説明

半導体レーザ照射装置

【課題】レーザ光の照射精度を改善し、かつ小型化、低コスト化を図ることができる半導体レーザ照射装置を提供する。
【解決手段】半導体レーザ照射装置10は、VCSELパッケージ20と、VCSELパッケージ20から出射されたレーザ光を入射し、これを複数のレーザ素子に分割する光導波路30とを備えている。光導光路30は、屈折率が異なる複数の光学部材40、50とを含み、パッケージ20から入射したレーザ光Lを、傾斜面44、52、54で反射させ、複数に分割された出射光R1、R2を出射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面発光型半導体レーザ素子(以下、VCSELという)等を光源に用いた半導体レーザ照射装置に関し、特に、レーザ素子からの光を分割して多スポット化して照射する半導体レーザ照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ医療は、外科的な治療だけでなく、内科的な治療へとその範囲を広げている。内科的レーザ治療は、低出力のレーザ光を照射することにより、細胞レベルでの新陳代謝の促進、生体組織の血行改善や血管新生の促進、さらには疼痛緩和や抗炎症作用等の効果が期待されている。発光ダイオードやレーザ光を用いた医療用装置に関する技術が特許文献により開示されている。
【0003】
特許文献1は、粘着材を用いることなく光治療器を人体の治療部位に固定することができる光治療装置を開示している。特許文献2は、施術者がレーザ照射部を常に押圧保持する必要がなく、身体の任意の部位、任意の側面にレーザ光を照射することができる半導体レーザ治療装置を開示している。
【0004】
特許文献3は、多数の半導体レーザをシート部材に並べ、多スポットの同時照射を実現するレーザ美容器のレーザ光照射装置を開示している。特許文献4は、肩こり、腰痛、アトピー性皮膚炎の広範囲の治療効果が認められている光治療を手軽に行うことのできる光治療器を開示している。
【0005】
【特許文献1】特開2000−140136号
【特許文献2】特開平5−168号
【特許文献3】特開2000−217939号
【特許文献4】特開平9−201422号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のレーザ治療において、図14(a)に示すように、生体1にレーザ光を照射する場合、高い治療効果を得るためには、照射ビーム3のスポット径を小さくし、かつ照射ビーム3を照射有効領域2に精度よく照射する必要がある。しかし、上記の特許文献に示すように、従来のレーザ治療用の光源は、テープや固定バンド等により人体に固定されるため、スポット径の小さな照射ビーム3を精度良く照射有効領域2に照射することは至難の業であった。
【0007】
この解決策として、図14(b)に示すように、スポット径の小さな複数の照射ビーム3を照射有効領域2に照射することが考えられる。しかし、複数の照射ビーム3を出射するためには複数の光源4が必要となり、これでは、レーザ治療装置の小型化、省スペース化が図れず、しかもコストが高くなってしまうという課題がある。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するものであり、レーザ光の照射精度を改善しつつ、小型化、低コスト化を図ることができる半導体レーザ照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る半導体レーザ照射装置は、レーザ光を出射する少なくとも1つの半導体レーザ素子と、前記半導体レーザ素子からのレーザ光を入射し、入射されたレーザ光を複数に分割して出射する光導波路とを有し、前記光導波路は、屈折率の異なる光学部材を複数接合し、入射されたレーザ光を各光学部材の複数の接合部からそれぞれ出射するものである。
【0010】
好ましくは接合部は、一方の光学部材の端部に形成された一方の傾斜面と、他方の光学部材の端部に形成された他方の傾斜面とを含み、前記一方の傾斜面と他方の傾斜面で入射されたレーザ光の一部を反射する。また、前記一方の傾斜面と前記他方の傾斜面との間に、光学部材の屈折率と異なる屈折率の接着材が介在されるようにしてもよい。好ましくは光導波路の各接合部から出射された光の光量がそれぞれ等しくなるように各光学部材の屈折率が選択される。
【0011】
光導波路は、第1の面に配置された第1の光学部材と第2の面に配置された第2の光学部材とを含み、第1の光学部材の接合部から出射された光は、第2の光学部材に入射され、当該入射された光は第2の光学部材の接合部から出射され、第1および第2の光学部材の各接合部の位置が異なるようにすることができる。
【0012】
好ましくは半導体レーザ照射装置はさらに、前記半導体レーザ素子と前記光導波路との間に、半導体レーザ素子からの光を拡散する拡散手段を含む。拡散手段は、レーザ光を頂部に照射しこれを側面で反射する角錐状または円錐状の反射部材を含むことができる。また光導波路は、2次元状に広がる複数の傾斜面が端部に形成された光学部材を含み、前記傾斜面で反射されたレーザ光が出射される、ようにしてもよい。さらに光学部材の傾斜面には、レーザ光を全反射するための反射膜が形成されるようにしてもよい。さらに光導波路の少なくとも一部に粘着材が形成されるようにしてもよい。さらに半導体レーザ照射装置はさらに、面発光型半導体レーザ素子、面発光型半導体レーザ素子を駆動する駆動回路、および駆動回路に電力を供給する電源を含み、前記面発光型半導体レーザ素子、駆動回路および電源は、前記光導波路上の電気配線上に直接実装されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、半導体レーザ素子からの光を光導波路によって複数の接合部から出射させるようにしたので、一つのレーザ光を多スポット化することができ、所望の照射領域に高確率でレーザ光を照射することができる。さらに、一つのレーザ光を複数に分割することで、低出力のレーザ光を照射領域に照射することができる。さらに、半導体レーザ素子の数と出射光の数が一対一に対応する従来のレーザ照射装置と比較して、小型化、省スペース化、低コスト化の半導体レーザ照射装置を提供することができる。特に、本発明の半導体レーザ照射装置をレーザ治療装置に適用すれば、レーザ治療装置の小型化、省スペース化、低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。なお、図面で示す光導波路は、必ずしも実際の製品のスケールと同一ではない。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明の第1の実施例に係る半導体レーザ照射装置の概略断面を示す図である。同図に示すように、半導体レーザ照射装置10は、VCSELパッケージ20と、VCSELパッケージ20から出射されたレーザ光Lを入射し、これを複数の多スポット化されたレーザ光R1、R2に分割する出射する光導波路30とを備えている。
【0016】
VCSELパッケージ20は、図1(b)に示すように、例えばセラミックパッケージまたはキャンパッケージ等から構成され、その内部にレーザ光を発するVCSEL22、VCSEL22を駆動する駆動回路24、電力を供給するバッテリー26が収容されている。VCSEL22は、1つのビームを発するものに限らす、複数のビームを発するものであってよい。また、VCSELに代えて端面発光レーザを用いることも可能である。
【0017】
VCSELは、例えば図13に示すように、n型のGaAs基板200の裏面にn側電極202を形成し、さらに基板200上に、n型のGaAsバッファ層204、Al組成の異なるn型のAlGaAs層を交互に重ねた下部DBR(Distributed Bragg Reflector:分布ブラッグ型反射鏡)206、活性領域208、周縁に酸化領域を含むp型のAlAsからなる電流狭窄層210、Al組成の異なるp型のAlGaAs層を交互に重ねた上部DBR212、p型のGaAsコンタクト層214を含む半導体層を積層している。積層された半導体層をエッチングすることにより円筒状のポスト(またはメサ)Pが形成されている。
【0018】
ポストPの底部、側部および頂部を覆うように基板全体にSiON、SiOx等の層間絶縁膜216が形成され、p側電極218は、コンタクトホール216aを介してコンタクト層214にオーミック接続されている。p側電極218の中央に形成された開口は、レーザ光の出射領域を規定する。このように構成されたVCSELは、例えば、850nmのレーザ光をポストPから基板と垂直の方向に出射する。なお、複数のビーム出射するVCSELであれば、基板上に複数のポストが形成され、複数のポストからレーザ光が出射されることになる。
【0019】
駆動回路24は、VCSEL22を駆動するための順方向にバイアスされた駆動電流を供給する。また、駆動回路24は、VCSEL22の光出力が一定となるようなAPC(Auto Power Control)を行うことができる。この場合、駆動回路24は、VCSEL22の光出力や周囲温度をモニターするセンサーからの出力に基づき駆動電流を制御する。半導体レーザ照射装置10を携帯するとき、あるいは外部からの電力供給を得ることができないとき、駆動回路24は、バッテリー26からの電力に基づきVCSEL22を駆動する。バッテリー26は、外部からの電力供給により充電可能な二次電池であることが望ましい。
【0020】
ここには図示しないが、VCSELパッケージ20は、駆動回路24の動作をオン・オフするための入力スイッチを含むことができる。入力スイッチがオンのとき、バッテリー26は、駆動回路24に電力を供給し、VCSEL22からレーザ光が発せられる。VCSEL22のレーザ光は、パッケージ20の透過窓が形成された面から出射される。
【0021】
光導波路30は、VCSELパッケージ10からのレーザ光を入射し、これを複数のレーザ光に分割して出射する機能を有する。図1は、光導波路30が2つの光学部材40、50から構成される例を示している。光学部材40、50は、それぞれ屈折率が異なる材料から構成される。光学部材40、50は、例えば細長い直方体状のライトトンネルまたはインテグレータ等から構成され、両端部には、45度に切断された傾斜面42、44、52、54が形成されている。光学部材40の傾斜面44は光学部材50の傾斜面52に接合され、この接合部は、光学部材40、50の屈折率を選択することで、ハーフミラーとして機能し得る。
【0022】
VCSELパッケージ20は、光学部材40の上面に実装される。VCSELパッケージ20からのレーザ光Lは、光学部材40の上面にほぼ垂直に入射され、傾斜面42で水平方向に反射され、反射されたレーザ光L1は、光学部材40内をその長手方向に進行する。レーザ光L1の一部は、傾斜面44と傾斜面52の接合部を透過し、透過したレーザ光L2は、光学部材50内をその長手方向に沿って進む。レーザ光L1の残りは、接合部で反射され、出射光R1となって外部へ出射される。光学部材50を進行したレーザ光L2は、傾斜面54でほぼ直角に反射され、出射光R2となって外部へ出射される。
【0023】
このようにVCSELパッケージ20から光導波路30へ入射されたレーザ光は、光導波路30によって複数のレーザ光に分割された出射光R1、R2となる。図1では、2つの光学部材を接合した光導波路を例示しているが、このような光学部材をN個(Nは、2以上の自然数)直列に接合することで、N−1個の多スポット化された出射光を得ることができる。また、各光学部材の長手方向の長さを異ならせることで、出射光の間隔を可変することができる。
【0024】
上記の図1の例では、VCSELパッケージ20を光学部材40の上面に取り付けたが、図2に示すように、VCSELパッケージ20を光学部材40の端部46に実装することも可能である。この場合、端部46は平坦な面であることが望ましい。
【0025】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。第2の実施例は、図3に示すように、光導光路30Aは、積層された光学部材を備えている。すなわち、光学部材40の下方の面に光学部材40A、40Bが配置され、光学部材50の下方の面に光学部材50A、50Bが配置されている。光学部材40Aと光学部材50Aは、1つの面の光導光路を形成し、光学部材40Bと光学部材50Bは、1つの面の光導光路を形成する。光学部材40Aは、光学部材40よりも長手方向に長く、光学部材40Bは、光学部材40Aよりも長手方向に長くなっている。光学部材50、50A、50Bの長手方向の長さはそれぞれ同一である。光学部材40、40A、40Bの一方の端部は、積層方向に整合され、これにより、光学部材40、40A、40Bと光学部材50、50A、50Bとの接合部が長手方向に重複しないようにずらされている。
【0026】
VCSELパッケージ20から発せられたレーザ光Lは、その一部が光学部材40の傾斜面42により反射され、光学部材40内を進行する。傾斜面42を透過したレーザ光は、その一部が光学部材40Aの傾斜面42Aで反射され、光学部材40A内を進行する。さらに、傾斜面42Aを透過した光は、傾斜面42Bで反射され、光学部材40B内を進行する。光学部材40、40A、40Bと進行したレーザ光は、第1の実施例のときと同様に、各接合部で反射され、出射光R1、R1A、R1B、R2、R2A、R2Bとして出射される。
【0027】
次に、本発明の第3の実施例について説明する。第3の実施例は、図4に示すように、レーザ光Lが入射される光学部材40の傾斜面42に、レーザ光Lを拡散するための拡散膜60が形成されている。拡散膜60は、例えば傾斜面42の表面に無数の凹凸を形成することで入射した光を散乱させる。これにより、レーザ光が一層小さなスポット径のビームに分割され、スポット径の小さな出射光R1、R2を得ることができる。
【0028】
さらに、他の光学部材が接合されない傾斜面、例えば、光学部材50の傾斜面54や、図3に示す傾斜面42A、42B、54A、54Bなどに反射膜62を形成することができる。この反射膜62を形成することで、レーザ光を傾斜面で全反射させることができる。
【0029】
次に、本発明の第4の実施例について説明する。第4の実施例では、図5に示すように、光学部材40の傾斜面44と光学部材50の傾斜面52との間に接着材80を介在させる。接着材80は、光学部材40および50と屈折率を異にし、傾斜面44、52との界面がハーフミラーとして機能するようにする。これにより、レーザ光L1の一部は、傾斜面44と接着材80との界面で出射光R1となり、その界面を透過した光の一部は、接着材80と傾斜面52との界面で出射光R3となり、傾斜面54で反射された光が出射光R3となる。接着材80の厚さ等は適宜選択される。
【0030】
次に、本発明の第5の実施例について説明する。第5の実施例では、第3の実施例で説明した拡散膜(または後述する拡散部材)を利用し、光学部材は、2次元状または放射状に広がった複数の端面を有する。図6に示すように、VCSELパッケージ20は、平板状の光学部材90の一方の端部の中央付近に実装される。VCSELパッケージ20からのレーザ光は、光学部材90の傾斜面92に形成された拡散膜によって拡散され、光学部材90内を拡散されて進行する。光学部材90の他方の端部には、斜め45度にカットされた複数の傾斜面94が形成されている。光学部材90内を進行したレーザ光L1は、傾斜面94で反射され、複数の出射光となる。好ましくは傾斜面94は、レーザ光L1のビーム径が小さくなるような断面積に設計される。
【0031】
次に、本発明の第6の実施例について説明する。第6の実施例では、第5の実施例で用いた光学部材を複数積層して光導光路を形成する。図7に示すように、光導光路30Eは、光学部材90の下方の面に、光学部材90A、90Bを積層している。光学部材90Aの端面に形成された複数の傾斜面94Aは、光学部材90の傾斜面94よりも離れた位置に形成され、光学部材90Bの端面に形成された複数の傾斜面94Bは、傾斜面94Aよりも離れた位置に形成されている。これにより、VCSELからのレーザ光は、それぞれの光学部材90.90A、90Bを進行したレーザ光L1、L2、L3となり、これらのレーザ光L1、L2、L3は、複数の傾斜面94、94A、94Bで反射され、シャワー状の多スポットのビームRとして出射される。
【0032】
次に、本発明の第7の実施例について説明する。第7の実施例では、図8に示すように、光学部材40上に形成された電気配線上に、VCSEL22、駆動回路24およびバッテリー(電源)26を直接実装する。例えば、光学部材40上には、ITOよりなる透明な金属配線が形成される。これにより、半導体レーザ照射装置10Fをより小型化、省スペース化することができる。
【0033】
次に、本発明の第8の実施例について説明する。第8の実施例では、図9に示すように、光導光路の光出射面に粘着材100を形成する。粘着材100は、好ましくはレーザ光の出射位置を除く部分に形成される。但し、粘着材100が光透過性であれば、レーザ光の出射位置を覆っていても良い。粘着材100は、例えば半導体レーザ照射装置を人体の所定部位に固定する際に利用される。また粘着材は、ベルトまたはバンドの一部を構成するものであってもよい。
【0034】
次に、好ましいレーザ光の拡散方法について説明する。図10(a)は、レーザ光を拡散する拡散部材の斜視図、図10(b)は、拡散部材の上面図、図10(c)は、拡散部材によるレーザ光の拡散の様子を示している。
【0035】
拡散部材110は、図10(a)に示すような四角錐の反射部材を用いて構成される。レーザ光Lは、一定のビームスポット径Bを有しており、レーザ光の中心が四角錐の頂点に一致するようにレーザ光を四角錘に向けて照射する。これにより、レーザ光Lは、四角錐の各傾斜面でそれぞれ90度の方向に分割され、かつ入射方向と直交する方向の拡散ビームL1に変換される。
【0036】
レーザ光Lを拡散部材110で拡散することによって、図10(c)に示すように、放射状に複数の傾斜面122を有する光学部材110の中央にVCSELパッケージ20を取り付けることで、各傾斜面122から複数の出射光Rを得ることができる。なお、拡散部材は、三角錐、他の多角錐、あるいは円錐であってもよい。
【0037】
次に、光導光路を構成する光学部材の好ましい例を説明する。図11は、光導波路が材料A、B、Cの光学部材によって構成される例を示している。入射光Lから出射光A、Bを得るために、光学部材の材料A、B、Cの屈折率は、次式の反射率Rに基づき決定される。
【0038】
【数1】

【0039】
ここで、n0は、入射側の媒質の屈折率、n1は、出射側の媒質の屈折率を示す。光学部材の材料A、B、Cは、各接合部における出射光1、2の光量が等しくなるように選択される。
【0040】
図11(b)に示す組合せ例では、材料Aにポリメチルメタクリレート(屈折率 1.49)、材料Bにチオオウレタン系樹脂(屈折率 1.61)、材料Cにエビスルフイド系樹脂(屈折率 1.74)が選択され、材料AとBの接合部の反射率は、0.150%、材料BとCの反射率は、0.151%とすることができる。その結果、1[mW]の入射光から、約0.0015[mW]の出射光A、Bを得ることができる。なお、入射光の波長は850nmのレーザ光である。
【0041】
図11(c)に示す組合せ例では、材料Aにジアリルカーボネート(屈折率 1.52)、材料Bにエビスルフイド系樹脂(屈折率 1.70)、材料Cに無機ガラス(屈折率 1.90)が選択され、材料AとBの接合部の反射率は、0.312%、材料BとCの反射率は、0.309%とすることができる。その結果、1[mW]の入射光から、約0.0031[mW]の出射光A、Bを得ることができる。なお、入射光の波長は850nmのレーザ光である。
【0042】
図12は、光学部材の材料とそれらの屈折率との関係を示す表である。例えば、エビスルフイド系樹脂、チオオウレタン系樹脂、(ポリエステル)メタクリレート、ポリカーボネート、(ウレタン)メタクリレート、(エポキシ)メタクリレート、ジアリルカーボネート、ジアリルフタレート系樹脂、ウレタン系樹脂、メタクリレート、アリルジグリコールカーボネート、ポリメチルメタクリレート、無機ガラス(TiO2、SiO2など)などを用いることができる。また接着材として、エポキシ系光学接着剤、アクリレート系光学接着剤を用いることができる。
【0043】
また、上記第4の実施例では、光学部材の接合面に接着材を介在させたが、接着材は、図12に示すように、エポキシ系光学接着剤、アクリレート系光学接着剤などを用いることができる。
【0044】
以上のように本発明の幾つかの実施例を説明したが、これらの実施例は、他の実施例と組み合わせて用いることができることは勿論である。例えば、第2の実施例と第4の実施例を組み合わせたり、第3の実施例と第4の実施例とを組み合わせることも可能である。さらに、上記第1の実施例では、2つの光学部材の接合例を示しているが、接合する光学部材の数、大きさ、傾斜面の数等は、目的に応じて適宜変更することができる。
【0045】
このように本実施例の半導体レーザ照射装置によれば、一つのレーザビームを多スポットに変換することで、精度良く照射スポットの位置を合わせなくても、ビーム径の小さい照射スポットを高確率で所望の照射領域に照射することができる。半導体レーザ照射装置をレーザ治療またはレーザ美容に適用すれば、その治療効果を改善することができ、しかも、レーザ治療器を、従来に比べて安価にすることができる。
【0046】
上記実施例は例示的なものであり、本発明の範囲は、実施例によって限定的に解釈されるべきものではない。また、本発明は、特許請求の範囲の構成要件を満足する範囲内で他の方法によっても実現可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1(a)は、本発明の第1の実施例に係る半導体レーザ照射装置の概略断面を示す図、図1(b)は、VCSELパッケージの内部構成を示す図である。
【図2】第1の実施例の好ましい変形例を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施例に係る半導体レーザ照射装置の概略断面図である。
【図4】本発明の第3の実施例に係る半導体レーザ照射装置の概略断面図である。
【図5】本発明の第4の実施例に係る半導体レーザ照射装置の概略断面図である。
【図6】本発明の第5の実施例に係る半導体レーザ照射装置の斜視図である。
【図7】本発明の第6の実施例に係る半導体レーザ照射装置の概略断面図である。
【図8】本発明の第7の実施例に係る半導体レーザ照射装置の概略断面図である。
【図9】本発明の第8の実施例に係る半導体レーザ照射装置の概略断面図である。
【図10】本実施例におけるレーザ光の好ましい拡散方法を説明する図であり、同図(a)は拡散部材の斜視図、同図(b)は拡散部材の上面図、同図(c)は拡散部材によるレーザ光の拡散の様子を示す図である。
【図11】本実施例における光導光路の好ましい組合せの例を説明する図である。
【図12】光導光路に用いられる光学材料と屈折率との関係を示す表である。
【図13】VCSELの一構成例を示す断面図である。
【図14】従来のレーザ治療器の光源を説明する図である。
【0048】
10:半導体レーザ照射装置
20:VCSELパッケージ
30:光導波路
40、50:光学部材
42、44、52、54:傾斜面
60:拡散膜
62:反射膜
80:接着材
90、120:光学部材
92、94、122:傾斜面
100:粘着材
110:拡散部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射する少なくとも1つの半導体レーザ素子と、
前記半導体レーザ素子からのレーザ光を入射し、入射されたレーザ光を複数に分割して出射する光導波路とを有し、
前記光導波路は、屈折率の異なる光学部材を複数接合し、入射されたレーザ光を各光学部材の複数の接合部からそれぞれ出射する、
半導体レーザ照射装置。
【請求項2】
前記接合部は、一方の光学部材の端部に形成された一方の傾斜面と、他方の光学部材の端部に形成された他方の傾斜面とを含み、前記一方の傾斜面と他方の傾斜面で入射されたレーザ光の一部を反射する、請求項1に記載の半導体レーザ照射装置。
【請求項3】
前記一方の傾斜面と前記他方の傾斜面との間に、光学部材の屈折率と異なる屈折率の接着材が介在される、請求項2に記載の半導体レーザ照射装置。
【請求項4】
前記光導波路の各接合部から出射された光の光量がそれぞれ等しくなるように各光学部材の屈折率が選択される、請求項1に記載の半導体レーザ照射装置。
【請求項5】
前記光導波路は、第1の面に配置された第1の光学部材と第2の面に配置された第2の光学部材とを含み、第1の光学部材の接合部から出射された光は、第2の光学部材に入射され、当該入射された光は第2の光学部材の接合部から出射され、第1および第2の光学部材の各接合部の位置が異なる、請求項1に記載の半導体レーザ照射装置。
【請求項6】
半導体レーザ照射装置はさらに、前記半導体レーザ素子と前記光導波路との間に、半導体レーザ素子からの光を拡散する拡散手段を含む、請求項1または2に記載の半導体レーザ照射装置。
【請求項7】
前記拡散手段は、レーザ光を頂部に照射しこれを側面で反射する角錐状または円錐状の反射部材を含む、請求項6に記載の半導体レーザ照射装置。
【請求項8】
前記光導波路は、2次元状に広がる複数の傾斜面が端部に形成された光学部材を含み、前記傾斜面で反射されたレーザ光が出射される、請求項7に記載の半導体レーザ照射装置。
【請求項9】
前記光学部材の傾斜面には、レーザ光を全反射するための反射膜が形成される、請求項1または2に記載の半導体レーザ照射装置。
【請求項10】
前記光導波路の少なくとも一部に粘着材が形成されている、請求項1ないし9いずれか1つに半導体レーザ照射装置。
【請求項11】
半導体レーザ照射装置はさらに、面発光型半導体レーザ素子、面発光型半導体レーザ素子を駆動する駆動回路、および駆動回路に電力を供給する電源を含み、前記面発光型半導体レーザ素子、駆動回路および電源は、前記光導波路上の電気配線上に直接実装される、請求項1ないし10いずれか1つに記載の半導体レーザ照射装置。
【請求項12】
前記電気配線は透明金属配線である、請求項11に記載の半導体レーザ照射装置。
【請求項13】
前記面発光型半導体レーザ素子、駆動回路および電源は、パッケージ内に収容されている、請求項11または12に記載の半導体レーザ照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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