説明

半導体ウェーハ用保持具及び半導体ウェーハの処理方法

【課題】 半導体ウェーハをダイシングフレームのダイシングテープに移し替える必要がなく、作業の簡素化や迅速化を図ることのできる半導体ウェーハ用保持具及び半導体ウェーハの処理方法を提供する。
【解決手段】 グリップ具1の中空部に耐熱性の密着シート10を覆着し、この密着シート10の表面に薄化された半導体ウェーハWを着脱自在に密着保持する保持具で、ダイシングの前に密着シート10の裏面に補強層20を貼り付ける。密着シート10に補強層20が積層して補強するので、ハンダリフロー工程で使用した半導体ウェーハ用保持具をダイシング工程でそのまま使用できる。したがって、ダイシングの前に半導体ウェーハWを専用のダイシングフレームのダイシングテープに移し替える必要がなく、作業の複雑化や煩雑化、遅延化等を防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンダリフロー工程やダイシング工程等で使用される半導体ウェーハ用保持具及び半導体ウェーハの処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体ウェーハ用保持具は、図示しないが、グリップ具の中空部に耐熱性の密着シートが緊張して覆着され、この密着シートの表面に薄化された半導体ウェーハが着脱自在に密着保持されてハンダリフロー工程等の熱工程に供される(特許文献1、2参照)。
このような半導体ウェーハ用保持具に保持された半導体ウェーハは、ハンダリフロー工程の熱工程からダイシング工程に供され、ダイシングブレードを用いたダイシング処理により個々の半導体チップに分割形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009‐278079号公報
【特許文献2】特開2009‐260224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来における半導体ウェーハ用保持具は、以上のように構成され、グリップ具の中空部に耐熱性の密着シートが単に覆着されるに止まるので、そのままダイシング工程に供されると、半導体ウェーハのダイシングの際に密着シートに切れ目が生じ、この切れ目が拡大して密着シートを破断してしまうという問題がある。
【0005】
このような問題を解消するには、ダイシングの前に半導体ウェーハを専用のダイシングフレームのダイシングテープに移し替えれば良いが、そうすると、半導体ウェーハ用保持具からの移し替え作業が必要になるので、作業の複雑化や煩雑化、遅延化等を招くおそれがある。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたもので、半導体ウェーハをダイシングフレームのダイシングテープに移し替える必要がなく、作業の簡素化や迅速化を図ることのできる半導体ウェーハ用保持具及び半導体ウェーハの処理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては上記課題を解決するため、グリップ具の中空部を耐熱性の密着シートにより被覆し、この密着シートの表面に半導体ウェーハを着脱自在に密着保持するものであって、
密着シートの裏面に補強層を貼り付けるようにしたことを特徴としている。
なお、グリップ具を、着脱自在に嵌合する内リングと外リングとから形成し、これら内リングと外リングとの間に密着シートの周縁部を挟むことができる。
【0008】
また、本発明においては上記課題を解決するため、請求項1又は2記載の半導体ウェーハ用保持具を使用して半導体ウェーハに処理を施す半導体ウェーハの処理方法であって、
グリップ具の中空部を被覆する耐熱性の密着シートの表面に半導体ウェーハを着脱自在に密着保持させて熱工程に供した後、密着シートの裏面に補強層を貼り付け、半導体ウェーハにダイシング処理を施すことを特徴としている。
【0009】
ここで、特許請求の範囲におけるグリップ具は、平面リング形が好ましいが、特に限定されるものではなく、例えば中空多角形や枠形等でも良い。耐熱性の密着シートは、透明、不透明、半透明のいずれでも良い。半導体ウェーハは、φ200、300、450mm等の大きさやシリコン等の材質を特に問うものではない。さらに、熱工程には、少なくともハンダリフロー工程等が含まれる。
【0010】
本発明によれば、熱工程の終了後にダイシング工程に半導体ウェーハを供する場合には、グリップ具に取り付けられた密着シートの裏面に補強層を貼り付けて補強し、ダイシング工程に半導体ウェーハを供して半導体チップを形成する。この際、補強層が密着シートの損傷を防ぐので、ダイシングブレードで密着シートに大きな切れ目が生じることが少ない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、半導体ウェーハをダイシングフレームのダイシングテープに移し替える必要がなく、半導体製造に関する作業の簡素化や迅速化を図ることができるという効果がある。
【0012】
また、グリップ具を、着脱自在に嵌合する内リングと外リングとから形成し、これら内リングと外リングとの間に密着シートの周縁部を挟むようにすれば、接着剤や粘着剤、粘着テープ等を使用することなく、簡易な構成でグリップ具の中空部を密着シートで覆うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る半導体ウェーハ用保持具の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【図2】本発明に係る半導体ウェーハ用保持具及び半導体ウェーハの処理方法の実施形態を模式的に示す分解断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明すると、本実施形態における半導体ウェーハ用保持具は、図1や図2に示すように、グリップ具1の中空部に耐熱性の密着シート10を覆着し、この密着シート10の表面にバックグラインドで薄化された半導体ウェーハWを着脱自在に密着保持する保持具であり、ダイシングの前に密着シート10に補強層20を貼着するようにしている。
【0015】
グリップ具1は、着脱自在に相互に密嵌する平面リング形の内リング2と外リング3とを備え、これら内リング2と外リング3との間に、中空部を覆う密着シート10の周縁部が着脱自在に挟持される。このグリップ具1の内リング2と外リング3とは、耐熱性を有する所定の材料、例えば金属(鉄系、SUS、チタン、アルミニウム等)、耐熱性の樹脂(液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド等)、複合材(ガラスエポキシ、C/Cコンポジット、ガラス/PPE、ガラス/BTレジン等)、セラミックス等を使用して形成される。
【0016】
密着シート10は、例えば50〜500μm程度の厚さを有する耐熱性のシリコーンゴム、あるいはフッ素ゴム製の弱粘着性のシートからなり、平面円形にカットして緊張状態でグリップ具1に挟持される。
【0017】
補強層20は、汎用のシート、例えば安価なポリエチレンテレフタレート製等のシートからなり、密着シート10の裏面に密着する被密着面21が鏡面加工されており、平面円形にカットして密着シート10の裏面に隙間なく密着されることにより、ダイシング工程で密着シート10を補強するよう機能する。
【0018】
上記構成において、ハンダリフロー工程にバックグラインドで薄化された半導体ウェーハWを供する場合には、グリップ具1の内リング2と外リング3とに密着シート10を挟持させて緊張し、この密着シート10の表面に薄化された半導体ウェーハWを密着保持させれば、ハンダリフロー工程に供して半導体ウェーハWにハンダリフロー処理を施すことができる。
【0019】
半導体ウェーハWのハンダリフロー工程が終了し、ダイシング工程に半導体ウェーハWを供する場合には、半導体ウェーハWを保持した密着シート10の裏面に補強層20を密着して事前に補強し、ダイシング工程に半導体ウェーハWを供してダイシング処理により個々の半導体チップに分割形成すれば良い。
【0020】
この際、補強層20が密着シート10を裏面側から二層構造化により補強してダイシングブレードの深い貫通や大きな損傷を防止したり、発生した切れ目の拡大を抑制するので、高速回転するダイシングブレードで密着シート10に大きな切れ目が生じることが実に少なく、切れ目の拡大で密着シート10の破断を招くおそれを有効に排除することができる。
【0021】
上記構成によれば、密着シート10に補強層20が積層されて強度を増大させるので、ハンダリフロー工程で使用した半導体ウェーハ用保持具をダイシング工程でそのまま使用することができる。したがって、ダイシングの前に半導体ウェーハWを専用のダイシングフレームのダイシングテープに移し替える必要が全くなく、作業の複雑化や煩雑化、遅延化等を確実に防ぐことができる。
【0022】
なお、上記実施形態ではグリップ具1を内リング2と外リング3とから形成したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、グリップ具1を単一のリングとし、このリングの外周面に密着シート10の周縁部を貼着しても良い。また、内リング2と外リング3との対向面に凹凸をそれぞれ形成し、これらの凹凸を嵌合して内リング2と外リング3とを外れにくくしても良い。また、補強層20の被密着面21を鏡面加工することなく接着層を積層し、この接着層により密着シート10の裏面に貼り付けても良い。さらに、ダイシングの前に密着シート10に複数枚の補強層20を着脱自在に重ねて貼り付けても良い。
【符号の説明】
【0023】
1 グリップ具
2 内リング
3 外リング
10 密着シート
20 補強層
W 半導体ウェーハ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリップ具の中空部を耐熱性の密着シートにより被覆し、この密着シートの表面に半導体ウェーハを着脱自在に密着保持する半導体ウェーハ用保持具であって、
密着シートの裏面に補強層を貼り付けるようにしたことを特徴とする半導体ウェーハ用保持具。
【請求項2】
グリップ具は、着脱自在に嵌合する内リングと外リングとを備え、これら内リングと外リングとの間に密着シートの周縁部を挟むようにした請求項1記載の半導体ウェーハ用保持具。
【請求項3】
請求項1又は2記載の半導体ウェーハ用保持具を使用して半導体ウェーハに処理を施す半導体ウェーハの処理方法であって、
グリップ具の中空部を被覆する耐熱性の密着シートの表面に半導体ウェーハを着脱自在に密着保持させて熱工程に供した後、密着シートの裏面に補強層を貼り付け、半導体ウェーハにダイシング処理を施すことを特徴とする半導体ウェーハの処理方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−159866(P2011−159866A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21367(P2010−21367)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】