説明

半導体ナノクリスタルを含む光起電力デバイス

【課題】半導体ナノクリスタルの薄膜などの層が使用された光起電力デバイスにおいて、電気的性能に対する影響を最小限にすると同時に、半導体ナノクリスタルの有益な光吸収特性を提供する。
【解決手段】光起電力デバイスが、第一電極2と、第一電極2に接触する第一層3と、第一層3に接触する第二層4と、及び第二層4に接触する第二電極5とを有する。第一層3は、正孔輸送層とすることができ、第二層4は、電子輸送層とすることができる。少なくとも一つの層を、非ポリマー性にすることができる。該層は無機物質を含むことができる。この構造の電極の一つは、基板1に接触している。第一層3は、複数の半導体ナノクリスタル、例えばナノクリスタルの実質的な単分散集団を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ナノクリスタルを含む光起電力デバイスに関する。
【0002】
(連邦政府による資金提供を受けた研究又は開発)
アメリカ連邦政府は、Soldier Nanotechnology研究所の助成金番号6897284に従って、
本発明における特定の権利を有し得る。
【背景技術】
【0003】
光起電力デバイスは、当該デバイスの活性成分の励起に応答して、電流を生じることが
できる。励起は、当該デバイスを適当な光の波長で照らすことによって刺激されることが
でき、同時に、当該デバイス全体に渡って電圧を印加する。吸収性成分は、共役有機ポリ
マー又は吸収性部分若しくは有機分子の層を含むポリマーなどのポリマーであることがで
きる。当該デバイスの波長応答プロファイル及び他の物理学的性質は、使用される材料の
電子構造(例えば、エネルギーギャップ)によって変えられることができる。
【発明の概要】
【0004】
(要旨)
一般に、光起電力デバイスは、複数の半導体ナノクリスタルを含むことができる。半導
体ナノクリスタルは、有機配位子の層で任意に装飾された、例えば直径1〜15nmの無機半
導体粒子であることができる。ナノクリスタルは、強い量子閉じ込め効果を示すことがで
き、この効果は、ナノクリスタルのサイズ及び組成により調整可能な電子的及び光学的特
性を有する複合ヘテロ構造の作成のための、ボトムアップ化学的手法を設計する際に利用
され得る。
【0005】
半導体ナノクリスタルは、光起電力デバイスの吸収性物質として用いることができる。
半導体ナノクリスタルは、液体中に分散させることができ、したがって回転成形、ドロッ
プキャスティング、及び浸漬コーティングなどの薄膜堆積技法に適合する。しかし、これ
らの堆積技法から生じるバルク半導体ナノクリスタル固体は、固相デバイスにおいて電気
輸送特性が乏しい。バルク固体よりはむしろ、半導体ナノクリスタルの薄膜などの層(例
えば、単層又は多層)が光起電力デバイスにおいて使用され得る。単層は、電気的性能に
対する影響を最小限にすると同時に、半導体ナノクリスタルの有益な光吸収特性を提供す
る。
【0006】
正孔輸送層又は電子輸送層(又は両方)に有機物質を使用するデバイスは、電気から光
への高効率変換を有することができるが、当該有機物質の固有の不安定性のために寿命が
短くなり得る。光ルミネッセンス研究により証明されたように、無機ナノクリスタル自体
は、これらの有機対応物よりも本質的に安定であり得る。吸収のために半導体ナノクリス
タルを利用し、かつ電気輸送のために無機半導体を利用するデバイスは、優れた光電子性
能、及び長期安定性を達成することができる。当該無機半導体は、スパッタリング、真空
蒸着、インクジェット印刷、又はイオンメッキなどの低温法により堆積され得る。
【0007】
半導体ナノクリスタルは、マイクロコンタクト印刷を使用して基板上に堆積され得る。
有利には、マイクロコンタクト印刷は、表面上へのフィーチャのミクロンスケール、又は
ナノスケール(例えば1mm未満、500μm未満、200μm未満、100μm未満、
25μm未満、又は1μm未満)のパターニングを可能にする。特に、半導体ナノクリス
タルの単層を、マイクロコンタクト印刷によって堆積することができる。この手法は、基
板へのパターン化半導体ナノクリスタル被膜の実質的な乾燥(すなわち、実質的に無溶媒
)塗布を可能にする。したがって、幅広い種類の基板を使用することができる。なぜなら
ば、基板の選択が、可溶性及び表面化学要件により制約されないためである。
【0008】
一態様において、光起電力デバイスは、第一電荷輸送層に電荷を導入するように配置さ
れた第一電極と接触している第一無機物質を含有した第一電荷輸送層、第二電荷輸送層に
電荷を導入するように配置された第二電極と接触している第二電荷輸送層、及び該第一電
荷輸送層と該第二電荷輸送層との間に配置された複数の半導体ナノクリスタルを含む。
【0009】
該第一無機物質はアモルファス、又は多結晶質であることができる。該第一無機物質は
、無機半導体であることができる。該無機半導体は、金属カルコゲニドを含むことができ
る。該金属カルコゲニドは、混合金属カルコゲニドであることができる。該金属カルコゲ
ニドは、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ニオブ、硫化亜鉛、酸化インジウムスズ、又はこれ
らの混合物を含むことができる。
【0010】
該第二電荷輸送層は、第二無機物質を含むことができる。該第二無機物質は、アモルフ
ァス、又は多結晶質であることができる。該第二無機物質は、無機半導体であることがで
きる。該無機半導体は、金属カルコゲニドを含むことができる。該金属カルコゲニドは、
混合金属カルコゲニドであることができる。該金属カルコゲニドは、酸化亜鉛、酸化チタ
ン、酸化ニオブ、硫化亜鉛、酸化インジウムスズ、又はこれらの混合物を含むことができ
る。
【0011】
該第一電荷輸送層は、正孔輸送層、又は電子輸送層であることができる。該複数の半導
体ナノクリスタルは、単層を形成することができる。該複数の半導体ナノクリスタルは、
半導体ナノクリスタルの実質的な単分散集団とすることができる。該デバイスは、透明と
することができる。該第二電極は、該複数の半導体ナノクリスタルと直接接触することが
できる。
【0012】
該複数の半導体ナノクリスタルは、4nm〜2000nmの厚さを有する層を形成することがで
きる。該層は、100nm未満の厚さを有することができる。
【0013】
別の態様において、デバイスの製造方法は、電極の上に第一無機物質を含む第一電荷輸
送層を堆積すること、該電極の上に複数の半導体ナノクリスタルを堆積すること(ここで
該複数の半導体ナノクリスタルは該第一電荷輸送層と電気的に接触される)、及び該電極
の上に第二無機物質を含む第二電荷輸送層を堆積すること(ここで該複数の半導体ナノク
リスタルは該第二電荷輸送層と電気的に接触される)を含む。
【0014】
該第一無機物質を堆積することは、スパッタリングを含むことができる。該第二無機物
質を堆積することは、スパッタリングを含むことができる。
【0015】
別の態様において、電流を発生する方法は、デバイスに励起波長の光を曝すことを含み
、該デバイスは、第一電荷輸送層に電荷を導入するように配置された第一電極と接触して
いる第一無機物質を含有した第一電荷輸送層、第二電荷輸送層に電荷を導入するように配
置された第二電極と接触している第二電荷輸送層、及び該第一電荷輸送層と該第二電荷輸
送層との間に配置された複数の半導体ナノクリスタルを含む。
【0016】
本発明の他の特徴、目的、及び利点は、明細書、及び図面から、及び特許請求の範囲か
ら明らかにされるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、光起電力デバイスを示す略図である。
【図2】図2は、光起電力デバイスを形成する方法を示す図である。
【図3】図3A〜3Eは、光起電力デバイスを示す略図である。
【図4】図4は、光起電力デバイスの光学及び電気的特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(詳細な説明)
光起電力デバイスは、当該デバイスの二つの電極を分離する二つの層を含むことができ
る。一方の層の物質は、物質が正孔を輸送できる能力に基づいて選択することができ、即
ち正孔輸送層(HTL)とすることができる。他方の層の物質は、物質が電子を輸送でき
る能力に基づいて選択することができ、即ち電子輸送層(ETL)とすることができる。
通常、該電子輸送層は、吸収性層を含む。電圧が印加され、かつ該デバイスが照射される
とき、一方の電極は、該正孔輸送層から正孔(正電荷キャリア)を受容し、他方の電極は
、該電子輸送層から電子を受容する;正孔及び電子は、吸収性物質の励起子として生じる
。該デバイスは、HTLとETLとの間に吸収性層を含むことができる。該吸収層は、吸
収波長又は線幅など、その吸収特性のために選択された物質を含むことができる。
【0019】
光起電力デバイスは図1に示されるような構造を有することができ、第一電極2と、電
極2に接触する第一層3と、第一層3に接触する第二層4と、及び第二層4に接触する第
二電極5とを有する。第一層3は、正孔輸送層とすることができ、第二層4は、電子輸送
層とすることができる。少なくとも一つの層を、非ポリマー性にすることができる。該層
は無機物質を含むことができる。この構造の電極の一つは、基板1に接触している。該構
造にわたって電圧を提供するために、各電極を電源に接触させることができる。適切な極
性及び大きさの電圧が該デバイスにわたって印加されるとき、該吸収性層によって光電流
を生じさせることができる。第一層3は、複数の半導体ナノクリスタル、例えばナノクリ
スタルの実質的な単分散集団を含むことができる。
【0020】
あるいは、別個の吸収性層(図1に示さず)を、正孔輸送層と電子輸送層との間に含む
ことができる。その別個の吸収性層は、複数のナノクリスタルを含むことができる。ナノ
クリスタルを含む層は、ナノクリスタルの単層、又はナノクリスタルの多層とすることが
できる。ある場合において、ナノクリスタルを含む層は、不完全な層、すなわちナノクリ
スタル層に隣接した層が部分的に接触し得るような材料を欠く領域を有する層であること
ができる。ナノクリスタル及び少なくとも一つの電極は、ナノクリスタルから第一電極又
は第二電極へ電荷キャリアを移すのに十分なバンドギャップ・オフセットを有する。該電
荷キャリアは、正孔又は電子であることができる。電荷キャリアを転送する電極の能力に
よって、光誘導性電流が光検出を容易にする方法で流れることができる。
【0021】
半導体ナノクリスタルを含む光起電力デバイスは、該HTL有機半導体分子及び半導体
ナノクリスタルを含む溶液を回転成形することによって作成することができ、該HTLは
、相分離によって半導体ナノクリスタル単層の下に形成した(例えば、2003年3月28日出
願の米国特許出願第10/400,907号及び米国特許出願公開第2004/0023010号を参照。各特許
文献の全体は引用により取り込まれている)。この相分離技法は、有機半導体HTLとE
TLとの間に半導体ナノクリスタルの単層を再現可能に配置し、それにより半導体ナノク
リスタルの好ましい光吸収特性を効率的に活用し、それと共に、それらの電気的性能への
影響を最小限にした。この技法によって作成されるデバイスは、溶媒中の不純物によって
、かつ半導体ナノクリスタルと同一の溶媒に可溶な有機半導体分子を使用する必要性によ
って制限された。相分離技法は、HTLとHILとの両方の上に半導体ナノクリスタルの
単層を堆積するには不適であった(溶媒が、下にある有機薄膜を破壊するため)。また、
相分離方法は、同一基板上で、異なる色を放出する半導体ナノクリスタルの位置の制御が
できず;同様に、相分離方法は、同一基板上の、異なる色を放出するナノクリスタルのパ
ターニングができなかった。
【0022】
さらに、輸送層(すなわち正孔輸送層、正孔注入層、又は電子輸送層)に使用される有
機物質は、当該吸収性層に使用される半導体ナノクリスタルより不安定であり得る。結果
として、該有機物質の運用年数は、該デバイスの寿命を制限する。該輸送層に長寿命物質
を用いたデバイスを使用して、長寿命発光デバイスを製造することができる。
【0023】
基板を、不透明又は透明にすることができる。透明基板を使用して透明デバイスを製造
することができる。例えばBulovic, V. らの論文, Nature 1996, 380, 29;及びGu, G.ら
の論文, Appl. Phys. Lett. 1996, 68, 2606-2608を参照されたい。各々はその全体にお
いて引用により取り込まれている。基板を、剛性又は可撓性にすることができる。基板を
、プラスチック、金属、又はガラスとすることができる。第一電極を、例えば、酸化イン
ジウムスズ(ITO)層など、高い仕事関数の正孔注入導体とすることができる。他の第
一電極物質は、ガリウムインジウムスズオキシド(gallium indium tin oxide)、亜鉛イ
ンジウムスズオキシド(zinc indium tin oxide)、窒化チタン、又はポリアニリンを含
むことができる。第二電極は、例えば、Al、Ba、Yb、Ca、リチウムアルミニウム
合金(Li:Al)、又はマグネシウム銀合金(Mg:Ag)など、低い仕事関数(例え
ば4.0eV未満)の電子注入金属とすることができる。Mg:Agなどの第二電極は、
不透明保護金属層、例えば大気の酸化から陰極層を保護するためのAgの層で、又は実質
的に透明なITOの比較的薄い層で被覆することができる。第一電極は、約500オング
ストロームから4000オングストロームの厚さを有することができる。第一層は、約5
0オングストロームから約5マイクロメートルの厚さ、例えば100オングストロームか
ら100nm、100nmから1マイクロメートル、又は1マイクロメートルから5マイクロ
メートルの範囲の厚さを有することができる。第二層は、約50オングストロームから約
5マイクロメートルの厚さ、例えば100オングストロームから100nm、100nmから
1マイクロメートル、又は1マイクロメートルから5マイクロメートルの範囲の厚さを有
することができる。第二電極は、約50オングストロームから約1000オングストロー
ムよりも大きい厚さを有することができる。
【0024】
正孔輸送層(HTL)、又は電子輸送層(ETL)は、無機半導体などの無機物質を含
むことができる。無機半導体は、放出物質の発光エネルギーよりも大きいバンドギャップ
有する任意の物質とすることができる。無機半導体は、金属酸化物、金属硫化物、金属セ
レン化物、金属テルル化物、金属窒化物、金属リン化物、金属ヒ化物、又は金属ヒ化物な
どの金属カルコゲニド、金属プニクタイド(metal pnictide)、又は元素半導体を含むこ
とができる。例えば、該無機物質は、下記のものを含むことができる:酸化亜鉛、酸化チ
タン、酸化ニオブ、酸化インジウムスズ、酸化銅、酸化ニッケル、酸化バナジウム、酸化
クロム、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ガリウム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバル
ト、酸化アルミニウム、酸化タリウム、酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム、酸化鉛、酸化ジ
ルコニウム、酸化モリブデン、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化
カドミウム、酸化イリジウム、酸化ロジウム、酸化ルテニウム、酸化オスミウム、硫化亜
鉛、セレン化亜鉛、テルル化亜鉛、硫化カドミウム、セレン化カドミウム、テルル化カド
ミウム、硫化水銀、セレン化水銀、テルル化水銀、炭化ケイ素、ダイアモンド(炭素)、
ケイ素、ゲルマニウム、窒化アルミニウム、リン化アルミニウム、ヒ化アルミニウム、窒
化ガリウム、リン化ガリウム、ヒ化ガリウム、アンチモン化ガリウム、窒化インジウム、
リン化インジウム、ヒ化インジウム、アンチモン化インジウム、窒化タリウム、リン化タ
リウム、ヒ化タリウム、アンチモン化タリウム、硫化鉛、セレン化鉛、テルル化鉛、硫化
鉄、セレン化インジウム、硫化インジウム、テルル化インジウム、硫化ガリウム、セレン
化ガリウム、テルル化ガリウム、セレン化スズ、テルル化スズ、硫化スズ、硫化マグネシ
ウム、セレン化マグネシウム、テルル化マグネシウム、又はこれらの混合物である。金属
酸化物は、例えばITOなどの混合金属酸化物とすることができる。デバイスにおいて、
純粋金属酸化物(すなわち単一の実質的に純粋な金属を有する金属酸化物)の層は、長期
にわたると結晶領域を生じ、該デバイスの性能を低下する可能性がある。混合金属酸化物
は、前記結晶領域の形成を少なくする傾向にあり、純粋金属酸化物で得られるデバイス寿
命よりも長いデバイス寿命を提供することができる。金属酸化物は、ドープ金属酸化物と
することができる。ここで該ドープは、例えば、酸素欠損、ハロゲンドーパント(haloge
n dopant)、又は混合金属である。無機半導体は、ドーパントを含むことができる。一般
に、該ドーパントは、p型、又はn型ドーパントとすることができる。HTLは、p型ド
ーパントを含むことができ、一方ETLは、n型ドーパントを含むことができる。
【0025】
デバイスの半導体ナノクリスタルに電荷輸送するために、単結晶無機半導体が提案され
ている。単結晶無機半導体は、被覆される基板を高温に加熱することを要求する技術によ
り堆積される。しかし、上層半導体は、該ナノクリスタル層上に直接堆積しなければなら
ない。これは高温処理に対して強固でなく、また容易なエピタキシャル成長に適切でない
。また、エピタキシャル技術(化学蒸着など)は、製造にコストがかかり、かつ一般に大
きな領域(すなわち直径12インチ(30.48cm)ウェーハよりも大きい領域)の被
覆に使用することができない。
【0026】
有利には、該無機半導体を、例えばスパッタリングにより、低温で基板上に堆積するこ
とができる。スパッタリングは、低圧ガス(例えばアルゴン)に高電圧を印加し、高エネ
ルギー状態の電子及びガスイオンのプラズマを作成することにより行われる。電圧を印加
したプラズマイオンは、標的の所望の被覆物質に当たり、その標的からの原子を十分なエ
ネルギーで排出させ、該基板に移動し、かつ結合する。
【0027】
製造される基板又はデバイスは、該成長プロセス時に温度制御のために冷却又は加熱さ
れる。該温度は、該堆積物質の結晶化度、並びに堆積される該表面上とどの程度相互作用
するかに影響を与える。該堆積物質は、多結晶質又はアモルファスとすることができる。
該堆積物質は、10オングストロームから1マイクロメートルの範囲サイズで、結晶ドメ
インを有することができる。スパッタリングプラズマのために使用される該ガス又はガス
混合物を変えることにより、ドーピング濃度を制御することができる。ドーピングの性質
、及び程度は、該堆積被膜の伝導度、並びに隣接する励起子を光学的に消光するその安定
性に影響を与える。ある物質を他の物質の上部に成長させることにより、p−n、又はp
−i−nダイオードを作成することができる。半導体ナノクリスタル単層に電荷を輸送す
るために、該デバイスを最適化することができる。
【0028】
該電極の1つの表面上に該層を、スピンコーティング、ディップコーティング、蒸着、
スパッタリング、又は他の薄層堆積方法により堆積することができる。固体層の露出面上
に該第二電極を、サンドイッチ、スパッタ、又は蒸着させることができる。該電極の1つ
又は双方を、パターン状にすることができる。該デバイスの電極を、導電性経路により電
圧源に接続することができる。電圧印加時に、該デバイスから光が発生する。
【0029】
マイクロコンタクト印刷は、基板上の事前定義領域に物質を塗布する方法を提供する。
事前定義領域は、該物質が選択的に塗布される基板上の領域である。該物質及び基板は、
物質が事前定義域内部に実質的に完全に残るように選択され得る。パターンを成す事前定
義領域を選択することによって、物質がパターンを成すように、該物質を基板に塗布する
ことができる。該パターンは、規則パターン(アレイや一連のラインなど)、又は不規則
パターンにすることができる。該物質のパターンが基板上に形成されると、該基板は、該
物質を含む領域(事前定義領域)と、該物質を実質的に含まない領域とを有することがで
きる。いくつかの状況では、該物質は、基板上に単層を形成する。事前定義領域は、不連
続領域とすることができる。即ち、物質が基板の事前定義領域に塗布されるとき、物質を
含む位置を、物質を実質的に含まない他の位置によって分離することができる。
【0030】
一般に、マイクロコンタクト印刷は、パターンモールドを形成することから始まる。モ
ールドは、隆起部と窪み部のパターンを有する表面を有する。例えば、パターンモールド
表面に接触しながら硬化される液体ポリマー前駆体で、モールドのパターン表面を被覆す
ることによって、隆起部と窪み部の相補パターンを有するスタンプが形成される。次いで
、スタンプにインク付けすることができる。即ち、スタンプが、基板上に堆積されるべき
物質に接触される。物質は、スタンプに可逆に接着される。次いで、インク付きスタンプ
が、基板に接触される。スタンプの隆起領域は、基板に接触することができ、スタンプの
窪み領域は、基板から離すことができる。インク付きスタンプが基板に接触するとき、イ
ンク物質(又は少なくともその一部)が、スタンプから基板に転写される。このようにし
て、隆起部と窪み部のパターンが、基板上で物質を含む領域と物質を含まない領域として
、スタンプから基板に転写される。マイクロコンタクト印刷及び関連の技法は、例えば米
国特許第5,512,131号、第6,180,239号、第6,518,168号に記載されており、各特許文献の
全体は引用により取り込まれている。幾つかの場合において、スタンプは、インクのパタ
ーンを有する特徴のないスタンプとすることができる。ここで、該パターンは、該インク
が該スタンプに塗布される場合に形成される。その全体が引用により取り込まれている、
2005年10月21日に出願された米国特許出願第11/253,612号を参照されたい。加えて、イン
クは、スタンプから基質へインクを転写する前に、(例えば、化学的に又は熱的に)処理す
ることができる。この方法において、パターン化されたインクは、基質と互換性がない状
態に曝されることができる。
【0031】
図2に、マイクロコンタクト印刷プロセスにおける基本ステップを概説する流れ図を示
す。最初に、シリコン表面上にパターン、例えば隆起部と窪み部のパターンを画定する標
準的な半導体処理技法を使用して、シリコンマスタが作成される(別法として、無パター
ン堆積の場合には、ブランクSiマスタを使用することができる)。次いで、ポリジメチ
ルシロキサン(PDMS、例えばSylgard 184)前駆体が混合され、脱気され、マスタ上に注
ぎ込まれ、再び脱気され、かつ室温(又は、より速い硬化時間のために、室温よりも高い
温度)で硬化される(ステップ1)。次いで、シリコンマスタのパターンを含む表面を有
するPDMSスタンプが、マスタから外され、所望の形状及びサイズに切断される。次いで、
このスタンプを、表面化学層で被覆する。これは、必要に応じてインクを容易に接着及び
解除できるように選択される。例えば、該表面化学層は、化学蒸着ペリレン−C層とする
ことができる。該表面化学層は、例えば0.1〜2μmの厚さとすることができ、複製さ
れるパターンに依存する(ステップ2)。次に、半導体ナノクリスタルの溶液を、例えば
回転成形、シリンジポンプ分注(syringe pump dispensing)、又はインクジェット印刷
することにより、このスタンプにインクを付ける(ステップ3)。この溶液は、例えば、
クロロホルム中、1〜10mg/mLの濃度を有することができる。該濃度は、所望の成
果により変更することができる。次いで、インク付きスタンプを基板に接触させ、穏やか
な圧力を例えば30秒間印加して、新たな基板に完全にインク(すなわち、半導体ナノク
リスタル単層)を転写することができる(ステップ4)。図2A及び2Bに、ITO被覆
ガラス基板の標本を示す。有機半導体を含む正孔輸送及び/又は正孔注入層(それぞれH
TL及びHIL)が、ITO基板上に熱蒸着される。パターン半導体ナノクリスタル単層
は、このHTL層に転写され、次いで、デバイスの残りの部分(所望により、例えば、電
子輸送層(ETL)、電子注入層(EIL)、及び金属コンタクト)を追加することがで
きる(ステップ5)。例えば、双方とも2005年10月21日に出願された米国特許出願第11/2
53,595号及び第11/253,612号、並びに2005年1月11日に出願された第11/032,163号を参照
されたい。これらの各々は、その全体において引用により取り込まれている。
【0032】
ナノクリスタルが光子を吸収するときに、励起した電子正孔対が生じる。吸収波長は、
量子閉じ込め半導体物質の有効なバンドギャップに関連する。バンドギャップは、ナノク
リスタルのサイズ、形状、材料、及び配置の関数である。小さな直径を有するナノクリス
タルは、分子とバルク形態の物質との中間の性質を有することができる。例えば、小さな
直径を有する半導体物質に基づくナノクリスタルは、3次元すべてにおいて電子と正孔と
の両方の量子閉じ込めを示すことができ、結晶サイズの減少に伴い、物質の有効なバンド
ギャップを増加させる。それゆえ、結晶のサイズが小さくなるにつれて、ナノクリスタル
の吸光と発光との両方が、青色へ、すなわち、より高いエネルギーへシフトする。
【0033】
ナノクリスタルを形成する半導体には、II−VI族の化合物、II−V族の化合物、
III−VI族の化合物、III−V族の化合物、IV−VI族の化合物、I−III−
VI族の化合物、II−IV−VI族の化合物、又はII−IV−V族の化合物、例えば
ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、MgO、
MgS、MgSe、MgTe、HgO、HgS、HgSe、HgTe、AlN、AlP、
AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs
、InSb、TlN、TlP、TlAs、TlSb、PbS、PbSe、PbTe、又は
これらの混合物を含めることができる。
【0034】
単分散半導体ナノクリスタルの調製方法は、高温の配位溶媒に注入されるジメチルカド
ミウムなど有機金属試薬の熱分解を含む。これは、離散的な核形成を可能にし、巨視量の
ナノクリスタルの制御された成長をもたらす。ナノクリスタルの調製及び操作は、例えば
米国特許第6,322,901号及び第6,576,291号、並びに米国特許出願第60/550,314号に記載さ
れており、各特許文献の全体を引用により取り込む。ナノクリスタルの製造方法は、コロ
イド成長プロセスである。コロイド成長は、Mドナー及びXドナーを高温配位溶媒に急速
に注入することによって生じる。この注入により、核が生成され、制御された様式で成長
させてナノクリスタルを形成することができる。反応混合物は、ナノクリスタルを成長さ
せ、かつアニールするために、穏やかに加熱することができる。サンプル中のナノクリス
タルの平均サイズとサイズ分布との両方が、成長温度に依存する。安定した成長を維持す
るために必要な成長温度は、平均結晶サイズの増加に伴って増加する。ナノクリスタルは
、ナノクリスタルの集団のメンバーである。離散的な核形成及び制御された成長の結果、
得られるナノクリスタルの集団は、狭い単分散の直径分布を有する。単分散の直径分布は
、サイズと呼ぶこともできる。核形成に続く、配位溶媒中でのナノクリスタルの制御され
た成長及びアニーリングのプロセスは、一様な表面誘導体化及び規則的なコア構造を生じ
させることもできる。サイズ分布が鋭くなるにつれて、安定した成長を維持するために、
温度を上昇させることができる。より多くのMドナー又はXドナーを添加することによっ
て、成長期間を短縮することができる。
【0035】
Mドナーは、無機化合物、有機金属化合物、又は元素金属とすることができる。Mは、
カドミウム、亜鉛、マグネシウム、水銀、アルミニウム、ガリウム、インジウム、又はタ
リウムである。Xドナーは、Mドナーと反応して一般式MXを有する物質を生成すること
ができる化合物である。通常、Xドナーは、カルコゲニドドナー又はプニクタイドドナー
、例えば、ホスフィンカルコゲニド、ビス(シリル)カルコゲニド、二酸素、アンモニウ
ム塩、又はトリス(シリル)プニクタイドである。適切なXドナーは、二酸素、ビス(ト
リメチルシリル)セレニド((TMS)2Se)、トリアルキルホスフィンセレニド(例えば(ト
リ−n−オクチルホスフィン)セレニド(TOPSe)又は(トリ−n−ブチルホスフィン)
セレニド(TBPSe)など)、トリアルキルホスフィンテルリド(例えば(トリ−n−オク
チルホスフィン)テルリド(TOPTe)又はヘキサプロピルホスホラストリアミドテルリド
(HPPTTe)など)、ビス(トリメチルシリル)テルリド((TMS)2Te)、ビス(トリメチル
シリル)スルフィド((TMS)2S))、トリアルキルホスフィンスルフィド(例えば(トリ
−n−オクチルホスフィン)スルフィド(TOPS)など)、アンモニウム塩(例えばハロゲ
ン化アンモニウム(例えばNH4Cl)など)、トリス(トリメチルシリル)ホスフィド((TM
S)3P)、トリス(トリメチルシリル)アルセニド((TMS)3As)、又はトリス(トリメチル
シリル)アンチモニド((TMS)3Sb)を含む。特定の実施態様では、Mドナー及びXドナー
は、同一分子内の成分とすることができる。
【0036】
配位溶媒は、ナノクリスタルの成長の制御に役立たせることができる。配位溶媒は、ド
ナー孤立電子対を有する化合物であり、例えば、成長するナノクリスタルの表面に配位す
るのに利用できる孤立電子対を有する。溶媒配位は、成長するナノクリスタルを安定化さ
せることができる。代表的な配位溶媒としては、アルキルホスフィン、アルキルホスフィ
ンオキシド、アルキルホスホン酸、又はアルキルホスフィン酸があるが、ピリジン、フラ
ン、及びアミンなどの他の配位溶媒も、ナノクリスタルの生成に適していることがある。
適切な配位溶媒の例としては、ピリジン、トリ−n−オクチルホスフィン(TOP)、トリ
−n−オクチルホスフィンオキシド(TOPO)、及びトリス−ヒドロキシルプロピルホスフ
ィン(tHPP)がある。工業用のTOPOを使用することができる。
【0037】
反応の成長段階中のサイズ分布は、粒子の吸収線幅をモニタリングすることによって評
価することができる。粒子の吸収スペクトルの変化に応じた反応温度の修正により、成長
中、鋭い粒子サイズ分布の維持が可能になる。より大きな結晶を成長させるために、結晶
成長中に、核形成溶液に反応物を添加することができる。特定のナノクリスタル平均直径
で成長を停止させ、かつ半導体物質の適切な組成を選択することによって、ナノクリスタ
ルの発光スペクトルは、300nm〜5ミクロンの波長範囲にわたって、又はCdSe及
びCdTeについては400nm〜800nmにわたって連続的に調整することができる
。ナノクリスタルは、150Å未満の直径を有する。ナノクリスタルの集団は、15Å〜
125Åの範囲の平均直径を有する。
【0038】
ナノクリスタルは、狭いサイズ分布を有するナノクリスタルの集団のメンバーであって
よい。ナノクリスタルは、球形、棒状、円盤状、又は他の形状であってよい。ナノクリス
タルは、半導体物質のコアを含むことができる。ナノクリスタルは、式MXを有するコア
を含むことができ、ここでMは、カドミウム、亜鉛、マグネシウム、水銀、アルミニウム
、ガリウム、インジウム、タリウム、又はそれらの混合物であり、Xは、酸素、硫黄、セ
レン、テルル、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、又はそれらの混合物である。
【0039】
コアは、該コアの表面上にオーバーコーティングを有することができる。オーバーコー
ティングは、該コアの組成物とは異なる組成物を有する半導体物質であってもよい。ナノ
クリスタルの表面上の半導体物質のオーバーコートは、II−VI族の化合物、II−V
族の化合物、III−VI族の化合物、III−V族の化合物、IV−VI族の化合物、
I−III−VI族の化合物、II−IV−VI族の化合物、又はII−IV−V族の化
合物、例えばZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdT
e、MgO、MgS、MgSe、MgTe、HgO、HgS、HgSe、HgTe、Al
N、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、In
P、InAs、InSb、TlN、TlP、TlAs、TlSb、TlSb、PbS、P
bSe、PbTe、又はそれらの混合物を含むことができる。例えば、ZnS、ZnSe
、又はCdSオーバーコーティングを、CdSe又はCdTeナノクリスタル上に成長さ
せることができる。オーバーコーティングプロセスは、例えば米国特許第6,322,901号に
記載されている。オーバーコーティング中に反応混合物の温度を調節し、コアの吸収スペ
クトルをモニタリングすることによって、高い発光量子効率と狭いサイズ分布とを有する
オーバーコート物質を得ることができる。オーバーコーティングは、1〜10層の単層の
厚さとすることができる。
【0040】
粒子サイズ分布は、米国特許第6,322,901号に記載されている、メタノール/ブタノー
ルなどのナノクリスタルに対する貧溶媒を用いるサイズ選択的沈殿法によって、さらに精
製することができる。例えば、ナノクリスタルは、10%ブタノールのヘキサン溶液中に
分散させることができる。メタノールは、乳光が持続するまで、この攪拌溶液に滴下して
加えることができる。遠心分離による上清と凝集物との分離により、サンプル中の最大結
晶に富んだ沈殿物が生成される。この手順を、吸光スペクトルのさらなる鋭利化が認めら
れなくなるまで繰り返すことができる。サイズ選択的沈殿法は、ピリジン/ヘキサン及び
クロロホルム/メタノールを含めた種々の溶媒/非溶媒のペアで実施することができる。
サイズ選択されたナノクリスタル集団は、平均直径から15%rms以下の偏差、好まし
くは10%rms以下の偏差、より好ましくは5%rms以下の偏差を有することができ
る。
【0041】
ナノクリスタルの外部表面は、成長プロセス中に使用された配位溶媒から誘導される化
合物を含むことができる。過剰な競合配位基へ繰り返し曝露することによって表面を改質
することができる。例えば、覆われたナノクリスタルの分散は、ピリジンなどの配位性有
機化合物を用いて処理することができ、ピリジン、メタノール、及び芳香族中では容易に
分散し、しかし脂肪族溶媒中ではもはや分散しない結晶を生成する。そのような表面交換
プロセスは、例えばホスフィン、チオール、アミン、及びリン酸塩を含めた、ナノクリス
タルの外部表面と配位、又は結合できる任意の化合物を用いて実施することができる。ナ
ノクリスタルは、表面に対して親和性を示し、かつ懸濁液又は分散媒体に対して親和性を
有する成分で終わる短鎖ポリマーに曝露させることができる。そのような親和性は、懸濁
液の安定性を改善し、ナノクリスタルの凝集を妨げる。ナノクリスタル配位化合物は、例
えば米国特許第6,251,303号に記載されており、その全体は引用により取り込まれている

【0042】
より具体的には、配位子が、次式を有することができる。
【化1】

式中、kは、2、3、又は5であり、nは、k−nが0未満にならないような1、2、3
、4、又は5であり;Xは、O、S、S=O、SO、Se、Se=O、N、N=O、P
、P=O、As、又はAs=Oであり;Y及びLはそれぞれ、独立して、アリール、ヘテ
ロアリール、或いは少なくとも一つの二重結合、少なくとも一つの三重結合、又は少なく
とも一つの二重結合及び一つの三重結合を任意に含む直鎖状の、又は分岐したC2−12
炭化水素鎖である。炭化水素鎖は、一種以上のC1−4アルキル、C2−4アルケニル、
2−4アルキニル、C1−4アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、アミノ、ニトロ、シアノ
、C3−5シクロアルキル、3〜5員環ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリー
ル、C1−4アルキルカルボニルオキシ、C1−4アルキルオキシカルボニル、C1−4
アルキルカルボニル、又はホルミルによって任意に置換することができる。また、炭化水
素鎖は、−O−、−S−、−N(R)−、−N(R)−C(O)−O−、−O−C(
O)−N(R)−、−N(R)−C(O)−N(R)−、−O−C(O)−O−、
−P(R)−、又は−P(O)(R)−によって任意に中断することができる。R
及びRはそれぞれ、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ
、ヒドロキシルアルキル、ヒドロキシル、又はハロアルキルである。
【0043】
アリール基は、置換又は非置換の環状芳香族基である。例としては、フェニル、ベンジ
ル、ナフチル、トリル、アントラシル、ニトロフェニル、又はハロフェニルがある。ヘテ
ロアリール基は、環の中に一つ以上のヘテロ原子を有するアリール基であり、例えばフリ
ル、ピリジル、ピロリル、フェナントリルである。
【0044】
適切な配位子を、商業的に購入することができ、又は、例えばJ. March「有機化学特論
(Advanced Organic Chemistry)」(その全体を引用により取り込む)に記載されている
通常の合成有機技法によって調製することができる。
【0045】
透過型電子顕微鏡(TEM)が、ナノクリスタル集団のサイズ、形状、及び分布に関す
る情報を提供することができる。粉末X線回折(XRD)パターンが、ナノクリスタルの
結晶構造のタイプ及び質に関する最も完全な情報を提供することができる。また、粒子径
は、X線コヒーレンス長を介してピーク幅に反比例するので、サイズの評価も可能である
。例えば、ナノクリスタルの直径は、透過型電子顕微鏡によって直接測定することができ
、又は、例えばシェラーの式を使用してX線回折データから評価することができる。また
、UV/Vis吸収スペクトルから評価することもできる。
【0046】
光起電力配列を形成するために、個々のデバイスを、単一基板上の複数の位置に形成す
ることができる。いくつかの適用例では、基板は、バックプレーンを含むことができる。
バックプレーンは、個々の配列要素に又は個々の配列要素から、電力を制御又は切り換え
るための能動又は受動電子回路を含む。バックプレーンを含むことは、ディスプレイ、セ
ンサ、又は撮像装置などの用途で有用になることがある。特に、バックプレーンは、アク
ティブマトリックス、パッシブマトリックス、固定フォーマット、ダイレクトドライブ(
directly drive)、又はハイブリッドとして構成することができる。例えば、その全体が
引用により取り込まれている、2005年10月21日に出願された米国特許出願第11/253,612号
を参照されたい。
【0047】
デバイスは、製造プロセス中のデバイス効率の低下を防止する、制御された(酸素を含
まず、かつ水分を含まない)環境内で作成することができる。デバイス性能を改善するた
めに、他の多層構造を使用することもできる(例えば、2003年3月28日に出願された米国
特許出願第10/400,907号及び第10/400,908号を参照されたい。それら各特許文献の全体は
引用により取り込まれている)。電子ブロッキング層(EBL)、正孔ブロッキング層(
HBL)、又は正孔及び電子ブロッキング層(eBL)などのブロッキング層を構造内に
導入することができる。ブロッキング層が含むことができるのは、3−(4−ビフェニリ
ル)−4−フェニル−5−ターシャリー−ブチルフェニル−1,2,4−トリアゾール(
TAZ)、3,4,5−トリフェニル−1,2,4−トリアゾール、3,5−ビス(4−
ターシャリー−ブチルフェニル)−4−フェニル−1,2,4−トリアゾール、バトクプ
ロイン(BCP)、4,4’,4”−トリス{N−(3−メチルフェニル)−N−フェニ
ルアミノ}トリフェニルアミン(m-MTDATA)、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT
)、1,3−ビス(5−(4−ジフェニルアミノ)フェニル−1,3,4−オキサジアゾ
ール−2−イル)ベンゼン、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−ターシャリー−ブチ
ルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、1,3−ビス[5−(4−(1,1−ジ
メチルエチル)フェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン、1,
4−ビス(5−(4−ジフェニルアミノ)フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2
−イル)ベンゼン、又は1,3,5−トリス[5−(4−(1,1−ジメチルエチル)フ
ェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼンである。
【0048】
光起電力デバイスの性能は、それらの効率を高めることによって改善することができる
。例えば、Bulovicらの論文, Semiconductors and Semimetals 64, 255 (2000)、Adachi
らの論文, Appl. Phys. Lett. 78, 1622 (2001)、Yamasakiらの論文, Appl. Phys. Lett.
76, 1243 (2000)、Dirrらの論文, Jpn. J. Appl. Phys. 37, 1457 (1998)、及びD'Andra
deらの論文, MRS Fall Meeting, BB6.2 (2001)を参照されたい。各文献の全体は引用によ
り取り込まれている。ナノクリスタルは、効率の良いハイブリッド有機/無機発光デバイ
ス内に含めることができる。
【0049】
ディスプレイを製造するために、個々のデバイスを、単一基板上の複数の位置に形成す
ることができる。ディスプレイは、様々な波長で放出するデバイスを含むことができる。
様々な色の発光半導体ナノクリスタルのアレイを基板にパターニングすることにより、様
々な色の画素を含むディスプレイを製造することができる。
【0050】
デバイスを製造するために、例えばNiOなどのp型半導体を、酸化インジウムスズ(
ITO)などの透明電極上に堆積することができる。該透明電極は、透明基板上に配置さ
れることができる。次に、マイクロコンタクト印刷、又はラングミュアーブロジェット(
LB)技術などの広域適合性の単層堆積技術を用いて、半導体ナノクリスタルを堆積する
。続いて、n型半導体(例えばZnO又はTiO)を、例えばスパッタリングによりこ
の層の上部に塗布する。該デバイスを完成させるために、この上に金属電極を熱的に蒸着
させることができる。より複雑なデバイス構造も可能である。例えば、少しドープした層
を、ナノクリスタル層に近接して含ませることができる。
【0051】
該デバイスは、2つの輸送層を個々に成長させ、かつポリジメチルシロキサン(PDM
S)などのエラストマーを用いて電気接触を物理的に適用することにより組み立てられる
。これは、ナノクリスタル層上の物質の直接的堆積の必要性を避ける。
【0052】
該デバイスを、該輸送層の全てを塗布した後に熱的に処理することができる。熱処理は
、ナノクリスタルからの電荷の分離をさらに強化し、かつナノクリスタル上の有機キャッ
ピング基(organic capping groups)を排除することができる。該キャッピング基の不安
定性は、デバイスの不安定性の原因となり得る。
【0053】
使用される無機輸送層、特に金属酸化物質は、O及びHOがデバイスの吸収性層(
半導体ナノクリスタル層)に入ることを防ぐ障壁層として作用することができる。無機層
の保護的性質は、包装に対する設計選択を提供することができる。例えば、該無機層は、
水及び/又は酸素に対する障壁となることができ、このような混入物が放出物質に達する
ことを防ぐ追加成分の必要性なく、デバイスを製造することができる。BARIX(Vitex製)
などのカプセル材料コーティングを、金属酸化物層とポリマー層とを交互に用いて作成す
ることができる。このような障壁において、該金属酸化物は、O及びHOに対する障
壁となり、かつ該ポリマー層は、該金属酸化物層内のピンホール欠陥の発生を無作為化す
る。従って、輸送層として金属酸化物を用いることにおいて、デバイス自体は、半導体ナ
ノクリスタルに対する保護層として機能する。
【0054】
図3A〜3Eは、可能なデバイス構造を示す。これらは、標準的なp−nダイオード図
(図3A)、p−i−nダイオード図(図3B)、透明デバイス(図3C)、逆デバイス
(inverted device)(図3D)、及び可撓性デバイス(flexible device)(図3E)で
ある。可撓性デバイスの場合、各単一層金属酸化物層に対して、スリッページ層(slippa
ge layers)、すなわち金属酸化物/金属/金属酸化物型の3層構造を組み込むことが可能
である。これは、透明度を維持すると同時に、伝導度を増加する金属酸化物薄膜の可撓性
を増加することが示されている。これは、該金属層、通常、銀層が、非常に薄く(各々約
12nm)、従って、多くの光を吸収しないためである。
【実施例】
【0055】
60nm厚さの酸化インジウムスズ(ITO)電極を、不活発アルゴン環境のrf-スパッタリング
を用いて、ガラス上に配置した。遅い成長速度及び低圧力を用いて、5nm未満の表面粗さ
を有するフィルムを達成し、基板を加熱することにより、ITOの比抵抗に渡って正確な制
御を可能にした。20nmの酸化ニッケル(NiO)を、アルゴン及び酸素下でITO電極上にrf-ス
パッタリングし、P型層を生じた。ここで、O2の割合により過剰な正孔ドナー部位の数が
決定される。その後、赤色の放出を有するように調整されるコロイド的に合成された亜鉛
セレン化カドミウム(ZnCdSe)ナノクリスタルを、NiO上へスピンコートした。遅い回転速
度を用いて、デバイス域全体に渡って、ナノクリスタル範囲のいくつかの単層を達成した
。その後、絶縁酸化亜鉛(ZnO)及び伝導性酸化スズ(SnO2)をアルゴン環境下で共同スパッ
タリングし、NiOの濃度と類似の担体濃度を有する40nmフィルムを得た。次に、銀の上部
電極を堆積した;しかし、ITO又は等しい伝導性の亜鉛酸化インジウムの上部電極をスパ
ッタリングすることによって、デバイスを調製することもできる。
【0056】
図4は、デバイスの外部量子効率スペクトル及びI〜V特性を示す。波長依存的な外部量
子効率曲線は、625nmで小さいピークを示した。これは、ナノクリスタルが入射光の吸収
に関与することを示している。電流-電圧プロットは、遮光下及び照明下でのデバイスの
電流応答を示す。高い暗電流(黒及び青曲線)は、金属酸化物層が薄いという事実に起因し
得る。0.2の開路電圧が保証された。
他の実施態様は、添付の請求項の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光起電力デバイスであって、
第一電荷輸送層に電荷を導入するように配置された第一電極と接触している、第一無機
物質を含有した第一電荷輸送層、
第二電荷輸送層に電荷を導入するように配置された第二電極と接触している、第二電荷
輸送層、
該第一電荷輸送層と該第二電荷輸送層との間に配置された複数の半導体ナノクリスタル
を含み、該複数の半導体ナノクリスタルが半導体ナノクリスタルの実質的な単分散集団で
あり、かつ
該第一無機物質がアモルファス、又は多結晶質である、前記光起電力デバイス。
【請求項2】
前記第一無機物質が無機半導体である、請求項1記載の光起電力デバイス。
【請求項3】
前記無機半導体が金属カルコゲニドを含む、請求項2記載の光起電力デバイス。
【請求項4】
前記金属カルコゲニドが混合金属カルコゲニドである、請求項3記載の光起電力デバイ
ス。
【請求項5】
前記金属カルコゲニドが酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ニオブ、硫化亜鉛、酸化インジウ
ムスズ、又はこれらの混合物を含む、請求項3記載の光起電力デバイス。
【請求項6】
前記第二電荷輸送層が第二無機物質を含む、請求項1記載の光起電力デバイス。
【請求項7】
前記第二無機物質がアモルファス又は多結晶質である、請求項6記載の光起電力デバイ
ス。
【請求項8】
前記第二無機物質が無機半導体である、請求項7記載の光起電力デバイス。
【請求項9】
前記無機半導体が金属カルコゲニドを含む、請求項8記載の光起電力デバイス。
【請求項10】
前記金属カルコゲニドが混合金属カルコゲニドである、請求項9記載の光起電力デバイ
ス。
【請求項11】
前記金属カルコゲニドが酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ニオブ、硫化亜鉛、酸化インジウ
ムスズ、又はこれらの混合物を含む、請求項9記載の光起電力デバイス。
【請求項12】
前記第一電荷輸送層が正孔輸送層である、請求項1記載の光起電力デバイス。
【請求項13】
前記第一電荷輸送層が電子輸送層である、請求項1記載の光起電力デバイス。
【請求項14】
前記複数の半導体ナノクリスタルが単層を形成する、請求項1記載の光起電力デバイス

【請求項15】
前記デバイスが透明である、請求項1記載の光起電力デバイス。
【請求項16】
前記第二電極が前記複数の半導体ナノクリスタルと直接接触する、請求項1記載のデバ
イス。
【請求項17】
デバイスの製造方法であって、
電極の上に第一無機物質を含む第一電荷輸送層を堆積すること;
該電極の上に複数の半導体ナノクリスタルを堆積すること(ここで、該複数の半導体ナ
ノクリスタルは半導体ナノクリスタルの実質的な単分散集団であり、かつ該複数の半導体
ナノクリスタルは該第一電荷輸送層と電気的に接触される);及び
該電極の上に第二無機物質を含む第二電荷輸送層を堆積すること(ここで該複数の半導
体ナノクリスタルは該第二電荷輸送層と電気的に接触される)を含み、
該第一無機物質がアモルファス、又は多結晶質である、前記方法。
【請求項18】
前記第一無機物質を堆積することがスパッタリングを含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記第一無機物質が無機半導体である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記無機半導体が金属カルコゲニドを含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記金属カルコゲニドが混合金属カルコゲニドである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記金属カルコゲニドが酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ニオブ、硫化亜鉛、酸化インジウ
ムスズ又はこれらの混合を含む、請求項20記載の方法。
【請求項23】
前記第二無機物質を堆積することがスパッタリングを含む、請求項17記載の方法。
【請求項24】
前記第二無機物質が無機半導体である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記無機半導体が金属カルコゲニドを含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記金属カルコゲニドが混合金属カルコゲニドである、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記金属カルコゲニドが酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ニオブ、硫化亜鉛、酸化インジウ
ムスズ又はこれらの混合を含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記デバイスが透明である、請求項17記載の方法。
【請求項29】
前記第二電極が前記複数の半導体ナノクリスタルと直接接触する、請求項17記載の方法

【請求項30】
デバイスに励起波長の光を曝すことを含む、電流を発生する方法であって、
該デバイスは、第一電荷輸送層に電荷を導入するように配置された第一電極と接触して
いる第一無機物質を含有した第一電荷輸送層;
第二電荷輸送層に電荷を導入するように配置された第二電極と接触している第二電荷輸
送層;及び
該第一電荷輸送層と該第二電荷輸送層との間に配置された複数の半導体ナノクリスタル
を含み、該複数の半導体ナノクリスタルが半導体ナノクリスタルの実質的な単分散集団で
あり、かつ
該第一無機物質がアモルファス、又は多結晶質である、前記方法。
【請求項31】
前記第一無機物質が無機半導体である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記無機半導体が金属カルコゲニドを含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記金属カルコゲニドが混合金属カルコゲニドである、請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記金属カルコゲニドが酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ニオブ、硫化亜鉛、酸化インジウ
ムスズ、又はこれらの混合物を含む、請求項32記載の方法。
【請求項35】
前記第二無機物質がアモルファス、又は多結晶質である、請求項30記載の方法。
【請求項36】
前記第二無機物質が無機半導体である、請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記無機半導体が金属カルコゲニドを含む、請求項36記載の方法。
【請求項38】
前記金属カルコゲニドが混合金属カルコゲニドである、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記金属カルコゲニドが酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ニオブ、硫化亜鉛、酸化インジウ
ムスズ、又はこれらの混合物を含む、請求項37記載の方法。
【請求項40】
前記デバイスが透明である、請求項30記載の方法。
【請求項41】
前記第二電極が前記複数の半導体ナノクリスタルと直接接触する、請求項30記載の方法


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−58794(P2013−58794A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−256583(P2012−256583)
【出願日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【分割の表示】特願2010−514708(P2010−514708)の分割
【原出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (233)
【Fターム(参考)】