説明

半導体パッケージの冷却装置

【課題】冷却効果の高い半導体パッケージの冷却装置を提供する。
【解決手段】本発明の半導体パッケージの冷却装置は、冷却媒体300の循環装置100と、循環装置100によって冷却媒体300が内部で循環する冷却器200と、を備え、冷却器200は、半導体装置420に熱伝達媒体500を介して接触するプレート部240を有し、プレート部240は、半導体装置420の反りに略倣う凹み形状であって、且つ冷却器200内の内圧変化によって変形可能な厚さに形成されており、冷却器200内の内圧を変化させることで、半導体装置420の反りに追従させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パッケージの冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージの大容量化に伴い、当該半導体パッケージの発熱量の増大を招いている。そこで、半導体パッケージの冷却装置(以下、単に冷却装置と省略する場合がある。)が種々、開発されている(特許文献1〜6を参照)。
【0003】
ここで、半導体パッケージを成す半導体装置と当該半導体装置が実装される配線基板とは、熱膨張が異なるため、半導体装置に反りが生じることがある。一般的な冷却装置は、特許文献1〜6に開示されているように、半導体装置の上面に熱伝達媒体などを介して接触させることで、半導体装置の熱を吸収する構成である。そのため、冷却装置は、冷却効果等を考慮すると、半導体装置の反りを吸収することができる構成であることが好ましい。
【0004】
そこで、特許文献1の冷却装置は、ファンベースに複数の冷却フィンが立設されており、当該冷却フィンがブラケット内に収容されている。ファンベースの下面は略円弧状であって、故にファンベースの厚さは中央に近付くにつれ薄くなるように形成されている。ブラケットの上端開口部は板バネによって塞がれており、当該板バネと中央近傍に配置された冷却ファンの上端との間にスペーサが配置されている。これにより、半導体装置が反った際に、半導体装置における最も反りが大きい中央部にファンベースが板バネによって押し当てられ、ファンベースが半導体装置の反りに倣う。
【0005】
ところで、上述のように一般的な冷却装置は、半導体装置の上面にサーマルグリースやコンパウンドなどの熱伝達媒体を介して接触する構成である。この場合、冷却装置は、熱伝達媒体の所謂ポンプアウトを抑止する構成であることが好ましい。ポンプアウトのメカニズムを図面に基づいて説明する。図3は、半導体装置に反りが生じている状態での冷却装置を示す。図4は、半導体装置に反りが生じていない状態での冷却装置を示す。図5は、ポンプアウトによって熱伝達媒体がケース部の下面と半導体装置の上面との間から押し出された状態を示す。ちなみに、図3及び図5では、半導体装置420の反りを強調するあまり、半導体装置420の半田ボールが配線基板410から離れているが、半導体装置420の半田ボールは配線基板410に電気的に接続されているものとする。
【0006】
図示例の冷却構造は、冷却媒体300の循環装置100、冷却器200を備える。循環装置100は、熱交換器110、リザーブタンク120、ポンプ130を備える。冷却器200は、ケース部210、ケース部210に設けられた挿入口220及び排出口230を備える。ケース部210の下面は、変形しない平板構造とされており、熱伝達媒体500を介して半導体装置420の上面に接触している。
【0007】
このような構成により、リザーブタンク120に蓄えられた冷却媒体300は、ポンプ130によってケース部210の挿入口220から当該ケース部210内に送られる。冷却媒体300は、半導体装置420から熱伝達媒体500を介してケース部210に伝達される熱を吸収する。熱を吸収した冷却媒体300は、ケース部210の排出口230から排出され、熱交換器110に送られる。そして、冷却媒体300は、熱交換器110で冷却され、リザーブタンク120に送られる。
【0008】
ここで、半導体装置420に反りが生じている図3の状態から、半導体装置420の反りが減少すると、図4に示すように、熱伝達媒体500は半導体装置420の反りの変化によって、ケース部210の下面と半導体装置420の上面との間から押し出される。このような図3と図4の状態が繰り返されると、図5に示すように、所謂ポンプアウト現象によって熱伝達媒体500がケース部210の下面と半導体装置420の上面との間から完全に押し出され、半導体装置420の冷却ができなくなる。
【0009】
そこで、特許文献6の冷却装置は、ケース部の中央部近傍に通孔を形成している。半導体装置が反った際に、熱伝達媒体がケース部の下面と半導体装置の上面との間から押し出されないように、熱伝達媒体を当該通孔に導く。そして、半導体装置の反りが減少すると、熱伝達媒体は当該通孔から引き戻され、ケース部の下面と半導体装置の上面との間に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−217358号公報
【特許文献2】特開2008−227336号公報
【特許文献3】特開平8−172148号公報
【特許文献4】国際公開第1999/16128号
【特許文献5】特開2009−218603号公報
【特許文献6】特開2002−93962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1〜5の冷却装置は、熱伝達媒体のポンプアウト現象を防ぐことができる構成でない。
特許文献6の冷却装置は、熱伝達媒体で半導体装置の反りを吸収する構成であり、ケース部の下面が半導体装置の反りに倣う構成ではない。そのため、特許文献6の冷却装置は、半導体装置の反りに応じて、半導体装置の上面とケース部の下面との間に間隔が大きな箇所が存在し、半導体装置の熱がケース部に良好に伝達されず、冷却効果が低下する可能性がある。
【0012】
本発明の目的は、上述した課題を解決する半導体パッケージの冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る半導体パッケージの冷却装置は、冷却媒体の循環装置と、前記循環装置によって前記冷却媒体が内部で循環する冷却器と、を備え、前記冷却器は、半導体装置に熱伝達媒体を介して接触するプレート部を有し、前記プレート部は、半導体装置の反りに略倣う凹み形状であって、且つ前記冷却器内の内圧変化によって変形可能な厚さに形成されており、前記冷却器内の内圧を変化させることで、前記半導体装置の反りに追従させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、冷却効果の高い半導体パッケージの冷却装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る半導体パッケージの冷却装置における、半導体装置が反っている状態での使用形態を示す図である。
【図2】本発明に係る半導体パッケージの冷却装置における、半導体装置が反っていない状態での使用形態を示す図である。
【図3】関連する半導体パッケージの冷却装置における、半導体装置が反っている状態での使用形態を示す図である。
【図4】関連する半導体パッケージの冷却装置における、半導体装置が反っていない状態での使用形態を示す図である。
【図5】関連する半導体パッケージの冷却装置における、ポンプアウト現象の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態に係る半導体パッケージの冷却装置について説明する。但し、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0017】
本実施の形態の冷却装置1は、図1に示すように、循環装置100、冷却器200を備える。循環装置100は、水、油、空気などの冷却媒体300を循環させるシステムである。本実施の形態では、冷却媒体300として水を用いる。循環装置100は、熱交換器110、リザーブタンク120、ポンプ130を備える。これらの要素は、配管140で接続されている。
【0018】
冷却器200は、ケース部210、ケース部210に設けられた挿入口220及び排出口230を備える。ケース部210は、平面から見て半導体パッケージ400を覆うことができる平面積を有している。ケース部210は、密閉された箱型形状に形成されている。
【0019】
ケース部210の上面には、挿入口220及び排出口230が形成されている。挿入口220は、配管140を介してポンプ130に接続されている。排出口230には、配管140を介して熱交換器110に接続されている。
【0020】
ケース部210の下面は、プレート部240(以下、ケース部210の下面と同一の符号240を付する。)とされている。但し、プレート部240は、少なくとも半導体装置420の上面を覆うことができる平面積を有していれば良い。
【0021】
プレート部240は、半導体パッケージ400を成す配線基板410に半導体装置420が電気的に接続された初期状態、即ち未だに半導体装置420が稼働していない状態における、半導体装置420の反りに略倣う凹み形状に形成されている。また、プレート部240は、冷却器200内の内圧変化によって変形可能な厚さを有する薄板又は膜で構成されている。ちなみに、図1では、半導体装置420の反りを強調するあまり、半導体装置420の半田ボールが配線基板410から離れているが、半導体装置420の半田ボールは配線基板410に電気的に接続されているものとする。
【0022】
このような構成の冷却装置1は、図1に示すように、ケース部210のプレート部240を半導体装置420の上面に熱伝達媒体500を介して接触させて使用する。熱伝達媒体500としては、一般的なサーマルグリースやコンパウンドなどを用いることができる。本実施の形態では、熱伝達媒体としてサーマルグリースを用いる。
【0023】
冷却装置1のポンプ130を稼働させると、リザーブタンク120に蓄えられた冷却媒体300が、当該ポンプ130によってケース部210の挿入口220から当該ケース部210内に送られる。冷却媒体300は、半導体装置420から熱伝達媒体500を介してケース部210に伝達される熱を吸収する。熱を吸収した冷却媒体300は、ケース部210の排出口230から排出され、熱交換器110に送られる。そして、冷却媒体300は、熱交換器110で冷却され、リザーブタンク120に送られる。このように冷却装置1は、半導体パッケージ400の冷却を実現する構造となっており、冷却媒体300が途中で大気へ蒸発したり、大気へ漏れ出したりすることのない構造となっている。ちなみに、熱交換器110は、熱せられた冷却媒体300の熱膨張で冷却器200内の内圧を上昇させ、プレート部240を半導体装置420の反りの減少に倣うように変化させることができる程度に、冷却媒体300を冷却する。
【0024】
半導体装置420の稼働率が高くなって、半導体パッケージ400が発熱すると、半導体装置420の反りは小さくなる。このとき、発熱した半導体装置420の熱は、熱伝達媒体500を介してケース部210のプレート部240に伝達される。そして、プレート部240に伝達された熱は、冷却媒体300に伝達される。冷却媒体300は、伝達された熱によって膨張する。これにより、ケース部210内の内圧が上昇するのに伴って、図2に示すように、プレート部240は半導体装置420を押し付けるように変形する。
【0025】
一方、半導体装置420の稼働率が低くなって、半導体パッケージ400の発熱が少なくなると、再び半導体装置420の反りは大きくなる。このとき、冷却媒体300は、半導体装置420の稼働率が高いときの水温よりも低くなるので、ケース部210内の内圧が低下するのに伴って、プレート部240は凹み形状に復帰しようとする。
【0026】
このように冷却装置1のプレート部240は、ダイヤフラムにように機能し、半導体装置420の温度変化に伴う反りに倣うことができる。そのため、半導体装置420の下面とプレート部240とを間隔を全領域で比較的等しくすることができ、半導体装置420の発熱をケース部210に良好に伝達することができ、冷却効果が高い。
【0027】
しかも、半導体装置420の下面とプレート部240との間隔は局所的に大きく変化しないので、熱伝達媒体500が押し出されることがなく、所謂ポンプアウト現象を防ぐことができ、やはり冷却効果が高い。
【0028】
また、半導体装置420が反りのない状態から反りが生じた状態に変化する際は、プレート部240が凹み形状に復帰しようとし、半導体装置420の上面とプレート部240との間に負圧が生じるので、相互間に熱伝達媒体500が良好に収容される。
【0029】
本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0030】
100 循環装置、110 熱交換器、120 リザーブタンク、130 ポンプ、140 配管
200 冷却器、210 ケース部、220 挿入口、230 排出口、240 プレート部
300 冷却媒体
400 半導体パッケージ、410 配線基板、420 半導体装置
500 熱伝達媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却媒体の循環装置と、
前記循環装置によって前記冷却媒体が内部で循環する冷却器と、
を備え、
前記冷却器は、半導体装置に熱伝達媒体を介して接触するプレート部を有し、
前記プレート部は、半導体装置の反りに略倣う凹み形状であって、且つ前記冷却器内の内圧変化によって変形可能な厚さに形成されており、前記冷却器内の内圧を変化させることで、前記半導体装置の反りに追従させることを特徴とする半導体パッケージの冷却装置。
【請求項2】
前記熱伝達媒体を介して、前記半導体装置の熱が前記冷却器に伝達され、前記冷却器の内部を循環する前記冷却媒体が温められることで、前記冷却器内の内圧を上昇させて前記プレート部を前記熱伝達媒体を介して前記半導体装置に押し付けるように変化させ、前記プレート部を前記半導体装置の反りに追従させることを特徴とする請求項1に記載の半導体パッケージの冷却装置。
【請求項3】
前記冷却器は、前記冷却媒体が循環するケース部と、前記ケース部に前記冷却媒体を挿入する挿入口と、前記ケース部から前記冷却媒体を排出する排出口と、前記ケース部の下面に設けられたプレート部と、を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体パッケージの冷却装置。
【請求項4】
前記プレート部の凹み形状は、半導体装置を配線基板に電気的に接続した初期状態における、前記半導体装置の反りに略倣うように形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体パッケージの冷却装置。
【請求項5】
前記熱伝達部材は、サーマルグリースであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体パッケージの冷却装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−104550(P2012−104550A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249770(P2010−249770)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000168285)エヌイーシーコンピュータテクノ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】