説明

半導体ウエハ表面保護用粘着テープ

【課題】 半導体ウエハ表面保護用粘着テープを半導体ウエハに貼合したまま該ウエハ裏面を研削しても、100μm以下の薄膜ウエハとすることができる半導体ウエハ表面保護用粘着テープを提供する。
【解決手段】 基材樹脂フィルムと、該基材樹脂フィルム上にアクリル共重合体及び/又はウレタンアクリレート共重合体を含有するベース樹脂成分が架橋された中間樹脂層を介して、直接粘着剤層を有する、半導体ウエハ表面保護用粘着テープであって、当該半導体ウエハ表面保護用粘着テープを特定の条件で測定したループスティフネスの負荷荷重から求められた、単位幅当りの反発力αを基材の厚さβの2乗で割った反発係数γが100mN/mm以上であり、反発力αが13mN/mm以下であり、かつ縦方向と横方向の引張破断伸度の差が35%以下である半導体ウエハ表面保護用粘着テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ表面保護用粘着テープに関する。さらに詳しくは、半導体ウエハを薄膜に研削する際に使用される表面保護用粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージは、高純度シリコン単結晶等をスライスして半導体ウエハとした後、イオン注入、エッチング等により該ウエハ表面に集積回路を形成して製造される。集積回路が形成された半導体ウエハの裏面を研削、研磨等することにより、半導体ウエハは所望の厚さにされる。この際、半導体ウエハ表面に形成された集積回路を保護するために、半導体ウエハ表面保護用粘着テープが用いられる。裏面研削された半導体ウエハは、裏面研削が終了した後にウエハカセットへ収納され、ダイシング工程へ運搬され、半導体チップに加工される。
【0003】
従来は、裏面研削により半導体ウエハの厚さを200〜400μm程度まで薄くすることが行われていた。しかし、近年の高密度実装技術の進歩に伴い、半導体チップを小型化する必要が生じ、半導体ウエハの薄厚化が進んでいる。半導体チップの種類によっては、100μm程度まで薄くすることが必要となっている。また、一度の加工によって製造できる半導体チップの数を多くするためウエハの直径についても大型化される傾向にある。これまでは直径が5インチや6インチのウエハが主流だったのに対し、近年では直径8〜12インチの半導体ウエハから半導体チップに加工することが主流となっている。
半導体ウエハの薄厚化及び大径化の流れは、特に、NAND型やNOR型が存在するフラッシュメモリの分野や、揮発性メモリであるDRAMなどの分野で、顕著な傾向を示している。例えば、直径12インチの半導体ウエハを用いて、150μmの厚さ以下まで研削することも珍しくない。大口径の半導体ウエハを薄厚まで研削する場合、ウエハの剛性が低下し、反りが生じやすくなる。
【0004】
通常、半導体ウエハはロボットアームによりウエハカセットと呼ばれる専用のケースから一枚ごとに取り出され、研削機器内にある半導体ウエハ固定用治具で保持されて、裏面研削が行われる。裏面研削された半導体ウエハは、ロボットアームにより、ウエハカセットに収納され、次の工程へ搬送される。半導体ウエハ固定用治具で保持する際に半導体ウエハの反りが大きいと、半導体ウエハがうまく吸着できない場合や、最悪の場合には半導体ウエハが破損することがあった。また、ウエハカセットへ収納する際に半導体ウエハの反りが大きいと、ロボットアームが収納後の半導体ウエハに接触してしまい、半導体ウエハを破損させてしまう問題があった。
【0005】
そこで、研削後の薄型ウエハをウエハカセットに収納するのではなく、裏面研削工程からダイシングテープマウント工程まで一括して実施するような装置(インライン装置)が提案されている。また、ウエハ固定治具やロボットアームなどの性能向上により、ウエハが反っていてもその影響を受けにくい方法が提案されている。
【0006】
一方、半導体ウエハ表面保護用粘着テープを半導体ウエハに貼合する際に、半導体ウエハに印加される応力を低減することにより、半導体ウエハの反りを少なくする方法が提案されている。例えば特許文献1では、剛性フィルムと、応力緩和性フィルムとが、剥離可能な接着剤層を介して積層されてなる基材と、該基材の応力緩和性フィルム上に設けられた粘着剤層とからなる半導体ウエハ加工用粘着シートが提案されている。
また特許文献2では、基材と粘着剤層との間に特定の範囲の貯蔵弾性率を有する中間層を有する加工用粘着シートが提案され、特許文献3では、基材フィルムが少なくとも3層からなり、該基材フィルムの、表裏の最外層と内層の貯蔵弾性率がそれぞれ特定の範囲内の半導体ウエハ保護用粘着フィルムが提案されている。さらに特許文献4では、特定の材料が積層された多層シートが提案されている。
しかし特許文献1の半導体ウエハ表面保護用粘着テープは、半導体ウエハ加工を行った後に、剥離可能な接着剤層と剛性フィルムとの界面、剥離可能な接着剤層と応力緩和性フィルムとの界面、又は剥離可能な接着剤層を構成する層の内部で剥離するという工程を必要とするため、煩雑である。また、粘着剤層及び応力緩和層が何層にも重ねられており、クッション性が過剰であるため50μm厚以下に半導体ウエハを研削する場合にはウエハ割れを発生させる可能性が高い。
また、特許文献2の半導体ウエハ加工用粘着シートの半導体ウエハ保護用粘着シートを、ポリイミド膜が形成された半導体ウエハに貼合し、半導体ウエハの裏面研削を行った場合、半導体ウエハの厚さが100μm以下になると、半導体ウエハ表面にコーティングされている絶縁膜が収縮し、これにより半導体ウエハ自体も反ることがある。この場合は、半導体ウエハをウエハ固定用治具に保持する際に、半導体ウエハが落下するという問題があった。
さらに特許文献3の半導体ウエハ加工用粘着シートをポリイミド膜が形成された半導体ウエハに貼合し、半導体ウエハの裏面研削を行った場合、ウエハの搬送性については問題ないが、50μm厚以下の薄膜に半導体ウエハを研削した場合には、エッジクラックやウエハ割れが発生する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−261842号公報
【特許文献2】特開2004−107644号公報
【特許文献3】特開2002−69396号公報
【特許文献4】特開2006−264296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、半導体ウエハ表面保護用粘着テープを半導体ウエハに貼合したまま該ウエハ裏面を研削しても、100μm以下の薄膜ウエハとすることができる半導体ウエハ表面保護用粘着テープを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した。その結果、基材樹脂フィルムと、該基材樹脂フィルム上にアクリル重合体及び/又はウレタンアクリレート共重合体を含有するベース樹脂成分が架橋された中間樹脂層を介して、直接粘着剤層を有する、半導体ウエハ表面保護用粘着テープであって、当該半導体ウエハ表面保護用粘着テープを特定の条件下で測定したループスティフネスの負荷荷重から求められた、単位幅当りの反発力αと反発係数γが特定の範囲内にあり、かつ縦方向と横方向の引張破断伸度の差が特定の値以下である、半導体ウエハ表面保護用粘着テープが、上記課題を解決できることを見出した。本発明はこの知見に基づきなされたものである。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の発明を提供するものである。
<1>基材樹脂フィルムと、該基材樹脂フィルム上にアクリル重合体及び/又はポリウレタンアクリレートを含有するベース樹脂成分が架橋された中間樹脂層を介して、直接粘着剤層を有する、半導体ウエハ表面保護用粘着テープであって、当該半導体ウエハ表面保護用粘着テープを下記条件(a)〜(d)で測定したループスティフネスの負荷荷重から求められた、単位幅当りの反発力αを基材の厚さβの2乗で割った反発係数γが100mN/mm以上であり、反発力αが13mN/mm以下であり、且つ縦方向と横方向の引張破断伸度の差が35%以下であることを特徴とする半導体ウエハ表面保護用粘着テープ。
(a)装置
ループステフネステスタ(商品名、東洋精機社製)
(b)ループ(試験片)形状
長さ50mm以上、幅10mm
(c)圧子の押し込み速度
3.3mm/sec
(d)圧子の押し込み量
圧子がループと接触した時点から5mm押し込む
<2>前記中間樹脂層のアクリル共重合体が水酸基及びカルボキシル基を有することを特徴とする<1>記載の半導体ウエハ表面保護用粘着テープ。
<3>前記中間樹脂層のポリウレタンアクリレートが水酸基及びカルボキシル基を有することを特徴とする<1>記載の半導体ウエハ表面保護用粘着テープ。
<4>前記中間樹脂層の架橋後のガラス転移温度が−10℃〜30℃である<1>〜<3>のいずれか1項に記載の半導体ウエハ表面保護用粘着テープ。
<5>前記基材樹脂フィルムがポリエステル樹脂フィルムであることを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1項記載の半導体ウエハ表面保護用粘着テープ。
<6>前記ポリエステル樹脂フィルムがポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする<5>記載の半導体ウエハ表面保護用粘着テープ。
<7>前記ポリエステル樹脂フィルムの厚さが25〜75μmであることを特徴とする<5>又は<6>記載の半導体ウエハ表面保護用粘着テープ。
<8>前記半導体ウエハ表面保護用粘着テープが感圧型粘着テープであり、20〜25℃におけるSUS研磨面に対する粘着力が0.5N/25mm以上であり、かつ50℃におけるSUS研磨面に対する粘着力が0.5N/25mm以下であることを特徴とする<1>〜<7>のいずれか1項記載の半導体ウエハ表面保護用粘着テープ。
<9>前記粘着剤層を構成するベース樹脂の重量平均分子量が100万以上であることを特徴とする<8>記載の半導体ウエハ表面保護用粘着テープ。
<10>前記粘着剤層が、放射線を照射することにより粘着力が低くなることを特徴とする<1>〜<7>のいずれか1項記載の半導体ウエハの表面保護用粘着テープ。
<11>前記粘着剤層が、主鎖に対して放射線重合性炭素−炭素二重結合含有基を1つ以上有するアクリル系単量体を構成単位として含む重合体を主成分とするベース樹脂を用いてなることを特徴とする<10>に記載の半導体ウエハの表面保護用粘着テープ。
【発明の効果】
【0011】
本発明の半導体ウエハ表面保護用粘着テープを半導体ウエハ表面に貼合したまま該ウエハ裏面を研削して、100μm以下の薄膜ウエハとした場合であっても、該半導体ウエハの反りを低減することができる。このため、半導体ウエハの反りによるウエハ搬送時の落下ミスを少なくして、後工程であるダイシングテープやダイシング・ダイボンディングフィルムのマウント及び表面保護テープの剥離まで支障なく実施することができる。本発明の半導体ウエハ表面保護用粘着テープは、DRAMやNANDフラッシュのような、薄膜研削を必要とする半導体ウエハ加工に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の半導体ウエハ表面保護用粘着テープの一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照して本発明の好ましい半導体ウエハ表面保護用粘着テープについて説明する。
図1は本発明の半導体ウエハ表面保護用粘着テープの好ましい一実施形態を示す概略断面図である。図1からわかるように、基材樹脂フィルム1と、基材樹脂フィルム1上に粘着剤層2が、中間樹脂層3を介して基材樹脂フィルム1上に形成されている。
【0014】
本発明の半導体ウエハ表面保護粘着テープは、ポリイミドをはじめとする絶縁膜付きの半導体ウエハを薄膜まで研削した場合でも、半導体ウエハの反り量を抑制することができる。通常、半導体ウエハの表面にはポリイミド等の絶縁膜が数μm程度形成されている。該絶縁膜は加熱等によって架橋されていることが多いため、半導体ウエハ表面の絶縁膜には、残留応力が存在することがある。しかし半導体ウエハの裏面研削前は、半導体ウエハは厚く、剛性があるため、残留応力により半導体ウエハが反ることはない。しかし半導体ウエハを薄く研削していくと、半導体ウエハ自体の剛性が低下する。それにともないポリイミド膜をはじめとする絶縁膜を架橋する際の熱収縮などによる残留応力が半導体ウエハの剛性を上回り、半導体ウエハ自体が反るという現象が生じる。本発明の半導体ウエハ表面保護用粘着テープをウエハ表面に貼合して研削した場合には、本発明の粘着テープが、上記の絶縁膜の残留応力を上回る反り矯正率を発揮し、研削後の半導体ウエハの反りを低減することができる。
【0015】
本発明の半導体ウエハ表面保護用粘着テープは、半導体ウエハの裏面研削を行った後に剥離される。本発明の半導体ウエハ表面保護用粘着テープは、下記条件で測定したループスティフネスから求められた、単位幅当りの反発力αを基材の厚みβの2乗で割った反発係数γが100N/mm以上であり、反発力αが18N/mm以下であり、且つ縦方向と横方向の引張破断伸度の差が35%以下である。
反発係数がこの範囲内であれば、本発明の半導体ウエハ表面保護用粘着テープをロール状に巻取ることができる。反発係数γが小さすぎる場合には、ウエハ自体の反りを矯正する力が少ないため好ましくない。
一方、反発力αが大きすぎると、テープの剛性が強くなりすぎて、テープを剥離する際にテープ自体が曲がりにくくなり、薄膜研削後のウエハが割れやすくなるため好ましくない。反発力αは、18N/mm以下で良好な剥離性能が得られ、好ましくは10N/mm以下であり、更に好ましくは8N/mm以下である。反発力αは、たわみ抑制の点から、1N/mm以上であることが好ましい。
また、半導体ウエハ表面保護用粘着テープに研削後の半導体ウエハの反りを抑えられる剛性があったとしても、該粘着テープ自身が反ると、該粘着テープが貼合された半導体ウエハが反る結果となる。この場合、該粘着テープを貼合したまま半導体ウエハを搬送する場合の搬送エラーが起きたり、半導体ウエハのエッジ部が反ることがある。これにより、半導体ウエハ研削時に該ウエハがバタついてエッジチッピングやエッジクラックを発生させることがある。そこで、半導体ウエハ表面保護用粘着テープ自体の反りを抑制するため、縦方向と横方向の引張破断伸度の差が35%以下とする。これにより、粘着テープ自身の反りを低減することができる。
【0016】
本発明におけるループスティフネスとは、テープ状試験片の反発係数及び反発力を評価する指標である。ループスティフネスは、本発明の半導体ウエハ表面保護用粘着テープをループ状にし、そのループ状試験片に圧子で押圧してループが変形していくときに圧子にかかる荷重から得ることができる。
本発明におけるループスティフネスは、以下の条件(a)〜(d)で測定される。
(a)装置
ループステフネステスタ(商品名、東洋精機社製)
(b)ループ(試験片)形状
長さ50mm以上、幅10mm
(c)圧子の押し込み速度
3.3mm/sec
(d)圧子の押し込み量
圧子がループと接触した時点から5mm押し込む
本発明における半導体ウエハ表面保護用粘着テープの反発力は、上記の(d)により得られる負荷荷重を試験片の幅当たりで換算したものをいう。また半導体ウエハ表面保護用粘着テープの反発係数は、該反発力を試験片の基材樹脂フィルムの2乗で割った値をいう。
【0017】
図1に示すように、本発明の半導体ウエハ表面保護用粘着テープ20は、基材樹脂フィルム1と粘着剤層2の間に後述の特定の中間樹脂層3を有する。さらに粘着剤層2上に剥離フィルム(図示せず)を積層してもよい。
図1に示す本発明の半導体ウエハ表面保護用粘着テープは、例えば、剥離フィルム上に中間樹脂層2を構成する組成物を塗布、乾燥して得られる中間樹脂層を、基材フィルム1上へ転写することや、中間樹脂層組成物を基材樹脂フィルム1へ直接塗布することで中間樹脂層3を形成し、その後、中間樹脂層3上へ同様にして粘着剤層2を転写することや、直接塗布することにより製造することができる。
【0018】
中間樹脂層組成物のベース樹脂成分としては、耐熱性の観点から、アクリル重合体を用いることができる。アクリル重合体として、以下の(メタ)アクリル酸エステル単量体を構成成分とするものを挙げることができる。例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、エイコシルエステル、ベンジルエステルなどの炭素数1〜30、特に炭素数1〜18の(メタ)アルキルエステルなど)、及び(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル(例えば、シクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステルなど)の1種又は2種以上の単量体を構成成分として用いたアクリル重合体を挙げることができる。特に、架橋点間距離増大による可とう性向上の観点からメタクリル酸n−ブチル(n−BMA)が好ましい。これらの(メタ)アクリル酸エステル単量体は、アクリル重合体中、主成分の構成成分(例えば、90〜100%)とすることが好ましい。
【0019】
上記中間樹脂層組成物のベース樹脂成分として用いられるアクリル重合体としては、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル又はシクロアルキルエステルと共重合可能な他の単量体を構成成分とするアクリル共重合体を挙げることができる。この例としては、以下の単量体を1種又は2種以上用いることができる。
(1)カルボキシル基含有単量体
アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有単量体
(2)酸無水物単量体
無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物単量体
(3)ヒドロキシ含有単量体
(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルアクリレートなどのヒドロキシル基含有単量体
【0020】
さらに、上記単量体のほかに、以下の多官能性の単量体を使用することができる。例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの多官能性単量体も1種又は2種以上用いることができる。
【0021】
上記アクリル重合体としては、水酸基とカルボキシル基を有することが好ましい。アクリル重合体の水酸基価は1〜30が好ましく、さらに好ましくは、1〜10である。ここで水酸基価は、JIS K 0070に準拠した方法により測定した値をいう。また、アクリル重合体の酸価は1〜20が好ましく、さらに好ましくは、1〜15である。ここで酸価はJIS K 5407に記載の方法により測定した値をいう。
水酸基は、後述の架橋剤として用いられる、イソシアネート架橋剤やイソシアヌレート架橋剤と反応して、中間樹脂層を架橋させる。また、カルボキシル基は、後述の架橋剤として用いられる、エポキシ架橋剤と反応して、中間樹脂層を架橋させる。
【0022】
アクリル重合体は、1種又は2種以上の単量体混合物を重合に付することにより得られる。重合は、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等の何れの方式で行うことができる。アクリル重合体の重量平均分子量は、好ましくは5万以上、さらに好ましくは10万〜100万程度である。ここで、アクリル重合体の重量平均分子量は、後述の方法により、測定することができる。中間樹脂層組成物には、アクリル重合体と相溶性がよいものであれば、他の樹脂を配合することができる。
【0023】
前記のアクリル重合体を架橋することにより、前記中間樹脂層に凝集力を付加することができる。中間樹脂層に凝集力を付加することにより、半導体ウエハの厚さを100μm以下に研削した後に半導体ウエハが反る力が加わっても、中間樹脂層が、基材樹脂フィルム層と粘着剤層の間に直接存在していることにより、半導体ウエハの反りを抑制できる。特に、半導体ウエハ表面にポリイミド膜が形成されている場合でも、この効果を奏することができる。このため、中間樹脂層組成物には、架橋剤を配合する。架橋剤としては、前記のとおり、ベース樹脂成分に対応して、例えばイソシアネート架橋剤、イソシアヌレート架橋剤、エポキシ架橋剤、金属キレート架橋剤、アジリジン架橋剤及びアミン樹脂などが挙げられる。さらに、中間樹脂層組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、各種添加成分を含有させることができる。
【0024】
また、中間樹脂層組成物としては、前記のアクリル重合体のほかにポリウレタンアクリレートを使用することができる。ポリウレタンアクリレートとしては、以下のウレタン(メタ)アクリレート単量体を構成成分とするものを挙げることができる。例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、フェニルヒドロキシプロピルアクリレートなどを挙げることができる。これらは1種又は2種以上を使用することができる。中間層を形成する際、ウレタンアクリレート系オリゴマーを光重合性モノマーで希釈し、塗布して乾燥させ、紫外線照射などによって効果させることもでき、この方法が中間層の製膜方法として好ましい。
ポリウレタンアクリレートは、水酸基及びカルボキシル基を有することが好ましい。ポリウレタンアクリレートの水酸基価は1〜30が好ましく、さらに好ましくは、1〜10である。ここで水酸基価は以下のJIS K 0070により測定した値をいう。また、ポリウレタンアクリレートの酸価は1〜20が好ましく、さらに好ましくは、1〜15である。ここで酸価はJIS K 5601−2−1に記載の方法により測定した値をいう。
【0025】
(水酸基価の測定方法(JIS K 0070))
(1)用いる試薬
・アセチル化試薬(無水酢酸−ピリジン)
・N/2水酸化カリウム−エタノール溶液
(2)滴定方法
試料をアセチル化試薬でアセチル化した後、過剰の酢酸をN/2水酸化カリウム−エタノール溶液で滴定する。
(3)計算式
次式によって水酸基価を求める。
水酸基価=((VB−V)×F×28.5)/S
ただし、
V :本試験のN/2水酸化カリウム−エタノール溶液の滴定量(mL)
VB:空試験のN/2水酸化カリウム−エタノール溶液の滴定量(mL)
F :N/2水酸化カリウム−エタノール溶液のファクター
S :試料採取量(g)
AV:試料の酸価(mgKOH/g)
【0026】
水酸基は、後述の架橋剤として用いられる、イソシアネート系架橋剤やイソシアヌレート系架橋剤と反応して、中間樹脂層を架橋させる。また、カルボキシル基は、後述の架橋剤として用いられる、エポキシ系架橋剤と反応して、中間樹脂層を架橋させる。中間樹脂層として、ポリウレタンアクリレートを用いた場合も、前記のアクリル重合体の場合と同様に、中間樹脂層に凝集力を付加することができ、特に、厚さ100μm以下まで研削された半導体ウエハ表面にポリイミド膜が形成されている場合でも、この効果を奏することができる。
【0027】
本発明の半導体ウエハ表面保護用粘着テープの中間樹脂層により、基材樹脂フィルムに対してクッション性を持たせ、また該粘着テープ貼合時にかかる張力を緩和することができる。中間樹脂層は、好ましくは粘着剤層より高弾性率であるものがよい。
常温での剛性をもたせるために架橋後の中間樹脂層のDSCによるガラス転移点(Tg)の好ましい範囲は、−10℃〜30℃であり、より好ましくは0℃〜20℃である。中間層の架橋後のガラス転移温度が低すぎると、半導体ウエハ表面保護用粘着テープは柔軟性を有するため、クッション性は向上するが、薄膜研削性が低下する場合がある。ドライポリッシュなどの薄膜ウエハの最終仕上げ工程では、半導体ウエハに高圧力が加わる。薄膜研削性が低いと、その高圧力で、表面保護用粘着テープの沈み込み効果により半導体ウエハが割れることがある。特に、50μm以下の厚さに半導体ウエハを研削する際は、半導体ウエハの強度を上げるために裏面を鏡面状態に仕上げ加工するため、ドライポリッシュやケミカルメカニカルポリッシュ、ポリグラインディングなどが行われ、表面保護用粘着テープの沈み込みによる割れが多くなる場合がある。
一方、中間樹脂層の架橋後のガラス転移温度が高すぎるとクッション性が低下し、パターン付ウエハを加工する場合には、半導体ウエハの割れが発生する場合がある。また、中間樹脂層組成物に放射線照射によって硬化する材料を使用し、放射線照射によって硬化させて中間樹脂層の硬さを調整してもよい。
中間樹脂層の厚さは、裏面研削工程でのクッション性の観点から、好ましくは10〜100μmであり、更に好ましくは20〜80μmであり、より好ましくは30〜70μmである。中間樹脂層が薄すぎると裏面研削工程時のクッション性が小さくなり、中間樹脂層が厚すぎると薄膜研削時にウエハが沈み込み効果によって中央部から割れる確率が高くなる。この現象は薄膜研削の際に用いられるポリッシュの工程で特に顕著に見られ、これらは研削の工程に比べてウエハへの圧力が高くかかっているためであると考えられる。中間樹脂層は複数の層が積層された構成であってもよい。
【0028】
基材樹脂フィルムは、本発明の半導体ウエハ表面保護用粘着テープを構成する材料のうち、最も高弾性率の層のことをいう。基材樹脂フィルムは、半導体ウエハの裏面研削加工や裏面研磨加工を行うときの衝撃から保護するとともに、半導体ウエハの反りを抑制することができる。特に基材樹脂フィルムは、半導体ウエハの裏面研削加工や裏面研磨加工時の水洗浄等に対する耐水性を有するとともに、半導体ウエハを保持できるだけの柔軟性を有することが必要である。さらに重要なことは、半導体ウエハ上のポリイミド等の絶縁膜中の残留応力に起因する半導体ウエハの反り応力に対して、矯正力を働かせることができることである。基材樹脂フィルムとしては、これらの特性を満たすものであれば特に制限されない。特に薄膜研削後の半導体ウエハの反りを矯正できるという点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂を含有する樹脂組成物からなるものやポリイミドが好ましい。更に好ましくはPET又はPENである。ポリエステル系樹脂を粘着剤層に対して反対側の最外層に使用すると、耐熱性も同時に付与することができるため、好ましい。この場合は、本発明の半導体ウエハ表面保護用粘着テープを半導体ウエハ表面に貼合したまま、該テープの基材樹脂フィルム面で半導体ウエハ保持部材(例えば、チャックテーブル)に吸着させた場合、該半導体ウエハ裏面にダイシングダイボンドテープを貼合する際に加熱しても、該表面保護用粘着テープがチャックテーブルへ融着することを少なくすることができる。このためウエハ割れを低減することができる。
【0029】
また、ポリエステル系樹脂に、ポリエステル系樹脂よりも柔軟性を有する樹脂を配合した樹脂組成物を基材樹脂フィルムとして使用することができる。2種類以上の樹脂をブレンドした樹脂組成物とすることで、剛性と柔軟性を持たせた基材とすることができる。例えば、基材樹脂フィルムとして、ポリエステル系樹脂に熱可塑性エラストマーを配合した樹脂組成物を使用することができる。
その場合、本発明の半導体ウエハ表面保護用粘着テープが貼合された8インチポリイミド膜付きの半導体ウエハの反り矯正率が75%以下で、かつ表面にポリイミド膜が形成された8インチ径の半導体ウエハ表面に表面保護用粘着テープを貼合して、該半導体ウエハ裏面を50μm厚に研削した後の該粘着テープが貼合された該8インチ径ウエハの順反り量が20mm以下であることが必要である。
【0030】
基材樹脂フィルムは、後述の粘着剤層として放射線硬化性の樹脂組成物を用いる場合には、放射線透過性であるものが好ましい。基材樹脂フィルムの厚さは、特に制限するものではないが、好ましくは10〜500μmであり、より好ましくは40〜500μm、特に好ましくは80〜250μmである。なお、基材フィルム3がポリエステル系樹脂である場合には、基材樹脂フィルムの厚さは好ましくは12〜80μmである。
【0031】
粘着剤層を構成するベース樹脂としては、従来のものを用いることができる。その中でもアクリル系粘着剤が好ましく、具体的には、アクリル酸エステルを主たる構成単量体単位とする単独重合体及び共重合体から選ばれたアクリル系重合体その他の官能性単量体との共重合体及びこれら重合体の混合物が用いられる。たとえば、アクリル酸エステルとしては、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルなど、また上記のアクリル酸エステルをたとえばメタクリル酸エステルに代えたものなども好ましく使用できる。
さらに粘着性や凝集力を制御する目的でアクリル酸あるいはメタクリル酸、アクリロニトリル、酢酸ビニルなどの単量体を共重合させてもよい。
【0032】
上記のような粘着剤は、さらに架橋剤を使用することにより粘着力と凝集力とを任意の値に設定することができる。このような架橋剤としては、多価イソシアナート化合物、多価エポキシ化合物、多価アジリジン化合物、キレート化合物等がある。多価イソシアナート化合物としては、具体的にはトルイレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート及びこれらのアダクトタイプのもの等が用いられる。
多価エポキシ化合物としては、具体的にはエチレングリコールジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステルアクリレート等が用いられる。多価アジリジン化合物としては、具体的にはトリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1,3,5−トリアジン、トリス〔1−(2−メチル)−アジリジニル〕ホスフィンオキシド、ヘキサ〔1−(2−メチル)−アジリジニル〕トリホスファトリアジン等が用いられる。またキレート化合物としては、具体的にはエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が用いられる。
【0033】
本発明の半導体ウエハ表面保護用粘着テープに使用される粘着剤層としては、放射線照射により粘着力を低下させて剥離する放射線硬化型の粘着剤と、放射線で硬化しない粘着剤のいずれも適宜使用することができる。本発明において、放射線で硬化しない粘着剤を感圧型粘着テープと呼ぶ。粘着剤が感圧型である場合は、20〜25℃におけるSUS研磨面に対する粘着力が0.5N/25mm以上であり、かつ50℃におけるSUS研磨面に対する粘着力が0.5N/25mm以下であることが好ましい。
20〜25℃におけるSUS研磨面に対する粘着力が低すぎると、保持力が十分でなく、ウエハの裏面研削の際にウエハがずれてしまったり割れてしまったりする可能性がある。好ましくは20〜25℃におけるSUS研磨面に対する粘着力が1.0N/25mm以上である。
通常、感圧型粘着テープは加熱して剥離される。50℃における加熱剥離によるSUS研磨面に対する粘着力が大きすぎると、薄膜研削後の剥離に支障を生じ、ウエハ割れを引き起こすことがある。本発明の感圧型粘着テープは、好ましくは50℃におけるSUS280研磨面に対する粘着力が0.3N/25mm以下である。
なお、本発明においては、「SUS研磨面」とは、JIS G 4305に規定されているSUS304鋼板を、JIS R 6253の280番の粗さの研磨紙を用いて、JIS Z 0237に基づき仕上げられたものをいう。
【0034】
粘着剤は感圧型である場合におけるベース樹脂の重量平均分子量は100万以上であることが好ましい。分子量が小さすぎると有機性の汚染物質がウエハ表面に付着しやすいため、好ましくない。分子量の上限については特に制限はないが、重合のし易さなどを考慮すると重量平均分子量が250万以下であることが好ましい。
重量平均分子量は、下記条件のGPC(ゲルーパーミエーション クロマトグラフ)で測定することができる。
GPC装置:HLC−8120GPC(商品名、東ソー社製)
カラム:TSK gel SuperHM−H/H4000/H3000/H2000、(商品名、東ソー社製)
流量:0.6mL/min、
濃度:0.3質量%、
注入量:20μL、
カラム温度:40℃
【0035】
また、本発明では、粘着剤層を構成する粘着剤として、放射線硬化型の粘着剤を使用することができる。その中でも、粘着剤層を構成する粘着剤は、主鎖に対して放射線重合性炭素−炭素二重結合含有基を有するアクリル系単量体を構成単位として含む重合体(以下、重合体(a)という。)を主成分とするベース樹脂を用いてなることが好ましい。本明細書において、この重合体(a)を反応性ポリマーともいう。前記重合体(a)はどのようにして製造されたものでもよいが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、カルボキシル基含有不飽和化合物等からなる共重合体(a1)の炭素鎖を主鎖とし、共重合体(a1)が有する官能基に対して付加反応することが可能な官能基及び炭素−炭素二重結合を有する化合物(a2)を付加反応して得られるものなどが挙げられる。
【0036】
上記の(メタ)アクリル酸エステルとしては、炭素数6〜12のヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、デシルアクリレート、又は炭素数5以下の単量体である、ペンチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルアクリレート、又はこれらと同様のメタクリレートなどを列挙することができる。この場合、単量体として、炭素数の大きな単量体を使用するほどガラス転移点は低くなるので、所望のガラス転移点のものを作製することができる。また、ガラス転移点の他、相溶性と各種性能を上げる目的で酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルなどの炭素−炭素二重結合をもつ低分子化合物を配合することも5質量%以下の範囲内でできる。
【0037】
また、ヒドロキシル基含有不飽和化合物の例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等が挙げられる。カルボキシル基含有不飽和化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。
【0038】
前記の付加反応することが可能な官能基と炭素−炭素二重結合を有する化合物(a2)の官能基としては、共重合体(a1)の官能基が、カルボキシル基又は環状酸無水基である場合には、水酸基、エポキシ基、イソシアネート基などを挙げることができ、水酸基である場合には、環状酸無水基、イソシアネート基などを挙げることができ、アミノ基である場合には、イソシアネート基などを挙げることができる。化合物(a2)の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、けい皮酸、イタコン酸、フマル酸、フタル酸、2−ヒドロキシアルキルアクリレート類、2−ヒドロキシアルキルメタクリレート類、グリコールモノアクリレート類、グリコールモノメタクリレート類、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、アリルアルコール、N−アルキルアミノエチルアクリレート類、N−アルキルアミノエチルメタクリレート類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸、無水フタル酸、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の一部を水酸基又はカルボキシル基及び光重合性炭素−炭素二重結合を有する単量体でウレタン化したものなどを列挙することができる。
【0039】
上記のアクリル系共重合体(a)の合成において、共重合を溶液重合で行う場合の有機溶剤としては、ケトン系、エステル系、アルコール系、芳香族系のものを使用することができるが、中でもトルエン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、ベンゼンメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセトン、メチルエチルケトンなどの、一般にアクリル系ポリマーの良溶媒で、沸点60〜120℃の溶剤が好ましく、重合開始剤としては、α,α'−アゾビスイソブチルニトリルなどのアゾビス系、ベンゾベルペルオキシドなどの有機過酸化物系などのラジカル発生剤を通常用いる。この際、必要に応じて触媒、重合禁止剤を併用することができ、重合温度及び重合時間を調節し、その後官能基における付加反応を行うことにより、所望の分子量のアクリル系共重合体(a)を得ることができる。また、分子量を調節することに関しては、メルカプタン、四塩化炭素系の溶剤を用いることが好ましい。なお、この共重合は溶液重合に限定されるものではなく、塊状重合、懸濁重合など別の方法でもさしつかえない。
【0040】
また、粘着剤中に光重合性化合物を含有させることによって、当該粘着剤層に放射線、特に好ましくは紫外線を照射することにより、粘着力をさらに低下させることができる。このような光重合性化合物としては、たとえば特開昭60−196956号公報及び特開昭60−223139号公報に開示されているような光照射によって三次元網状化しうる分子内に光重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個以上有する低分子量化合物が広く用いられる。具体的には、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートあるいは1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレートなどが用いられる。
【0041】
さらに粘着剤中に、光開始剤を配合することにより、光照射による重合硬化時間ならびに光照射量を少なくすることができる。このような光開始剤としては、具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノンなどが挙げられる。光開始剤は、通常光重合性化合物100質量部に対し0.1〜10質量部の量が用いられる。このようにして形成される光架橋型粘着剤層に対し、光、好ましくは紫外線を照射することにより、初期の接着力が大きく低下し、容易に被着体から該粘着テープを剥離することができる。
【0042】
剥離ライナーとしては、シリコン離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルムなどが用いられる。また必要に応じて、シリコン離型処理をしないポリプロピレンなども用いられる。
【0043】
本発明の半導体ウエハ表面保護用粘着テープは、該テープが貼合された8インチ径のポリイミド膜付きの半導体ウエハにおける、下記式(1)で表わされる反り矯正率Cを75%以下とすることができる。さらに好ましくは、反り矯正率Cを50%以下とすることができる。
【0044】
下記式(1)で表わされる反り矯正率Cが75%以下であっても、ウエハ表面保護用粘着テープが貼合された8インチ径のポリイミド膜付きの半導体ウエハの順反り量が大きすぎる場合は、ウエハ表面保護用粘着テープは半導体ウエハの反りを吸収することができない。この場合は、半導体ウエハ表面保護用粘着テープを貼合したまま薄膜後の半導体ウエハを搬送すると、装置内でエラーを検出し、装置が停止してしまうか、最悪の場合は半導体ウエハが落下し、装置内で半導体ウエハが割れることがある。このため、8インチ径のポリイミド膜付ウエハの順反り量Aを、20mm以下とすることができる。さらに好ましくはAは15mm以下であり、特に好ましくは、Aは6mm以下である。Aの値が特に小さい場合には、カセット収納も可能となるため、インライン装置でなくとも搬送が可能となる。
C=(A/B)×100 式(1)
式(1)中、A、B、Cは以下を表わす。
A:表面に厚さ6μmのポリイミド膜が形成されウエハ全体の厚さが725μmで、8インチ径のシリコン半導体ウエハのポリイミド膜表面に表面保護用粘着テープを貼合して、該半導体ウエハ裏面を50μm厚に研削した後の該粘着テープが貼合された該8インチ径ウエハの順反り量(mm)
B:表面に厚さ6μmのポリイミド膜が形成されウエハ全体の厚さが725μmで、8インチ径のシリコン半導体ウエハのポリイミド膜表面に表面保護用粘着テープを貼合して、該半導体ウエハ裏面を50μm厚に研削し、該粘着テープ剥離後の該8インチ径ウエハの順反り量(mm)
C:反り矯正率(%)
上記式(1)においてポリイミド膜は、非感光性ポリイミドPIX−3400(商品名、日立化成デュポンマイクロシステムズ(株)社製)を用い、スピンコーターでエッジリンスをしながら乾燥後の膜厚が6μmとなるように、8インチ径のシリコン半導体ウエハに塗工を行い、その後、200℃でプレベイクを30分間行い、350℃で本ベークを1時間行い、厚さ6μmのポリイミド膜を形成したものをいう。
【0045】
本発明の半導体ウエハ表面保護粘着テープは、ポリイミドをはじめとする絶縁膜付きの半導体ウエハを薄膜まで研削した場合であっても、中間樹脂層の応力緩和効果により、テープ貼合時にかかる張力の緩和効果と、基材樹脂フィルム層の反り矯正効果とともに、該基材樹脂フィルム層、中間樹脂層及び粘着剤層を合わせた層が縦方向及び横方向に均等に研削時の応力がかかるため、特別な貼り合せ条件を設定することなく、ポリイミド絶縁膜の残留応力を上回る反り矯正率を発揮し、研削後の半導体ウエハの反りを低減できる。
また、半導体ウエハの表面に形成されているポリイミドなどの絶縁膜は、加熱などによって架橋されている場合が多い。このため、絶縁膜には残留応力が存在することがある。この場合でも、本発明の半導体ウエハ表面保護粘着テープをウエハ表面に貼合して研削しても、絶縁膜の残留応力を上回る反り矯正率を発揮し、研削後の半導体ウエハの反りを低減することができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
放射線硬化性炭素−炭素二重結合含有基、水酸基、及びカルボキシル基を含有する基をそれぞれ有する重量平均分子量80万のアクリル共重合体100質量部に対して、アダクト系イソシアネート系架橋剤コロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を1質量部、光重合開始剤イルガキュア184(商品名、チバジャパン社製)を3質量部配合し、酢酸エチルで濃度を調整し粘着剤組成物を得た。
また、メタクリル酸n−ブチルを構成成分の主成分とし、ほかの構成成分の単量体として水酸基とカルボキシル基を有するアクリル共重合体(酸価が10、水酸基価が2)100質量部に対してアダクト系イソシアネート架橋剤コロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を2質量部及びエポキシ系架橋剤TETRAD−C(商品名、三菱ガス化学社製)を2質量部配合し、酢酸エチルで濃度を調整し、中間樹脂層組成物を得た。
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート基材樹脂フィルム(PET)の片面上に、上記の中間樹脂層組成物を塗布後、乾燥させて、乾燥膜厚42μmの中間樹脂層を積層した。このとき、中間樹脂層の架橋後のガラス転移温度は0℃であった。このガラス転移温度は示差走査熱量計(DSC)により測定した値である。
さらに厚さ25μmのPETセパレータ上に上記の粘着剤組成物を塗布し、乾燥させた。その後、この粘着剤組成物層と、上記の基材樹脂フィルム上に形成された中間樹脂層とを突き合わせて、乾燥膜厚20μmの粘着剤層を有する半導体ウエハ表面保護用粘着テープを作製した。
なお、上記のアクリル系共重合体の重量平均分子量は、下記条件のGPC(ゲルーパーミエーション クロマトグラフ)で測定した。
GPC装置:HLC−8120GPC(商品名、東ソー社製)
カラム:TSK gel SuperHM−H/H4000/H3000/H2000、(商品名、東ソー社製)
流量:0.6mL/min、
濃度:0.3質量%、
注入量:20μL、
カラム温度:40℃
以下の実施例2〜12及び比較例1〜6で使用したアクリル系共重合体についても、同様に重量平均分子量を測定し、その結果を表1〜3に示す。
また、以下の実施例2〜12及び比較例1〜6でも、中間樹脂層のガラス転移温度は、実施例1と同様に、DSCで測定した。
【0047】
<実施例2>
放射線硬化性炭素−炭素二重結合含有基、水酸基、及びカルボキシル基を含有する基をそれぞれ有する重量平均分子量80万のアクリル共重合体100質量部に対して、アダクト系イソシアネート架橋剤コロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を1質量部、光重合開始剤イルガキュア184(商品名、チバジャパン社製)を3質量部配合し、酢酸エチルで濃度を調整し粘着剤組成物を得た。
また、メタクリル酸n−ブチルを構成成分の主成分とし、ほかの構成成分の単量体として水酸基とカルボキシル基を有するアクリル共重合体(酸価が11、水酸基価が3)100質量部に対してアダクト系イソシアネート架橋剤コロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を1質量部及びエポキシ系架橋剤TETRAD−C(商品名、三菱ガス化学社製)を2質量部配合し、酢酸エチルで濃度を調整し、中間樹脂層組成物を得た。
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート基材フィルム(PET)の片面上に上記の中間樹脂層組成物を塗布後、乾燥させて、乾燥膜厚42μmの中間樹脂層を積層した。このとき、中間樹脂層の架橋後のガラス転移温度は−15℃であった。
さらに厚さ25μmのPETセパレータ上に粘着剤組成物を塗布し、乾燥させて、中間樹脂層を設けたテープ上に貼り合わせることで積層し、膜厚20μm厚の粘着剤層を積層して半導体ウエハ表面保護用粘着テープを作製した。
【0048】
<実施例3>
放射線硬化性炭素−炭素二重結合含有基、水酸基、及びカルボキシル基を含有する基をそれぞれ有する重量平均分子量80万のアクリル共重合体100質量部に対して、アダクト系イソシアネート架橋剤コロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を1質量部、光重合開始剤イルガキュア184(商品名、チバジャパン社製)を3質量部配合し、酢酸エチルで濃度を調整し粘着剤組成物を得た。
また、メタクリル酸n−ブチルを構成成分の1つとし、水酸基を有するアクリル共重合体(水酸基価が35)100質量部に対してポリイソシアネート架橋剤TKA−100(商品名、旭化成ケミカルズ社製)を12質量部配合し、酢酸エチルで濃度を調整し、中間樹脂層組成物を得た。
厚さ25μmのポリエチレンナフタレート基材フィルム(PEN)の片面上に上記の中間樹脂層組成物を塗布後、乾燥させて、乾燥膜厚50μmの中間樹脂層を積層した。このとき、中間樹脂層の架橋後のガラス転移温度は30℃であった。
さらに厚さ25μmのPETセパレータ上に粘着剤組成物を塗布し、乾燥させて、中間樹脂層を設けたテープ上に貼り合わせることで積層し、膜厚30μm厚の粘着剤層を積層して半導体ウエハ表面保護用粘着テープを作製した。
【0049】
<実施例4>
重量平均分子量100万のアクリル共重合体100質量部に対してイソシアネート系架橋剤コロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を4質量部配合し、酢酸エチルで濃度を調整し粘着剤組成物を作製した。
また、メタクリル酸n−ブチルを構成成分の主成分とし、水酸基とカルボキシル基を有するアクリル共重合体(酸価が11、水酸基価が4)100質量部に対して、アダクト系イソシアネート架橋剤コロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を1質量部及びエポキシ系架橋剤TETRAD−C(商品名、三菱ガス化学社製)を1部配合し、酢酸エチルで濃度を調整し、中間樹脂層組成物を得た。
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート基材フィルム(PET)の片面上に上記の中間樹脂層組成物を塗布後、乾燥させて、乾燥膜厚62μmの中間樹脂層を積層した。このとき、中間樹脂層の架橋後のガラス転移温度は−10℃であった。
さらに厚さ25μmのPETセパレータ上に粘着剤組成物を塗布し、乾燥させて、中間樹脂層を設けたテープ上に貼り合わせることで積層し、膜厚30μm厚の粘着剤層を積層して半導体ウエハ表面保護用粘着テープを作製した。
【0050】
<実施例5>
重量平均分子量120万のアクリル共重合体100質量部に対してイソシアネート系架橋剤コロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を2質量部及びエポキシ系架橋剤TETRAD−C(商品名、三菱ガス化学社製)を4質量部配合し、酢酸エチルで濃度を調整し粘着剤組成物を作製した。
また、メタクリル酸n−ブチルを構成成分の主成分とし、水酸基とカルボキシル基を有するアクリル共重合体(酸価が11、水酸基価が3)100質量部に対して、アダクト系イソシアネートコロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を2質量部及びエポキシ系架橋剤TETRAD−C(商品名、三菱ガス化学社製)を2質量部配合し、酢酸エチルで濃度を調整し、中間樹脂層組成物を得た。
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート基材フィルム(PET)の片面上に上記の中間樹脂層組成物を塗布後、乾燥させて、乾燥膜厚42μmの中間樹脂層を積層した。このとき、中間樹脂層の架橋後のガラス転移温度は0℃であった。
さらに厚さ25μmのPETセパレータ上に粘着剤組成物を塗布し、乾燥させて、中間樹脂層を設けたテープ上に貼り合わせることで積層し、膜厚20μm厚の粘着剤層を積層して半導体ウエハ表面保護用粘着テープを作製した。
【0051】
<実施例6>
重量平均分子量80万のアクリル共重合体100質量部に対してイソシアネート系架橋剤コロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を0.5質量部配合し、酢酸エチルで濃度を調整し粘着剤組成物を作製した。
また、メタクリル酸n−ブチルを構成成分の主成分とし、水酸基とカルボキシル基を有するアクリル共重合体(酸価が12、水酸基価が5)100質量部に対して、アダクト系イソシアネートコロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を2質量部及びエポキシ系架橋剤TETRAD−C(商品名、三菱ガス化学社製)を4質量部配合し、酢酸エチルで濃度を調整し、中間樹脂層組成物を得た。
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート基材フィルム(PET)の片面上に上記の中間樹脂層組成物を塗布後、乾燥させて、乾燥膜厚50μmの中間樹脂層を積層した。このとき、中間樹脂層の架橋後のガラス転移温度は15℃であった。
さらに厚さ25μmのPETセパレータ上に粘着剤組成物を塗布し、乾燥させて、中間樹脂層を設けたテープ上に貼り合わせることで積層し、膜厚30μm厚の粘着剤層を積層して半導体ウエハ表面保護用粘着テープを作製した。
【0052】
<実施例7>
2−エチルヘキシルアクリレート、メチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートの共重合体である分子量70万のアクリルベース樹脂100質量部に対してイソシアネート系架橋剤コロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を4質量部、オリゴマーとして光重合性炭素−炭素二重結合を有するテトラメチロールメタンテトラアクリレート100部、光重合開始剤イルガキュア184(商品名、チバジャパン社製)を1質量部配合し、酢酸エチルで濃度を調整し粘着剤組成物を作製した。
また、メタクリル酸n−ブチルを構成成分の主成分とし、水酸基とカルボキシル基を有するアクリル共重合体(酸価が11、水酸基価が2)100質量部に対して、アダクト系イソシアネートコロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を2質量部及びエポキシ系架橋剤TETRAD−C(商品名、三菱ガス化学社製)を2質量部配合し、酢酸エチルで濃度を調整し、中間樹脂層組成物を得た。
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート基材フィルム(PET)の片面上に上記の中間樹脂層組成物を塗布後、乾燥させて、乾燥膜厚42μmの中間樹脂層を積層した。このとき、中間樹脂層の架橋後のガラス転移温度は0℃であった。
さらに厚さ25μmのPETセパレータ上に粘着剤組成物を塗布し、乾燥させて、中間樹脂層を設けたテープ上に貼り合わせることで積層し、膜厚20μm厚の粘着剤層を積層して半導体ウエハ表面保護用粘着テープを作製した。
【0053】
<実施例8>
重量平均分子量80万のアクリル共重合体100質量部に対してイソシアネート系架橋剤コロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を1.5質量部配合し、酢酸エチルで濃度を調整し粘着剤組成物を作製した。
また、水酸基とカルボキシル基を有するポリウレタンアクリレート(酸価が2、水酸基価が35)100質量部に対して、イソシアネート架橋剤コロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を3質量部及びエポキシ系架橋剤TETRAD−C(商品名、三菱ガス化学社製)を4質量部配合し、酢酸エチルで濃度を調整し、中間樹脂層組成物を得た。
厚さ25μmのポリエチレンナフタレート基材フィルム(PEN)の片面上に上記の中間樹脂層組成物を塗布後、乾燥させて、乾燥膜厚50μmの中間樹脂層を積層した。このとき、中間樹脂層の架橋後のガラス転移温度は30℃であった。
さらに厚さ25μmのPETセパレータ上に粘着剤組成物を塗布し、乾燥させて、中間樹脂層を設けたテープ上に貼り合わせることで積層し、膜厚30μm厚の粘着剤層を積層して半導体ウエハ表面保護用粘着テープを作製した。
【0054】
<実施例9>
放射線硬化性炭素−炭素二重結合含有基、水酸基、及びカルボキシル基を含有する基をそれぞれ有する重量平均分子量80万のアクリル共重合体100質量部に対して、アダクト系イソシアネート架橋剤コロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を1質量部、光重合開始剤イルガキュア184(商品名、チバジャパン社製)を3質量部配合し、酢酸エチルで濃度を調整し粘着剤組成物を得た。
また、メタクリル酸n−ブチルを構成成分の1つとし、水酸基とカルボキシル基を有するアクリル共重合体(酸価が10、水酸基価が2)100質量部に対して、アダクト系イソシアネートコロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を2質量部及びエポキシ系架橋剤TETRAD−C(商品名、三菱ガス化学社製)を2質量部配合し、酢酸エチルで濃度を調整し、中間樹脂層組成物を得た。
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート基材フィルム(PET)の片面上に上記の中間樹脂層組成物を塗布後、乾燥させて、乾燥膜厚25μmの中間樹脂層を積層した。このとき、中間樹脂層の架橋後のガラス転移温度は0℃であった。
さらに厚さ25μmのPETセパレータ上に粘着剤組成物を塗布し、乾燥させて、中間樹脂層を設けたテープ上に貼り合わせることで積層し、膜厚30μm厚の粘着剤層を積層して半導体ウエハ表面保護用粘着テープを作製した。
【0055】
<実施例10>
放射線硬化性炭素−炭素二重結合含有基、水酸基、及びカルボキシル基を含有する基をそれぞれ有する重量平均分子量80万のアクリル共重合体100質量部に対して、アダクト系イソシアネート架橋剤コロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を1質量部、光重合開始剤イルガキュア184(商品名、チバジャパン社製)を3質量部配合し、酢酸エチルで濃度を調整し粘着剤組成物を得た。
また、メタクリル酸n−ブチルを構成成分の1つとし、水酸基とカルボキシル基を有するアクリル共重合体(酸価が10、水酸基価が2)100質量部に対して、アダクト系イソシアネートコロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を2質量部及びエポキシ系架橋剤TETRAD−C(商品名、三菱ガス化学社製)を2質量部配合し、酢酸エチルで濃度を調整し、中間樹脂層組成物を得た。
厚さ40μmのポリイミド基材フィルムの片面上に上記の中間樹脂層組成物を塗布後、乾燥させて、乾燥膜厚30μmの中間樹脂層を積層した。このとき、中間樹脂層の架橋後のガラス転移温度は−5℃であった。
さらに厚さ25μmのPETセパレータ上に粘着剤組成物を塗布し、乾燥させて、中間樹脂層を設けたテープ上に貼り合わせることで積層し、膜厚30μm厚の粘着剤層を積層して半導体ウエハ表面保護用粘着テープを作製した。
【0056】
<実施例11>
重量平均分子量120万のアクリル共重合体100質量部に対してイソシアネート系架橋剤コロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を2質量部及びエポキシ系架橋剤TETRAD−C(商品名、三菱ガス化学社製)を4質量部配合し、酢酸エチルで濃度を調整し粘着剤組成物を作製した。
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート基材フィルム(PET)の片面上に、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂を押出しによって200μm厚で形成した。この樹脂のガラス転移温度は−42℃であった。
厚さ25μmのPETセパレータ上に粘着剤組成物を塗布し、乾燥させて、PET及びEVAの複層フィルムの片面上に貼り合わせることで積層し、膜厚20μm厚の粘着剤層を積層して半導体ウエハ表面保護用粘着テープを作製した。
【0057】
<実施例12>
放射線硬化性炭素−炭素二重結合含有基、水酸基、及びカルボキシル基を含有する基をそれぞれ有する重量平均分子量80万のアクリル共重合体100質量部に対して、アダクト系イソシアネート系架橋剤コロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を1質量部、光重合開始剤イルガキュア184(商品名、チバジャパン社製)を3質量部配合し、酢酸エチルで濃度を調整し粘着剤組成物を得た。
重量平均分子量40万の水酸基を有するアクリル共重合体(酸価が4、水酸基価が33)100質量部に対して、イソシアネート系架橋剤コロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を0.5質量部配合し、酢酸エチルで濃度を調整し中間樹脂層組成物を作製した。
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート基材フィルム(PET)の片面上に上記の中間樹脂層組成物を塗布後、乾燥させて、何回か重ね合わせることで乾燥膜厚132μmの中間樹脂層を積層した。このとき、中間樹脂層の架橋後のガラス転移温度は−50℃であった。
厚さ50μmのPETセパレータ上に粘着剤組成物を塗布し、乾燥させて、PET及びEVAの複層フィルムの片面上に貼り合わせることで積層し、膜厚10μm厚の粘着剤層を積層して半導体ウエハ表面保護用粘着テープを作製した。
【0058】
<比較例1>
放射線硬化性炭素−炭素二重結合含有基、水酸基、及びカルボキシル基を含有する基をそれぞれ有する重量平均分子量80万のアクリル共重合体100質量部に対して、アダクト系イソシアネート系架橋剤コロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を1質量部、光重合開始剤イルガキュア184(商品名、チバジャパン社製)を3質量部配合し、酢酸エチルで濃度を調整し粘着剤組成物を得た。
また、メタクリル酸n−ブチルを構成成分の1つとし、水酸基とカルボキシル基を有するアクリル共重合体(酸価が11、水酸基価が2)100質量部に対して、アダクト系イソシアネートコロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を2質量部及びエポキシ系架橋剤TETRAD−C(商品名、三菱ガス化学社製)を2質量部配合し、酢酸エチルで濃度を調整し、中間樹脂層組成物を得た。
厚さ40μmのポリプロピレン(PP)基材フィルムの片面上に上記の中間樹脂層組成物を塗布後、乾燥させて、乾燥膜厚40μmの中間樹脂層を積層した。このとき、中間樹脂層の架橋後のガラス転移温度は0℃であった。
さらに厚さ25μmのPETセパレータ上に粘着剤組成物を塗布し、乾燥させて、中間樹脂層を設けたテープ上に貼り合わせることで積層し、膜厚20μm厚の粘着剤層を積層して半導体ウエハ表面保護用粘着テープを作製した。
【0059】
<比較例2>
重量平均分子量40万のアクリル共重合体100質量部に対してイソシアネート系架橋剤コロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を1.0質量部及びエポキシ系架橋剤TETRAD−C(商品名、三菱ガス化学社製)を2.5質量部配合し、酢酸エチルで濃度を調整し粘着剤組成物を作製した。
厚さ25μmのPETセパレータ上に粘着剤組成物を塗布し、乾燥させて、厚さ165μmのエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルムの片面上貼り合わせることで積層し、膜厚40μm厚の粘着剤層を積層して半導体ウエハ表面保護用粘着テープを作製した。
【0060】
<比較例3>
2−エチルヘキシルアクリレート、メチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートの共重合体である分子量70万のアクリル系ベース樹脂100質量部に対してイソシアネート系架橋剤コロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を4質量部、オリゴマーとして光重合性炭素−炭素二重結合を有するテトラメチロールメタンテトラアクリレート100部、光重合開始剤イルガキュア184(商品名、チバジャパン社製)を1質量部配合し、酢酸エチルで濃度を調整し粘着剤組成物を作製した。
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート基材フィルム(PET)の片面上に、上記の粘着剤組成物を塗布後、乾燥させて、乾燥後の厚さを15μmとした粘着剤層を積層した。さらにこの粘着剤層上に、PETのセパレータを積層して半導体ウエハ表面保護用粘着テープを作製した。
【0061】
<比較例4>
2−エチルヘキシルアクリレート、メチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートの共重合体である分子量70万のアクリルベース樹脂100質量部に対してイソシアネート架橋剤コロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を4質量部、オリゴマーとして光重合性炭素−炭素二重結合を有するテトラメチロールメタンテトラアクリレート100部、光重合開始剤イルガキュア184(商品名、チバジャパン社製)を1質量部配合し、酢酸エチルで濃度を調整し粘着剤組成物を作製した。
厚さ25μmのPETセパレータ上に粘着剤組成物を塗布し、乾燥させて、厚さ30μmの高密度ポリエチレン(HDPE)及び厚さ70μmのエチレン−酢酸ビニル共重合体の複層フィルム基材の、エチレン−酢酸ビニル共重合体の層上に貼り合わせることで積層し、膜厚30μm厚の粘着剤層を積層して半導体ウエハ表面保護用粘着テープを作製した。
【0062】
<比較例5>
放射線硬化性炭素−炭素二重結合含有基、水酸基、及びカルボキシル基を含有する基をそれぞれ有する重量平均分子量80万のアクリル共重合体100質量部に対して、アダクト系イソシアネート系架橋剤コロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を1質量部、光重合開始剤イルガキュア184(商品名、チバジャパン社製)を3質量部配合し、酢酸エチルで濃度を調整し粘着剤組成物を得た。
放射線硬化性炭素−炭素二重結合含有基、水酸基、及びカルボキシル基を含有する基をそれぞれ有する重量平均分子量20万のアクリル共重合体(酸価が4、水酸基価が33)100質量部に対して、アダクト系イソシアネート系架橋剤コロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を0.5質量部、光重合開始剤イルガキュア184(商品名、チバジャパン社製)を5質量部配合し、酢酸エチルで濃度を調整し粘着剤組成物を得た。
厚さ50μmのPETセパレータ上に粘着剤組成物を塗布し、乾燥させて、厚さ20μmの高密度ポリエチレン(HDPE)及び厚さ180μmのエチレン−酢酸ビニル共重合体の複層フィルム基材の、エチレン−酢酸ビニル共重合体の層上に何回か貼り合わせることで積層し、膜厚130μm厚の中間樹脂層を積層した。このとき、中間樹脂層の架橋後のガラス転移温度は−50℃であった。
厚さ50μmのPETセパレータ上に粘着剤組成物を塗布し、乾燥させて、中間樹脂層を積層したフィルムに貼り合わせることで積層し、膜厚5μm厚の粘着剤層を積層して半導体ウエハ表面保護用粘着テープを作製した。
【0063】
<比較例6>
放射線硬化性炭素−炭素二重結合含有基、水酸基、及びカルボキシル基を含有する基をそれぞれ有する重量平均分子量80万のアクリル系共重合体100質量部に対して、アダクト系イソシアネート系架橋剤コロネートL(商品名、日本ポリウレタン社製)を1質量部、光重合開始剤イルガキュア184(商品名、チバジャパン社製)を3質量部配合し、酢酸エチルで濃度を調整し粘着剤組成物を得た。
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート基材フィルム(PET)の一方の面に、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂を押出しによって厚さ50μmのEVA樹脂層を形成した。また、他方の面に、同じエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂を用いて、押出しによって厚さ150μmのEVA樹脂層を形成した。この150μmのEVA樹脂層のガラス転移温度は−42℃であった。
厚さ50μmのPETセパレータ上に粘着剤組成物を塗布し、乾燥させて、この粘着剤層組成物層と、上記の150μmのEVA樹脂層を貼り合わせることで積層し、厚さ30μmの粘着剤層を有する半導体ウエハ表面保護用粘着テープを作製した。
【0064】
上記の実施例及び比較例で作製した半導体ウエハ表面保護用粘着テープについて、以下の試験を行い、その性能を評価した。評価結果を表1〜3に記載した。
【0065】
1.中間樹脂層の架橋後のガラス転移温度測定
(試験方法)
中間樹脂層に酢酸エチルを吹きかけて中間樹脂層を膨潤させ、スパチュラにて架橋後の中間樹脂層を採取した。その後、真空乾燥にてすべての溶剤を飛ばした後、示差走査熱量計(DSC)で測定した。
【0066】
2.ポリイミド膜付き半導体ウエハの作製
以下の方法で、ポリイミド膜付き半導体ウエハを作製した。
ウエハ全体の厚さが725μmで、8インチ径のシリコン半導体ウエハに、ポリイミドとして、非感光性ポリイミドPIX−3400(商品名、日立化成デュポンマイクロシステムズ(株)社製)を用い、スピンコーターでエッジリンスをしながら乾燥後の膜厚が6μmとなるように塗工を行った。その後、200℃でプレベイクを30分間行い、350℃で本ベークを1時間行い、厚さ6μmのポリイミド膜を形成し、ウエハ全体の厚さが725μmで、8インチ径の半導体ウエハを得た。
このポリイミド膜付き半導体ウエハを用いて、以下の3〜5の試験を行い、その性能について評価した。
【0067】
3.薄膜研削性試験
(試験方法)
貼り付け機として日東精機株式会社製DR8500II(商品名)を用いて、2.の方法で作製した8インチウエハの厚さが725μmのポリイミド膜付きシリコン半導体ウエハに、実施例及び比較例で作製した半導体ウエハ表面保護用粘着テープを貼合した。その場合の貼合は、装置の付属のレギュレータによってパラメータを制御し、それぞれテープ巻取りを0.11Mpa、テープ繰り出しを0.26MPa、セパレータを0.20MPa、テープ押さえを0.17MPa、テープ貼り付けを0.26MPaの条件で半導体ウエハ表面保護用粘着テープの貼合を行った。その後、インライン機構を持つグラインダー(株式会社ディスコ製DFG8760(商品名))を使用して厚さ50μm、30μm、20μmの厚みまでそれぞれ25枚のウエハの研磨を行った。また、ウエハの強度向上のため、ドライポリッシュにて最終仕上げを行った。
(評価)
各実施例及び各比較例で作製した半導体ウエハ表面保護用粘着テープについて、評価を行った。その結果、以下のように判定し、○及び△を合格とし、×を不合格とした。
エッジクラックがほとんどなく、25枚すべてのウエハで研削可能であったもの:○
エッジクラックが若干見られるもののウエハに割れはなく研削できたもの、又は25枚のウエハ中割れが1枚〜2枚であったもの:△
ウエハが3枚以上割れたもの:×
【0068】
4.剥離試験
(試験方法)
上記の3.薄膜研削性試験で研削したポリイミド膜付ウエハを用いて、上記グラインダーに併設されている剥離機(株式会社ディスコ製DFM2700(商品名))を用いて剥離性試験を25枚行った。感圧型粘着テープの剥離は50℃で行い、放射線硬化型粘着テープの剥離温度は紫外線を500mJ/cm照射後、常温で測定を行った。
(評価)
各実施例及び各比較例で作製した半導体ウエハ表面保護用粘着テープについて、評価を行った。その結果、以下のように判定し、○及び△を合格とした。
テープがウエハから25枚全てが問題なく剥離できたもの:○
テープがウエハを破損等することなく剥離できたが、剥離失敗により1度以上エラーが発生したもの:△
剥離中にウエハの破損等が発生したもの、又はテープをウエハから剥離できなかったもの:×
【0069】
5.搬送試験
(試験方法)
上記の3.薄膜研削試験で、半導体ウエハ表面保護用粘着テープを貼合したままウエハ厚さが50μmまで研削されたテープ付ウエハを、インライン装置(株式会社ディスコ製DFG8760(商品名)及び株式会社ディスコ製DFM2700(商品名)の一体型)を用いて、バックグラインド工程からダイシングダイボンドフィルムの貼合工程及び剥離工程まで搬送を行った。ダイシングダイボンドフィルムはFH−900−20(商品名、日立化成工業社製)を用い、貼合は60℃で行った。
(評価)
各実施例及び各比較例で作製した半導体ウエハ表面保護用粘着テープについて、評価を行った。その結果、以下のように判定し、○を合格とした。
吸着エラーがなく、搬送可能であったもの:○
吸着エラーが発生し、搬送エラーが発生したもの:×
【0070】
6.汚染性試験
(試験方法)
貼り付け機として日東精機株式会社製DR8500II(商品名)を用いて、8インチウエハの厚さが725μmのシリコンミラーウエハに、実施例及び比較例で作製した半導体ウエハ表面保護用粘着テープを貼合した。その後、感圧型粘着テープの剥離は50℃で行い、放射線硬化型粘着テープは紫外線を500mJ/cm照射後、常温で剥離した。
次に半導体ウエハ表面保護用粘着テープを剥した後のウエハ表面の汚染物の元素比率を、XPS(X線光電子分光分析)で測定した。該粘着テープからの転写汚染物に由来する炭素の増加量を該粘着テープを貼合しないブランクウエハと比較して、mol%として算出した。XPSは以下の条件で測定した。
X線原:MgKα、X線のTake off angle:45°、
測定面積:1.1mmφ
(評価)
各実施例及び各比較例で作製した半導体ウエハ表面保護用粘着テープについて、評価を行った。その結果、以下のように判定し、○を合格とした。
C(カーボン)量(atomic%)が25以下であったもの:○
C(カーボン)量(atomic%)が25より大きかったもの:×
【0071】
7.反発係数及び反発力測定試験
(試験方法)
株式会社東洋精機製作所製のループステフネステスタ(商品名)を用いて、反発係数γ及び反発力αを測定した。
各実施例及び各比較例で作製した半導体ウエハ表面保護用粘着テープを幅1cmにカットし、ループステフネステスタに設置した。その際、ループ長50mm以上の帯状の該粘着テープの中央付近で、ループ長50mmの円形ループを作り、この円形ループを外側から5mm押し込んだときにかかる荷重測定した。このとき得られた荷重を該粘着テープの幅当たりに換算し、mN/mm単位で表示した値を反発力αとした。この反発力αを該粘着テープの基材樹脂フィルムの厚さの2乗で割った値を反発係数γとした。
(評価)
各実施例及び各比較例で作製した半導体ウエハ表面保護用粘着テープについて、評価を行った。その結果、反発係数が100mN/mm以上、かつ反発力が13mN/mm以下の場合を合格とした。また、反発力が20mN/mm以上であったものは測定不能とした。
【0072】
8.25℃及び50℃での粘着力測定試験
(試験方法)
各実施例及び各比較例で作製した半導体ウエハ表面保護用粘着テープのうち、感圧型のものについて、50℃での粘着力を測定した。
該粘着テープから幅25mm×長さ300mmの試験片を3点採取し、それをJIS R 6253に規定する280番の耐水研磨紙で仕上げたJIS G 4305に規定する厚さ1.5mm〜2.0mmのSUS304鋼板上で2kgのゴムローラを3往復かけて圧着した。1時間放置後、JIS B 7721に規定する引張試験機を用いて、SUS板に圧着された該粘着テープの試験片を50℃、相対湿度49%で粘着力を測定した。測定は、180度引きはがし法によるものとし、この時の引張速さは300mm/minとした。
【0073】
9.縦(MD)方向と横(TD)方向の引張破断伸度の測定
(試験方法)
半導体ウエハ表面保護用粘着テープのサンプルをダンベル形状1号型(JIS K 6301)に従いダンベルにて打ち抜き、ロールに対して巻きの方向を縦方向(MD)、幅の方向を横方向(TD)とし、それぞれについてn=3サンプリングを行い、それぞれについてサンプリングしたサンプルの中央部から上下20mmの場所に線を引いた。引張試験機(JIS B 7721)を用いて引張速度300mm/minで引っ張り、線内で破断した際の伸び率を測定した。3回測定の平均値を実際の値として用い、縦方向の引張破断伸度及び横方向の引張破断伸度の差を計算した。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【0077】
表1〜3で示すように、比較例1では、縦方向と横方向の引張破断伸度の差が35%を越えるため、半導体ウエハ表面保護用粘着テープが反ったため、搬送性が不合格となった。比較例2では、反発係数が小さすぎるため、ウエハ自体の反りを矯正することができず、搬送性が不合格となりまた引張破断伸度の差が35%を越えるため、テープ自体も反る結果となった。比較例3では、基材樹脂フィルムにPETを用いているため、搬送性は合格であったが、中間樹脂層を有しないため、薄膜研削時にクッション性が足らず薄膜研削性が悪くエッジクラックが発生する結果となった。更に反発力が高いためテープ剥離時にテープ自体が折れ曲がりにくいため、剥離時にウエハが割れたり剥離不良を生じる結果となった。比較例4と5では、反発係数が小さすぎて、搬送性が不合格となった。比較例6で芯材のPETを用いているため搬送性は問題なかったが、薄膜研削性が悪く薄膜研削時に割れが多く発生する結果となった。
一方、実施例1〜実施例12の半導体ウエハ表面保護用粘着テープはいずれも、搬送試験及び薄膜研削試験結果は合格レベルであり、剥離も問題なく行えることがわかった。特に実施例1、実施例3、実施例4及び実施例10では薄膜研削性及び搬送性に優れる結果となった。基材としてポリイミドを用いると性能は良いがコストが高いため、実施例1、実施例3及び実施例4が総合的に最も優れる結果となった。
【符号の説明】
【0078】
1 基材樹脂フィルム
2 粘着剤層
3 中間樹脂層
20 半導体ウエハ表面保護用粘着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材樹脂フィルムと、該基材樹脂フィルム上にアクリル重合体及び/又はウレタンアクリレート共重合体を含有するベース樹脂成分が架橋された中間樹脂層を介して、直接粘着剤層を有する、半導体ウエハ表面保護用粘着テープであって、当該半導体ウエハ表面保護用粘着テープを下記条件(a)〜(d)で測定したループスティフネスの負荷荷重から求められた、単位幅当りの反発力αを基材の厚さβの2乗で割った反発係数γが100mN/mm以上であり、反発力αが13mN/mm以下であり、且つ縦方向と横方向の引張破断伸度の差が35%以下であることを特徴とする半導体ウエハ表面保護用粘着テープ。
(a)装置
ループステフネステスタ(商品名、東洋精機社製)
(b)ループ(試験片)形状
長さ50mm以上、幅10mm
(c)圧子の押し込み速度
3.3mm/sec
(d)圧子の押し込み量
圧子がループと接触した時点から5mm押し込む
【請求項2】
前記中間樹脂層のアクリル重合体が水酸基及びカルボキシル基を有することを特徴とする請求項1記載の半導体ウエハ表面保護用粘着テープ。
【請求項3】
前記中間樹脂層のウレタンアクリレート共重合体が水酸基及びカルボキシル基を有することを特徴とする請求項1記載の半導体ウエハ表面保護用粘着テープ。
【請求項4】
前記中間樹脂層の架橋後のガラス転移温度が−10℃〜30℃である請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体ウエハ表面保護用粘着テープ。
【請求項5】
前記基材樹脂フィルムがポリエステル樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の半導体ウエハ表面保護用粘着テープ。
【請求項6】
前記ポリエステル樹脂フィルムがポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする請求項5記載の半導体ウエハ表面保護用粘着テープ。
【請求項7】
前記ポリエステル樹脂フィルムの厚さが25〜75μmであることを特徴とする請求項5又は6記載の半導体ウエハ表面保護用粘着テープ。
【請求項8】
前記半導体ウエハ表面保護用粘着テープが感圧型粘着テープであり、20〜25℃におけるSUS研磨面に対する粘着力が0.5N/25mm以上であり、かつ50℃におけるSUS研磨面に対する粘着力が0.5N/25mm以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の半導体ウエハ表面保護用粘着テープ。
【請求項9】
前記粘着剤層を構成するベース樹脂の重量平均分子量が100万以上であることを特徴とする請求項8記載の半導体ウエハ表面保護用粘着テープ。
【請求項10】
前記粘着剤層が、放射線を照射することにより粘着力が低くなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の半導体ウエハの表面保護用粘着テープ。
【請求項11】
前記粘着剤層が、主鎖に対して放射線重合性炭素−炭素二重結合含有基を1つ以上有するアクリル系単量体を構成単位として含む重合体を主成分とするベース樹脂を用いてなることを特徴とする請求項10に記載の半導体ウエハの表面保護用粘着テープ。

【図1】
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【公開番号】特開2011−151355(P2011−151355A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220068(P2010−220068)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】