説明

半導体ウエハ保護用粘着シート

【課題】半導体ウエハを極薄にまで研削する場合や、大口径ウエハの研削を行う場合であっても、半導体ウエハに湾曲(反り)を生じさせず、またパターンの追従性に優れ、経時によるパターンからの浮きがなく、研削時の応力分散性が良く、ウエハ割れ、ウエハエッジ欠けを抑制し、剥離時には層間剥離の発生がなく、ウエハ表面に粘着剤残渣が残らない半導体ウエハ保護用粘着シートを提供すること。
【解決手段】半導体ウエハを保護する際に半導体ウエハ表面に貼り合わせる半導体ウエハ保護用シートであって、前記保護用シートは基材及び粘着剤の界面が存在しない1層からなることを特徴とする半導体ウエハ保護用粘着シートであって、前記保護シートは10%伸張時の応力緩和率が40%以上であり、また30μmの段差に貼付した時の24h後のテープ浮き幅が初期と比較して40%増大以下であり、粘着シートの厚みが5μm〜1000μm、さらに両面の粘着力が互いに異なるようにした半導体ウエハ保護用粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハを極薄にまで研削した後もしくは、大口径ウエハの研削をした後での半導体ウエハの反りの少ない半導体ウエハ保護用粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器の小型化やICカードの普及によって、半導体ウエハ等の電子部品のさらなる薄型化が望まれている。このため、従来は厚さが350μm程度であった半導体ウエハを、厚さ30μm以下程度まで薄くする必要が生じている。また、生産性を向上するために、ウエハのさらなる大口径化が検討されている。
【0003】
通常、半導体ウエハの製造では、ウエハの表面に回路パターンを形成した後、所定の厚さになるまでウエハの裏面をグラインダー等で研削することが行われている。その際、ウエハの表面を保護する目的で、ウエハ表面に粘着シートを貼り合わせた上で裏面研削することが一般的に行われている。また、ウエハを薄型に加工した後は、ウエハ表面に粘着シートを貼り合わせた状態で、次工程に搬送することがある。
【0004】
しかし、ウエハの表面を粘着シートで保護した状態で極薄まで裏面研削した場合、研削後のウエハに反りが生じやすい。反りの生じたウエハは搬送中や粘着シートの剥離中に割れる問題がある。これは、粘着シートを貼り合わせたウエハの裏面を研削することにより、ウエハの強度よりも粘着シートの残留応力が勝ると、残留応力を解消しようとする力によってウエハに反りが発生すると考えられる。
【0005】
この研削後のウエハの反りは、粘着シートに残る残留応力による影響が大きいと考えられる。この残留応力は基材及び粘着剤から構成される粘着シートでは基材への粘着剤の塗工あるいは基材と粘着剤層の貼り合わせの製造工程と粘着シートをウエハへ貼り付ける際の工程で主に発生し、残留応力が存在した粘着シートを貼り合わせたウエハを極薄に研削すると、ウエハの強度よりも粘着シートの残留応力が勝り、この残留応力を解消しようとする力によってウエハに反りが発生すると考えられる。また、それゆえ、この残留応力を低減させるために、粘着シートの構成にも種々改良が加えられ残留応力が発生しないような構成が提案されている。例えば特許文献1では、基材フィルムと粘着剤層とで構成された半導体ウエハ保護用粘着シートであって、基材フィルムの引張り弾性率が0.6GPaであるものが提案されている。
【0006】
また、特許文献2では、基材と、その上に形成された粘着剤層とからなる半導体ウエハ加工用粘着シートであって、粘着シートの引張り試験において伸度10%における1分後の応力緩和率が40%以上であるものが提案されている。
【0007】
一般に、半導体ウエハ表面に貼り合わされる粘着シートは基材層と粘着剤層の構成で形成されている。このような粘着シートは製造工程において、基材に粘着剤を直接塗工してセパレータと貼り合せるか、セパレータに粘着剤を塗工して基材と貼り合せて製造するが、その際に基材及びセパレータが弛まない様にある程度のテンションで張る必要があるため、貼り合わさる際には必ず応力が発生する。
基材は粘着シートが半導体ウェハをサポートして取り扱い性を向上させるために、そのサポート性を向上させることも目的として使用されている。
また、ウエハの表面に貼り合わせる際には貼り合わせ機を用いて、貼り合わせテーブルの上にウエハの表面が上になるようにウエハを載置し、その上に粘着シートを粘着剤層が下になった状態で、貼り合わせ方向に沿って弛まないように引っ張りながら供給する。こうして粘着シートの粘着剤層をウエハの表面と対向させ、圧着ロールなどの押圧手段により粘着シートの基材側から、貼り合わせ方向に沿って順次圧着し貼り合わせを行う。
このときも、粘着シートには粘着シートを貼り合わせ方向に沿って引っ張る力と、粘着シートをウエハに圧着する力がかかるため、粘着シートをウエハに貼り合わせるとこれらの力が残留応力となって粘着シートに残る。
事実、上記特許文献に記載されたような、これらの粘着シートの諸特性は、半導体ウエハを極薄にまで研削する際、もしくは、大口径ウエハを研削する際に、研削後のウエハの反りを抑制するものとして必ずしも最適なものではなく、このため、研削後のウエハの反りをよりいっそう抑制することのできる半導体ウエハ保護用粘着シートの提供が望まれていた。
【0008】
また、近年ウエハ研削厚の極薄化に伴い、研削時の応力によるウエハ割れやウエハエッジ部の欠けがないことも望まれており、研削後にはウエハから粘着シートを剥離しなければならなく、その時にはウエハ表面の回路パターンに粘着剤が残るようなことがなく、かつウエハ表面に粘着シートや半導体ウエハ等に由来する分子レベルの汚染がないことも望まれる。
加えて、ダイシング時におけるウエハの固定のために、基材を含む2層以上からなる粘着シートを使用したときには、これらの層が互いに異なる弾性率を有するために、その界面にて刃に係る力等が変化することによって、粘着剤層の微小な塊が刃や粘着シートに付着するいわゆるダマが発生する。そして、そのダマが付着した刃や粘着シートが次以降の工程において、ウエハや粘着シートに付着してそれらの切断を困難にしたり、ウエハ割れの原因となることもあった。
さらに粘着シートによる半導体ウエハ等の反りの発生や、水等による洗浄の際に半導体ウエハと粘着シートの間に水等が侵入することもあった。このため、粘着シートが応力緩和性を示すことと共に、ウエハ表面に設けた凹凸に十分に粘着シートの粘着剤層が追従でき、切断時の剪断力によっても粘着シートに浮きが発生しないようにすることが必要とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−212524号公報
【特許文献2】特開2000−150432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、半導体ウエハを極薄にまで研削する場合や、大口径ウエハの研削を行う場合であっても、半導体ウエハに反りを生じさせず、またパターンの追従性に優れ、経時によるパターンからの浮きがなく、研削時の応力分散性が良く、ウエハ割れ、ウエハエッジ欠けを抑制し、剥離時には層間剥離の発生がなく、ウエハ表面に粘着剤残渣が残らず、しかも切断時に粘着剤からなるいわゆるダマを発生させない半導体ウエハ用粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1.半導体ウエハ表面に貼り合わせる半導体ウエハ用粘着シートであって、前記粘着シートは基材層が存在せず1層からなることを特徴とする半導体ウエハ用粘着シートであり、該粘着シートは10%伸張時の応力緩和率が40%以上であることを特徴とする半導体ウエハ用粘着シート。
2.前記粘着シートの厚みが5μm〜1000μmであることを特徴とする1記載の半導体ウエハ用粘着シート。
3.前記粘着シートを30μmの段差に貼付した時の24h後のテープ浮き幅は初期と比較して40%以内の増加率であることを特徴とする1又は2記載の半導体ウエハ用粘着シート。
4.前記粘着シートの両面の粘着力が互いに異なる1〜3記載の半導体ウエハ用粘着シート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本発明の粘着シートの全体構成)
本発明は上記の構成を採用して、基材を有しないことによって、基材と粘着剤との界面が存在せず、1層になるように製造されてなる半導体ウエハ用粘着シートである。
ここで、基材を有しないことによって、基材層と粘着剤層との界面が存在せず1層からなる粘着シートとは、上記背景技術に記載したような粘着剤層を担持するための基材フィルムを使用しない状態であるが、粘着剤層が基材以外の他の層、つまり基材として機能しない層と積層されることを排除するのではなく、粘着シート全体が残留応力を有しない程に薄い層の存在を許容することまでを包含する。
この粘着シートは応力緩和することができる粘着シートであるから、粘着テープの製造工程、シート貼り合わせ工程時に発生する残留応力も非常に小さくなる。このため、基材を有する粘着シートを使用したときとは異なり、このような粘着シートを用いて半導体ウエハの裏面研削を行うと、研削後のウエハの反りを低減することができる。
【0013】
さらに、基材を有しない粘着シートを切断する際には、刃が切断する際に硬さ、伸び率等が異なる2層を切断しなくても良いので、刃は同じ力、及び同じ応力にて粘着シートの層方向に移動して粘着シートを切断することが可能になるので、2層のときのように層の界面にて刃に係る力等が変化することによる、粘着剤層の微小な塊が刃や粘着シートに付着するいわゆるダマの発生を防止することが可能となり、ダマが付着した刃や粘着シートが次以降の工程において、ウエハや粘着シートの切断を困難にすることがない。
【0014】
本発明の基材層が存在しない1層の粘着シートはウレタンポリマーとアクリル系ポリマーを主剤とした粘着シートであることが好ましい。粘着シートがウレタンポリマーとアクリル系モノマー重合性化合物を主剤としたポリマーからなる紫外線硬化型の1層からなるタイプであると、通常の粘着シート製造工程でみられるような基材製膜時の延伸工程や基材への粘着剤直写あるいは転写後の貼り合せ時の製造工程の残留応力が発生せず、ウエハを極薄まで研削した時に上記のようにウエハの反りを低下させることができる。
【0015】
また半導体ウエハ裏面研削後に1層からなる粘着シートを半導体ウエハから剥離する際、基材及び粘着剤層の界面が存在しないため、剥離時に基材及び粘着剤の層間で剥離してしまいパターン面に糊残りが発生するリスクがなくなる効果がある。
本発明の粘着シートにて使用されるアクリルウレタン樹脂を得る方法としては、アクリル系モノマーにウレタンポリマーを溶解させ、これを重合することにより得たアクリル樹脂とウレタン樹脂のブレンドでもよく、ウレタンポリマーに不飽和結合を導入しておき、この不飽和結合がアクリルモノマーと反応することにより得たアクリルとウレタンポリマーとの共重合体でもよい。
【0016】
上述したとおり、本発明の粘着シートは製造工程での粘着シートで残留する応力はほとんどなくなるが、粘着シートをウエハへ貼付する際に応力が残留する。また1層であり、基材層を持たないため、パターンへの追従性を考慮すると10%伸張時に応力緩和率が40%以上あることが望ましい。応力緩和率が40%以上あることで、貼付時の応力の影響によるウエハの反りも抑制できる。
また通常の粘着剤は引張弾性率が1MPa以下がほとんどであるが、応力緩和率は40%以下程度と小さく、ウエハパターンに貼付後に経時で追従していたパターンから浮いてくる傾向がある。しかし、1層からなり10%伸張時の応力緩和率が40%以上ある粘着シートは経時での浮きが小さくなる。
【0017】
1層の粘着シートの厚さは5μm〜1000μmであることが好ましく、より好ましくは10μm〜500μm、さらに好ましくは30μm〜250μmである。
【0018】
1層の粘着シートの厚みがこのような範囲にある場合、半導体ウエハ裏面研削時に表面を十分に保護することができる。1層の粘着シートが5μm未満の場合、ウエハ表面が小さい凹凸でも追従し、保護する事ができずに研削時に割れてしまう場合がある。また、1層の粘着シートが1000μmを超える場合は、貼付後のテープカット性及び装置での作業性の面で好ましくない。
【0019】
本発明の粘着シートは、両面の粘着力が同じでも良いが、異なっていても良い。同じ粘着力とする場合には、ダイシング用の保護シートや、粘着シートの両面の粘着力に違いが現れるような対象物である場合等に使用できる。
前記粘着シートの両面の粘着力を異なるものとするために、片面のタックを低減させてその面のみを弱粘着化処理することができる。特に好ましいのは片面のみの表面に凹凸を形成したり、シリカ粒子等を付着させることによる表面処理を施すことで粘着力を低下させて、弱粘着性とすることである。
【0020】
1層からなる粘着シートの場合、片面を非粘着化処理しないと半導体ウエハの搬送時に搬送アームやテーブルに密着して貼り付いてしまうことが懸念されるため、このような場合には、半導体ウエハ保護用粘着シートが貼り付くことなく、半導体ウエハ裏面研削工程及び研削後も搬送することができるように非粘着化処理することが望ましい。
【0021】
本発明の半導体ウエハ保護用粘着シートは、厚み精度の良いセパレータ(特にPETセパレータ等)に紫外線硬化型プレポリマーを通常塗工し、例えば塗工面を凹凸セパレータでカバーした状態で紫外線を照射することにより、凹凸セパレータの凹凸を粘着シート片面に転写する形で、片面のみを非粘着化あるいは弱粘着化することができる。
また、粘着シートの片面をフッ素化処理する等により、その面を弱粘着化あるいは非粘着化することができる。
【0022】
(粘着剤)
粘着シートは、粘着剤であるベースポリマーの組成、架橋剤の種類、配合比などを適宜に組み合わせて調整する。たとえば、ベースポリマーのTg、架橋密度をコントロールすることで粘着シートの初期弾性率や粘着力を制御することが可能である。
【0023】
粘着シートとしては、たとえば、紫外線硬化型のものを使用できる。なかでも、半導体ウエハヘの接着性、剥離後の半導体ウエハの超純水やアルコール等の有機溶剤による清浄洗浄性などの点から、ウレタンポリマーとビニル系ポリマーとを有効成分とすること、あるいはウレタンポリマーとビニル系モノマーの共重合体からなるものが好ましい。
【0024】
ウレタンポリマーの組成、ビニル系ポリマーやビニル系モノマーの種類や組成、ウレタンポリマーとビニル系ポリマーとの配合比等を適宜選択することによって、また、さらに架橋剤等を適宜組合せることによって、様々な特性を有する粘着シートを得ることができる。
【0025】
本発明において粘着シートは、例えば、ウレタンポリマーの存在下で、ビニル系モノマーを溶液重合やエマルジョン重合することによって得ることができる。粘着シートを構成するビニル系ポリマーは、アクリル系ポリマーであることが好ましく、この場合には、アクリル系モノマーを溶液重合等することによってアクリルウレタン樹脂からなる材料を得ることができる。
【0026】
本発明における粘着シートは、ラジカル重合性モノマーとしてのビニル系モノマーを希釈剤として、このラジカル重合性モノマー中でウレタンポリマーを形成し、ラジカル重合性モノマーとウレタンポリマーとを主成分として含む混合物をセパレータに塗布し、放射線を照射して硬化させることにより、形成してもよい。ここで、ラジカル重合性モノマーとしては、ラジカル重合可能な不飽和二重結合を有するものが使用され、ビニル系モノマー等が使用されるが、反応性の点からは、アクリル系モノマーが好ましい。
【0027】
具体的には、(a)ポリオールとジイソシアネートとを反応させてウレタンポリマーを合成した後、この反応生成物をアクリル系モノマーに溶解させて粘度調整を行い、これを第一フィルムに塗工した後、低圧水銀ランプ等を用いて硬化させることにより、ウレタン−アクリル複合材料を得ることができる。そして、そのウレタンポリマーを末端にビニル基を有するポリマーとすることにより、アクリル系モノマーと共重合させることが可能である。
また、(b)ポリオールをアクリル系モノマーに溶解させた後、ジイソシアネートを反応させてウレタンポリマーを合成すると共に粘度調整を行い、これを第一フィルムに塗工した後、低圧水銀ランプ等を用いて硬化させることにより、ウレタン−アクリル複合材料を得ることもできる。その際に、例えば水酸基含有ビニル系モノマーを添加することによって末端にビニル基を有するウレタンポリマーを合成しておくと、そのビニル基がアクリル系モノマーを共重合することも可能となる。
【0028】
これらの方法では、アクリル系モノマーをウレタン合成中に一度に添加してもよいし、何回かに分割して添加してもよい。また、ジイソシアネートをアクリル系モノマーに溶解させた後、ポリオールを反応させてもよい。
ここで、(a)の方法によれば、ポリオールとジイソシアネートとの反応により生成するポリウレタンの分子量が高くなると、アクリル系モノマーに溶解させることが困難になるので、ポリウレタンの分子量が必然的に限定されてしまう、という欠点がある。
一方、(b)の方法によれば、分子量が限定されるということはなく、高分子量のポリウレタンを生成することもできるので、最終的に得られるウレタンの分子量を任意の大きさに設計することができる。
また、(c)予め、別途調整したウレタンポリマーをアクリル系モノマー中に溶解し、これを第一フィルムに塗工した後、低圧水銀ランプ等を用いて硬化させることにより、ウレタン−アクリル複合材料を得ることもできる。
【0029】
(アクリル系モノマー)
本発明に好ましく用いられるアクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、( メタ)アクリル酸イソボルニル、等を挙げることができる。
これらのエステルと共に、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基を有するモノマーや、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有するモノマーを用いることができる。
【0030】
また、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸のモノまたはジエステル、及びその誘導体、N−メチロールアクリルアミド、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N −ジエチルアクリルアミド、イミドアクリレート、N−ビニルピロリドン、オリゴエステルアクリレート、ε−カプロラクトンアクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロドデカトリエンアクリレート、メトキシエチルアクリレート等のモノマーを共重合してもよい。なお、これら共重合されるモノマーの種類や使用量は、複合フィルムの特性等を考慮して適宜決定される。
本発明においては、必要に応じ、特性を損なわない範囲内で他の多官能モノマーを添加することもできる。多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等を挙げることができ、特に好ましくは、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートである。これらのモノマーも、本発明に係るラジカル重合性モノマーに含まれる。
これらのラジカル重合性モノマーは、ウレタンとの相溶性、放射線等の光硬化時の重合性や、得られる高分子量体の特性を考慮して、種類、組合せ、使用量等が適宜決定される。
【0031】
(ウレタンポリマー)
ウレタンポリマーは、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られる。イソシアネートとポリオールの水酸基との反応には、触媒を用いても良い。例えば、ジブチルすずジラウレート、オクトエ酸すず、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン等の、ウレタン反応において一般的に使用される触媒を用いることができる。
【0032】
ポリオールとしては、1分子中に2個またはそれ以上の水酸基を有するものが望ましい。低分子量のポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等の2価のアルコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の3価のアルコール、またはペンタエリスリトール等の4価のアルコール等が挙げられる。
また、高分子量のポリオールとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を付加重合して得られるポリエーテルポリオール、あるいは上述の2 価のアルコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等のアルコールとアジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の2価の塩基酸との重縮合物からなるポリエステルポリオールや、アクリルポリオール、カーボネートポリオール、エポキシポリオール、カプロラクトンポリオール等が挙げられる。これらの中では、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールが好ましい。
アクリルポリオールとしてはヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するモノマーの共重合体の他、水酸基含有物とアクリル系モノマーとの共重合体等が挙げられる。エポキシポリオールとしてはアミン変性エポキシ樹脂等がある。これらのポリオール類は単独あるいは併用して使用することができる。強度を必要とする場合には、トリオールによる架橋構造を導入したり、低分子量ジオールによるウレタンハードセグメント量を増加させると効果的である。伸びを重視する場合には、分子量の大きなジオールを単独で使用することが好ましい。また、ポリエーテルポリオールは、一般的に、安価で耐水性が良好であり、ポリエステルポリオールは、強度が高い。本発明においては、用途や目的に応じて、ポリオールの種類や量を自由に選択することができ、また、塗布するフィルムの特性、イソシアネートとの反応性、アクリルとの相溶性などの観点からもポリオールの種類、分子量や使用量を適宜選択することができる。
【0033】
ポリイソシアネートとしては芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネート、これらのジイソシアネートの二量体、三量体等が挙げられる。芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5− ナフチレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
また、これらの二量体、三量体や、ポリフェニルメタンポリイソシアネートが用いられる。三量体としては、イソシアヌレート型、ビューレット型、アロファネート型等が挙げられ、適宜、使用することができる。
これらのポリイソシアネート類は単独あるいは併用で使用することができる。ウレタン反応性、アクリルとの相溶性などの観点から、ポリイソシアネートの種類、組合せ等を適宜選択すればよい。
本発明においては、ウレタンポリマーが、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、水添トリレンジイソシアネート(HTDI)、水添4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、および、水添キシレンジイソシアネート(HXDI)からなる群から選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネートを用いて形成されることが好ましい。
【0034】
上記ウレタンポリマーの合成にあたり、水酸基含有ビニルモノマーとして、水酸基含有アクリルモノマーを添加してもよい。水酸基含有アクリルモノマーを添加することにより、ウレタンプレポリマーの分子末端に(メタ)アクリロイル基を導入することができ、アクリル系モノマーとの共重合性が付与され、ウレタン成分とアクリル成分との相溶性が高まり、破断強度などのS−S特性の向上を図ることもできる。水酸基含有アクリルモノマーとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシへキシル(メタ)アクリレート等が用いられる。水酸基含有アクリルモノマーの使用量は、ウレタンポリマー100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましく、更に好ましくは1〜5重量部である。
このようにして得られたウレタンアクリル樹脂はウレタン樹脂とアクリル樹脂のブレンドではなく、アクリル樹脂の主鎖にウレタンポリマー末端の(メタ)アクリロイル基が共重合することによって一体の重合体となる。
【0035】
本発明において、ウレタンポリマーを形成するためのポリオール成分とポリイソシアネート成分の使用量は特に限定されるものではないが、例えば、ポリオール成分の使用量は、ポリイソシアネート成分に対し、NCO/OH(当量比)が0.8以上であることが好ましく、0.8以上、3.0以下であることがさらに好ましい。NCO/OHが0.8未満では、ウレタンポリマーの分子鎖長を充分に延ばすことができず、フィルム強度や、伸びが低下しやすい。また、NCO/OHが3.0以下であれば、柔軟性を十分確保することができる。
【0036】
(粘着剤に添加可能な添加剤)
粘着シートを構成する粘着剤層には、必要に応じて、通常使用される添加剤、例えば紫外線吸収剤、老化防止剤、充填剤、顔料、着色剤、難燃剤、帯電防止剤などを本発明の効果を阻害しない範囲内で添加することができる。これらの添加剤は、その種類に応じて通常の量で用いられる。
これらの添加剤は、ポリイソシアネートとポリオールとの重合反応前に、あらかじめ加えておいてもよいし、ウレタンポリマーと反応性モノマーとを重合させる前に、添加してもよい。
また、塗工時の粘度調整のため、少量の溶剤を加えてもよい。溶剤としては、通常使用される溶剤の中から適宜選択することができるが、例えば、酢酸エチル、トルエン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0037】
(粘着シートの製造)
本発明においては、上述したように、例えば、ラジカル重合性モノマー中でポリオールとイソシアネートの反応を行い、ウレタンポリマーとラジカル重合性モノマーとの混合物をセパレータに塗布し、光重合開始剤の種類等に応じて、α線、β線、γ線、中性子線、電子線等の電離性放射線や紫外線等の放射線、可視光等を照射することにより、光硬化して粘着シートを形成することができる。
この際、酸素による重合阻害を避けるために、セパレータ上に塗布したウレタンポリマーとラジカル重合性モノマーとの混合物の上に、剥離処理したシートをのせて酸素を遮断してもよいし、不活性ガスを充填した容器内に基材を入れて、酸素濃度を下げてもよい。本発明において、放射線等の種類や照射に使用されるランプの種類等は適宜選択することができ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト、殺菌ランプ等の低圧ランプや、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ等の高圧ランプ等を用いることができる。紫外線などの照射量は、要求されるフィルムの特性に応じて、任意に設定することができる。
【0038】
一般的には、紫外線の照射量は、100〜5,000mJ/cm、好ましくは1, 000〜4,000mJ/cm、更に好ましくは2,000〜3,000mJ/cm である。紫外線の照射量が100mJ/cmより少ないと、十分な重合率が得られないことがあり、5,000mJ/cmより多いと、劣化の原因となることがある。
また、紫外線照射する際の温度については特に限定があるわけではなく任意に設定することができるが、温度が高すぎると重合熱による停止反応が起こり易くなり、特性低下の原因となりやすいので、通常は70℃以下であり、好ましくは50℃以下であり、更に好ましくは30℃以下である。
【0039】
ウレタンポリマーとラジカル重合性モノマーとを主成分とする混合物には、光重合開始剤が含まれる。光重合開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインエーテル、アニソールメチルエーテル等の置換ベンゾインエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン等の置換アセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン等の置換アルファーケトール、2−ナフタレンスルフォニルクロライド等の芳香族スルフォニルクロライド、1−フェニル−1,1 −プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシム等の光活性オキシムが好ましく用いられる。
本発明においては、分子内に水酸基を有する光重合開始剤を用いることが特に望ましい。ポリオールとポリイソシアネートを反応させてウレタンポリマーを形成する際に、分子内に水酸基を有する光重合開始剤を共存させることで、ウレタンポリマー中に光重合開始剤を採り込ませることができる。これにより、放射線を照射して硬化させるときにウレタン−アクリルのブロックポリマーを生成することができる。この効果によって伸びと強度を向上させることができるものと推定される。
【0040】
また粘着シートには熱膨張性微粒子が配合されていても良い。熱発泡性微粒子は、熱による熱膨張性微粒子の発泡により、接着面積が減少して剥離が容易になるものであり、熱膨張性微粒子の平均粒子径は1μm〜25μm程度のものが好ましい。より好ましくは5μm〜15μmであり、特に10μm程度のものが好ましい。熱膨張性微粒子としては、加熱下に膨張する素材を特に制限なく使用できるが、たとえば、ブタン、プロパン、ペンタンなどの如き低沸点の適宜のガス発泡性成分をインサイト重合法等により、塩化ビニリデン、アクリロニトリル等の共重合物の殻壁でカプセル化した熱膨張性マイクロカプセルを用いることができる。熱膨張性マイクロカプセルは、上記粘着剤との分散混合性に優れているなどの利点も有する。熱膨張性マイクロカプセルの市販品としては、たとえば、マイクロスフェアー(商品名:松本油脂社製)などがあげられる。
【0041】
上記粘着シートに対する熱膨張性微粒子(熱膨張性マイクロカプセル)の配合量は、上記粘着シートの種類に応じて、粘着剤層の粘着力を低下できる量を、適宜に決定することができるが、一般的には、ベースポリマー100重量部に対して、1重量部〜100重量部程度、好ましくは5重量部〜50重量部、更に好ましくは10重量部〜40重量部である。
【0042】
本発明の粘着シートの厚みは、目的等に応じて適宜選択することができる。特に精密部品の加工用に用いる場合、粘着シートは10 〜300μmであることが好ましく、さらに好ましくは50〜250μm程度であり、その他のフィルムの場合には10〜300μmであることが好ましく、さらに好ましくは30〜200μm程度である。
【0043】
(本発明の粘着シートの使用方法)
本発明の粘着シートは、例えば半導体ウエハ等の製品を加工する際に、常法に従って用いられる。半導体ウエハの裏面を研削加工する際に該半導体ウエハ表面を保護すると共に、治具に固定するための保護シートとすることができ、あるいはダイシング時において半導体ウエハ等裏面を基板に固定するために半導体ウエハ裏面に貼る用途等に用いることもできる。
ここでは、半導体ウエハの裏面を研削加工する際に使用する例を示す。まず、テーブル上にIC回路等のパターン面が上になるように半導体ウエハを載置し、そのパターン面の上に、本発明の粘着シートを、その粘着剤層が接するように重ね、圧着ロール等の押圧手段によって押圧しながら貼付する。あるいは、加圧可能な容器(例えばオートクレーブ)内に、上記のように半導体ウエハと粘着シートとを重ねたものを置いた後、容器内を加圧して半導体ウエハと粘着シートとを貼着してもよいし、これに押圧手段を併用してもよい。また、真空チャンバー内で半導体ウエハと粘着シートとを貼着してもよいし、粘着シートの基材の融点以下の温度で加熱することにより貼着してもよい。
【0044】
半導体ウエハの裏面研磨加工方法としては、通常の研削方法を採用することができる。例えば、上記のようにして粘着シートを貼着した半導体ウエハの裏面を、研磨するための加工機として研削機(バックグラインド)、CMP(Chemical Mechanical Polishing)用パッド等を用いて所望の厚さになるまで研削を行う。
【0045】
本発明に係る粘着シートに使用されるセパレータには、被着体への貼付面を保護するセパレータと場合によっては背面へ凹凸転写することで非粘着化するための凹凸のついたセパレータが必要になる。これらのセパレータの構成材料としては、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム等があげられる。セパレータの表面には、粘着剤層からの剥離性を高めるため、必要に応じてシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の離型処理が施されていても良い。セパレータの厚みは、10μm〜200μmが好ましく、より好ましくは25μm〜100μmである。また、セパレータの厚み精度は±2μm以下であることが好ましい。
【0046】
本発明の粘着シートとウエハとの貼り合わせは、加圧可能な容器(例えばオートクレーブなど)中で、ウエハの表面と粘着シートの粘着剤層を重ね、容器内を加圧することによりウエハに貼り合わせることも出来る。この際、押圧手段により押圧しながら貼り合わせてもよい。また、真空チャンバー内で、上記と同様に貼り合わせることもできる。貼り合わせ時の条件はこれらに限定されるものではなく、貼り合わせる際に、加熱をすることもできる。
【実施例】
【0047】
以下に実施例を用いて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0048】
実施例1
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、アクリル系モノマーとして、アクリル酸t−ブチル30部、アクリル酸20部、イソボルニルアクリレート80部、光重合開始剤として、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(商品名「イルガキュア651」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.1部と、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(分子量650、三菱化学(株)製)70部と、ウレタン反応触媒として、ジブチルすずジラウレート0.05部とを投入し、攪拌しながら、水素化キシリレンジイソシアネート25部を滴下し、65℃で2時間反応させて、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。その後、2−ヒドロキシエチルアクリレート5部を添加した。
ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を、厚さ50μmの剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム上に、硬化後の厚みが100μmになるように塗布し、凹凸面に剥離処理したポリエチレンフィルム(厚み70μm)を重ねて被覆した後、高圧水銀ランプを用いて紫外線(照度163mW/cm、光量2100mJ/cm)を照射して硬化させて粘着シートを形成した。この後、被覆した凹凸剥離処理済みポリエチレンフィルムを剥離して、背面にエンボスが転写されたセパレータ付きの粘着シートを得た。
これをテープ貼付装置DR−3000II(日東精機製)を用いてSiウエハ表面に貼り合わせ、グラインダーDFG8560(Disco製)を用いて粘着シートで固定されたSiウエハの裏面をSiウエハの厚みが50μmになるよう研削した後、ウエハの装置搬送性、研削後ウエハ反り、水浸入について評価した。また作製した粘着シートの応力緩和率、段差追従性の経時変化、投錨力の測定を行った。
【0049】
比較例1
実施例1で凹凸セパレータで被覆したものを凹凸のない通常のPETセパレータ(38μm)を用いた以外は実施例1と同様の方法で作製した。この粘着シートを用いて実施例1と同様の方法でウエハに貼り合わせ、評価を行った。
【0050】
比較例2
アクリル酸n−ブチル100部、アクリル酸3部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1部を25℃の状態で、内容量500mlのフラスコに、全体が200gとなるように配合して投入した。窒素ガスを約1時間フラスコに導入しながら攪拌し、内部の空気を窒素で置換した。その後、容器を加温して、内部温度を60℃になるまで上昇させ、この状態で約6時間保持して重合を行い、ポリマー溶液を得た。
得られたポリマー溶液100gに、ポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業社製:コロネートL)2g、多官能エポキシ化合物(三菱瓦斯化学製:テトラッドC)0.5gを添加して、酢酸エチルで希釈し、均一になるまで攪拌して粘着剤溶液を得た。
得られた粘着剤溶液を、PETセパレータ上に塗布し、乾燥オーブンにて70℃及び130℃で、それぞれ3分間乾燥して、厚みが15μmの粘着剤層を形成し、基材であるEVA(エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、115μm厚)に貼り合せて粘着シートを作製した。実施例1の粘着剤を乾燥後の厚みが30μmとなるように塗工した以外は実施例1と同様に、粘着シートを作製した。この粘着シートを用いて実施例1と同様の方法でウエハに貼り合わせ、評価を行った。
【0051】
〔ウエハの装置搬送性〕
Disco製バックグラインダーDFG−8560にてSiウエハに貼り合わせた粘着シートの背面がロボットアームに貼り付くことなく搬送できるかを観察した。
【0052】
〔研削後ウエハ反り〕
Disco製バックグラインダーDFG−8560にてSiウエハの厚みが50μmとなるまで研削し研削後のSiウエハの反り量は、研削1分後のSiウエハを粘着シートを貼り合わせた状態で平坦な場所に置き、端部の浮いている距離(mm)を測定することにより求めた。
【0053】
粘着シートの諸性質についての測定方法は以下の通りとした。
〔投錨力の測定方法〕
20mm幅の粘着シートを23℃においてバックグラインドテープ用剥離テープBT−315(日東電工(株)製)と粘着面同士を貼り合せ、Tの字になるように速度300mm/minで粘着面同士を剥がした時に投錨破壊するかを確認した。
〔応力緩和率〕
粘着シートを速度200mm/minで10%伸張させたて保持した時の初期の強度が1分後にどれくらい減少するかを確認した。
[テープ貼付1日後段差浮きと水浸漬評価]
Siミラーウエハに予め、10mm幅、高さ30μmのテープを貼付して段差を作製しておき、テープ貼付装置で段差と交差するようにテープを貼付したときの段差浮き幅を1日後の増加量で比較評価した。また、そのウエハを水に全面浸して、水が少しでも浸入した場合を「水浸入」、全く入らなかったものを「問題なし」とした。
実施例1及び比較例1〜2の結果を表1及び表2に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
表1及び表2に示すとおり、基材及び粘着剤の界面が存在せず1層の粘着シートを用いた実施例1ではテープ貼付1日後の段差浮きが非常に小さく、水浸漬した場合もテープと段差の隙間から水が浸入することが無いため、テープ貼付後数日経ってからバックグラインドを行う場合も水浸入が起こらない。また、投錨力試験でも基材/粘着剤の界面が存在しない1層の粘着シートであるため、投錨破壊することがなく、ウエハからテープを剥離する際に粘着剤残り等の問題が発生しない。さらに背面をエンボス加工することでウエハ研削する際のロボット搬送でもアームにくっついてしまうことが無く、安定して搬送可能であり、極薄まで研削した場合にウエハに生じる反りを極限まで減らすことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハ表面に貼り合わせる半導体ウエハ用粘着シートであって、前記粘着シートは基材層が存在せず1層からなることを特徴とする半導体ウエハ用粘着シートであり、該粘着シートは10%伸張時の応力緩和率が40%以上であることを特徴とする半導体ウエハ用粘着シート。
【請求項2】
前記粘着シートの厚みが5μm〜1000μmであることを特徴とする請求項1記載の半導体ウエハ用粘着シート。
【請求項3】
前記粘着シートを30μmの段差に貼付した時の24h後のテープ浮き幅は初期と比較して40%以内の増加率であることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体ウエハ用粘着シート。
【請求項4】
前記粘着シートの両面の粘着力が互いに異なる請求項1〜3記載の半導体ウエハ用粘着シート。

【公開番号】特開2012−54432(P2012−54432A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196253(P2010−196253)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】