説明

半導体レーザモジユール

【目的】 小型で冷却能力に優れた構造の半導体レーザモジュールを得る。
【構成】 半導体レーザ素子をパッケージ本体内に収容し、電子冷却素子で冷却する半導体レーザモジュールにおいて、半導体レーザ素子1を上部絶縁板18の上部に搭載し、電子冷却素子8の一端を上部絶縁板18の下面に固定すると共に他端を前記パッケージ本体の底板19に固定する。そして、その底板19は窒化アルミニウムから構成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光通信装置などに使用する高出力半導体レーザ素子と光ファイバとの結合器である高出力の半導体レーザモジュールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、光信号を直接増幅する光増幅器が開発され、特にエルビウム光ファイバを用いた光増幅器が注目されている。
【0003】この光増幅器はエルビウム元素のドープされた光ファイバに波長1.48μmのレーザ光を注入すると波長1.5μm帯の減衰された信号光が増幅されるという原理による。その増幅度は注入する波長1.48μmのレーザ光(以下ポンプ光と称する)の出力の大きさによる。エルビウム光ファイバの性能にもよるが、その光出力が数+mWから100mWで数+dBの増幅度が得られる。このような光増幅器においては、ポンプ光用の波長1.48μmのレーザ光源に非常に高出力が要求され、数百mAの駆動電流を必要とするため発熱による光出力の低下や寿命の低下を招くおそれがある。それを防止するため、光ファイバと結合する半導体レーザモジュールの構成の中で通常、電子冷却素子(以下ペルチェ素子)を使用し、半導体レーザ素子を冷却して使用している。
【0004】図2に従来例を示し、その構成及び動作を説明する。同図において、1は半導体レーザ素子、2はヒートシンクである。ヒートシンク2は半導体レーザ素子1を搭載しその放熱を行うと共に、半導体レーザ素子1とほぼ同じ膨張係数を有する材料(例えばダイヤモンド,SiC,シリコンなど)を使用して熱応力による故障を防止している。3はヘッダで、半導体レーザ素子1を搭載したヒートシンク2を搭載し、半導体レーザ素子1の電極用の端子を有している。4はモニタ用の受光素子で半導体レーザ素子1の温度変化等による光出力の変化を監視し、その光出力が常に一定になるように駆動回路にフィードバックをかけている。5はレンズで、ここでは球レンズで示しているが屈折分布形等のレンズを用いる場合もある。6はコバールやステンレスで加工されたレンズホルダでレンズ5を圧入や半田または低融点ガラス等で固定している。7はベースで、半導体レーザ素子1を搭載したヘッダ3と、モニタ用の受光素子4と、レンズを固定するレンズホルダ6とを搭載するためのものである。この時、ヘッダ3とモニタ用の受光素子4は半田付けで固定され、一方レンズホルダ6は、半導体レーザ素子1から出射され広がった光がレンズ5により平行光になるように光軸調整後ベース7にYAGレーザで固定される。これは、光学調整後の半導体レーザ素子1とレンズ5の軸ずれ感度が1μm以下と厳しいため固定安定度の高いYAGレーザ溶接を用いるものである。8はペルチェ素子である。9,10は絶縁板で一般的にはアルミナセラミックにペルチェ素子8の電極と固定を兼ねた金属導体パターンを薄膜や厚膜で形成し、複数個のペルチェ素子8を挟み込んで直列に配線固定する。11はパッケージ本体で側壁に電気端子をハーメチックで設けたバタフライ型やDIP型のパッケージなど構成しており、また光取り出し窓13を設けてある。12は気密用のカバーである。ペルチェ素子8を配線固定する絶縁板9,10のうち、絶縁板9側に半導体レーザ素子1等を搭載したベース7を半田固定し、絶縁板10側をパッケージ本体11の内底に半田で固定する。この時、半導体レーザ素子1から出射しレンズ5で平行光に変換された光がパッケージ本体11に設けた光取り出し窓13を通過するように位置調整されている。14はレンズで、ここでは球レンズで示しているが屈折分布形等のレンズを用いる場合もある。15はレンズ14を固定するスリーブである。16は光ファイバ,17は光ファイバ16を固定するフェルールである。ここで、半導体レーザ素子1から出射した広がった光をレンズ5で平行光に変換した該平行光をレンズ14で光ファイバ16に効率よく入射するように光軸調整し、スリーブ15のA,B部でYAGレーザ溶接固定している。このようにして半導体レーザ素子1からの広がった発光光はレンズ5と14とによって光ファイバ16に効率良く結合される。
【0005】この半導体レーザモジュールが高出力可能なのはペルチェ素子8で半導体レーザ素子1を常時冷却し、半導体レーザ素子1の発熱を低減しているためである。尚、半導体レーザ素子1とペルチェ素子8の発熱はパッケージ本体11を介してパッケージ本体11に取り付けたヒートシンク(図示せず)で外部に放熱される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記構成による半導体レーザモジュールは、電子冷却素子(例えばペルチェ素子)を搭載しているため特に高さ方向が制限され、小型化が困難であるという問題点があった。また、高出力を要求されるにつれて電子冷却素子の冷却能力も大きなものが要求されるので、これによっても小型化が困難であるという問題点もあった。
【0007】本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、小型で冷却能力に優れた構造を持つ半導体レーザモジュールを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するため、半導体レーザ素子をパッケージ本体内に収容し、電子冷却素子で冷却する半導体レーザモジュールにおいて、前記半導体レーザ素子を絶縁板の上部に搭載し、前記電子冷却素子の一端を前記絶縁板の下面に固定すると共に他端を前記パッケージ本体の底板部に固定し、前底板部は絶縁材で構成したものである。
【0009】
【作用】本発明は、電子冷却素子をパッケージ本体の底板部に、絶縁板を介することなく直接固定している。従って、従来設けていた前記絶縁板は不要になり、絶縁板1枚分と固定用の半田分の厚みが削減できると共に、絶縁板1枚分の熱抵抗を低減できる。さらに、前記底板部に使用している窒化アルミニウムは従来のアルミナセラミック等より熱伝導率が非常に高いので、半導体レーザモジュールの熱抵抗を低減することができる。これらにより、電子冷却を小型にすることが可能となり、前記絶縁板の不要と相俟って半導体レーザモジュールを一層小型にすることができる。
【0010】
【実施例】図1は本発明の実施例を示す要部断面図である。同図において、1から8及び12から17は図2において同一記号を付したものと同じであるので説明は省略する。18は上部絶縁板で、半導体レーザ素子1等を搭載したヘッダ3,受光素子4,及びレンズ5を固定したレンズホルダ6を図2の場合と同様にしてそれぞれ所定の位置に固定したベース7を上面に半田固定している。19は絶縁性を有し熱伝導率に非常に優れた材料である窒化アルミニウムで作られた底板であり、20はハーメチック電気端子を有する金属またはセラミックからなる側壁である。この底板19に側壁20の端面部を固定してパッケージ本体を構成するが、このパッケージ本体は、前記窒化アルミニウムを使用して、底板19と側壁20とを一体構造としたものでもよい。前記パッケージ本体の底板19の上面と上部絶縁板18の下面とに、ペルチェ素子8の配線及び固定のための金属導体パターン21を薄膜あるいは厚膜で形成し、複数個のペルチェ素子8を図1に示すように固定し、配線する。この時、ペルチェ素子8は前記パッケージ本体の底板19に直接固定されるので、従来例で使用していた図2に示す絶縁板10を削除することができ、パッケージ本体の高さを絶縁板1枚分だけ低くすることが可能となると共に、ペルチェ素子8で発生する熱を直接パッケージ本体に逃がすことが可能となり、放熱の効率向上を図ることができる。前記側壁20に、図2に示す従来例と同様に光取り出し窓13を設け、半導体レーザ素子1から出射しレンズ5で平行光に変換された光を通過させる。その他レンズ14からフェルール17までは図2に示す従来例と同様の構成であり、同じ動作である。
【0011】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように本発明によれば、電子冷却素子をパッケージ本体に直接搭載しているので、従来設けていた電子冷却素子搭載用の絶縁板1枚分とそれを固定するための半田分の厚みを削減することができ、半導体レーザモジュールの小型化を実現できる。さらに、前記絶縁板の削減により絶縁板1枚分の熱抵抗を低減することができると共に、パッケージ本体または底板に従来のアルミナセラミックより遙かに熱伝導率の高い窒化アルミニウム等の絶縁材を使用しているため半導体レーザモジュールの熱抵抗を低減することができ、電子冷却を小型にすることが可能となり、半導体レーザモジュールの一層の小型化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の要部断面図である。
【図2】従来の半導体レーザモジュールの要部断面図である。
【符号の説明】
1 半導体レーザ素子
2 ヒートシンク
3 ヘッダ
4 受光素子
5 レンズ
6 レンズホルダ
7 ベース
8 ペルチェ素子
9,10 絶縁板
11 パッケージ本体
12 気密用カバー
18 上部絶縁板
19 底板
20 側壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】 半導体レーザ素子をパッケージ本体内に収容し、電子冷却素子で冷却する半導体レーザモジュールにおいて、前記半導体レーザ素子を絶縁板の上部に搭載し、前記電子冷却素子の一端を前記絶縁板の下面に固定すると共に他端を前記パッケージ本体の底板部に固定し、前記底板部は絶縁材で構成することを特徴とする半導体レーザモジュール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開平5−67844
【公開日】平成5年(1993)3月19日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−34811
【出願日】平成3年(1991)2月28日
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(591006070)株式会社サーモボニツク (1)