定結果である。
【図9】実施例2の表裏反転時のWarp−bf測定結果である。
【図10】実施例2と比較例2の比較図である。
【図11】実施例3と比較例3のBow−3p(最大値−最小値)結果である。
【図12】実施例4と比較例4のWarp−bf(最大値−最小値)結果である。
【図13】実施例5と比較例5のBow−3p(最大値−最小値)結果である。
【図14】実施例6と比較例6のWarp−bf(最大値−最小値)結果である。
【符号の説明】
【0046】
1…保持用グリッパー、 2…グリッパー本体、 3…ウェーハ保持部、
4…ラウンド形状部、 5…溝、 6…半導体ウェーハ、 7…エッジ、
8…形状測定装置、 9…ローター、 10…センサ、 11…アーム、
12…ウェーハ中心部、 13…ウェーハ端部、
14…フレクスチャー、 15…板バネ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェーハの形状測定の際に該半導体ウェーハを保持するための短冊形状の保持用グリッパーであって、前記半導体ウェーハを保持する側がラウンド形状であり、該ラウンド形状部の側面に、該側面に沿って前記半導体ウエーハのエッジを保持するための溝を有し、ウェーハの周囲から前記溝が該半導体ウェーハのエッジに当接して半導体ウェーハを保持するものであることを特徴とする保持用グリッパー。
【請求項2】
前記ラウンド形状が、前記保持用グリッパーの長さを半径とするものであることを特徴する請求項1に記載の保持用グリッパー。
【請求項3】
前記溝の断面形状が、前記半導体ウェーハのエッジ形状の曲率半径よりも大きな曲率半径を有するものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の保持用グリッパー。
【請求項4】
前記保持用グリッパーの、少なくともウェーハのエッジに当接する溝を形成する部分の材質が合成樹脂であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の保持用グリッパー。
【請求項5】
半導体ウェーハを保持して形状測定する半導体ウェーハの形状測定装置であって、少なくとも請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の保持用グリッパーを具備するものであることを特徴とする半導体ウェーハの形状測定装置。
【請求項6】
半導体ウェーハの形状測定の際に該半導体ウェーハを保持する半導体ウェーハの保持方法であって、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の保持用グリッパーを前記半導体ウェーハの周囲に120°間隔で配置し、前記各保持用グリッパーの溝と前記半導体ウェーハを120°間隔で当接して保持することを特徴とする半導体ウェーハの保持方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−261271(P2006−261271A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−74503(P2005−74503)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000190149)信越半導体株式会社 (867)
【出願人】(397045987)日本エー・ディー・イー株式会社 (2)
【Fターム(参考)】