説明

半導体デバイスおよびその製造方法

【課題】複数の領域で異なる特性を有している量子ドットをもつ半導体デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】第1の(平均表面格子)パラメータ値を有する少なくとも1つの第1の領域2と、上記第1のパラメータ値とは異なる第2のパラメータ値を有する少なくとも1つの第2の領域3とを含む半導体表面1上に、半導体層を堆積する工程を含んでいる。上記半導体層は、自己組織化アイランド6および7が形成される厚さまで堆積される。アイランド6および7上には、キャップ層8が堆積される。キャップ層の禁制バンドギャップは上記アイランドよりも大きいため、上記アイランドが量子ドットを形成する。これらの量子ドットは、上記第1の領域アイランドと第2の領域アイランドとの(複数の)差により、上記第1の領域および第2の領域とは異なる特性を有している。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔本発明の分野〕
本発明は、量子ドットを含んだ半導体デバイス、特に量子ドットを含んだ光電子半導体デバイス、およびその製造方法に関する。本発明は、例えば発光ダイオード(LED)または半導体レーザダイオードに応用することができる。
【0002】
〔発明の背景〕
発光ダイオード(LED)およびレーザダイオード(LD)などの半導体光電子デバイスは、インジケータライト部品としての使用、固体光源としての使用、および光記憶システムにおける使用など、幅広く応用することができる。デバイスのアプリケーションへの適合性は、そのデバイスによって生成される光の波長に依存する。
【0003】
光電子デバイスから放射される光の波長は、そのデバイスの発光領域の特性に依存する。発光領域は、以下では、デバイスの「能動領域(active region)」と称する。半導体発光デバイスは、通常は、分子線エピタキシー(MBE)あるいは有機金属気相エピタキシー(MOVPE)などのエピタキシャル堆積技術を用いて形成される。これらのエピタキシャル堆積技術では、デバイスの層が基板上に連続的に堆積され、当該基板は、それぞれ光電子デバイスを含んだ個々のチップに分割される。これらのエピタキシャル堆積技術は、通常、最終的なチップサイズと同程度の長さスケールにおける基板表面の平面内における位置に応じて、堆積される各層の特性を制御することはほぼまたは全くできないという特徴を有している。従って、各チップの能動領域は、その表面領域全体において本質的に同一の特性を有している。この結果、各デバイス(チップ)が放射する光は、単一波長を有しているか、あるいは場合によっては、出力強度が最大値である波長周辺に分布する小さく連続した幅の波長幅を有している。このタイプのデバイスは、2つ以上の波長を有する光を混合する必要のある半導体光電子デバイスへの多くのアプリケーションには最適ではない。例えば、白色光として知覚される発光を生成するためには、少なくとも2つの波長を有する光を混合する必要がある。従って、2つ以上の発光波長で発光する光電子デバイスチップを形成することが求められる。このような光電子デバイスチップは、以下では、「多色」発光デバイスと称する。
【0004】
多色発光デバイスを形成するためには、互いに発光波長の異なる2つ以上の個別チップを、単一パッケージ内において組み合わせるという方法がある。しかし、このマルチチップ方法には、重大な不都合点がある。パッケージ内において2つ以上のチップを組み合わせなければならないため、形成可能な最小パッケージサイズが、単一のチップパッケージが達成し得るサイズよりも大きくなる。さらに、波長の異なる光が別々の場所から放射されるため、成分波長(component wavelength)を効果的に混合させるためには、複雑で、高価で、かさばるパッケージが必要となる。従って、マルチチップパッケージは、低コストでコンパクトな光源を必要とするアプリケーションには不都合である。
【0005】
これらの不都合点は、シングルチップによって多波長放射が供給されるモノリシック多色発光体(monolithic polychromatic light emitter)を用いることによって克服することができる。このタイプのデバイスは、発光波長が互い異なる複数の能動領域が基板上において互いに近接している配置されている場合は、基板が複数の個別チップに分割される際に各チップが発光波長の異なる能動領域を有するように形成することができる。
【0006】
従来技術においては、エピタキシャル堆積技術を用いてモノリシック多色発光体を提供する方法が存在する。一つの方法として、それぞれ発光波長の異なる2つ以上の発光デバイス構造を、垂直方向に、すなわち堆積方向に沿ってスタックする方法がある。例えば、米国特許出願第2002/0041148号には、III−V半導体材料から成る発光デバイスの最上部に堆積されたII−VI半導体材料から成る発光デバイスから形成されたデバイスが記載されている。また、米国特許出願第2005/0067627号および同2006/0027820号には、同様に垂直にスタックするパラダイムに基づいたデバイスが開示されている。米国特許出願第2003/0047742号には、複数の異なる基板上に独立して堆積された2つの発光デバイスを垂直に接合するための、ウェハボンディング技術の使用が開示されている。これらの垂直スタック方法においては、発光波長の異なるデバイスを垂直にスタックする処理は複雑であると共にコストが掛かり、動作中に発光波長の異なるデバイスに電流を注入するには独立制御が必要となるデバイス処理は非常に複雑であり、また、独立した発光波長を有する各能動領域を個々に成長させなければならないという不都合点を有している。
【0007】
モノリシック多色エミッタを形成するための第2の方法は、発光波長の異なる複数の能動領域を、基板面内に横方向に配置するという方法である。米国特許出願第2005/0161683号には、基板上に第1の発光デバイスを成長させ、当該デバイスをウェハ領域からエッチングによって除去し、エッチングされたこれら領域内に発光波長の異なる第2のデバイスを再成長させる方法が記載されている。この方法によって得られるデバイスは、当初の基板上に隣り合って配置された2つの独立した発光デバイスを有している。これと同様の結果は、米国特許第6,681,064号に従って、基板の規定領域内において複数のエピタキシャル堆積工程を行って、単一基板上に複数の発光デバイスを成長させることによって得られる。しかしこれらの方法は、使用される基板は1つのみであるが、個々の発光波長のためにデバイス構造全体をエピタキシャル成長させなければならないという重大な不都合点を有している。
【0008】
発光デバイスのための周知のタイプの能動領域の1つは、量子ドットを含んでいる。量子ドットはポテンシャルボックスであり、ボックス内部では電子またはホールのいずれか1つ、あるいは電子とホールとの両方(以下では、電子およびホールは「キャリア」と総称する)が閉じ込められており、これらが、上記ボックスのサイズが微細であるために3つ全ての空間次元において顕著な量子サイズ効果を受ける。三次元的に量子を閉じ込めることによって、キャリアのエネルギー準位が個別の準位に量子化され、キャリアの状態密度が1つ以上のデルタ関数の形となる。
【0009】
能動領域が量子ドットを含んでい半導体発光デバイスでは、量子ドットは、第1の半導体の結晶封入体であり、当該第1の半導体よりも大きい禁制エネルギーバンドギャップを有する第2の半導体のマトリックス(matrix)に埋め込まれている。上記封入体は、3つ全ての次元において十分に小さいため、キャリアは顕著な量子サイズ効果を受けることができる。量子ドットの特性は、そのサイズ、成分、および形状に強く依存している。量子ドットを含んでいる発光デバイスの能動領域に特に関連しているのは、量子ドットから放射される光の波長が、当該量子ドットのサイズ、成分、および形状に強く依存するという点である。
【0010】
発光デバイスの能動領域内において用いる量子ドットの一般的な準備方法は、MBEまたはMOVPE技術などによるエピタキシャル堆積中における、基板表面上へのアイランドの自己組織化形成を利用する。能動領域に適した量子ドットは、アイランド材料がキャップ材料と基板との間に埋め込まれるように、アイランドの最上部にキャップ層を成長させることによって形成される。アイランド材料の禁制エネルギーバンドギャップがキャップ材料の禁制エネルギーバンドギャップおよび上部にアイランドが形成される基板の表面上の材料の禁制エネルギーバンドギャップよりも小さい場合、当該アイランド材料はポテンシャル・ボックスとして機能する。このボックスは、その寸法が3つ全ての空間次元において十分に小さい場合は、量子ドットとして機能する。自己組織化アイランド成長による量子ドット能動領域の形成は、当該分野において広く報告されている。
【0011】
エピタキシャル成長中にアイランドを自己組織化形成する駆動力の1つとなり得るのは、堆積された材料が弾力的に緩和される際に有する格子定数と、成長面付近の基板内にあり、堆積された材料がエピタキシャル成長中に有する同等の格子定数(関連する格子定数は、基板の成長面に平行な面内に存在する)との差によって生じる歪である。堆積された材料と基板または上部に基板が堆積される下層との間に、上記のような格子定数の不一致が存在する場合は、一般的には次のような性質(behaviour)が観察される。まず、堆積された材料が、表面全体を被覆する平坦層を形成し(これは二次元(2D)成長と称される)、そして堆積が進むにつれ、上記層の表面上においてアイランドが核となり、続いて堆積された材料が上記平坦層内ではなく上記アイランド内に収容される(これは三次元(3D)成長と称される)。まず2Dモードで生じ、続いて3Dアイランド成長モードへと進んでいく層のエピタキシャル成長は、一般的には、ストランスキー・クラスタノフ成長と称される(以下ではSK成長と称する)。2D成長段階において形成される平坦層は、一般的には、ぬれ層と称される。2D成長から3D成長への遷移が起こる位置のぬれ層の厚さは、一般的には、ぬれ層の臨界厚さと称される。SK成長によるアイランド形成は、従来技術において、幅広い材料系において報告されている。
【0012】
2D成長から3D成長への遷移の駆動力は、堆積された材料の格子定数と、基板表面の格子定数との不一致に依存する。SK成長および2D成長から3D成長への遷移の詳細に渡る特性は、エピタキシャル堆積条件、および用いられる材料に依存する。しかし従来技術では、幅広い材料系において、下層と堆積された材料との間における格子定数の不一致が増加するのに伴って臨界厚さが小さくなることが一般的に報告されている。
【0013】
堆積された材料と下層との間における格子定数の不一致が、2D成長から3D成長への遷移に与える影響を用いて、SK成長中においてアイランドが核を成す基板領域を制御することができる。この効果は、米国特許第5,614,435号に記載の方法において利用されており、基板の所定の領域内のみにおいて、アイランドの好ましい核生成が達成されている。好ましい核生成を達成するために提案される一方法は、アイランドを形成したい領域とアイランドを形成したくない領域とで表面の歪が異なる基板上においてSK成長を生じさせるというものである。表面の歪における上記差は、堆積された材料と、基板表面における2種類の領域との間における格子定数の不一致に、差があることを意味している。不一致の差によって、SK成長中にアイランドを形成したい領域とアイランドを形成したくない領域とにおいて臨界厚さが異なる結果となり、基板表面の歪は、アイランドを形成したくない領域内における臨界厚さの方が大きくなるように選択される。アイランドは、SK成長中に堆積される材料の量が小さい方の臨界厚さを越えているが大きい方の臨界厚さは越えていない場合に、所望の領域内のみに形成される。米国特許第6,583,436号には、SK層成長に用いられる基板表面の歪を調節することによって、アイランドが核を成す領域を、上記と同様に制御する方法が記載されている。
【0014】
米国特許第6,507,042号には、SK成長中に形成されるアイランドの特性を決定する際における基板表面の格子定数の重要性を示す方法が記載されている。同特許には、SK成長を用いて形成された量子ドット能動領域を有する発光デバイスの発光波長は、SK成長が行われる基板またはバッファ層の表面格子定数を選択することによって調節可能であることが記載されている。基板またはバッファ層の表面格子定数の選択は、基板またはバッファ層の組成を適切に選択することによって行うことができる。基板に対して大きい格子定数が選択された場合は、InGa1−xAs量子ドットを含んでいると共に発光波長の長い能動領域が形成された。この基板表面の格子定数の選択方法は、別々のエピタキシャル堆積層内において成長されたデバイスの発光波長を調節する一方法を提供するものではあるが、単一層内における量子ドット特性を制御する備えはない。
【0015】
S. Mokkapati et al. in "Controlling the properties of InGaAs quantum dots by selective-area epitaxy," Applied Physics Letters 86 113102 (2005)には、SKアイランド成長により形成された量子ドットの特性を有利に面内制御することのできる、従来技術における既存の方法が記載されている。この方法は、一般的に、選択領域エピタキシーと称される。この方法では、SK成長に用いられる基板表面が、マスクされた領域を用いてパターン形成される。後のSK成長中において、堆積された材料は、マスクされた領域に付着せずに、マスクを横切ってマスクされていない基板表面の領域に移動する。マスクからの移動の結果、マスク間の領域内に到着する材料の総量は、マスクされた領域のサイズとマスク間の領域のサイズとに依存することになる。従って、基板の複数の異なる領域内において異なるマスクパターンを用いることによって、SK成長中に形成されるアイランドは、基板の複数の異なる領域において異なる特性を有することができる。しかし、選択領域エピタキシー方法は、マスクされた表面上における直接エピタキシャル成長に依存しているため、マスク形成中に生じる表面の残留汚染によって、得られる量子ドットの特性が劣化し得るという、重大な不都合点を有している。この方法はさらに、新たなSK成長が行われる度にマスクが基板表面上に堆積されるため、発光強度を高くするために各デバイス構造内において2つ以上の層のSK成長が行われる発光デバイスのための量子ドット能動領域を準備するための方法としての適性は乏しいという、重大な制限を有している。
【0016】
JP−A−2003 309322は、バルクInP層を有し、上部にはInP領域とGaInAsP領域とが交互に設けられた基板の準備方法が開示している。続いて、当該基板上にInAs量子ドットが成長される。
【0017】
関連する他の従来技術として、米国特許第5,075,742号、US5,952,680、US6,445,009、およびB. Damilano et al. "From visible to white light emission by GaN quantum dots on Si(III) substrate" Appl. Phys. Lett. 75 962 (1999)がある。
【0018】
〔発明の開示〕
本発明の第1の形態は、半導体表面を処理して、平均表面格子定数の第1の値を有する上記表面の少なくとも1つの第1の領域と、上記第1の値とは異なる、平均表面格子定数の第2の値を有する上記表面の少なくとも1つの第2の領域とを得る工程と、上記少なくとも1つの第1の領域上および上記少なくとも1つの第2の領域上の両方に自己組織化アイランドが形成される厚さまで、上記半導体表面上に第2の半導体層を堆積する工程であって、上記第1の領域上の上記自己組織化アイランドは、パラメータの第1の平均値を有するように形成され、上記第2の領域上の上記自己組織化アイランドは、上記第1の値とは異なる、パラメータの第2の平均値を有するように形成される工程と、上記第2の半導体層上にキャップ層を堆積することによって、上記自己組織化アイランドが量子ドットを形成する工程であって、上記第1の領域上の当該量子ドットは、上記第2の領域上の当該量子ドットとは異なる特性を有するように形成される工程とを含んでいる、半導体デバイスの製造方法を提供する。
【0019】
なお、特徴「半導体表面を処理する工程」では、表面の全領域が処理される必要はないことに留意されたい。例えば、表面の第1の(または第2の)領域のみを処理して、その平均表面格子定数(ASLP)を変更し、第2の(または第1の)領域は未処理とすることも可能である。あるいは、表面の第1の領域と第2の領域との両方を処理して、第1の領域と第2の領域との両方が、表面の当初のALSPとは異なるASLPを有する(第1の領域および第2の領域が、互いに異なるASLPを有する)ようにすることもできる。
【0020】
上記半導体デバイスは、半導体発光デバイスであってよく、上記第1の領域上の量子ドットは、上記第2の領域上の量子ドットとは異なる光学特性を有していてよい。
【0021】
あるいは、上記半導体デバイスは、フォトダイオードなどの感光半導体デバイスであってよく、上記第1の領域上の量子ドットは、上記第2の領域上の量子ドットとは異なる光吸収特性を有していてよい。
【0022】
あるいは、上記半導体デバイスは、量子ドット内にキャリアが蓄積されるメモリデバイスであってよく、上記第1の領域上の量子ドットは、上記第2の領域上の量子ドットとは異なるキャリア蓄積特性を有していてよい。
【0023】
本発明の第2の形態は、上記第1の形態の方法によって製造され、能動領域を有した半導体デバイスであって、当該能動領域の第1の部分は、複数の第1の量子ドットを含んでおり、当該能動領域の第2の部分は、複数の第2の量子ドットを含んでおり、上記第1の量子ドットは、上記第2の量子ドットとは異なる特性を有している、半導体デバイスを提供する。
【0024】
本発明の他の特徴は、従属請求項に記載されている。
【0025】
従って、本発明は、その異なる所定の領域内において異なる特性を有する量子ドットを含んだモノリシック半導体デバイス、およびその形成方法を提供する。本発明によると、エピタキシャル堆積中に、自己組織化アイランド形成によって量子ドットが形成される。本発明は、単一のエピタキシャル堆積プロセス中に、基板の異なる領域内において異なる特性を有するアイランドの自己組織化成長を提供する。
【0026】
〔好ましい実施形態の説明〕
単一のエピタキシャル堆積プロセス中に、異なる特性を有するアイランドの自己組織化形成を達成する方法の主要な工程について、図1a〜図1cを参照しながら説明する。これらの図は、上記方法の工程を示す概略断面図である。図1aは、その上部において堆積が行われる基板1(例えば半導体基板)の断面を示している。当該基板の表面は、領域2および3の2つの所定のタイプが所望の通りに分布するように準備される(図1aには、便宜上、各タイプの1領域のみが示されている)。領域2内における平均表面格子定数(以下ではASLPと称する)は、領域3内のASLPよりも大きい。基板の表面格子定数は、基板表面または基板表面付近に位置する基板の成長面に平行な面内において測定される格子定数であり、当該成長面上にエピタキシャル成長される材料が有する格子定数である。ASLPは、表面の平面内に位置する主要な全ての結晶軸に沿った表面格子定数の平均である。ASLPは、高解像度のX線回折、反射高速電子回折、および走査形トンネル電子顕微鏡を含む、多くの分析技術を用いて決定することができる。
【0027】
ASLPが異なる領域2および領域3という、2つの所定のタイプを有する基板表面は、表面を処理することによって得られる。表面は、当初は、領域の一タイプ(例えば領域2)に所望されるASLPに対応したASLPを有していてよい。この場合、上記基板表面は、領域3のみを処理し、これら領域3内において異なるASLPを得る(領域2は処理せず、当初のALSPを保持している)ことによって得ることができる。あるいは、上記基板表面は、領域2および領域3を両方処理し、これら領域2および領域3が両方とも、当初の表面のALSPとは異なるASLPを有する(領域2は、領域3のALSPとは異なるASLPを有する)ようにして、得ることができる。
【0028】
基板表面が、領域2および領域3を両方とも処理して、領域2および領域3が両方とも、当初の表面のALSPとは異なるASLPを有するようにすることによって得られる場合、領域2および領域3は、1つの処理工程において同時に処理してもよく、あるいは、領域2および領域3は、別々の処理工程において処理してもよい。
【0029】
図1a〜図1cは、2つのタイプの領域のみを示している。しかし本発明は、これに限定されるものではなく、表面は3つ以上のタイプの領域を含んでいてよい。
【0030】
基板1の表面上には、MBEまたはMOVPEなどのエピタキシャル堆積技術を用いて、材料が堆積される。このとき、堆積される材料が、基板表面上においてSK成長し、自己組織化アイランドを形成するように、材料が堆積される。従来技術において知られているように、SK成長中に形成される自己組織化アイランドの最終的な特性は、成長直後に成長遮断工程を用いることによって調節可能である。このような遮断工程を用いて自己組織化アイランドを形成可能である点、および、これとは反対に上記のような遮断工程を用いずに自己組織化アイランドを形成可能である点は、明らかに本発明の範囲内であると考えられる。自己組織化アイランドは、単に「アイランド」と略称される場合がある。
【0031】
SKアイランド形成のための臨界厚さは、表面の領域2および領域3の2つのタイプにおいて異なる。これは、領域2と領域3とにおけるASLPの差が、堆積される材料の格子定数と基板表面の格子定数との不一致が2つのタイプの領域間において異なっていることを意味しているからである。これを説明するために、領域2におけるSKアイランド形成のための臨界厚さは、領域3におけるSKアイランド形成のための臨界厚さよりも大きいと仮定する。
【0032】
SK層のための材料は、堆積される材料の等価2D厚さ(equivalent 2D thickness)(以下ではE2DTと称する)が、領域2内および領域3内において同一となるように、基板1の表面上部に均一に堆積される。E2DTは、堆積される材料が均一な厚さの層内に完全に収容された場合に、基板上に形成される層の厚さとして規定される。堆積される材料のE2DTは、領域2および領域3全てにおける臨界厚さを越えるため、全ての領域内においてアイランドが形成される。(ここで用いられている「上部」という表現は、図1aに示されているように配置された基板を称する。)
アイランドの自己組織化形成後における構造を示す概略断面図は、図1bに示されている。領域2と領域3とにおけるSK臨界厚さの差によって、領域2内のぬれ層4の最終的な厚さは、領域3内のぬれ層5の最終的な厚さよりも大きくなる。領域2および領域3内に堆積されるE2DTは同一であるため、領域3内のアイランド内に組み込まれる材料の体積は、領域2内のアイランド内に組み込まれる体積よりも大きい。従って、領域2内のアイランドの平均特性は、領域3内のアイランドの平均特性とは異なる。例えば、領域2内のアイランドと領域3内のアイランドとにおいて、以下の特性のうちいずれか1つ、あるいは以下の特性の任意の組み合わせが異なっていてよい:平均高さ(成長方向に沿って測定されるものであって、成長方向とは、基板に対して垂直方向(換言すれば、基板表面の平面に平行)である)、平均ラテラル寸法(例えば平均幅)(成長方向に対して垂直方向に測定する)、および平均形状。さらに、2つ以上の化学元素(例えばA1−xなどの半導体合金(AおよびBは異なる化学元素))を含有する自己組織化アイランドにおいては、領域2内に形成されるアイランドの平均組成は、領域3内に形成されるアイランドの平均組成とは異なっていてよい。これは、ぬれ層およびアイランド内における元素の取り込みが、アイランドの成長中におけるアイランドの高さ、直径、および形状によって様々であるからである。
【0033】
さらに、これらアイランドの平均値に関するあらゆる特性の分布は、領域2内のアイランドの集合と、領域3内のアイランドの集合とにおいて異なっていてよい。
【0034】
個々のアイランドまたはアイランドの集合の特性におけるこれらの差の代わりに、あるいはこれらの差に加えて、領域2内における(基板成長面の単位面積当たりのアイランド数として規定される)アイランド密度は、領域3内におけるアイランド密度とは異なっていてよい。図1bは、領域2内に形成されたアイランド6の平均高さが領域2内に形成されたアイランド7の平均高さよりも小さい場合の例を示している。(従来技術において周知であるように、自己組織化SK成長中に形成されるアイランドは、通常は全て同一ではなく、平均サイズなどのアイランドの特性にバラつきがある場合が多い。図1bにおいて6および7で示されているアイランドは、領域2および領域3内に形成されたアイランドの集合の平均特性を概略的に示している。)
次に、図1cに示されているように、自己組織化アイランド6および7、並びにぬれ層4および5が、キャップ層8と共に成長(オーバーグロース)する。このキャップ層の禁制バンドギャップは、自己組織化アイランド6および7が量子ドットを形成するように、自己組織化アイランド6および7の禁制バンドギャップよりも大きい。
【0035】
異なるタイプの領域2および3内に形成されるアイランド6および7の構造特性が異なるため、2つのタイプの領域2および3内に形成される量子ドット能動領域は、互いに異なる特性を示す。例えば、量子ドットから放射される光の波長は量子ドットのサイズに敏感であるため、領域2および領域3内の量子ドットからの発光波長は異なり得る。従ってこの方法によって、異なる特性を有する複数の量子ドット能動領域が、単一のエピタキシャル成長堆積によって、異なる幅で、且つ基板上の所定の場所にモノリシックに形成される。アイランド6および7のサイズを適切に選択することによって、自己組織化アイランド6によって形成される量子ドット、および自己組織化アイランド7によって形成される量子ドットの発光波長を、所望の通りに選択することができる。これによって、所望とする全体的なスペクトル出力を得ることができる。
【0036】
タイプ2および3の領域のサイズおよび形状は、所望の通りに任意に組み合わせることができ、基板表面上におけるこれら領域の分布もまた、所望の通りに選択することができる。例えば、タイプ2および3の領域は、後に基板が分割されて個々のチップとなる際に、各チップが、所望の通りに分布された2つの能動領域を含むように、基板表面上に分布させることができる。
【0037】
必要に応じて、1つ以上の別のSK層をキャップ層8上において繰り返し堆積して、量子ドット層の垂直スタックを形成してもよい。キャップ層8の成長後に、キャップ層の表面領域9および10のASLPが、各領域2および3の当初の表面のASLPと実質的に同一である場合、後のこれらSK層は、個々の領域間における自己組織化アイランド特性において同様の差を示す。
【0038】
図1a〜図1cは、2つの異なる発光波長を有する量子ドットをもたらす、異なる2つのタイプの領域のみを示している。しかし本発明は、これに限定されるものではなく、上記方法は、3つ以上のタイプの領域を含む表面にも適用可能である。一般的には、基板表面は、それぞれ異なるASLPを有する各タイプの領域が、任意の所望の数で、任意の所望の通りに分布されるように、準備される。例えば、3つの異なる発光波長の量子ドットをもたらす、3つの異なるタイプの領域を備えることができる。
【0039】
幅が異なる基板上の所定の領域内に、異なる特性を有する能動領域を形成する上記方法は、同様の結果を達成する従来技術による方法に対して、重要な利点を有している。従来技術に関して既述した通り、同様の結果を達成する従来技術による2つの既存の方法は、量子ドットの選択領域エピタキシャル成長か、あるいは、基板上の異なる領域上の異なる能動領域の連続成長かのいずれかに依存している。連続成長方法では、異なる各能動領域に対して、別のエピタキシャル堆積プロセスが少なくとも1つは必要となる。しかし本発明による方法では、単一のエピタキシャル堆積プロセスを用いて、所望する任意数の異なる能動領域特性を、基板上に組み込むことができる。必要とされるエピタキシャル堆積プロセスがわずか1つであることによって、コストが大幅に削減されると共に、多数の異なる能動領域を有する構造を実用的に形成するための柔軟性が得られる。本発明による方法は、マスク表面にSK層を直接堆積する必要がないため、マスク処理中における表面の残留汚染に起因する量子ドット能動領域の特性劣化に関連する不都合点を回避することができるという点において、選択領域エピタキシーに対して利点を有している。本方法はさらに、各層に対して個々のマスクを形成する必要なく、量子ドットの複数の層のスタックを介して量子ドット特性の制御を維持できるという点において、選択領域エピタキシーに対して重要な利点を有している。これによって、高性能のデバイスに必要とされ得る、量子ドットの多層スタックを有した能動領域を形成することができる。
【0040】
米国特許第5,614,435号および米国特許第6,583,436号に記載の方法は、SK成長中におけるアイランドの核生成に対し、一部の制御を提供するものである。しかし、両方法ともに、基板の異なる領域内に形成されるアイランドの特性について全く制御できない、著しい制約がある。
【0041】
本発明はさらに、半導体表面を処理して、2つ(または2つ以上)のタイプの領域を得ることによって、2つ(または2つ以上)のタイプの領域2および3を含む表面を得ることができるという特徴を有している。つまり、後に表面上に成長される層が有する欠陥は低密度である。
【0042】
対照的に、JP−A−2003−309322の方法では、表面は、InP基板上において、InPとGaInAsPとが交互になった領域を有している。InP基板の領域上にGaInAsPを成長させることによって、GaInAsPの格子定数とInPの格子定数との不一致に起因して、GaInAsP内に欠陥(特に転位)が生じる結果となる。さらに、ウェットエッチングが困難な材料(例えば、III族窒化物材料)に対しては、高品質の材料を上部に成長し得る表面をエッチングによって準備するのが困難である。これは、JP−A−2003−309322において再成長されたGaInAsP領域の欠陥のさらなる原因でもある。
【0043】
上述のメカニズムのいずれによって生じる欠陥も、JP−A−2003−309322における表面上に後に成長される量子ドットの性能を大幅に劣化させ得る。この問題は、本発明に係る方法には存在しない。これは、半導体表面を処理して、上記2つ(または2つ以上)のタイプの領域を得るということは、表面上に後に成長される層の欠陥が低密度となり、これによってこれら層の品質が高くなることを意味しているからである。
【0044】
本発明はさらに、上記表面を得るために必要なエピタキシャル工程が、JP−A−2003−309322の方法よりも少ないという利点を有している。
【0045】
本発明の好ましい実施形態について、2つ以上の異なる波長成分を有する光を放射する発光デバイスを参照しながら、以下に説明する。しかし本発明は、発光デバイスに限定されるものではない。
【0046】
本発明の第1の実施形態に係る発光デバイスおよびその形成方法について、図2a〜図2dを参照しながら説明する。
【0047】
本実施形態では、MBEを用いて、基板上に、弾性的に歪ませた表面層を有するヘテロ構造が堆積される。当該ヘテロ構造は、図2aの概略断面に示されている。本実施形態では、基板12は、サファイアベースの基板14上に成長されたn型ドープされたGaN層13から成る、テンプレート基板である。n型GaNバッファ層15、およびn型AlGa1−xN(0<x≦1)(以下ではAlGaNと称する)層16は、この順番で基板12上に成長される。AlGaN層16のASLPは、弾性的に緩和されたAlGaN結晶のASLPとは等しくない。これは、AlGaN層が、部分的または完全に、基板表面に平行な面内においてGaNバッファ層15に歪まされるからであり、また、緩和されたAlGaNのASLPは、GaNバッファ層のASLPとは等しくないからである(当該GaNバッファ層のASLPは、バルクGaNのASLPとは異なっていてよい。これは、サファイア上に成長されるGaN層は、常にバルクGaNのパラメータまで完全に緩和されないからである)。これには、AlGaN層の厚さを、完全な緩和が行われる位置の厚さよりも薄くして、AlGaN層内の歪が(プラスチック緩和または亀裂を介して)完全に緩和されないようにする必要がある。AlGaN層内における歪の緩和は、ほぼまたは全く行われないことが好ましいが、部分的に緩和させてよい。従って、AlGaN層16は、弾性的に歪ませた表面層である。
【0048】
上記ヘテロ構造は、MBE堆積装置から除去され、そしてAlGaN層16内における弾性歪の緩和を制御するために、AlGaN層16内/AlGaN層16上に、歪取り構造(strain-relieving features)が備えられる。本実施形態では、これらの歪取り構造は、ピットまたはトレンチなど、AlGaN層16内に形成された(例えばエッチングされた)凹部である(これらの凹部は、以下では、分かりやすくするために「ピット」と称する)。これらのピットがAlGaN層16にエッチングされる際に、当該ピットの側壁にに自由表面が導入される。これらの自由表面が設けられることによって、AlGaN層内における一部または全部の弾性歪が、当該自由表面の近傍において緩和される。このAlGaN層内の弾性歪は、基板成長面に平行な面内、および、ピット側壁の自由表面の平面に垂直な方向において、完全または部分的に緩和される。この弾性歪が完全または部分的に緩和されることによって、ピット側壁近傍におけるAlGaN層16のASLPが、これらピットがエッチングされる前におけるAlGaN層16のASLPと比べて変化する。
【0049】
弾性歪の緩和の程度、ひいてはAlGaN層16のASLPの値は、ピットの深さ、ピットの形状(成長面上における突出)、ピット側壁の断面形状、およびAlGaN層16の表面上におけるピットの分布に依存している。
【0050】
図3a〜図3cは、ピット側壁の形状の実施例の概略断面図である。図3aは、垂直な側壁を有するピットを示している。図3bは、当初の面の外向きの表面法線(surface normal)に対して90°未満の角度を成す、外向きの表面法線を有する側壁を有するピットを示している。図3cは、当初の面の外向きの表面法線に対して90°を超える角度を成す、外向きの表面法線を有する側壁を有するピットを示している。
【0051】
図3d〜図3gは、表面全体におけるピットの分布および形状の、可能な実施例の概略平面図である。図3dは、細長いピット22の格子模様を示している。これらピット22は細長く、AlGaN層16の幅全体において互いに平行に伸びている。図3eは、ピット22の長方形の碁盤目模様を示している。第1のセットの細長いピットは、AlGaN層16の幅全体において互いに平行に伸びており、第2のセットの細長いピットは、互いに平行に、且つ上記第1のセットの細長いピットに対して実質的に垂直に伸びている。図3fは、三角形の碁盤目模様のピット22を示している。第1のセットの細長いピットは、AlGaN層16の幅全体において互いに平行に伸びており、第2のセットの細長いピットは、互いに平行に、且つ上記第1のセットの細長いピットと交差しながらも非垂直(例えば60°)に伸びている。図3gは、ピット22のアレイを示している。各ピットは、幅方向および長さ方向の両方において限定的であり、規則的なアレイに配置されている。図3gは、正方形の形状を有し、正方形のアレイに配置されたピット22を示しているが、図3gに示されているピットの形状および/またはアレイとは異なったピットの形状および/またはアレイを有していてもよい。図3d〜図3gは、歪取りピットの単なる実施例を示しており、本発明はこれら特定の実施例に限定されるものではないことを理解されたい。歪取りピットの任意の適切な配置を用いることができる。
【0052】
AlGaN層16内における弾性歪の緩和は、ピット側壁に垂直な方向において生じる。従って、図3dに示されているようにピットが分布している場合は、ピット側壁に平行な結晶学的方向に沿って測定される表面格子定数は、ピットをエッチングしても実質的には変化せず、また、ピット側壁に垂直な結晶学的方向に沿って測定される表面格子定数は、ピットをエッチングすることによって変化する。しかし、図3eに示されているようにピットが分布されている場合、表面格子定数は、ピット側壁に垂直な結晶学的方向に沿って、2つの垂直方向において変化する。しかしいずれの場合においても、(また図3fおよび図3gの場合においても)、ピットがエッチングされた後におけるAlGaN層16のASLPは、ピットがエッチングされる前のASLPとは異なる。
【0053】
ピットの深さ、形状、側壁設計、および/または分布パターンを適切に選択することによって、AlGaN層16内における弾性歪の緩和の程度を制御することができる。表面格子定数は、ピットの深さ、形状、側壁設計、および/または分布パターンに応じて、ピット間の領域内において実質的に同一となるようにすることができ、あるいはピット間の領域内において異なるようにすることもできる。ピットの特定の深さ、特定の形状、特定の側壁設計、および特定の分布パターンの組み合わせは、以下ではピットパターン設計(PPD)と称する。
【0054】
AlGaN層16の表面上におけるピットの分布は、例えば任意の適切なリソグラフィ技術(光学リソグラフィ、電子ビームリソグラフィ、干渉リソグラフィ、あるいはインプリントリソグラフィ)など、任意の適切な技術を用いて規定することができる。次にピットは、ピットの所望の深さ、形状、および側壁形状を提供する条件を用いた、任意の適切なエッチング技術(例えば誘導結合プラズマエッチング)を用いてエッチングされる。ピットがエッチングされた後、プラズマ化学気相成長法などの技術を用いて、二酸化ケイ素などの絶縁誘電体材料21が堆積され、当該誘電体材料は、エッチングされたピットを充填し、AlGaN層16の最上面上に突出する。
【0055】
上記第1の実施形態では、第1のPPDによるピットは、AlGaN層16の表面の第1の領域のセット(図1aの領域2に対応する)においてエッチングされ、第2のPPDによるピットは、AlGaN層16の表面の第2の異なる領域のセット(図1aの領域3に対応する)においてエッチングされる。原理上、ピットは、1つの処理工程において第1の領域内と第2の領域内との両方にエッチングして設けてもよく、1つの処理工程において第1の領域内においてエッチングし、別の処理工程において第2の領域内においてエッチングして設けることも可能である。例えば、第1の領域内のピットは第1の側壁設計によって形成し、第2の領域内のピットは側壁設計の異なる第2の側壁設計によって形成することによって、第1の領域内において第1のPPDを、第2の領域内において第2のPPDを得ることができる。さらに別の実施例として、第1の領域内のピットは、上記に加えて、あるいは上記の代わりに、第1の分布パターンを有していてよく、第2の領域内のピットは、第2の異なる分布パターンを有していてよい。第1の領域のセットまたは第2の領域のセットのいずれにも含まれていないAlGaN層16の表面の領域内においては、ピットはエッチングされない。いずれのピットもエッチングされない表面の領域は、第1の領域および第2の領域とは異なる第3の領域のセットを形成する。第1の領域のセットおよび第2の領域のセットは、後の形成プロセスにおいて基板が個々のチップに分割される際に、各チップが、少なくとも1つの第1のPPDの領域と、少なくとも1つの第2のPPDの領域と、少なくとも1つのピットがエッチングされていない領域とを含むように分布される。これは、図4aに示されている。図4aは、基板23の一部と、第1のPPDおよび第2のPPDがそれぞれ用いられている領域24および25の分布と、残りの領域26の場所とを示す概略平面図である。
【0056】
PPDが異なっていることによって、AlGaN層16のASLPは、領域24、25、および26間において異なり、第1の領域24は第1の値を有し、第2の領域25は第2の値を有し、第3の領域26は第3の値を有する。以下の説明では、PPDは、領域24内のASLPが、領域26内のASLPよりも小さい領域25内のASLPよりも小さくなるようなPPDであると見なされる。これら3つのタイプの領域は、各タイプの領域が互いに異なるPPDを有する3つ全てのタイプの領域内にピットを設けることによって得ることができる。あるいは、1タイプの領域は、当初のASLPを維持するように、ピットが形成されないようにしてもよい。
【0057】
図2bは、或る特定のPPDを有するピットパターン(すなわち、領域24または25のいずれか1つにおいて(図2bは、図4aの全ての領域24、25、および26を示していない))をエッチングし、これらピットに二酸化ケイ素などの絶縁誘電体材料21を充填した後における、ヘテロ構造基板の概略断面図を示している。当該ヘテロ構造基板は、次に、MBE堆積装置に戻され、自己組織化アイランド形成によって形成された量子ドットを含んだ能動領域を成長させるために基板として用いられる。このために、当該基板は、基板を洗浄するのに適した任意の方法によって洗浄され、当該基板上には、バッファ層20(本実施例ではAlGaNバッファ層)が堆積される。次に、上記ヘテロ構造基板上に、例えばInGa1−xN(ここで、0≦x≦1である。以下ではInGaNと称する)層などの層が、SKモードで成長される。InGaNぬれ層17、および自己組織化InGaNアイランド49は、図2cに示されている。
【0058】
領域24、25、および26間においてASLPに差があることによって、これら3つのタイプの領域内において、InGaNアイランドの自己組織化形成のための臨界厚さが異なっている。領域24内の臨界厚さは、領域25内の臨界厚さよりも薄く、領域25内の臨界厚さは、領域26内の臨界厚さよりも薄い。SK層の成長中に堆積される材料のE2DTは、基板の全領域内において実質的に同じであり、また、3つ全てのタイプの領域24、25、および26内の臨界厚さを超過するように選択される。従って、3つ全てのタイプの領域内において自己組織化アイランドが形成される。しかし、領域24内の臨界厚さが領域25内の臨界厚さよりも薄いため、領域24内のアイランドに収容される材料の量は、領域25内のアイランドに収容される材料よりも多く、領域24内の自己組織化アイランドの平均高さは、領域25内の自己組織化アイランドのそれよりも高い。同様に、領域25内のアイランドに収容される材料の量は、領域26内のアイランドに収容される材料よりも多く、領域25内の自己組織化アイランドの平均高さは、領域26内の自己組織化アイランドのそれよりも高い。
【0059】
アイランドの形成後、自己組織化アイランド49を被覆するように、ぬれ層17上にキャップ層18が成長される。キャップ層18は、自己組織化アイランドの材料よりも禁制バンドギャップの大きい材料から形成されているため、上述したように、自己組織化アイランド49が量子ドットを構成する。
【0060】
歪層16は、InGa1−xN(0k≦x≦1)自己組織化アイランドおよびAlGa1−yN(0<y≦1)層16の場合のように、自己組織化アイランドのバンドギャップよりも大きいバンドギャップを有していなければならない。
【0061】
InGaN自己組織化アイランド49の場合、キャップ層18に適切した材料は、例えばAlInGa1−x−yN(ここで、0≦x≦1および0≦y≦1)である。従って、図2a〜図2dの実施形態では、InGaNアイランド49を被覆するAlInGa1−x−yNキャップ層18およびp型GaN層19が、この順番で、図2dに示されているように上記基板上に成長される。
【0062】
p型GaN層19は、LED製造に必要なpn接合を完成させるものである。図2dでは、層19は、誘電体材料21をオーバーグロースさせないものとして示されている。なぜならこれは、誘電体材料21の最上部に多結晶GaNが形成される可能性はあるが、実際に通常起こることであるからである。誘電体材料21の主目的は、p型層19とn型層16との間を通過するあらゆる電流を、能動領域を貫いて通過するようにすることである(すなわち誘電体材料21は、能動領域を迂回するp型層19とn型層16との間のあらゆる直接経路を遮断する)。
【0063】
LEDとのコンタクトを形成するのに適した任意の方法を用いて、p型層19およびn型GaNバッファ層15との金属コンタクトが、III族窒化物材料から準備される。例えば、p型GaN層19の表面上に、熱蒸着などの技術を用いて、ニッケル層および金層がこの順番で堆積されて、p型材料との電気コンタクトが形成され、そして領域26の部分27内において、誘導結合プラズマエッチングなどの技術を用いてn−GaN層まで行う第1のエッチングによって、n−GaN層とのコンタクトが準備され、そして電子ビーム蒸着などの技術を用いて、チタン層およびアルミニウム層が堆積される。図4bは、領域26の部分27内に、n−GaNとのコンタクトを堆積した後における基板を示している。p型GaN層とのコンタクト(図4bには示さず)は、領域24、25、および26内のコンタクト層が全て互いに絶縁されるように、エッチングによって分割することができる。
【0064】
コンタクト形成後、上記基板は、ソーイング(sawing)またはクリービング(cleaving)などの、任意の適切な基板分割方法を用いて、個々のチップに分割される。得られるチップ構造は、図4cに概略的に示されている。個々のチップ28はそれぞれ、領域24、25、および26を含んでおり、領域24、25、および26はそれぞれ、p型GaN層19との電気コンタクト(図示せず)、およびn型GaN層とのコンタクト27を有している。領域24、25、および26内のコンタクト層が全て互いに絶縁されるようにp型GaNとのコンタクトが分割された場合、各領域24、25、および26は、他の2つの領域とは異なる高さ、ひいては異なる発光特性を有する量子ドットを含んだ能動領域を有する、個々にアドレス可能なLEDである。
【0065】
領域24、25、および26間におけるInGaN量子ドットの平均高さにおける差によって、これらの領域の平均発光波長において差が生じる。極性または半極性結晶学的方向(例えば[0001])に成長したウルツ鉱型構造を有する窒化物量子ドットの場合、当該量子ドット内に固有の自発的電界およびピエゾ電界が原因となって、発光波長が量子ドットの高さに非常に強く依存する。
【0066】
InGaN量子ドットの発光波長が量子ドットの高さに依存しているため、領域24、25、および26内に形成されたLEDから放射される光の主波長は、それぞれ異なる。一実施形態では、例えば、領域26から放射される光のピーク発光波長は、400nm〜470nm(青色光として認識される)であり、領域25から放射される光のピーク発光波長は、470nm〜570nm(緑色光として認識される)であり、領域24から放射される光のピーク発光波長は、570nm〜640nm(赤色光として認識される)である。領域24、25、および26とのコンタクトが互いに絶縁されている場合、(3つ全てのLEDに共通する)n−コンタクトと個々のp−コンタクトそれぞれとの間に適切な電気的バイアスを印加することによって、発光波長の異なる複数のLEDを個々に制御することができる。従って、領域24、25、および26の1つ以上に発光させることによって、チップからの全光出力を変化させることができる。
【0067】
本発明は、上述した特定の波長帯に限定されるものではない。例えば、3つの領域24、25、および26の発光波長における差は、上述した実施例における差よりも小さくてもよい。
【0068】
上記実施形態において層を堆積するために用いられたエピタキシャル堆積方法は、MBEである。しかし上記実施形態は、MBEの代わりに、MOVPEなど他のエピタキシャル堆積技術を用いて実施可能であることを、当業者であれば容易に理解するであろう。さらに、上記実施形態の単一の態様において、2つ以上の異なるエピタキシャル堆積技術を組み合わせて用いることも可能である。例えば、ピットがエッチングされる前に基板上に堆積される層は、MOVPEなどの技術を用いて堆積し、残りの層は、MBEなど別の技術を用いて堆積することができる。
【0069】
上述の実施形態では、エピタキシャル成長のためのベース基板はサファイアであった。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、サファイアの代わりに他のベース基板を容易に用いることができる。このようなベース基板としては、AlInGa1−x−yN(ここで、0≦x≦1および0≦y≦1)、シリコン、炭化ケイ素、およびガラスが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
本実施形態では、六方晶ウルツ鉱型構造および立方晶閃亜鉛鉱型構造など、窒化物材料として存在が知られている任意のポリタイプを有するAlInGa1−x−yN材料を用いることができる。窒化物材料の成長方向は、任意の結晶学的方向に沿った方向であってよい。
【0071】
上述の実施形態では、GaN上にエピタキシャル成長されたAlGaN層16内における弾性歪の緩和を制御することによって、基板の複数の領域間においてASLPが調節される。AlGaN層の代わりに、完全または部分的に歪んだInGa1−xN(0≦x≦1)層を用いることができる。あるいは、AlGaN層16の代わりに、完全または部分的に歪んだ、組成の異なるAlInGa1−x−yN層(ここで、0≦x≦1および0≦y≦1)の任意の組み合わせを含んだスタックを用いることもできる。一般的に、層16および層17は、(Al、In、Ga)N系に属しているものであってよい(ただし、上述したように、層16は、ぬれ層17内に形成される自己組織化アイランドよりも大きいバンドギャップを有している)。(Al、In、Ga)N系とは、AlInGa1−x−yN(ここで、0≦x≦1および0≦y≦1)の構成を有する材料を意味している。
【0072】
さらに、本発明は、歪層16内に応力緩和構造を設けることによってASLPに変化をもたせることに限定されるものではなく、基板のASLPに制御された変化をもたせる任意の適切な方法を、SK量子ドット層の成長前に用いて、SK層の特性を同様に制御することができる。このような別の技術の一例としては、ラテラル・オーバーグロース(lateral overgrowth)技術を用いて、ASLPのそれぞれ異なる複数の領域を含んだ基板を準備する技術がある。
【0073】
ラテラル・オーバークロース技術の原理は、例えば、P. Gibart “Metal organic vapour phase epitaxy of GaN and lateral overgrowth” Rep. Prog. Phys. 67 667 (2004)に記載されている。過成長技術を用いた、ASLPのそれぞれ異なる複数の領域を含む半導体表面の準備は、図8aおよび図8bに示されている。図8aおよび図8bは、準備プロセスの2つの異なる段階にある状態を示す概略断面図である。
【0074】
第1の工程では、基板38上に、AlInGa1−x−yN(ここで、0≦x≦1および0≦y≦1)「種(seeds)」結晶42を準備する。図8aおよび図8bに示されている実施例では、基板38は、サファイアベースの基板400上に成長されたGaN層39から成るテンプレート基板である。種42を形成するための一方法としては、基板38上にSiOマスク41を堆積し、当該マスク内にアパーチャを形成し、そして上記基板上に、マスクのアパーチャ(すなわち、当初の基板表面が露出されている部分)内にのみAlInGa1−x−yN結晶が形成されるように、また、上記基板の平面に対して垂直な方向に沿ってAlInGa1−x−yN種42が成長されるように、AlInGa1−x−yNを堆積する方法がある。図8aは、AlInGa1−x−yN種42が形成された後における基板を示している。
【0075】
AlInGa1−x−yN種42が形成されると、基板38の平面内に位置する方向(すなわち、図8aにおいて矢印43によって示されている方向)に沿って「ラテラル」成長が生じるエピタキシャル堆積条件を用いて、AlInGa1−x−yN「ウィング」44を成長させる。ウィング44の成長は、図8bに示されているように、隣り合う種42から成長するウィング同士が、合体境界(coalescence boundary)45において互いに合体するまで継続する。図8aおよび図8bに示されているようなラテラル・オーバーグロース方法は、基板表面における結晶欠陥(例えば転位)の密度を低減するための方法として慣習的に用いられている。しかし本発明では、ラテラル・オーバーグロース方法は、異なる所定の領域内においてそれぞれ異なるASLPを有する表面を設けるための手段として用いられる。図8bに示されている構造の最上面46は、種42を含んだ領域(これらの領域は、図8bにおいて符号47で示されている)と、ウィング44を含んだ表面46の領域(これらの領域は、図8bにおいて符号48で示されている)との、2つの異なるタイプの領域から成る。種42は、表面の領域47内のASLPが、当初のGaN層39のASLPと実質的に同じとなるように、基板のGaN層39に実質的に歪まされる。これらのウィングは、その成長方向に沿って(すなわち、図8aの符号43で示されている矢印に沿って平行に)弾性的に緩和されるため、表面の領域48内のASLPは、AlInGa1−x−yNウィング44の組成に依存している。ウィング材料の組成は、ウィング材料の弾性的に緩和された格子定数が、種42内の等価格子定数とは異なるように選択される。このように、ASLPの値がそれぞれ異なる所定の複数の領域を含む表面46が準備される。ASLPがそれぞれ異なる複数の領域の表面上における分布は、種42が形成される位置を制御することによって制御される。
【0076】
上述の実施形態では、InGaNアイランドの自己組織化成長によって形成された量子ドットを含んだ能動領域が用いられた。しかし、InGaNの代わりに、SKモードでのAlGa1−xN(0≦x≦1)の堆積を用いてもよい。
【0077】
上述の実施形態では、自己組織化InGaNアイランドの単一層が用いられた。本実施形態に変化を加えた実施形態では、キャップ層18の成長後に、自己組織化アイランドの第2の層が形成されるように、InGaNの第2の堆積を行うことができる。この第2の層自体はキャップ可能であり、所望する任意数のInGaN量子ドットの層を含んだスタックを形成するためのプロセスが繰り返し行われる。キャップ層18の成長後に、キャップ層18のASLPが、AlGaN層16のASLPと同様に異なっている場合、後のSK層は、個々の領域間における自己組織化アイランド特性において同様の差を示すことができる。上記追加的な層に対してこれ以上の処理を行う必要はなく、ASLPの異なりは、層16からキャップ層18まで「持続」する。上記連続層は、層間のエピタキシャル堆積装置からのサンプルを除去することなく、次々と素早く成長させることができる。
【0078】
InGaNの堆積条件は、このスタック内における全ての層に対して同一であってよく、あるいは同一でなくてもよい。量子ドットの層を2つ以上設けることによって、得られるチップから出力される光の光度が増す。
【0079】
図9aは、量子ドットの2つの層を組み込んだデバイスの概略断面図である。当該デバイスは、基板12上に配置された、例えばAl、Ga、N層16などの半導体層を有している。層16は、ASLPの第1の値を有する少なくとも第1の領域と、ASLPの第2の異なる値を有する少なくとも1つの第2の領域とが設けられるように、処理される。図9aの実施形態では、層16は、ASLPがそれぞれ第1、第2、および第3の値である、第1、第2、および第3の領域を有しており、上記第1、第2、および第3のASLP値は、互いに異なっている。
【0080】
層16上に、ぬれ層17および自己組織化アイランド49が形成されている厚さに、SKモードで1層が成長する。SKモードで成長された当該層は、層16よりもバンドギャップが低い、例えばInGaN層などの(Al、In、Ga)N層であってよい。層16のASLP値は、3つの領域間において異なっているため、第1の領域A内の自己組織化アイランド49aは、パラメータの第1の平均値を有し、第2の領域B内の自己組織化アイランド49bは、パラメータの第2の平均値を有し、第3の領域C内の自己組織化アイランド49cは、パラメータの第3の平均値を有することになる。これら第1、第2、および第3の平均値は、互いに異なっている。上記パラメータは、自己組織化アイランドの高さなど、上述したパラメータのうち任意のパラメータであってよい。
【0081】
ぬれ層17および自己組織化アイランド49上には、キャップ層18が設けられる。上述したように、キャップ層18を設けることによって、自己組織化アイランド49、49a、49b、49cが量子ドットを形成する。ぬれ層17、自己組織化アイランド49a、49b、49c、およびキャップ層18の組み合わせは、第1の活性層53として機能する。
【0082】
次に、キャップ層18の表面上部に、第2の層内にぬれ層17’および自己組織化アイランド49’が形成される厚さに、第2の層がSKモードで成長する。キャップ層18のASLPが、層16のASLPと同様に異なっている場合、第2のSK層の領域D’(第1のぬれ層の領域Aの上)内に形成される自己組織化アイランド49a’、第2のSK層の領域E(第1のぬれ層17の領域Bの上)内に形成される自己組織化アイランド49b'、および第2のSK層の領域F(第1のぬれ層17の領域Cの上)内に形成される自己組織化アイランド49c'は、互いに異なることになる。すなわち、これらアイランドは、異なる値のパラメータ(上述したパラメータのうちの任意のパラメータ)を有することになる。
【0083】
第2のぬれ層17'および自己組織化アイランド49’上には、第2のキャップ層18'が配置される。この結果、第2のぬれ層17'上に形成された自己組織化アイランド49a'、49b'、および49c'が、量子ドットを形成する。また、第2のぬれ層17の3つの領域内の自己組織化アイランド49a'、49b'、および49c'は互いに異なるため、得られる量子ドットの特性は互いに異なることになる。つまり、第2のぬれ層17'の領域D内の自己組織化アイランドから形成される第4の量子ドットは、第2のぬれ層17'の領域E内の自己組織化アイランド49b'から形成される第5の量子ドットとは異なる特性を有することになる(さらに、第2のぬれ層17'の領域F内の自己組織化アイランド49c'から形成される第6の量子ドットは、さらに異なる特性を有する)。
【0084】
第2のキャップ層18'、自己組織化アイランド49a’、49b’、49c’、および第2のぬれ層17'は、共に第2の能動領域を構成する。図9bは、図9aに対応する概略断面図であるが、下方のぬれ層17および下方のキャップ層18とは分離された第2のぬれ層17'および第2のキャップ層18'を示している。これによって、デバイスの様々な部品のラベリングが明りょうになる。
【0085】
第2のキャップ層18'のASLPが、領域D、E、およびF間において異なる場合は、図9aの第2のキャップ層18'上に、SKモードで成長する別の層および別のキャップ層を配置して、互いに特性の異なる量子ドットを含んだ別の能動領域を得ることができる。また、必要に応じて、SKモードで成長するさらに別の層、およびキャップ層を設けることができる。
【0086】
第2の能動領域54は、第1の能動領域53と一般的に同様の特性を有していることが好ましい。発光デバイスの場合、各能動領域53および54は、一実施例では、2つの能動領域が2つ設けられていることによってデバイスから出力される光の光度が(能動領域を1つしか有していないデバイスよりも)高くなるように、量子ドットが赤色スペクトル領域内においてピーク発光波長を有した領域と、量子ドットが緑色スペクトル領域内においてピーク発光波長を有した領域と、量子ドットが青色スペクトル領域内においてピーク発光波長を有した領域とを含んでいることが好ましい。
【0087】
なお、図9aおよび図9bに示されている自己組織化アイランドのサイズ、およびぬれ層の厚さは、単に、異なる領域A、B、C;D、E、F内のぬれ層および自己組織化アイランド49a、49b、49c;49a’、49b’、49c’が、互いに異なるサイズを有していることを示すために選択されたのであって、複数の異なる領域内における自己組織化アイランドの相対的なサイズ、またはぬれ層の相対的な厚さの縮尺を示すものではないことに留意されたい。実際は、(例えば)領域Aが領域BまたはCよりも大きい自己組織化アイランドを有している場合であれば、領域Dは領域EまたはFよりも大きい自己組織化アイランドを有している可能性が高い。これは、領域D、E、およびF内の自己組織化アイランドのサイズの差が、最終的には層16のASLPの差から生じているからである。
【0088】
図9aでは、分かりやすくするために、多数の層が省略されていることに留意されたい。例えば、本実施形態の実用的な態様では、一般的に、基板12と層16との間にバッファ層が含まれており、層16とぬれ層17との間にもバッファ層が含まれている。図9aはさらにASLPの異なる複数の領域に層16が設けられるメカニズムを示すものではない。これは例えば、上述したように、層16内にピットを設けることによって行うことができる。
【0089】
基板12は、図9aには詳細に示されていない。基板12は、図2aを参照しながら説明したような基板であってよい。
【0090】
必要に応じて、基板12の下方の表面上に、より大きいデバイスを配置することができる。これについては、図7を参照しながら以下に説明する。
【0091】
図9aのデバイスの表面上部に、(図2dの層19と同様の)p型層を設けて、LEDのpn接合を完成させることができる。
【0092】
上述の実施形態では、3つの異なる主波長を放射する複数の領域を有するLEDを準備するために、ASLPの異なる3つのタイプの領域が用いられた。この方法は、例えば、互いに異なるASLPを有していることによって各領域が区別される、2つの異なる主波長を放射する複数の領域、あるいは4つ以上の異なる主波長を放射する複数の領域など、所望する任意数のタイプの領域を用いるように拡大することができる。この結果、所望する任意数の主発光波長を有するLEDを形成することができる。所望する主発光波長は、上記の実施形態において列挙された波長帯内である必要はない。
【0093】
各PPDによってパターン形成される基板成長面の領域の割合は、所望の通りに変化をもたせることができる。例えば、領域25内に形成された量子ドット能動領域からのルミネセンス効率が、領域24内に形成された量子ドット能動領域からのルミネセンス効率よりも低い場合、低い方のルミネセンス効率を補償するために、領域25によって占有される基板の成長面の部分を大きくすることができる。
【0094】
上述の実施形態では、自己組織化InGaNアイランドの成長の直前に、AlGaNバッファ層20を成長させる。あるいは、スタック最上面におけるASLPが、AlGaN層16の表面におけるASLPと実質的に同じである場合は、AlGaNバッファ層20の代わりに、AlInGa1−x−yN層(ここで、0≦x≦1および0≦y≦1)の任意の組み合わせを含んだスタックを用いることができる。あるいは、いかなるバッファ層も成長させることなく、ぬれ層17および自己組織化InGaNアイランド49を、AlGaN層16上に直接成長させることができる。
【0095】
上述の実施形態では、p型GaN層とのコンタクトは、領域24、25、および26内のコンタクト層同士が全て絶縁されるように、エッチングを用いて分割される。絶縁されたこれらのコンタクトによって、能動領域全体に印加される電気的バイアスは、上記3つの領域間において異なっていてよい。あるいは、領域24、25、および26内のコンタクト層同士は、互いに絶縁される必要はない。この場合、デバイスの動作中に印加されるバイアスは、3つ全ての領域内の能動領域において同一である。
【0096】
上述した実施形態は、窒化物半導体材料から形成されたLEDの実施例のためのものである。しかし、当業者には明らかであるように、上記方法は、SKモードでの成長が可能な他の任意の半導体材料によって形成された自己組織化能動領域を有するLEDに適合および適用可能である。これら他の半導体とは、任意のIII−V族化合物(周期表の第3族の元素および周期表の第5族の元素を含んだ化合物)、例えばInGa1−xAs(0≦x≦1)、任意のII−VI族化合物(周期表の第2族の元素および周期表の第6族の元素を含んだ化合物)、およびSiGe1−x(0≦x≦1)などである。
【0097】
本発明の第2の実施形態に係る発光デバイスおよびその形成方法について、図5a〜図5bを参照しながら説明する。
【0098】
図5aまたは図5bの発光デバイスは、一般的に、第1の実施形態に係るデバイスと同一の方法を用いて形成される。しかし、基板上における複数の異なるPPDゾーンの分布は、基板が分割されて個々のチップとなった後、チップの2つ以上のゾーン内にPPDが少なくとも1つ存在するように選択される。図5aは、本実施形態に係るチップの平面図であり、3つの異なるPPDのゾーン24、25、および26が、チップ全体に伸びる行となっている例を示している。上記チップは、PPDがそれぞれ異なる2つ以上のゾーン24、25、および26を有している。図5aは、PPDがそれぞれ異なる3つのゾーン24、25、および26を含んだチップを示しているが、本発明はこれに限定されるものではない。図5bは、本実施形態に係る別のチップの平面図であり、3つの異なるPPDのゾーン24、25、および26が、長さおよび幅寸法の両方において広がりが制限されており、互いに二次元において相互分散(interdispersed)している別の例を示している。図5bのチップもまた、3つの異なるPPDの所望する任意の数のゾーン24、25、および26を含んでいてよい。チップ上に同一タイプのゾーンが分布していることによって、これらのゾーンがチップ全体に分布されていない場合に比べて、デバイスから放射される光が遠視野で見られる際に各タイプのゾーンから放射される光の混合が改善される。
【0099】
本実施形態では、発光デバイスの動作中に、能動領域全体における全てのタイプのゾーンに印加される電気的バイアスが同一となるように、チップ上の全てのゾーンに単一の電気コンタクトを形成することができる。あるいは、1タイプのゾーンが他のタイプのゾーンから独立して制御されるように、個々の電気的バイアスを印加して、複数の異なるゾーンとの電気コンタクト同士が互いに絶縁されるようにしてもよい。
【0100】
本発明の第3の実施形態に係る発光アレイおよびその形成方法は、第1の実施形態において説明したものと類似している。
【0101】
複数の異なるPPDゾーンの分布は、2つ以上のPPDのゾーンからなる繰り返し構造(repeat unit)が、二次元アレイである基板表面上に分布されるように選択される。第1の実施形態のエピタキシャル成長工程後、各ゾーンが、上記アレイ内のゾーンの行および列に従って電気的バイアスによって個々にアドレスされるように、アレイとの電気コンタクトが形成される。上記繰り返し構造内において各PPDで形成された各能動領域からの発光波長は、それぞれ異なっている。従って本実施形態は、2つ以上の発光波長を有する画素を含んだ、二次元発光マトリックスアレイを提供する。
【0102】
第3の実施形態では、二次元アレイが形成されるように、それぞれ異なるPPDゾーンが周期的に配置されるようにする必要がある。対照的に、第2の実施形態では、各タイプのPPDゾーンからの光混合を改善することが意図されているため、それぞれ異なるPPDゾーンが周期的に配置される必要はない。
【0103】
本発明の第4の実施形態に係るレーザダイオードおよびその形成方法について、図6a〜図6cを参照しながら説明する。
【0104】
第4の実施形態に係るレーザダイオードは、第1の実施形態に係るデバイスと多くの特徴を共有している。具体的には、基板の複数の異なる領域内における特性がそれぞれ異なるように、自己組織化アイランド成長によって量子ドットを形成する方法は、第1の実施形態に関連して説明した方法と同一である。第4の実施形態と第1の実施形態とで共有するこれらの特徴については、詳しい説明は省略する。
【0105】
第1の実施形態に関連して説明した方法によると、それぞれ異なる特性を有する量子ドットの集合が、基板の複数の異なる所定の領域内に形成され、発光ダイオードの能動領域として用いられた。第4の実施形態では、これらの量子ドットの集合は、2つ以上の発光波長を有する量子ドットレーザダイオードが単一基板上に形成されるように、レーザダイオードの能動領域内において用いられる。
【0106】
第4の実施形態に係るデバイスのためのヘテロ構造のエピタキシャル成長は、PPDのそれぞれ異なる領域の基板上における好ましい分布を除いては、第1の実施形態と同一であってよい。図6aは、第4の実施形態における、基板30上における2つのPPD31および32の分布の平面図である。図2dに示し、第1の実施形態に関連して既に説明したヘテロ構造層の成長後、基板が処理され、リッジ導波型レーザ構造(ridge-waveguide laser structure)または利得ガイド型レーザ構造(gain-guided laser structure)などの従来技術において周知の構造を用いてレーザダイオードデバイスが形成される。
【0107】
第1のPPD31のみまたは第2のPPD32のみを含んだ基板の領域上に、個々のレーザデバイスのレーザ空洞が設けられる。例えば、リッジ導波型レーザ構造の場合、レーザ空洞はリッジ導波型の位置によって規定され、レーザ構造のリッジ導波型が形成された領域内のみに電流が注入される。図6bは、レーザ空洞50および51を形成するためのプロセス後に基板から切断されたチップを概略的に示している。例えばリッジ導波型レーザの場合、レーザ空洞50および51は、基板上に対応するリッジを形成することによって規定される。レーザ空洞50は、第1のPPD31でパターン形成された基板の領域内に設けられる。レーザ空洞51は、第2のPPD32でパターン形成された基板の領域内に設けられる。レーザ空洞の末端は、反射ミラー34によって規定される。異なるPPD31および32を用いた結果、および第1の実施形態に関連して詳述した理由によって、チップの能動領域の第1の部分内の量子ドット(レーザ空洞50に対応する)は、チップの能動領域の第2の部分内の量子ドット(レーザ空洞51に対応する)とは異なる特性を有している。量子ドットレーザの発光波長は、レーザ空洞の能動領域内における量子ドットの特性(例えばサイズ、形状、および組成)に依存しているため、第1のレーザ空洞50の能動領域は、第2のレーザ空洞51の能動領域のレーザ波長とは異なる波長を有している。このレーザ波長の差は、図6bにおいて、λおよびλと印された矢印によって示されている。これらの矢印は、レーザ中に放射される光の方向を示しており、λおよびλは、2つのデバイスのレーザ波長(λ≠λ)である。従って、図6bに示されている個々のチップ33は、単一基板上にモノリシックに形成された、レーザ発光波長の異なる2つの隣り合うデバイスを有している。
【0108】
上述の第4の実施形態は、基板上における異なるPPDを適切に選択および分布させることによって形成される、2つの異なるレーザ波長を有するデバイスに限定して記載されている。しかし、基板から切断されたシングルチップ上には、発光波長の異なる所望する任意数のレーザダイオードを共に配置することができる。例えば、図6bのチップが、第1および第2のPPDとは異なる第3のPPDを有する領域をさらに有している場合、当該第3のPPDの領域は、チップの能動領域の第3の部分を形成する。
【0109】
図2a〜図2dは、本発明のデバイスのために考え得る層構造の1つである。しかし本発明は、この層構造に限定されるものではなく、例えば能動領域付近における光の閉じ込めを改善するため、および、得られるデバイスのレーザ特徴を改善するために、図2dに示されているヘテロ構造に別のヘテロ構造層を追加することができる。例えば、従来技術では、導光層およびクラッド層を備えることは、デバイス内においてレーザ照射を生じさせるために必要な最小注入電流を低減するための一手段として周知であり、本発明がレーザダイオードに適用される際においても、ヘテロ構造内に上記の追加的な層を備えることが好ましい。
【0110】
各レーザ空洞内におけるPPDのタイプがわずか1つである上述のレーザ構造に加えて、上記第4の実施形態は、各レーザ空洞が2つ以上の異なるPPDの領域を含むようにPPDおよびレーザ空洞位置を選択するように、さらに拡大することができる。1つのレーザ空洞内に2つ以上のタイプの能動領域が存在することによって、1つの空洞から2つ以上のレーザ波長を同時に放射させることができる。これは例えば、それぞれ異なる値のPPD31および32を有する複数の領域とレーザ空洞52とが(例えば垂直に)交差している、図6cに概略的に示されているチップ内において、1つのレーザ空洞からの2つの波長において誘導放射(stimulated emission)が生じるように、レーザ空洞52の一部を、PPD31を有する領域上に配置し、レーザ空洞52の一部を、PPD32を有する領域上に配置することによって行うことができる。この2つの波長におけるレーザ放射は、図6cにおいて、「λ、λ」と印された矢印によって示されている。この矢印は、デバイスから放射される光の方向を示しており、λおよびλは2つのレーザ波長である。
【0111】
本発明の第5の実施形態に係る発光デバイスおよびその形成方法について、図7を参照しながら説明する。
【0112】
第5の実施形態に係る発光デバイスは、第1の実施形態と多くの特徴を共有している。具体的には、具体的には、基板の複数の異なる領域内における特性がそれぞれ異なるように、自己組織化アイランド成長によって量子ドットを形成する方法は、第1の実施形態に関連して説明した方法と同一である。第5の実施形態と第1の実施形態とで共通するこれらの特徴の詳しい説明は省略する。
【0113】
第1の実施形態のデバイスでは、p型層とn型層との間に電気的バイアスが印加された時に、量子ドットのいずれかの側にあるp型層19およびn型層15から量子ドット内にキャリアが注入されている。一方、第5の実施形態では、キャリアは、光子の吸収を介して量子ドット内に導入される。
【0114】
図7は、デバイスのヘテロ構造部分の概略断面図である。第1の実施形態において説明した、弾性的に歪まされた層16の成長前に、基板12上に発光ダイオードヘテロ構造が堆積される。当該発光ダイオードヘテロ構造は、本実施形態では、少なくともn型III族窒化物層35、III族窒化物能動領域36、およびp型III族窒化物層37から成る。III族窒化物能動領域36は、例えば、少なくとも1つのInGa1−xN(0<x≦1)層を含んでいる。
【0115】
弾性的に歪ませた表面層16上における自己組織化アイランド形成は、第1の実施形態において説明した最終的なIII族の窒化物層(p型層19)の成長が省略される点を除いて、第1の実施形態に関連して説明した方法と同一の方法を用いて行われる。図7には、自己組織化アイランド成長に関連する、第1および第5の実施形態に共通する層、すなわち、任意のバッファ層20、ぬれ層17、自己組織化アイランド49、およびキャップ層18が示されている。第1の実施形態に関連して既に詳しく説明したように、自己組織化アイランド49は量子ドットを構成する。
【0116】
基板の選択された領域内において、発光ヘテロ構造のn型層35に、電気コンタクトが形成される。これらの電気コンタクトは、(例えば誘導結合プラズマエッチングを用いて)成長面からエッチングを行ってn型層35を露出し、そしてチタン層およびアルミニウム層を、この順番で、上記領域内に蒸着させることによって形成される。基板の選択された別の領域内において、p型層37発光ダイオードヘテロ構造に、電気コンタクトが形成される。これらの電気コンタクトは、成長面からエッチングを行ってp型層37を露出し、ニッケル層および金層を、この順番で、上記領域内に蒸着させることによって形成される。
【0117】
上記発光ダイオードは、アイランド49によって形成された量子ドットを照射するために配置される。n型層35とp型層37との間に順方向電気的バイアスが印加されると、発光ダイオードの能動領域36から光子が放出される。これらの光子は、ぬれ層17および量子ドットを通過するため、その一部または全部が吸収され、これによって電子およびホールが量子ドット内に導入される。光子は、量子ドット内に電子およびホールが生成され、この電子およびホールが量子ドット内において最低の非占有エネルギー状態に緩和するように、量子ドット吸収させることができる。あるいは、光子は、ぬれ層内に電子およびホールが生成され、この電子およびホールが量子ドット内に拡散され、そして量子ドット内において最低の非占有エネルギー状態に緩和するように、ぬれ層17内に吸収させることができる。電子およびホールは、量子ドット内において最低の非占有エネルギー状態に緩和された後、互いに再結合し、光子が放出される。量子ドットから放出される光子のエネルギーは、発光ダイオードの能動領域36から放出される光子のエネルギーよりも小さい。量子ドットから放出される光子のエネルギーは、量子ドットのサイズ、形状、および組成などの特性に依存している。従って、量子ドットのこれらの特性は、基板の複数の異なる領域に用いられるPPDに依存しているため、デバイスの各領域からの全体的な発光スペクトルは、その領域におけるPPDの選択に依存している。
【0118】
成長基板の表面全体に複数の異なるPPDを分布させることによって、各領域からのピーク波長および発光スペクトルを様々に異ならせることができる。従って、基板表面全体におけるPPDの分布を適切に選択することによって、基板が個々のチップに分割されたときに、各チップは、それぞれ異なる全体的な発光スペクトルを有する領域を少なくとも2つ含んでいる。
【0119】
図7では、能動領域36は、基板12と量子ドットとの間に配置されている。しかし能動領域は、基本的には、量子ドットとは反対側の基板12面上に配置することができる。
【0120】
図7の実施形態のPPDは、例えば、図4a〜図4c、図5a〜図5b、および図6a〜図6bを参照しながら説明した方法のいずれかによって配置することができる。
【0121】
本発明について、発光デバイスを具体的に参照しながら説明してきた。しかし本発明は、発光デバイスに限定されるものではなく、基本的には、量子ドットを用い、1つの層内にそれぞれ異なる特性を有する量子ドットが設けられることが所望される任意のデバイスに適用することができる。
【0122】
例えば本発明は、フォトダイオードなどの感光半導体デバイスにも適用することができる。本発明は、1つ以上の領域上の量子ドットが、1つ以上の他の領域上の量子ドットとは異なる光吸収特性を有している、感光半導体デバイスを提供することができる。
【0123】
別の例として、本発明は、量子ドット内にキャリアが蓄積される半導体メモリデバイスに適用することができる。本発明は、1つ以上の領域上の量子ドットが、1つ以上の他の領域上における量子ドットとは異なるキャリア蓄積特性を有している、半導体メモリデバイスを提供する。
【0124】
本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照しながら例として説明する。添付図面は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1a】基板上の異なる所定の領域において異なる特性を有する量子ドットの形成工程を示す断面図である。
【図1b】基板上の異なる所定の領域において異なる特性を有する量子ドットの形成工程を示す断面図である。
【図1c】基板上の異なる所定の領域において異なる特性を有する量子ドットの形成工程を示す断面図である。
【図2a】本発明の第1の実施形態に係る量子ドット発光デバイスの形成工程を示す断面図である。
【図2b】本発明の第1の実施形態に係る量子ドット発光デバイスの形成工程を示す断面図である。
【図2c】本発明の第1の実施形態に係る量子ドット発光デバイスの形成工程を示す断面図である。
【図2d】本発明の第1の実施形態に係る量子ドット発光デバイスの形成工程を示す断面図である。
【図3a】弾性的に歪ませた表面層の表面内にエッチングされた、歪取りピットの概略断面図である。
【図3b】弾性的に歪ませた表面層の表面内にエッチングされた、歪取りピットの概略断面図である。
【図3c】弾性的に歪ませた表面層の表面にエッチングされた、歪取りピットの概略断面図である。
【図3d】弾性的に歪ませた表面層の表面内にエッチングされた、歪取りピットの概略平面図である。
【図3e】弾性的に歪ませた表面層の表面内にエッチングされた、歪取りピットの概略平面図である。
【図3f】弾性的に歪ませた表面層の表面内にエッチングされた、歪取りピットの概略平面図である。
【図3g】弾性的に歪ませた表面層の表面内にエッチングされた、歪取りピットの概略平面図である。
【図4a】本発明の一実施形態に係る基板の平面図である。
【図4b】コンタクト堆積後における、図4aの基板の平面図である。
【図4c】図4aまたは図4bに示されている基板から切り取られた個別チップの平面図である。
【図5a】本発明の別の形態に係る個別チップの平面図である。
【図5b】本発明の別の形態に係る個別チップの平面図である。
【図6a】本発明の別の形態に係る基板の平面図である。
【図6b】図6aに示されている基板から切り取られた個別チップの平面図である。
【図6c】図6aに示されている基板から切り取られた個別チップの平面図である。
【図7】図7は、本発明の別の形態に係る発光デバイスの断面図である。
【図8a】ラテラルオーバーグロース技術を用いて、異なる平均表面格子定数を有する所定の領域を有する表面を準備する方法の段階を示す断面図である。
【図8b】ラテラルオーバーグロース技術を用いて、異なる平均表面格子定数を有する所定の領域を有する表面を準備する方法の段階を示す断面図である。
【図9a】本発明の別の形態に係るデバイスの概略断面図である。
【図9b】図9aの実施形態の概略分解断面図である。
【符号の説明】
【0126】
1 半導体表面
2 第1の領域
3 第2の領域
6 自己組織化アイランド
7 自己組織化アイランド
8 キャップ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体表面を処理して、平均表面格子定数の第1の値を有する当該半導体表面の少なくとも1つの第1の領域と、上記第1の値とは異なる、平均表面格子定数の第2の値を有する上記半導体表面の少なくとも1つの第2の領域とを得る工程と、
上記少なくとも1つの第1の領域上および上記少なくとも1つの第2の領域上の両方に自己組織化アイランドが形成される厚さまで、上記半導体表面上に第2の半導体層を堆積する工程であって、上記第1の領域上の上記自己組織化アイランドは、パラメータの第1の平均値を有するように形成され、上記第2の領域上の上記自己組織化アイランドは、上記第1の値とは異なる、パラメータの第2の平均値を有するように形成される工程と、
上記第2の半導体層上にキャップ層を堆積することによって、上記自己組織化アイランドが量子ドットを形成する工程であって、上記第1の領域上の当該量子ドットは、上記第2の領域上の当該量子ドットとは異なる特性を有するように形成される工程とを含んでいる、半導体デバイスの製造方法。
【請求項2】
上記半導体デバイスは半導体発光デバイスであり、上記第1の領域上の上記量子ドットは、上記第2の領域上の上記量子ドットとは異なる光学特性を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記半導体デバイスは感光半導体デバイスであり、上記第1の領域上の上記量子ドットは、上記第2の領域上の上記量子ドットとは異なる光吸収特性を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記半導体デバイスは、キャリアが量子ドット内に蓄積されるメモリデバイスであり、上記第1の領域上の上記量子ドットは、上記第2の領域上の上記量子ドットとは異なるキャリア蓄積特性を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記半導体表面は、上記第1の値および上記第2の値とは異なる、平均表面格子定数の第3の値を有する少なくとも1つの第3の領域をさらに含んでおり、これによって、当該第3の領域上の量子ドットは、上記第1の領域上の上記量子ドットおよび上記第2の領域上の上記量子ドットとは異なる特性を有している、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
上記第1の領域上の上記量子ドットは、上記第2の領域上の上記量子ドットとは異なる光学特性を有しており、上記第3の領域上の量子ドットは、上記第1の領域上の上記量子ドットおよび上記第2の領域上の上記量子ドットとは異なる光学特性を有している、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
上記パラメータは、上記半導体表面の平面に対して垂直な方向における、上記自己組織化アイランドの平均高さである、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
上記パラメータは、上記半導体表面の平面に平行な方向における、上記自己組織化アイランドの平均幅である、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
上記パラメータは、上記自己組織化アイランドの平均形状である、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
上記パラメータは、上記自己組織化アイランドの平均組成である、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
上記半導体表面は、第1の半導体層の表面であり、
平均表面格子定数の上記第1の値を有する上記第1の領域を形成するために、上記第1の半導体層を処理する工程を含んでいる、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
平均表面格子定数の上記第2の値を有する上記第2の領域を形成するために、上記第1の半導体層を処理する工程を含んでいる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
上記第1の半導体層は、歪んだ半導体層である、請求項11または請求項12に記載の方法。
【請求項14】
上記第1の半導体層を処理する上記工程は、上記第1の半導体層の上記第1の領域内に、1つ以上の歪取り構造を形成する工程を含んでいる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
上記第1の半導体層を処理する上記工程は、上記半導体層の上記第2の領域内に1つ以上の歪取り構造を形成する工程を含んでいる、請求項13または請求項14に記載の方法。
【請求項16】
上記第1の半導体層を処理する上記工程は、上記第1の半導体層内に1つ以上の歪取りピットを形成する工程を含んでいる、請求項14または請求項15に記載の方法。
【請求項17】
上記第1の半導体層を処理する上記工程は、上記第1の半導体層の上記第1の領域内に、第1の深さを有する1つ以上のピットを形成する工程と、上記第1の半導体層の上記第2の領域内に、上記第1の深さとは異なる第2の深さを有する1つ以上のピットを形成する工程とを含んでいる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
上記第1の半導体層を処理する上記工程は、
上記第1の半導体層の上記第1の領域内に、上記第1の半導体層の上記平面上に突出する、第1の形状を有する1つ以上のピットを形成する工程と、
上記第1の半導体層の上記第2の領域内に、上記第1の半導体層の上記平面上に突出する、上記第1の形状とは異なる第2の形状を有する1つ以上のピットを形成する工程とを含んでいる、請求項16または請求項17に記載の方法。
【請求項19】
上記第1の半導体層を処理する上記工程は、
上記第1の半導体層の上記第1の領域内に、第1の側壁設計を有する1つ以上のピットを形成する工程と、
上記第1の半導体層の上記第2の領域内に、上記第1の側壁設計とは異なる第2の側壁設計を有する1つ以上のピットを形成する工程とを含んでいる、請求項16、請求項17、または請求項18に記載の方法。
【請求項20】
上記第1の半導体層を処理する上記工程は、
上記第1の半導体層の上記第1の領域内に、第1の分布パターンを有する1つ以上のピットを形成する工程と、
上記第1の半導体層の上記第2の領域内に、上記第1の分布パターンとは異なる第2の分布パターンを有する1つ以上のピットを形成する工程とを含んでいる、請求項16、請求項17、または請求項18に記載の方法。
【請求項21】
上記第2の半導体層の堆積前に、上記半導体表面上にバッファ層を堆積するさらなる工程を含んでいる、請求項1から請求項20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
自己組織化アイランドが形成される厚さまで、上記キャップ層上に別の半導体を堆積するさらなる工程と、
上記別の半導体層上に別のキャップ層を堆積することによって、第2の複数の量子ドットを形成する工程とを更に含んでいる、請求項1から請求項21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
請求項1から請求項22のいずれか1項に記載の方法によって製造された半導体デバイスであって、
第1の能動領域を有しており、
上記第1の能動領域の第1の部分は、複数の第1の量子ドットを含んでおり、
上記第1の能動領域の第2の部分は、複数の第2の量子ドットを含んでおり、
上記第1の量子ドットは、上記第2の量子ドットとは異なる特性を有している、半導体デバイス。
【請求項24】
上記デバイスは、発光デバイスであり、
上記第1の量子ドットは、上記第2の量子ドットとは異なる光学特性を有している、請求項23に記載のデバイス。
【請求項25】
上記第1の能動領域の第3の部分は、複数の第3の量子ドットを含んでおり、
上記第3の量子ドットは、上記第1の量子ドットおよび上記第2の量子ドットとは異なる特性を有している、請求項23または請求項24に記載のデバイス。
【請求項26】
上記第1の量子ドットは、上記第2の量子ドットとは異なる光学特性を有しており、
上記第3の量子ドットは、上記第1の量子ドットおよび上記第2の量子ドットとは異なる光学特性を有している、請求項25に記載のデバイス。
【請求項27】
上記第1の量子ドットは、スペクトルの青色領域内においてピーク発光波長を有しており、
上記第2の量子ドットは、スペクトルの緑色領域内においてピーク発光波長を有しており、
上記第3の量子ドットは、スペクトルの赤色領域内においてピーク発光波長を有している、請求項26に記載のデバイス。
【請求項28】
上記第1の能動領域上に配置された第2の能動領域を含んでおり、
上記第2の能動領域は、量子ドットを含んでいる、請求項23から請求項27のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項29】
上記第2の能動領域の第1の部分は、複数の第4の量子ドットを含んでおり、
上記第2の能動領域の第2の部分は、複数の第5の量子ドットを含んでおり、
上記第4の量子ドットは、上記第5の量子ドットとは異なる特性を有している、請求項28に記載のデバイス。
【請求項30】
発光のための能動領域をさらに含んでおり、
上記発光のための能動領域は、使用時に、上記第1の能動領域を放射するように構成されている、請求項23から請求項29のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項31】
上記半導体表面は、(Al、In、Ga)N表面である、請求項23から請求項29のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項32】
上記第2の半導体層は、(Al、In、Ga)N層である、請求項23から請求項30のいずれか1項に記載のデバイス。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図3e】
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【図3f】
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【図3g】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9a】
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【図9b】
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【公開番号】特開2009−55016(P2009−55016A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−193464(P2008−193464)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】