説明

半導体レーザ素子

【課題】高湿下でも安定して動作可能な半導体レーザ素子を提供する。
【解決手段】基板101と、第1の電極113と、第2の電極117と、第1の反射鏡102と、第2の反射鏡120と、第1の反射鏡および第2の反射鏡との間の共振器130であって、活性層105と電流狭窄層107とを含む共振器と、基板101の一主面上に形成されたメサポスト110であって、電流狭窄層107を含むメサポスト110と、メサポスト110および基板101の一主面を覆うパッシベーション膜123と、メサポスト110の基部を覆う耐湿性の金属膜133とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザ素子に関し、特に、垂直共振器型の面発光型半導体レーザ素子(VCSEL: Vertical Cavity Surface Emitting LASER)に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の面発光型半導体レーザ素子として、DBR(Distributed Bragg Reflector)ミラーである上部および下部多層膜反射鏡の間に活性層を含む複数の半導体層等を積層した共振器を設けた垂直共振器型の面発光型半導体レーザ素子が開示されている(特許文献1、2参照)。また、特許文献1、2に開示される面発光型半導体レーザ素子は、メサポスト構造を有すると共に、電流経路を制限して電流注入効率を上げるための電流狭窄層がメサポストに設けられている。この電流狭窄層は、外周に位置するAl等の酸化絶縁物からなる電流狭窄部と、電流狭窄部の中心に位置し、AlAs等のAl含有化合物半導体からなる電流注入部とを有するものである。この電流注入部は、面発光型半導体レーザ素子に電流を注入した際の電流経路になると共に、レーザ光が出射する開口部になる。
【0003】
しかしながら、このような構造の半導体レーザ素子を高湿下で動作させると、信頼性が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−108827号公報
【特許文献2】特開2007−258581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の主な目的は、高湿下でも安定して動作可能な半導体レーザ素子を提供することにある。
【0006】
本発明者達は、鋭意研究の結果、上記のような面発光型半導体レーザ素子は誘電体からなるパッシベーション膜を備えているが、このパッシベーション膜のある部分が水分を透過してしまうので、高湿下での信頼性が低下してしまうということを見出した。
【0007】
本発明は、このような知見に基づくものであり、本発明によれば、
基板と、
第1の電極と、
第2の電極と、
第1の反射鏡と、
第2の反射鏡と、
前記第1の反射鏡および前記第2の反射鏡との間に形成された共振器であって、活性層と前記第1の電極と前記第2の電極と間の電流通路を狭窄する電流狭窄層とを含む前記共振器と、
前記基板の一主面上に形成された凸部であって、前記電流狭窄層を含む前記凸部と、
前記凸部および前記基板の一主面を覆うパッシベーション膜と、
前記凸部の基部を直接または前記パッシベーション膜を介して覆う耐湿性の金属膜と、を備える半導体レーザ素子が提供される。
【0008】
好ましくは、前記凸部の基部は、前記パッシベーション膜に覆われ、さらに前記基部は前記パッシベーション膜上に設けられた前記耐湿性の金属膜によって前記パッシベーション膜を介して覆われている。
【0009】
前記耐湿性の金属膜は、好ましくは、Au膜、Au膜とその下のPt膜の2層膜、およびAu膜とその下のMo膜の2層膜から成る群より選ばれるいずれかの金属膜である。
【0010】
また、好ましくは、前記耐湿性の金属膜の下に設けられ、前記耐湿性の金属膜と前記パッシベーション膜との密着性を向上させる密着性向上用金属膜をさらに備える。
【0011】
前記密着性向上用金属膜は、好ましくは、Ti、CrおよびPdから成る群より選ばれるいずれかの金属膜である。
【0012】
前記半導体レーザ素子は、好ましくは、電極パッドと、前記第1の電極と前記電極パッドとを接続する引き出し電極と、をさらに備え、前記第1の電極は前記凸部の上面上に設けられ、前記引き出し電極と前記耐湿性の金属膜とは電気的に接続されている。
【0013】
また、前記半導体レーザ素子は、電極パッドと、前記第1の電極と前記電極パッドとを接続する引き出し電極と、をさらに備え、前記第1の電極は前記凸部の上面上に設けられ、前記引き出し電極と前記耐湿性の金属膜との間に第2のパッシベーション膜が設けられており、前記引き出し電極と前記耐湿性の金属膜とは電気的に接続されていない構成とすることもできる。
【0014】
また、好ましくは、前記凸部の基部は、前記耐湿性の金属によって覆われ、さらに前記耐湿性の金属上に設けられた前記パッシベーション膜によって覆われている。
【0015】
この場合に、前記耐湿性の金属膜は、NiとCrとAlの合金膜またはNiおよびCrのシリサイド膜である。
【0016】
また、好ましくは、前記半導体レーザ素子は、前記パッシベーション膜および前記耐湿性の金属を覆う第3のパッシベーション膜と、前記第3のパッシベーション膜の段差部を覆う第2の耐湿性の金属膜と、をさらに備える。
【0017】
また、好ましくは、前記半導体レーザ素子は、前記パッシベーション膜、前記第1の電極、前記引き出し電極および前記耐湿性の金属を覆う第3のパッシベーション膜と、
前記第3のパッシベーション膜の段差部を覆う第2の耐湿性の金属膜と、をさらに備える。
【0018】
好ましくは、前記第2の耐湿性の金属膜は、Au膜、Au膜とその下のPt膜の2層膜、およびAu膜とその下のMo膜の2層膜から成る群より選ばれるいずれかの金属膜である。
【0019】
好ましくは、前記第2の耐湿性の金属膜の下に設けられ、前記第2の耐湿性の金属膜と前記第3のパッシベーション膜との密着性を向上させる第2の密着性向上用金属膜をさらに備える。
【0020】
好ましくは、前記第2の密着性向上用金属膜は、Ti、CrおよびPdから成る群より選ばれるいずれかの金属膜である。
【0021】
また、好ましくは、前記半導体レーザ素子は、
前記半導体基板の前記一主面上に設けられた半導体層と、
第2の電極パッドと、
前記第2の電極と前記第2の電極パッドとを接続する第2の引き出し電極と、をさらに備え、
前記凸部は前記半導体層上に設けられ、前記凸部は前記活性層を含み、前記第2の電極は、前記半導体層上に前記凸部と離間して設けられ、
前記第3のパッシベーション膜は、前記半導体層、前記第2の電極および前記第2の引き出し電極をさらに覆っている。
【0022】
好ましくは、前記第1の反射鏡は、誘電体多層膜反射鏡であり、前記パッシベーション膜は、前記誘電体多層膜反射鏡の一部である。
【0023】
また、好ましくは、前記第1の反射鏡は、誘電体多層膜反射鏡であり、前記第2のパッシベーション膜は、前記誘電体多層膜反射鏡の一部である。
【0024】
また、好ましくは、記第1の反射鏡は、誘電体多層膜反射鏡であり、前記第3のパッシベーション膜は、前記誘電体多層膜反射鏡の一部である。
【0025】
好ましくは、前記誘電体多層膜反射鏡は、複数ペアのSiO/SiNからなる。
【0026】
好ましくは、前記電流狭窄層は、アルミニウム含有化合物半導体層と、前記アルミニウム含有化合物半導体層の周囲に設けられた、前記アルミニウム含有化合物半導体層を酸化した酸化物絶縁物層と、を有している。
【0027】
また、好ましくは、前記半導体レーザ素子は、前記パッシベーション膜および前記耐湿性の金属上に設けられた平坦化用誘電体膜をさらに備える。
【0028】
この場合に、好ましくは、前記半導体レーザ素子は、電極パッドと、前記第1の電極と前記電極パッドとを接続する引き出し電極と、をさらに備え、前記第1の電極は前記凸部上面に設けられ、前記引き出し電極と前記電極パッドは、前記平坦化用誘電体膜上に設けられている。
【0029】
また、本発明によれば、
基板と、
第1の電極と、
第2の電極と、
第1の反射鏡と、
第2の反射鏡と、
前記第1の反射鏡および前記第2の反射鏡との間に形成された共振器であって、活性層と前記第1の電極と前記第2の電極と間の電流通路を狭窄する電流狭窄層とを含む前記共振器と、
前記基板の一主面上に形成された凸部であって、前記電流狭窄層を含む前記凸部と、
前記凸部および前記基板の一主面を覆うパッシベーション膜と、
前記パッシベーション膜の折れ曲がり部を覆う耐湿性の金属膜と、を備える半導体レーザ素子が提供される。
【0030】
好ましくは、前記半導体レーザ素子は、電極パッドと、前記第1の電極と前記電極パッドとを接続する引き出し電極と、をさらに備え、前記第1の電極は前記凸部上面に設けられ、前記パッシベーション膜は、前記第1の電極と前記電極パッドとをさらに覆っている。
【0031】
また、好ましくは、前記半導体レーザ素子は、前記半導体基板の前記一主面上に設けられた半導体層と、第2の電極パッドと、前記第2の電極と前記第2の電極パッドとを接続する第2の引き出し電極と、をさらに備え、
前記凸部は前記半導体層上に設けられ、前記凸部は前記活性層を含み、前記第2の電極は、前記半導体層上に前記凸部と離間して設けられ、
前記パッシベーション膜は、前記半導体層、前記第2の電極および前記第2の引き出し電極をさらに覆っている。
【0032】
好ましくは、前記第1の反射鏡は、誘電体多層膜反射鏡であり、前記パッシベーション膜は、前記誘電体多層膜反射鏡または前記誘電体多層膜反射鏡の一部である。
【0033】
また、本発明によれば、上記いずれかの半導体レーザ素子を複数備えるレーザアレイが提供される。
【0034】
また、本発明によれば、上記いずれかの半導体レーザ素子を備える光学機器が提供される。
【0035】
また、本発明によれば、上記いずれかの半導体レーザ素子を備える通信システムが提供される。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、高湿下でも安定して動作可能な半導体レーザ素子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の好ましい第1の実施の形態の面発光型半導体レーザ素子の構造およびその製造方法を説明するための概略平面図である。
【図2】図1のX1−X1線概略縦断面図である。
【図3】本発明の好ましい第2の実施の形態の面発光型半導体レーザ素子の構造およびその製造方法を説明するための概略縦断面図である。
【図4】本発明の好ましい第3の実施の形態の面発光型半導体レーザ素子の構造およびその製造方法を説明するための概略縦断面図である。
【図5】本発明の好ましい第4の実施の形態の面発光型半導体レーザ素子の構造およびその製造方法を説明するための概略縦断面図である。
【図6】本発明の好ましい第5の実施の形態の面発光型半導体レーザ素子の構造およびその製造方法を説明するための概略平面図である。
【図7】図6のX2−X2線概略縦断面図である。
【図8】本発明の好ましい第1〜第5の実施の形態の面発光型半導体レーザ素子を複数用いた面発光レーザアレイを説明するための概略斜視図である。
【図9】本発明の好ましい第1〜第5の実施の形態の面発光型半導体レーザ素子を複数用いた面発光レーザアレイチップを説明するための概略平面図である。
【図10】本発明の好ましい第1〜第5の実施の形態の面発光型半導体レーザ素子を用いた面発光レーザパッケージを説明するための概略縦断面図である。
【図11】本発明の好ましい第1〜第5の実施の形態の面発光型半導体レーザ素子を用いた光ディスク用ピックアップを説明するための概略縦断面図である。
【図12】本発明の好ましい第1〜第5の実施の形態の面発光型半導体レーザ素子を用いた光送受信モジュールを説明するための概略平面図である。
【図13】本発明の好ましい第1〜第5の実施の形態の面発光型半導体レーザ素子と光導波路との光結合構造、または本発明の好ましい第1〜第5の実施の形態の面発光型半導体レーザ素子を複数用いた面発光レーザアレイと光導波路との光結合構造を説明するための概略縦断面図である。
【図14】本発明の好ましい第1〜第5の実施の形態の面発光型半導体レーザ素子と光導波路との光結合構造、または本発明の好ましい第1〜第5の実施の形態の面発光型半導体レーザ素子を複数用いた面発光レーザアレイと光導波路との光結合構造を説明するための概略縦断面図である。
【図15】本発明の好ましい第1〜第5の実施の形態の面発光型半導体レーザ素子と光導波路との光結合構造、または本発明の好ましい第1〜第5の実施の形態の面発光型半導体レーザ素子を複数用いた面発光レーザアレイと光導波路との光結合構造を説明するための概略縦断面図である。
【図16】本発明の好ましい第1〜第5の実施の形態の面発光型半導体レーザ素子を用いた通信システム、または本発明の好ましい第1〜第5の実施の形態の面発光型半導体レーザ素子を複数用いた面発光レーザアレイを用いた通信システムを説明するための概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0039】
(第1の実施の形態)
図1、図2を参照して、本発明の好ましい第1の実施の形態を説明する。図1、図2を参照すれば、本実施の形態の半導体レーザ素子は、面発光型半導体レーザ素子であり、この面発光型半導体レーザ素子100は、基板101と、基板101上に形成された下部半導体多層膜反射鏡である下部DBRミラー102と、バッファ層103と、n型コンタクト層104と、多重量子井戸構造を有する活性層105と、外周に位置する電流狭窄部107aと電流狭窄部107aの中心に位置する電流注入部107bとを有する電流狭窄層107と、p型スペーサ層109と、p型コンタクト層111とが順次積層した構造を有する。そして、活性層105からp型コンタクト層111までが円柱状のメサポスト110を構成している。メサポスト110は、n型コンタクト層104上に形成されている。
【0040】
基板101は、アンドープのGaAsからなる。また、下部DBRミラー102は、GaAs/Al0.9Ga0.1As層の34ペアからなる。バッファ層103は、アンドープのGaAsからなる。また、n型コンタクト層104は、n型GaAsからなる。また、活性層105は、層数が3のInGaAs井戸層と層数が4のGaAs障壁層が交互に積層した構造を有しており、最下層のGaAs障壁層はn型クラッド層としても機能する。また、電流狭窄層107については、電流狭窄部107aはAlからなり、電流注入部107bは、直径が6〜15μmであり、AlAsからなる。また、p型スペーサ層109とp型コンタクト層111とは、それぞれ炭素をドープしたp型、p型のGaAsからなる。なお、各p型またはn型層のアクセプタまたはドナー濃度(ドーパント濃度)はたとえば2×1019cm−3より小さい1×1018cm−3程度であり、p型層のアクセプタ濃度(ドーパント濃度)はたとえば2×1019cm−3である。なお、GaAsからなる各半導体層の屈折率は約3.45である。p型コンタクト層111上には、リング状(環状)のp側円環電極113が設けられている。p側円環電極113の外径は、たとえば30μmであり、その開口部113aの内径は、たとえば10〜20μmである。p側円環電極113は、例えば、Pt/Au(Auとその下のPt)からなる。
【0041】
また、p側円環電極113の開口部113a内には、窒化珪素(SiN)からなる円板状の位相調整層114が形成されている。この位相調整層114は位相を調整するためのものである。なお、この位相調整層114の上面からバッファ層103の底面までの部分が共振器130を構成している。
【0042】
また、n型コンタクト層104は、メサポスト130の下部から半径方向外側に延びており、その表面に例えばAuGeNi/Au(Auとその下のAuGeNi)からなる半円環状のn側電極117が形成されている。n側電極117は、たとえば外径が80μm、内径が40μmである。
【0043】
また、表面保護のためにパッシベーション膜123が、メサポスト130、p側円環電極113、位相調整層114、n型コンタクト層104、n側電極117、バッファ層103を覆って、全面に形成されている。パッシベーション膜123は、下層のSiO膜121と、その上層のSiN膜122からなっている。
【0044】
メサポスト130の基部131部分においては、パッシベーション膜123は折れ曲がって設けられている。メサポスト130の基部131を覆うパッシベーション膜123上にさらにメサポスト130の基部131をメサポスト130の基部131の全周囲に亘ってパッシベーション膜123を介して覆うように金属膜133が設けられている。この金属膜133は、上層の耐湿性の金属膜133aと、その下層の密着性向上用金属膜133bとからなっている。耐湿性の金属膜133aは、Au膜、Au膜とその下のPt膜の2層膜、またはAu膜とその下のMo膜の2層膜からなっている。密着性向上用金属膜133bは、Ti、CrまたはPdからなっている。
【0045】
メサポスト130の基部131部分には、パッシベーション膜123を形成する際に反応ガスが回り込みにくく、膜厚が薄くなったり、膜質が悪くなったりしがちであり、そのような部分から、水分が浸入しがちである。本実施の形態では、メサポスト130の基部131を覆うパッシベーション膜123上にさらにメサポスト130の基部131をパッシベーション膜123を介して覆うように耐湿性の金属膜133aを設けているので、たとえ、メサポスト130の基部131を覆うパッシベーション膜123の膜厚が薄くなったり、膜質が悪くなったりしていても、水分の浸入を有効に防止または抑制できる。その結果、水分の浸入により、特に、電流狭窄部107aが劣化することが有効に防止または抑制できる。
【0046】
また、n側電極117に対して、パッシベーション膜123に形成された開口部141を介して接触するように、Auからなるn側引き出し電極118が形成されている。一方、p側円環電極113に対しても、パッシベーション膜123に形成された開口部142を介して接触するように、Auからなるp側引き出し電極119が形成されている。そして、n側電極117およびp側円環電極113は、それぞれn側引き出し電極118およびp側引き出し電極119によって、電極パッド152、151にそれぞれ接続されている。本実施の形態においては、p側引き出し電極119と金属膜133とは電気的に接続されている。
【0047】
さらに、パッシベーション膜123、金属膜133、n側引き出し電極118およびp側引き出し電極119を覆って、誘電体多層膜128が、全面に形成されている。誘電体多層膜128は、たとえばSiN/SiOの9〜11ペアからなっている。パッシベーション膜123および誘電体多層膜128によって、上部多層膜反射鏡である上部DBRミラー116が構成されている。上部DBRミラー116は、たとえばSiN/SiOの10〜12ペアからなっている。上部DBRミラー120はパッシベーション膜としても機能する。
【0048】
パッシベーション膜123は、上部DBRミラー120の一部を兼ねている。従って、パッシベーション膜123の下層のSiO膜121は、上部DBRミラー120の最下層のSiO膜を兼ねている。従って、SiN/SiOからなる上部DBRミラー120は、その最下層は、パッシベーション膜123のSiO膜121であり、その上に、SiN膜122が設けられ、その上に、SiOとSiNが交互に積層され、最上層がSiNである構造となっている。
【0049】
上部DBRミラー120には、折れ曲がって、段差が形成されている部分が存在する。これらの部分は、メサポスト110、金属膜133、p側円環電極113、位相調整層114、n型コンタクト層104、n側電極117、バッファ層103等が存在することによって形成される凹凸形状を反映して形成されるものである。
【0050】
これらの、折れ曲がって、段差が形成されている部分を覆って金属膜135が設けられている。金属膜135は、上層の耐湿性の金属膜135aと、その下層の密着性向上用金属膜135bとからなっている。耐湿性の金属膜135aは、Au膜、Pt/Au(Au膜とその下のPt膜)の2層膜、またはMo/Au(Au膜とその下のMo膜)の2層膜からなっている。密着性向上用金属膜135bは、Ti、CrまたはPdからなっている。
【0051】
上述のように、上部DBRミラー120はパッシベーション膜としても機能するが、メサポスト110、金属膜133、p側円環電極113、位相調整層114、n型コンタクト層104、n側電極117、バッファ層103等が存在することによって形成される凹凸形状部分には、誘電体多層膜128を形成する際に反応ガスが回り込みにくく、膜厚が薄くなったり、膜質が悪くなったりしがちであり、そのような部分から、水分が浸入しがちである。本実施の形態では、このような凹凸形状を反映して上部DBRミラー120に形成される、折れ曲がって、段差が形成されている部分を覆って耐湿性の金属膜135aを設けているので、たとえ、折れ曲がって、段差が形成されている部分の膜厚が薄くなったり、膜質が悪くなったりしていても、水分の浸入を有効に防止または抑制できる。
【0052】
また、図1に示すように、上部DBRミラー120に開口153、154を設けて、電極パッド151、152を露出させている。電極パッド151、152を介して、外部の電流供給回路(図示せず)に接続される。そして、この面発光型半導体レーザ素子100は、外部の電流供給回路(図示せず)からそれぞれn側引き出し電極118およびp側引き出し電極119を介してn側電極117およびp側円環電極113間に電圧を印加し、電流を注入すると、電流は主に低抵抗のp型コンタクト層111を流れ、さらに電流経路が電流狭窄層107によって電流注入部107b内に狭窄されて、高い電流密度で活性層105に供給される。その結果、活性層105はキャリア注入されて自然放出光を発光する。自然放出光のうち、レーザ発振波長である波長λの光は、下部DBRミラー102と上部DBRミラー120との間の共振器130で定在波を形成し、活性層105によって増幅される。そして、注入電流がしきい値以上になると、定在波を形成する光がレーザ発振し、p側円環電極113の開口部113aから1060nm帯のレーザ光が出力する。
【0053】
次に、本実施の形態の面発光型半導体レーザ素子100の製造方法について説明する。
【0054】
はじめに、エピタキシャル成長法によって、基板101上に下部DBRミラー102、バッファ層103、n型コンタクト層104、活性層105、AlAsからなる被酸化層、p型スペーサ層109、p型コンタクト層111を順次積層し、さらにプラズマCVD(化学気相成長:Chemical Vapor Deposition)法およびフォトリソグラフィ技術によって、SiNからなる円板状の位相調整層114をp型コンタクト層111上に選択的に形成する。位相調整層114の光学厚さはλ/4程度である。
【0055】
次に、リフトオフ法を用いて、誘電体層114の周囲のp型コンタクト層111上に、Ti/Pt層(Ptとその下のTi)層からなるp側円環電極113を形成する。
【0056】
次に、p側円環電極113を金属マスクとして、酸エッチング液等を用いてn型コンタクト層104に到る深さまで半導体層をエッチングして円柱状のメサポスト110を形成し、さらに別のマスクを形成し、バッファ層103に到る深さまでn型コンタクト層104をエッチングする。
【0057】
次に、水蒸気雰囲気中において熱処理を行って、電流狭窄層107に相当する層をメサポスト110の外周側から選択酸化する。このとき、電流狭窄層107に相当する層の外周部において2AlAs+3HO→Al+2AsHなる化学反応が起こり、電流狭窄部107aが形成される。上記化学反応は電流狭窄層107に相当する層の外周側から均一に進行するので、中心にはAlAsからなる電流注入部107bが形成される。ここでは、熱処理時間等を調整して、電流注入部107bの直径が6〜15μmになるようにする。このように電流注入部107bを形成するので、メサポスト130の中心と、電流注入部107bの中心と、さらにp側円環電極113の開口部113aの中心とを高精度に一致させることができる。その結果、面発光型半導体レーザ素子100を発振時の横モード数が安定している再現性の良いマルチモード発振モードレーザとすることができる。
【0058】
次に、メサポスト130の外周側のn型コンタクト層104の表面に、半円環状のn側電極117を形成する。つぎに、プラズマCVD法を用いて全面にSiOからなるパッシベーション膜121と、SiNからなるパッシベーション膜122とを形成してパッシベーション膜123を形成する。
【0059】
次に、リフトオフ法を用いて、メサポスト110の基部131をパッシベーション膜123を介して覆う金属膜133をパッシベーション膜123上に形成する。
【0060】
次に、n側電極117およびp側円環電極113上においてパッシベーション膜123に開口141、142をそれぞれ形成し、これらの開口部141、142を介してn側電極117に接触するn側引き出し電極118と、p側円環電極113に接触するp側引き出し電極119をそれぞれ形成する。本実施の形態においては、p側引き出し電極119と金属膜133とは電気的に接続されているので、p側引き出し電極119、n側引き出し電極118および金属膜133は同時に形成することもできる。その場合は、p側引き出し電極119およびn側引き出し電極118を、Au、Pt/AuまたはMo/Auからなる耐湿性の金属膜とTi、CrまたはPdからなる密着性向上用金属膜とから構成することもできる。
【0061】
次に、プラズマCVD法を用いて、全面にSiOからなる膜と、SiNからなる膜122を順次形成して、誘電体多層膜128を形成して、上部DBRミラー120を形成する。
【0062】
次に、リフトオフ法を用いて、上部DBRミラー120の、折れ曲がって、段差が形成されている部分を覆って金属膜135を形成する。
【0063】
次に、基板101の裏面を研磨し、基板101の厚さをたとえば150μmに調整する。その後、素子分離を行い、面発光型半導体レーザ素子100が完成する。
【0064】
(第2の実施の形態)
次に、図3を参照して、本発明の第2の実施の形態を説明する。上記第1の実施の形態では、p側引き出し電極119と金属膜133との間には、誘電体膜は何も設けられておらず、p側引き出し電極119と金属膜133は電気的に接続されているが、本実施の形態では、p側引き出し電極119と金属膜133との間には、上部DBRミラー120の一部であるSiO膜124とSiN膜125とを設け、p側引き出し電極119と金属膜133とは電気的に接続されていない点が第1の実施の形態と異なるが、他の点は同様である。
【0065】
本実施の形態では、パッシベーション膜123および金属膜133を覆うSiO膜124と、SiN膜125とをプラズマCVD法を用いて全面に形成する。
【0066】
次に、n側電極117およびp側円環電極113上において、パッシベーション膜123、SiO膜124およびSiN膜125に開口141、142をそれぞれ形成し、これらの開口部141、142を介してn側電極117に接触するn側引き出し電極118と、p側円環電極113に接触するp側引き出し電極119をそれぞれ形成する。
【0067】
その後、SiN膜125、n側引き出し電極118およびp側引き出し電極119を覆って、誘電体多層膜127を、全面に形成する。誘電体多層膜127は、たとえばSiN/SiOの8〜10ペアからなっている。パッシベーション膜123、SiO膜124、SiN膜125および誘電体多層膜127によって、上部多層膜反射鏡である上部DBRミラー120が構成されている。上部DBRミラー120はパッシベーション膜としても機能し、SiO膜124およびSiN膜125は上部DBRミラー120の一部であり、パッシベーション膜としても機能する。
【0068】
なお、p側引き出し電極119と金属膜133との間には、上部DBRミラー120の一部であるどの膜を設けてもよい。
【0069】
(第3の実施の形態)
次に、図4を参照して、本発明の第3の実施の形態を説明する。上記第2の実施の形態では、金属膜133の上にSiO膜124およびSiN膜125を介してp側引き出し電極119を設けたが、本実施の形態では、p側引き出し電極119の上にSiO膜124およびSiN膜125を介して金属膜133を設けた点が第2の実施の形態と異なるが、他の点は同様である。
【0070】
本実施の形態では、パッシベーション膜123を形成した後、n側電極117およびp側円環電極113上において、パッシベーション膜123に開口141、142をそれぞれ形成し、これらの開口部141、142を介してn側電極117に接触するn側引き出し電極118と、p側円環電極113に接触するp側引き出し電極119をそれぞれ形成する。
【0071】
その後、パッシベーション膜123、n側引き出し電極118およびp側引き出し電極119を覆って、SiO膜124と、SiN膜125とをプラズマCVD法を用いて全面に形成する。
【0072】
次に、リフトオフ法を用いて、メサポスト110の基部131をパッシベーション膜123、SiO膜124およびSiN膜125を介して覆う金属膜133をSiN膜125上に形成する。
【0073】
その後、SiNからなる膜125および金属膜133を覆って、誘電体多層膜127を、全面に形成する。誘電体多層膜127は、たとえばSiN/SiOの8〜10ペアからなっている。パッシベーション膜123、SiOからなる膜124、SiNからなる膜125および誘電体多層膜127によって、上部多層膜反射鏡である上部DBRミラー120が構成されている。上部DBRミラー120はパッシベーション膜としても機能し、SiO膜124およびSiN膜125は上部DBRミラー120の一部であり、パッシベーション膜としても機能する。
【0074】
(第4の実施の形態)
次に、図5を参照して、本発明の第4の実施の形態を説明する。上記第1の実施の形態では、メサポスト130の基部131を覆うパッシベーション膜123上にさらにメサポスト130の基部131をパッシベーション膜123を介して覆うように金属膜133を設けているが、本実施の形態では、メサポスト130の基部131をメサポスト130の基部131の全周囲に亘って覆う耐湿性の金属膜133を設け、金属膜133の上にメサポスト130の基部131を金属膜133を介して覆うようにパッシベーション膜123を設けている点が第1の実施の形態と異なるが、他の点は同様である。
【0075】
本実施の形態における耐湿性の金属膜133には、半導体上に直接形成されるので、高抵抗な材料を使用する。そして、半導体層との熱膨張係数の差や半導体層と反応しないことを考慮すれば、金属膜133には、NiとCrとAlの合金膜またはNiおよびCrのシリサイド膜が好適に使用できる。
【0076】
本実施の形態においては、リフトオフ法により、メサポスト130の基部131を覆う金属膜133を設け、金属膜133を覆って全面にパッシベーション膜123を形成する。
【0077】
上述した第1乃至第4の実施の形態では、パッシベーション膜123は、下層のSiO膜121と、その上層のSiN膜122からなっているが、これらのいずれか1層でもよい。
【0078】
(第5の実施の形態)
図6、図7を参照して、本発明の好ましい第5の実施の形態を説明する。図6、図7を参照すれば、本実施の形態の半導体レーザ素子は、面発光型半導体レーザ素子であり、この面発光型半導体レーザ素子200は、基板201と、基板201上に形成された下部半導体多層膜反射鏡である下部DBRミラー202と、下部DBRミラー202上に形成された下部クラッド層203と、下部クラッド層203上に形成され、量子井戸構造を有する活性層204と、活性層204上に形成された上部クラッド層205と、上部クラッド層205上に形成された上部半導体多層膜反射鏡である上部DBRミラー206とを備えている。そして、下部クラッド層203から上部DBRミラー206までが円柱状のメサポスト210を構成している。メサポスト210は、下部DBRミラー202上に形成されている。下部クラッド層203、活性層204および上部クラッド層205により共振器220を構成している。基板201の下面には、n側電極230が設けられている。
【0079】
上部DBRミラー206の、活性層204に近い側の一層が、外周に位置する電流狭窄部208と電流狭窄部208の中心に位置する電流注入部209とを有する電流狭窄層207となっている。
【0080】
基板201は、n−GaAsからなる。また、下部DBRミラー202は、それぞれの層の厚さがλ/4n(λは発振波長、nは屈折率)のn−Al0.9Ga0.1As/n−Al0.2 Ga0.8Asの35ペアからなる。下部クラッド層203は、n−Al0.4Ga0.6Asからなる。活性層204は、GaAs井戸層およびAl0.2Ga0.8Asバリア層からなる量子井戸構造である。上部クラッド層205は、p−Al0.4Ga0.6Asからなる。
【0081】
上部DBRミラー206は、それぞれの層の厚さがλ/4n(λは発振波長、nは屈折率)のp−Al0.9Ga0.1As/p−Al0.2Ga0.8Asの25ペアからなる。上部DBRミラー206の活性層204に近い側の一層が、Al0.9Ga0.1As層に代えて、AlAs層で形成され、周囲領域のAlAsが選択的に酸化され、Alからなる電流狭窄部208となっている。電流狭窄部208の中心に位置する電流注入部209はAlAsからなっている。
【0082】
メサポスト210の直径は約30μmである。メサポスト210の上面である上部DBRミラー206の上面に円環状のp側電極231が設けられている。p側電極231は、例えば、Ti/Ptからなる。基板201の下面のn側電極230は、例えば、AuGeNi/Auからなる。
【0083】
p側電極231、メサポスト210の上面である上部DBRミラー206の上面、メサポスト210の側面、および下部DBRミラー202の上面を覆って、全面にパッシベーション膜222が設けられている。パッシベーション膜222は、下層のSiO膜と、その上層のSiN膜からなっている。パッシベーション膜222は、SiO膜で構成してもよく、SiN膜で構成してもよい。
【0084】
メサポスト210の基部221部分においては、パッシベーション膜222は折れ曲がって設けられている。メサポスト210の基部221を覆うパッシベーション膜222上にさらにメサポスト210の基部221をメサポスト210の基部221の全周囲に亘ってパッシベーション膜222を介して覆うように金属膜223が設けられている。この金属膜223は、上層の耐湿性の金属膜223aと、その下層の密着性向上用金属膜223bとからなっている。耐湿性の金属膜223aは、Au膜、Au膜とその下のPt膜の2層膜、またはAu膜とその下のMo膜の2層膜からなっている。密着性向上用金属膜223bは、Ti、CrまたはPdからなっている。
【0085】
メサポスト210の基部221部分には、パッシベーション膜222を形成する際に反応ガスが回り込みにくく、膜厚が薄くなったり、膜質が悪くなったりしがちであり、そのような部分から、水分が浸入しがちである。本実施の形態では、メサポスト210の基部221を覆うパッシベーション膜222上にさらにメサポスト210の基部221をパッシベーション膜222を介して覆うように耐湿性の金属膜223aを設けているので、たとえ、メサポスト210の基部221を覆うパッシベーション膜222の膜厚が薄くなったり、膜質が悪くなったりしていても、水分の浸入を有効に防止または抑制できる。
【0086】
また、メサポスト210の上面上のパッシベーション膜222には、開口233が設けられ、円環状のp側電極231の内側部分およびメサポスト210の上面である上部DBRミラー206の上面を露出している。
【0087】
パッシベーション膜222および金属膜223を覆って、全面にポリイミド層240が形成されている。メサポスト210の周囲がポリイミド層240により埋め込まれている構造となって、平坦化がなされている。ポリイミド層240の上部には、リング状のp側引き出し電極232と、p側引き出し電極232に接続された電極パッド234が設けられている。ポリイミド層240は、耐湿性はなく、水分を浸透させるが、本実施の形態では、パッシベーション膜222と耐湿性の金属膜223を設けているので、水分の浸入を有効に防止または抑制できる。
【0088】
次に、本実施の形態の面発光型半導体レーザ素子200の製造方法を説明する。
【0089】
はじめに、エピタキシャル成長法によって、基板201上に下部DBRミラー202、下部クラッド層203、活性層204、下部クラッド層205、AlAs層をその下部に有する上部DBRミラー206を順次積層する。
【0090】
次に、リフトオフ法を用いて、上部DBRミラー206上に、Ti/Pt層からなる円環状のp側電極231を形成する。
【0091】
次に、p側電極231を金属マスクとして、酸エッチング液等を用いて下部DBRミラー202に到る深さまで半導体層をエッチングして円柱状のメサポスト210を形成する。
【0092】
次に、水蒸気雰囲気中において熱処理を行って、電流狭窄層207に相当する層をメサポスト210の外周側から選択酸化する。このとき、電流狭窄層207に相当する層の外周部において2AlAs+3HO→Al+2AsHなる化学反応が起こり、電流狭窄部208が形成される。上記化学反応は電流狭窄層107に相当する層の外周側から均一に進行するので、中心にはAlAsからなる電流注入部209が形成される。
【0093】
次に、プラズマCVD法を用いて全面にSiO膜とSiN膜とを形成して、パッシベーション膜222を形成する。
【0094】
次に、リフトオフ法を用いて、メサポスト210の基部221をパッシベーション膜222を介して覆う金属膜223をパッシベーション膜222上に形成する。
【0095】
次に、パッシベーション膜222に開口233を設ける。次に、ポリイミド膜240を
設ける。次に、ポリイミド膜240上に、p側引き出し電極232および電極パッド234を選択的に形成する。
【0096】
次に、基板201の下面を適宜研磨して基板厚さを例えば200μm厚に調整した後、基板201の下面にn側電極230を形成する。
【0097】
その後、素子分離を行い、面発光型半導体レーザ素子200が完成する。
【0098】
上記第1乃至第4の実施の形態では、電流狭窄層107については、Alからなる電流狭窄部107aとAlAsからなる電流注入部107bを備え、上記第5の実施の形態では、電流狭窄層207は、Alからなる電流狭窄部208と、AlAsからなる電流注入部209を備えているが、電流狭窄層107、207は、AlAsに微量(例えば、Alの2〜3モル%のGaで置換したAlGaAsで電流注入部を形成し、AlGaAsを酸化した酸化絶縁物で電流狭窄部を形成してもよい。
【0099】
次に、上記本発明の好ましい実施の形態の面発光型半導体レーザ素子100、200を複数用いた面発光レーザアレイの例を図8、9を参照して説明する。一例として、図8に示したように、面発光レーザアレイチップ700がCLCC(Ceramic Leaded chip carrier)と呼ばれる周知のフラットパッケージ710に実装されたものを用いている。図では煩雑さを避けるために、金属キャスター(電極)714と面発光レーザアレイチップ700との接続は省略してある。面発光レーザアレイチップ700は図9に示したように、中央部に設けられた複数の面発光型半導体レーザ素子100(200)からなる素子部702、及び周囲に設けられ、素子部702の複数の発光部と接続(図示せず)された複数の電極パッド706を有している。さらに、各電極パッド706はフラットパッケージ712の金属キャスター714と接続(図示せず)されている。各発光部は、フラットパッケージ712と接続された(図示しない)外部制御回路によって発光制御され、所定の波長のレーザ光を射出する。
【0100】
次に、上記本発明の好ましい実施の形態の面発光型半導体レーザ素子100、200を光学機器に適用した例について図面を参照して説明する。図10は、上記本発明の好ましい実施の形態の面発光型半導体レーザ素子100、200を発光素子のパッケージに適応したときの構成を示す概略縦断面図である。面発光レーザパッケージ300は、面発光型半導体レーザ素子100、200、基板304および電極306からなる面発光レーザモジュール、レンズ316、ハウジング310、光ファイバマウント312、光ファイバ314とからなる。電極306は、外部の制御回路(図示せず)に電気的に接続され、面発光レーザパッケージの発光が制御されている。面発光型半導体レーザ素子100、200から出射したレーザー光はレンズ316で集光され光ファイバ314に結合される。
【0101】
図11は、上記本発明の好ましい実施の形態の面発光型半導体レーザ素子100、200を光記憶媒体への書き込み/読み出し装置のピックアップに適応したときの構成を示す概略縦断面図である。ピックアップ350は、面発光型半導体レーザ素子100、200、基板354、電極356、駆動IC358、およびこれらの要素を封止する樹脂360からなる面発光レーザモジュールと、レンズ376、ハーフミラー370、回折格子374、光センサー380、光記憶媒体372とからなる。樹脂360の出射面は凸状に加工されレンズ362を構成している。電極3546は、外部の制御回路(図示せず)に電気的に接続され、レーザピックアップの発光が制御されている。面発光型半導体レーザ素子100、200から出射したレーザ光は、レンズ362で平行光とされ、ハーフミラー370で反射された後、レンズ376によって集光され光記憶媒体372の所定の箇所に集光される。また、光媒体で反射された光は光センサー380に入射される。ここでは、上記本発明の好ましい実施の形態の面発光型半導体レーザ素子100、200、あるいは面発光型半導体レーザ素子100、200を複数有する面発光レーザ素子アレイを通信用の発光素子パッケージ、あるいは光ディスク用ピックアップに適用した例を示したがこれに限られず、測量機器、レーザーポインター、光学マウス、あるいは、プリンタ、フォトレジストの走査露光用光源、レーザポンピング用光源や、加工用ファイバレーザの光源等の光学機器として用いることもできる。
【0102】
図12は、上記本発明の好ましい実施の形態の面発光型半導体レーザ素子100、200を適用した光送受信モジュールの概略構成図である。図12に示すように、光送受信モジュール400は、保持部材402、光導波路(光ファイバ)412と、保持部材402上で光導波路(光ファイバ)412の位置決め用のスペーサ410、光導波路(光ファイバ)412を介して光信号を送信する面発光型半導体レーザ素子100、200、あるいは面発光型半導体レーザ素子100、200を複数有する面発光レーザ素子アレイ及び光信号を受信する受光素子404、面発光型半導体レーザ素子100、200あるいは面発光レーザ素子アレイの発光状態を制御する駆動回路406、受光素子404で受信された信号を増幅する増幅回路408とで構成されている。面発光型半導体レーザ素子100、200あるいは面発光レーザ素子アレイは外部の制御部(図示せず)からの制御信号によって駆動回路406を介して発光制御され、受光素子404で受信された信号が増幅回路408を介して制御部へ送信される。煩雑さを避けるために、駆動回路406と面発光型半導体レーザ素子100、200あるいは面発光レーザ素子アレイおよび増幅回路408と受光素子404のワイヤボンディングは省略している。
【0103】
図13〜図15は図12における面発光型半導体レーザ素子100、200あるいは面発光レーザ素子アレイと、光導波路412との光結合部分の概略構成図であり、基板500、面発光型半導体レーザ素子100、200あるいは面発光レーザ素子アレイ、光導波路412は図13〜図15で共通している。図13では、導波路412の端面が光軸に対してほぼ45度に傾斜するように加工されており、さらにこの傾斜面が反射面504として、反射膜のコーティング等による鏡面加工が施され、面発光型半導体レーザ素子100、200あるいは面発光レーザ素子アレイから出射した光は、導波路412の下面から導波路に入射され、傾斜面504で反射されて光導波路412内を伝播する。図14では、面発光型半導体レーザ素子100、200あるいは面発光レーザ素子アレイ上、光導波路412の端面側方に内部に反射面504の設けられたミラーアセンブリ506が設置されて、面発光型半導体レーザ素子100、200あるいは面発光レーザ素子アレイから出射した光は、ミラーアセンブリ506の下面から入射され、反射面504で反射され、ミラーアセンブリ506から出射された光が光導波路412に結合されて光導波路412内を伝播する。ミラーアセンブリ506の入射面あるいは/および出射面にはマイクロレンズ(アレイ)が設けられてもよい。図15は、コネクタハウジング512内に光ファイバ412が配置され、さらに光ファイバ心線の曲部514の端部が面発光型半導体レーザ素子100、200あるいは面発光レーザ素子アレイに対向するように配置され、面発光型半導体レーザ素子100、200あるいは面発光レーザ素子アレイから出射した光が光ファイバ412に結合される。
【0104】
次に、上記本発明の好ましい実施の形態の面発光型半導体レーザ素子100、200、あるいは面発光型半導体レーザ素子100、200を複数有する面発光レーザ素子アレイを通信システムに適用した例を示す。図16には、面発光型半導体レーザ素子100、200あるいは面発光レーザ素子アレイを用いた波長多重伝送システムの構成例が示されている。図16の波長多重伝送システムはコンピュータ、ボードあるいはチップ602、通信制御回路(CPU,MPU、光―電気変換回路、電気―光変換回路、波長制御回路)604、面発光型半導体レーザ素子100、200を複数有する面発光レーザ素子アレイ606、受光素子集積部608、合波器610、分波器612、電気配線616、光ファイバ617、618、通信対象のネットワーク、PC、ボード、チップなど614からなる。図16の波長多重伝送システムでは、発振波長の異なる複数の面発光レーザ素子を配列して面発光レーザアレイ606を構成し、面発光レーザアレイ606の各面発光レーザ素子からの各発振光を合波器を通して1本の光ファイバに結合させるように構成されている。このような構成では、1本のファイバで、高スループットに大容量の信号伝送ができる。このように、本発明の好ましい実施の形態の面発光レーザアレイは、モードが安定しており、且つ、各発振波長が安定しているので、高い信頼性で高密度大容量の波長多重伝送が可能になる。なお、本実施形態では各面発光レーザアレイ606あるいは受光素子集積部608からの出力用光ファイバあるいは入力用光ファイバは合波器610あるいは分波器612を用いて1本の光ファイバに結合されているが、用途に応じては出力用光ファイバあるいは入力用光ファイバをそのまま通信対象のネットワーク、PC、ボード、チップなど614に接続して並列伝送システムとすることもできる。この場合、本発明の好ましい実施の形態の面発光レーザアレイは、モードが安定しており、且つ、各波長が安定しているので、複数の光源をもつ信頼性の高い並列伝送システムの構築が容易になる。
【0105】
以上、本発明の種々の典型的な実施の形態を説明してきたが、本発明はそれらの実施の形態に限定されない。従って、本発明の範囲は、次の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0106】
100、200 面発光型半導体レーザ素子
101、201 基板
102、202 下部DBRミラー
103 バッファ層
104 n型コンタクト層
105、204 活性層
107、207 電流狭窄層
107a、208 電流狭窄部
107b、209 電流注入部
109 p型スペーサ層
110、210 メサポスト
111 p型コンタクト層
113 p側円環電極
113a 開口部
114 位相調整層
117、230 n側電極
118 n側引き出し電極
119、232 p側引き出し電極
120、206 上部DBRミラー
121、124 SiO
122、125 SiN
123、222 パッシベーション膜
127、128 誘電体多層膜
130、220 共振器
131、221 基部
133、223、135 金属膜
133a、135a、223a 耐湿性の金属膜
133b、135b、223b 密着性向上用金属膜
141、142 開口
151、152、234 電極パッド
153、154 開口
203 下部クラッド層
205 上部クラッド層
231 p側電極
233 開口
240 ポリイミド層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
第1の電極と、
第2の電極と、
第1の反射鏡と、
第2の反射鏡と、
前記第1の反射鏡および前記第2の反射鏡との間に形成された共振器であって、活性層と前記第1の電極と前記第2の電極と間の電流通路を狭窄する電流狭窄層とを含む前記共振器と、
前記基板の一主面上に形成された凸部であって、前記電流狭窄層を含む前記凸部と、
前記凸部および前記基板の一主面を覆うパッシベーション膜と、
前記凸部の基部を直接または前記パッシベーション膜を介して覆う耐湿性の金属膜と、を備える半導体レーザ素子。
【請求項2】
前記凸部の基部は、前記パッシベーション膜に覆われ、さらに前記基部は前記パッシベーション膜上に設けられた前記耐湿性の金属膜によって前記パッシベーション膜を介して覆われている請求項1記載の半導体レーザ素子。
【請求項3】
電極パッドと、
前記第1の電極と前記電極パッドとを接続する引き出し電極と、をさらに備え、
前記第1の電極は前記凸部の上面上に設けられ、前記引き出し電極と前記耐湿性の金属膜とは電気的に接続されている請求項2記載の半導体レーザ素子。
【請求項4】
電極パッドと、
前記第1の電極と前記電極パッドとを接続する引き出し電極と、をさらに備え、
前記第1の電極は前記凸部の上面上に設けられ、前記引き出し電極と前記耐湿性の金属膜との間に第2のパッシベーション膜が設けられており、前記引き出し電極と前記耐湿性の金属膜とは電気的に接続されていない請求項2記載の半導体レーザ素子。
【請求項5】
前記凸部の基部は、前記耐湿性の金属によって覆われ、さらに前記耐湿性の金属上に設けられた前記パッシベーション膜によって覆われている請求項1記載の半導体レーザ素子。
【請求項6】
前記パッシベーション膜および前記耐湿性の金属を覆う第3のパッシベーション膜と、
前記第3のパッシベーション膜の段差部を覆う第2の耐湿性の金属膜と、をさらに備える請求項1,2または5記載の半導体レーザ素子。
【請求項7】
前記パッシベーション膜、前記第1の電極、前記引き出し電極および前記耐湿性の金属を覆う第3のパッシベーション膜と、
前記第3のパッシベーション膜の段差部を覆う第2の耐湿性の金属膜と、をさらに備える請求項3または4記載の半導体レーザ素子。
【請求項8】
前記半導体基板の前記一主面上に設けられた半導体層と、
第2の電極パッドと、
前記第2の電極と前記第2の電極パッドとを接続する第2の引き出し電極と、をさらに備え、
前記凸部は前記半導体層上に設けられ、前記凸部は前記活性層を含み、前記第2の電極は、前記半導体層上に前記凸部と離間して設けられ、
前記第3のパッシベーション膜は、前記半導体層、前記第2の電極および前記第2の引き出し電極をさらに覆っている請求項7記載の半導体レーザ素子。
【請求項9】
前記耐湿性の金属膜は、Au膜、Au膜とその下のPt膜の2層膜、およびAu膜とその下のMo膜の2層膜から成る群より選ばれるいずれかの金属膜である請求項2乃至4のいずれかに記載の半導体レーザ素子。
【請求項10】
前記耐湿性の金属膜の下に設けられ、前記耐湿性の金属膜と前記パッシベーション膜との密着性を向上させる密着性向上用金属膜をさらに備える請求項2乃至4および9のいずれかに記載の半導体レーザ素子。
【請求項11】
前記密着性向上用金属膜は、Ti、CrおよびPdから成る群より選ばれるいずれかの金属膜である請求項10記載の半導体レーザ素子。
【請求項12】
前記耐湿性の金属膜は、NiとCrとAlの合金膜またはNiおよびCrのシリサイド膜である請求項5記載の半導体レーザ素子。
【請求項13】
前記第2の耐湿性の金属膜は、Au膜、Au膜とその下のPt膜の2層膜、およびAu膜とその下のMo膜の2層膜から成る群より選ばれるいずれかの金属膜である請求項6記載の半導体レーザ素子。
【請求項14】
前記第2の耐湿性の金属膜の下に設けられ、前記第2の耐湿性の金属膜と前記第3のパッシベーション膜との密着性を向上させる第2の密着性向上用金属膜をさらに備える請求項6または13記載の半導体レーザ素子。
【請求項15】
前記第2の密着性向上用金属膜は、Ti、CrおよびPdから成る群より選ばれるいずれかの金属膜である請求項14記載の半導体レーザ素子。
【請求項16】
前記第1の反射鏡は、誘電体多層膜反射鏡であり、前記パッシベーション膜は、前記誘電体多層膜反射鏡の一部である請求項1乃至15のいずれかに記載の半導体レーザ素子。
【請求項17】
前記第1の反射鏡は、誘電体多層膜反射鏡であり、前記第2のパッシベーション膜は、前記誘電体多層膜反射鏡の一部である請求項4記載の半導体レーザ素子。
【請求項18】
前記第1の反射鏡は、誘電体多層膜反射鏡であり、前記第3のパッシベーション膜は、前記誘電体多層膜反射鏡の一部である請求項6または7記載の半導体レーザ素子。
【請求項19】
前記誘電体多層膜反射鏡は、複数ペアのSiO/SiNからなる請求項16乃至18のいずれかに記載の半導体レーザ素子。
【請求項20】
前記電流狭窄層は、アルミニウム含有化合物半導体層と、前記アルミニウム含有化合物半導体層の周囲に設けられた、前記アルミニウム含有化合物半導体層を酸化した酸化物絶縁物層と、を有している請求項1乃至19のいずれかに記載の半導体レーザ素子。
【請求項21】
前記パッシベーション膜および前記耐湿性の金属上に設けられた平坦化用誘電体膜をさらに備える請求項1,2または5記載の半導体レーザ素子。
【請求項22】
電極パッドと、
前記第1の電極と前記電極パッドとを接続する引き出し電極と、をさらに備え、
前記第1の電極は前記凸部上面に設けられ、前記引き出し電極と前記電極パッドは、前記平坦化用誘電体膜上に設けられている請求項21記載の半導体レーザ素子。
【請求項23】
基板と、
第1の電極と、
第2の電極と、
第1の反射鏡と、
第2の反射鏡と、
前記第1の反射鏡および前記第2の反射鏡との間に形成された共振器であって、活性層と前記第1の電極と前記第2の電極と間の電流通路を狭窄する電流狭窄層とを含む前記共振器と、
前記基板の一主面上に形成された凸部であって、前記電流狭窄層を含む前記凸部と、
前記凸部および前記基板の一主面を覆うパッシベーション膜と、
前記パッシベーション膜の折れ曲がり部を覆う耐湿性の金属膜と、を備える半導体レーザ素子。
【請求項24】
電極パッドと、
前記第1の電極と前記電極パッドとを接続する引き出し電極と、をさらに備え、
前記第1の電極は前記凸部上面に設けられ、
前記パッシベーション膜は、前記第1の電極と前記電極パッドとをさらに覆っている請求項23記載の半導体レーザ素子。
【請求項25】
前記半導体基板の前記一主面上に設けられた半導体層と、
第2の電極パッドと、
前記第2の電極と前記第2の電極パッドとを接続する第2の引き出し電極と、をさらに備え、
前記凸部は前記半導体層上に設けられ、前記凸部は前記活性層を含み、前記第2の電極は、前記半導体層上に前記凸部と離間して設けられ、
前記パッシベーション膜は、前記半導体層、前記第2の電極および前記第2の引き出し電極をさらに覆っている請求項24記載の半導体レーザ素子。
【請求項26】
前記第1の反射鏡は、誘電体多層膜反射鏡であり、前記パッシベーション膜は、前記誘電体多層膜反射鏡または前記誘電体多層膜反射鏡の一部である請求項23乃至25のいずれかに記載の半導体レーザ素子。
【請求項27】
請求項1乃至26のいずれかに記載の半導体レーザ素子を複数備えるレーザアレイ。
【請求項28】
請求項1乃至26のいずれかに記載の半導体レーザ素子を備える光学機器。
【請求項29】
請求項1乃至26のいずれかに記載の半導体レーザ素子を備える通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−142209(P2011−142209A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2011(P2010−2011)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】