説明

半導体ウェーハの洗浄方法

【課題】 本発明は、洗浄によるウェーハの表面粗さの悪化を低減し、かつ、効果的にウェーハの洗浄を行うことができる半導体ウェーハの洗浄方法を提供する。
【解決手段】 半導体ウェーハを洗浄する方法であって、前記半導体ウェーハをSC1洗浄液により洗浄する工程と、前記SC1洗浄液により洗浄された半導体ウェーハをフッ酸により洗浄する工程と、前記フッ酸により洗浄された半導体ウェーハを、オゾン濃度が3ppm以上のオゾン水により洗浄する工程とを含み、前記SC1洗浄液による半導体ウェーハのエッチング代を0.1〜2.0nmとすることを特徴とする半導体ウェーハの洗浄方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハの洗浄方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンウェーハなどの半導体ウェーハ(以下、単にウェーハともいう)の洗浄方法としては、アンモニア水、過酸化水素水および超純水の混合洗浄液(以下、SC1(Standard Cleaning 1)洗浄液と呼ぶ)と塩酸、過酸化水素水および超純水の混合洗浄液(SC2(Standard Cleaning 2)洗浄液)によるRCA洗浄等の洗浄プロセスが多く用いられている。
【0003】
SC1洗浄では、エッチングによってウェーハ表面に付着したパーティクルをリフトオフして除去を行っており、通常パーティクルを十分に除去するためには4nm以上のウェーハのエッチングが必要とされている(特許文献1)。
【0004】
一方、デバイスのデザインルールの微細化に伴う改善品質要求の1つにウェーハの面粗さの低減がある。このウェーハの面粗さは、通常仕上げ研磨で形成されるが、SC1洗浄のウェーハ(シリコン)に対するエッチング作用によって、エッチング代(エッチング量)が多いほどウェーハの表面粗さを悪化させてしまう。
表面粗さが悪化すると、シリコンウェーハ上に形成される酸化膜の電気特性を悪化させたり、レーザー光の散乱を用いたパーティクルカウンターのパーティクル検出に悪影響を与えることが知られているため、ウェーハの表面粗さをできるだけ小さくすることが求められている。
【0005】
しかし、ウェーハ表面粗さを改善するためにSC1洗浄のエッチング量を削減すると、洗浄力が低下しパーティクルが残ってしまう。そこで、エッチング量削減による洗浄力の低下を補うため、SC1洗浄に併用している超音波による物理洗浄を強化してパーティクル除去能力を改善することにより、SC1洗浄液によるエッチング量をある程度削減してもパーティクルを除去することができるようになった。しかし、SC1によるエッチング量が2.0nm以下になると、超音波を改善してもパーティクルが除去できずに残ってしまうという問題があった。
【0006】
即ち、従来の半導体ウェーハの洗浄方法では、パーティクルの効果的な除去とウェーハ表面粗さの悪化防止は同時に達成することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−69509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであって、洗浄によるウェーハの表面粗さの悪化を低減し、かつ、効果的にウェーハの洗浄を行うことができる半導体ウェーハの洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明では、半導体ウェーハを洗浄する方法であって、前記半導体ウェーハをSC1洗浄液により洗浄する工程と、前記SC1洗浄液により洗浄された半導体ウェーハをフッ酸により洗浄する工程と、前記フッ酸により洗浄された半導体ウェーハを、オゾン濃度が3ppm以上のオゾン水により洗浄する工程とを含み、前記SC1洗浄液による半導体ウェーハのエッチング代を0.1〜2.0nmとすることを特徴とする半導体ウェーハの洗浄方法を提供する。
【0010】
このように、本発明の半導体ウェーハの洗浄方法では、SC1洗浄液による洗浄を、エッチング代を0.1〜2.0nmと低減して行うため、半導体ウェーハの表面粗さの悪化を防止することができる。また、SC1洗浄後に残った残存パーティクルはその後のフッ酸による洗浄によって除去され、その後のオゾン濃度が3ppm以上のオゾン水による洗浄で、ウェーハ表面に酸化膜をつけてウェーハ表面を疎水面から親水面にしてパーティクルの再付着を抑制することができるため、洗浄によるウェーハの表面粗さの悪化を低減し、かつ、効果的にウェーハの洗浄を行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明の半導体ウェーハの洗浄方法によれば、洗浄によるウェーハの表面粗さの悪化を低減し、かつ、効果的にウェーハの洗浄を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の半導体ウェーハの洗浄方法の一例を説明するフロー図である。
【図2】実施例1〜5及び比較例1〜9におけるウェーハ表面のパーティクル測定結果である。
【図3】実施例1〜5及び比較例1〜9におけるウェーハの表面粗さ測定結果である。
【図4】実験例6、比較例10におけるパーティクル測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明についてより具体的に説明する。
前述のように、従来、洗浄によるウェーハの表面粗さの悪化を低減し、かつ、効果的にウェーハの洗浄を行うことができる半導体ウェーハの洗浄方法が求められていた。
【0014】
そこで、本発明者が種々検討した結果、半導体ウェーハを洗浄する方法であって、前記半導体ウェーハをSC1洗浄液により洗浄する工程と、前記SC1洗浄液により洗浄された半導体ウェーハをフッ酸により洗浄する工程と、前記フッ酸により洗浄された半導体ウェーハを、オゾン濃度が3ppm以上のオゾン水により洗浄する工程とを含み、前記SC1洗浄液による半導体ウェーハのエッチング代を0.1〜2.0nmとすることを特徴とする半導体ウェーハの洗浄方法であれば、洗浄によるウェーハの表面粗さの悪化を低減し、かつ、効果的にウェーハの洗浄を行うことができることを見出した。
【0015】
本発明の半導体ウェーハの洗浄方法について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。図1は、本発明の半導体ウェーハの洗浄方法の一例を説明するフロー図である。
図1に示すように、全体の洗浄工程は大きく(A)SC1洗浄液により洗浄する工程、(B)フッ酸により洗浄する工程、(C)オゾン水により洗浄する工程の3段階に区分される。
【0016】
(A)半導体ウェーハをSC1洗浄液により洗浄する工程では、アンモニア水、過酸化水素水および超純水の混合洗浄液であるSC1洗浄液により、半導体ウェーハのエッチング代が0.1〜2.0nmとなるように半導体ウェーハを洗浄する(図1(A))。
尚、SC1洗浄液の混合比(体積比)、温度、洗浄時間等を変更することにより、半導体ウェーハのエッチング代を上記範囲内に調整することが可能である。例えば、温度は25〜65℃、混合比はアンモニア(NH濃度28%)、過酸化水素水(H濃度30%)、水の混合比で1:1:5〜20、時間は180〜360秒の範囲内で条件を調整すれば良い。
本発明において洗浄する半導体ウェーハとしては、特に限定されないが、通常研磨後のシリコンウェーハ等が挙げられる。
【0017】
半導体ウェーハのエッチング代が2.0nmを超えると、ウェーハの表面粗さが悪化し、例えばシリコンウェーハ上に形成される酸化膜の電気特性を悪化させたり、レーザー光の散乱を用いたパーティクルカウンターのパーティクル検出に悪影響を与える。また、半導体ウェーハのエッチング代が0.1nm未満であると、十分にパーティクルの除去効果が得られない。
【0018】
一方で、上述したように、従来の半導体ウェーハの洗浄方法では、SC1洗浄液によるエッチング量を2.0nm以下とすると超音波を改善してもパーティクルが除去できず残ってしまうという問題があった。
【0019】
本発明の半導体ウェーハの洗浄方法によれば、このようなSC1洗浄液によるエッチング代が2.0nm以下となる場合に発生するパーティクルの残存の問題についても、後述する(B)フッ酸による洗浄工程により解決することができる。
【0020】
次に、(B)SC1洗浄液により洗浄された半導体ウェーハをフッ酸により洗浄する工程を行う(図1(B))。
前述のように、従来の洗浄方法では、SC1洗浄液によるエッチング代が2.0nm以下である場合、超音波による物理洗浄を強化しても、パーティクルが除去できず残ってしまうという問題があった。この残ったパーティクルは、SC1洗浄工程で形成されるウェーハ表面の酸化膜と強く結びついている。そこで、本発明の半導体ウェーハの洗浄方法では、(A)SC1洗浄工程後に(B)フッ酸洗浄(HF洗浄)を追加することで、(A)SC1洗浄工程で形成された酸化膜をすべて除去することにより、酸化膜と強く結びついたパーティクルをリフトオフすることができ、残存パーティクルを除去することができる。このフッ酸洗浄ではウェーハ面粗さが悪化しないため、ウェーハの表面粗さはエッチング代を低減したSC1洗浄による表面粗さの悪化だけで抑えることができる。
用いるフッ酸の濃度は0.5〜3.0%、温度は10〜30℃が好ましく、好ましい洗浄時間は60〜180秒である。
【0021】
次に、(C)フッ酸により洗浄された半導体ウェーハを、オゾン濃度が3ppm以上のオゾン水により洗浄する工程を行う(図1(C))。
前述した(B)フッ酸による洗浄工程後は、半導体ウェーハ表面は疎水面となり、パーティクルが付着しやすい状態となってしまう。そこで、(B)フッ酸による洗浄工程後に(C)オゾン濃度が3ppm以上のオゾン水による洗浄工程、即ち、リンス槽内のオゾン濃度3ppm以上のオゾン水リンスを行うことで、短時間でシリコンウェーハ表面に酸化膜をつけて親水面にすることができ、パーティクルの再付着を抑制することができる。
用いるオゾン水の温度は、好ましくは10〜30℃であり、好ましい洗浄時間は60〜180秒である。
【0022】
従って、本発明の半導体ウェーハの洗浄方法によれば、表面粗さの悪化を抑えることができ(例えば表面粗さRms(Root Mean Square roughness))を0.1nm以下とすることができる)、かつ、ウェーハ表面のパーティクルを効果的に除去することができる。
【0023】
尚、(A)SC1洗浄液により洗浄する工程の前に、半導体ウェーハにオゾン水による洗浄を行っても良い。このようにオゾン水による洗浄を行うことで、有機物の除去も効果的に行うことができ、より洗浄効果が高くなる。また、各洗浄工程(A)、(B)、(C)の間に適宜超純水などによるリンスを行っても良い。
【実施例】
【0024】
以下、実施例、比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
(実施例1〜5)
鏡面研磨後のシリコンウェーハ表面の研磨剤等を除去する洗浄において、まずSC1洗浄液による洗浄を行い、超純水でリンスを行った後、HF洗浄、オゾン水による洗浄を連続して行い、最後に洗浄が完了したシリコンウェーハを乾燥させた。
SC1洗浄工程では、洗浄液の温度を振ってSC1洗浄液によるエッチング代を0.1〜2.0nm(0.1、0.6、1.2、1.6、2.0(それぞれ実施例1〜5))となるようにした。尚、使用したSC1洗浄液はアンモニア、過酸化水素水、水の混合比を1:1:10とした混合洗浄液である。HF濃度は1.5%、オゾン水のオゾン濃度は17ppmとした。
【0026】
(比較例1〜6、8)
シリコンウェーハにSC1洗浄液のみによる洗浄を行い、その後乾燥させた。この際、SC1洗浄液によるエッチング代を0.1〜4.5nm(0.1、0.6、1.2、1.6、2.0、3.0、4.5(それぞれ比較例1〜6、8))として洗浄を行った。
【0027】
(比較例7、9)
SC1洗浄液によるエッチング量を3.0、4.5nmとすること以外は、実施例1〜5と同様の方法でシリコンウェーハの洗浄、乾燥を行った。
【0028】
ウェーハ表面のパーティクル測定
上記実施例及び比較例における洗浄、乾燥を行った後、パーティクルカウンターで洗浄後のウェーハ表面のパーティクル(LPD(Light Point Defect)≧41nm)比較を行った。結果を、図2に示す。
比較例1〜6、8におけるSC1洗浄液のみによる洗浄の場合は、SC1によるエッチング量が0.1〜2.0nmと少ないほどパーティクルが増加している。一方、SC1による洗浄後にHF洗浄、オゾン水リンスを行った本発明の洗浄方法(実施例1〜5)では、エッチング量が2.0nm以下でもエッチング量3.0、4.5nmの場合と同等の洗浄(比較例7、9)効果があることが確認できた。
【0029】
ウェーハ表面の表面粗さ測定
上記実施例1〜5及び比較例1〜9における洗浄方法を行った後、表面粗さRms(Root Mean Square roughness)(nm)を測定した。結果を図3に示す。
表面粗さRmsはエッチング量3.0nmでは0.102nm、エッチング量4.5nmでは0.108nmであった(比較例6〜9)のに対し、エッチング量0.1nmでは0.062nmと大幅に改善された(比較例1、実施例1)。
【0030】
上記シリコンウェーハ表面のパーティクル測定結果と表面粗さ結果をまとめたものを表1に示す。
【表1】

以上の結果より、本発明の半導体ウェーハの洗浄方法によれば、洗浄によるウェーハの表面粗さの悪化を低減し、かつ、効果的にウェーハの洗浄を行うことができることが判った(実施例1〜5)。
【0031】
(実施例6、比較例10)
鏡面研磨後のシリコンウェーハに、エッチング代を0.6nmとしてSC1洗浄を行い、次いで、フッ酸による洗浄を行い、フッ酸洗浄後にリンス槽のオゾン水濃度を0〜2.8ppmまで振った洗浄を行い、乾燥させた(比較例10)。また、鏡面研磨後のシリコンウェーハに、エッチング代を0.6nmとしてSC1洗浄を行い、次いで、フッ酸による洗浄を行い、フッ酸洗浄後にリンス槽のオゾン水濃度を3.0〜17ppmまで振った洗浄を行い、乾燥させた(実施例6)。洗浄後のウェーハのパーティクルをウェーハ表面検査装置で測定した。尚、実施例6及び比較例10で使用したSC1洗浄液はアンモニア、過酸化水素水、水の混合比を1:1:10とした混合洗浄液、フッ酸濃度は1.5%である。結果を図4に示す。
オゾン水のオゾン濃度が3ppm以上の場合(実施例6)では、シリコンウェーハ表面を短時間で酸化することができ、即ち、疎水面から親水面にすることができるため、パーティクルは20個前後と安定していることがわかる。
【0032】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェーハを洗浄する方法であって、
前記半導体ウェーハをSC1洗浄液により洗浄する工程と、
前記SC1洗浄液により洗浄された半導体ウェーハをフッ酸により洗浄する工程と、
前記フッ酸により洗浄された半導体ウェーハを、オゾン濃度が3ppm以上のオゾン水により洗浄する工程
とを含み、前記SC1洗浄液による半導体ウェーハのエッチング代を0.1〜2.0nmとすることを特徴とする半導体ウェーハの洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−129409(P2012−129409A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280672(P2010−280672)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000190149)信越半導体株式会社 (867)
【Fターム(参考)】