説明

半導体デバイス用洗浄剤及びそれを用いた半導体デバイスの製造方法

【課題】半導体デバイス製造工程における平坦化研磨工程後の洗浄工程に用いられる洗浄剤であって、半導体デバイス表面、特に、表面に銅配線が施された半導体デバイスの表面における有機物汚染やパーティクル汚染を、銅配線の腐食を引き起こすことなく除去することができ、基板表面を高清浄化しうる洗浄剤及びそれを用いた半導体デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】ポリカルボン酸およびジエチレントリアミン五酢酸を含有し、SiOCを構成成分として含有する誘電率が3.0以下の絶縁膜上に銅拡散防止用バリア膜及び銅配線を備える半導体デバイスの化学的機械的研磨工程の後に用いられる洗浄剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの製造工程における化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing:以後「CMP」と呼ぶ)による平坦化工程後の半導体デバイスの洗浄に使用される洗浄剤及びそれを用いた半導体デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロプロセッサー、メモリー、CCDなどの半導体デバイスや、TFT液晶などのフラットパネルディスプレイデバイスの製造工程では、シリコンや酸化シリコン(SiO)、ガラス等の基板表面に10〜100nm程度の微細な寸法でパターン形成や薄膜形成を行っており、製造の各工程において該基板表面の微量な汚染を低減することが極めて重要な課題となっている。
【0003】
基板表面の汚染の中でも特にパーティクル汚染、有機物汚染及び金属汚染はデバイスの電気的特性や歩留まりを低下させるため、次工程に持ち込む前に極力低減する必要がある。このような汚染の除去には、洗浄液による基板表面の洗浄が一般的に行われている。しかしながら、高い洗浄性能を追及することで反応性の高い化合物を用いると、銅配線の腐食が発生し、デバイスの信頼性に対して大きな問題となる。したがって、高清浄な表面を、副作用なしで、短時間で再現性よく、低コストで洗浄することが求められる。この要求レベルは、近年のデバイスの高集積化、低価格化と共に益々厳しくなっている。
【0004】
半導体集積回路(以下LSIと記す)に代表される半導体デバイスの製造においては、基板上に絶縁膜や金属膜等の層を多層積層した多層積層構造が形成される。近年、デバイスの高速化・高集積化のために、配線として抵抗値の低い新金属材料(Cu等)、層間絶縁膜として低誘電率(Low−k)材料が用いられ、比誘電率が3.5〜2.0程度の低誘電率層間膜(例えば、有機ポリマー系、メチル基含有シリカ系、H−Si含有シリカ系、SiOF系、ポーラスシリカ系、ポーラス有機系等)等を含む層間絶縁膜(ILD膜)や配線に用いられる銅などの金属膜を堆積後、生じた凹凸をCMPによって平坦化処理を行い、平坦となった面の上に新たな配線を積み重ねて行く工程が一般に行われる。
【0005】
工程間の洗浄には、従来は、酸性またはアルカリ性溶液と、過酸化水素と、を混合したRCA洗浄が用いられてきた。これらの洗浄剤によれば、絶縁膜上に付着した除去すべき不動態としての酸化銅のみならず、配線の金属銅をも溶解してしまい、配線の腐食や断線を引き起こす懸念があり好ましくない。また、低誘電率絶縁膜の多くは表面が疎水性のため、洗浄液をはじいてしまうことから清浄性が低下してしまう。さらにCMP工程後の洗浄においては、CMPに使用するスラリー(研磨粒子)が配線や低誘電率絶縁膜の表面に残存し、汚染するという問題があった。
【0006】
また、LSIに代表される半導体デバイスの製造においては、配線金属である銅の絶縁膜層への拡散を制御する為、Ta、TaN、Ti、TiN、Ruなどのバリア金属層を積層した多層積層構造が形成される。近年、デバイスの高速化・高集積化のために、新しいバリア金属材料としてMn等の熱拡散による自己形成バリア材料の適用が注目されているが、配線銅金属とバリアメタルの間に酸化銅が形成されやすく、洗浄工程での酸化銅溶解による腐食が新たな問題となっていた。
【0007】
さらに、低誘電率のポーラスシリカ系、ポーラス有機系等のポーラス絶縁膜を用いた場合には研磨により損傷を受けると研磨工程後に絶縁膜に水分が浸透し、絶縁膜と配線との界面に酸化銅が形成されやすくなり、酸化銅が形成された場合、従来の洗浄剤を用いた洗浄工程に付すると酸化銅が溶解する懸念があるといった問題があった。
【0008】
CMP工程後に半導体デバイス表面に付着、残存したパーティクルの除去には、半導体表面とパーティクルとが静電的に反発し合うアルカリ性の洗浄剤が一般に有効であるとされており、例えば、特定の界面活性剤とアルカリ又は有機酸を含む洗浄剤が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、この洗浄剤では、基板表面に付着した、被研磨体に起因する金属や基板材料、さらには、有機物残渣や砥粒微粒子などを効率よく除去するといった観点からは、更なる改良が望まれていた。
【0009】
また、有機物残渣や砥粒微粒子などを効率よく除去するといった観点から、特定の有機酸および界面活性剤を含む酸性の洗浄液が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、この洗浄液では、疎水性の低誘電率絶縁膜や銅配線を施した半導体デバイス表面を、銅配線の腐食や酸化を抑制しつつ、表面の不純物を効果的に除去しうるといった観点からは、更なる改良が望まれていた。
【0010】
上記観点から、ベンゾトリアゾールのような腐食防止効果のある素材を添加し、銅配線の腐食を低減させる洗浄剤も提案されているが(例えば、特許文献3参照。)、残渣等の不純物除去、または銅表面に残存する保護膜による影響の観点からはあまり好ましくない。さらに、アンモニアを含有する第1の洗浄液と、錯化剤や界面活性剤を含有する第2の洗浄液を用いて、2段階洗浄する方法が提案されているが(例えば、特許文献4参照。)、洗浄工程が2工程と煩雑であり、金属の腐食抑制についても改良の余地があった。
【0011】
したがって疎水性の低誘電率絶縁膜や、銅配線を施した半導体デバイス表面を、銅配線の腐蝕や酸化を抑制しつつ、表面の不純物を効果的に除去しうる洗浄剤が求められているのが現状である。
【特許文献1】特開2003−289060号公報
【特許文献2】特開平10−72594号公報
【特許文献3】特開2005−307187号公報
【特許文献4】特開2000−91277号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記問題点を考慮してなされた本発明の目的は、半導体デバイス製造工程における平坦化研磨工程後の洗浄工程に用いることで、半導体デバイス表面、特に、SiOCを構成成分として含有する誘電率が3.0以下の低誘電率絶縁膜表面に銅配線が施された半導体デバイスの表面を、銅配線の腐食を引き起こすことなく、有機物汚染、パーティクル汚染を除去することができ、基板表面を高清浄化しうる洗浄剤を提供することにある。また、本発明のさらなる目的は、前記半導体デバイス用の洗浄液を用いることで、平坦化工程後の汚染物質が銅配線を腐食させることなく除去された高清浄の半導体デバイスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記のCMP工程後に用いられる洗浄剤に係る問題点について鋭意検討した結果、ポリカルボン酸、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)を洗浄剤成分として用いることにより、問題を解決できることを見出して本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の構成は、下記の通りである。
【0014】
<1>ポリカルボン酸およびジエチレントリアミン五酢酸を含有し、SiOCを構成成分として含有する誘電率が3.0以下の絶縁膜上に銅拡散防止用バリア膜及び銅配線を備える半導体デバイスの化学的機械的研磨工程の後に用いられる洗浄剤。
<2>前記銅拡散防止用バリア膜がマンガンを含むことを特徴とする<1>記載の洗浄剤。
<3>前記マンガンを含む銅拡散防止用バリア膜が、マンガン自己形成層により形成されたものである<2>記載の半導体基板表面洗浄剤。
<4>前記銅拡散防止用バリア膜が、Ti、TiN、Ta、TaN、及び、Ruから選択される少なくとも1種を含む<1>記載の半導体基板表面洗浄剤。
<5>前記ポリカルボン酸が、蓚酸、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、及び酒石酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である<1>に記載の洗浄剤。
<6>pHが1以上5以下である請求項<1>〜<5>のいずれかに記載の洗浄剤。
<7>さらにアニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤から選択される1種以上の界面活性剤を含有する<1>〜<6>のいずれかに記載の洗浄剤。
<8>SiOCを構成成分として含有する誘電率が3.0以下の絶縁膜を形成する工程、該絶縁膜上に銅拡散防止用バリア膜を形成する工程、該銅拡散防止用バリア膜上に銅配線を形成して、配線を有する積層体を形成する工程、該積層体表面を、砥粒および酸化剤を含有する金属用研磨液を用いて化学的機械的研磨して半導体デバイスを形成する工程、及び、該半導体デバイスの表面を、<1>〜<7>のいずれか1項に記載の洗浄剤で洗浄する工程、を順次有する半導体デバイスの製造方法。
【0015】
<9> SiOCを構成成分として含有する誘電率が3.0以下の絶縁膜を形成する工程、該絶縁膜上に銅及びマンガンを含有する配線を形成する工程、該銅及びマンガンを含有する配線を加熱し、配線中のマンガンを配線表面に集積させて、マンガン自己形成法により形成された銅拡散防止用バリア膜を有する積層体を形成する工程、該積層体表面を、砥粒および酸化剤を含有する金属用研磨液を用いて化学的機械的研磨して半導体デバイスを形成する工程、及び、該半導体デバイスの表面を、<1>〜<7>のいずれか1項に記載の洗浄剤で洗浄する工程、を順次有する半導体デバイスの製造方法。
【0016】
なお、本発明の洗浄剤が適用される被洗浄物である半導体デバイスは、半導体デバイス製造工程における化学的機械的研磨工程に付された基板であり、基材表面に金属配線が形成された単層基板、その表面に層間絶縁膜などを介して配線が形成されてなる多層配線基板のいずれでもよい。
本発明の洗浄液は、特に金属配線やポーラス低誘電率(Low−k)絶縁膜などを表面の一部あるいは全面に有する半導体デバイス用基板の洗浄に有用である。なお、本発明においては、誘電率が3.0以下の絶縁膜をLow−k膜と称し、誘電率が2.7以下の微細な空孔を有する絶縁膜をポーラスLow−k膜と称する。
【0017】
本発明の作用は明確ではないが以下のように推定される。
即ち、CMP後に用いる洗浄液への添加剤として、ポリカルボン酸、BTAのような不動体膜形成剤を含む洗浄液を用いると、疎水性の低誘電率絶縁膜や、銅配線を施した半導体デバイス表面を、銅配線の腐食や酸化を抑制しつつ効率よく洗浄できるという効果が期待される。
しかしながら近年の配線の微細化、多様なバリアメタル金属種やポーラスLow−k絶縁膜の適用に伴い、銅配線金属中に形成される酸化銅の溶解による腐食低減効果と洗浄性の向上の両立が期待されている。ベンゾトリアゾール(BTA)などの一般的な不動態膜形成剤では、銅金属配線表面にその成分が残存してしまい、有機酸と界面活性剤との併用においても、上述した腐食低減効果と洗浄性の向上の両立という効果が得られ難い。特にLow−k膜を有する基板を用いる場合には、Low−k膜の微細な空孔に水やその他の成分が侵入することによる銅配線の酸化、腐食に対する懸念は一層高くなり、より高い腐食防止能が要求される。
本発明ではこのような不動態膜形成剤の代わりに、有機酸であるポリカルボン酸及びジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)を適用することにより、DTPAが腐食防止化合物として機能するが、公知の腐食防止剤であるBTAなどとは異なり、ポリカルボン酸と組み合わせて用いることで、必要な腐食防止能を発現しつつ、有機残渣の除去性に優れ、さらに、銅金属配線表面への残存が抑制され、洗浄後の水洗により基板表面から速やかに除去されるために、低腐食および高清浄化の両立を達成したものと考えられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、半導体デバイス製造工程における平坦化研磨工程後の洗浄工程に用いることで、半導体デバイス表面、特に、SiOCを構成成分として含有する誘電率が3.0以下の低誘電率絶縁膜表面に銅配線が施された半導体デバイスの表面を、銅配線の腐食を引き起こすことなく、有機物汚染、パーティクル汚染を除去することができ、基板表面を高清浄化しうる洗浄剤を提供することができる。
また、半導体デバイス用の洗浄液を用いることで、平坦化工程後の汚染物質が銅配線を腐食させることなく除去された高清浄の半導体デバイスの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の具体的態様について説明する。
〔洗浄液〕
本発明の洗浄剤は、ポリカルボン酸、ジエチレントリアミン五酢酸(以下、適宜、DTPAと称する)を含有することを特徴とし、半導体デバイス製造工程における化学的機械的研磨工程の後に、半導体デバイス、特に表面に銅配線が施されたデバイス表面を洗浄するのに好適に使用される。この洗浄液は、SiOCを構成成分として含有する誘電率が3.0以下の絶縁膜上に銅拡散防止用バリア膜及び銅配線を備える半導体デバイスに用いてその効果が著しい。
以下、本発明の洗浄剤に含まれる各成分について順次説明する。
【0020】
<ジエチレントリアミン五酢酸>
本発明の洗浄剤は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)を含有する。DTPAは、洗浄液中で腐食防止化合物として作用し、洗浄中の銅配線の腐食を抑制するが、その構造に起因して、銅配線への吸着、残存が抑制され、洗浄後は速やかに除去される。
【0021】
本発明におけるDTPAの含有量は、洗浄剤の全質量に対して、0.00001g/L〜50g/Lであり、好ましくは0.0001g/L〜40g/Lであり、より好ましくは0.001g/L〜30g/Lであり、更に好ましくは0.01g/L〜20g/Lである。
上記範囲とすることで、銅配線の腐食を引き起こすことなく、有機物汚染、パーティクル汚染を、短時間で除去することができ、基板表面を高清浄化し得る。
【0022】
<ポリカルボン酸>
本発明の洗浄剤は、ポリカルボン酸を含有する。ポリカルボン酸を含有することで、金属不純物及び金属錯体除去性が向上する。
【0023】
本発明におけるポリカルボン酸は、分子内に少なくとも2つのカルボキシル基を含む化合物及びそれらの塩であれば、いずれも使用することができるが、好ましくは分子内に2つ〜8つのカルボキシル基を含む化合物またはその塩であり、より好ましくは分子内に2つ〜6つのカルボキシル基を含む化合物またはその塩であり、更に好ましくは分子内に2つ〜4つのカルボキシル基を含む化合物またはその塩である。
【0024】
本発明に使用しうるポリカルボン酸としては、例えば、蓚酸、マロン酸、マレイン酸、コハク酸等のジカルボン酸類;酒石酸、リンゴ酸、クエン酸などのオキシポリカルボン酸類:及びそれらの塩などが挙げられる。
【0025】
上記ポリカルボン酸の中でも、素材の安全性、コスト、洗浄性能の観点からは、蓚酸、クエン酸、マロン酸、マレイン酸、リンゴ酸、及び酒石酸が好ましく、蓚酸、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、及び酒石酸がより好ましい。
【0026】
本発明の洗浄剤には、ポリカルボン酸は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の割合で併用してもよい。
本発明の洗浄剤におけるポリカルボン酸の含有量としては、洗浄効率及び銅配線への影響の低減の両立という観点からは、洗浄剤の全質量に対して、0.05〜300g/Lが好ましく、特に好ましくは0.1〜100g/Lである。
【0027】
本発明の洗浄液には、上記必須成分に加え、本発明の効果を損なわない限りにおいて、目的に応じて種々の添加剤を併用することができる。以下、併用可能な添加剤について述べる。
<その他の有機酸>
本発明の洗浄剤は、ポリカルボン酸以外の他の有機酸を含有することができる。他の有機酸とは、水中で酸性(pH<7)を示す、ポリカルボン酸以外の有機化合物であって、カルボキシル基、スルホ基、フェノール性ヒドロキシル基、メルカプト基等の酸性の官能基を持つ有機化合物が挙げられる。
他の有機酸を用いる場合の含有量は、前記ポリカルボン酸の含有量に対して等量以下であることが好ましい。
【0028】
<界面活性剤>
本発明の洗浄剤は、基板への濡れ性良化とそれに伴う洗浄性向上の観点から、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤から選択される界面活性剤を含有することが好ましい。
これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を組合せてもよい。2種以上を組み合わせる場合には、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤を併用してもよい。
なお、カチオン性界面活性剤を添加すると、界面活性剤のカチオン部と、併用する有機酸とが相互作用し、有機酸の機能・効果が低減する虞がある。このため、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤または、それらの組合せからなる界面活性剤を用いることが好ましい。
以下それぞれの界面活性剤について説明する。
【0029】
《アニオン性界面活性剤》
本発明に用いうるアニオン性界面活性剤としては、例えば、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩が挙げられる。
カルボン酸塩として、石鹸、N−アシルアミノ酸塩、ポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド;
スルホン酸塩として、アルキルスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルスルホン酸塩;
硫酸エステル塩として、硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩;
リン酸エステル塩として、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテルリン酸塩等を挙げることができる。
【0030】
また、本発明における好ましいアニオン性界面活性剤としては、分子中に脂肪族炭化水素構造或いは芳香族環構造を少なくとも1つ有するものが挙げられ、このようなアニオン性界面活性剤が有してもよい脂肪族炭化水素としては、アルキル基、アルキルエーテル基を含む構造等が挙げられ、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜30のアルキルエーテル基が好ましい。これらのアルキル基、アルキルエーテル基は、さらにアルキニル基や水酸基で置換されていてもよい。
また、芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、フェナントレン環、クリセン環またはピレン環等が挙げられる。これらの芳香族環構造は、置換基としてアルキル基を有していてもよい。
【0031】
本発明に好適に用いうるアニオン性界面活性剤の例としては、例えば、アルキルスルホン酸及びその塩、アルキルエーテルサルフェート及びその塩、アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩、アルキルナフタレンスルホン酸及びその塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸及びその塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸及びその塩、フェノールスルホン酸ホルマリン縮合物およびその塩、またはアリールフェノールスルホン酸ホルマリン縮合物およびその塩、等が挙げられる。
【0032】
上記に列挙したアニオン性界面活性剤において、芳香族環に導入しうるアルキル基としては、直鎖型及び分岐型のいずれであってもよく、炭素数2〜30のアルキル基が好ましく、炭素数3〜22のアルキル基がさらに好ましく、例えば、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
【0033】
また、これらのアニオン性界面活性剤が塩構造を採る場合、該塩構造としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩、テトラメチルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0034】
アニオン性界面活性剤のより具体的な例としては、例えば、ペンタデカンスルホン酸(n=15)、ドデシルエーテルスルホン酸(n=12)、ドデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸、ドデシルジフェニルエーテルスルホン酸、ジフェニルエーテルジスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、及びこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩などが挙げられる。
【0035】
本発明に用いうるアニオン性界面活性剤の他の例としては、分子内に脂肪族炭化水素構造或いは芳香族環構造に加えて、例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、フルオロアルキル基、アセチレン基、水酸基などの置換基をさらに有する界面活性剤が挙げられる。そのより具体的な例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートナトリウム、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルフォスフェート、フェノールスルホン酸ホルマリン縮合物等が挙げられる。
【0036】
上記したアニオン性界面活性剤の中でも、平均炭素数約15のアルキルスルホン酸、炭素数10〜15のアルキルエーテルサルフェート、ドデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルフォスフェートがより好ましい。
【0037】
アニオン性界面活性剤としては市販品を用いてもよく、例えば、パイオニンA−32−B(アルキルスルホン酸、竹本油脂(株)製)、パイオニンA−28−B(ポリオキシエチレン(3EO)アルキル(12,13)エーテルサルフェートナトリウム塩、竹本油脂(株)製)、パイオニンA−44−TF(トリイソピロピルナフタレンスルホン酸、竹本油脂(株)製)、ペレックスNBL(アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、花王(株)製)、ネオペレックスGS(ドデシルベンゼンスルホン酸、花王(株)製)、ネオペレックスGS‐15(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、花王(株)製)、ペレックスSS−L(アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、花王(株)製)、デモールNL(β‐ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、花王(株)製)等を好適に用いることができる。
【0038】
《ノニオン性界面活性剤》
ノニオン性界面活性剤としては、エーテル型、エーテルエステル型、エステル型、含窒素型が挙げられ、エーテル型として、ポリオキシエチレンアルキルおよびアルキルフェニルエーテル、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルが挙げられる。
【0039】
エーテルエステル型として、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテルが挙げられる。
エステル型として、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリンエステル、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル、プロピレングリコールエステル、ショ糖エステルが挙げられる。
含窒素型として、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミド等が挙げられる。
その他に、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などが挙げられる。
【0040】
本発明の洗浄剤における界面活性剤の含有量は、総量として、洗浄剤の1L中、0.001g〜10gとすることが好ましく、0.01g〜1gとすることがより好ましく0.02g〜0.5gとすることが更に好ましい。
【0041】
<キレート剤>
本発明の洗浄剤は、DTPA以外のキレート剤を含有してもよい。
キレート剤としては、カルシウムやマグネシウムの沈澱防止剤である汎用の硬水軟化剤やその類縁化合物を用いることができ、必要に応じてこれらを2種以上併用してもよい。キレート剤の添加量は混入する多価金属イオンなどの金属イオンを封鎖するのに充分な量であればよく、一般的には、洗浄剤中に、5ppm〜10000ppm程度である。
【0042】
キレート剤としては、例えば、アミノカルボン酸類又はアミノカルボン酸塩、ポリアミノカルボン酸類又はポリアミノカルボン酸塩、モノアミノポリカルボン酸類又はモノアミノポリカルボン酸塩が挙げられる。
【0043】
アミノカルボン酸類としてはグリシン、L−アラニン、β−アラニン、L−2−アミノ酪酸、L−ノルバリン、L−バリン、L−ロイシン、L−ノルロイシン、L−イソロイシン、L−アロイソロイシン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、サルコシン、L−オルニチン、L−リシン、タウリン、L−セリン、L−トレオニン、L−アロトレオニン、L−ホモセリン、L−チロシン、3,5−ジヨード−L−チロシン、β−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−L−アラニン、L−チロキシン、4−ヒドロキシ−L−プロリン、L−システィン、L−メチオニン、L−エチオニン、L−ランチオニン、L−シスタチオニン、L−シスチン、L−システィン酸、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸等が挙げられる。
【0044】
ポリアミノカルボン酸類としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等が挙げられる。モノアミノポリカルボン酸類としてはN−2−ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、L−アスパラギン酸−N,N−二酢酸等を挙げることができ、さらには、これらのアンモニウム塩やアルカリ金属塩等を挙げることができる。
【0045】
本発明の洗浄剤は水溶液である。即ち、前記した必須成分または所望により併用されるその他の成分が水系の溶媒中に溶解してなるものが好ましい。溶媒として使用される水としては、効果の観点から、それ自体、不純物を含まないか、その含有量を極力低減させた脱イオン水や超純水を用いることが好ましい。また、同様の観点から、水の電気分解によって得られる電解イオン水や、水に水素ガスを溶存させた水素水などを使用することもできる。
【0046】
〔洗浄剤のpH〕
本発明の洗浄剤のpHは、特に制限はなく、pH0.5〜12程度の範囲において、洗浄対象となるデバイスの特性、除去しようとする不純物の種類などにより、適宜選択して調整することができるが、被洗浄面(半導体デバイス用基板の表面)の腐食の防止、金属汚染の除去を充分行いうる観点から、pHは5以下であることが好ましい。洗浄液のpHは、より好ましくは1以上5以下であり、更に好ましくは1以上3以下である。
pHを上記範囲とすることで、銅金属表面へのパーティクルの吸着を抑制し、金属汚染の除去を充分に行うことができ、さらに銅金属表面の腐食を抑制することができる。
【0047】
pH値は、有機酸を添加することにより調整することができる。有機酸としては、例えば、水溶性のものが望ましく、以下の群から選ばれたものがより適している。ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2−メチル酪酸、n−ヘキサン酸、3,3−ジメチル酪酸、2−エチル酪酸、4−メチルペンタン酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、イミノ二酢酸、ジエチルヒドロキシルグリシン等を用いることができる。
【0048】
また、本発明の洗浄液においては、一般的なpH調整剤を使用することも可能であるが、金属、絶縁膜へのダメージや、無機アルカリ中の金属による汚染を抑制するという観点からは、一般に用いられるpH調整剤、例えば、酸では硝酸、硫酸などの無機酸、アルカリでは水酸化カリウム、アンモニアなどのpH調整剤は使用しないことが好ましい。
【0049】
〔洗浄液を適用する半導体デバイス〕
本発明の洗浄剤は、表面に金属又は金属化合物層、或いは、これらで形成された配線を有する半導体デバイス用基板であって、SiOCを構成成分として含有する誘電率が3.0以下の絶縁膜を備えるものの洗浄に使用される。本発明の洗浄剤は、銅配線に対して腐食や酸化を生じさせる懸念が低いことから、銅配線を表面に有する半導体デバイス用基板の洗浄に特に好適に使用することができる。
また、一般的な洗浄剤では、SiOCを構成成分として含有する誘電率が3.0以下の絶縁膜を有する半導体デバイスに使用すると、前記のように腐食発生もしくは有機物残渣の残存の懸念があるところ、本発明の洗浄剤では、ポリカルボン酸とDTPAを含有するために腐食発生及び有機物残渣の残存の懸念がなく、従ってこのような洗浄対象に用いてその効果が著しい。
【0050】
本発明の洗浄液が適用される半導体デバイスは、SiOCを構成成分として含有する誘電率が3.0以下の絶縁膜上に銅拡散防止用バリア膜及び銅配線を備えることを特徴とする。
絶縁膜の誘電率は、フォーディメンジョンズ社製水銀プローブ及び横川ヒューレットパッカード製のHP4285ALCRメーターを用いて1MHzにおける容量値から算出できる。絶縁膜の誘電率は3.0以下であることを要し、2.8〜2.0であることがより好ましい。本発明の洗浄液は配線の腐食抑制能に優れることからこのような低誘電率の絶縁膜であって洗浄液の浸透しやすい多孔性膜(ポーラスlow−k膜)を有するデバイスにも好適である。
絶縁膜は、SiOCを構成成分として含み、誘電率が上記範囲であれば、特に制限はない。
【0051】
前記絶縁膜上に備えられる銅拡散防止用バリア膜は、銅又は銅合金からなる導体膜(配線)と層間絶縁膜との間に存在し、銅の拡散を防ぐための膜である。
バリア膜の材料としては、低抵抗のメタル材料であることが好ましく、具体的には、タンタル又はタンタル化合物、チタン又はチタン化合物、タングステン又はタングステン化合物、ルテニウム、マンガンなどから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、TiN、TiW、Ta、TaN、W、WN、Ru、Mnを含むことがより好ましく、なかでも、Ta、TaNが特に好ましい。
また、近年注目されるマンガンをバリア金属として含む態様も好ましい。特に、配線を構成する際に銅とマンガンとの合金を用いて、一定の条件下で加熱することでマンガンが、配線表面に析出し、隣接する絶縁膜との密着性に優れたマンガンの薄層を銅配線の表面に形成することが知られており、このようにして形成されたマンガン自己形成層からなるバリア膜を有する態様も、本発明の洗浄液の研磨対象となる。マンガン自己形成層については、例えば、Journal of Applied Physics 102(4)、(2007年)043527等に詳細に記載されている。
バリア膜の厚さとしては、20〜30nm程度とすることが好ましい。
銅配線は、該バリア膜の表面に凹部が埋まるように形成された銅又は銅合金からなる導体膜からなる。
このような半導体デバイスが本発明の洗浄液の適用対象となる。
【0052】
〔半導体デバイスの製造方法〕
本発明の半導体デバイスの製造方法は、SiOCを構成成分として含有する誘電率が3.0以下の絶縁膜を形成する工程、該絶縁膜上に銅拡散防止用バリア膜を形成する工程、該銅拡散防止用バリア膜上に銅配線を形成して、配線を有する積層体を形成する工程、該積層体表面を、砥粒および酸化剤を含有する金属用研磨液を用いて化学的機械的研磨して半導体デバイスを形成する工程、及び、該半導体デバイスの表面を、前記した本発明の半導体デバイス用の洗浄剤で洗浄する工程と、を順次有することを特徴とする。
以下、本発明の半導体デバイスの製造方法における特徴的な工程である洗浄工程について詳細に説明する。
<洗浄工程>
本発明の半導体デバイスの製造方法における洗浄工程は、上述した本発明の洗浄剤を用いることを特徴とするものであり、半導体デバイス製造における化学的機械的研磨工程(CMP工程)に引き続いて実施されるものである。
より詳細には、半導体デバイスに形成された銅配線を、砥粒および酸化剤を含有する金属用研磨液を用いて化学的機械的研磨する工程を経て、該半導体デバイスの表面を平坦化した後に、前記本発明の半導体表面用洗浄剤を適用して、半導体デバイス表面に残存する有機残渣や砥粒、その他の不純物を洗浄除去する工程である。
【0053】
通常、CMP工程は、研磨液を研磨定盤上の研磨パッドに供給し、被研磨体である半導体デバイス用基板などの被研磨面と接触させて被研磨面と研磨パッドを相対運動させて研磨する工程である。
その後、実施される洗浄工程では、研磨を終了した半導体デバイス用基板を、スピンナーに配置し、本発明の洗浄剤を被研磨面及びその裏面に対し流量100〜2000ml/min.の条件で基板表面に供給し、室温にて10〜60秒間にわたり、ブラシスクラブする洗浄方法をとることが一般的である。
洗浄は、市販の洗浄槽を用いて行うこともでき、例えば、MAT社製ウェハ洗浄機(商品名:ZAB8W2M)を使用し、該装置に内蔵しているスクラブ部でPVA製ロールブラシを接触するスクラブ洗浄をすることにより行うこともできる。
【0054】
被研磨体である半導体デバイス用基板に用いられる金属としては、主としてW又はCuが挙げられる。近年、配線抵抗の低い銅を用いたLSIが開発されるようになった。
高密度化を目指す配線の微細化に伴って、銅配線の導電性や電子マイグレート耐性などの向上が必要となり、これらの高精細で高純度の材料を汚染させることなく高生産性を発揮し得る技術が求められている。
【0055】
表面にCuを有する基板、さらには、層間絶縁膜として低誘電率絶縁膜を有し、その表面に銅配線を有する基板の洗浄を行う工程としては、特に、Cu膜に対してCMPを行った後の洗浄工程、配線上の層間絶縁膜にドライエッチングによりホールを開けた後の洗浄工程が挙げられるが、これらの洗浄工程においては、表面に存在する不純物金属やパーティクル等を効率的に除去することが配線の純度、精度を保持するため特に重要である。そのような観点から、これらの洗浄工程において本発明の洗浄剤が好適に使用される。また、既述のごとく、本発明の洗浄剤は、銅配線に対して腐食や酸化を生じさせることがないことから、かかる観点からも本発明の洗浄剤が好適に使用される。
また、銅配線表面に吸着した不動態膜形成剤の残渣を効率よく除去するという目的にも本発明の洗浄剤が好適に使用される。
【0056】
なお、洗浄工程における不純物除去効果を確認するため、ウェハ上の異物を検出する必要があるが、本発明においては、異物を検出する装置として、Applied Materials technology社製の欠陥検査装置ComPLUS3およびApplied Materials technology社製Review SEM観察装置、SEM vision G3が好適に用いられる。
【0057】
本発明の製造方法を適用することで、CMP工程を完了した半導体デバイス用基板の表面における不純物金属、基板材料、層間絶縁膜の研磨屑を含む不純物無機材料、不動態膜形成剤の残渣を含む有機材料、砥粒などのパーティクル等を効率よく除去することができ、特に、高精度の配線を要求されるデバイスや、単層基板の平坦化後、新たに層間絶縁膜、及び、配線を形成する多層配線基板などを平坦化する際に、各工程においてそれぞれの不純物を効率よく除去することが必要なデバイスの洗浄に好適である。さらに、半導体デバイス用基板が銅配線を有する場合においても、銅配線に腐食や酸化を生じさせることがない。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明を説明する。本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0059】
<研磨液の調製>
・コロイダルシリカ(砥粒:平均粒子径30nm) 5g/L
・ベンゾトリアゾール(BTA) 1g/L
・グリシン 10g/L
純水を加えて全量1000mLとし、硝酸及びアンモニアを用いてpHを6.5に調整した。
研磨液には、研磨直前に30%過酸化水素(酸化剤)15ml/Lを加えた。
【0060】
<Cuウェハの研磨>
(研磨対象ウエハ)
実施例1では、基盤:8inch SEMATECH854 銅配線パターン付きシリコンウェハであって、Low−k膜(ブラックダイヤモンド(BD)(アプライドマテリアルズ社))膜を含むウエハを用いた。Low−k膜の誘電率は2.7であり、ポーラスLow−k膜である。
ウエハに用いる絶縁膜を、表1〜表3に記載の物性を有するものに代え、それぞれについて評価を行った。
−研磨条件−
8inch wafer研磨
研磨装置としてラップマスター社製装置「LGP−612」を使用し、下記の条件で、スラリーを供給しながら各ウェハに設けられた膜を研磨した。
基盤:8inch SEMATECH854 銅配線パターン付きシリコンウェハ
テ−ブル回転数:64rpm
ヘッド回転数:65rpm
(加工線速度=1.0m/s)
研磨圧力:140hPa
研磨パッド:ローム アンド ハース社製
品番IC−1400(K−grv)+(A21)
スラリー供給速度:200ml/分
【0061】
(実施例1)
<洗浄液の調製>
・クエン酸(有機酸): 200.0g/L
・DTPA(特定腐食防止化合物) 5.0g/L
・ドデシルベンゼンスルホン酸(界面活性剤) 5.0g/L
上記成分を混合して洗浄液の濃縮液を調製し、これをさらに純水で希釈して実施例1の洗浄液を得た。希釈倍率は、質量比で、洗浄液:純水=1:40とした。
【0062】
(実施例2〜22および比較例1〜10)
実施例1の洗浄液の調製において、有機酸、特定腐食防止化合物、界面活性剤を下記表1に記載の組成で混合し、下記表1の希釈倍率で希釈した他は、実施例1と同様にして、実施例2〜22および比較例1〜10の洗浄液を得た。
【0063】
<洗浄試験>
前記条件で研磨した銅膜付きシリコン基板について、上記の処方により調製された実施例1〜22および比較例1〜10の洗浄剤を使用して洗浄することにより洗浄試験を行った。
洗浄は、MAT社製ウェハ洗浄装置、ZAB8W2Mに内蔵しているスクラブ部でPVA製ロールブラシを接触するスクラブ洗浄をすることにより行った。洗浄液は、研磨基板上側に400ml/min、下側に400ml/minで25秒間流し、その後、純水(脱イオン水)を研磨基板上側に650ml/min、下側に500ml/minで35秒間流し、更に、上記装置に内蔵しているスピンドライ装置で30秒処理した。
<有機物残渣除去及び腐食防止性能評価>
前記実施例1〜22および比較例1〜10の各洗浄剤にて洗浄乾燥したCuウェハの表面に残るパーティクル及び有機残渣の除去及び腐食防止性能評価を行った。これら表面の状態の確認はApplied Materials technology社製の欠陥検査装置ComPLUS3を用い測定を行い、検出された欠陥からランダムに100個抽出し、Applied Materials technology社製Review SEM観察装置、SEM vision G3を用いてイメージ所得を行い、欠陥種類ごとに分類を行い、それぞれの欠陥種類の割合を求め、それぞれの欠陥種類についてウェハ上の個数を計算した。以下の基準で評価し、結果を下記表1〜表3に示す。
【0064】
−評価基準−
○:1cmあたりのウェハ上の有機物残渣数または腐食が、0又は0.1個未満
△:1cmあたりのウェハ上の有機物残渣数または腐食が、0.1個以上1個未満
×:1cmあたりのウェハ上の有機物残渣数または腐食が、1個以上
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
表1〜表3中、「希釈倍率」欄における洗浄液と純水との比は、質量基準である。
【0069】
表1〜表3の記載から明らかなように、CMP工程後に、実施例1〜22の洗浄剤を用いて洗浄した場合には、基板は配線を腐食させることなく、表面に付着した有機物残渣を効果的に洗浄、除去することができたことがわかる。
他方、ポリカルボン酸を含有していない比較例1〜2の洗浄剤を用いた場合は、実施例1〜22の洗浄剤を用いた場合に比べ、有機物残渣除去性が劣り、DTPAを含有していない比較例3〜5の洗浄剤を用いた場合は、腐食が発生していることがわかる。また添加剤としてBTAを用いた比較例8では腐食は抑制されているものの、実施例1〜22の洗浄剤を用いた場合に比べて有機物残渣除去性に劣ることがわかる。
このように、実施例1〜22の洗浄剤は、Cuウェハに施された銅配線の腐食抑制を維持しつつ、洗浄性に優れるものであることがわかった。
【0070】
<経時安定性試験>
前記各実施例のうち、実施例1〜5、及び実施例8〜13の各洗浄液にて、調液後1週間後の経時安定性試験を行った。即ち、各洗浄液を温度25℃湿度50%RHの環境下に7日間保存し、経時により洗浄液中に生じる沈殿物による濁りを目視にて確認し、以下の基準で評価した。結果を下記表4に示す。
【0071】
―評価基準―
◎:目視にて全く濁りは確認できなかった。
○:わずかに濁りは確認したが、実用上問題ない。
【0072】
【表4】

【0073】
表4の結果より、本発明の洗浄剤は、1週間の経時後も、固形分の析出が抑制され、経時安定性が良好であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカルボン酸およびジエチレントリアミン五酢酸を含有し、SiOCを構成成分として含有する誘電率が3.0以下の絶縁膜上に銅拡散防止用バリア膜及び銅配線を備える半導体デバイスの化学的機械的研磨工程の後に用いられる洗浄剤。
【請求項2】
前記銅拡散防止用バリア膜が、マンガンを含む請求項1記載の洗浄剤。
【請求項3】
前記マンガンを含む銅拡散防止用バリア膜がマンガン自己形成層により形成されたものである請求項2記載の洗浄剤。
【請求項4】
前記銅拡散防止用バリア膜が、Ti、TiN、Ta、TaN、及び、Ruから選択される少なくとも1種を含む請求項1記載の洗浄剤。
【請求項5】
前記ポリカルボン酸が、蓚酸、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、及び酒石酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の洗浄剤。
【請求項6】
pHが1以上5以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の洗浄剤。
【請求項7】
さらに、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤から選択される1種以上の界面活性剤を含有する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の洗浄剤。
【請求項8】
SiOCを構成成分として含有する誘電率が3.0以下の絶縁膜を形成する工程、
該絶縁膜上に銅拡散防止用バリア膜を形成する工程、
該銅拡散防止用バリア膜上に銅配線を形成して、配線を有する積層体を形成する工程、
該積層体表面を、砥粒および酸化剤を含有する金属用研磨液を用いて化学的機械的研磨して半導体デバイスを形成する工程、及び、
該半導体デバイスの表面を、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の洗浄剤で洗浄する工程、を順次有する半導体デバイスの製造方法。
【請求項9】
SiOCを構成成分として含有する誘電率が3.0以下の絶縁膜を形成する工程、
該絶縁膜上に銅及びマンガンを含有する配線を形成する工程、
該銅及びマンガンを含有する配線を加熱し、配線中のマンガンを配線表面に集積させて、マンガン自己形成法により形成された銅拡散防止用バリア膜を有する積層体を形成する工程、
該積層体表面を、砥粒および酸化剤を含有する金属用研磨液を用いて化学的機械的研磨して半導体デバイスを形成する工程、及び、
該半導体デバイスの表面を、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の洗浄剤で洗浄する工程、を順次有する半導体デバイスの製造方法。

【公開番号】特開2010−171362(P2010−171362A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83047(P2009−83047)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】