説明

半導体デバイス用ダイシング加工用粘着テープ

【課題】ダイシング工程におけるブレードの磨耗量を低減させ、かつ作業性を向上させる半導体デバイス用ダイシング加工用粘着テープ、及びそれを用いた半導体デバイスチップの製造方法を提供する。
【解決手段】基材フィルム10上に放射線硬化型粘着剤層20を形成してなる半導体デバイスダイシング用粘着テープ100であって、前記基材フィルム10が2層以上の基材樹脂フィルム層からなり、前記粘着剤層側に隣接する基材樹脂フィルム層2の融点が100〜120℃であり、該粘着剤層側の基材樹脂フィルム層と前記粘着剤層と逆側で隣接する基材樹脂フィルム層1の融点が140〜150℃である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスを小片に切断分離する半導体デバイスダイシング工程に用いられる半導体デバイスダイシング用粘着テープ、及びそれを用いた半導体デバイスチップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回路パターンの形成された半導体デバイスウエハをチップ状に分離する、いわゆるウエハダイシング加工を行うに際し、半導体デバイスウエハをダイシング用粘着テープに固定し、ピックアップする方式が行われている。この方式では、半導体デバイスウエハは、マウント工程に移されるまでにウエハダイシング用粘着テープに貼着、固定された状態で、チップ状にウエハダイシングされる。その後、得られた半導体デバイスウエハチップは洗浄、乾燥された後に、ピックアップされ、硬化樹脂による封止によりパッケージ化されて、半導体デバイスパッケージとされる。
【0003】
従来、上記の工程で半導体デバイスウエハチップ作製した後に、別個に封止する方法が用いられてきた。近年、一枚の基板上にボンディングされた複数の半導体デバイスウエハチップを硬化樹脂で一括封止したパッケージをパッケージダイシングして個々の半導体デバイスを得る、一括モールド封止パッケージダイシングが行われている。
【0004】
また、ダイシングにおいて、IC等の所定の回路パターンが形成された半導体ウエハ、または樹脂で一括封止されたパッケージは、その背面に半導体ウエハ加工用粘着テープが貼合された後、金属粒子分散のブレードを高速回転させるなどの回転刃を介し所定のチップサイズにダイシング処理される。この処理に際しては、半導体ウエハ加工用粘着テープの一部に達する切削を行ってウエハを個片化する方法が一般的に採用されている。
【0005】
ダイシング工程に用いられるブレードは、一般的に自己磨耗により自己発刃機能を活性化させて切削性能をもたらす。その自己発刃機能は、切削する半導体デバイスおよび同時に切削される粘着テープによって影響を受けるため、同じ半導体デバイスを処理した場合においても、異なる粘着テープを使用すると、ブレードの自己磨耗量は変動し、ブレードによって切れ難いテープは、その分ブレードを磨耗させることになる。
【0006】
切削性向上のために、自己磨耗量が多い、例えば融点の高い粘着テープを適用すると、ダイシング中にブレードの直径が小さくなることから、ダイシングライン毎あるいは同ダイシングライン中で切り込み深さが変わってしまい、個片化された半導体デバイスの品質に影響を与えるおそれがあった。また、ブレードの寿命が短くなるため、交換頻度を多くする必要が生じ、作業性の悪化およびブレードのコスト面でも改良の余地があった。
【0007】
このため、例えば、特許文献1では、ダイシング装置によって、ブレード径を常に監視し、加工安定性を高める手法が提案されている。この手法では、切削ブレードの先端に偏磨耗が生じて切り込み対象となるパッケージ基板を規格サイズで適正にフルカットできない磨耗状態に達していると判定すると、警報を発して切削ブレードの交換を促すため、ブレードの交換頻度が高くなり、作業性およびコストの改良の余地があった。
【0008】
ブレードの磨耗量を低減させるため、例えば特許文献2では、ブレードを傾けて局所的に磨耗させる手法が提案されているが、フルカットするためには二種類のブレードの使用や、ダイシングブレードの角度の変更させる必要があり、作業性が十分良いとは言えない。
【0009】
また、特許文献3では、切断面に糸状のバリを発生させない切断加工性を獲得するために、縦方向の引張弾性率と横方向の引張弾性率、およびそれらの比を所定の範囲にすることが提案されているが、ダイシング工程におけるブレードの磨耗量については記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008‐166546号公報
【特許文献2】特開2004‐47602号公報
【特許文献3】特開2005‐68420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ダイシング工程におけるブレードの磨耗量を低減させ、かつ作業性を向上させる半導体デバイス用ダイシング加工用粘着テープ、及びそれを用いた半導体デバイスチップの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、粘着テープを構成する基材樹脂フィルム層を複層構成にし、その複層構成の樹脂の融点に差をつけることにより、ブレード磨耗量を低減できることを見出した。本発明はこの知見に基づきなされたものである。
【0013】
本発明の課題は以下の手段によって達成された。
すなわち本発明は、
<1>基材フィルム上に放射線硬化型粘着剤層を形成してなる半導体デバイスダイシング用粘着テープであって、前記基材フィルムが2層以上の基材樹脂フィルム層からなり、前記粘着剤層側に隣接する基材樹脂フィルム層の融点が100〜120℃であり、該粘着剤層側の基材樹脂フィルム層と前記粘着剤層と逆側で隣接する基材樹脂フィルム層の融点が140〜150℃であることを特徴とする半導体デバイス用ダイシング加工用粘着テープ、
<2>前記粘着剤層側に隣接する基材樹脂フィルム層が低密度ポリエチレンもしくは直鎖状低密度ポリエチレンを含み、粘着剤層と逆側に隣接する基材樹脂フィルム層がポリプロプレンを含むことを特徴とする<1>に記載の半導体デバイス用ダイシング加工用粘着テープ、
<3>前記粘着剤層側に隣接する基材樹脂フィルム層の厚さが、基材樹脂フィルム全体厚さに対して20〜40%であることを特徴とする<1>または<2>に記載の半導体デバイス用ダイシング加工用粘着テープ、
<4>放射線硬化前のJIS K 7128−1に基づく引裂き強さが70〜95N/mmであることを特徴とする<1>〜<3>のいずれかに記載の半導体デバイスダイシング用粘着テープ、
<5><1>〜<4>のいずれかに記載の半導体デバイスダイシング用粘着テープを半導体デバイスに貼合し、該貼合した半導体デバイスをダイシング加工する半導体デバイスの加工方法であって、前記基材フィルムの、前記粘着剤層側に隣接する基材樹脂フィルム層をフルカットすることを特徴とする半導体デバイスの加工方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の半導体デバイス用ダイシング加工用粘着テープでは、基材フィルムに使用する樹脂層の構成を特定の積層体とすることで、コストの増加を伴うことなく、ダイシングブレードの磨耗量を低減するとともに、半導体デバイスの加工後の品質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の半導体デバイスダイシング用粘着テープの一実施形態を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の半導体デバイスダイシング用粘着テープの他の実施形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の好ましい実施の形態を、適宜、図面を参照して詳細に説明する。
なお、本明細書において半導体デバイスとは、半導体デバイスウエハや半導体デバイス一括モールド封止パッケージの両者を含む。
【0017】
図1は、本発明の半導体デバイスダイシング用粘着テープの好ましい一実施形態を模式的に示す図である。
図1中、半導体デバイスダイシング用粘着テープ100は、基材フィルム10と粘着剤層20で構成され、この基材フィルム10はその最外層に位置する樹脂フィルム層1と粘着剤層に接する樹脂フィルム層2とからなり、基材フィルム10の樹脂フィルム層2側に粘着剤層20が形成されている。
【0018】
本発明の半導体デバイスダイシング用粘着テープ100は、基材フィルム10のうち、樹脂フィルム層1を構成する樹脂組成物の融点が100〜120℃、より好ましくは100〜110℃であり、樹脂フィルム層2を構成する樹脂組成物の融点が140〜150℃、より好ましくは141〜148となる樹脂組成物で構成する。
ここで、樹脂フィルム1と2の融点の差は示差走査熱量測定(DSC)によって定めることができる。融点はJIS K 7121にて規定された試験方法により得られた値を指す。
【0019】
ダイシングブレードによる切削においては、ブレードの高速回転により被着体および粘着テープの一部を削り取る。このとき、半導体デバイスダイシング用粘着テープのスクライブライン周辺はブレードとの摩擦により高温となる。一般的にブレードによるダイシングの際には15〜25℃の冷却水がその接触部分に流され、発熱を抑制するが、ブレード先端部についてはその冷却効果が十分ではなく、粘着テープの、スクライブラインにあたる箇所を溶融させうる。また、粘着テープの構成物質は高分子量物質を含んでいるため、それぞれ構成樹脂の融点あるいは転移温度に近づくと粘着テープは粘性体としての特性が強くなり、この粘性によりブレードの自己発刃機能は低下し同時にブレードの磨耗量は低減する傾向にある。その結果、ブレードの自己発刃機能が低下して、同時にブレードの切削性能が低下するため、被着体の品質悪化を引き起こすおそれがある。
【0020】
これに対し、本発明では、樹脂フィルムを構成する樹脂の融点に差を設け、比較的低い融点を有する樹脂フィルム層2では、粘性体の性能をより強く発現させ、ブレードの自己発刃機能を抑制し、比較的高融点を有する樹脂フィルム層1では、必要最低限の自己発刃を発現させて、ブレードの磨耗量を低減、抑制させる。その結果、ブレードを長期にわたって品質悪化を伴わずに使用することができる。
【0021】
樹脂フィルム層1の融点が140℃未満では、樹脂フィルム層1がダイシングの際に一時的に溶融状態に近づくため、強く粘性を持ち、その結果ブレードを磨耗させることができず、半導体デバイスの欠け等を生じるおそれがある。一方150℃を超えると、ダイシングの際に弾性体として強くはたらくため、ブレードの磨耗量が増加する傾向にある。
また、樹脂フィルム層2の融点が100℃未満では、樹脂フィルム層2がダイシングの際に、より強く粘性を持つため、この粘性によりブレードの自己発刃機能が著しく低下し同時に半導体デバイスのバリ等を生じる恐れがある。一方120℃を超えると、樹脂フィルム層2のダイシングの際に、粘性体としての性能が乏しくなるためブレード磨耗量が増加する傾向がある。
【0022】
基材フィルム10を構成する樹脂は、上記の融点の範囲内であれば、特に制限はなく、他の樹脂やゴムなどシート状に成形できるものを併用してもよい。
例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体加硫物、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリアミド、アイオノマー、ニトリルゴム、ブチルゴム、スチレンイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、天然ゴムおよびその水添加物または変性物等などを用いてもよい。この中でも特に、最外層の樹脂フィルム層1にはポリプロピレンが好ましく、また、粘着剤層に接する樹脂フィルム層2には低密度ポリエチレン(LDPE)もしくは直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましい。
【0023】
粘着剤層に接する基材樹脂フィルム層2を構成する層には密着性をさらに向上させるために、コロナ処理を施したり、プライマー等の処理を施してもよい。
【0024】
ところで、ダイシング加工時に使用されるブレード外周部断面はR形状を持っていることから、半導体デバイスの側面であるダイシングブレード切削面を平滑にするためには、ブレード刃厚の厚いものを用いるときほどダイシングテープに深く切り込む必要がある。このため、ブレード刃厚の厚いものを用いるときほど基材樹脂フィルム層を厚くする必要がある。そこで、基材樹脂フィルム層の厚さは、ダイシングに用いるブレード厚さの最低30%以上の厚さとすることが好ましい。一方、基材樹脂フィルム層が厚くなりすぎると、半導体デバイスダイシング用粘着テープの剛性が上がり、作業性が悪化することがある。
ダイシング用のブレードとしては刃厚50〜400μm程度のブレードが使用されるので、半導体デバイスダイシング用粘着テープの基材フィルム10の厚さは、好ましくは30〜300μm、さらに好ましくは50〜250μmである。
【0025】
各樹脂フィルム層の厚さについては、粘着剤層に接する樹脂フィルム層2を完全に分断することで本発明の効果が発揮されるため、粘着剤層に接する樹脂フィルム層2の厚さは基材フィルム10全体の厚さに対して、好ましくは20〜40%、さらに好ましくは25〜35%である。
【0026】
上述の関係性を満たせば基材樹脂フィルム層数は2層に限らず、3層以上とすることができる。
図2は、本発明の半導体デバイスダイシング用粘着テープ好ましい他の一実施形態が模式的に示す図である。
この場合においては、半導体デバイスダイシング用粘着テープ200の基材フィルム30は、最外層の樹脂フィルム層31と粘着剤層に接する樹脂フィルム層33とに挟まれた中間樹脂フィルム層32の3層で構成される。この樹脂フィルム層32の融点が、粘着剤層に接する樹脂フィルム層33を構成する樹脂の融点よりも高く構成する。最外層の樹脂フィルム層31は、フィルム層同士の密着性に問題が生じなければ特に制限はないが、樹脂フィルム層31は樹脂フィルム層32と同じ樹脂を適用することが好ましい。
好ましくは粘着剤層に接する樹脂フィルム層32の厚さが基材樹脂フィルム層の20〜40%であればよい。
【0027】
粘着剤層20を構成する放射線硬化型粘着剤としては、例えば、特公平1−56112号公報、特開平7−135189号公報等に記載のものが好ましく使用されるが、これらに限定されることはない。放射線により硬化し三次元網状化する性質を有すればよく、例えば通常のゴム系あるいは(メタ)アクリル系の感圧性ベース樹脂(ポリマー)に対して、分子中に少なくとも2個の光重合性炭素−炭素二重結合を有する低分子量化合物(以下、光重合性化合物という)および光重合開始剤が配合されてなるものが使用することができる。
ここで、放射線とは、紫外線のような光線、または電子線のような電離性放射線を意味する。「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」又は「メタクリル」のいずれか、または両方を意味する。
【0028】
上記のゴム系あるいはアクリル系のベース樹脂は、天然ゴム、各種の合成ゴムなどのゴム系ポリマー、あるいはポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとこれと共重合可能な他の不飽和単量体との共重合物などの(メタ)アクリル系ポリマーが使用することができる。
(メタ)アクリル系ポリマーは、特に制限されないが、重量平均分子量が10万〜100万、ガラス転移点が−50〜0℃の範囲にすることができる。
【0029】
また上記の粘着剤中に、イソシアネート系硬化剤を混合することにより、初期の接着力を任意の値に設定することができる。このような硬化剤としては、具体的には多価イソシアネート化合物、たとえば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、リジンイソシアネートなどが用いられる。
硬化剤の含有量は、所望の粘着力に応じて調整すれば良く、粘着剤の前記ベース樹脂共重合体100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、さらに好ましくは0.1〜5質量部である。
【0030】
放射線硬化型粘着剤は、粘着剤中に光重合開始剤を混入することにより、放射線照射による重合硬化時間ならびに放射線照射量を少なくなることができる。
このような光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノンなどが挙げられる。
粘着剤層20の厚さは、適用しようとする被着体である基材により適宜設定することができ、特に制限されないが、好ましくは5〜30μm、さらに好ましくは10〜25μmである。
【0031】
また、上記のような粘着剤層中に光重合性化合物及び光重合開始剤を含ませることによって、放射線を照射することにより硬化し、粘着剤の粘着力を低下させて、被着体から接着剤層を剥離しやすくすることができる。
【0032】
粘着剤層20の形成は、通常のダイシングテープ同様に基材上に粘着剤を塗工して製造することができる。
【0033】
また好ましくは、上記半導体デバイスダイシング用粘着テープの引き裂き強さ、JIS K7128−1にて規定された試験方法に基づき、70〜95N/mmである。
この範囲では、半導体デバイスの貼合時や引き伸ばし時に破断することなく、ブレードの磨耗量を低減することができる。
すなわち、引き裂き強さが95N/mmを超える場合は、ダイシングの際のブレードへの負荷が大きくなり磨耗量を増加するおそれがある。一方、70N/mm未満の場合は、半導体デバイスの貼合時や取扱い時の引き伸ばし時に破断してしまうおそれがある。
【0034】
このようにして形成される半導体デバイスダイシング用粘着テープを、一括モールド封止パッケージおよびリングフレームの下面にダイシング用粘着テープの接着剤層に貼着させ、一括モールド封止パッケージまたはリングフレームに固定される。ダイシング用粘着テープは、予めリングフレームの下面に貼着させ、その後、一括モールド封止パッケージをダイシング用粘着テープに貼着させてもよい。そして、固定した半導体デバイスのダイシングを行うに際し、基材フィルムの1枚目となる粘着剤層に接する樹脂フィルム層2,33をフルカットする。
これにより、ダイシングブレードの磨耗量を抑制しつつ良質な半導体チップを作製することができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
<粘着剤層を構成する樹脂組成物>
粘着剤層を構成する樹脂組成物として、以下のA、Bを用いた。
(粘着剤層を構成する樹脂組成物A)
アクリル系ベースポリマー(2−エチルヘキシルアクリレート、メチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートからなる共重合体、重量平均分子量30万、ガラス転移点=−35℃)100質量部に対して、ポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)2質量部、光重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物としてテトラメチロールメタンテトラアクリレート50質量部、および光重合開始剤として日本チバガイギー社製のイルガキュアー184(商品名)を、0.5質量部加えて混合し、放射線硬化性の粘着剤樹脂組成物Aを調製した。
【0037】
(粘着剤を構成する樹脂組成物B)
ブチルアクリレート(79質量%)、メタクリル酸(1質量%)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(20質量%)からなるアクリル系共重合体100質量部に、光重合性炭素−炭素二重結合および官能基を有する化合物として、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工社製、商品名カレンズMOI)0.2質量部を反応させて、主鎖の繰り返し単位に対して放射線硬化性炭素−炭素二重結合含有基を有するアクリル系単量体部を有する残基を結合した重合体を得た。この重合体の重量平均分子量は60万であった。ここで、重量平均分子量は、テトラヒドロフランに溶解して得た1%溶液を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(ウオータース社製、商品名150−C ALC/GPC)により測定した値をポリスチレン換算して算出したものである。上記重合体100質量部に対して、ポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)を0.5質量部、および光重合開始剤として日本チバガイギー社製のイルガキュアー184(商品名)を0.5質量部加えて混合し、放射線硬化性の粘着剤樹脂組成物Bを調製した。
【0038】
<基材フィルムを構成する樹脂組成物>
基材フィルムを構成する樹脂組成物として、以下の樹脂C〜Jを用いた。
(樹脂C)ポリプロピレン プライムポリマー社製 製品名「F724NP」 融点146℃
(樹脂D)ポリプロピレン サンアロマー社製 製品名「PF724S」 融点150℃
(樹脂E)ポリプロピレン サンアロマー社製 製品名「PC412A」 融点158℃
(樹脂F)ポリプロピレン プライムポリマー社製 製品名「F327」 融点138℃
(樹脂G)低密度ポリエチレン 日本ユニカー社製 製品名「NUC−8007」 融点108℃
(樹脂H)直鎖状低密度ポリエチレン 社製 製品名「0434N」 融点117℃
(樹脂I)エチレン−酢酸ビニル共重合体 日本ユニカー社製 製品名「NUC−3758」 融点93℃
(樹脂J)エチレン−メタクリル酸共重合体 三井デュポンポリケミカル社製 製品名「N0908C」 融点99℃
【0039】
樹脂C〜樹脂Jを表1の構成に調整して、2軸混練機にて約200℃でフィルム押出成形し、厚さの合計が150μmで、各基材樹脂フィルム層を製造した。次に表1に示すように、各々の基材樹脂フィルム層の粘着剤層に接する層に、上記の粘着剤を、乾燥後の厚さが20μmになるように塗工して、粘着剤層を形成し、図2のような構造の実施例1〜5、比較例9,10、図1のような構造の実施例6〜8、比較例1〜8の半導体デバイスダイシング用粘着テープを製造した。
【0040】
(引裂き強さ)
実施例1〜8および比較例1〜10の半導体デバイス用粘着シートを用いて、JIS K7128−1に従い、試験片を作製し、引き裂き強さを測定した。試験片は、MD、TD方向でそれぞれn=5を作成し、その最大値と最小値を試験結果として表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
そして、リングフレームに、実施例1〜8および比較例1〜10の半導体ダイシング用粘着テープを貼合し、リングフレーム中央部に、幅50mm、長さ150mm、厚さ500μmの一括封止型パッケージを固定した。その後、ダイシング装置(DISCO社製、DAD−340(商品名))を使用して、チップサイズが6mm角となるようにダイシングブレード(三菱マテリアル社製レジンボンドブレードSDC230−R100IP05(商品名)、60×0.32×40)によりパッケージダイシングを行った。
ダイシング条件は、回転丸刃回転数:30000rpm、切削速度:100mm/s、切削水流量はブレードクーラー:2L/min、シャワー:1L/min、スプレー:1L/minとした。また、ダイシングブレードがパッケージダイシングテープに切り込む深さは90μmとなるように、ダイシングを行った。
【0043】
以下の試験を行い、その性能を評価した。その結果を表2に示す。
(ブレード磨耗量)
実施例1〜8および比較例1〜10において、上記加工後、ブレード磨耗量を測定した。ブレード磨耗量が10μm/m未満である場合「○」、10μm/m以上である場合「×」とした。
【0044】
(ダイシング後のチップ品質)
実施例1〜8および比較例1〜10において、上記加工後、チップに欠け、バリがないかを確認した。チップ欠け、バリがない場合は「○」、少しでもチップ欠け、バリがある場合は「×」とした。
【0045】
【表2】

【0046】
表2に示すように、比較例1〜10の半導体デバイス用粘着シートは、ブレード磨耗量およびダイシング後のチップ品質の維持を両立できなかったのに対し、実施例1〜8の半導体デバイス用粘着シートは、ブレード磨耗量およびダイシング後のチップ品質の維持を両立できた。
【符号の説明】
【0047】
1,31 最外層の樹脂フィルム層
2,33 粘着剤層に接する樹脂フィルム層
10,30 基材樹脂フィルム
20 粘着剤層
32 中間樹脂フィルム層
100,200 半導体デバイスダイシング用粘着テープ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム上に放射線硬化型粘着剤層を形成してなる半導体デバイスダイシング用粘着テープであって、
前記基材フィルムが2層以上の基材樹脂フィルム層からなり、前記粘着剤層側に隣接する基材樹脂フィルム層の融点が100〜120℃であり、該粘着剤層側の基材樹脂フィルム層と前記粘着剤層と逆側で隣接する基材樹脂フィルム層の融点が140〜150℃であることを特徴とする半導体デバイス用ダイシング加工用粘着テープ。
【請求項2】
前記粘着剤層側に隣接する基材樹脂フィルム層が低密度ポリエチレンもしくは直鎖状低密度ポリエチレンを含み、粘着剤層と逆側に隣接する基材樹脂フィルム層がポリプロプレンを含むことを特徴とする請求項1に記載の半導体デバイス用ダイシング加工用粘着テープ。
【請求項3】
前記粘着剤層側に隣接する基材樹脂フィルム層の厚さが、基材樹脂フィルム全体厚さに対して20〜40%であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体デバイス用ダイシング加工用粘着テープ。
【請求項4】
放射線硬化前のJIS K 7128−1に基づく引裂き強さが70〜95N/mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体デバイスダイシング用粘着テープ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体デバイスダイシング用粘着テープを半導体デバイスに貼合し、該貼合した半導体デバイスをダイシング加工する半導体デバイスの加工方法であって、
前記基材フィルムの、前記粘着剤層側に隣接する基材樹脂フィルム層をフルカットすることを特徴とする半導体デバイスの加工方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−89926(P2013−89926A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232278(P2011−232278)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【特許番号】特許第5019656号(P5019656)
【特許公報発行日】平成24年9月5日(2012.9.5)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】