説明

半導体ウェーハの洗浄装置及び洗浄方法

【課題】洗浄後の半導体ウェーハ上にエピタキシャル層を形成した際の表面のエピ欠陥を低減することが可能な半導体ウェーハの洗浄装置及び洗浄方法を提供する。
【解決手段】複数の半導体ウェーハ1を所定間隔をもって起立状態でX方向に整列させて収容する反応処理槽10と、反応処理槽10の底面に設けられ、反応処理槽10にフッ化水素ガスを供給するガス供給口11とを備え、ガス供給口11は、フッ化水素ガスに含まれるミスト成分を除去するフィルタ12を有する。フィルタ12によってミスト成分が除去されたフッ化水素ガスにより半導体ウェーハ1の洗浄を行なうため、洗浄後に半導体ウェーハ1上にエピタキシャル層を形成した場合の表面のエピ欠陥を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハの洗浄装置及び洗浄方法に関し、特に、フッ化水素(フッ酸)ガスを用いて半導体ウェーハ表面に形成された自然酸化膜等を除去する半導体ウェーハの洗浄装置及び洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハの製造において、半導体ウェーハの表面に形成された自然酸化膜等の酸化膜は、通常、フッ化水素(フッ酸)の水溶液によって洗浄を行なうことにより除去される。特に、窒素ドープされた半導体ウェーハ表面にエピタキャル膜を形成した場合、エピタキシャル膜内に積層欠陥(エピ欠陥)が発生しやすく、これを低減するためには、エピタキシャル膜形成前に半導体ウェーハをフッ酸で洗浄処理して半導体ウェーハの表面に形成されたCOP(Crystal Originated Particle)の内壁酸化膜を除去しておくことが有効であることが知られている。しかしながら、フッ化水素の水溶液による洗浄では、表面張力によってCOP内部に水溶液が浸透し難いため、COPの内壁に形成された酸化膜を除去しきれないという問題がある。そこで、COPの内壁酸化膜を十分に除去すべく、フッ酸の蒸気(フッ化水素ガス)を用いてウェーハを洗浄する方法が試みられている(特許文献1及び2参照)。
【0003】
フッ酸ガスによる洗浄処理は、フッ酸水溶液による洗浄処理に比べてエピ欠陥低減効果が高く、有効な技術である。しかしながら、特許文献1及び2の方法は枚葉洗浄処理のため生産性が低く、量産技術としては採用し難いという問題がある。
【0004】
一方、特許文献3には、フッ化水素の水溶液を蒸発させて生成したフッ酸ガスにより複数枚のウェーハを同時に洗浄処理することが可能な洗浄装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−326464号公報
【特許文献2】特開2009−283725号公報
【特許文献3】特開2011−60895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献3に示された洗浄装置においては、所定間隔にて起立姿勢で複数のウェーハが保持されたバスケットの下部に設けた貯留部にフッ化水素の水溶液を貯留しておき、これを蒸発させて、バスケットの下部開口から複数のウェーハにフッ酸ガスを供給して、ウェーハの洗浄を行なっている。しかしながら、特許文献3の洗浄装置による洗浄方法では、フッ酸ガス中にフッ酸の蒸気だけでなくミスト成分が含まれる可能性がある。特に、フッ化水素の水溶液を効率的に蒸発させるべくバブリング方法を用いてフッ酸ガスを生成した場合には、フッ酸ガス中にミスト成分が含まれやすくなる。このようにフッ酸ガス中にミスト成分が含まれていると、洗浄後に半導体ウェーハ上にエピタキシャル層を形成した場合、エピ欠陥が増大してしまうという問題がある。これは以下の理由によるものと考えられる。
【0007】
フッ酸ガス中にミスト成分が含まれていると、半導体ウェーハに付着したミストにフッ酸の蒸気がさらに溶け込み、ミスト中のフッ酸の濃度が非常に高くなる。一方、フッ酸による洗浄処理の前に行なわれる半導体ウェーハの研磨加工処理において、スラリー中に異物などが混入されていると、半導体ウェーハの表面に局所的な応力が加わり、部分的に変質したシリコン加工変質部位が形成される場合がある。このシリコン加工変質部位でのエッチング反応はシリコンより高く、酸化膜よりも低いため、洗浄処理において、濃化したフッ酸が加工変質部位に接触すると、加工変質部位のみが選択的にエッチングされてしまいウェーハの表面に凹状のピットとして顕在化する。このような状態の半導体ウェーハ上にエピタキシャル層を形成すると、この凹状ピットにより新たなエピ欠陥(COP内壁酸化膜起因のエピ欠陥とは異なる新たなエピ欠陥)が形成されるものと推測される。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、フッ化水素(フッ酸)ガスを用いて複数の半導体ウェーハを同時に洗浄する半導体ウェーハの洗浄装置及び洗浄方法であって、洗浄後の半導体ウェーハ上にエピタキシャル層を形成した際の表面のエピ欠陥を低減することが可能な半導体ウェーハの洗浄装置及び洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による半導体ウェーハの洗浄装置は、複数の半導体ウェーハを所定間隔をもって起立状態で第1の方向に整列させて収容する反応処理槽と、前記反応処理槽の前記第1の方向と平行な一面に設けられ、前記反応処理槽にフッ化水素ガスを供給するガス供給口とを備え、前記ガス供給口は、前記フッ化水素ガスに含まれるミスト成分を除去するフィルタを有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明による半導体ウェーハの洗浄方法は、反応処理槽内に複数の半導体ウェーハを所定間隔をもって起立状態で第1の方向に整列させ、前記反応処理槽の前記第1の方向と平行な一面からフッ化水素ガスに含まれるミスト成分を除去することが可能なフィルタを介して前記反応処理槽にフッ化水素ガスを供給することにより前記半導体ウェーハの表面を洗浄することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、フィルタによってミスト成分が除去されたフッ化水素ガスにより半導体ウェーハの洗浄を行なうため、洗浄後に半導体ウェーハ上にエピタキシャル層を形成した場合の表面のエピ欠陥を低減することができる。
【0012】
本発明においては、前記ガス供給口は前記第1の方向を長辺とし、前記第1の方向と垂直な第2の方向を短辺とする形状であり、前記ガス供給口の短辺の中央部と前記半導体ウェーハの径方向の中央部が前記第2の方向において一致していることが好ましい。特にまた、前記ガス供給口の短辺の長さが前記半導体ウェーハ径以下とすることが望ましく、特に、前記半導体ウェーハの径の10〜50%であることが好ましい。この構成によれば、複数の半導体ウェーハそれぞれの前記第1の方向と垂直な第2の方向における中央部に向かって集中的に前記フッ化水素ガスを供給され、また、フッ化水素ガスの流速が上がることから、複数の半導体ウェーハを狭い間隔で配置した場合でも、フッ化水素ガスが狭い半導体ウェーハ間において半導体ウェーハの周辺部だけでなく中央部にも供給されるため、均一な洗浄が可能となる。
【0013】
本発明においては、前記フィルタの前記第2の方向における両側を覆う遮蔽板をさらに備え、前記ガス供給口は、前記遮蔽板によって覆われることなく前記反応処理槽内に露出した前記フィルタの中央部によって構成されていることが好ましい。これによれば、遮蔽板を追加するという簡易な方法によって、ガス供給口を上記のような長方形とすることができる。
【0014】
本発明においては、前記反応処理槽の前記第1及び第2の方向と垂直な二つの側面にそれぞれ設けられた排気口をさらに備え、前記半導体ウェーハは、前記第1及び第2の方向と垂直な第3の方向において前記ガス供給口と前記排気口との間に位置するよう収容されることが好ましい。この構成によれば、半導体ウェーハの中央部を経由して周辺部へ向かうガスの流れができるため、より均一な洗浄が可能となる。
【0015】
本発明においては、前記フィルタはポアサイズが1μm以下のフッ素系樹脂製フィルタであることが好ましい。これにより、フッ化水素ガスに含まれているミスト成分を十分に除去することが可能となる。このようなフィルタとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜を用いることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フッ化水素ガスをフィルタを介して反応処理槽内に供給することにより、ミスト成分が除去されたフッ化水素ガスにより半導体ウェーハの洗浄を行なわれることから、洗浄後の半導体ウェーハ上に形成されたエピタキシャル層表面のエピ欠陥を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の好ましい第1の実施形態による半導体ウェーハの洗浄装置100の構成を示す模式的断面図である。
【図2】本発明の好ましい第1の実施形態による半導体ウェーハの洗浄装置100の反応処理槽10を図1におけるY方向から見た模式的断面図である。
【図3】本発明の好ましい第1及び第2の実施形態による半導体ウェーハの洗浄装置100及び200に供給するフッ化水素ガスを生成するためのバブリング装置300の構成を示す略斜視図である。
【図4】本発明の好ましい第1の実施形態による半導体ウェーハの洗浄装置100における問題点を説明するための模式的断面図である。
【図5】本発明の好ましい第2の実施形態による半導体ウェーハの洗浄装置200の構成を示す模式的断面図である。
【図6】本発明の好ましい第2の実施形態による半導体ウェーハの洗浄装置200におけるフッ化水素ガスの流れを説明するための概略斜視図である。
【図7】本発明の実施例1によるエピタキシャルウェーハの表面の欠陥評価の結果を示すグラフである。
【図8】本発明の実施例2による半導体ウェーハ上に形成した酸化膜のエッチング量の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の好ましい第1の実施形態による半導体ウェーハの洗浄装置100の構成を示す模式的断面図である。図2は、半導体ウェーハの洗浄装置100の反応処理槽10を図1に示すY方向(第2の方向)から見た模式的断面図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態による半導体ウェーハの洗浄装置100は、複数の半導体ウェーハ1を収容する反応処理槽10と、反応処理槽10の底部に設けられ反応処理槽10内にフッ化水素ガスを供給するガス供給口11とを備え、ガス供給口11はフッ化水素ガスに含まれるミスト成分を除去することが可能なフィルタ12を有して構成されている。
【0021】
フィルタ12は、耐薬品性(耐フッ酸性)に優れたフッ素樹脂製メンブレンフィルタであることが好ましい。特に、ポアサイズが1μm以下のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)のろ材を用いることが好ましい。ポアサイズが1μm以下であればフッ化水素ガスに含まれるミストを確実に除去することができる。
【0022】
複数の半導体ウェーハ1は、図2に示すように、反応処理槽10内において所定間隔をもって起立状態でY方向と垂直なX方向(第1の方向)に整列させて収容される。
【0023】
さらに、図1に示すように、半導体ウェーハの洗浄装置100は、ガス供給口11の下部に、洗浄装置100の外部において後述するバブリング装置等によって生成されたフッ化水素ガス16を洗浄装置100に供給するガス供給管13と、半導体ウェーハ1の洗浄処理を終えたフッ化水素ガスを排気する排気口14とを備えている。また、洗浄装置100の上面は、半導体ウェーハ1を洗浄装置100内に搬入及び洗浄装置100から外部へ搬出するために、開閉可能な蓋15で構成されている。
【0024】
排気口14は、ガス供給口11と排気口14との間に半導体ウェーハ1が位置するように配置されている。すなわち、排気口14は洗浄装置100の上面である蓋15と半導体ウェーハ1の上部との間に位置している。
【0025】
かかる構成の半導体ウェーハの洗浄装置100による半導体ウェーハ1の洗浄は、以下のようにして行なわれる。
【0026】
まず、洗浄装置100の蓋15を開き、反応処理槽10内に複数の半導体ウェーハ1を所定間隔をもって起立状態でX方向に整列するように配置した後、蓋15を閉じる。その後、反応処理槽10の下部に設けられたガス供給管13に、外部にて生成されたフッ化水素ガスを供給する(矢印16)。このとき、ガス供給管13内のフッ化水素ガスはミスト成分を含んでいる可能性がある。
【0027】
ガス供給管13に供給されたフッ化水素ガスは反応処理槽10の底面に設けられたガス供給口11からフィルタ12を介して反応処理槽10内に供給され、フィルタ12によってミスト成分が除去されたフッ化水素ガスは、各半導体ウェーハ1の表面を通過した後、上部の排気口14から排気される(矢印17)。これにより、各半導体ウェーハ1の表面が洗浄される。
【0028】
このように、本実施形態によれば、フッ化水素ガスを半導体ウェーハ1に供給する直前でフィルタ12によりフッ化水素ガスに含まれるミスト成分を除去していることにより、半導体ウェーハ1表面に部分的に濃度の高いフッ酸が付着することが防止される。これにより、その後、半導体ウェーハ上にエピタキシャル層を形成した際のエピ欠陥の発生を抑制することが可能となる。
【0029】
また、フィルタ12には、フッ化水素ガスに含まれるミストだけでなくパーティクルを除去する効果もある。これにより、フッ化水素ガスによる洗浄後、エピタキシャル層を形成する際に、マウンドの発生を抑制することが可能となる。
【0030】
ここで、ガス供給管13に供給するフッ化水素ガスを生成する装置の一例としてバブリング装置につき説明する。
【0031】
図3は、バブリング装置300の主要部の構成を示す略斜視図である。
【0032】
図3に示すように、バブリング装置300は、フッ化水素の水溶液36が収容される容器31と、容器31内にフッ化水素の水溶液36を供給するための液体原料供給口32と、容器31内にキャリアガスを供給するためのキャリアガス供給口33と、容器31内で発生したフッ化水素ガスをキャリアガスと共に排出するためのガス排出口34と、容器31内の下端部に設けられたフィルタ35を備えている。
【0033】
容器31は垂直方向に細長い円筒形状を有し、支持台31a上に設置されている。容器31の高さは、十分に高ければ容器31の上方においてフッ化水素ガスのミスト成分が少ないガス雰囲気を得ることができるが、高すぎると装置が大型化するため、適宜の高さに設定される。このため、容器31の上方にはフッ化水素ガスのミスト成分が含まれる可能性がある。
【0034】
液体原料供給口32は容器31の下端部の側面に設けられており、液体原料供給口32から供給されるフッ化水素の水溶液36は容器31内にチャージされる。キャリアガス供給口33は容器31の下端部であって容器31の中心軸から見て液体原料供給口32とは反対側の側面に設けられている。キャリアガス供給口33は容器31内に設けられたフィルタ35に接続されており、キャリアガス供給口33より供給されるキャリアガスは必ずフィルタ35を経由して容器31内に供給される。キャリアガスとしてはNガスが好ましいが、Hガス、Arガス等の他の不活性ガスを用いてもよい。
【0035】
フィルタ35は容器31内の下端部に設けられている。フィルタ35は、キャリアガス供給口33から注入されるキャリアガスをきめ細かな気泡に変換して容器31内のフッ化水素の水溶液36中に放出する。フィルタ35は耐薬品性(耐フッ酸性)に優れたフッ素樹脂製メンブレンフィルタであることが好ましい。特に、ポアサイズが1μm以下のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)のろ材を用いることが好ましい。PTFEのろ材は極めて微細な連続多孔質体であることから、キャリアガスを非常に微細な気泡に変換することができる。
【0036】
このようにして生成されたフッ化水素ガスは、容器31の上端部の側面に設けられたガス排出口34から半導体ウェーハの洗浄装置100のガス供給管13に供給される。
【0037】
次に、本発明の好ましい第2の実施形態につき説明する。
【0038】
まず、上記第1の実施形態において生じ得る問題につき説明する。第1の実施形態において、X方向に隣接して配置される複数の半導体ウェーハの間隔(ピッチ幅)が十分に大きい場合には特に問題は生じないが、複数の半導体ウェーハの間隔が小さくなると、以下のような問題が生じる。
【0039】
すなわち、複数の半導体ウェーハ1の間隔が十分に大きい場合、ガス供給口11から供給されたフッ化水素ガスは、図1に矢印17で示すように、各半導体ウェーハ1の中央部を含む表面全面に沿って上昇し、排気口14から排気される。したがって、複数の半導体ウェーハ1それぞれの表面が均一に洗浄される。
【0040】
これに対し、複数の半導体ウェーハ1の間隔が小さい場合、図4に破線矢印18で示すように、ガス供給口11から供給されたフッ化水素ガスは隣接する半導体ウェーハ1間に十分に入り込むことができない。そのため、各半導体ウェーハ1の中央部にはフッ化水素ガスが十分に供給されず、ウェーハ1の周辺部に集中して供給されてしまうため、各半導体ウェーハ1の表面の洗浄が不均一となってしまう。
【0041】
そこで、第2の実施形態として、上記のような問題を解決することが可能な半導体ウェーハの洗浄装置200を図5及び図6に示す。なお、図5及び図6においては、第1の実施例と同じ構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0042】
第2の実施形態では、図5及び図6に示すように、フッ化水素ガスを反応処理槽10内に供給するガス供給口21を反応処理槽10の底部全面とせず、Y方向に短辺を有する長方形とし、ガス供給口21の短辺の中央部と半導体ウェーハ1の径方向の中央部がY方向において一致するように配置している。
【0043】
具体的には、フィルタ12のY方向における両側を覆うように遮蔽板20を配置し、遮蔽板20によって覆われることなく反応処理槽10内に露出したフィルタ12の中央部がガス供給口21となっている。
【0044】
かかる構成によれば、複数の半導体ウェーハ1それぞれのY方向における中央部に向かって集中的にフッ化水素ガスが供給されることになるため、フッ化水素ガスは矢印22で示すように、半導体ウェーハの周辺部だけでなく中央部を含むウェーハ表面の全面に沿って上昇し、排気口14から排気される。したがって、複数の半導体ウェーハ1の表面それぞれが均一に洗浄され得る。なお、図6では、各半導体ウェーハ1のY方向における中央部に十分にフッ化水素ガスが供給される様子を強調して示している。
【0045】
ここで、ガス供給口21の幅(短辺の長さ)は、半導体ウェーハ1の径以下とすることが望ましい。これにより、各半導体ウェーハ1と接触するガス流れが増大し半導体ウェーハ1面内の均一なエッチングが図れると共に、半導体ウェーハ1と直接接触しないガス流れを排除できるのでガス使用量の低減を図ることができる。また、ガス供給口21の幅(短辺の長さ)が狭すぎると半導体ウェーハ1周辺部へのガスの供給が不足してしまうおそれがあり、また、広すぎると半導体ウェーハ1中央部へのガスの供給が不十分となってしまうことから、半導体ウェーハ1の径の10〜50%であることが好ましい。
【0046】
このように、本実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様の効果が得られることに加え、複数の半導体ウェーハ1間の間隔が狭い場合、すなわち、より多くの枚数の半導体ウェーハ1の洗浄を同時に行なう場合でも、複数の半導体ウェーハ1それぞれの表面全面に沿ってフッ化水素ガスを供給することができることから、同時に処理を行なった複数の半導体ウェーハ1のいずれも均一な洗浄が可能となる。
【0047】
また、反応処理槽10のX方向及びY方向と垂直な二つの側面に排気口14がそれぞれ設けられ、半導体ウェーハ1がX方向及びY方向と垂直なZ方向においてガス供給口11と排気口14との間に位置するよう収容されていることにより、半導体ウェーハ1の中央部を経由して周辺部へ向かうガスの流れができるため、より均一な洗浄が可能となる。
【0048】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0049】
例えば、上記実施形態では、反応処理槽10の底面にガス供給口11及びフィルタ12を設けた例を示したが、これに限られず、ガス供給口11及びフィルタ12は半導体ウェーハ1の整列方向と平行な面であれば、半導体ウェーハの搬入・搬出口をどこに設けるか等に応じて、底面以外に設けることも可能である。
【実施例】
【0050】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこの実施例に何ら限定されるものではない。
【0051】
[実施例1]
直径300mm、ボロンドープ、抵抗10Ωcm、窒素濃度10×1013atoms/cm程度の鏡面研磨シリコンウェーハ(乾燥状態)を複数用意した。これらをサンプル1A、サンプル1B、サンプル1Cに分類し、各サンプルに対して異なる条件で洗浄処理を行なった。
【0052】
まず、サンプル1Aに対しては、図1に示した構造の半導体ウェーハの洗浄装置を用いて、フッ化水素(HF)ガスにより上記シリコンウェーハの洗浄を行なった。HFガス条件は以下のとおりとした。
・HF液濃度:48%HF
・バブリングN流量(=HFガス流量):100L/min
・HFガス供給時間:2min、(置換Nガス:2min)
【0053】
サンプル1Bに対しては、図1に示した構造の半導体ウェーハの洗浄装置からフィルタ(PTFE膜)を除いた構造の洗浄装置を用いて、フッ化水素(HF)ガスにより上記シリコンウェーハの洗浄を行なった。HFガス条件は、サンプル1Aと同一とした。
【0054】
サンプル1Cに対しては、鏡面研磨後、薬液洗浄のみを行ない、フッ化水素ガスによる洗浄は実施しなかった。
【0055】
サンプル1A〜1Cのいずれにおいても、反応処理槽内にシリコンウェーハを10mmのピッチ幅で20枚装填し、上記の洗浄処理を行なった。
【0056】
上記洗浄処理を行なった後、それぞれ、オゾン洗浄により残渣(HSiF等の反応生成物)を除去し、さらに、水素ガス雰囲気、1150℃で1分の水素ベーク処理を行なった。
【0057】
続いて、以下の条件で各シリコンウェーハ上にエピタキシャル膜を成長した。
・温度:1150℃
・ソースガス:トリクロロシランガス
・ドーパントガス:ジボランガス
・キャリアガス:水素ガス
・エピタキシャル膜厚み:2μm
【0058】
その後、エピタキシャル膜表面の欠陥評価を、レーザーテック社製のMAGICS(商品名)により行った。
【0059】
欠陥評価の結果、図7に示すように、サンプル1Cではエピ欠陥数が非常に多く発生(平均21個)しているのに対し、サンプル1Bではエピ欠陥数が少なく(平均6個)なっている。これに対し、サンプル1Aではエピ欠陥数がサンプル1Bよりもさらに減少しており(平均2個)、非常に均一性の高い洗浄が可能であることが確認された。
【0060】
[実施例2]
実施例1で使用したウェーハと同規格のウェーハ
表面に、CVD法により、厚さ30nmの酸化膜を形成した酸化膜付きシリコンウェーハのサンプルを複数用意し、各サンプルに対して以下の3通りの方法により洗浄処理、すなわち、酸化膜のエッチング処理を行なった。
【0061】
まず、サンプル2Aについては、図1に示す半導体ウェーハの洗浄装置100を用い、ウェーハのピッチ幅を10mm、装填枚数を20枚とし、フッ化水素(HF)ガスにより洗浄を行なった。
【0062】
サンプル2Bについては、図1に示す半導体ウェーハの洗浄装置100を用い、ウェーハのピッチ幅を5mm、装填枚数を40枚とし、フッ化水素(HF)ガスにより洗浄を行なった。
【0063】
サンプル2Cについては、図5に示す半導体ウェーハの洗浄装置200を用い、ガス供給口21の幅を50mmに調整したものを用いた。ウェーハのピッチ幅を5mm、装填枚数を40枚とし、フッ化水素(HF)ガスにより洗浄を行なった。
【0064】
各サンプルの洗浄において、HFガス条件は、いずれもサンプル1Aと同一とした。
【0065】
各洗浄装置によるガスエッチング処理後のウェーハ表面を、分光エリプソメータ評価手法を用いて、面内121点についてのウェーハ面内エッチング量評価を実施した。
【0066】
サンプル2Aの評価結果を図8(a)に、サンプル2Bの評価結果を図8(b)に、サンプル2Cの評価結果を図8(c)に示す。図8において、○印は十分なエッチング量が確保された状態を示し、△印はエッチング量が多少不足している状態を示し、■印はエッチング不足であることを示している。
【0067】
図8(a)の結果から、サンプル2Aのようにピッチ幅が広い(10mm)場合、図1に示すような槽全体均一ガス流タイプの洗浄装置により、ウェーハ面内で均一なエッチングが行なわれることが確認された。
【0068】
図8(b)の結果から、サンプル2Bのようにピッチ幅が狭い(5mm)場合には、図1に示すような槽全体均一ガス流タイプの洗浄装置では、ウェーハ面内でエッチングにバラツキが生じ、特にウェーハ中央部においてエッチング不足となることが確認された。
【0069】
図8(c)の結果から、サンプル2Cのようにピッチ幅が狭い(5mm)場合でも、図5に示すような中央集中ガス流タイプの洗浄装置を用いることにより、ウェーハ面内で均一なエッチングが行なわれることが確認された。
【符号の説明】
【0070】
100,200 半導体ウェーハ洗浄装置
1 半導体ウェーハ
10 反応処理槽
11 ガス供給口
12 フィルタ
13 ガス供給管
14 排気口
15 蓋
16,17,18,22 ガスの流れ
20 遮蔽板
21 ガス供給口
22 矢印
300 バブリング装置
31 容器
31a 支持台
32 液体原料供給口
33 キャリアガス供給口
34 ガス排出口
35 フィルタ
36 水溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体ウェーハを所定間隔をもって起立状態で第1の方向に整列させて収容する反応処理槽と、
前記反応処理槽の前記第1の方向と平行な一面に設けられ、前記反応処理槽にフッ化水素ガスを供給するガス供給口とを備え、
前記ガス供給口は、前記フッ化水素ガスに含まれるミスト成分を除去するフィルタを有することを特徴とする半導体ウェーハの洗浄装置。
【請求項2】
前記ガス供給口は前記第1の方向を長辺とし、前記第1の方向と垂直な第2の方向を短辺とする形状であり、前記ガス供給口の短辺の中央部と前記半導体ウェーハの径方向の中央部が前記第2の方向において一致していることを特徴とする請求項1に記載の半導体ウェーハの洗浄装置。
【請求項3】
前記ガス供給口の短辺の長さが前記半導体ウェーハ径以下であることを特徴とする請求項2に記載の半導体ウェーハの洗浄装置。
【請求項4】
前記フィルタの前記第2の方向における両側を覆う遮蔽板をさらに備え、前記ガス供給口は、前記遮蔽板によって覆われることなく前記反応処理槽内に露出した前記フィルタの中央部によって構成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の半導体ウェーハの洗浄装置。
【請求項5】
前記反応処理槽の前記第1及び第2の方向と垂直な二つの側面にそれぞれ設けられた排気口をさらに備え、前記半導体ウェーハは、前記第1及び第2の方向と垂直な第3の方向において前記ガス供給口と前記排気口との間に位置するよう収容されることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の半導体ウェーハの洗浄装置。
【請求項6】
前記反応処理槽の前記一面は前記反応処理槽の底面であり、前記排気口は前記洗浄装置の上面と前記半導体ウェーハとの間に位置していることを特徴とする請求項5に記載の半導体ウェーハの洗浄装置。
【請求項7】
前記フィルタはポアサイズが1μm以下のフッ素系樹脂製フィルタであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の半導体ウェーハの洗浄装置。
【請求項8】
前記フィルタはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜であることを特徴とする請求項7に記載の半導体ウェーハの洗浄装置。
【請求項9】
反応処理槽内に複数の半導体ウェーハを所定間隔をもって起立状態で第1の方向に整列させ、
前記反応処理槽の前記第1の方向と平行な一面からフッ化水素ガスに含まれるミスト成分を除去することが可能なフィルタを介して前記反応処理槽にフッ化水素ガスを供給することにより前記半導体ウェーハの表面を洗浄することを特徴とする半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項10】
前記複数の半導体ウェーハそれぞれの前記第1の方向と垂直な第2の方向における中央部に向かって集中的に前記フッ化水素ガスを供給することを特徴とする請求項9に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項11】
前記フィルタはポアサイズが1μm以下のフッ素系樹脂製フィルタであることを特徴とする請求項9又は10に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項12】
前記フィルタはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜であることを特徴とする請求項9乃至11のいずれか一項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−58692(P2013−58692A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197409(P2011−197409)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】