説明

半導体モジュール

【課題】簡素な構成の半導体モジュールを提供すること。
【解決手段】半導体モジュール10は、第1構造体10Uaと第2構造体10Ubを備えている。第1構造体10Uaと第2構造体10Ubが共通形態である。第1構造体10Uaの第1出力バスバーUout1と第2構造体10Ubの高圧側バスバー10Pが共通形態であり、第1構造体10Uaの低圧側バスバー10Nと第2構造体10Ubの第2出力バスバーUout2が共通形態である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源の低圧側端子と高圧側端子の間に接続して用いられる半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
直流電圧を変圧して出力するコンバータ、直流電圧と交流電圧の間で変換して出力するインバータを構成するために半導体モジュールが利用されており、その一例が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−40926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の半導体モジュールでは、部品点数が少ない簡素な構成が望まれている。本明細書では、簡素な構成の半導体モジュールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示される半導体モジュールは、直流電源の低圧側端子と高圧側端子の間に接続して用いられる。半導体モジュールは、第1構造体と第2構造体を備えている。第1構造体は、第1基板と第1出力バスバーと低圧側バスバーと第1スイッチング素子を有している。第1出力バスバーは、第1基板上に設けられているとともに出力が提供される。低圧側バスバーは、第1基板上に設けられているとともに低圧側端子に電気的に接続される。第1スイッチング素子は、第1出力バスバーと低圧側バスバーの間に設けられている。第2構造体は、第2基板と第2出力バスバーと高圧側バスバーと第2スイッチング素子を有している。第2出力バスバーは、第2基板上に設けられているとともに出力が提供される。高圧側バスバーは、第2基板上に設けられているとともに高圧側端子に電気的に接続される。第2スイッチング素子は、第2出力バスバーと高圧側バスバーの間に設けられている。第1出力バスバーと第2出力バスバーが電気的に接続される。本明細書で開示される半導体モジュールでは、第1構造体と第2構造体が共通形態であることを特徴としている。ここで、第1出力バスバーと高圧側バスバーが共通形態であり、低圧側バスバーと第2出力バスバーが共通形態である。換言すれば、上記態様の半導体モジュールでは、第1出力バスバーと高圧側バスバーを共通形態とし、低圧側バスバーと第2出力バスバーを共通形態とすることで、第1構造体と第2構造体を共通形態とすることができる。上記態様の半導体モジュールは、1種類の構造体を用意することで構築することができる。上記態様の半導体モジュールは、部品点数が少ない簡素な構成である。
【0006】
第1構造体では、第1出力バスバーの少なくとも一部が第1基板に接触しており、低圧側バスバーの少なくとも一部が第1基板に接触していてもよい。第2構造体では、第2出力バスバーの少なくとも一部が第2基板に接触しており、高圧側バスバーの少なくとも一部が第2基板に接触していてもよい。上記態様の半導体モジュールでは、第1スイッチング素子で発生した熱が、第1出力バスバーと低圧側バスバーの双方を介して第1基板に放熱される。また、第2スイッチング素子で発生した熱は、第2出力バスバーと高圧側バスバーの双方を介して第2基板に放熱される。上記態様の半導体モジュールでは、第1構造体と第2構造体のそれぞれにおいて、スイッチング素子で発生した熱を基板にまで伝熱させる経路が2つ設けられており、スイッチング素子で発生した熱を効率良く基板に伝熱させることができる。
【0007】
第1構造体と第2構造体は、低圧側バスバーと高圧側バスバーが対向するとともに、第1出力バスバーと第2出力バスバーが対向するように積層されていてもよい。この態様の半導体モジュールでは、低圧側バスバーと高圧側バスバーが対向しているので、低圧側バスバーを流れる電流と高圧側バスバーを流れる電流が逆向きとなり、寄生インダクタンスが減少する。
【0008】
第1構造体では、第1出力バスバーの一部、第1スイッチング素子、低圧側バスバーの一部が第1基板の表面からこの順で積層してもよい。また、第2構造体では、高圧側バスバーの一部、第2スイッチング素子、第2出力バスバーの一部が第2基板の表面からこの順で積層していてもよい。この態様の半導体モジュールでは、第1スイッチング素子のアノードが第1基板側に配置され、第2スイッチング素子のアノードが第2基板側に配置されている。ここで、スイッチング素子のアノードには、スイッチング素子がIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)の場合のコレクタ、スイッチング素子がMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)の場合のドレインも含む。
【0009】
スイッチング素子のアノードが基板側に配置される態様の半導体モジュールは、低圧側バスバーと高圧側バスバーとの間に設けられているコンデンサをさらに備えていてもよい。この場合、低圧側バスバーは、第1スイッチング素子と接触する部位とコンデンサと接触する部位の間に屈曲部を有し、その屈曲部の存在する部位が第1基板に接触しているのが望ましい。また、高圧側バスバーは、第2スイッチング素子と接触する部位とコンデンサと接触する部位の間に突出部を有し、その突出部の存在する部位が第2基板に接触しているのが望ましい。低圧側バスバーの屈曲部の存在する部位が第1基板に接触していると、第1スイッチング素子からコンデンサに向けて低圧側バスバーを介して伝熱される熱のうちの一部が、屈曲部の存在する部位で第1基板に放熱される。また、高圧側バスバーの突出部の存在する部位が第2基板に接触していると、第2スイッチング素子からコンデンサに向けて高圧側バスバーを介して伝熱される熱のうちの一部が、突出部の存在する部位で第2基板に放熱される。この態様の半導体モジュールは、第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子で発生した熱がコンデンサにまで伝熱されるのを抑えることができる。
【0010】
第1構造体では、低圧側バスバーの一部、第1スイッチング素子、第1出力バスバーの一部が第1基板の表面からこの順で積層してもよい。また、第2構造体では、第2出力バスバーの一部、第2スイッチング素子、高圧側バスバーの一部が第2基板の表面からこの順で積層してもよい。この態様の半導体モジュールでは、第1スイッチング素子のカソードが第1基板側に配置され、第2スイッチング素子のカソードが第2基板側に配置される。ここで、スイッチング素子のカソードには、スイッチング素子がIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)の場合のエミッタ、スイッチング素子がMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)の場合のソースも含む。
【0011】
スイッチング素子のカソードが基板側に配置される態様の半導体モジュールは、低圧側バスバーと高圧側バスバーとの間に設けられているコンデンサをさらに備えていてもよい。この場合、低圧側バスバーは、第1スイッチング素子と接触する部位とコンデンサと接触する部位の間に突出部を有し、その突出部の存在する部位が第1基板に接触しているのが望ましい。また、高圧側バスバーは、第2スイッチング素子と接触する部位とコンデンサと接触する部位の間に屈曲部を有し、その屈曲部の存在する部位が第2基板に接触しているのが望ましい。低圧側バスバーの突出部の存在する部位が第1基板に接触していると、第1スイッチング素子からコンデンサに向けて低圧側バスバーを介して伝熱される熱のうちの一部が、突出部の存在する部位を介して第1基板に放熱される。また、高圧側バスバーの屈曲部の存在する部位が第2基板に接触していると、第2スイッチング素子からコンデンサに向けて高圧側バスバーを介して伝熱される熱のうちの一部が、屈曲部の存在する部位を介して第2基板に放熱される。この態様の半導体モジュールは、第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子で発生した熱がコンデンサにまで伝熱されるのを抑えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本明細書で開示される半導体モジュールは、部品点数が少ない簡素な構成である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、電力変換装置の回路の概要を示す。
【図2】図2は、半導体モジュールのうちのU相アームの斜視図を示す。
【図3】図3は、半導体モジュールのうちのU相アームの分解斜視図を示す。
【図4】図4は、半導体モジュールのうちのU相アームの断面図を示す。
【図5】図5は、半導体モジュールのうちのU相アームの第1変形例の断面図を示す。
【図6】図6は、半導体モジュールのうちのU相アームの第2変形例の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願明細書で開示される技術の特徴を整理しておく。
(第1特徴)本明細書で開示される半導体モジュールは、直流電源の低圧側端子と高圧側端子の間に接続して用いられ、直流電圧をスイッチングして出力を提供する。典型的には、本明細書で開示される半導体モジュールは、直流電圧を変圧して出力するコンバータ、直流電圧と交流電圧の間で変換して出力するインバータを構成するために用いられる。
(第2特徴)本明細書で開示される半導体モジュールは、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子を備えている。第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子の半導体材料は特に限定されないが、一例では、シリコン(Si)、炭化珪素(SiC)又は窒化ガリウム(GaN)が含まれる。第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子の種類は特に限定されないが、一例では、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が含まれる。また、第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子は、還流ダイオードを含むモノリシックICとして構成されていてもよい。
(第3特徴)本明細書で開示される半導体モジュールの基板は、放熱機能を有するのが望ましい。典型的には、基板は、ヒートスプレッダ、ヒートシンクを有する冷却器であるのが望ましい。
【実施例】
【0015】
図1に示されるように、半導体モジュール10は、直流電源11と交流モータ13の間に接続されたインバータ回路を構成している。半導体モジュール10は、直流電源11から供給される直流電圧をスイッチングすることにより、その直流電圧を交流電圧に変換して交流モータ13に供給する。
【0016】
半導体モジュール10は、直流電源の低圧側端子11Nに接続可能に構成される低圧側配線14Nと、直流電源11の高圧側端子11Pに接続可能に構成される高圧側配線14Pと、一端が低圧側配線14Nに接続されるとともに他端が高圧側配線14Pに接続される整流用の平滑コンデンサ12と、低圧側配線14Nと高圧側配線14Pの間で並列に接続されている3つの相アーム10U,10V,10Wを備えている。
【0017】
U相アーム10Uは、低圧側配線14Nと高圧側配線14Pの間で直列に接続された第1スイッチング素子SW1と第2スイッチング素子SW2を有しており、第1スイッチング素子SW1には第1還流ダイオードD1が並列に接続されており、第2スイッチング素子SW2には第2還流ダイオードD2が並列に接続されている。U相出力配線Uoutの一端が第1スイッチング素子SW1と第2スイッチング素子SW2の接続点に接続されており、U相出力配線Uoutの他端が交流モータ13に接続されている。V相アーム10Vは、低圧側配線14Nと高圧側配線14Pの間で直列に接続された第3スイッチング素子SW3と第4スイッチング素子SW4を有しており、第3スイッチング素子SW3には第3還流ダイオードD3が並列に接続されており、第4スイッチング素子SW4には第4還流ダイオードD4が並列に接続されている。V相出力配線Voutの一端が第3スイッチング素子SW3と第4スイッチング素子SW4の接続点に接続されており、V相出力配線Voutの他端が交流モータ13に接続されている。W相アーム10Wは、低圧側配線14Nと高圧側配線14Pの間で直列に接続された第5スイッチング素子SW5と第6スイッチング素子SW6を有しており、第5スイッチング素子SW5には第5還流ダイオードD5が並列に接続されており、第6スイッチング素子SW6には第6還流ダイオードD6が並列に接続されている。W相出力配線Woutの一端が第5スイッチング素子SW5と第6スイッチング素子SW6の接続点に接続されており、W相出力配線Woutの他端が交流モータ13に接続されている。一例として、本実施例では、スイッチング素子SW1〜6にはIGBTが用いられており、還流ダイオードD1〜6にはショットキーダイオードが用いられている。
【0018】
以下、U相アーム10Uの形態を詳細に説明するが、他のV相アーム10VとW相アーム10Wも同様の形態を備えている。例えば、半導体モジュール10は、以下で説明するU相アーム10Uと同様のものを3つ用意し、それらを縦方向に積層して構成してもよく、それらを面方向に並べて構成してもよい。半導体モジュール10は、以下で説明する基本ユニットを利用して様々な形態に構築することができる。なお、第1スイッチング素子SW1と第1還流ダイオードD1はモノリシックICとして構成されており、第2スイッチング素子SW2と第2還流ダイオードD2もモノリシックICとして構成されている。以下では、第1スイッチング素子SW1と第1還流ダイオードD1を含むモノリシックICを第1スイッチング素子SW1として記載し、第2スイッチング素子SW2と第2還流ダイオードD2を含むモノリシックICを第2スイッチング素子SW2として記載する。
【0019】
図2及び図3に示されるように、U相アーム10Uは、第1構造体10Uaと第2構造体10Ubを備えている。第1構造体10Uaは、U相アーム10Uのうちの低圧側(下側)に対応している。第2構造体10Ubは、U相アーム10Uのうちの高圧側(上側)に対応している。
【0020】
図3に示されるように、第1構造体10Uaと第2構造体10Ubは、z軸回りに180度回転して示されているものの、共通の形態を備えていることを特徴としている。第1構造体10Uaと第2構造体10Ubはいずれも、基板20(以下、便宜の上で、第1構造体10Uaの基板20を「第1基板」といい、第2構造体10Ubの基板20を第2基板ということがある)を備えている。基板20は、放熱部22と絶縁部24を有している。放熱部22は、例えば、熱伝導率の高い金属で構成されたヒートスプレッダー、又はヒートシンクを含む冷却器である。絶縁部24は、例えば、アルミニウムの金属層24aと窒化アルミニウムの絶縁層24bとアルミニウムの回路層24cが放熱部22の表面からこの順で積層された絶縁基板である。絶縁部24は、放熱部22の表面にロウ付けにより固定されている。
【0021】
図3に示されるように、第1構造体10Uaは、第1出力バスバーUout1と低圧側バスバー10Nと第1スイッチング素子SW1を有している。第1出力バスバーUout1は、第1基板20上に設けられており、x軸に長手方向を有する概ね平板形状である。第1出力バスバーUout1は、U相出力配線Uout(図1参照)に電気的に接続される。低圧側バスバー10Nは、第1基板20上に設けられており、x軸に長手方向を有する概ね平板形状である。低圧側バスバー10Nは、低圧側配線14N(図1参照)に電気的に接続される。第1出力バスバーUout1と低圧側バスバー10Nは、x軸方向において、第1基板20から反対向きに延出している。第1出力バスバーUout1と低圧側バスバー10Nの材料には、一例として銅(Cu)が用いられてもよい。第1スイッチング素子SW1は、第1出力バスバーUout1と低圧側バスバー10Nに間に設けられている。なお、第1スイッチング素子SW1のゲート電極用のバスバーの図示は省略されているが、他のバスバーとの干渉を避けるために、他のバスバーとは異なる方向(この例では、y軸方向)に沿って第1基板20から延出するように設けられるのが望ましい。
【0022】
図3に示されるように、第2構造体10Ubは、第2出力バスバーUout2と高圧側バスバー10Pと第2スイッチング素子SW2を有している。第2出力バスバーUout2は、第2基板20上に設けられており、x軸に長手方向を有する概ね平板形状である。第2出力バスバーUout2は、U相出力配線Uout(図1参照)に電気的に接続される。高圧側バスバー10Pは、第2基板20上に設けられており、x軸に長手方向を有する概ね平板形状である。高圧側バスバー10Pは、高圧側配線14P(図1参照)に電気的に接続される。第2出力バスバーUout2と高圧側バスバー10Pは、x軸方向において、第2基板20から反対向きに延出している。第2出力バスバーUout2と高圧側バスバー10Pの材料には、一例として銅(Cu)が用いられてもよい。第2スイッチング素子SW2は、第2出力バスバーUout2と高圧側バスバー10Pに間に設けられている。なお、第2スイッチング素子SW2のゲート電極用のバスバーの図示は省略されているが、他のバスバーとの干渉を避けるために、他のバスバーとは異なる方向(この例では、y軸方向)に沿って第2基板20から延出するように設けられるのが望ましい。
【0023】
図3に示されるように、第1構造体10Uaの第1出力バスバーUout1と第2構造体10Ubの高圧側バスバー10Pが共通形態である。第1出力バスバーUout1と高圧側バスバー10Pはそれぞれ、z軸に突出する突出部32を有しており、その突出部32がx軸に長手方向を有する平板部から突出するように構成されている。第1構造体10Uaの低圧側バスバー10Nと第2構造体10Ubの第2出力バスバーUout2が共通形態である。低圧側バスバー10Nと第2出力バスバーUout2はそれぞれ、屈曲部34を有しており、その屈曲部34によってx軸に長手方向を有する2枚の平板部がz軸方向にオフセットされるように構成されている。図2及び図3に示されるように、U相アーム10Uは、図3の状態から第2構造体10Ubをx軸回りに180度回転させて第1構造体10Ua上に積層して構築される。これにより、第1構造体10Uaの第1出力バスバーUout1と第2構造体10Ubの第2出力バスバーUout2がz軸方向に対向する。さらに、第1構造体10Uaの低圧側バスバー10Nと第2構造体10Ubの高圧側バスバー10Pがz軸方向に対向する。
【0024】
図4を参照し、U相アーム10Uをさらに詳細する。第1構造体10Uaでは、第1出力バスバーUout1と低圧側バスバー10Nが、絶縁部24の回路層24cの表面にロウ付けによって固定されている。第1出力バスバーUout1の一部、第1スイッチング素子SW1、低圧側バスバー10Nの一部が第1基板20の表面からこの順で積層している。第1スイッチング素子SW1では、コレクタが第1出力バスバーUout1に接触しており、エミッタが低圧側バスバー10Nに接触している。第1スイッチング素子SW1は、第1出力バスバーUout1と低圧側バスバー10Nのそれぞれに、はんだを介して接合されている。
【0025】
第2構造体10Ubでは、第2出力バスバーUout2と高圧側バスバー10Pが、絶縁部24の回路層24cの表面にロウ付けによって固定されている。高圧側バスバー10Pの一部、第2スイッチング素子SW2、第2出力バスバーUout2の一部が第2基板20の表面からこの順で積層している。第2スイッチング素子SW2では、コレクタが高圧側バスバー10Pに接触しており、エミッタが第2出力バスバーUout2に接触している。第2スイッチング素子SW2は、第2出力バスバーUout2と高圧側バスバー10Pのそれぞれに、はんだを介して接合されている。
【0026】
U相アーム10Uはさらに、絶縁層42と導電体部44を備えている。絶縁層42は、第1構造体10Uaと第2構造体10Ubの間に設けられており、各バスバーを電気的に絶縁している。絶縁層42は、第1構造体10Uaと第2構造体10Ubの間で挟持されている。すなわち、絶縁層42は、バスバーとの間でロウ付け又ははんだ等を用いて固定されていない。なお、絶縁層42を挟持するための力は、例えば、第1構造体10Uaの第1基板20と第2構造体10Ubの第2基板20に形成されたボルト貫通孔(図示省略)を貫通するボルトをナットを用いて螺合することによって生成してもよい。絶縁層42の材料には、一例として酸化シリコンが用いられてもよい。導電体部44は、第1構造体10Uaの第1出力バスバーUout1と第2構造体10Ubの第2出力バスバーUout2の間に設けられており、第1出力バスバーUout1と第2出力バスバーUout2を電気的に接続している。一例では、導電体部44には、発砲金属が用いられている。
【0027】
図4に示されるように、第1構造体10Uaの低圧側バスバー10Nと第2構造体10Ubの高圧側バスバー10Pの間に平滑コンデンサ12(図1参照)が設けられている。
【0028】
次に、U相アーム10Uの特徴を列記する。
(1)上記したように、U相アーム10Uでは、第1構造体10Uaと第2構造体10Ubが共通形態であることを特徴としている。このため、1種類の基本ユニットである構造体10Ua,10Ubを用意しておけば、U相アーム10Uを構築することができ、さらに、V相アーム10V及びW相アーム10Wも同様に構築することができる。すなわち、本実施例の技術によると、1種類の基本ユニットである構造体10Ua,10Ubを用意しておけば、半導体モジュール10を構築することができる。本実施例で開示される半導体モジュール10は、部品点数が少ない簡素な構成であると評価できる。
【0029】
(2)U相アーム10Uでは、平滑コンデンサ12とスイッチング素子SW1,SW2が近接して配置されていることを特徴としている。これにより、平滑コンデンサ12とスイッチング素子SW1,SW2の間の配線(バスバー)に起因する寄生インダクタンスが抑えられる。
【0030】
(3)U相アーム10Uでは、第1構造体10Uaの第1出力バスバーUout1の一部と低圧側バスバー10Nの一部の双方が第1基板20に接触している。このため、第1スイッチング素子SW1で発生した熱が、第1出力バスバーUout1と低圧側バスバー10Nの双方を介して第1基板20に放熱される。すなわち、U相アーム10Uの第1構造体10Uaでは、第1出力バスバーUout1と低圧側バスバー10Nの2つの伝熱経路が設けられている。また、U相アーム10Uでも、第2構造体10Ubの第2出力バスバーUout2の一部と高圧側バスバー10Pの一部の双方が第2基板20に接触している。このため、第2スイッチング素子SW2で発生した熱が、第2出力バスバーUout2と高圧側バスバー10Pの双方を介して第2基板20に放熱される。すなわち、U相アーム10Uの第2構造体10Ubでは、第2出力バスバーUout2と高圧側バスバー10Pの2つの伝熱経路が設けられている。このように、U相アーム10Uは、スイッチング素子SW1,SW2で発生した熱を効率良く基板20に伝熱させることができる。例えば、平滑コンデンサ12とスイッチング素子SW1,SW2が近接して配置されている例では、平滑コンデンサ12の熱破壊が問題となり得るが、本実施例のU相アーム10Uでは、このような熱破壊にも対策が施されている。
【0031】
(4)U相アーム10Uでは、第1構造体10Uaの低圧側バスバー10Nが、第1スイッチング素子SW1と接触する部位と平滑コンデンサ12と接触する部位の間に屈曲部34を有している。さらに、U相アーム10Uでは、第2構造体10Ubの高圧側バスバー10Pが、第2スイッチング素子SW2と接触する部位と平滑コンデンサ12と接触する部位の間に突出部32を有している。これら屈曲部34が存在する部位と突出部32が存在する部位はいずれも、基板20の表面に接触している。第1スイッチング素子SW1で発生した熱は、屈曲部34を介して第1基板20に放熱され、平滑コンデンサ12にまで伝熱されることが抑制されている。第2スイッチング素子SW2で発生した熱は、突出部32がバッファとして機能し、平滑コンデンサ12にまで伝熱されることが抑制されている。このように、平滑コンデンサ12とスイッチング素子SW1,SW2が近接して配置されていると、平滑コンデンサ12の熱破壊が問題となり得るが、本実施例のU相アーム10Uでは、このような熱破壊にも対策が施されている。
【0032】
(5)U相アーム10Uでは、第1構造体10Uaの低圧側バスバー10Nと第2構造体10Ubの高圧側バスバー10Pがz軸方向に対向することを特徴としている。これにより、低圧側バスバー10Nを流れる電流と高圧側バスバー10Pを流れる電流が逆向きとなり、寄生インダクタンスが減少する。
【0033】
(6)U相アーム10Uでは、絶縁層42が第1構造体10Uaと第2構造体10Ubの間で挟持されていることを特徴としている。この構成によると、絶縁層42とバスバーをロウ付け又ははんだを用いて固定する必要がないので、製造時の熱ストレスを抑えることができ、U相アーム10Uの歩留まりを向上させることができる。また、U相アーム10Uでは、バスバーに形成された突出部32及び屈曲部34によって絶縁層42を支持する構成となっている。絶縁層42は、第1構造体10Uaと第2構造体10Ubの間で安定的に挟持されている。
【0034】
(7)U相アーム10Uは、図5に示す変形例としてもよい。前述の実施例とこの変形例の相違点は、第1構造体10Uaの第1出力バスバーUout1と低圧側バスバー10Nが逆の関係となっており、第2構造体10Ubの第2出力バスバーUout2と高圧側バスバー10Pが逆の関係となっていることである。また、この例では、第1スイッチング素子SW1と第2スイッチング素子SW2が、z軸方向に反対向きに配置されている点でも前述の実施例と相違する。このため、第1スイッチング素子SW1のエミッタが第1基板20側に配置され、第2スイッチング素子SW2のエミッタも第2基板20側に配置される。この変形例のU相アーム10Uでは、熱の発生源であるエミッタを基板20側に配置することができるので、冷却効果が高い。
【0035】
(8)U相アーム10Uは、図6に示す変形例としてもよい。前述の実施例とこの変形例の相違点は、第1構造体10Uaの低圧側バスバー10Nの一部にグラフェン層45が埋設されており、第2構造体10Ubの第2出力バスバーUout2の一部にもグラフェン層45が埋設されていることである。このようにグラフェン層45が埋設されていると、効率良く熱を伝熱させることができるので、冷却効果が高い。
【0036】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0037】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0038】
10:半導体モジュール
10N:低圧側バスバー
10P:高圧側バスバー
10Ua:第1構造体
10Ub:第2構造体
11:直流電源
11N:低圧側端子
11P:高圧側端子
12:平滑コンデンサ
20:基板
32:突出部
34:屈曲部
45:グラフェン層
Uout1:第1出力バスバー
Uout2:第2出力バスバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の低圧側端子と高圧側端子の間に接続して用いられる半導体モジュールであって、
第1構造体と第2構造体を備えており、
前記第1構造体は、第1基板と、前記第1基板上に設けられているとともに出力が提供される第1出力バスバーと、前記第1基板上に設けられているとともに前記低圧側端子に電気的に接続される低圧側バスバーと、前記第1出力バスバーと前記低圧側バスバーの間に設けられている第1スイッチング素子と、を有しており、
前記第2構造体は、第2基板と、前記第2基板上に設けられているとともに出力が提供される第2出力バスバーと、前記第2基板上に設けられているとともに前記高圧側端子に電気的に接続される高圧側バスバーと、前記第2出力バスバーと前記高圧側バスバーの間に設けられている第2スイッチング素子と、を有しており、
前記第1出力バスバーと前記第2出力バスバーが電気的に接続されており、
前記第1構造体と前記第2構造体が共通形態であり、前記第1出力バスバーと前記高圧側バスバーが共通形態であり、前記低圧側バスバーと前記第2出力バスバーが共通形態である半導体モジュール。
【請求項2】
前記第1構造体では、前記第1出力バスバーの少なくとも一部が前記第1基板に接触しており、前記低圧側バスバーの少なくとも一部が前記第1基板に接触しており、
前記第2構造体では、前記第2出力バスバーの少なくとも一部が前記第2基板に接触しており、前記高圧側バスバーの少なくとも一部が前記第2基板に接触している請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
前記第1構造体と前記第2構造体は、前記低圧側バスバーと前記高圧側バスバーが対向するとともに、前記第1出力バスバーと前記第2出力バスバーが対向するように積層される請求項1又は2に記載の半導体モジュール。
【請求項4】
前記第1構造体では、前記第1出力バスバーの一部、前記第1スイッチング素子、前記低圧側バスバーの一部が前記第1基板の表面からこの順で積層しており、
前記第2構造体では、前記高圧側バスバーの一部、前記第2スイッチング素子、前記第2出力バスバーの一部が前記第2基板の表面からこの順で積層している請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体モジュール。
【請求項5】
前記低圧側バスバーと前記高圧側バスバーとの間に設けられているコンデンサをさらに備えており、
前記低圧側バスバーは、前記第1スイッチング素子と接触する部位と前記コンデンサと接触する部位の間に屈曲部を有し、その屈曲部の存在する部位が前記第1基板に接触しており、
前記高圧側バスバーは、前記第2スイッチング素子と接触する部位と前記コンデンサと接触する部位の間に突出部を有し、その突出部の存在する部位が前記第2基板に接触している請求項4に記載の半導体モジュール。
【請求項6】
前記第1構造体では、前記低圧側バスバーの一部、前記第1スイッチング素子、前記第1出力バスバーの一部が前記第1基板の表面からこの順で積層しており、
前記第2構造体では、前記第2出力バスバーの一部、前記第2スイッチング素子、前記高圧側バスバーの一部が前記第2基板の表面からこの順で積層している請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体モジュール。
【請求項7】
前記低圧側バスバーと前記高圧側バスバーとの間に設けられているコンデンサをさらに備えており、
前記低圧側バスバーは、前記第1スイッチング素子と接触する部位と前記コンデンサと接触する部位の間に突出部を有し、その突出部の存在する部位が前記第1基板に接触しており、
前記高圧側バスバーは、前記第2スイッチング素子と接触する部位と前記コンデンサと接触する部位の間に屈曲部を有し、その屈曲部の存在する部位が前記第2基板に接触している請求項6に記載の半導体モジュール。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【公開番号】特開2013−89828(P2013−89828A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230395(P2011−230395)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)