説明

半導体デバイス加工用粘着テープ

【課題】半導体デバイスの加工において、新たな設備改良、消耗品の導入を行うことなく、半導体デバイスへの切削屑の付着を防いでダイシング可能な粘着テープを提供する。
【解決手段】一括封止されたパッケージをダイシングして、個片化し、個々のパッケージに分割する際に、一括封止されたパッケージを固定するために用いられる粘着テープ1であって、基材フィルム3上に紫外線硬化型粘着剤層5を有しており、紫外線照射前の粘着剤層5表面は、純水に対する接触角が115°以下であり、且つ、ヨウ化メチレンに対する接触角が65°以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス加工用粘着テープに関する。さらに言えば、金属フレーム上に硬化樹脂層が形成され、一括封止されてなる半導体デバイスを、一つ一つに個片化し、分割するに際し、半導体デバイスを支持・固定するのに使用する固定用の粘着テープに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造において、回路パターンの形成された半導体ウエハを、粘着テープに貼着、固定した状態でチップ状にダイシングし、洗浄、乾燥後、ピックアップ工程を経て、半導体チップを得、半導体チップは、マウント工程、ボンディング工程等の後、硬化樹脂による封止によりパッケージ化される。
【0003】
従来、硬化樹脂による封止に際しては、個々の半導体チップを個別に封止する方法が用いられてきたが、近年、一枚の基板上にボンディングされた複数の半導体チップを硬化樹脂で一括封止したものを更にダイシングして個片化することにより、個々の半導体デバイスを得る方式が盛んに行われている。
【0004】
一方、携帯電話、携帯型コンピュータ、その他の小型電子機器の普及に伴って、これらに搭載する半導体装置の小型化・薄型化の要求が高まり、BGA(Ball Grid Array)やCSP(Chip Size Pakage)パッケージと並んで、リードフレームを用いた小型パッケージとして、SON(Small Outline Non−lead)やQFN(Quad Flat Non−leaded)パッケージが実用化されている。
【0005】
このような、QFNパッケージ等の組み立てにおいても、封止金型の1つのキャビティで、リードフレーム等に搭載、配列された複数の半導体チップを一括して封止し、その後、一括封止部をリードフレームとともにダイシング用のブレードによって切断分離して個片化する、一括封止による組み立て方式が採用されている。
【0006】
この組立方式では、通常(1)紫外線硬化型の粘着剤を用いたダイシングテープを介して一括封止されたパッケージをリングフレームへ固定、(2)ブレードダイシング、(3)紫外線照射、(4)ピックアップ工程を経て個片化されたパッケージが得られるが、ダイシング工程時に銅等の金属製のリードフレームがブレードにより切断されるため、切削屑として発生する金属粉の除去が課題となっている。
【0007】
ダイシング時は、切削箇所に水を供給してブレードの冷却や切削屑の除去等を行うが、水を使用して切削屑の除去を行っても、全ての切削屑を取り除くのは難しく、除去できなかった切削屑が半導体デバイスやダイシングテープの粘着剤表面に付着してしまう。半導体デバイス上に付着した切削屑は、半導体デバイス性能を低下させたり、テスト工程においてテスターのピンを汚染したりするという問題がある。また、ダイシングテープ上に付着した切削屑は、紫外線硬化によって粘着剤が軽剥離化された際に粉塵として舞い上がり、半導体デバイスや装置を汚染するという問題がある。
【0008】
この問題に対し、特許文献1では、特定の構造を持ったポリマーを添加した切削水用添加剤を用いることで、ダイシング時の切削屑の付着防止を図っている。
しかしながら、特許文献1記載の方法では、相応な装置改造が必要となり、また、従来は純水のみを使用していたところに、消耗品として切削水用添加剤が必要となることから、製造コストが上がるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−13301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明が解決しようとする課題は、新たな設備改良、消耗品の導入を行うことなく、一括封止されたパッケージをダイシングする際に、切削屑の付着を防止できる半導体デバイス加工用粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、粘着剤層の紫外線照射前における純水およびヨウ化メチレンに対する接触角が特定の範囲の値である粘着テープを用いることにより、半導体デバイスへの切削屑の付着を防止できることを見出した。本発明はこの知見に基づきなされたものである。
すなわち本発明は、
(1)基材フィルムの少なくとも片面に紫外線硬化型粘着剤層が積層されてなる半導体デバイス加工用粘着テープであって、紫外線照射前の前記粘着剤層表面は、純水に対する接触角が115°以下であり、且つ、ヨウ化メチレンに対する接触角が65°以下であることを特徴とする半導体デバイス加工用粘着テープ、
(2)紫外線照射前の前記粘着剤層は、プローブタック試験のピーク値が300〜400kPaであることを特徴とする請求項1記載の半導体デバイス加工用粘着テープ、
(3)前記基材フィルムは、二層以上の複層構造であり、前記粘着剤層と接する第1の基材フィルム層の融点が、前記第1の基材フィルム層の前記粘着層側と反対面に接する第2の基材フィルム層の融点より低いことを特徴とする請求項1または請求項2記載の半導体デバイス加工用粘着テープ、
(4)前記基材フィルムは、低密度ポリエチレン/ポリプロピレンランダムコポリマー/低密度ポリエチレンからなる三層構造であることを特徴とする請求項3記載の半導体デバイス加工用粘着テープ、
である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、新たな設備改良、消耗品の導入を行うことなく、一括封止されたQFN等を個々に分割する際のダイシングにおいて、半導体デバイスへの切削屑の付着を防止することができる半導体デバイス加工用粘着テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る半導体デバイス加工用粘着テープを説明する概略断面図。
【図2】(a)〜(e)一括封止パッケージの個片化を説明する概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施態様を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の半導体デバイス加工用粘着テープの一例を示す断面図である。
【0015】
本発明の粘着テープ1は、基材フィルム3と、その片面上に設けられた紫外線硬化型粘着剤層である粘着剤層5からなる。粘着テープ1は、一括封止された半導体デバイスを個片化する際に、封止樹脂層に対して貼着され、ダイシング時の半導体デバイスの支持固定に用いられるものである。
【0016】
粘着剤層5は、紫外線照射前の粘着剤層5表面の純水に対する接触角が、115°以下であり、且つ、ヨウ化メチレンに対する接触角が65°以下である。本発明において、粘着剤層5表面の純水(またはヨウ化メチレン)に対する接触角とは、粘着剤層5表面と純水(またはヨウ化メチレン)との接触直後の接触角を意味する。この接触角は、温度23℃、湿度50%で測定した値である。測定は市販の接触角測定装置を用いて行うことができる。
【0017】
粘着剤層5の紫外線照射前の粘着剤層5表面の純水に対する接触角は、115°以下であるが、好ましくは80〜110°であり、より好ましくは95〜105°である。粘着剤層5表面の紫外線照射前における純水に対する接触角を115°以下とし、粘着剤層5の親水性を高めることで、ダイシングの際にダイシングブレードにかき混ぜられることで形成される切削屑である金属と粘着剤の混合物、即ち金属粉と、切削水ならびに洗浄水の親和性が高まり、水によって洗い流されやすくなり、ダイシング時においては金属粉が半導体デバイス表面に付着することが防がれ、洗浄時には半導体デバイス表面に付着した金属粉を除去しやすくなる。
【0018】
粘着剤層5表面の紫外線照射前におけるヨウ化メチレンに対する接触角は、65°以下であるが、好ましくは30〜60°であり、より好ましくは45〜55°である。粘着剤層5の紫外線照射前におけるヨウ化メチレンに対する接触角を65°以下とすることで、粘着剤層5の金属密着性が低下し、ダイシングの際にダイシングブレードにかき混ぜられることで形成される切削屑である金属と粘着剤との混合物の発生を抑制することができる他、半導体デバイス表面に付着した粘着剤に、ダイシング工程によって粉砕された金属が付着するのを防ぐことができる。
【0019】
粘着剤層5は、紫外線照射前におけるプローブタックのピーク値が300〜400kPaであることが好ましい。紫外線照射前におけるプローブタックのピーク値を300〜400kPaとすることで、ダイシング中に半導体デバイスが飛散することを抑制でき、且つ、半導体デバイスが貼着されていない粘着テープ1の粘着剤露出部への切削屑の付着を抑制することができる。プローブタックのピーク値が300kPa以下の場合はダイシング工程中に個片化された半導体デバイスを保持できずにチップ飛びを起こしてしまう恐れがあり、400kPa以上の場合は半導体デバイスが貼着されていない粘着テープ1の粘着剤露出部への切削屑の付着が増加してしまう恐れがある。
【0020】
粘着剤層5はダイシング中に半導体デバイスの飛散を抑制するのに十分な粘着性を有するものであればよく、粘着剤層5の紫外線照射前における粘着力は0.05〜1.0N/mmであることが好ましい。粘着力が0.05N/mm以下の場合はダイシング工程中に個片化された半導体デバイスを保持できずにチップ飛びを起こしてしまう恐れがあり、一方、1.0N/mm以上では剥離の際に粘着剤の糊残りを発生してしまう恐れがある。
【0021】
粘着剤層5の厚さは8〜32μm、より好ましくは15〜25μmである。粘着剤層5の厚さが薄すぎると半導体デバイスの保持に十分な粘着力を得ることができず、また、粘着剤層5の厚さが厚すぎると、半導体デバイスの切断面の品質悪化、半導体デバイス側面への糊残りといった問題が生じる。
【0022】
粘着剤層5を構成する粘着剤は、紫外線硬化型粘着剤であり、粘着剤層5表面の紫外線照射前における純水に対する接触角が115°以下であり、且つ、ヨウ化メチレンに対する接触角が65°以下であれば特に制限はなく、従来公知の粘着剤の中から適宜選択して用いることができる。例えば天然ゴムや合成ゴム等を用いたゴム系粘着剤、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステルや(メタ)アクリル酸アルキルエステルと他のモノマーとの共重合体等を用いたアクリル系粘着剤、その他ポリウレタン系粘着剤やポリエステル系粘着剤やポリカーボネート系粘着剤などの一般的な粘着剤を用いることができ、これら一般的な粘着剤に紫外線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分等の紫外線硬化樹脂を配合した紫外線硬化型粘着剤の他、ベースポリマーとして、炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖または主鎖中もしくは主鎖末端に有する炭素−炭素二重結合導入型アクリル系ポリマーを用いる紫外線硬化型粘着剤が例示できる。ベースポリマーとして、炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖または主鎖中もしくは主鎖末端に有する炭素−炭素二重結合導入型アクリル系ポリマーを用いた場合は、必ずしも、紫外線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分等の紫外線硬化樹脂を配合する必要はない。
【0023】
粘着剤層5を構成する粘着剤としては、ポリ(メタ)アクリル酸エステルや(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体等(以後、総称してアクリルポリマーと記す)を用いたアクリル系粘着剤が好ましい。
【0024】
前記アクリルポリマーの構成成分として、(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
前記アクリルポリマーを製造する方法としては、特に制限されないが、架橋剤により重量平均分子量を高めたり、縮合反応または付加反応により紫外線硬化性炭素−炭素二重結合を導入したりするために、水酸基やカルボキシル基、グリシジル基などの官能基を有することが好ましい。
【0026】
アクリルポリマーへの紫外線硬化性炭素−炭素二重結合の導入は、アクリルポリマーの構成成分と、官能基を有するモノマーを用いて共重合して、官能基を有するアクリルポリマーを調製した後、官能基を有するアクリルポリマー中の官能基と反応し得る官能基と炭素−炭素二重結合とを有する化合物を、官能基を有するアクリルポリマーに、炭素−炭素二重結合の紫外線硬化性(紫外線重合性)を維持した状態で、縮合反応又は付加反応させることにより、調製することができる。
【0027】
官能基を有するアクリルポリマーは、構成成分の(メタ)アクリル酸エステルに対して共重合が可能であり、かつ水酸基、カルボキシル基、グリシジル基などの官能基を有するモノマー(共重合性モノマー)を共重合することによって得ることができる。(メタ)アクリル酸エステルに対して共重合が可能であり、かつ水酸基を有するモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリルレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルに対して共重合が可能であり、かつカルボキシル基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸(アクリル酸、メタクリル酸)、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルに対して共重合が可能であり、かつグリシジル基を有するモノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】
官能基と反応し得る官能基と炭素−炭素二重結合とを有する化合物としては、縮合反応または付加反応の対象となる官能基が水酸基である場合には、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートなどが挙げられる。縮合反応または付加反応の対象となる官能基がカルボキシル基である場合には、グリシジルメタクリレートやアリルグリシジルエーテル等が挙げられる。縮合反応または付加反応の対象となる官能基がグリシジル基である場合には、(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸等が挙げられる。
【0029】
アクリルポリマーは、半導体デバイス等の被加工物の汚染防止などの観点から、低分子量物の含有量が少ないものが好ましい。この観点から、アクリルポリマーの重量平均分子量としては、10万以上であることが好ましく、さらには20万〜200万であることが好適である。アクリルポリマーの重量平均分子量が、小さすぎると、半導体デバイスなどの被加工物に対する汚染防止性が低下し、大きすぎると粘着剤層5を形成するための粘着剤組成物の粘度が極めて高くなり、粘着テープ1の製造が困難となる。
【0030】
また、アクリルポリマーは粘着性発現の観点から、ガラス転移点が−70℃〜0℃であることが好ましく、更に好ましくは、−65℃〜−20℃である。ガラス転移点が低すぎると、ポリマーの粘度が低くなり、安定した塗膜形成が困難となり、ガラス転移点が高すぎると、粘着剤が硬くなり、被着体に対する濡れ性が悪化する。
【0031】
前記アクリルポリマーは単独で用いても良いし、相溶性の許す限り2種以上のアクリルポリマーを混合して用いても良い。
【0032】
一般的な粘着剤に配合して粘着剤層5に用いる紫外線硬化型樹脂は特に限定されるものではないが、例として、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸オリゴマーおよびイタコン酸オリゴマーのように水酸基あるいはカルボキシル基などの官能基を有するオリゴマーを挙げることができる。
【0033】
また本発明に用いられる粘着剤中に光重合開始剤を配合することができる。光重合開始剤としては、例えばイソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフエノン、ミヒラーケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタノール、α−ヒドロキシシクロヘキシルフエニルケトン、2−ヒドロキシメチルフエニルプロパン等をあげることができる。これらの内の少なくとも1種を粘着剤中に添加することによって、粘着剤層5の硬化反応を効率良く進行させることができ、それによって半導体デバイスの固定粘着力を適度に低下させることができる。
【0034】
光重合開始剤の添加量は、前記紫外線硬化型樹脂100質量部に対して0.5〜10質量部とするのが良い。ベースポリマーとして、炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖または主鎖中もしくは主鎖末端に有する炭素―炭素二重結合導入型アクリル系ポリマーを用いた場合は、炭素―炭素二重結合導入型アクリル系ポリマー100質量部に対して0.5〜10質量部とするのが良い。
【0035】
さらに本発明に用いられる粘着剤には必要に応じて粘着付与剤、粘着調整剤、界面活性剤など、あるいはその他の改質剤等を配合することができる。また、無機化合物フィラーを適宜加えてもよい。
【0036】
粘着剤層5の粘着性は、粘着材料の架橋密度を制御することにより適宜制御可能である。粘着材料の架橋密度の制御は、例えば多官能イソシアネート系化合物やエポキシ系化合物、メラミン系化合物や金属塩系化合物、金属キレート系化合物やアミノ樹脂系化合物や過酸化物などの適宜な架橋剤を介して架橋処理する方式、炭素−炭素二重結合を2個以上有する化合物を混合し、エネルギー線の照射等により架橋処理する方式などの適宜な方式で行うことができる。
【0037】
粘着剤層5の紫外線照射前の粘着剤層5表面の純水およびヨウ化メチレンに対する接触角は、アクリルポリマーのコモノマー比率を調整する他、添加剤としてアルキレングリコールやポリアルキレングリコール、シリコーン樹脂等を配合することにより調整可能である。
【0038】
基材フィルム3は、粘着剤層5に紫外線硬化型粘着剤を用いることから光透過性であることが必要となる以外は、従来公知の基材フィルムの中から適宜選択して用いることができる。具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、およびポリブテンのようなポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体およびエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体のようなエチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル等のエンジニアリングプラスチック、軟質ポリ塩化ビニル、半硬質ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド天然ゴムならびに合成ゴムなどの高分子材料が挙げられる。また、これらの群から選ばれる2種以上が混合されたものもしくは複層化されたものでもよく、粘着剤層5との接着性によって任意に選択することができる。
【0039】
基材フィルム3は、二層以上の複層構造であることが好ましい。複層構造の場合、粘着剤層5と接する基材フィルム層(第1層)の融点が、基材フィルム層(第1層)の粘着剤層5側と反対面に接する基材フィルム層(第2層)の融点より低いものが好ましく、例えば第1層/第2層の組み合わせとしては、ポリエチレン/ポリプロピレンやエチレン酢酸ビニル共重合体/ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体/ポリプロピレン等がある。特に低密度ポリエチレン/ポリプロピレンランダムコポリマー/低密度ポリエチレンの三層構造からなる基材フィルムが好ましい。基材フィルムを前記のような融点を持つ2層以上の複層構造とすることで、切削時の熱により柔軟化した基材フィルム(第1層)と切削屑である金属と粘着剤との混合物が、切削時においても比較的高い粘性を維持している基材フィルム(第2層)に固着され、外部に排出されにくくなることから、金属粉の発生を抑制することができる。
また基材フィルム3が三層以上で、基材フィルム(第2層)の基材フィルム(第1層)と反対面に接する基材フィルム(第3層)が、基材フィルム(第2層)よりも融点が低い場合は、ダイシングブレードの切込みは基材フィルム(第1層)を貫通し、基材フィルム(第3層)に到達しないことが重要である。
【0040】
基材フィルム3の厚さは100μm〜200μmが好ましく、特に130μm〜170μmが好ましい。基材フィルムの(第1層)は5μm〜50μmが好ましく、特に10〜30μmが好ましい。基材フィルム3の(第1層)が50μmよりも厚い場合、切削屑である金属と粘着剤との混合物の発生量が多く、基材フィルム(第2層)へ固着しきれずに外部へ排出され、金属粉の発生を抑制に繋がらない恐れがある。一方、基材フィルムの(第1層)が5μm未満の場合、基材フィルムの(第1層)(第2層)間の粘性差によるメカニズムが成立し難く、やはり金属粉の発生を抑制に繋がらない恐れがある。また、基材フィルム3が三層以上の場合は、(第2層)/(第3層)の界面から基材フィルムの粘着剤層5側と反対面までの厚さは5μm〜50μmが好ましく、特に10〜30μmが好ましい。基材フィルム3が三層以上の場合、(第2層)/(第3層)の界面から基材フィルム3の粘着剤層5側と反対面までの厚さが50μm以上である場合、ダイシングブレードの切込みが基材フィルム(第1層)を貫通し、基材フィルム(第3層)に到達しないようにした場合、切込みが浅く、半導体チップの形状に異常を来たす恐れがある。
【0041】
粘着テープ1は、粘着剤層5を直接基材フィルム3上に塗布して形成する他、セパレータ6上に塗布した粘着剤層5を基材フィルムと貼り合わせることで基材フィルム3に転写することで作製することができる。
【0042】
粘着テープ1の使用方法の一例について説明する。
図2に示すように、粘着テープ1の粘着剤層5を一括封止パッケージ11に貼り付け、基材フィルム3を下にしてリングフレーム9でダイシング装置に固定する(図2(a))、次に、ダイシングブレード13により所定のラインに沿って、一括封止パッケージ11をフルカットして(図2(b))、個片化し(図2(c))、次に基板フィルム3側から紫外線照射17を行い、粘着剤層5を硬化させて粘着力を低下させ(図2(d))、その後ピックアップチャック19によりピックアップを行い、個片化されたパッケージ15を得る(図2(e))。
【0043】
以上、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【実施例】
【0044】
次に本発明を実施例に基づき更に詳細に説明する。以下本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0045】
実施例および比較例で使用した粘着剤組成物を、以下に示す。
粘着剤組成物(A)
2−エチルヘキシルアクリレート(70重量%)、メチルメタクリレート(10重量%)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(20重量%)の共重合体(ガラス転移点:−50℃)に、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、また、触媒としてジラウリン酸ジブチルスズを加えて反応させることにより得られた、側鎖末端に炭素−炭素二重結合を有するアクリル重合体100質量部に対して、光重合開始剤として商品名「イルガキュア651」(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製):2.5質量部と、ポリイソシアネート系化合物(商品名「コロネートL」日本ポリウレタン工業社製):0.2質量部とを加えて、紫外線硬化型アクリル系粘着剤組成物(A)を得た。
【0046】
粘着剤組成物(B)
n−ブチルアクリレート(60重量%)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(40重量%)の共重合体(ガラス転移点:−40℃)100質量部に対して、紫外線硬化樹脂としてペンタエリスリトールトリアクリレートおよびイソホロンジイソシアネートを反応させて得た紫外線硬化性オリゴマー:50質量部と、光重合開始剤として商品名「イルガキュア651」(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製):2.5質量部と、ポリイソシアネート系化合物(商品名「コロネートL」日本ポリウレタン工業社製):0.2質量部とを加えて、紫外線硬化型アクリル系粘着剤組成物(B)を得た。
【0047】
粘着剤組成物(C)
分子量1000のポリプロピレングリコールを4.0質量部加えた以外は粘着剤組成(B)と同様とし、紫外線硬化型アクリル系粘着剤組成物(C)を得た。
【0048】
粘着剤組成物(D)
ポリイソシアネート系化合物(商品名「コロネートL」日本ポリウレタン工業社製)の添加量を1.0質量部とした以外は粘着剤組成物(A)と同様とし、紫外線硬化型アクリル系粘着剤組成物(D)を得た。
【0049】
粘着剤組成物(E)
2−エチルヘキシルアクリレート(47重量%)、メチルメタクリレート(33重量%)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(20重量部)の共重合体(ガラス転移点:−20℃)100質量部に対して、紫外線硬化樹脂として2−ヒドロキシエチルアクリレートおよびイソホロンジイソシアネートを反応させて得た紫外線硬化性オリゴマー50質量部と、光重合開始剤として商品名「イルガキュア651」(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)2.5質量部と、ポリイソシアネート系化合物(商品名「コロネートL」日本ポリウレタン工業社製)0.2質量部とを加えて、紫外線硬化型アクリル系粘着剤組成物(E)を得た。
【0050】
粘着剤組成物(F)
2−エチルヘキシルアクリレート(90重量%)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(10重量%)の共重合体(ガラス転移点:−65℃)に、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを、触媒としてジラウリン酸ジブチルスズを加えて反応させることにより得られた、側鎖末端に炭素−炭素二重結合を有するアクリル重合体100質量部に対して、光重合開始剤として商品名「イルガキュア651」(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)2.5質量部と、ポリイソシアネート系化合物(商品名「コロネートL」日本ポリウレタン工業社製)0.2質量部とを加えて、紫外線硬化型アクリル系粘着剤組成物(F)を得た。
【0051】
粘着剤組成物(G)
分子量1000のポリプロピレングリコールを4.0質量部加えた以外は粘着剤組成(F)と同様とし、紫外線硬化型アクリル系粘着剤組成物(G)を得た。
【0052】
粘着剤組成物(H)
シリコーン化合物としてポリエーテル変性シリコーンオイル(商品名「SF8427」(東レ・ダウコーニング社製))0.5質量部を加えた以外は粘着剤組成(A)と同様とし、紫外線硬化型アクリル系粘着剤組成物(H)を得た。
【0053】
粘着剤組成物(I)
ポリイソシアネート系化合物(商品名「コロネートL」日本ポリウレタン工業社製)の添加量を1.0質量部とした以外は粘着剤組成(F)と同様とし、紫外線硬化型アクリル系粘着剤組成物(I)を得た。
【0054】
実施例および比較例において使用した基材フィルムを以下に示す。
基材フィルム(イ)
ポリプロピレンランダムコポリマー(融点143℃)を、押出機を使用して押出加工、片面にコロナ放電処理を施すことにより、厚さ150μmの基材フィルム(イ)を作成した。
【0055】
基材フィルム(ロ)
エチレン酢酸ビニル共重合体(融点90℃)を、押出機を使用して押出加工、片面にコロナ放電処理を施すことにより、厚さ150μmの基材フィルム(ロ)を作成した。
【0056】
基材フィルム(ハ)
エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)(融点90℃)および低密度ポリエチレン(LDPE)(融点111℃)を、押出機を使用して共押出加工、EVA表面側にコロナ放電処理を施すことにより、2層構造の基材フィルム(ハ)を作成した。各層の厚さは、EVAの厚さ50μm、LDPEの厚さ100μmとした。
【0057】
基材フィルム(ニ)
低密度ポリエチレン(LDPE)(融点111℃)およびポリプロピレンランダムコポリマー(PP)(融点143℃)を用い、押出機を使用して共押出加工、片面のLDPE表面側にコロナ放電処理を施すことにより、LDPE/PP/LDPEの3層構造からなる基材フィルム(ニ)を作成した。各層の厚さは、LDPE/PP/LDPE=30μm/90μm/30μmとした。
【0058】
[実施例1]
予め離型処理の施されたポリエチレンテレフタレートセパレータの離型処理面上に、粘着剤組成物(A)を乾燥後の粘着層の厚みが20μmとなるように塗工し、80℃で10分間乾燥させた後、基材フィルム(イ)のコロナ処理面と貼り合わせて基材フィルムに粘着剤を転写させることで粘着テープを作製した。
【0059】
[実施例2]
予め離型処理の施されたポリエチレンテレフタレートセパレータの離型処理面上に、粘着剤組成物(A)を乾燥後の粘着層の厚みが20μmとなるように塗工し、80℃で10分間乾燥させた後、基材フィルム(ロ)のコロナ処理面と貼り合わせて基材フィルムに粘着剤を転写させることで粘着テープを作製した。
【0060】
[実施例3]
予め離型処理の施されたポリエチレンテレフタレートセパレータの離型処理面上に、粘着剤組成物(B)を乾燥後の粘着層の厚みが20μmとなるように塗工し、80℃で10分間乾燥させた後、基材フィルム(イ)のコロナ処理面と貼り合わせて基材フィルムに粘着剤を転写させることで粘着テープを作製した。
【0061】
[実施例4]
予め離型処理の施されたポリエチレンテレフタレートセパレータの離型処理面上に、粘着剤組成物(C)を乾燥後の粘着層の厚みが20μmとなるように塗工し、80℃で10分間乾燥させた後、基材フィルム(イ)のコロナ処理面と貼り合わせて基材フィルムに粘着剤を転写させることで粘着テープを作製した。
【0062】
[実施例5]
予め離型処理の施されたポリエチレンテレフタレートセパレータの離型処理面上に、粘着剤組成物(D)を乾燥後の粘着層の厚みが20μmとなるように塗工し、80℃で10分間乾燥させた後、基材フィルム(イ)のコロナ処理面と貼り合わせて基材フィルムに粘着剤を転写させることで粘着テープを作製した。
【0063】
[実施例6]
予め離型処理の施されたポリエチレンテレフタレートセパレータの離型処理面上に、粘着剤組成物(B)を乾燥後の粘着層の厚みが5μmとなるように塗工し、80℃で10分間乾燥させた後、基材フィルム(イ)のコロナ処理面と貼り合わせて基材フィルムに粘着剤を転写させることで粘着テープを作製した。
【0064】
[実施例7]
予め離型処理の施されたポリエチレンテレフタレートセパレータの離型処理面上に、粘着剤組成物(E)を乾燥後の粘着層の厚みが20μmとなるように塗工し、80℃で10分間乾燥させた後、基材フィルム(イ)のコロナ処理面と貼り合わせて基材フィルムに粘着剤を転写させることで粘着テープを作製した。
【0065】
[実施例8]
予め離型処理の施されたポリエチレンテレフタレートセパレータの離型処理面上に、粘着剤組成物(E)を乾燥後の粘着層の厚みが20μmとなるように塗工し、80℃で10分間乾燥させた後、基材フィルム(ハ)のコロナ処理面と貼り合わせて基材フィルムに粘着剤を転写させることで粘着テープを作製した。
【0066】
[実施例9]
予め離型処理の施されたポリエチレンテレフタレートセパレータの離型処理面上に、粘着剤組成物(E)を乾燥後の粘着層の厚みが20μmとなるように塗工し、80℃で10分間乾燥させた後、基材フィルム(ニ)のコロナ処理面と貼り合わせて基材フィルムに粘着剤を転写させることで粘着テープを作製した。
【0067】
[比較例1]
粘着剤組成物(A)を粘着剤組成物(F)とした以外は、実施例1と同様にして、乾燥後の厚さ20μmの粘着テープを作製した。
【0068】
[比較例2]
粘着剤組成物(A)を粘着剤組成物(G)とした以外は、実施例1と同様にして、乾燥後の厚さ20μmの粘着テープを作製した。
【0069】
[比較例3]
粘着剤組成物(A)を粘着剤組成物(H)とした以外は、実施例1と同様にして、乾燥後の厚さ20μmの粘着テープを作製した。
【0070】
[比較例4]
粘着剤組成物(A)を粘着剤組成物(I)とした以外は、実施例1と同様にして、乾燥後の厚さ20μmの粘着テープを作製した。
【0071】
[比較例5]
粘着剤組成物(E)を粘着剤組成物(F)とした以外は、実施例8と同様にして、乾燥後の厚さ20μmの粘着テープを作製した。
【0072】
[比較例6]
粘着剤組成物(E)を粘着剤組成物(F)とした以外は、実施例9と同様にして、乾燥後の厚さ20μmの粘着テープを作製した。
【0073】
(評価)
実施例1〜9および比較例1〜6で得られた各粘着テープについて、次の要領で、粘着剤層表面の純水、ヨウ化メチレンに対する接触角の測定、プローブタックの測定およびダイシングテープとして使用した際の性能評価を行った。
結果を表1および表2に示す。
【0074】
<粘着剤層表面の接触角の測定>
基材フィルムの粘着剤層が設けられていない方の面を、両面テープを用いて表面が平らのガラス板上に固定した。セパレータを剥離した後、純水もしくはヨウ化メチレンを滴下し、接触角θを協和化学株式会社製FACE接触角計CA−S150型を用いて測定した。測定温度は23℃、測定湿度は50%である。
【0075】
<プローブタックの測定>
株式会社レスカのタッキング試験機TAC−IIを用いて行った。測定モードは、設定した加圧値までプローブを押し込み、設定した時間が経過するまで加圧値を保持するようにコントロールし続けるConstant
Loadを用いた。セパレータを剥離した後、粘着テープの粘着剤層を上にし、上側より直径3.0mmのSUS304製のプローブを接触させた。プローブを測定試料に接触させる時のスピードは30mm/minであり、接触荷重は100gfであり、接触時間は1秒である。その後、プローブを600mm/minの剥離速度で上方に引き剥がし、引き剥がすのに要する力を測定した。プローブ温度は23℃であり、プレート温度は23℃とした。
【0076】
<ダイシング評価>
セパレータを剥離した後、粘着テープを、60×60mmのQFN基板パッケージの硬化樹脂面に、粘着剤層を介して貼着すると共に、リングフレームに固定した。次にQFN基板パッケージを、ダイシング装置(ディスコ社製DAD340)を用いて、設定した分割予定ラインに沿って3×3mm角にフルカットし、計324個の半導体デバイス(個片化されたパッケージ)を得た。ダイシングの条件は、下記の通りである。
ブレード送り速度:50mm/sec
ブレード回転数:40000rpm
粘着テープへの切り込み量:100μm
ダイシング終了後、チップ保持性およびダイシングテープ露出部への銅粉付着について、下記の方法により評価を行った。
【0077】
次に、粘着テープの基板フィルム側から、高圧水銀灯を用いて紫外線を200mJ/cm照射して粘着剤層を硬化させた後、個片化した半導体デバイスをピックアップした。
得られた各半導体デバイスについて、銅粉付着量を下記の要領で評価した。
結果を表1に示す。
【0078】
<チップ保持性>
ダイシング終了後、半導体デバイスと粘着テープの粘着剤との間の密着具合を観察し、部分的でも剥離が発生している半導体デバイスの数をカウントした。剥離の発生した半導体デバイスがないものを、良好な結果であると判断した。
【0079】
<粘着剤露出部への銅粉付着>
ダイシング終了後、QFN基板パッケージに隣接する粘着テープの粘着剤露出部5cm×5cmの領域上に付着した銅粉の数をカウントした。10個以下を、良好な結果であると判断した。
【0080】
<半導体デバイス表面への銅粉付着量>
得られた半導体デバイスの全数について銅フレーム側の面を顕微鏡観察し、銅粉の付着した半導体デバイスの総数をカウントした。20個以下を、良好な結果であると判断した。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

【0083】
〈結果の評価〉
実施例1〜9は、何れも半導体デバイス表面への銅粉付着量が少なく良好である。
実施例6〜9は、プローブタックのピーク値が300〜400kPaであり、ダイシングテープの粘着剤露出部への銅粉付着が特に少なくなっている。
実施例5は、プローブタックのピーク値が300kPa以下であり、ダイシング時において、一部の半導体デバイスとダイシングテープ粘着剤の間に部分的な剥離が発生したものの、半導体デバイス表面への銅粉付着量、ダイシングテープの粘着剤露出部への銅粉付着量は少ない結果となっている。
実施例8、9は、基材フィルムとして複層構造で、粘着剤層側の基材フィルム層の融点が、この粘着剤層側の基材フィルム層に接する基材フィルム層の融点より低いものを使用し、半導体デバイス表面への銅粉付着がより少ない結果となった。低密度ポリエチレン/ポリプロピレンランダムコポリマー/低密度ポリエチレンからなる三層構造の基材フィルムを用いた実施例9では、半導体デバイス表面への銅粉付着量が極めて少なかった。
【0084】
一方、比較例1は、粘着剤層の純水に対する接触角、ヨウ化メチレンに対する接触角共に、本願発明の範囲内でないことから、半導体デバイス表面への銅粉付着量が多い結果となった。
比較例2は、粘着剤層の純水に対する接触角は115℃以下であるが、ヨウ化メチレンに対する接触角が65℃以下でなく本願発明の範囲外であり、半導体デバイス表面への銅粉付着量が多い結果となった。
比較例3は、粘着剤層のヨウ化メチレンに対する接触角は65℃以下であるが、純水に対する接触角が115℃以下でなく本願発明の範囲外であり、半導体デバイス表面への銅粉付着量が多い結果となった。
比較例4は、粘着剤層の純水に対する接触角、ヨウ化メチレンに対する接触角共に、本願発明の範囲内でなく、半導体デバイス表面への銅粉付着量が多い結果となった。比較例1よりタックのピーク値が低く、銅粉付着量はやや低くなったが良好な結果ではなかった。
比較例5は、粘着剤層の純水に対する接触角、ヨウ化メチレンに対する接触角共に、本願発明の範囲内でなく、半導体デバイス表面への銅粉付着量が多い結果となった。基材フィルムが特徴的な2層構造であり、比較例1より銅粉付着量はやや低くなったが良好な結果ではなかった。
比較例6は、粘着剤層の純水に対する接触角、ヨウ化メチレンに対する接触角共に、本願発明の範囲内でなく、半導体デバイス表面への銅粉付着量が多い結果となった。基材フィルムが特徴的な3層構造であり、比較例1より銅粉付着量はやや低くなったが良好な結果ではなかった。
【符号の説明】
【0085】
1………粘着テープ
3………基材フィルム
5………粘着剤層
6………セパレータ
9………リングフレーム
11………一括封止パッケージ
13………ダイシングブレード
15………個片化されたパッケージ
17………紫外線照射
19………ピックアップチャック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも片面に紫外線硬化型粘着剤層が積層されてなる半導体デバイス加工用粘着テープであって、
紫外線照射前の前記粘着剤層表面は、純水に対する接触角が115°以下であり、且つ、ヨウ化メチレンに対する接触角が65°以下であることを特徴とする半導体デバイス加工用粘着テープ。
【請求項2】
紫外線照射前の前記粘着剤層は、プローブタック試験のピーク値が300〜400kPaであることを特徴とする請求項1記載の半導体デバイス加工用粘着テープ。
【請求項3】
前記基材フィルムは、二層以上の複層構造であり、前記粘着剤層と接する第1の基材フィルム層の融点が、前記第1の基材フィルム層の前記粘着層側と反対面に接する第2の基材フィルム層の融点より低いことを特徴とする請求項1または請求項2記載の半導体デバイス加工用粘着テープ。
【請求項4】
前記基材フィルムは、低密度ポリエチレン/ポリプロピレンランダムコポリマー/低密度ポリエチレンからなる三層構造であることを特徴とする請求項3記載の半導体デバイス加工用粘着テープ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−93519(P2013−93519A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236071(P2011−236071)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【特許番号】特許第5019657号(P5019657)
【特許公報発行日】平成24年9月5日(2012.9.5)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】