説明

半導体モジュール

【課題】半導体スイッチを小さい負担で駆動できるとともに、半導体スイッチに十分なゲート電流を流すことができ、しかも、ゲート配線のインピーダンスによる障害を回避できる半導体モジュール。
【解決手段】ゲートに印加される電圧に応じてオンオフする半導体スイッチQ1と、半導体スイッチのソース電位に対して正極性を有する正極コンデンサ110と、半導体スイッチのソース電位に対して負極性を有する負極コンデンサ111と、正極コンデンサを充電する機能を有し、半導体スイッチをターンオンさせる場合は正極コンデンサからの電流を半導体スイッチのゲートに流すターンオン制御部112と、負極コンデンサを充電する機能を有し、半導体スイッチをターンオフさせる場合は負極コンデンサからの電流を半導体スイッチのゲートに流すターンオフ制御部113を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインバータ装置のアーム回路に用いられる半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの進歩に伴い、これを組み込んだ半導体モジュールの高速化および大容量化が実現されている。大容量の半導体モジュールにおいては、その内部に組み込まれた半導体デバイスの面積が大きくなるため、入力容量(ゲート−ソース間容量)が大きくなる。
【0003】
図5はPWMインバータの1アーム分を抜き出して示すアーム回路の回路図である。アーム回路は、ゲート駆動回路10、ゲートインピーダンス30および半導体モジュールS1を備える。半導体モジュールS1は、半導体スイッチおよびその周辺回路をモジュール化したものである。ゲート駆動回路10は、半導体モジュールS1を駆動するための制御信号を生成し、生成された制御信号をゲート配線を経由して半導体モジュールS1に出力する。
【0004】
ゲートインピーダンス30は、ゲート駆動回路10の内部インピーダンスおよびゲート駆動回路10と半導体モジュールS1を接続するゲート配線のインピーダンスを含み、インダクタンスを主成分とする。ゲートインピーダンス30の一端はゲート駆動回路10に接続され、他端は半導体モジュールS1の内部のゲート抵抗20に接続される。ゲートインピーダンス30は、100kW以上の電力変換器では、配線長が数10cm〜1m以上になることもあり、数100nHになる。
【0005】
半導体モジュールS1は、ゲート抵抗20、半導体スイッチQ1、ダイオードD1、陽極端子1および陰極端子2を備える。半導体スイッチQ1のゲートとソースとの間には入力容量100が形成される。入力容量100は、半導体スイッチQ1の内部に存在する寄生容量であり、半導体モジュールS1の電流容量に依存して大きくなる。ゲート抵抗20は、半導体スイッチQ1における寄生振動防止用であり、一端はゲートインピーダンス30に接続され、他端は半導体スイッチQ1のゲート電極Gに接続されている。
【0006】
半導体スイッチQ1は、ゲートG−ソースS間電圧が一定値以上になるとドレインD−ソースS間を通電し、それ以外は遮断する。ゲートG−ソースS間電圧はデバイス固有の値であり、しきい値と呼ばれる。なお、図5では、半導体スイッチQ1としてMOSFETを用いたが、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)でも同様である。
【0007】
ダイオードD1は、半導体スイッチQ1のドレインとソースとの間に設けられ、カソードはドレインに接続され、アノードはソースに接続される。陽極端子1は、半導体スイッチQ1のドレインから引き出され、陰極端子2は、半導体スイッチQ1のソースから引き出されている。陽極端子1および陰極端子2は、それぞれ、図示しない電源または負荷に接続される。
【0008】
次に、従来のアーム回路のスイッチング動作を図6に示す波形図を参照しながら説明する。ゲート駆動回路10は、半導体スイッチQ1をオンオフさせる場合、矩形波電圧V(gs0)を出力する。矩形波電圧V(gs0)は、ゲートインピーダンス30およびゲート抵抗20を経由して半導体スイッチQ1のゲートに印加され、半導体スイッチQ1のG−S間電圧V(gs)になる。G−S間電圧V(gs)の変化率dv/dtは、入力容量100の充放電によって抑制される。充放電電流の変化率は、ゲートインピーダンス30によって抑制される。このため、図6(b)に示すように、G−S間電圧V(gs)の変化に遅れが生じると同時に、半導体スイッチQ1のスイッチング速度が遅くなる。
【0009】
このとき、ゲート駆動回路10の電流は、図6(a)のI(R2)で示され、1Aに近いピークを有する。ピーク電流をゲート駆動回路10から流す必要があるので、ゲート駆動回路10の電気的ストレスが大きくなると同時に、ゲート駆動回路10の小型化の制約になっている。
【0010】
図7は半導体スイッチQ2としてJFET(Junction Field-Effect Transistor)を用いた場合のアーム回路の回路図である。JFETは、G−S間に順方向電圧を印加すると順方向電流が流れるため、JFETのターンオン時には、ゲートにパルス電流を流す回路が必要になる。JFETを用いた回路の詳細は非特許文献1に説明されている。
【0011】
なお、特許文献1では、JFETをオンオフさせる回路が説明されているが、G−S間に順方向通電特性があるSIT(Static induction transistor)、HEMT(High Electron Mobility Transistor)またはBJT(Bipolar junction transistor)についても同様である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Robin Kelley, SemiSouth, USA、「Optimized Gate Driver for Enhancement-Mode SiC JFET Used in 480VAV SMPS and 1kV PV-Inverters」PCIM Europe 2009 12 . 14 May 2009, Nuremberg
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
半導体スイッチのスイッチング速度は、半導体スイッチのG−S間電圧波形V(gs)に関係し、特に、閾値付近におけるG−S間の電圧変化率dv(gs)/dtが大きく影響する。半導体スイッチには入力容量が存在するので、高い電圧変化率dv(gs)/dtを得るためにはゲート駆動回路からピーク値が大きい電流を流す必要がある。このため、ゲート駆動回路の負担が大きいという問題がある。
【0014】
また、実際の回路では、ゲート駆動回路と半導体スイッチの間にゲートインピーダンスとゲート抵抗が存在するので、充分なゲート電流を流すことは難しいという問題がある。
【0015】
さらに、JFETのゲート駆動回路のようにターンオン時に積極的に電流を流す必要がある場合は、ゲート配線のインピーダンスが大きな障害になるとういう問題がある。
【0016】
本発明の課題は、半導体スイッチを小さい負担で駆動できるとともに、半導体スイッチに十分なゲート電流を流すことができ、しかも、ゲート配線のインピーダンスによる障害を回避できる半導体モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決するために、本発明に係る半導体モジュールは、ゲートに印加される電圧に応じてオンオフする半導体スイッチと、半導体スイッチのソース電位に対して正極性を有する正極コンデンサと、半導体スイッチのソース電位に対して負極性を有する負極コンデンサと、正極コンデンサを充電する機能を有し、半導体スイッチをターンオンさせる場合は正極コンデンサからの電流を半導体スイッチのゲートに流すターンオン制御部と、負極コンデンサを充電する機能を有し、半導体スイッチをターンオフさせる場合は半導体スイッチのゲートからの電流を負極コンデンサに流すターンオフ制御部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ゲート配線のインピーダンスの影響を回避することができ、半導体スイッチのG−S間の電圧変化率dv(gs)/dtを大きくできるので、高速なスイッチング動作が可能になる。また、半導体スイッチのゲートに印加される電圧を生成するゲート駆動回路のピーク電流を小さくできるので負担が小さくなり、ゲート駆動回路を小型にできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1に係る半導体モジュールを含むアーム回路の回路図である。
【図2】本発明の実施例1に係る半導体モジュールのスイッチング動作のシミュレーション結果を示す波形図である。
【図3】本発明の実施例2に係る半導体モジュールを含むアーム回路の回路図である。
【図4】本発明の実施例2に係る半導体モジュールのスイッチング動作のシミュレーション結果を示す波形図である。
【図5】従来の半導体モジュールを含むPWMインバータの1アーム分を抜き出して示すアーム回路の構成を示す回路図である。
【図6】図5に示すアーム回路のスイッチング動作を説明するため波形図である。
【図7】従来のJFETを用いたアーム回路の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態に係る半導体モジュールについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明の実施例1に係る半導体モジュールを含むアーム回路の回路図である。アーム回路は、ゲート駆動回路10、ゲートインピーダンス30および半導体モジュールS1を備える。半導体モジュールS1は、半導体スイッチおよびその周辺回路をモジュール化したものである。
【0022】
ゲート駆動回路10は、半導体モジュールS1を駆動するための矩形波電圧V(gs0)を制御信号として生成し、生成された制御信号をゲート配線を経由して半導体モジュールS1に出力する。
【0023】
ゲートインピーダンス30は、ゲート駆動回路10の内部インピーダンスおよびゲート駆動回路10と半導体モジュールS1とを接続するゲート配線のインピーダンスを含み、インダクタンスを主成分とする。ゲートインピーダンス30の一端はゲート駆動回路10に接続され、他端は半導体モジュールS1の内部のゲート抵抗114に接続される。
【0024】
半導体モジュールS1は、正極コンデンサ110、負極コンデンサ111、ターンオンを補助するトランジスタ112、ターンオフを補助するトランジスタ113、ゲート抵抗114、半導体スイッチQ1、ダイオードD1、陽極端子1および陰極端子2を備える。半導体スイッチQ1のゲートとソースとの間には入力容量100が形成されている。入力容量100は、半導体スイッチQ1の内部に存在する寄生容量であり、半導体モジュールS1の電流容量に依存して大きくなる。
【0025】
正極コンデンサ110は、一端がトランジスタ112のコレクタに接続され、他端が負極コンデンサ111の一端に接続されている。負極コンデンサ111の他端は、トランジスタ113のコレクタに接続される。正極コンデンサ110と負極コンデンサ111の接続点は、半導体スイッチQ1のソースに接続される。正極コンデンサ110および負極コンデンサ111は、入力容量100よりも充分大きい容量(10倍以上の容量)を有する。
【0026】
トランジスタ112は、本発明のターンオン制御部に対応する。トランジスタ112は、NPNトランジスタからなり、そのエミッタは半導体スイッチQ1のゲートとゲート抵抗114との接続点に接続され、ベースはゲートインピーダンス30とゲート抵抗114の接続点に接続されている。トランジスタ112は、正極コンデンサ110からの電流を入力容量100に流して充電する機能の他に、正極コンデンサ110の充電機能をも有する。即ち、正極コンデンサ110には、ゲート駆動回路10から正電圧が送られてきた場合にトランジスタ112のベース−コレクタ間のPN接合を介して正電圧が充電される。
【0027】
トランジスタ113は、本発明のターンオフ制御部に対応する。トランジスタ113は、PNPトランジスタからなり、そのエミッタは半導体スイッチQ1のゲートとゲート抵抗114との接続点に接続され、ベースはゲートインピーダンス30とゲート抵抗114との接続点に接続される。トランジスタ113は、入力容量100からの電流を負極コンデンサ111に流して充放電する機能の他に、負極コンデンサ111の充電機能をも有する。即ち、負極コンデンサ111には、ゲート駆動回路10から負電圧が送られてきているときにトランジスタ113のベース−コレクタ間のNP接合を介して負電圧が充電される。
【0028】
ゲート抵抗114は、半導体スイッチQ1における寄生振動の防止用であり、一端はゲートインピーダンス30に接続され、他端は半導体スイッチQ1のゲートに接続される。
【0029】
半導体スイッチQ1は、ゲート−ソース間電圧が一定値以上の場合にドレイン−ソース間を通電し、それ以外は遮断する。G−S間電圧はデバイス固有の値であり、しきい値と呼ばれている。なお、図1においては、半導体スイッチQ1としてMOSFETの記号を用いたが、IGBTを用いることもできる。
【0030】
ダイオードD1は、半導体スイッチQ1のドレイン電極Dとソース電極Sとの間に設けられ、そのカソードはドレイン電極Dに接続され、アノードはソース電極Sに接続される。
【0031】
また、陽極端子1は、半導体スイッチQ1のドレインから引き出され、陰極端子2は、半導体スイッチQ1のソースから引き出されている。陽極端子1および陰極端子2は、それぞれ、図示しない電源または負荷に接続される。
【0032】
次に、このように構成される実施例1に係る半導体モジュールを含むアーム回路のスイッチング動作を、図2に示す波形図を参照しながら説明する。
【0033】
ゲート駆動回路10から出力される電圧V(gs0)が負の時、入力容量100の端子電圧も負となる。この状態において、図2(b)に示すように、ゲート駆動回路10から出力される電圧V(gs0)が負から正に変化すると、ゲート抵抗114に対して順方向の端子電圧が発生し、これに伴って、トランジスタ112のベース−エミッタ間に正電圧が印加され、トランジスタ112がオンする。これにより、正極コンデンサ110から入力容量100へ電流が流れて充電が行われる。この充電は、ゲート配線を経由しないため、ゲートインピーダンス30の影響を受けない。
【0034】
また、ゲート駆動回路10の電流は、ゲート抵抗114の電流とトランジスタ112のベース電流の和であるため、正極コンデンサ110の充放電電流に対してピーク値が小さくなっている。
【0035】
ゲート駆動回路10から出力される電圧V(gs0)が正から負に変化すると、ゲート抵抗114に対して逆方向の端子電圧が発生し、これに伴って、トランジスタ113のベース−エミッタ間に負電圧が印加され、トランジスタ113がオンする。これにより、負極コンデンサ111から入力容量100へ電流が流れて充電が行われる。この充電も、ゲート配線を経由しないため、ゲートインピーダンス30の影響を受けない。
【0036】
なお、トランジスタ112およびトランジスタ113としては、直流電流増幅率(hfe)が大きいものが用いられる。これにより、大きい電流を半導体スイッチQ1に流すことができるので、入力容量100の充放電時間が短縮され、半導体スイッチQ1のスイッチング遅れを短縮すると同時にスイッチング速度を高速化できる。その結果、即応性に優れた半導体モジュールを提供できる。
【0037】
図2は、実施例1に係る半導体モジュールのスイッチング動作のシミュレーション結果を示す波形図である。図2において、I(R2)は、入力容量100の充電電流であり、この電流は例えば7Aである。I(L30)は、ゲート駆動回路10の電流であり、この電流は例えば300mAである。
【0038】
図2(a)に示すように、ゲート駆動回路10のピーク電流は従来(図6参照)に較べて小さい。また、図2(b)に示すように、半導体スイッチQ1のゲートに印加される電圧V(gs)が負から正になるときに、正極コンデンサ110が放電し、その端子電圧V(vdc1)は、図2(c)に示すように、41μs付近で若干低くなる程度である。一方、半導体スイッチQ1のゲートに印加される電圧V(gs)が正から負になるときは、負極コンデンサ111が放電し、その端子電圧V(vdc2)は、図2(c)に示すように、50μs付近で若干高くなる。
【0039】
このように、実施例1に係る半導体モジュールでは、最短経路で入力容量100に対する充放電が行われるため、従来の波形(図6参照)と比較して、ゲートに印加する電圧V(gs)の立ち上がりおよび立ち下がり時間を短縮できる。また、ゲート駆動回路10が動作してから半導体スイッチQ1がスイッチング動作するまでの遅れ時間を短縮できる。
【実施例2】
【0040】
図3は本発明の実施例2に係る半導体モジュールを含むアーム回路の回路図である。アーム回路は、ゲート駆動回路10、ゲートインピーダンス30および半導体モジュールS1’を備える。半導体モジュールS1’は、実施例1に係る半導体モジュールS1に、コンデンサ115、ダイオード116、抵抗117、ダイオード118および抵抗119が追加されるとともに、半導体スイッチQ2がJFETにより構成される。コンデンサ115は、本発明の過渡コンデンサに対応する。以下、実施例1と相違する部分を主に説明する。
【0041】
コンデンサ115は、ゲート抵抗114とゲートインピーダンス30との接続点と、トランジスタ112のベースとの間に設けられ、トランジスタ112を、半導体スイッチQ2のターンオンの過渡時にのみ導通(オン)させるように動作させる。
【0042】
抵抗119の一端は、ゲート抵抗114とゲートインピーダンス30との接続点に接続され、他端はダイオード118のアノードに接続される。ダイオード118のカソードは、トランジスタ112のコレクタと正極コンデンサ110との接続点に接続される。抵抗119およびダイオード118は、正極コンデンサ110を正極に充電する充電回路として機能する。
【0043】
抵抗117の一端は、トランジスタ113のコレクタと負極コンデンサ111との接続点に接続され、他端はダイオード116のアノードに接続される。ダイオード116のカソードは、トランジスタ112のベースとコンデンサ115との接続点に接続される。抵抗117およびダイオード116は、コンデンサ115を放電する放電回路として機能する。
【0044】
次に、このように構成される実施例2に係る半導体モジュールを含むアーム回路のスイッチング動作を、図4に示す実施例2に係る半導体モジュールのスイッチング動作のシミュレーション結果を示す波形図を参照しながら説明する。図4(a)では、I(R2)はJFETのゲート電流と入力容量100の充電電流の和であり、I(L30)はゲート駆動回路10の電流である。
【0045】
なお、ゲート駆動回路10から出力される電圧V(gs0)を正から負に変化させるターンオフ動作(図4における50μs付近の動作)は、図1および図2を参照して説明した実施例1に係る半導体モジュールの動作と同じであるので、その説明を省略する。
【0046】
ゲート駆動回路10から出力される電圧V(gs0)が負から正に変化する場合のターンオン動作は、以下のようになる。即ち、図4(b)に示すように、ゲート駆動回路10から出力される電圧V(gs0)が負から正に変化すると、抵抗114に順方向の電圧が発生する。
【0047】
このとき、コンデンサ115を介してトランジスタ112のベースに電流が流れてトランジスタ112が導通し、正極コンデンサ110からJFETのゲートに対して電流が供給される。コンデンサ115が充電され、その端子電圧が一定値以上になると、トランジスタ112のベース電流が流れなくなるので、トランジスタ112がオフする。トランジスタ112から放電した正極コンデンサ110は、抵抗119とダイオード118によって充電される。
【0048】
コンデンサ115の放電は、ゲート駆動回路10から出力される電圧V(gs0)が負の時に、コンデンサ115、ダイオード116、抵抗117、負極コンデンサ111およびゲート駆動回路10を介して行われる。
【0049】
図4(a)に示すように、ゲート駆動回路10のピーク電流は従来に較べて小さい。また、図4(b)に示すように、半導体スイッチQ2のゲートに印加される電圧V(gs)が負から正になるときに、正極コンデンサ110が放電し、その端子電圧V(vdc1)は、図4(c)に示すように、41μs付近で若干低くなる。一方、半導体スイッチQ2のゲートに印加される電圧V(gs)が正から負になるときは、負極コンデンサ111が放電し、その端子電圧V(vdc2)は、図4(c)に示すように、51μs付近で若干高くなる。
【0050】
このように、実施例2に係る半導体モジュールでは、半導体スイッチQ2のターンオン時においては、図4(a)に示すように、そのゲートに、ゲート電流I(R2)として充分なパルス電流を流している。また、この時のゲート駆動回路10のピーク電流I(L30)は非常に小さい。これにより、半導体スイッチQ2のゲート−ソース間の変化率が改善されている。
【0051】
以上説明したように本発明によれば、ゲート駆動回路のピーク電流が抑えられるので、ゲート駆動回路の負担を小さくすることができる。その結果、ゲート駆動回路を小型化できる。また、ゲート駆動回路と半導体モジュールとの間に存在するゲート配線のインピーダンスによって発生する電圧降下が小さくなるので、ゲート配線のインピーダンスの影響を受けにくくすることができる。
【0052】
さらに、半導体スイッチのゲート−ソース間電圧の変化率を高くできるため、半導体スイッチの高速スイッチングを実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、インバータ装置などのアーム回路に利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 陽極端子
2 陰極端子
10 ゲート駆動回路
30 ゲートインピーダンス
110 正極コンデンサ
111 負極コンデンサ
112,113 トランジスタ
114 ゲート抵抗
115 コンデンサ
116,118 ダイオード
117,119 抵抗
S1,S1’ 半導体モジュール
Q1,Q2 半導体スイッチ
D1 ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲートに印加される電圧に応じてオンオフする半導体スイッチと、
前記半導体スイッチのソース電位に対して正極性を有する正極コンデンサと、
前記半導体スイッチのソース電位に対して負極性を有する負極コンデンサと、
前記正極コンデンサを充電する機能を有し、前記半導体スイッチをターンオンさせる場合には前記正極コンデンサからの電流を前記半導体スイッチのゲートに流すターンオン制御部と、
前記負極コンデンサを充電する機能を有し、前記半導体スイッチをターンオフさせる場合には前記負極コンデンサからの電流を前記半導体スイッチのゲートに流すターンオフ制御部と、
を備えることを特徴とする半導体モジュール。
【請求項2】
前記ターンオン制御部は、前記半導体スイッチのゲートに印加される電圧が負から正に変化する場合にオンして前記正極コンデンサからの電流を前記半導体スイッチのゲートに流すトランジスタからなり、
前記ターンオフ制御部は、前記半導体スイッチのゲートに印加される電圧が正から負に変化する場合にオンして前記半導体スイッチのゲートからの電流を前記負極コンデンサに流すトランジスタからなることを特徴とする請求項1記載の半導体モジュール。
【請求項3】
前記半導体スイッチのターンオンの過渡時にのみ前記ターンオン制御部をオンさせるための過渡コンデンサを備えることを特徴とする請求項1または請求項2記載の半導体モジュール。
【請求項4】
前記正極コンデンサを充電する充電回路および前記過渡コンデンサを放電させる放電回路を備えることを特徴とする請求項3記載の半導体モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−62965(P2013−62965A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200308(P2011−200308)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、新エネルギー・産業技術総合開発機構からの委託研究「次世代パワーエレクトロニクス技術開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】