説明

半導体ウエハのブレーキング装置

【目的】 半導体ウエハを各ペレット毎に割れ、欠け、2個続き等がなく良好に分割できるブレーキング装置を提供する。
【構成】 ウエハ固定シート8が貼着されている半導体ウエハ7を押圧するブレーキングローラ3に接触配置している補助ローラ4を中空形状に形成し、この補助ローラ4内に冷却水21を流す。
【効果】 補助ローラ4内を流れる冷却水21によって補助ローラ4に接触配置しているブレーキングローラ3が冷却され、ブレーキングローラ3に押圧接触されるウエハ固定シート8が冷却され、ウエハ固定シート8の弾性が低下する。その結果、ブレーキングローラ3の適正なブレーキング圧力がウエハ固定シート8にほとんど吸収されることなく、半導体ウエハ7に作用するので、半導体ウエハ7は各ペレット6毎に良好に分割される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、半導体ウエハのブレーキング装置、特に、ウエハ固定シートが貼着された半導体ウエハを複数のペレットに分割するブレーキング技術に関し、例えば、半導体装置の製造工程において、半導体ウエハを複数のペレットに分割するのに利用して有効なものに関する。
【0002】
【従来の技術】半導体装置の製造工程は、ウエハの状態で各ペレット毎に半導体集積回路や光半導体回路等が作り込まれる前工程と、ウエハの各ペレットが1個ずつに分割されてリードフレーム等に組み付けられ、樹脂封止等が行われる後工程とに大別される。
【0003】一般に、前記半導体装置の製造工程における後工程において、半導体ウエハを各ペレット毎に分割する分割工程は、次のような作業によって実施される。
【0004】まず、分割された各ペレットが離散しないようにするために、半導体ウエハに合成樹脂製のウエハ固定シートが貼着される。次に、この半導体ウエハの表面の各ペレット間に相当するスクライブライン上に複数条のブレーキング予備線がダイヤモンド針により形成される。
【0005】その後、この半導体ウエハがウエハ固定シートを上側にして弾力のあるゴムベース上に載置され、その半導体ウエハの上をブレーキングローラが移動することによって、半導体ウエハがわずかながら屈曲変形されるため、半導体ウエハは複数条のブレーキング予備線に沿って各ペレット毎に分割される。
【0006】前記ブレーキング作業に際して、ゴムベースの弾力、ブレーキングローラの外径、ブレーキングローラの押圧力、およびブレーキングローラの移動速度等が半導体ウエハの分割精度に影響する。
【0007】なお、半導体ウエハのブレーキング装置を述べてある例としては、特公平2−59636号公報および特公平2−60076号公報がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この半導体ウエハのブレーキング作業においては、ブレーキングローラが半導体ウエハにブレーキング圧力を作用した際、ブレーキング圧力が半導体ウエハに貼着されている合成樹脂製のウエハ固定シートに吸収されるため、半導体ウエハの各ペレット毎に適正なブレーキング圧力が加わらず、その結果、半導体ウエハのブレーキングが良好に行われずに、ペレットの割れ、欠け、2個続き等の問題が発生することが本発明者によって明らかにされた。
【0009】本発明の目的は、半導体ウエハを各ペレット毎に良好かつ容易に分割することができる半導体ウエハのブレーキング装置を提供することにある。
【0010】本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【0011】
【課題を解決するための手段】本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を説明すれば、次の通りである。
【0012】すなわち、ウエハ固定シートが貼着されている半導体ウエハの表面に複数条のブレーキング予備線が形成されており、この半導体ウエハを押圧することにより前記ブレーキング予備線に沿って半導体ウエハを複数のペレットに分割する押圧手段が設けられている半導体ウエハのブレーキング装置において、前記ウエハ固定シートの温度を制御する手段を備えていることを特徴とする。
【0013】
【作用】前記した手段によれば、半導体ウエハに貼着されているウエハ固定シートの温度を制御する手段を備えているため、例えば、ウエハ固定シートが所定温度に冷却されることにより、ウエハ固定シートおよび接着剤の弾性力が低下する。その結果、ブレーキングローラの押圧力がウエハ固定シートにほとんど吸収されずに半導体ウエハに直接作用するため、適正な押圧力が半導体ウエハに作用され、半導体ウエハが各ペレット毎に良好かつ容易に分割される。
【0014】また、ウエハ固定シートが冷却されるのではなく、所定温度に加熱されると、ウエハ固定シートが柔らかくなり、厚さが薄くなるため、冷却の場合と同様に、ブレーキングローラの押圧力がウエハ固定シートにほとんど吸収されずに半導体ウエハに直接作用するため、適正な押圧力が半導体ウエハに作用され、半導体ウエハが各ペレット毎に良好かつ容易に分割される。
【0015】
【実施例】図1は本発明の一実施例である半導体ウエハのブレーキング装置の要部を示す拡大断面図、図2はその全体を示す斜視図、図3はウエハ固定シートが貼着された半導体ウエハの表面にブレーキング予備線が形成されている状態を示す平面図である。
【0016】本実施例において、本発明に係る半導体ウエハのブレーキング装置は、ブレーキングテーブル(以下、テーブルという。)1、ゴムベース2、ブレーキングローラ3、一対の補助ローラ4、5を備えている。
【0017】テーブル1は水平面内で往復直線移動自在に支持されているとともに、リニアモータ等の往復直線駆動装置(図示せず)によって往復直線駆動されるように構成されている。また、水平面内で回転自在に支持されており、回転駆動装置(図示せず)によって回転駆動されるように構成されている。
【0018】テーブル1の上面にはゴムベース2が敷設されており、このゴムベース2は適度な弾力性を有するゴムまたは樹脂が用いられて均一な厚さの平板形状に形成されている。
【0019】テーブル1上にはブレーキングローラ3が水平に軸架されて、両端を回転自在に支承されている。ブレーキングローラ3は後記するように半導体ウエハに外接した状態で、テーブル1の移動に伴って転動し得るようになっている。
【0020】一対の補助ローラ4、5はブレーキングローラ3の上側位置においてブレーキングローラ3にそれぞれ外接するように配されて、両端部を回転自在にそれぞれ支承されている。また、両補助ローラ4、5はブレーキングローラ3の中心線を通る垂直面に挟んで互いに対称に配設されている。
【0021】ブレーキングローラ3および両補助ローラ4、5はジャッキ等の上下駆動装置(図示せず)によって上下方向に移動し得るように構成されている。この上下動によって、ブレーキングローラ3の後記するブレーキング圧力が調整されるようになっている。また、ブレーキングローラ3および補助ローラ4、5はテーブル1の水平往復運動に伴って、テーブル1に対して相対的に水平方向に平行移動し得るようになっている。
【0022】本実施例において、一方の補助ローラ4は中空パイプ形状に形成されており、この補助ローラ4には冷却水供給装置20が中空部に冷却水21を流通させ得るように接続されている。そして、この冷却水供給装置20は温度調節された冷却水21を流通させることにより、補助ローラ4、ブレーキングローラ3を介して後記するウエハ固定シートを冷却する冷却手段を実質的に構成している。
【0023】他方、本実施例における半導体ウエハのブレーキング装置のワークとしての半導体ウエハは、次のような作業によって予め製造される。
【0024】まず、半導体装置の製造工程における所謂前工程において、半導体ウエハ7は略円板形状に形成され、各ペレット6毎に、トランジスタやダイオード、半導体集積回路、光半導体回路等が作り込まれる。
【0025】次に、シート貼着工程において、半導体ウエハ7にはウエハ固定シート8がその裏面に貼着される。ウエハ固定シート8は合成樹脂等のような伸縮性を有する材料を用いられて、半導体ウエハ7よりも大径の円形薄膜形状に形成されているシート基材9を備えており、このシート基材9の片側表面に適当な接着剤10が塗布されている。シート基材9としては、例えば、塩化ビニールシートやポリエステルシート等が一般に使用されている。
【0026】続いて、スクライビングあるいはダイシング工程において、半導体ウエハ7の表面の各ペレット6間に複数条のブレーキング予備線11がダイヤモンド針やダイヤモンドカッタにより形成される。
【0027】次に、前記構成に係る半導体ウエハのブレーキング装置が使用されて、前記のように製造されたワークとしての半導体ウエハ7を各ペレット6に分割するブレーキング作業について説明する。
【0028】まず、前記のように製造されたワークとしての半導体ウエハ7がウエハ固定シート8を上側にして弾力のあるゴムベース2の上に載置される。
【0029】次に、ブレーキングローラ3および補助ローラ4、5がテーブル1に対して下降され、ブレーキング圧力が定められる。
【0030】続いて、テーブル1が定められた移動速度をもって駆動される。これにより、ブレーキングローラ3が半導体ウエハ7上を所定の圧力と移動速度とをもって転動されながら相対的に移動される。
【0031】そして、縦横に形成された複数状のブレーキング予備線11の例えば縦方向のブレーキング予備線11に沿ってブレーキングローラ3が相対的に移動されると、テーブル1が90度回転された後、横方向のブレーキング予備線11に沿ってブレーキングローラ3が半導体ウエハ7上を相対的に移動される。
【0032】このブレーキングローラ3の移動によって、半導体ウエハ7にローラ圧力が加わり、この圧力により弾性のあるゴムベース2がわずかながら屈曲変形するため、半導体ウエハ7がブレーキング予備線11を基点として折れ曲がって割られ、各ペレット6毎に分割される。
【0033】この際、一方の補助ローラ4内を通過する冷却水21によってブレーキングローラ3が冷却されるため、ブレーキングローラ3に接触しているウエハ固定シート8のシート基材9および接着剤10が冷却される。
【0034】このように冷却されると、シート基材9および接着剤10の弾性は低下する。その結果、ブレーキングローラ3の圧力がウエハ固定シート8にほとんど吸収されることなく、半導体ウエハ7に直接作用されるため、ブレーキングローラ3の適正なブレーキング圧力が半導体ウエハ7に作用する。
【0035】このため、半導体ウエハ7の表面に形成されているブレーキング予備線11に沿って各ペレット6毎に良好に分割され、ペレット6の割れ、欠け、2個続き等の発生は防止される。
【0036】前記実施例によれば次の効果が得られる。
■ ブレーキングローラに接触している補助ローラ内に冷却水が流通するように構成することにより、補助ローラによりブレーキングローラが冷却されるため、このブレーキングローラが押圧接触するウエハ固定シートを冷却することができ、ウエハ固定シートの弾性を低下させることができる。その結果、ブレーキングローラの圧力をウエハ固定シートにほとんど吸収されることなく、ウエハ固定シートが貼着されている半導体ウエハに直接作用させることができる。
【0037】■ 前記■により、ブレーキングローラの適正なブレーキング圧力が半導体ウエハに作用するため、半導体ウエハに作用するブレーキング圧力のばらつきを抑止ないしは抑制することができる。その結果、半導体ウエハの表面に形成されているブレーキング予備線に沿って各ペレット毎に良好に分割することができ、ペレットの割れ、欠け、2個続き等の発生を防止することができる。
【0038】なお、前記実施例1においては、補助ローラ4内に冷却水21を流し、ブレーキングローラ3を冷却し、ウエハ固定シート8を冷却するように構成したが、補助ローラ4内に温水を流し、ブレーキングローラ3を加熱して、ウエハ固定シート8を加熱するように構成してもよい。
【0039】このウエハ固定シート8を加熱するように構成した実施例2においては、加熱されたウエハ固定シート8が柔らかくなって、厚さが薄くなり、ブレーキングローラ8の圧力がウエハ固定シート8にほとんど吸収されることなく、ウエハ固定シート8が貼着されている半導体ウエハ7に直接作用する状態になる。
【0040】したがって、前記実施例1と同様に、半導体ウエハ7に作用するブレーキング圧力のばらつきを抑止ないしは抑制することができ、半導体ウエハ7を各ペレット毎に良好に分割することができる。
【0041】前記実施例1、2においては、補助ローラ4内に冷却水あるいは温水を流し、ブレーキングローラ3を冷却または加熱することによって、ウエハ固定シート8を冷却または加熱するように構成したが、ウエハ固定シート8を冷却または加熱する温度制御手段として、次のように構成することもできる。
【0042】すなわち、ウエハ固定シートの温度制御手段は、ウエハ固定シート8の上方部に、ウエハ固定シート8に冷却風または温風を吹き付ける温調風吹付装置を設けることによって構成することができる。
【0043】また、他の例としては、テーブル1に温度コントロールユニットを組み込み、ゴムベース2を冷却または加熱するように構成することにより、ウエハ固定シート8を冷却または加熱することができる。なお、この場合には、ゴムベース2も冷却または加熱されるので、ゴムベース2の弾性が所定値に維持されるように構成することが望ましい。
【0044】さらに、他の例としては、熱伝導性シートを別作業にて冷却または加熱し、ブレーキング直前にウエハ固定シート8上に乗せて、ウエハ固定シート8を冷却または加熱するように構成してもよい。
【0045】以上本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0046】例えば、一対の補助ローラ4、5のうちの一方の補助ローラ4内に冷却水または温水を流すように構成したが、他方の補助ローラ5も同様に構成してもよいことは勿論である。
【0047】前記実施例では、円形の半導体ウエハを縦横に分割する場合につき説明したが、予め細長い板形状に分割された半導体ウエハを複数のペレットに分割する場合にも、本発明を適用することができる。
【0048】
【発明の効果】本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、次の通りである。
【0049】ウエハ固定シートが貼着されている半導体ウエハの表面に複数条のブレーキング予備線が形成されており、この半導体ウエハを押圧することにより前記ブレーキング予備線に沿って半導体ウエハを複数のペレットに分割する押圧手段が設けられている半導体ウエハのブレーキング装置において、前記ウエハ固定シートの温度を制御する手段を備えていることにより、適正なブレーキング圧力を半導体ウエハに容易に作用させることができるため、半導体ウエハを各ペレット毎に良好に分割することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である半導体ウエハのブレーキング装置の要部を示す拡大断面図である。
【図2】その全体を示す斜視図である。
【図3】ウエハ固定シートが貼着された半導体ウエハの表面にブレーキング予備線が形成されている状態を示す平面図である。
【符号の説明】
1…テーブル、2…ゴムベース、3…ブレーキングローラ、4、5…補助ローラ、6…ペレット、7…半導体ウエハ、8…ウエハ固定シート、9…シート基材、10…接着剤、11…ブレーキング予備線、20…冷却水供給装置(温度制御手段)、21…冷却水。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ウエハ固定シートが貼着されている半導体ウエハの表面に複数条のブレーキング予備線が形成されており、この半導体ウエハを押圧することにより前記ブレーキング予備線に沿って半導体ウエハを複数のペレットに分割する押圧手段が設けられている半導体ウエハのブレーキング装置において、前記ウエハ固定シートの温度を制御する手段を備えていることを特徴とする半導体ウエハのブレーキング装置。
【請求項2】 前記ウエハ固定シートの温度を制御する手段が、ウエハ固定シートを冷却する冷却手段であることを特徴とする請求項1記載の半導体ウエハのブレーキング装置。
【請求項3】 前記押圧手段が、前記半導体ウエハを押圧するブレーキングローラと、このブレーキングローラに接触するように配設されている中空形状の補助ローラを備えており、前記ウエハ固定シートを冷却する冷却手段がこの補助ローラ内に冷却水を流す冷却水供給装置により構成されていることを特徴とする請求項2記載の半導体ウエハのブレーキング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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