説明

半導体ウェーハ収納容器

【目的】ウェーハの形状が変わっても保持力や作業性に影響を与えることがなく、輸送中に受けるあらゆる方向からの振動・衝撃を吸収してウェーハの清浄性を保持しながら安全に輸送することのできる半導体ウェーハ収納容器を提供する。
【構成】この半導体ウェーハ収納容器は、これを構成する、上蓋1、容体2、内箱3、上部および下部緩衝板9、10の内のいずれか、または2以上の部材間に伸縮性膜13を張設し、この伸縮性膜13に半導体ウェーハWの周縁部の少なくとも一点を接触させることで、半導体ウェーハWを容器内に支持するものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は半導体ウェーハ(以下、ウェーハとする)を損傷、汚染から防いで安全に輸送し保管し取り扱うのに有用なウェーハ収納容器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】半導体単結晶棒をスライスしたウェーハは集積回路を作るためにユーザーに向けて大量に輸送する場合が多く、このとき薄くて脆いウェーハを損傷、汚染から守るために十分な配慮が必要とされる。そこでウェーハ収納容器として、例えば、特開昭48-21466号、実開昭52−148043号および同58−175627号各公報に記載のように、容器本体の内側面に複数枚のウェーハを一定間隔で分離配列するためのガイド手段を設けると共に、ウェーハと容器本体および/または蓋体との間にフォーム板、弾性緩衝板またはゴム状弾性棒状体等を、ガイド手段を横切る方向に設けたものが提案された。これらの収納容器は構造的に簡単な反面、外部の振動等によるウェーハの損傷、汚染に対して完全なものとはいえず、またウェーハの収納容器への挿脱の自動化が困難である。
【0003】このため、最近は図8に示されるような構造の収納容器、すなわち収納する多数のウェーハWを周側縁で支持するひだ状の側壁aを備えた内箱bと、内箱bの内側底部に装着されてウェーハWの下縁を支持する下部緩衝板(受け台)cと、内箱bを所定の場所に収容・係止する容器本体dと、パッキンeを介して容器本体dと係合し、この上面を被覆すると共に、内面に装着された上部緩衝板(ウェーハ抑え)fにより内箱bに収納されたウェーハWの上縁を保持する蓋体gとからなるものが広く使用されるようになってきている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記緩衝板には、上記のほか円筒状、衝立状、三角柱状、蛇腹状等、種々の形状のものが提案されているが、いずれもウェーハの直径方向にかかる振動・衝撃に対しては緩衝能力を発揮するものの、ウェーハの厚み方向にかかる振動・衝撃に対しては不完全で、ウェーハの破損や微粒子の生成を抑制できず、ウェーハの清浄性を保持しながら安全に輸送するには不十分であった。また、ウェーハWの形状には、基準位置を示す方式として、図2に示すような頂部の一部にだけ切り欠きのあるノッチ式と、図1に示すような上部がフラットになったオリフラ式とがあるため、上部緩衝板の形状によっては両方式の保持力に差が生じ、一方では満足しても他方ではウェーハの回転やガタつきによる発塵汚染が生ずるという問題があった。したがって、本発明の目的は、ウェーハの形状が変わっても保持力や作業性に影響を与えることがなく、輸送中に受けるあらゆる方向からの振動・衝撃を吸収してウェーハの清浄性を保持しながら安全に輸送することのできる、ウェーハ収納容器を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題の解決のため鋭意研究の結果、半導体ウェーハ収納容器を構成する、上蓋、容体、内箱、上部および下部緩衝板の内のいずれか、または2以上の部材間の適宜な部位に、ウェーハを汚染から守って保持固定するのに十分な強度、伸度を有する材料からなる伸縮性膜を設け、半導体ウェーハを周縁部の少なくとも一点で保持するようにすれば、輸送中に受けるあらゆる方向からの振動、衝撃を吸収してウェーハを破損や汚染から保護し、安全に輸送できることを見出し、本発明に到達したものである。すなわち、本発明によるウェーハ収納容器は、半導体ウェーハ収納容器を構成する、上蓋、容体、内箱、上部および下部緩衝板の内のいずれか、または2以上の部材間に伸縮性膜を張設し、この伸縮性膜に半導体ウェーハの周縁部の少なくとも一点を接触させることで、半導体ウェーハを容器内に支持することを特徴とするものである。
【0006】以下、本発明のウェーハ収納容器の一実施態様を示した図1に基づいて説明する。このウェーハ収納容器は上蓋1と容体2および容体2に収納される内箱3とから構成され、上蓋1と容体2のそれぞれの開口周縁には帯状段部4、5があって、パッキン6を介して互いに係合閉止できるようになっている。内箱3は幅方向の縦断面が椀状をしていて、その椀側壁7、7の内側にはウェーハWの配列方向に多数のひだ8が互いに対称に設けられていて、それぞれの隣接するひだ8、8間に各ウェーハWをその左右両側縁で個別に収容・支持し得るようになっている。一方、上蓋1の下面には上部緩衝板9が、内箱3の内側底部には下部緩衝板10が嵌合爪11によって着脱自在に装着されている。上部および下部の両緩衝板9、10としては、いずれもポリプロピレン製等の枠12の少なくとも両側またはその全周にわたって、例えば、厚さ50μm 、比重1.20、引っ張り強さ 500kg/cm2、破断伸び 520%(いずれもASTM規格による)の特性を有するウレタンフィルム等の伸縮性膜13が、緩みを生じない程度の適度な張力をかけながら 160℃のヒートシール温度で熱溶着されたものが用いられる。
【0007】上部および下部の両緩衝板9、10の取付位置は、ウェーハWを収納した内箱3を容体2に収納した際に、各ウェーハWの頂縁または底縁が、伸縮性膜13の下面または上面に接して、それぞれの収納溝において安定的に納まる程度の高さであることが望ましい。また、伸縮性膜13の両緩衝板9、10への取り付けには、ウェーハWに対し最適な保持力となるようにするのがよく、一般にはウェーハ1枚当たりの保持力が10ないし 1,000g程度が望ましく、例えば直径8インチのウェーハ25枚の収納において、上下の緩衝板9、10に挟持された状態でウェーハ1枚当たり 200gとなるようにすればよい。
【0008】内箱3の全部のひだ8、8間にウェーハWを収納した後、この内箱3を容体2内に設置し、容体2に上部緩衝板9を装着した上蓋1をかぶせていくと、図2R>2(a)に示すように、上部および下部緩衝板9、10に張設された伸縮性膜13は、まず内箱3に収納された各ウェーハWの頂縁および底縁と接触し、さらに上蓋1を押し込んでいくと、その押し込み量と共に伸縮性膜13はウェーハWの頂縁および底縁での接触面積が増え[図2(b)]、同時にウェーハWにかかる保持力が増加し、最後には上蓋1が容体2に嵌合した状態で、ウェーハ1枚当たり 200gの設定保持力に達して密閉される[図2(c)]。この過程でウェーハWの頂縁および底縁に接触した伸縮性膜は、その接触部において、よく密着し、その後の押し込みによっても、接触位置が移動することなくウェーハの周りにおける接触面積が増すことで、ウェーハを保持していくため、収納中にウェーハと伸縮性膜との相対的な移動が少なく、したがって、これらの摩擦摩耗による微粒子汚染の発生を最小限に抑えられる。こうして収納されたウェーハは、その配列位置を内箱の溝によって規制されながら上下の緩衝板の伸縮性膜によって内箱の溝のクリアランスの範囲で外部から振動、衝撃が吸収され、ウェーハを安全に搬送することができる。
【0009】次に、本発明のウェーハ収納容器の別の実施態様について説明する。図3(a)〜(d)は、従来広く用いられてきた図8に示すタイプのウェーハ収納容器において、内箱bのひだa、a間または内箱bの底部に装着される下部緩衝板cの溝間に、本発明で適用される伸縮性膜を張設することにより、振動、衝撃に対する吸収能を改善した例である。図3(a)〜(c)に示すように、内箱3の椀側壁7の内面のひだ8、8間のウェーハWが接触する部分に伸縮性膜13を設けて、この伸縮性膜13を介してウェーハWを収納する。この内箱3を上記ウェーハ収納容器の内箱bの代わりに使用すると、ウェーハWの周側縁は内箱3を構成する材料と直接接触することがなくなるので、摩擦摩耗による微粒子発生の汚染を低減すると共に、外部からの振動衝撃を吸収することができる。この構成は、図3(a)、(d)に示される、多数の溝14を備えた下部緩衝板15にも同様に適用することができ、上記ウェーハ収納容器の下部緩衝板cの代わりに使用される。この場合は各ウェーハWの底縁が伸縮性膜を介して下部緩衝板15の各溝14に収納・支持されることになる。
【0010】同様のことは、図8のウェーハ収納容器の上部緩衝板fにも適用して改造することができる。すなわち、この上部緩衝板は、図4(a)〜(c)に示すように、左右対称の櫛状片16の各櫛の先端部にあるウェーハ収納溝17に伸縮性膜13を設けたものである。また、同じ上部緩衝板において、図4(c)に示すように、左右対称の櫛状片16の先端部間に伸縮性膜13を張設して、櫛状片自体の弾性力と伸縮性膜の特性との二重の機能でウェーハWを保持することもできる。なお、前述した各ひだ8、8間または各溝14、17に設ける伸縮性膜13は、これらの各々について設けてもよいし、隣接するひだ8または溝14、17を含む全表面を被覆して設けてもよい。また、図3〜図4の各図に示した構成は、適宜組み合わせて用いてもよい。さらに、図1に示した構造の上部緩衝板9または下部緩衝板10を、それぞれ図8に示した既存の上部緩衝板fまたは下部緩衝板cに代えて使用することで、上記と同様の改善を図ることもできる。
【0011】従来のウェーハ収納容器に用いられる既存部品への伸縮性膜の応用例として、上蓋1または容体2の内部に伸縮性膜13を介してウェーハWの周縁を支持する既存部品を配設することもできる。図5(a)は上蓋1および容体2の開口縁にそれぞれ伸縮性膜13a、13bを張設した後、ウェーハWを収納した内箱3を、容体2の伸縮性膜13b面上より、これを介して押し込み、上蓋1をすることで、ウェーハWの上縁を伸縮性膜13aで抑えるようにしたものである。図5(b)は同様の上蓋1に上部緩衝板18を、容体2にウェーハWを収納した内箱3を、それぞれ伸縮性膜13a、13bを介して押し込み、容体2に上蓋1をすることで、ウェーハWの周縁を上部緩衝板18と内箱3を介して伸縮性膜13a、13bで支持するようにしたものである。
【0012】図示されていないが、図5(a)で用いたのと同じ上蓋1および/または容体2に、ウェーハWと前述した上部緩衝板9および/または下部緩衝板10を、伸縮性膜13aおよび/または13bを介して押し込み、容体2に上蓋1をすることで、ウェーハWの周縁を上部緩衝板9および/または下部緩衝板10を介して伸縮性膜13a、13bで支持するようにすることもできる。図5(c)は、下面にウェーハWの上縁を受け入れる円弧状の溝を多数ウェーハWの配列方向に連設した構造の上部緩衝板19で、その左右両側縁が上蓋1の両側壁とそれぞれ伸縮性膜13aを介して保持されるが、図5(b)の上部緩衝板18のように伸縮性膜13aとウェーハWの間に介在させて用いてもよい。前述した上部緩衝板9、18、f、下部緩衝板10、15、c、内箱3等も、この上部緩衝板19と同様に、それぞれの両側縁を上蓋1、容体2の両側壁とそれぞれ伸縮性膜13a、13bを介して保持することもできる。
【0013】図6(a)〜(b)は、図5に示したように、上蓋1および容体2のそれぞれの両側壁に伸縮性膜13a、13bを張設し、従来のウェーハ収納容器に用いられる既存部品を全く使用せずに、この両伸縮性膜13a、13b間にウェーハWを直接介在させて保持する場合を示している。この例では、上蓋、容体の内壁の適宜の位置に伸縮性膜を張設して上下方向からウェーハを保持する。これは構造も簡単で、特に1枚入り等、少数のウェーハを収納する容器として適している。
【0014】このほか、容器にウェーハを個別に収納する方式として、図7(a)に示す細長い枠20に伸縮性膜13を張った緩衝板21を、上蓋1および容体2のそれぞれの両側壁に取り付け、この2個の緩衝板21a、21bの伸縮性膜13a、13b間にウェーハWを介在させて保持することもできる[図7(b)参照]。図7(c)〜(d)は細長い枠の側面形状をウェーハWと近似する曲率の半円部分を備えた旭日状や三角形状とした緩衝板22、23を用いた場合であり、これによればウェーハWに対し局部的にストレスをかけることなく外周にわたって比較的均一な荷重で保持することができる。このような枠20をウェーハの厚み方向に必要数、重積・整列させた構造の緩衝板24[図7(e)参照]を用いれば、同時に多くのウェーハを収納することもできる。
【0015】図1および図2〜図7に示した各態様を要約すれば次の通りである。
1)上蓋および容体の各々の側壁間に伸縮性膜が設けられ、2枚の伸縮性膜の間に半導体ウェーハが介在する請求項1記載の半導体ウェーハ収納容器(図6)。
2)半導体ウェーハが、内箱、上部緩衝板および下部緩衝板の内の少なくとも1個の部材と共に介在する上記1)記載の半導体ウェーハ収納容器(図5aおよびb)。
3)上蓋および容体の各々の側壁間に長方形状の枠体が取り付けられ、この枠体の少なくとも両側に伸縮性膜が張設されている上記1)記載の半導体ウェーハ収納容器(図7b)。
4)長方形状の枠体が、半導体ウェーハと近似する曲率の半円部を備えた旭日状の側面形状を呈する上記3)記載の半導体ウェーハ収納容器(図7c)。
5)長方形状の枠体が、V字状の側面形状を呈する上記3)記載の半導体ウェーハ収納容器(図7d)。
6)長方形状の枠体が、多数整列して柵状を呈し、各細溝に伸縮性膜が張設されている上記3)記載の半導体ウェーハ収納容器(図7e)。
【0016】7)上蓋および/または容体の各々の側壁間に、それぞれ伸縮性膜を介して上部緩衝板、下部緩衝板、内箱のいずれか一つが設けられている請求項1記載の半導体ウェーハ収納容器(図5c)。
8)上部緩衝板として左右対称の櫛状片の先端部間に伸縮性膜を設けたものを使用する請求項1記載の半導体ウェーハ収納容器(図4c)。
9)内箱、上部緩衝板および下部緩衝板の内の少なくとも1個の部材として、そのひだまたは溝間に伸縮性膜が張設されているものを使用する請求項1記載の半導体ウェーハ収納容器(図3、図4aおよびb)。
10)上部緩衝板および/または下部緩衝板として、枠体の少なくとも両側に伸縮性膜が張設されてなるものを使用する請求項1記載の半導体ウェーハ収納容器(図1R>1)。
【0017】これらの本発明で使用される伸縮性膜の材質としては、例えば、PE、PP、セルロースアセテート、フッ化エチレン、ポリカーボネート、ナイロン、ポリビニルアルコール、塩化ビニル、ポリスチレン、アイオノマー、ポリイミド、ポリウレタン等の熱可塑性プラスチック材料、シリコーンゴムをはじめとする各種ゴム材料等の熱硬化性プラスチック材料等が挙げられる。これらの内では、長時間の保持による変形や歪みが少ないものとして、特にウレタン、アイオノマーの膜(フィルム)が好ましい。これらは透明性もあるので、上蓋や容体も透明材料とすれば、収納するウェーハを外部から透視することもできる。また、外部からの振動、衝撃を吸収するのに十分な柔軟性と強度を満たすための機械的特性として、引っ張り強さが 100kg/cm2以上、とくには 300kg/cm2以上、破断伸びが 100%以上、とくには 300%以上、引き裂き伝播が 10gm/25μm 以上、とくには 30gm/25μm 以上、引き裂き強さが1kg/mm 以上、とくには10kg/mm 以上、耐折強さが1,000 回以上、とくには10,000回以上のものが望ましい。
【0018】ここで、引っ張り強さが 100kg/cm2未満のものでは、ウェーハを直接保持したり、内箱等の構成部分を介して保持する場合に、それらの保持力や荷重が伸縮膜の強度を超えて破断する恐れがある。破断伸びが 100%未満のものでは、ウェーハや構成部品を保持する際に、十分な伸びのストロークが得られないために接触面積が減り、保持が不十分となったり、外部から受ける振動や衝撃を十分に吸収することができない。また、引き裂き伝播が 10gm/25μm 未満では何らかの原因で伸縮膜に亀裂が生じた場合にウェーハを支える保持力や構成部品を支持する荷重によって亀裂が伝播し、収納するウェーハを破壊する恐れがある。引き裂き強さが1kg/mm 未満では、例えばウェーハのエッジ等鋭利な部分に接した場合に伸縮膜が亀裂を生じてしまうし、耐折強さが 1,000回未満では繰り返しの使用に対しての実用性が低い。
【0019】伸縮性膜の製造に当たっては、材料の純度をできるだけ高め、ウェーハに与える影響を最小にするのが望ましい。伸縮性膜の成膜には、押出し、キャスティング、ブロー、延伸等のいずれの方法でもよい。伸縮性膜の容器の各構成部品における固定方法としては、熱溶着や超音波溶着のほか、接着剤の使用、各種の機械的方法等が挙げられる。伸縮性膜の緊張度はウェーハまたは構成部品の装着に際して受ける荷重に応じて調整される。より大きな荷重が必要とされるときは、伸縮性膜に細孔を穿ち、伸縮性膜内外のガスの流通を保ったり、伸縮性膜を介する一方の領域に加圧流体を挿入する等の手段を講ずることもできる。本発明のウェーハ収納容器に用いられる伸縮性膜以外の上蓋、容体等の構成部材は、内外圧の変化や衝撃等に対応できるよう、必要に応じてリブを備えた強靭な構造体とし、その製作には内容物が透視可能なポリカーボネート、ポリプロピレンまたはアクリル等の樹脂からなる剛性の高い材質のものが一般に採用される。
【0020】
【作用】本発明のウェーハ収納容器によれば、■伸縮性膜が、すべての方向の衝撃、振動を吸収するサスペンションの機能を果たし、ウェーハを安全に保持、固定する。また、ウェーハと面接触となるため、ウェーハと伸縮膜との相対的移動が少なくなるほかウェーハとの接触面積が増加する。このため、単位面積当たりの接触圧力が低下して凝集・摩耗が抑制され、微粒子の発生量が低減する。
■伸縮性膜はウェーハやその他の部品のどの部分の形状にも追随するため、複雑な寸法、形状設計が不要な上、位置決めが容易である。
【0021】
【実施例】図1に示した本発明のウェーハ収納容器について、次の方法により評価した。
■上蓋の開閉によるパーティクル数の変化:まず、清浄なウェーハ25枚の各表面について、表1に示す粒径ランクごとのパーティクル数を市販のパーティクルカウンターにより測定し、その平均値を試験前のパーティクル数とした。次に、これらのウェーハを上記ウェーハ収納容器の内箱に収納し、上蓋の開閉を10回行った後、上記と同様に各ウェーハの表面の粒径ランクごとのパーティクル数を測定し、その平均値を蓋開閉試験後のパーティクル数として、この値から試験前のパーティクル数を差し引いた値を、蓋開閉動作によるパーティクル増加数としたところ、表1に示す結果が得られた。これより、本実施例では0.10μm以上の粒径において増加数が0であった。比較例として、図8に示すウェーハ収納容器について上記と同様の蓋開閉試験を行い、パーティクル増加数の測定を行ったところ、0.10〜0.14μm の粒径ランクにおいて10個の増加が認められた。なお、これらの試験はいずれもクリーンルーム内で行った。
【0022】
【表1】


【0023】■輸送試験によるパーティクル数の変化:試験■で用いた上記実施例の容器と比較例の容器について、ポリプロピレン製シートにより容器外形に合わせて成形した緩衝材を容器の上下から挟み込み、これをさらに段ボールケースに入れたものを、東京〜九州間の往復航空輸送に供した後、開封して輸送後のパーティクル数を測定し、■と同様に輸送によるパーティクル増加数を求めたところ、表2に示す結果が得られた。実施例では0.10μm 以上の粒径において増加数が0であり、比較例では0.10〜0.14μm の粒径ランクにおいて17個の増加が認められた。これより本発明のウェーハ収納容器では従来の容器と比べて輸送中の微粒子の発生を低減できることが分かった。
【0024】
【表2】


【0025】■振動試験:試験■で用いた上記実施例の容器と比較例の容器とを加振機に載せ、バンドで固定し、片振幅0.75mm、周波数10Hz→55Hz→10Hz(掃引60秒)、加振時間10分の条件で振動を与えた。振動付加後、ウェーハの隣接溝への移動やウェーハ外周方向への2°以上の回転等の不良発生状況を目視にて確認し、収納したウェーハ枚数中の不良発生枚数で表した。収納容器の加振機への取り付け方向は、ウェーハ表面が加振機平面と垂直になる正立方向と水平になる横置き方向の2方向で試験し、結果を表3に示した。これより本発明のウェーハ収納容器では、従来の容器に比較して、特に横置き方向における不良発生が少なかった。
【0026】
【表3】


【0027】■衝撃試験:試験■で用いた上記実施例の容器と比較例の容器とに、■の輸送試験と同様の外装を施し、これを落下させるコンクリート面に対して、容器の底面が対面する正立方向、ウェーハ表面が垂直となる横置き方向(横置き1)、同じく水平となる横置き方向(横置き2)、上蓋の上面が対面する倒立方向の各方向において、最初にコンクリート面より25cmの高さから自然落下させ、順次25cm高さを上げて行き、ウェーハの隅接溝への移動やウェーハ外周方向への2°以上の回転等の不良が発生した高さを記録し、結果を表4に示した。これより本発明のウェーハ収納容器では、従来の容器に比較して、特に横置き方向1、2において、より高い落下位置まで不良が発生しなかった。なお、本実施例において下部緩衝板を取り除き、上部緩衝板だけの構成としたり、伸縮性膜の設置についても、枠の全周でなく、対向する2辺の位置だけでの固定、さらに伸縮性膜の幅も緩衝板全面でなく必要な一部分の幅だけにしても同様の効果が得られた。
【0028】
【表4】


【0029】
【発明の効果】本発明のウェーハ収納容器は、■伸縮性膜でウェーハを直接または間接的に保持する構造としたことにより、輸送中に受けるあらゆる方向からの振動・衝撃を吸収してウェーハを破損や汚染から保護し、安全に輸送できる。
■ウェーハを伸縮膜により直接接触保持する場合には、ウェーハ収納時の伸縮膜とウェーハとの相対的移動による微粒子の発生を最小限に抑え、汚染の低減に寄与する。
■ノッチ式ウェーハ、オリフラ式ウェーハの別なく、比較的簡単な構造でウェーハを確実に保持・固定・輸送することができる。
■外部からの振動、衝撃に対する抵抗力が大きいため、外部包装を簡略化することが可能となり、輸送コストの低減に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のウェーハ収納容器の一実施態様を示す分解斜視図である。
【図2】(a)〜(c)は、図1に示したウェーハ収納容器における、ウェーハの上部および下部緩衝板に対する挙動を作業順に示す縦断面説明図である。
【図3】本発明のウェーハ収納容器の別の実施態様に係り、図(a)は用いられる内箱の縦断面説明図、図(b)および図(c)は内箱の椀側部における部分拡大平面図、図(d)は下部緩衝板の平面図である。
【図4】本発明のウェーハ収納容器のさらに別の実施態様に係り、図(a)は用いられる上部緩衝板の部分正面図、図(b)は図(a)の側面図、図(c)は上部緩衝板の別の実施態様を示す部分正面図である。
【図5】それぞれ本発明のウェーハ収納容器の他の異なる実施態様に係り、図(a)および図(b)は縦断面図、図(c)は斜視図である。
【図6】本発明のウェーハ収納容器のさらに他の実施態様に係り、図(a)は縦断面図、図(b)は図(a)のB−B線における横断面図である。
【図7】図(a)は本発明のウェーハ収納容器における部材の一例についての平面図、図(b)〜(d)はそれぞれ本発明のウェーハ収納容器のさらに他の異なる実施態様についての縦断面図、図(e)は他の異なる部材についての平面図である。
【図8】従来のウェーハ収納容器の一例を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
1‥上蓋、 2‥容体、 3‥内箱、4、5‥帯状段部、 6‥パッキン、 7‥椀側壁、8‥ひだ、 9、18、19‥上部緩衝板、 10、15‥下部緩衝板、11‥嵌合爪、 12、20‥枠、 13‥伸縮性膜、14、17‥溝、 16‥櫛状片、 21、22、23、24‥緩衝板、W‥ウェーハ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】半導体ウェーハ収納容器を構成する、上蓋、容体、内箱、上部および下部緩衝板の内のいずれか、または2以上の部材間に伸縮性膜を張設し、この伸縮性膜に半導体ウェーハの周縁部の少なくとも一点を接触させることで、半導体ウェーハを容器内に支持することを特徴とする半導体ウェーハ収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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