説明

半導体ウエハ加工用粘着テープ

【課題】本発明の課題は、半導体ウエハが貼り付けられた後に長期間保管しても、半導体ウエハを良好にピックアップすることができる半導体ウエハ加工用粘着テープを提供することである。
【解決手段】本発明に係る半導体ウエハ加工用粘着テープ100では、半導体ウエハが、バックグラインド後1分以内に、バックグラインドされた面で貼り付けられた後14日間放置されてから光が照射されたときの粘着力が、20cN/25mm未満である。なお、14日間の放置は、温度が23℃、湿度が50%RHの条件で行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ加工用粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従前から、半導体ウエハのダイシング加工に用いられる半導体ウエハの加工用粘着テープ(以下、「ダイシングテープ」という)が種々提案されている(例えば、特開2009−245989号公報など)。
【0003】
一般に、ダイシングテープではフィルム基材上に粘着層が形成されており、この粘着層により半導体ウエハが固定される。また、半導体ウエハのダイシング加工後に半導体チップを容易にピックアップすることができるように、粘着層には通常、光硬化型樹脂、光重合開始剤、および架橋剤などが添加されている。つまり、ダイシング加工後、粘着層に光が照射されると、これらの成分が硬化して粘着層の粘着性が低下し、半導体チップのピックアップが容易となるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−245989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、光照射される前の状態でダイシングテープに固定された半導体ウエハまたは半導体チップが保管される場合がある。ダイシングテープの粘着力は、時間の経過に従って増大する傾向がある。そのため、半導体ウエハをダイシングテープに貼り付けた後に長期間、例えば14日間、ダイシングテープを保管すると、粘着層に光が照射されても、粘着層の粘着力が低下しにくくなる傾向がある。そのため、半導体ウエハをピックアップするときに、半導体ウエハがダイシングテープから外れなかったり、半導体ウエハが割れたりすることがある。
【0006】
本発明の目的は、半導体ウエハが貼り付けられた後に長期間保管しても、半導体ウエハを良好にピックアップすることができる半導体ウエハ加工用粘着テープを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)
本発明に係る半導体ウエハ加工用粘着テープでは、半導体ウエハが、バックグラインド後1分以内に、バックグラインドされた面で貼り付けられた後14日間放置されてから光が照射されたときの粘着力が、20cN/25mm未満である。なお、14日間の放置は、温度が23℃、湿度が50%RHの条件で行われる。
【0008】
この半導体ウエハ加工用粘着テープでは、半導体ウエハが、バックグラインドされた面で貼り付けられた後14日間放置されてから光が照射されたときの粘着力が、所定の値である。そのため、半導体ウエハ加工用粘着テープは、半導体ウエハが貼り付けられた後に長期間保管しても、半導体ウエハを良好にピックアップすることができる。
【0009】
(2)
上述(1)の半導体ウエハ加工用粘着テープでは、半導体ウエハが、バックグラインド後1分以内に、バックグラインドされた面で貼り付けられた後20分間放置されたときの粘着力が、200cN/25mm以上であることが好ましい。なお、20分間の放置は、温度が23℃、湿度が50%RHの条件で行われる。
【0010】
この半導体ウエハ加工用粘着テープでは、半導体ウエハが、バックグラインドされた面で貼り付けられた後の粘着力が、所定の値である。そのため、この半導体ウエハ加工用粘着テープでは、ダイシングのときに、チップ飛びが発生しにくい。
【0011】
(3)
上述(1)または(2)の半導体ウエハ加工用粘着テープでは、半導体ウエハが、鏡面で貼り付けられた後20分間放置したときの粘着力が、90cN/25mm以上であることが好ましい。なお、「鏡面」とは、表面粗さRz(JIS B0601に準じて測定)が、10nm以下の面をいう。また、20分間の放置は、温度が23℃、湿度が50%RHの条件で行われる。
【0012】
この半導体ウエハ加工用粘着テープでは、半導体ウエハが鏡面で貼り付けられた後の粘着力が、所定の値である。そのため、この半導体ウエハ加工用粘着テープでは、ダイシングのときに、チップ飛びが発生しにくい。
【0013】
(4)
上述(1)〜(3)のいずれかの半導体ウエハ加工用粘着テープでは、基層と、粘着層とを備えることが好ましい。粘着層は、基層上に形成される。また、粘着層は、官能基数が15官能以上であるオリゴマーを含む。
【0014】
この半導体ウエハ加工用粘着テープでは、半導体ウエハが貼り付けられた後に長期間保管しても、半導体ウエハを良好にピックアップすることができる。
【0015】
(5)
上述(4)の半導体ウエハ加工用粘着テープでは、オリゴマーは、ウレタンアクリレートであることが好ましい。
【0016】
この半導体ウエハ加工用粘着テープでは、半導体ウエハが貼り付けられた後に長期間保管しても、半導体ウエハを良好にピックアップすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る半導体ウエハ加工用粘着テープは、半導体ウエハが貼り付けられた後に長期間保管しても、半導体ウエハを良好にピックアップすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係るダイシングテープの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係る半導体ウエハ加工用粘着テープ(以下、「ダイシングテープ」という)100は、主に、基層200および粘着層300から構成される。以下、基層200および粘着層300について、それぞれ詳しく説明する。
【0020】
<基層>
基層200は、主に、材料樹脂から成り、粘着層300を支持する役目を担っている。材料樹脂は、通常のフィルム成形方法によってフィルムに成形される。この材料樹脂として、光(可視光線、近赤外線、紫外線)、X線、電子線などを透過するものであれば特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のオレフィン系共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレート系樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリビニルイソプレン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂や、これらの熱可塑性樹脂の混合物が用いられる。
【0021】
特に、材料樹脂として、ポリプロピレンとエラストマーとの混合物、またはポリエチレンとエラストマーとの混合物が用いられることが好ましい。また、このエラストマーとして、一般式(1)で示されるポリスチレンセグメントと一般式(2)で示されるビニルポリイソプレンセグメントとから成るブロック共重合体が好ましい。
【0022】
【化1】

(式(1)中、nは2以上の整数)
【0023】
【化2】

(式(2)中、nは2以上の整数)
【0024】
基層200の厚みは、特に限定されないが、50μm以上300μm以下であるのが好ましく、80μm以上200μm以下であるのがより好ましい。基層200の厚みがこの範囲内であると、ダイシング工程における作業性に優れるからである。
【0025】
基層200の製法として、特に限定されないが、カレンダー法、押出成形法などの一般的な成形方法が用いられる。基層200の表面には、粘着層300を構成する材料と反応する官能基、例えば、ヒドロキシル基またはアミノ基などが露出していることが好ましい。また、基層200と粘着層300との密着性を向上するために、基層200の表面をコロナ処理またはアンカーコート等で表面処理しておくのが好ましい。
【0026】
<粘着層>
粘着層300は、ダイシング工程において半導体ウエハ等を粘着して支持する役目を担っている。この粘着層300は、ダイシング工程後、光が照射されると、半導体ウエハ等の切断片を容易に剥離させることができる状態となる。なお、使用前のダイシングテープ100では、通常、粘着層300が離型フィルムで保護されている。
【0027】
粘着層300は、基層200の片側の面上に形成されている(図1参照)。なお、粘着層300の材料である樹脂溶液は、通常、ダイコート、カーテンダイコート、グラビアコート、コンマコート、バーコート、またはリップコート等の塗布方法により基層200に塗布される。乾燥後の粘着層300の厚みは、特に限定されないが、5μm以上30μm以下であるのが好ましく、10μm以上20μm以下であるのがより好ましい。乾燥後の粘着層300の厚みは5μm以上30μm以下であるとき、粘着層300は、良好な粘着力を有し、かつ、紫外線または電子線などを照射された後では、良好な剥離性を有する。
【0028】
粘着層300は、主に、ベース樹脂、および粘着層300を硬化させる硬化成分から構成されている。なお、この粘着層300には、任意成分として、帯電防止剤、および粘着付与剤などが含まれていてもよい。以下、各成分についてそれぞれ詳述する。
【0029】
(1)ベース樹脂
ベース樹脂としては、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂またはウレタン系樹脂等の粘着層成分として用いられる公知のものを用いることができるが、耐熱性およびコストの観点からアクリル系樹脂を用いることが好ましい。
【0030】
(2)硬化成分
硬化成分は、例えば、光が照射されると硬化する。この硬化によってベース樹脂が硬化成分の架橋構造に取り込まれた結果、粘着層300の粘着力が低下する。このような硬化成分として、例えば、紫外線、電子線などのエネルギー線の照射によって三次元架橋可能な重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個以上分子内に有する低分子量化合物が用いられる。この硬化成分として、官能基数が15官能以上であるオリゴマーが含まれることが好ましい。
【0031】
具体的に、硬化成分として、特に限定されないが、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレート等、芳香族系、脂肪族系等のウレタンアクリレート等が用いられる。なお、これらの中でもウレタンアクリレートが好ましい。
【0032】
また、硬化成分には、特に限定されないが、重量平均分子量の異なる2つ以上の硬化成分が混合されているのが好ましい。このような硬化成分を利用すれば、光照射による樹脂の架橋度を制御し、ピックアップ性を向上させることができるからである。また、このような硬化成分として、例えば、第1の硬化成分と、第1の硬化成分よりも重量平均分子量が大きい第2の硬化成分との混合物などが用いられてもよい。
【0033】
さらに、硬化成分には、光重合開始剤、架橋剤などが含まれていてもよい。光重合開始剤は、硬化成分の重合開始を容易とするために添加される。光重合開始剤として、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノン等が挙げられる。
【0034】
硬化成分は、ベース樹脂100重量部に対して20重量部以上200重量部以下で配合されることが好ましい。上記のように硬化成分の配合量を調整することによって、ダイシングテープ100のピックアップ性は好適なものとなる。
【0035】
架橋剤として、例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、メチロール系架橋剤、キレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、多価金属キレート系架橋剤などが挙げられる。これらの中でもイソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0036】
イソシアネート系架橋剤として、特に限定されないが、例えば、多価イソシアネートのポリイソシアネート化合物およびポリイソシアネート化合物の三量体、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネート化合物の三量体または末端イソシアネートウレタンプレポリマーをフェノール、オキシム類などで封鎖したブロック化ポリイソシアネート化合物などが挙げられる。
【0037】
多価イソシアネートとして、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート等が用いられる。これらの中でも2,4−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートから成る群より選択される少なくとも1種の多価イソシアネートが好ましい。
【0038】
架橋剤は、ベース樹脂100重量部に対して5重量部以上50重量部以下で配合されることが好ましい。上記のように架橋剤の配合量を調整することによって、ダイシングテープ100のピックアップ性は好適なものとなる。
【0039】
(3)帯電防止剤
帯電防止剤として、特に限定されないが、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤などの界面活性剤が用いられる。また、温度依存性を示さない帯電防止剤として、例えば、カーボンブラック、銀、ニッケル、アンチモンドープスズ酸化物、スズドープインジウム酸化物などの粉体が用いられる。
【0040】
(4)粘着付与剤
粘着付与剤として、特に限定されないが、例えば、ロジン樹脂、テルペン樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、スチレン樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族芳香族共重合系石油樹脂などが用いられる。
【0041】
<ダイシングテープの使用方法>
ダイシングテープ100の使用方法は、公知の方法を用いることができる。例えばダイシングテープ100を半導体ウエハのバックグラインドされた面または鏡面に貼り付ける。なお、「鏡面」とは、表面粗さRz(JIS B0601に準じて測定)が、10nm以下の面をいう。
【0042】
半導体ウエハは、ダイシングテープ100で固定され、この状態で保管される。保管後、回転丸刃で半導体デバイスを素子小片に切断する。切断後、ダイシングテープ100の基層200側から紫外線または電子線などを照射する。紫外線または電子線などを照射後、専用治具を用いてダイシングテープ100を放射状に拡張してチップ間を一定間隔に広げた後、半導体デバイスをニードル等で突き上げる。突き上げられた半導体デバイスは、真空コレットまたはエアピンセットによる吸着などでピックアップされた後、マウンティングされるか、またはトレイに収納される。
【0043】
<本実施形態における効果>
このダイシングテープ100では、半導体ウエハが、バックグラインドされた面で貼り付けられた後14日間放置されてから光が照射されたときの粘着力が、20cN/25mm未満である。そのため、ダイシングテープ100は、半導体ウエハが貼り付けられた後に長期間保管しても、半導体ウエハを良好にピックアップすることができる。
【0044】
このダイシングテープ100では、半導体ウエハが、バックグラインドされた面で貼り付けられた後の粘着力が、200cN/25mm以上である。そのため、このダイシングテープ100では、ダイシングのときに、チップ飛びが発生しにくい。
【0045】
このダイシングテープ100では、半導体ウエハが、鏡面で貼り付けられた後の粘着力が、90cN/25mm以上である。そのため、このダイシングテープ100では、ダイシングのときに、チップ飛びが発生しにくい。
【0046】
このダイシングテープ100では、半導体ウエハが貼り付けられた後に長期間保管しても、半導体ウエハを良好にピックアップすることができる。
【0047】
このダイシングテープ100では、半導体ウエハが貼り付けられた後に長期間保管しても、半導体ウエハを良好にピックアップすることができる。
【実施例】
【0048】
次に、本発明のダイシングテープ100に係る実施例と、比較例とについて説明する。なお、実施例によって本発明は何ら限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)
<ダイシングテープの作製>
基層200を構成する材料樹脂として、ポリプロピレン60重量部と、一般式(1)で示されるポリスチレンセグメントと一般式(2)で示されるビニルポリイソプレンセグメントとから成るブロック共重合体40重量部とを準備した。
【0050】
【化3】

(式(1)中、nは2以上の整数)
【0051】
【化4】

(式(2)中、nは2以上の整数)
【0052】
上記の基層200を構成する材料を2軸混練機で混練した後、混練したものを押出し機で押し出して、厚み100μmの基層200を作製した。
【0053】
粘着層300のベース樹脂として、第1の共重合体を10重量部と、第2の共重合体を90重量部とからなる樹脂(以下、「ベース樹脂A」という)を準備した。第1の共重合体として、アクリル酸ブチル70重量部と、アクリル酸2−エチルヘキシル25重量部と、酢酸ビニル5重量部とを共重合させて得られた重量平均分子量が500000の共重合体を用いた。第2の共重合体として、アクリル酸2−エチルヘキシル50重量部と、アクリル酸ブチル10重量部と、酢酸ビニル37重量部と、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル3重量部とを共重合させて得られた重量平均分子量が300000の共重合体を用いた。
【0054】
粘着層300の硬化成分として、15官能のオリゴマーのウレタンアクリレート(Miwon Specialty Chemical社製、品番:Miramer SC2152)を、ベース樹脂100重量部に対して140重量部準備した。粘着層300の架橋剤として、ポリイソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製、品番:コロネートL)を、ベース樹脂100重量部に対して5重量部準備した。粘着層300の光重合開始剤として、ベンジルジメチルケタール(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製、品番:イルガキュア651)を、ベース樹脂100重量部に対して3重量部準備した。
【0055】
上記の粘着層300のベース樹脂、硬化成分、架橋剤、および光重合開始剤が配合された樹脂溶液を作製した。この樹脂溶液を、乾燥後の粘着層300の厚みが10μmになるようにして基層200にバーコート塗工した後、80℃で5分間乾燥させて、所望のダイシングテープ100を得た。
【0056】
<粘着力の測定および評価>
ダイシングテープ100を、半導体ウエハの鏡面に貼り付けた。半導体ウエハを貼着後、常温で20分間放置したダイシングテープ100の半導体ウエハに対する粘着力(以下、「粘着力A」という)を180°剥離試験により測定した。
【0057】
さらに、ダイシングテープ100を、バックグラインド後1分以内の半導体ウエハのバックグラインドされた面に貼り付けた。半導体ウエハを貼着後、14日間放置されてから光が照射されたときのダイシングテープ100の半導体ウエハに対する粘着力(以下、「粘着力B」という)を180°剥離試験により測定した。また、半導体ウエハを貼着後、常温で20分間放置したダイシングテープ100の半導体ウエハに対する粘着力(以下、「粘着力C」という)を180°剥離試験により測定した。なお、粘着力A、粘着力B、粘着力Cに係る20分間および14日間の放置は、温度が23℃、湿度が50%RHの条件で行った。
【0058】
180°剥離試験は、万能試験機(株式会社エー・アンド・デイ製、品名:テンシロン)を用いて、環境温度:23℃、環境圧力:常圧、引張速度:300mm/minの条件下で行われた。そして、得られた粘着力チャートの平均値を粘着層300の粘着力(cN/25mm)とした。
【0059】
粘着力Aについては、90cN/25mm以上のものを○、90cN/25mm未満のものを×で評価した。粘着力Bについては、20cN/25mm未満のものを○、20cN/25mm以上のものを×で評価した。粘着力Cについては、200cN/25mm以上のものを○、200cN/25mm未満のものを×で評価した。
【0060】
上記の測定および評価を行った結果、粘着力Aは100cN/25mmであり、○の評価であった。粘着力Bは14cN/25mmであり、○の評価であった。粘着力Cは220cN/25mmであり、○の評価であった(下記表1参照)。
【0061】
<チップ飛び試験>
ダイシングテープ100を、直径5インチで厚み600μmの円型の半導体ウエハの鏡面に貼り付けた。ダイシングテープ100を半導体ウエハに貼着後、常温で20分間放置し、半導体ウエハを、ブレード回転数40000rpm、カット速度70mm/sec、ブレードハイト90μmの条件で、2mm×2mmのサイズにダイシングし、チップを作製した。ダイシング後、チップ飛びしたチップの個数を数えた。
【0062】
チップ飛びした正方形のチップの個数が0個のものを○、チップ飛びした正方形のチップの個数が1個以上のものを×で評価した。なお、円型の半導体ウエハの端部をダイシングしたときに三角形のチップが作製されるが、この三角形のチップについてはカウントしないものとした。
【0063】
上記の試験を行った結果、チップ飛びしたチップの個数が0個であり、○の評価であった(下記表1参照)。
【0064】
<ピックアップ試験>
ダイシングテープ100を、バックグラインド後1分以内の半導体ウエハのバックグラインドされた面に貼り付けた。ダイシングテープ100を半導体ウエハに貼着後、常温で20分間放置し、半導体ウエハを、ブレード回転数40000rpm、カット速度70mm/sec、ブレードハイト90μmの条件で、10mm×10mmのサイズにダイシングし、チップを作製した。ダイシング後、ニードル本数4本、ニードル間隔8mmの条件でチップのピックアップを行い、ピックアップ成功率を測定した。
【0065】
ピックアップ成功率が98%以上のものを○、ピックアップ成功率が98%未満のものを×で評価した。
【0066】
上記の試験を行った結果、ピックアップ成功率が100%であり、○の評価であった(下記表1参照)。
【0067】
(実施例2)
下記以外については実施例1と同様にして、ダイシングテープ100を得た。粘着層300のベース樹脂として、アミド基を含有するガラス転移温度−15℃のアクリル系樹脂(以下、「ベース樹脂B」という)を準備した。粘着層300の硬化成分として、15官能のオリゴマーのウレタンアクリレート(新中村化学工業株式会社製、品番:UA−53H)を、ベース樹脂100重量部に対して140重量部準備した。粘着層300の架橋剤を、ベース樹脂100重量部に対して8重量部準備した。
【0068】
このダイシングテープ100について、実施例1と同様にして、粘着力の測定および評価、チップ飛び試験、ピックアップ試験を行った。
【0069】
その結果、粘着力Aは125cN/25mmであり、○の評価であった。粘着力Bは15cN/25mmであり、○の評価であった。粘着力Cは240cN/25mmであり、○の評価であった。チップ飛びしたチップの個数が0個であり、○の評価であった。ピックアップ成功率が99%であり、○の評価であった(下記表1参照)。
【0070】
(比較例1)
下記以外については実施例1と同様にして、ダイシングテープを得た。粘着層300の硬化成分として、重量平均分子量が11000の2官能ウレタンアクリレートと、重量平均分子量が500の5官能アクリレートモノマーとを、ベース樹脂100重量部に対して各30重量部準備した。粘着層300の架橋剤を、ベース樹脂100重量部に対して7重量部準備した。
【0071】
このダイシングテープについて、実施例1と同様にして、粘着力の測定および評価、チップ飛び試験、ピックアップ試験を行った。
【0072】
その結果、粘着力Aは300cN/25mmであり、○の評価であった。粘着力Bは273cN/25mmであり、×の評価であった。粘着力Cは580cN/25mmであり、○の評価であった。チップ飛びしたチップの個数が0個であり、○の評価であった。ピックアップ成功率が0%であり、×の評価であった(下記表1参照)。
【0073】
(比較例2)
下記以外については実施例1と同様にして、ダイシングテープを得た。粘着層300の硬化成分として、重量平均分子量が11000の2官能ウレタンアクリレートを、ベース樹脂100重量部に対して120重量部準備した。粘着層300の架橋剤を、ベース樹脂100重量部に対して22重量部準備した。
【0074】
このダイシングテープについて、実施例1と同様にして、粘着力の測定および評価、チップ飛び試験、ピックアップ試験を行った。
【0075】
その結果、粘着力Aは150cN/25mmであり、○の評価であった。粘着力Bは107cN/25mmであり、×の評価であった。粘着力Cは275cN/25mmであり、○の評価であった。チップ飛びしたチップの個数が0個であり、○の評価であった。ピックアップ成功率が4%であり、×の評価であった(下記表1参照)。
【0076】
(比較例3)
下記以外については実施例1と同様にして、ダイシングテープを得た。粘着層300の硬化成分として、重量平均分子量が11000の2官能ウレタンアクリレートを、ベース樹脂100重量部に対して120重量部準備した。粘着層300の架橋剤を、ベース樹脂100重量部に対して45重量部準備した。
【0077】
このダイシングテープについて、実施例1と同様にして、粘着力の測定および評価、チップ飛び試験、ピックアップ試験を行った。
【0078】
その結果、粘着力Aは40cN/25mmであり、×の評価であった。粘着力Bは20cN/25mmであり、×の評価であった。粘着力Cは65cN/25mmであり、×の評価であった。チップ飛びしたチップの個数が72個であり、×の評価であった。ピックアップ成功率が98%であり、○の評価であった(下記表1参照)。
【0079】
(比較例4)
下記以外については実施例1と同様にして、ダイシングテープを得た。粘着層300のベース樹脂として、ベース樹脂Bを準備した。粘着層300の硬化成分として、9官能のオリゴマーのウレタンアクリレート(新中村化学工業株式会社製、品番:UA−32P)を、ベース樹脂100重量部に対して115重量部準備した。粘着層300の架橋剤として、イソシアネート系アクリロイル基含有モノマーを、ベース樹脂100重量部に対して13重量部準備した。
【0080】
このダイシングテープについて、実施例1と同様にして、粘着力の測定および評価、チップ飛び試験、ピックアップ試験を行った。
【0081】
その結果、粘着力Aは300cN/25mmであり、○の評価であった。粘着力Bは85cN/25mmであり、×の評価であった。粘着力Cは630cN/25mmであり、○の評価であった。チップ飛びしたチップの個数が0個であり、○の評価であった。ピックアップ成功率が7%であり、×の評価であった(下記表1参照)。
【0082】
(比較例5)
下記以外については実施例1と同様にして、ダイシングテープを得た。基層200を構成する材料として、塩化ビニル樹脂70重量部と、可塑剤としてジオクチルフタレート(DOP)30重量部とを準備した。粘着層300の硬化成分として、重量平均分子量が11000の2官能ウレタンアクリレートを、ベース樹脂100重量部に対して95重量部準備した。粘着層300の架橋剤を、ベース樹脂100重量部に対して11重量部準備した。
【0083】
このダイシングテープについて、実施例1と同様にして、粘着力の測定および評価、チップ飛び試験、ピックアップ試験を行った。
【0084】
その結果、粘着力Aは85cN/25mmであり、×の評価であった。粘着力Bは86cN/25mmであり、×の評価であった。粘着力Cは155cN/25mmであり、×の評価であった。チップ飛びしたチップの個数が6個であり、×の評価であった。ピックアップ成功率が9%であり、×の評価であった(下記表1参照)。
【0085】
【表1】

【0086】
実施例1、2に係るダイシングテープ100では、粘着力の評価、チップ飛び試験、ピックアップ試験の全ての評価が○であった。これに対して、比較例1〜5に係るダイシングテープでは、粘着力の評価、チップ飛び試験、ピックアップ試験のうちの少なくとも2つの評価が×であった。
【符号の説明】
【0087】
100 半導体ウエハ加工用粘着テープ(ダイシングテープ)
200 基層
300 粘着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハが、バックグラインド後1分以内に、バックグラインドされた面で貼り付けられた後14日間放置されてから光が照射されたときの粘着力が、20cN/25mm未満である半導体ウエハ加工用粘着テープ。
【請求項2】
半導体ウエハが、バックグラインド後1分以内に、バックグラインドされた面で貼り付けられた後20分間放置されたときの粘着力が、200cN/25mm以上である請求項1に記載の半導体ウエハ加工用粘着テープ。
【請求項3】
半導体ウエハが鏡面で貼り付けられた後20分間放置されたときの粘着力が、90cN/25mm以上である請求項1または2に記載の半導体ウエハ加工用粘着テープ。
【請求項4】
基層と、
前記基層上に形成され、官能基数が15官能以上であるオリゴマーを含む粘着層とを備える請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体ウエハ加工用粘着テープ。
【請求項5】
前記オリゴマーは、ウレタンアクリレートである請求項4に記載の半導体ウエハ加工用粘着テープ。

【図1】
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【公開番号】特開2012−248640(P2012−248640A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118512(P2011−118512)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】