説明

半導体リレーとその駆動回路

【課題】接点がオンになったときにオン抵抗が変化しない半導体リレーおよびその駆動回路を実現する。
【解決手段】第1の発光素子が封入されたパッケージと同じパッケージに、この第1の発光素子と相補的に動作し、同程度に発熱する発熱体を封入するようにした。半導体リレーがオンオフを繰り返してもパッケージの温度が一定になり、従ってオン抵抗も一定になる。高速で多数の端子を切り替えて電圧を測定するICテスタに用いると正確に電圧を測定でき、またパッケージの温度が一定になるのを待つ必要がないので、試験時間を短縮できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力がオンになったときにオン抵抗が変化することがない半導体リレーおよびその駆動回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3に半導体リレーおよびその駆動回路の構成を示す。図3において、10は半導体リレーであり、発光素子11、受光素子12、直列接続されたMOSFET13、14がパッケージ19に封入されている。発光素子11は発光ダイオードが用いられ、受光素子12は複数のフォトダイオードを直列接続したダイオードアレイが用いられる。
【0003】
15、16は入力端子であり、入力端子15には発光素子11のアノードが、入力端子16には発光素子11のカソードが接続される。17、18は出力端子であり、それぞれMOSFET13、14のドレインが接続される。このMOSFET13、14のソースは共通接続される。
【0004】
入力端子15は正電源VDDに接続され、入力端子16は抵抗を介してドライバ20の出力端子に接続される。このドライバ20には信号発生器21からリレー駆動信号V1が入力される。
【0005】
このような構成において、ドライバ20の出力が低レベルになると発光素子11にILEDの電流が流れ、発光する。この光は受光素子12で受光される。このため、受光素子12両端に電圧が発生し、MOSFET13、14はオンになる。ドライバ20の出力が高レベルになると発光素子11には電流が流れない。受光素子12には光が入射しないので電圧は発生せず、MOSFET13、14はオフになる。
【0006】
このような半導体リレーは可動部が無く、かつ入力と出力が絶縁されるので、電圧や電流の切り替えなどに多用されている。
【0007】
特許文献1には、簡単な構成で、オン抵抗を増大させることなく端子間容量を低減できる半導体リレーの発明が記載されている。この発明では、逆直列された2つのMOSFETを2組直列に接続し、これらのMOSFETを同時にオン、オフさせると共に、これらのMOSFETの接続点と接地との間に設けられたスイッチを用いて、MOSFETがオフした時に電荷を放出するようにした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7―46109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図3の半導体リレーは、オン時とオフ時でパッケージの温度が変化するので、MOSFET13、14のオン抵抗が時間と共に変化するという課題があった。図4を用いて、このことを説明する。
【0010】
図4はドライバ20の入力電圧であるリレー駆動信号V1、発光素子11に流れる電流ILED1、発光素子11の損失電力Pd1、パッケージ19の温度Tj1、MOSFET13、14のオン抵抗Ronの変化を表した図である。なお、横軸は時間である。
【0011】
(A)に示すように時刻t1でリレー駆動信号V1が低レベルになると、(B)のように発光素子11に電流ILED1が流れる。このため、(C)に示すように発光素子11には損失電力Pd1が発生する。
【0012】
この損失電力Pd1のために発光素子11の温度は上昇し、パッケージ19を暖める。パッケージ19は熱容量を持っているので、(D)に示すようにパッケージ19の温度Tj1は徐々に上昇して、時刻t3で一定値に達する。
【0013】
MOSFETのオン抵抗は0.5%/℃程度の温度係数を持っている。MOSFET13、14の温度はパッケージ19の温度に伴って変化するので、(E)に示すようにオン抵抗Ronも時刻t1から徐々に上昇し、時刻t3で一定値に達する。最近のモールドパッケージは秒単位の熱時定数を有しているので、オン抵抗Ronも秒単位の時定数で変化する。
【0014】
ICテスタは、図3の半導体リレーを用いて多数の端子を高速で切り替えて被測定ICの電圧を測定し、被測定ICの良否を判定する装置である。しかし、半導体リレーのオン抵抗Ronが変化するので電圧測定に誤差が発生し、試験に支障が生じるという課題があった。
【0015】
オン抵抗Ronが安定するまで待って電圧を測定すると正確な電圧を測定できるが、試験時間が大幅に増加するという課題もあった。さらに、オン抵抗Ronの変化は秒単位と遅いので、キャリブレーションで補正することができないという課題もあった。
【0016】
本発明の目的は、接点がオンになったときにオン抵抗が変化しない半導体リレーおよびその駆動回路を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
電流が流れると光を出力する第1の発光素子、この第1の発光素子の出力光を受光する受光素子、およびこの受光素子の出力に基づいてオン、オフが制御されるスイッチング素子がパッケージに封入された半導体リレーにおいて、
前記パッケージに封入され、前記第1の発光素子と相補的に動作し、前記第1の発光素子と同程度に発熱する発熱体と、
を具備したものである。パッケージの温度が一定になるので、オン抵抗を一定にすることができる。
【0018】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、
前記発熱体として、前記第1の発光素子と同程度の特性を有する第2の発光素子を用いたものである。第1の発光素子と同じ電流を流すだけで、発熱を同じにすることができる。
【0019】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、
出力光が外部に漏れないように、前記第2の発光素子を遮光マスクで覆ったものである。第2の発光素子の出力光によって誤動作することがない。
【0020】
請求項4記載の発明は、
請求項1乃至請求項3いずれかに記載の半導体リレーと、
前記第1の発光素子に電流を流さないときは前記発熱体に電流を流し、前記第1の発光素子に電流を流すときは前記発熱体に電流を流さない駆動回路と、
を具備したものである。パッケージの温度が一定になるので、オン抵抗を一定にすることができる。
【0021】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、
前記駆動回路を、
リレー駆動信号が入力され、このリレー駆動信号に基づいて前記第1の発光素子に電流を流すドライバと、
前記リレー駆動信号が入力され、入力されたリレー駆動信号を反転した信号を出力すると共に、この反転した信号に基づいて前記発熱体に電流を流すインバータと、
で構成したものである。駆動回路の構成が簡単になる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば以下のような効果がある。
請求項1、2、3、4および5の発明によれば、電流が流れると光を出力する第1の発光素子、この第1の発光素子の出力光を受光する受光素子、およびこの受光素子の出力に基づいてオン、オフが制御されるスイッチング素子がパッケージに封入された半導体リレーにおいて、第1の発光素子と相補的に動作する発熱体を同じパッケージに封入するようにした。
【0023】
ほぼ同じように発熱する第1の発光素子と発熱体が相補的に動作するので、パッケージ内の発熱量が一定になり、パッケージの温度を一定にすることができる。そのため、スイッチング素子のオン抵抗が一定になるので、半導体リレーのオン抵抗が一定になるという効果がある。
【0024】
オン抵抗が時間によって変化しないので、半導体リレーがオンになった直後に電圧を測定しても、オン抵抗の影響を補正することができ、高速で正確な測定が可能になるという効果もある。
【0025】
また、発熱体として第1の発光素子と同じ特性を有する発光素子を用いることにより、駆動電流を同じにするだけで、パッケージの温度を一定にすることができるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例を示した構成図である。
【図2】実施例の動作を示す特性図である。
【図3】従来の半導体リレーの構成図である。
【図4】従来例の動作を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下本発明を、図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係る半導体リレーの一実施例を示した構成図である。なお、図3と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。
【0028】
図1において、30は半導体リレーであり、発光素子11、31、受光素子12、直列接続されたMOSFET13、14がパッケージ35に封入されている。32は遮光マスクであり、発光素子31を覆い、その出力光が外部に漏れないようにする。遮光マスク32は、発光素子31の出力光が受光素子12に入射して、半導体リレー30が誤動作することを防止するために用いられる。発光素子31は発熱体に相当し、発光素子11、31はそれぞれ第1、第2の発光素子に相当する。
【0029】
発光素子11のアノードとカソードはそれぞれ入力端子15、16に接続される。MOSFET13、14のドレインは出力端子17、18に接続され、ソースは共通接続される。入力端子15は正電源15に接続され、入力端子16は抵抗を介してドライバ20の出力端子に接続される。
【0030】
信号発生器21の出力信号であるリレー駆動信号V1が低レベルになるとドライバ20の出力も低レベルになり、発光素子11には電流ILEDが流れて発光する。この光は受光素子12で受光される。受光素子12は光起電力を発生し、この光起電力によってMOSFET13、14はオンになる。
【0031】
リレー駆動信号V1が高レベルになると、ドライバ20の出力も高レベルになる。発光素子11には電流が流れず、発光しない。受光素子12は光起電力を発生しないので、MOSFET13、14はオフになる。これらの動作は、図3従来例と同じである。
【0032】
40はインバータであり、リレー駆動信号V1が入力される。インバータ40は入力されたリレー駆動信号V1を反転した信号を出力する。ドライバ20、インバータ40、信号発生器21で駆動回路を構成している。
【0033】
発光素子31は、発光素子11と同じ特性を有する素子である。この発光素子31のアノードは入力端子33に接続され、カソードは入力端子34に接続される。入力端子33は正電源VDDに接続され、入力端子34は抵抗41を介してインバータ40の出力端子に接続される。なお、発光素子31は遮光マスク32で覆われており、その出力光が外部に漏れないようになっている。
【0034】
次に、図2に基づいてこの実施例の動作を説明する。図2において、(A)はリレー駆動信号V1、(B)は発光素子11に流れる電流ILED1、(C)は発光素子11の損失電力Pd1、(D)は発光素子31に流れる電流ILED2、(E)は発光素子31の損失電力Pd2、(F)は発光素子11、31の損失電力の合計(Pd1+Pd2)、(G)はパッケージ35の温度Tj2、(H)は半導体リレー30のオン抵抗Ronの変化を表した特性図である。
【0035】
リレー駆動信号V1は時刻t10で低レベルになり、時刻t11で高レベルに戻る。ドライバ20の出力は時刻t10〜t11で低レベルになり、その他の時刻では高レベルになる。インバータ40の出力はドライバ20の出力とは逆極性であり、時刻t10〜t11の間で高レベル、その他の時刻で低ベルになる。
【0036】
ドライバ20の出力が低レベルになると発光素子11に電流ILED1が流れるので、発光素子11の損失電力Pd1は時刻t10〜t11で一定の値を取り、他の時刻では0になる。インバータ40の出力が低レベルになると発光素子31に電流ILED2が流れるので、発光素子31の損失電力Pd2は時刻t10〜t11で0、それ以外で一定値を取る。すなわち、発光素子11と31は相補的に動作する。
【0037】
発光素子11と31は同じ特性を有し、かつ同じように駆動されるので、その損失電力はほぼ同じになる。前述したように、発光素子11に電流が流れるときは発光素子31に電流は流れず、発光素子11に電流が流れないときは発光素子31に電流が流れる。このため、(F)に示すように、発光素子11と31の損失電力を加算した値は一定になる。
【0038】
発光素子11と31はほぼ同じ特性を有しているので、これらの発光素子に同じ電流が流れたときの発熱量もほぼ同じになる。(F)に示すように発光素子11と31の損失電力を加算した値は一定なので、これら発光素子の発熱量の加算値も一定になる。パッケージ35内の発熱量が時間によって変化しないので、(G)に示すように、パッケージ35の温度は、発光素子11の動作に拘わらず一定になる。
【0039】
パッケージ35の温度が一定なので、(H)に示すように、MOSFET13、14の温度は発光素子11の動作に拘わらず一定になる。そのため、これらの合成オン抵抗、すなわち半導体リレー30のオン抵抗Ronは変化しない。
【0040】
このため、測定のタイミングに拘わらず、オン抵抗Ronが測定精度に与える影響は同じになる。オン抵抗Ronが一定なので、この誤差は補正することができる。
【0041】
なお、この実施例では発光素子31を遮光マスク32で覆うようにしたが、発光素子31の出力光が受光素子12に入射しないような位置に発光素子31を配置すると、遮光マスク32を省略することができる。
【0042】
また、この実施例では発光素子11と31として同じ特性を有する発光素子を用いて発熱量を一定にするようにしたが、これに限定されることはない。発光素子11と31の特性が異なっている場合は、発光素子31に流す電流ILED2を調整して、発熱量が発光素子11と同じになるようにすればよい。
【0043】
また、発光素子11と31の発熱量を除く特性は本実施例の動作に影響しないので、その特性が異なっていてもよい。また、発光素子11と31の特性は完全に同じでなくてもよい。オン抵抗の変化が実用的な範囲に入る程度に同じであればよい。
【0044】
また、この実施例では発光素子31を用いたが、その出力光は用いないので、発光素子でなくてもよい。例えば、発熱量が発光素子11とほぼ同じである発熱体(ヒータ)を用いてもよい。
【0045】
また、この実施例では出力側の接点としてMOSFET13、14を用いたが、受光素子12の出力でオンオフできるスイッチング素子であればよい。出力部の構成もMOSFET13、14を直列接続する構成でなくてもよく、スイッチング素子を1つあるいは3つ以上使用する構成であってもよい。
【0046】
さらに、この実施例ではドライバ20とインバータ40を用いて発光素子11と31に交互に電流を流す駆動回路としたが、他の構成であってもよい。要は、発光素子11と31を相補的に動作させる構成であればよい。
【符号の説明】
【0047】
11、31 発光素子
12 受光素子
13、14 MOSFET
15、16、33、34 入力端子
17、18 出力端子
20 ドライバ
32 遮光マスク
35 パッケージ
40 インバータ
41 抵抗
Ron オン抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流が流れると光を出力する第1の発光素子、この第1の発光素子の出力光を受光する受光素子、およびこの受光素子の出力に基づいてオン、オフが制御されるスイッチング素子がパッケージに封入された半導体リレーにおいて、
前記パッケージに封入され、前記第1の発光素子と相補的に動作し、前記第1の発光素子と同程度に発熱する発熱体と、
を具備したことを特徴とする半導体リレー。
【請求項2】
前記発熱体は、前記第1の発光素子と同程度の特性を有する第2の発光素子であることを特徴とする請求項1記載の半導体リレー。
【請求項3】
前記第2の発光素子は、出力光が外部に漏れないように遮光マスクで覆われていることを特徴とする請求項2記載の半導体リレー。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3いずれかに記載の半導体リレーと、
前記第1の発光素子に電流を流さないときは前記発熱体に電流を流し、前記第1の発光素子に電流を流すときは前記発熱体に電流を流さない駆動回路と、
を具備したことを特徴とする半導体リレーとその駆動回路。
【請求項5】
前記駆動回路は、
リレー駆動信号が入力され、このリレー駆動信号に基づいて前記第1の発光素子に電流を流すドライバと、
前記リレー駆動信号が入力され、入力されたリレー駆動信号を反転した信号を出力すると共に、この反転した信号に基づいて前記発熱体に電流を流すインバータと、
で構成されることを特徴とする請求項4記載の半導体リレーとその駆動回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−200141(P2010−200141A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44332(P2009−44332)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】