説明

半導体ガスセンサ

【課題】 リソグラフィ技術を用いることなく、また、大型化を招くことなく、検出感度の非常に高い半導体ガスセンサを容易かつ低コストに得られるようにする。
【解決手段】 基板1上に設けた一対の電極2,3間に金属酸化物半導体層4を形成し、この金属酸化物半導体層4中に、導電性微細粒子群9を一対の電極2,3間の全域に亘り連続コンタクトしないで、電極2,3間に少なくとも一つの微小ギャップgが形成されるような拡散状態に混在させてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気雰囲気中に特定のガスが存在するか否かを検知する場合に用いられる半導体ガスセンサに関する。詳しくは、基板上に設けた一対の電極間に、例えば酸化錫(SnO2 )や酸化タングステン(WO2 )等の金属酸化物半導体層を形成し、この金属酸化物半導体層のガス接触に伴う抵抗値の変化を前記電極で検出することにより、ガス検知を行うように構成されている半導体ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の半導体ガスセンサは、金属酸化物半導体層を加熱すると、その表面で酸化反応が起こって酸素を失うことによる抵抗値の低下を検出することによって、金属酸化物半導体層に接触するガス濃度に応じた値を出力するものであり、一対の電極間距離が小さければ小さいほど検出感度が高くて低濃度のガスでも検知することが可能である。特に、電極間距離が1μm以上の場合は距離が小さくなっても検出感度は余り大きく増大しないが、電極間距離が1μm以下の場合は距離が小さくなればなるほど検出感度が指数的に増大することが知られている。
【0003】
電極間距離を小さくする手段として、1μm以下のサブミクロンのリソグラフィ技術を採用することが考えられるが、この場合は、設備的に非常に高価な露光装置、成膜装置などを用いる必要があり、そのために半導体ガスセンサの製造コストが非常に高騰するという問題がある。また、電極間距離を小さくする別の手段として、FIBなどのイオンビームを用いて電極の金属を除去する方法も考えられるが、この場合も設備的に高価であるだけでなく、量産ができないために、製造コストが上記のリソグラフィ技術を用いる場合よりも更に高くなるという問題がある。
【0004】
また、電極間距離を小さくしないで検出感度を高める手段として、従来、基板表面に微細な凹凸を形成するとともに、その基板の凹凸表面上に金属酸化物半導体を蒸着やCVD等の物理的手法や気相化学反応手法を利用した薄膜形成法にて形成して前記凹凸に対応した凹凸面をもつ金属酸化物半導体薄膜層を設けるとか、基板の平滑表面上に蒸着やCVD等の物理的手法や気相化学反応手法によって、例えばSiO2 ,Al23 等の絶縁性物質の超微粒子薄膜を中間層(下地)として形成するとともに、この超微粒子薄膜上に金属酸化物半導体薄膜を形成して該金属酸化物半導体薄膜に前記中間層超微粒子の粒径に応じた凹凸を形成するとか、あるいは、基板表面への微細な凹凸の形成と中間層として絶縁性物質の超微粒子薄膜の形成とを併用するなど、要するに、金属酸化物半導体薄膜の表面に凹凸を形成して、その表面積を拡大することにより、表面活性度を増大し検出感度を高めた半導体ガスセンサが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平5−52790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来技術によれば、設備的に高価なソグラフィ技術などを用いることなく、感度を高めることが可能である反面、微細あるいは超微細な凹凸加工を含めて多くの製造工程を要するだけでなく、製品性能(感度)に大きく影響する凹凸の間隔や高さを適正に制御するために、例えば中間層超微粒子の粒径と金属酸化物半導体薄膜の膜厚との関係を十分に考慮しそれに見合った高度な製造技術を要し、それだけ製品コストが上昇しやすい。また、この従来技術の場合は、電極間距離の縮小化に伴う指数的な検出感度の増大を図ったものでなく、あくまでも表面積の拡大によって検出感度を高めんとするものであるから、ppmレベル以下の検出感度を得るためには、表面積を更に拡大する必要があり、その結果、センサ全体が大型化しやすく、それだけガスセンサの用途が狭められてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は上述の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、高価なソグラフィ技術などを用いることなく、また、大型化を伴うことなく、容易かつ安価にppmレベル以下の高感度化を実現できる半導体ガスセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る半導体ガスセンサは、基板上に設けた一対の電極間に金属酸化物半導体層を形成し、この金属酸化物半導体層のガス接触に伴う抵抗値の変化を前記電極で検出することにより、ガス検知を行うように構成されている半導体ガスセンサにおいて、前記金属酸化物半導体層中に、導電性微細粒子群をそれら微細粒子群が前記一対の電極間の全域に亘り連続コンタクトしないで前記電極間に少なくとも一つの微小なギャップを形成するような拡散状態で混在させてあることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
上記構成の本発明によれば、一対の電極間に形成される金属酸化物半導体層中に拡散状態で混在されている導電性微細粒子群の存在により一対の電極間距離が狭められたと同等な微少ギャップを電極間に形成させることが可能となり、検出感度を指数的に増大させることができる。したがって、露光装置、成膜装置など設備的に高価なリソグラフィ技術を用いることなく、また、従来技術のような高度な製造技術を要することなく、ppmレベル以下の高感度のガスセンサを容易かつ低コストに得ることができる。しかも、表面積の拡大による検出感度の増大でないので、センサ全体を小型化しやすく、それだけガスセンサの用途を広く確保することができるという効果を奏する。
【0010】
本発明に係る半導体ガスセンサにおいて、前記微小ギャップを形成するために金属酸化物半導体層中に拡散状態で混在される導電性微細粒子群としては、1μm以下のサブミクロンの粒径を有することが望ましく、その導電性微細粒子群を金属酸化物半導体層中に拡散させる手段としては、イオンビームなどの打ち込み装置を用いて拡散させる手段を用いてもよいが、特に、請求項2に記載のように、1μm以下の微小なギャップを形成するに必要な量の導電性微細粒子群を前記金属酸化物半導体層の形成前に予め混合拡散させる手段を採用することにより、上記のような微小ギャップを有する半導体ガスセンサの製造工程数を少なくして製品コストの一層の低減化を図ることができる。
【0011】
また、本発明に係る半導体ガスセンサにおいて、前記微小ギャップを形成する手段として、請求項3に記載のように、前記一対の電極間の基板部分にエッチングにより少なくとも二つの凹部を形成し、これら凹部内に前記導電性微細粒子群を含む金属酸化物半導体層を充填塗布して隣接凹部間に残存する基板凸部分により1μm以下の微小なギャップを形成する手段を採用する場合は、エッチングという工程数の増加はあるものの、1μm以下の微小なギャップを確実に形成することが可能で、高感度安定性に優れた半導体ガスセンサを歩留まりよく製造することができる。
【0012】
なお、前記導電性微細粒子群としては、請求項4に記載のように、酸化錫(SnO2 )や酸化タングステン(WO2 )、酸化チタン(TiO2 )、酸化ニッケル(NiO2 )等の金属酸化物半導体の活性化温度(200℃〜800℃)で酸化しない金(Au)等の導電性金属粒子、あるいは、シリコン(Si)や酸化ケイ素(SiO2 )などの半導体もしくは非導電性粒子を金(Au)などの導電性金属膜で被覆して導電性を付与したものを用いることができる。
【0013】
また、基板としては、シリコン,ガラス,石英,アルミナ等のセラミックス、Ni,Cu,Al,Cr等の金属から導電性、絶縁性、耐熱性を考慮して選択使用すればよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第一の実施形態を示す半導体ガスセンサ全体の縦断面図であり、同図において、1は耐熱性基板であり、この基板1の表面上には一対の電極2,3が設けられているとともに、これら一対の電極2,3間の基板1表面上には、酸化錫(SnO2 )等の金属酸化物半導体層4が形成され、かつ、前記基板1の裏面側にはヒータ膜10が形成されている。前記ヒータ膜10には、前記金属酸化物半導体層4を加熱して活性化する電力供給線5,6が接続され、また、一対の電極2,3には、前記金属酸化物半導体層4の加熱に伴う抵抗値の変化を検出しその検出信号を図外のガス検知部に伝送するための信号取出線7,8が接続されている。
【0015】
前記金属酸化物半導体層4内には、例えば金(Au)など金属酸化物半導体層4の活性化温度(200℃〜800℃)で酸化しない金属粒子あるいはシリコン(Si)や酸化ケイ素(SiO2 )などの半導体もしくは非導電性粒子を金(Au)などの導電性金属膜で被覆して導電性を付与した1μm以下の粒径を有する導電性微細粒子群9が一対の電極2,3間の全域に亘り連続コンタクトしない拡散状態に混在されている。
【0016】
詳しくは、1μm以下の粒径を有する導電性微細粒子群9で、図2に拡大して明示するように、前記一対の電極2,3間の金属酸化物半導体層4内に1μm以下サブミクロンの微小ギャップgを形成するに必要な量の導電性微細粒子群9を金属酸化物半導体層4の形成前に、その金属酸化物半導体材料に予め均一またはほぼ均一に混合拡散させ、この導電性微細粒子群9を混合拡散した金属酸化物半導体材料を基板1表面上の一対の電極2,3間に充填塗布して所定厚さの金属酸化物半導体層4を形成することによって、この金属酸化物半導体層4内に複数の1μm以下サブミクロンの微小ギャップgを形成させたものである。
【0017】
上記のようにして作製された第一の実施形態による半導体ガスセンサにおいては、ヒータ膜10を介して金属酸化物半導体層4を加熱することにより、金属酸化物半導体層4の抵抗値が低下し、その抵抗値の変化(低下)を一対の電極2,3で検出しその検出号を信号取出線7,8を経て図外のガス検知部に伝送することによって、金属酸化物半導体層4表面に接触するガスを検知し、かつ、そのガス濃度を検出する。
【0018】
ここで、一対の電極2,3間に形成される金属酸化物半導体層4中に拡散状態で混在されている導電性微細粒子群9の存在によって、一対の電極2,3間距離が狭められたと同等な1μm以下の微小ギャップgが金属酸化物半導体層4内に形成されているので、検出感度は指数的に増大されることになり、露光装置、成膜装置など設備的に高価なリソグラフィ技術を用いなくとも、ppmレベル以下の高感度のガスセンサを容易かつ低コストに得ることができる。また、金属酸化物半導体層4の表面積を拡大する必要がないので、センサ全体を小型化しやすく、それだけ当該半導体ガスセンサの用途を広く確保することができる。
【0019】
また、上記第一の実施形態では、1μm以下の微小なギャップgを形成するに必要な量の導電性微細粒子群9を金属酸化物半導体層4の形成前に予め混合拡散させる手段を採用しているので、上記のような微小ギャップgを有する半導体ガスセンサの製造工程数が少なくてよく、製品コストの低減化を図ることが可能である。
【0020】
図3及び図4は、本発明の第二の実施形態を示す半導体ガスセンサ全体の縦断面図及び要部の拡大縦断面図であり、この第二の実施形態では、一対の電極2,3間の基板1部分にエッチングにより二つの凹部1a,1bを形成し、これら凹部1a,1b内それぞれに、前記導電性微細粒子群9を混在させた金属酸化物半導体層4,4を充填塗布して前記二つの凹部1a,1b間に残存する基板凸部分1cにより、1μm以下サブミクロンの一つの微小なギャップgを形成したものである。なお、この第二の実施形態の場合、二つの金属酸化物半導体層4,4中に混在されている導電性微細粒子群9は連続コンタクト状態にあることが望ましいが、一部が非コンタクト状態にあってもよい。
【0021】
このように作製された第二の実施形態による半導体ガスセンサにおいては、上記した第一の実施形態のものに比してエッチング工程が増えるものの、一対の電極2,3間に1μm以下サブミクロンの微小なギャップgを確実に形成することが可能で、高感度安定性に優れた半導体ガスセンサを歩留まりよく製造することができる。
【0022】
なお、上記第二の実施形態による半導体ガスセンサにおいて、導電性微細粒子群9を混在させた金属酸化物半導体層4,4を、図5に示すように、一対の電極2,3側から微小ギャップg側に近づくほど肉厚が漸次小さくなるような形態に形成してもよい。
【0023】
また、図示は省略するが、導電性微細粒子群9を金属酸化物半導体層4の形成前に、その金属酸化物半導体材料に予め均一に混合拡散する手段に代えて、金属酸化物半導体層4の形成後に導電性微細粒子群9をイオンビームなどの打ち込み装置を用いて金属酸化物半導体層4に打ち込み拡散する手段を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第一の実施形態を示す半導体ガスセンサ全体の縦断面図である。
【図2】同上半導体ガスセンサの要部の拡大平面図である。
【図3】本発明の第二の実施形態を示す半導体ガスセンサ全体の縦断面図である。
【図4】同上半導体ガスセンサの要部の拡大縦断面図である。
【図5】本発明の第二の実施形態の変形例を示す半導体ガスセンサ全体の縦断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 基板
1a,1b 凹部
1c 基板凸部分
2,3 電極
4 金属酸化物半導体層
9 導電性微細粒子群
g 微小ギャップ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設けた一対の電極間に金属酸化物半導体層を形成し、この金属酸化物半導体層のガス接触に伴う抵抗値の変化を前記電極で検出することにより、ガス検知を行うように構成されている半導体ガスセンサにおいて、
前記金属酸化物半導体層中に、導電性微細粒子群をそれら微細粒子群が前記一対の電極間の全域に亘り連続コンタクトしないで前記電極間に少なくとも一つの微小なギャップを形成するような拡散状態で混在させてあることを特徴とする半導体ガスセンサ。
【請求項2】
前記導電性微細粒子群は、1μm以下の微小なギャップを形成するに必要な量が前記金属酸化物半導体層の形成前に予め混合拡散されている請求項1に記載の半導体ガスセンサ。
【請求項3】
前記一対の電極間の基板部分にエッチングにより少なくとも二つの凹部を形成し、これら凹部内に前記導電性微細粒子群を含む金属酸化物半導体層を充填塗布して隣接凹部間に残存する基板凸部分により1μm以下の微小なギャップが形成されている請求項1に記載の半導体ガスセンサ。
【請求項4】
前記導電性微細粒子群が、1μm以下の粒径を有し、かつ、前記金属酸化物半導体層の活性化温度で酸化しない導電性金属粒子あるいは非導電性の粒子を導電性金属膜で被覆されたものである請求項1ないし3のいずれかに記載の半導体ガスセンサ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−78513(P2007−78513A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−266740(P2005−266740)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】