説明

半導体レーザ装置

【課題】部品を共通化することが可能であるとともに、構成が複雑化するのを抑制することが可能な半導体レーザ装置を提供する。
【解決手段】この半導体レーザ装置20は、半導体レーザ素子4と、半導体レーザ素子4を固定する円板状のステム1と、ステム1に取り付けられるとともに、ステム1の直径D1より大きい直径D2を有し、かつ、機器のホルダ部に装着される円板状の保持部材10とを備えている。これにより、半導体レーザ素子4で発生する熱を、保持部材10でも放熱させることができるので、半導体レーザ装置20の放熱性を向上させることができ、小型化が要求される用途に用いる半導体レーザ装置を、放熱性を重視する用途にも用いることができる。その結果、ステム1などの部品を共通化することができる。また、ペルチェ素子などの放熱素子をステム1に取り付ける場合に比べて、構成が複雑化するのを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体レーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザ装置では、半導体レーザ素子のレーザ発光に伴う発熱により素子温度が上昇する。この素子温度の上昇は、素子の信頼性に影響を及ぼすとともに特性の変化を生じさせる。このため、半導体レーザ装置の放熱性が重要となる。
【0003】
一方、従来知られている半導体レーザ装置は、主として、キャンパッケージタイプとフレームパッケージタイプとに分類され、キャンパッケージタイプの半導体レーザ装置では、パッケージサイズ(ステムの外径)がφ5.6mmおよびφ9.0mmのタイプが規格サイズとなっている。半導体レーザ装置の放熱性には、ステムやキャップなどのパッケージ部材が大きく関与するため、放熱性の観点からはφ9.0mmタイプのパッケージ(ステム、キャップなど)を用いて半導体レーザ装置を組み立てるのが有効である。このため、放熱性を重視する用途に用いる場合には、一般的に、φ9.0mmタイプのパッケージを用いて半導体レーザ装置が組み立てられていた。一方、放熱性よりも機器の小型化が要求される用途に用いる場合には、一般的に、φ5.6mmタイプのパッケージを用いて半導体レーザ装置が組み立てられていた。
【0004】
このように、従来のキャンパッケージタイプの半導体レーザ装置では、同じタイプの半導体レーザ素子を用いる場合でも、使用用途によって異なる大きさのパッケージを用いて半導体レーザ装置が組み立てられていた。このため、半導体レーザ装置の組み立て時に、使用用途によって異なる大きさのパッケージを使い分ける必要があるという不都合があった。その結果、ステムなどのパッケージ部材を共通化することが困難であるという問題点があった。
【0005】
また、従来、半導体レーザ素子の温度上昇を防止するために、放熱素子が取り付けられた半導体レーザ装置(光電子装置)が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0006】
上記特許文献1には、ステムに放熱素子が取り付けられたキャンパッケージタイプの半導体レーザ装置が記載されている。この放熱素子は、ペルチェ素子の両面をそれぞれ吸熱板と放熱板とで覆い、吸熱板および放熱板のそれぞれに、各2本のリード線が取り付けられた構成となっている。また、放熱素子の中央部には、半導体レーザ装置のステムリードを挿入する貫通孔が設けられており、半導体レーザ装置のステムは、吸熱板に接着されて、放熱素子に熱的に接続されている。また、吸熱板の端部には、温度を検出するためのサーミスタが取り付けられているとともに、このサーミスタは、温度検出回路に接続されており、これにより、半導体レーザ装置の周囲環境温度および半導体レーザ素子の動作時の温度変化を検出することが可能に構成されている。そして、サーミスタで検出された温度変化に応じて、リード線を介してペルチェ素子が電流駆動され、半導体レーザ装置の発熱が吸熱板に吸収されるとともに放熱板から放出されて、半導体レーザ装置の温度制御が行われる。これにより、半導体レーザ素子の温度上昇を防止することが可能となる。このため、放熱性を重視する用途に用いる場合でも、φ5.6mmタイプのパッケージを用いて半導体レーザ装置を組み立てることが可能となるので、半導体レーザ装置の組み立て時に、使用用途によって、異なる大きさのパッケージの使い分けが不要となる。
【特許文献1】特開2003−188456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載された半導体レーザ装置(光電子装置)は、ペルチェ素子を電流駆動させるために別途電源部が必要になるという不都合があるとともに、半導体レーザ装置の周囲環境温度および半導体レーザ素子の動作時の温度変化を検出するためのサーミスタおよび温度検出回路などを設ける必要があるという不都合がある。このため、半導体レーザ装置(光電子装置)の構成が複雑化するという問題点がある。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、部品を共通化することが可能であるとともに、構成が複雑化するのを抑制することが可能な半導体レーザ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における半導体レーザ装置は、半導体レーザ素子と、半導体レーザ素子を固定するステムと、ステムに取り付けられるとともに、ステムより大きい外形を有し、かつ、機器のホルダ部に装着される保持部材とを備える。
【0010】
この第1の局面による半導体レーザ装置は、上記のように、ステムより大きい外形を有するとともに機器のホルダ部に装着される保持部材をステムに取り付けることによって、半導体レーザ素子で発生する熱を、ステムを介して、保持部材でも放熱させることができるので、半導体レーザ装置の放熱性を向上させることができる。このため、放熱性よりも機器の小型化が要求される用途に用いるために小さいステムを用いて組み立てられた半導体レーザ装置を、保持部材を取り付けることによって、大きいステムが必要とされる放熱性を重視する用途にも用いることができるので、ステムなどの部品を共通化することができるとともに、使用用途によるパッケージ部材の選別作業を省略することができる。たとえば、φ5.6mmタイプのステムを用いて半導体レーザ装置を組み立てるとともに、保持部材をφ9.0mmタイプのステムと同じ外径を有するように構成した場合には、保持部材をステムに取り付けることによって、φ9.0mmタイプのステムを用いて半導体レーザ装置を組み立てた場合とほぼ同等の放熱性を得ることができるので、φ5.6mmタイプのステムを用いた半導体レーザ装置を、放熱性を重視する用途にも用いることができる。これにより、φ5.6mmタイプのステムを用いた半導体レーザ装置のみを製造すれば、製造された半導体レーザ装置を、放熱性が重視される用途と小型化などが重視される用途との両方の用途に用いることができるので、ステムなどの部品を共通化することができる。また、φ5.6mmタイプのステムを用いた半導体レーザ装置のみを製造すれば足りるので、使用用途によりφ5.6mmタイプのステムを用いた半導体レーザ装置とφ9.0mmタイプのステムを用いた半導体レーザ装置とをそれぞれ製造する場合に比べて、在庫管理および製造時の工程管理などを簡略化することができる。
【0011】
また、第1の局面では、機器のホルダ部に装着される保持部材をステムに取り付けることによって、放熱性が重視される用途にも用いることができるので、両面が放熱板および吸熱板で覆われたペルチェ素子およびサーミスタなどから構成された放熱素子などをステムに取り付けた場合と異なり、ペルチェ素子を電流駆動させる電源部やサーミスタが接続される温度検出回路などを設ける必要がないので、半導体レーザ装置の構成が複雑化するのを抑制することができる。また、上記のような放熱素子などをステムに取り付けた場合と異なり、半導体レーザ装置の製造コストが大幅に上昇するのを抑制することができる。
【0012】
上記第1の局面による半導体レーザ装置において、好ましくは、保持部材は、金属材料から構成されている。このように構成すれば、金属材料は放熱性に優れているので、半導体レーザ素子で発生する熱を、ステムを介して、保持部材で容易に放熱させることができる。これにより、半導体レーザ装置の放熱性を容易に向上させることができる。
【0013】
上記第1の局面による半導体レーザ装置において、好ましくは、保持部材は、ステムに着脱可能に取り付けられている。このように構成すれば、ステムから保持部材を取り外すことによって、再度、保持部材が取り外された半導体レーザ装置を、小型化が要求される用途に用いることができる。
【0014】
上記第1の局面による半導体レーザ装置において、好ましくは、ステムおよび保持部材は、それぞれ、円板状に形成されており、ステムと保持部材とは、同心円状に配置されている。このように構成すれば、保持部材とステムとは同心円状に配置されているので、半導体レーザ素子の発光点がステムの中心点に位置するように半導体レーザ素子をステムに取り付けた場合には、半導体レーザ素子の発光点を保持部材の中心点に位置するように構成することができる。これにより、半導体レーザ素子から出射されるレーザ光の偏波特性などのバラツキを調整するために、保持部材を周方向に回転(光軸に対して回転)させた場合でも、半導体レーザ素子の発光点の位置がずれるのを抑制することができる。
【0015】
上記第1の局面による半導体レーザ装置において、好ましくは、保持部材の中央部には、ステムが嵌合される開口部が設けられており、保持部材は、開口部にステムを嵌合させることによって、ステムに取り付けられている。このように構成すれば、保持部材を、ステムに容易に取り付けることができる。
【0016】
この場合において、好ましくは、ステムの外側面には、第1係合部が設けられており、保持部材の開口部の内側面には、保持部材の開口部にステムが嵌合された際に、ステムの第1係合部と係合する第2係合部が設けられている。このように構成すれば、ステムを保持部材の開口部に嵌合させる際に、ステムの第1係合部と保持部材の第2係合部とを係合させることによって、ステムに対する保持部材の取り付け位置がずれるのを容易に抑制することができるので、保持部材を、ステムの所定の位置に、回転方向(周方向)に位置ずれすることなく、容易に取り付けることができる。
【0017】
上記ステムに第2係合部が設けられた構成において、好ましくは、保持部材の中心点と第2係合部とを結ぶ直線の延長線上に位置する保持部材の外側面には、切欠部が設けられており、切欠部は、保持部材が機器のホルダ部に装着される際に、保持部材の位置決めを行う機能を有している。このように構成すれば、保持部材が装着される機器のホルダ部に突出部などが設けられている場合には、保持部材の切欠部とホルダ部の突出部とを係合させることによって、半導体レーザ素子が所定の位置状態となるように、機器のホルダ部の所定の位置に、回転方向(周方向)に位置ずれすることなく、容易に装着することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態による半導体レーザ装置の全体斜視図である。図2は、図1に示した本発明の一実施形態による半導体レーザ装置の側面図である。図3は、図1に示した本発明の一実施形態による半導体レーザ装置の上面図である。図4〜図7は、図1に示した本発明の一実施形態による半導体レーザ装置の構造を説明するための図である。図1〜図7を参照して、本発明の一実施形態による半導体レーザ装置20の構造について説明する。
【0020】
一実施形態による半導体レーザ装置20は、図1〜図3に示すように、円板状のステム1と、ステム1の上面上に固定されたヒートシンク2と、ヒートシンク2に取り付けられたサブマウント3と、サブマウント3に実装された半導体レーザ素子4と、ステム1の上面上に設けられたフォトダイオード5と、ステム1の上面上に半導体レーザ素子4などを覆うように取り付けられたキャップ6と、3本のリードピン7、8および9と、ステム1に取り付けられた保持部材10とを備えている。
【0021】
ステム1は、鉄または銅などの金属材料から構成されており、円板状に形成されている。なお、ステム1の表面には、金メッキなどの表面処理が施される場合もある。このステム1は、図2および図3に示すように、直径D1が約5.6mm、厚みt1が約1.0mmに形成されている。また、図1および図3に示すように、ステム1の外側面には、平断面がV字形状を有する切欠部1aおよび1bと、平断面がコの字形状を有する切欠部1cとが、ステム1の厚み方向に延びるように設けられている。また、切欠部1aおよび1bは、図3に示すように、中心線L1に対して、互いに対称となる位置に設けられており、切欠部1cは、中心線L1上の位置に設けられている。また、図1および図3に示すように、ステム1の所定の領域には、リードピン8および9がそれぞれ接続される貫通孔1dおよび1eが設けられている。なお、切欠部1a、1bおよび1cは、それぞれ、本発明の「第1係合部」の一例である。
【0022】
また、ヒートシンク2は、鉄または銅などの金属材料によって構成されており、ステム1の上面(主面)の中央部近傍に固定されている。なお、ヒートシンク2の表面には、ステム1と同様に、金メッキなどの表面処理が施される場合もある。また、ヒートシンク2は、ステム1に一体に形成された構成となる場合もある。
【0023】
また、サブマウント3は、シリコンなどで構成されており、図1および図4に示すように、ヒートシンク2の先端側一側面(ステム1の中心側の面)の所定の領域に固定されている。
【0024】
また、図1、図3および図4に示すように、半導体レーザ素子4は、たとえば、赤色光を発光するAlGaInP系化合物などが用いられた可視光半導体レーザ素子などからなり、ジャンクションダウン方式でサブマウント3に実装されている。すなわち、半導体レーザ素子4の発熱部がヒートシンク2などの放熱部材に近づくように、上下逆方向に配置されて実装されている。具体的には、図4に示すように、半導体レーザ素子4の上部電極4aがサブマウント3に電気的に接続されている。また、図3に示すように、半導体レーザ素子4は、その発光点が、円板状のステム1の中心点O1に位置するように配置されている。
【0025】
また、図1および図4に示すように、フォトダイオード5は、半導体レーザ素子4の後方出射面4c(図4参照)と対向するステム1の上面(主面)上の領域に固定されている。また、フォトダイオード5は、半導体レーザ素子4の後方出射面4cから出射されるレーザ光を受光して、半導体レーザ素子4の前方出射面4dから出射されるレーザ光の光強度をモニタする機能を有している。
【0026】
また、図1および図3に示すように、キャップ6は、鉄などの金属材料によって構成されるとともに、一面を開放した円筒形状を有している。このキャップ6の開放端には、フランジ部6aが設けられており、キャップ6の閉鎖端には、半導体レーザ素子4から出射されるレーザ光を取り出すための出射孔6bが設けられている。また、その出射孔6bは、ガラス6cによって覆われている。また、キャップ6は、そのフランジ部6aがステム1に溶接されることによって、半導体レーザ素子4などを覆うように、ステム1の上面上に固定されている。このキャップ6は、外部からのゴミおよび外部応力や光学的干渉から半導体レーザ素子4を保護する機能を有している。なお、半導体レーザ素子4は、ステム1とキャップ6とによって、気密封止されている。
【0027】
また、3本のリードピン7、8および9の内、リードピン7は、ヒートシンク2の直下に位置するステム1の裏面側の領域に直接取り付けられている。このリードピン7は、ヒートシンク2およびサブマウント3を介して、半導体レーザ素子4の上部電極4aと電気的に接続された状態となっているとともに、フォトダイオード5の下部電極部(図示せず)とも電気的に接続された状態となっている。一方、3本のリードピン7、8および9の内、リードピン8および9は、図1に示すように、その一方端部がステム1の上面側に突出するように、それぞれ、絶縁体11および12を介して、ステム1に絶縁固定されている。また、リードピン8の一方端部は、ボンディングワイヤ13を介して、半導体レーザ素子4の下部電極4b(図4参照)と電気的に接続されており、リードピン9の一方端部は、ボンディングワイヤ14を介して、フォトダイオード5の上部電極部5aと電気的に接続されている。
【0028】
また、保持部材10は、半導体レーザ装置20を機器などに実装する際に、機器などのホルダ部などに装着されて、半導体レーザ装置20を保持する機能を有している。
【0029】
ここで、本実施形態では、保持部材10は、銅などの金属材料から構成されており、図2および図3に示すように、ステム1の直径D1よりも大きい直径D2を有する円板状に形成されている。具体的には、保持部材10の直径D2は、ステム1の直径D1(=約5.6mm)よりも大きい約9.0mmに形成されている。また、保持部材10の厚みt2は、約1.5mmに形成されている。また、図5〜図7に示すように、保持部材10の中央部には、円形の開口部10aが設けられている。この開口部10aは、第1開口部101aと第1開口部101aよりも大きい直径D3を有する第2開口部102aとから構成されており、第1開口部101aと第2開口部102aとが厚み方向(図5の矢印A方向)に同心円状に配置されることによって、段差部10bを有するステップ状に形成されている。また、第2開口部102aの直径D3は、図6に示すように、ステム1の直径D1と対応する大きさである約5.6mmに形成されており、ステム1が嵌合することが可能に構成されている。また、保持部材10は、保持部材10の第2開口部102aにステム1を嵌合させることによって、ステム1に着脱可能に取り付けられている。なお、第2開口部102aは、本発明の「開口部」の一例である。
【0030】
また、本実施形態では、図6に示すように、開口部10aは、その中心点が保持部材10の中心点O2と一致するように設けられている。これにより、保持部材10の第2開口部102aにステム1が嵌合されることによって、ステム1の中心点O1と保持部材10の中心点O2とが一致し、ステム1と保持部材10とが同心円状に配置されるように構成されている。また、図7に示すように、第2開口部102aの高さhは、ステム1の厚みt1と実質的に同じ大きさ(h=約1.0mm)に構成されており、保持部材10の第2開口部102aにステム1が嵌合された状態で、図1および図2に示すように、保持部材10の上面とステム1の上面とが実質的に同一面となるように構成されている。これにより、ステム1の外側面全体が保持部材10の第2開口部102aの内側面10c(図5〜図7参照)と接触するとともに、ステム1の下面の一部(外周部)も、開口部10aの段差部10b(図2参照)と接触するので、ステム1と保持部材10との接触面積が大きくなり、半導体レーザ装置20の放熱性をより向上させることが可能となる。また、半導体レーザ装置20を機器などに実装する際に、ステム1の上面を基準面とする場合には、保持部材10の上面とステム1の上面とが実質的に同一面となるように構成することによって、保持部材10の上面も基準面として用いることが可能となる。
【0031】
また、本実施形態では、図5および図6に示すように、保持部材10の第2開口部102aの内側面10cには、保持部材10の厚み方向(図5の矢印A方向)に延びるように、突出部10d、10eおよび10fが設けられている。また、図3および図6に示すように、突出部10dおよび10eは、平断面が三角形状を有しており、突出部10fは、平断面が四角形状を有している。また、図6に示すように、突出部10dおよび10eは、中心線L2に対して、互いに対称となる位置に設けられており、突出部10fは、中心線L2上の位置に設けられている。これにより、保持部材10の突出部10d、10eおよび10fは、保持部材10の第2開口部102aにステム1が嵌合されることによって、ステム1の外側面に形成された切欠部1a、1bおよび1cとそれぞれ係合可能に構成されている。なお、突出部10d、10eおよび10fは、それぞれ、本発明の「第2係合部」の一例である。
【0032】
また、本実施形態では、図5および図6に示すように、保持部材10の外側面には、平断面がV字形状を有する切欠部10gおよび10hと、平断面がコの字形状を有する切欠部10iとが、保持部材10の厚み方向(矢印A方向)に延びるように設けられている。また、切欠部10gおよび10hは、図6に示すように、中心線L2に対して、互いに対称となる位置に設けられており、切欠部10iは、中心線L2上の位置に設けられている。このように、切欠部10g、10hおよび10iは、保持部材10の中心点O2と突出部10d、10eおよび10fとをそれぞれ結ぶ直線M1、M2およびL2の延長線上にそれぞれ位置するように構成されている。これにより、保持部材10の第2開口部102aにステム1が嵌合された際に、保持部材10の中心点O2とステム1の切欠部1a、1bおよび1cとをそれぞれ結ぶ直線の延長線上に、保持部材10の切欠部10g、10hおよび10iがそれぞれ位置するように構成することが可能となる。また、保持部材10の切欠部10g、10hおよび10iは、保持部材10が機器などのホルダ部などに装着される際に、保持部材10の位置決めを行う機能を有している。すなわち、半導体レーザ装置20を機器などに実装する際に、機器などのホルダ部などに設けられている突出部と保持部材10の切欠部10g、10hおよび10iとをそれぞれ係合させることによって、半導体レーザ素子4が所定の位置状態となるように、半導体レーザ装置20(保持部材10)の装着位置の位置決めを容易に行うことが可能に構成されている。また、機器などのホルダ部などに設けられている突出部と保持部材10の切欠部10g、10hおよび10iとをそれぞれ係合させることによって、保持部材10(半導体レーザ装置20)が、周方向に回転するのを抑制することが可能となる。
【0033】
図8は、図1に示した本発明の一実施形態による半導体レーザ装置の保持部材の取り付け動作を説明するための斜視図である。次に、図1、図2および図8を参照して、本発明の一実施形態による半導体レーザ装置20の保持部材10の取り付け動作について説明する。
【0034】
まず、図8に示すように、保持部材10の開口部10aに、ステム1に固定されたリードピン7、8および9を挿入し、保持部材10をステム1側(矢印B方向側)に移動させる。次に、保持部材10の突出部10d、10eおよび10fを、それぞれ、ステム1の切欠部1a、1bおよび1cにスライドさせて係合させると同時に、保持部材10の開口部10a(第2開口部102a)にステム1を嵌合させる。この際、図1および図2に示すように、ステム1の上面と保持部材10の上面とが実質的に同一面となるまで、保持部材10を矢印B方向に移動させる。これにより、ステム1に保持部材10が取り付けられる。なお、保持部材10の第2開口部102aの直径D3は、ステム1の直径D1と対応する大きさに構成されているため、通常の使用では、保持部材10がステム1から抜け落ちることなく取り付けられる。また、保持部材10を矢印C方向に移動させることによって、ステム1から保持部材10が取り外される。
【0035】
次に、図1および図4を参照して、本発明の一実施形態による半導体レーザ装置20の動作について説明する。
【0036】
図1に示すように、リードピン7と半導体レーザ素子4の上部電極4aとは、サブマウント3を介して導通しているとともに、リードピン8の一方端部と半導体レーザ素子4の下部電極4bとは、ボンディングワイヤ13を介して、導通しているため、リードピン7とリードピン8との間に電圧を印加すると、半導体レーザ素子4の上部電極4aと下部電極4bとの間に電圧が印加される。これにより、半導体レーザ素子4が発光し、図4に示すように、前方出射面4dおよび後方出射面4cからレーザ光が出射される。前方出射面4dから出射されたレーザ光は、図1に示すように、ガラス6cによって覆われた出射孔6bから出射される。一方、後方出射面4cから出射されたレーザ光は、図4に示すように、フォトダイオード5によって受光される。これにより、前方出射面4dから出射されるレーザ光の光強度がモニタされる。
【0037】
また、半導体レーザ素子4の発光にともなう発熱によって生じた熱は、図1に示すように、サブマウント3およびヒートシンク2を介して、ステム1およびキャップ6で放熱されるとともに、ステム1に取り付けられた保持部材10でも放熱される。これにより、ステム1に保持部材10を取り付けることによって、約9.0mmの直径を有するステムを用いて組み立てられた半導体レーザ装置とほぼ同等の放熱性が得られる。
【0038】
本実施形態では、上記のように、ステム1の直径D1(=約5.6mm)より大きい直径D2(=約9.0mm)を有する保持部材10をステム1に取り付けることによって、半導体レーザ素子4で発生する熱を、ステム1などを介して、保持部材10でも放熱させることができるので、半導体レーザ装置20の放熱性を向上させることができる。このため、放熱性よりも機器の小型化が要求される用途に用いるために、直径約5.6mmのステム1を用いて組み立てられた半導体レーザ装置に、約9.0mmの直径D2を有する保持部材10を取り付けることによって、放熱性を重視する用途にも用いることができるので、ステム1などの部品を共通化することができるとともに、使用用途によるステム1などのパッケージ部材の選別作業を省略することができる。また、約5.6mmの直径D1を有するステム1を用いた半導体レーザ装置20のみを製造すれば足りるので、使用用途により異なる大きさのパッケージ部材を用いて半導体レーザ装置を製造する場合に比べて、在庫管理および製造時の工程管理などを簡略化することができる。
【0039】
また、本実施形態では、保持部材10をステム1に取り付けることによって、放熱性が重視される用途にも用いることができるので、両面が放熱板および吸熱板で覆われたペルチェ素子およびサーミスタなどから構成された放熱素子などをステム1に取り付けた場合と異なり、ペルチェ素子を電流駆動させる電源部やサーミスタが接続される温度検出回路などを設ける必要がないので、半導体レーザ装置20の構成が複雑化するのを抑制することができる。また、上記のような放熱素子などをステム1に取り付けた場合と異なり、半導体レーザ装置20の製造コストが大幅に上昇するのを抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態では、保持部材10を、金属材料から構成することによって、金属材料は放熱性に優れているので、半導体レーザ素子4で発生する熱を、ステム1などを介して、保持部材10で容易に放熱させることができる。これにより、半導体レーザ装置20の放熱性を容易に向上させることができる。
【0041】
また、本実施形態では、保持部材10を、ステム1に着脱可能に取り付けることによって、ステム1から保持部材10を取り外すことにより、再度、保持部材10が取り外された半導体レーザ装置を、小型化が要求される用途に用いることができる。
【0042】
また、本実施形態では、ステム1および保持部材10を、それぞれ、円板状に形成するとともに、ステム1と保持部材10とを同心円状に配置することによって、半導体レーザ素子4の発光点を保持部材10の中心点O2に位置するように構成することができるので、半導体レーザ素子4から出射されるレーザ光の偏波特性などのバラツキを調整するために、保持部材10を周方向に回転(光軸に対して回転)させた場合でも、半導体レーザ素子4の発光点の位置がずれるのを抑制することができる。
【0043】
また、本実施形態では、ステム1の外側面に切欠部1a、1bおよび1cを設け、保持部材10の第2開口部102aの内側面10cに、保持部材10の第2開口部102aにステム1が嵌合された際に、ステム1の切欠部1a、1bおよび1cとそれぞれ係合する突出部10d、10eおよび10fを設けることによって、ステム1に保持部材10を取り付ける際に、ステム1の切欠部1a、1bおよび1cと保持部材10の突出部10d、10eおよび10fとをそれぞれ係合させることによって、ステム1に対する保持部材10の取り付け位置がずれるのを容易に抑制することができるので、保持部材10を、ステム1の所定の位置に、回転方向に位置ずれすることなく、容易に取り付けることができる。
【0044】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0045】
たとえば、上記実施形態では、約5.6mmの直径を有するステムに、約9.0mmの直径を有する保持部材を取り付けた例を示したが、本発明はこれに限らず、保持部材の直径がステムの直径よりも大きければ、約5.6mm以外の直径を有するステムに、約9.0mm以外の直径を有する保持部材を取り付けるようにしてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、ステムに保持部材を着脱可能に取り付けた例を示したが、本発明はこれに限らず、接着剤などを用いて、ステムに保持部材を固着してもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、保持部材を銅などの金属材料から構成した例を示したが、本発明はこれに限らず、金属材料以外の材料を用いて保持部材を構成してもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、ステムおよび保持部材を、それぞれ、円板状に形成した例を示したが、本発明はこれに限らず、少なくとも、ステムおよび保持部材の一方を、円板状以外の形状に形成するようにしてもよい。円板状以外の形状としては、たとえば、円板状の一部を切り落とした形状が考えられる。
【0049】
また、上記実施形態では、保持部材の中央部に第1開口部と第2開口部とから構成される段差部を有するステップ状の開口部を設けた例を示したが、本発明はこれに限らず、保持部材の中央部に段差部のない開口部を設けるようにしてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、ステムの上面と保持部材の上面とが実質的に同一面となるように、保持部材をステムに取り付けた例を示したが、本発明はこれに限らず、ステムの上面と保持部材の上面とが同一面とならないように、保持部材をステムに取り付けるようにしてもよい。たとえば、保持部材の第2開口部の高さをステムの厚みよりも小さくすることによって、保持部材の第2開口部にステムを嵌合させた際に、ステムの上面が保持部材の上面よりも上方に位置するように構成してもよい。また、保持部材の第2開口部の高さをステムの厚みよりも大きくすることによって、保持部材の第2開口部にステムを嵌合させた際に、ステムの上面が保持部材の上面よりも下方に位置するように構成してもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、ステムの外側面に切欠部を設け、保持部材の第2開口部の内側面に、ステムの切欠部と係合する突出を設けた例を示したが、本発明はこれに限らず、ステムの外側面に突出部を設け、保持部材の第2開口部の内側面に、ステムの突出部と係合する切欠部を設けるようにしてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、保持部材の第2開口部の内側面に、ステムの外側面に設けられた複数の切欠部とそれぞれ係合する複数の突出部を設けた例を示したが、本発明はこれに限らず、保持部材の第2開口部の内側面に、ステムの外側面に設けられた複数の切欠部のいずれかと係合する突出部を1つ設けるようにしてもよい。また、保持部材の第2開口部の内側面に、ステムの外側面に設けられた切欠部と係合する突出部を設けない構成としてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、保持部材の第2開口部の内側面に、平断面が三角形状を有する突出部と、平断面が四角形状を有する突出部とをそれぞれ設けた例を示したが、本発明はこれに限らず、保持部材の第2開口部にステムが嵌合された際に、ステムの外側面に設けられた切欠部と係合して、保持部材の位置決めを行う機能を有していれば、平断面が三角形状または四角形状以外の形状を有する突出部を保持部材の第2開口部の内側面に設けるようにしてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、保持部材の外側面に、3コの切欠部を設けた例を示したが、本発明はこれに限らず、切欠部の数は3コ以外でもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、保持部材の外側面に、平断面がV字形状を有する切欠部と、平断面がコの字形状を有する切欠部とを設けた例を示したが、本発明はこれに限らず、保持部材(半導体レーザ装置)の装着位置の位置決めを行うことが可能であれば、平断面がV字形状またはコの字形状以外の形状であってもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、保持部材の外側面に設けた切欠部が保持部材の中心点と突出部とを結ぶ直線の延長線上に位置するように構成した例を示したが、本発明はこれに限らず、切欠部の位置は、保持部材の中心点と突出部とを結ぶ直線の延長線上以外の位置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態による半導体レーザ装置の全体斜視図である。
【図2】図1に示した本発明の一実施形態による半導体レーザ装置の側面図である。
【図3】図1に示した本発明の一実施形態による半導体レーザ装置の上面図である。
【図4】図1に示した本発明の一実施形態による半導体レーザ装置の半導体レーザ素子周辺の断面図である。
【図5】図1に示した本発明の一実施形態による半導体レーザ装置のステムに取り付けられる保持部材の全体斜視図である。
【図6】図1に示した本発明の一実施形態による半導体レーザ装置のステムに取り付けられる保持部材の平面図である。
【図7】図6の100−100線に沿った断面図である。
【図8】図1に示した本発明の一実施形態による半導体レーザ装置の保持部材の取り付け動作を説明するための斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
1 ステム
1a、1b、1c 切欠部(第1係合部)
2 ヒートシンク
3 サブマウント
4 半導体レーザ素子
4a 上部電極
4b 下部電極
4c 後方出射面
4d 前方出射面
5 フォトダイオード
6 キャップ
6a フランジ部
6b 出射孔
7、8、9 リードピン
10 保持部材
10a 開口部
101a 第1開口部
102a 第2開口部(開口部)
10g、10h、10i 切欠部
10d、10e、10f 突出部(第2係合部)
20 半導体レーザ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体レーザ素子と、
前記半導体レーザ素子を固定するステムと、
前記ステムに取り付けられるとともに、前記ステムより大きい外形を有し、かつ、機器のホルダ部に装着される保持部材とを備えることを特徴とする、半導体レーザ装置。
【請求項2】
前記保持部材は、金属材料から構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の半導体レーザ装置。
【請求項3】
前記保持部材は、前記ステムに着脱可能に取り付けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載の半導体レーザ装置。
【請求項4】
前記ステムおよび前記保持部材は、それぞれ、円板状に形成されており、
前記ステムと前記保持部材とは、同心円状に配置されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
【請求項5】
前記保持部材の中央部には、前記ステムが嵌合される開口部が設けられており、
前記保持部材は、前記開口部に前記ステムを嵌合させることによって、前記ステムに取り付けられていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
【請求項6】
前記ステムの外側面には、第1係合部が設けられており、
前記保持部材の前記開口部の内側面には、前記保持部材の開口部に前記ステムが嵌合された際に、前記ステムの前記第1係合部と係合する第2係合部が設けられていることを特徴とする、請求項5に記載の半導体レーザ装置。
【請求項7】
前記保持部材の中心点と前記第2係合部とを結ぶ直線の延長線上に位置する前記保持部材の外側面には、切欠部が設けられており、
前記切欠部は、前記保持部材が機器のホルダ部に装着される際に、前記保持部材の装着位置の位置決めを行う機能を有していることを特徴とする、請求項6に記載の半導体レーザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−28273(P2008−28273A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−201397(P2006−201397)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)鳥取三洋電機株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】