説明

半導体ウエハ等加工用粘着テープ

【課題】本発明の課題は、テープ剥離後の被着体の表面に残る粘着剤の量を十分に低減させることができる半導体ウエハ等加工用粘着テープを提供することである。
【解決手段】本発明に係る半導体ウエハ等加工用粘着テープ100は、基層200と、粘着層300とを備える。粘着層300は、基層200上に形成される。また、粘着層300は、主に、カルボキシル基含有ポリマーから成る。カルボキシル基含有ポリマーは、ウレタンアクリレートを含有する。ウレタンアクリレートは、重量平均分子量が1000以上20000以下であると共に、官能基数が10官能以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等加工用粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従前から、半導体ウエハやパッケージ品のダイシング加工に用いられる半導体ウエハ等の加工用粘着テープ(以下、「ダイシングテープ」という)が種々提案されている。一般に、ダイシングテープでは基層上に粘着層が形成されており、この粘着層により半導体ウエハ等が固定される。半導体ウエハ等のダイシング加工後、半導体チップを容易にピックアップすることができるように、粘着層には通常、光硬化型樹脂、光重合開始剤、および架橋剤などが添加されている。つまり、ダイシング加工後、粘着層に光が照射されると、これらの成分が硬化して粘着層の粘着性が低下し、半導体チップのピックアップが容易となる。
【0003】
ところで、ダイシングテープを被着体から剥離させる工程において、被着体の表面に粘着層を構成する粘着剤の一部が残る、いわゆる糊残りが発生するという問題がある。また、ダイシングテープで被着体を保持する工程において、ダイシングテープは凹凸のある被着体を安定して保持することができないという問題がある。そこで、例えば、特許文献1、2には、上記の問題を解決するために粘着層の材料が適宜選択されたダイシングテープが開示されている。これらダイシングテープは、凹凸のある被着体を安定して保持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−136298号公報
【特許文献2】特開2003−105283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これらダイシングテープでは、テープ剥離後の被着体の表面に残る粘着剤の量を十分に低減させることができなかった。
【0006】
本発明の目的は、テープ剥離後の被着体の表面に残る粘着剤の量を十分に低減させることができる半導体ウエハ等加工用粘着テープを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)
本発明に係る半導体ウエハ等加工用粘着テープは、基層と、粘着層とを備える。粘着層は、基層上に形成される。また、粘着層は、主に、カルボキシル基含有ポリマーから成る。粘着層は、ウレタンアクリレートを含む。ウレタンアクリレートは、重量平均分子量が1000g/mol以上20000g/mol以下であると共に、官能基数が10官能以上である。なお、ウレタンアクリレートの官能基数は、ウレタンアクリレート分子1個あたりのビニル基数である。
【0008】
上記構成を備えることにより本発明に係る半導体ウエハ等加工用粘着テープは、テープ剥離後の被着体の表面に残る粘着層300を構成する粘着剤の量を十分に低減させることができ、かつ、被着体に対して良好な粘着力を有するものとなる。さらに、本発明に係る半導体ウエハ等加工用粘着テープは、良好なピックアップ性を有し、また、この半導体ウエハ等加工用粘着テープは、凹凸のある被着体を安定して保持することができるものとなる。
【0009】
(2)
上述(1)の半導体ウエハ等加工用粘着テープでは、粘着層は、カルボキシル基含有ポリマー100重量部に対して、3重量部以上14重量部以下の架橋剤をさらに含むことが好ましい。
【0010】
上記構成を備えることにより本発明に係る半導体ウエハ等加工用粘着テープは、テープ剥離後の被着体の表面に残る粘着剤の量を十分に低減させることができ、かつ、被着体に対してより良好な粘着力を有するものとなる。さらに、本発明に係る半導体ウエハ等加工用粘着テープは、より良好なピックアップ性を有するものとなる。
【0011】
(3)
上述(1)または(2)の半導体ウエハ等加工用粘着テープでは、カルボキシル基含有ポリマーはエステル基をさらに含有する。カルボキシル基含有ポリマーのエステル基の個数とカルボキシル基の個数との比(エステル基/カルボキシル基)は、80/20以上95/5以下であることが好ましい。
【0012】
上記構成を備えることにより本発明に係る半導体ウエハ等加工用粘着テープは、凹凸のある被着体をより安定して保持することができるものとなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る半導体ウエハ等加工用粘着テープは、テープ剥離後の被着体の表面に残る粘着剤の量を十分に低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るダイシングテープの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係る半導体ウエハ等加工用粘着テープ(以下、「ダイシングテープ」という)100は、主に、基層200および粘着層300から構成される。以下、基層200および粘着層300について、それぞれ詳しく説明する。
【0016】
<基層>
基層200は、主に、材料樹脂から成り、粘着層300を支持する役目を担っている。また、この基層200は、ダイシング工程後に実施されるエキスパンド工程において、引延しに耐え得るだけの強度を有する。エキスパンド工程とは、ダイシングテープ100を引き伸ばし、チップ間隔を拡張する工程である。このエキスパンド工程の目的は、ピックアップの際にチップの認識性を高めること、および隣接するチップ同士の接触によるデバイスの破損を防止することである。
【0017】
材料樹脂は、通常のフィルム成形方法によってフィルムに成形される。この材料樹脂として、光(可視光線、近赤外線、紫外線、X線、電子線など)を透過するものであれば特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のオレフィン系共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレート系樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリビニルイソプレン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂や、これらの熱可塑性樹脂の混合物が用いられる。
【0018】
特に、材料樹脂として、ポリプロピレンとエラストマーとの混合物、またはポリエチレンとエラストマーとの混合物が用いられることが好ましい。また、このエラストマーとして、一般式(1)で示されるポリスチレンセグメントと一般式(2)で示されるビニルポリイソプレンセグメントとから成るブロック共重合体が好ましい。
【0019】
【化1】

(式(1)中、nは2以上の整数)
【0020】
【化2】

(式(2)中、nは2以上の整数)
【0021】
基層200の厚みは、特に限定されないが、50μm以上300μm以下であるのが好ましく、80μm以上200μm以下であるのがより好ましい。基層200の厚みがこの範囲内であると、ダイシング工程またはエキスパンド工程における作業性に優れるからである。
【0022】
基層200の製法として、特に限定されないが、カレンダー法、押出成形法などの一般的な成形方法が用いられる。基層200の表面には、粘着層300を構成する材料と反応する官能基、例えば、ヒドロキシル基またはアミノ基などが露出していることが好ましい。また、基層200と粘着層300との密着性を向上するために、基層200の表面をコロナ処理またはアンカーコート等で表面処理しておくのが好ましい。
【0023】
<粘着層>
粘着層300は、ダイシング工程において被着体である半導体ウエハ等を粘着して保持する役目を担っている。この粘着層300は、ダイシング工程後に光が照射されると、半導体ウエハ等の切断片を容易に剥離させることができる状態となる。なお、使用前のダイシングテープ100では、通常、粘着層300が離型フィルムで保護されている。
【0024】
粘着層300は、基層200の片側の面上に形成されている(図1参照)。なお、粘着層300の材料である樹脂溶液は、通常、ダイコート、カーテンダイコート、グラビアコート、コンマコート、バーコート、またはリップコート等の塗布方法により基層200に塗布される。乾燥後の粘着層300の厚みは、特に限定されないが、5μm以上30μm以下であるのが好ましく、10μm以上20μm以下であるのがより好ましい。
【0025】
粘着層300は、主に、カルボキシル基含有ポリマーから構成される。また、粘着層300は、粘着層300を硬化させる硬化成分が含まれる。なお、この粘着層300には、任意成分として、帯電防止剤、および粘着付与剤などが含まれていてもよい。以下、各成分についてそれぞれ詳述する。
【0026】
(1)カルボキシル基含有ポリマー
カルボキシル基含有ポリマーは、カルボキシル基を有する付加型モノマーと、アクリル酸エステルとの共重合体、すなわちエステル基を含有するカルボキシル基含有アクリル系ポリマーであることが好ましい。このカルボキシル基含有ポリマーのエステル基の個数とカルボキシル基の個数との比(エステル基/カルボキシル基)は、80/20以上95/5以下であることが好ましく、85/15以上95/5以下であることがより好ましく、85/15以上90/10以下であることがさらに好ましい。なお、このカルボキシル基含有アクリル系ポリマーには、本発明の趣旨を損なわない範囲で、酢酸ビニルモノマー、およびカルボキシル基以外の官能基を有する付加型モノマーの少なくとも一方が共重合されてもかまわない。
【0027】
カルボキシル基を有する付加型モノマーとして、特に限定されないが、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸などが挙げられる。アクリル酸エステルとして、特に限定されないが、例えばアクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等が挙げられる。これらの中でもアクリル酸エチル、アクリル酸ブチル及びアクリル酸2−エチルヘキシルから成る群から選択される少なくとも1種のアクリル酸エステルが好ましい。
【0028】
また、カルボキシル基以外の官能基を有する付加型モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリルアミド、メチロールアクリルアミド、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
【0029】
例えば、カルボキシル基含有アクリル系ポリマーとして、下記化学構造式(3)で示されるアクリル系樹脂、すなわち、カルボキシル基を有する付加型モノマーであるアクリル酸と、アクリル酸エステルであるアクリル酸2−エチルへキシルとの共重合体が用いられる。この化学構造式において、nは90重量部相当モル数であり、mは10重量部相当モル数であることが好ましい。
【0030】
【化3】

【0031】
(2)硬化成分
硬化成分として、紫外線硬化樹脂であるウレタンアクリレートが用いられる。さらに、硬化成分として、光重合開始剤、架橋剤が一緒に用いられることが好ましい。ウレタンアクリレートは、紫外線が照射されると硬化する。この硬化によってベース樹脂がウレタンアクリレートの架橋構造に取り込まれた結果、粘着層300の粘着力が低下する。なお、硬化成分として、本発明の趣旨を損なわない範囲で、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレート等をウレタンアクリレートと一緒に用いてもよい。
【0032】
ウレタンアクリレートは、重量平均分子量が1000g/mol以上20000g/mol以下であり、5000g/mol以上15000g/mol以下であることが好ましく、8000g/mol以上10000g/mol以下であることがより好ましい。また、ウレタンアクリレートは、官能基数が10官能以上である。なお、ウレタンアクリレートの官能基数は、ウレタンアクリレート分子1個あたりのビニル基数である。
【0033】
光重合開始剤は、硬化成分の重合開始を容易とするために添加される。光重合開始剤として、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノン等が挙げられる。
【0034】
架橋剤として、例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、メチロール系架橋剤、キレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、多価金属キレート系架橋剤などが挙げられる。これらの中でもイソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0035】
イソシアネート系架橋剤として、特に限定されないが、例えば、多価イソシアネートのポリイソシアネート化合物およびポリイソシアネート化合物の三量体、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネート化合物の三量体または末端イソシアネートウレタンプレポリマーをフェノール、オキシム類などで封鎖したブロック化ポリイソシアネート化合物などが挙げられる。
【0036】
多価イソシアネートとして、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート等が用いられる。これらの中でも2,4−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートから成る群より選択される少なくとも1種の多価イソシアネートが好ましい。
【0037】
粘着層300は、カルボキシル基含有ポリマー100重量部に対して、3重量部以上14重量部以下の架橋剤を含有することが好ましく、4重量部以上10重量部以下の架橋剤を含有することがより好ましく、5重量部以上7重量部以下の架橋剤を含有することがさらに好ましい。
【0038】
(3)帯電防止剤
帯電防止剤として、特に限定されないが、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤などの界面活性剤が用いられる。また、温度依存性を示さない帯電防止剤として、例えば、カーボンブラック、銀、ニッケル、アンチモンドープスズ酸化物、スズドープインジウム酸化物などの粉体が用いられる。
【0039】
(4)粘着付与剤
粘着付与剤として、特に限定されないが、例えば、ロジン樹脂、テルペン樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、スチレン樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族芳香族共重合系石油樹脂などが用いられる。
【0040】
<ダイシングテープの使用方法>
ダイシングテープ100の使用方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、ダイシングテープ100を被着体である半導体ウエハに貼り付けて固定した後、回転丸刃で半導体デバイスを素子小片ごとに切断する。切断後、ダイシングテープ100の基層200側から紫外線を照射する。照射後、専用治具を用いてダイシングテープ100を放射状に拡張してチップ間を一定間隔に広げた後、半導体デバイスをニードル等で突き上げる。突き上げられた半導体デバイスは、真空コレットまたはエアピンセットによる吸着などでピックアップされた後、マウンティングされるか、またはトレイに収納される。
【0041】
<本実施形態における効果>
本発明に係るこの半導体ウエハ等加工用粘着テープは、テープ剥離後の被着体の表面に残る粘着層300を構成する粘着剤の量を十分に低減させることができ、かつ、被着体に対して良好な粘着力を有するものとなる。さらに、この半導体ウエハ等加工用粘着テープは、良好なピックアップ性を有する。また、この半導体ウエハ等加工用粘着テープは、凹凸のある被着体を安定して保持することができる。
【0042】
カルボキシル基含有ポリマー100重量部に対して、3重量部以上14重量部以下の架橋剤をさらに含む粘着層300を備えるダイシングテープ100は、テープ剥離後の被着体の表面に残る粘着剤の量を十分に低減させることができ、かつ、被着体に対してより良好な粘着力を有するものとなる。さらに、ダイシングテープ100は、より良好なピックアップ性を有するものとなる。
【0043】
カルボキシル基含有ポリマーのエステル基の個数とカルボキシル基の個数との比(エステル基/カルボキシル基)が80/20以上95/5以下であるダイシングテープ100は、凹凸のある被着体をより安定して保持することができる。
【実施例】
【0044】
次に、本発明のダイシングテープ100に係る実施例1、2と、比較例1〜5とについて説明する。なお、実施例によって本発明は何ら限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)
<ダイシングテープの作製>
基層200を構成する材料として、ポリプロピレン60重量部、一般式(1)で示されるポリスチレンセグメントと一般式(2)で示されるビニルポリイソプレンセグメントとから成るブロック共重合体40重量部を準備した。
【0046】
【化4】

(式(1)中、nは2以上の整数)
【0047】
【化5】

(式(2)中、nは2以上の整数)
【0048】
上記の基層200を構成する材料を2軸混練機で混練した後、混練したものを押出し機で押し出して、厚み150μmの基層200を作製した。
【0049】
粘着層300のカルボキシル基含有ポリマーとして、カルボキシル基含有アクリル系ポリマーを準備した。カルボキシル基含有アクリル系ポリマーは、ブチルアクリレート90重量%、およびアクリル酸10重量%を常法によりトルエン溶媒中にて溶液重合させたものである。このカルボキシル基含有アクリル系ポリマーは、重量平均分子量600,000の樹脂であり、エステル基の個数とカルボキシル基の個数との比(エステル基/カルボキシル基)が、90/10である。
【0050】
粘着層300の硬化成分として、重量平均分子量が3200g/molで、官能基数が10官能のウレタンアクリレート(Miwon Specialty Chemical社製、品名:Miramer
MU9500)を準備した。重量平均分子量の測定は、20mgのウレタンアクリレートを6mlのテトラヒドロフラン(以下THF)に溶解しGPCの測定を行った。GPCの測定はWaters社製アライアンス(2695セパレーションズモデュール、2414リフラクティブインデックスディテクター、TSKゲルGMHHR−Lx2+TSKガードカラムHHR−Lx1、移動相:THF、1.0ml/分)を用い、カラム温度40.0℃、示差屈折率計内温度40.0℃、サンプル注入量100μlの条件で行った。また、光重合開始剤である2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンを、カルボキシル基含有ポリマー100重量部に対して3重量部準備した。架橋剤であるポリイソシアネート系架橋剤を、カルボキシル基含有ポリマー100重量部に対して5重量部準備した。
【0051】
上記の粘着層300のカルボキシル基含有ポリマー、ウレタンアクリレート、光重合開始剤、および架橋剤が配合された樹脂溶液を作製した。この樹脂溶液を、乾燥後の粘着層300の厚みが15μmになるようにして基層200にバーコート塗工した後、80℃で5分間乾燥させて、所望のダイシングテープ100を得た。
【0052】
<被着体への粘着に関する評価、および糊残りに関する評価>
作製後23℃で7日間以上が経過したダイシングテープ100を、被着体である半導体ウエハに貼着した。貼着後20分が経過したダイシングテープ100の半導体ウエハ鏡面に対する粘着力を180°剥離試験により測定した。180°剥離試験は、万能試験機(株式会社エー・アンド・デイ製、品名:テンシロン)を用いて、環境温度:23℃、環境圧力:常圧、引張速度:300mm/minの条件下で行われた。そして、得られた粘着力チャートの平均値を粘着層300の粘着力(cN/25mm)とした。測定した粘着力が、500cN/25mm以上のものを○、500cN/25mm未満のものを×で評価した。
【0053】
さらに、ダイシングテープ100を剥離した後の半導体ウエハの表面に粘着層300を構成する粘着剤の一部が残る、いわゆる糊残りが発生しているか否かについて評価を行った。具体的に、ダイシングテープ100を剥離した後の半導体ウエハのダイシングテープ100が貼着されていた面に残る糊残り、ダイシングテープ100が貼着されていた面の逆の面、または側面に対してダイシング時に飛散した糊の付着を目視で観察した。半導体ウエハに糊残りおよび糊の付着が発生していないものを○、半導体ウエハに糊残りまたは糊の付着が発生しているものを×で評価した。
【0054】
上記の評価を行った結果、粘着力が1300cN/25mmであり、ダイシングテープ100の被着体への粘着に関する評価は○であった。ダイシングテープ100から剥離された半導体ウエハに糊残りが発生しておらず、糊残りに関する評価は○であった(下記表1参照)。
【0055】
<ピックアップ性の評価>
ダイシングテープ100に半導体ウエハを、23℃の条件下で圧着して20分間放置後、10mm×10mmのサイズにダイシングした。ダイシング後、ダイシングテープ100に紫外線を照射し、真空吸着するコレットを用いて半導体ウエハの表面を吸着し、4mm間隔の4本のニードルをダイシングテープ100の下から500μm突上げて、半導体ウエハをダイシングテープ100からピックアップした。ダイシングされた半導体ウエハのうちの95%以上がピックアップできたものを○、それ以外のものを×で評価した。
【0056】
上記の評価を行った結果、ダイシングしたチップのうち99%がピックアップでき、ピックアップ性の評価は○であった(下記表1参照)。
【0057】
(実施例2)
下記以外については実施例1と同様にして、ダイシングテープ100を得た。粘着層300の硬化成分として、重量平均分子量が14000g/molで、官能基数が15官能のウレタンアクリレート(Miwon Specialty Chemical社製、品名:Miramer
MU9510)を準備した。また、架橋剤であるポリイソシアネート系架橋剤を、カルボキシル基含有ポリマー100重量部に対して7重量部準備した。
【0058】
このダイシングテープ100について、実施例1と同様にして、被着体への粘着に関する評価、糊残りに関する評価、ピックアップ性の評価を行った。
【0059】
その結果、本実施例に係る粘着力が900cN/25mmであり、ダイシングテープ100の被着体への粘着に関する評価は○であった。ダイシングテープ100から剥離された半導体ウエハに糊残りが発生しておらず、糊残りに関する評価は○であった。ダイシングしたチップのうち100%がピックアップでき、ピックアップ性の評価は○であった(下記表1参照)。
【0060】
(比較例1)
下記以外については実施例1と同様にして、ダイシングテープを得た。粘着層300の硬化成分として、重量平均分子量が467g/molで、官能基数が4官能のウレタンアクリレート(日本化薬株式会社製、品名:Kayarad T-1420(T))を準備した。粘着層300の架橋剤として、ポリイソシアネート系架橋剤を、カルボキシル基含有ポリマー100重量部に対して5重量部準備した。
【0061】
このダイシングテープについて、実施例1と同様にして、被着体への粘着に関する評価、糊残りに関する評価、ピックアップ性の評価を行った。
【0062】
その結果、本比較例に係る粘着力が1900cN/25mmであり、ダイシングテープの被着体への粘着に関する評価は○であった。ダイシングテープから剥離された半導体ウエハに糊残りが発生しており、糊残りに関する評価は×であった。ダイシングしたチップのうち67%がピックアップでき、ピックアップ性の評価は×であった(下記表1参照)。
【0063】
(比較例2)
下記以外については実施例1と同様にして、ダイシングテープを得た。粘着層300の硬化成分として、重量平均分子量が20787g/molで、官能基数が15官能のウレタンアクリレート(Miwon Specialty Chemical社製、品名:Miramer
SC2152)を準備した。粘着層300の架橋剤として、ポリイソシアネート系架橋剤を、カルボキシル基含有ポリマー100重量部に対して7重量部準備した。
【0064】
このダイシングテープについて、実施例1と同様にして、被着体への粘着に関する評価、糊残りに関する評価、ピックアップ性の評価を行った。
【0065】
その結果、本比較例に係る粘着力が400cN/25mmであり、ダイシングテープの被着体への粘着に関する評価は×であった。ダイシングテープから剥離された半導体ウエハに糊残りが発生しておらず、糊残りに関する評価は○であった。ダイシングしたチップのうち100%がピックアップでき、ピックアップ性の評価は○であった(下記表1参照)。
【0066】
(比較例3)
下記以外については実施例1と同様にして、ダイシングテープを得た。粘着層300の硬化成分として、重量平均分子量が11000g/molで、官能基数が3官能のウレタンアクリレート(Miwon Specialty Chemical社製、品名:Miramer PU320)を準備した。粘着層300の架橋剤として、ポリイソシアネート系架橋剤を、カルボキシル基含有ポリマー100重量部に対して5重量部準備した。
【0067】
このダイシングテープについて、実施例1と同様にして、被着体への粘着に関する評価、糊残りに関する評価、ピックアップ性の評価を行った。
【0068】
その結果、本比較例に係る粘着力が870cN/25mmであり、ダイシングテープの被着体への粘着に関する評価は○であった。ダイシングテープから剥離された半導体ウエハに糊残りが発生してておらず、糊残りに関する評価は○であった。ダイシングしたチップのうち73%がピックアップでき、ピックアップ性の評価は×であった(下記表1参照)。
【0069】
(比較例4)
下記以外については実施例1と同様にして、ダイシングテープを得た。粘着層300のカルボキシル基含有ポリマーとして、アクリル系ポリマー(綜研化学株式会社製、品名:SKダイン 1491H)を準備した。粘着層300の硬化成分として、重量平均分子量が8000g/molで、官能基数が10官能のウレタンアクリレート(Miwon Specialty Chemical社製、品名:Miramer
MU9500)を準備した。粘着層300の架橋剤として、ポリイソシアネート系架橋剤を、カルボキシル基含有ポリマー100重量部に対して5重量部準備した。
【0070】
このダイシングテープについて、実施例1と同様にして、被着体への粘着に関する評価、糊残りに関する評価、ピックアップ性の評価を行った。
【0071】
その結果、本比較例に係る粘着力が300cN/25mmであり、ダイシングテープの被着体への粘着に関する評価は×であった。ダイシングテープから剥離された半導体ウエハに糊残りが発生しており、糊残りに関する評価は×であった。ダイシングしたチップのうち100%がピックアップでき、ピックアップ性の評価は○であった(下記表1参照)。
【0072】
(比較例5)
下記以外については実施例1と同様にして、ダイシングテープを得た。粘着層300のカルボキシル基含有ポリマーとして、シリコン系ポリマー(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、品名:TSE3221S)を準備した。粘着層300の硬化成分として、重量平均分子量が8000g/molで、官能基数が10官能のウレタンアクリレート(Miwon Specialty Chemical社製、品名:Miramer
MU9500)を準備した。粘着層300の架橋剤として、ポリイソシアネート系架橋剤を、カルボキシル基含有ポリマー100重量部に対して5重量部準備した。
【0073】
このダイシングテープについて、実施例1と同様にして、被着体への粘着に関する評価、糊残りに関する評価、ピックアップ性の評価を行った。
【0074】
その結果、本比較例に係る粘着力が340cN/25mmであり、ダイシングテープの被着体への粘着に関する評価は×であった。ダイシングテープから剥離された半導体ウエハに糊残りが発生しており、糊残りに関する評価は×であった。ダイシングしたチップのうち100%がピックアップでき、ピックアップ性の評価は○であった(下記表1参照)。
【0075】
【表1】

【0076】
実施例1、2に係るダイシングテープ100では、被着体への粘着に関する評価、糊残りに関する評価、ピックアップ性の評価が全て○であった。これに対して、比較例1〜5に係るダイシングテープでは、被着体への粘着に関する評価、糊残りに関する評価、ピックアップ性の評価のうちの少なくとも1つが×であった。
【符号の説明】
【0077】
100 ダイシングテープ(半導体ウエハ等加工用粘着テープ)
200 基層
300 粘着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基層と、
前記基層上に形成され、主に、カルボキシル基含有ポリマーから成る粘着層とを備え、
前記粘着層は、重量平均分子量が1000g/mol以上20000g/mol以下であると共に、官能基数が10官能以上であるウレタンアクリレートを含む半導体ウエハ等加工用粘着テープ。
【請求項2】
前記粘着層は、前記カルボキシル基含有ポリマー100重量部に対して、3重量部以上14重量部以下の架橋剤をさらに含む請求項1に記載の半導体ウエハ等加工用粘着テープ。
【請求項3】
前記カルボキシル基含有ポリマーは、エステル基をさらに含有し、
前記カルボキシル基含有ポリマーの前記エステル基の個数と前記カルボキシル基の個数との比(エステル基/カルボキシル基)は、80/20以上95/5以下である請求項1または2に記載の半導体ウエハ等加工用粘着テープ。

【図1】
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【公開番号】特開2012−207163(P2012−207163A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75003(P2011−75003)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】