説明

半導体上の銅のめっき

【課題】前面電流トラックを形成したドープ半導体ウェハの銅めっきに関する改善された銅めっき方法を提供する。
【解決手段】前面、裏面およびPN接合を含む半導体を提供し、下層を含む導電トラックのパターンを前記前面が含み、かつ前記裏面が金属接点を含んでおり;前記半導体を一価銅めっき組成物と接触させ;並びに導電トラックの下層上に銅をめっきする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体上に銅をめっきする方法に関する。より具体的には、本発明は一価銅浴を使用して半導体上に銅をめっきする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドープ半導体、例えば、光電池および太陽電池の金属めっきは、この半導体の前面および裏面上での導電性接点の形成を伴う。電荷キャリアが半導体から現われて干渉なく導電性接点にいくのを確実にするために、金属コーティングは半導体とのオーミック接触を確立することができなければならない。電流損失を回避するために、金属化されたコンタクトグリッドは適切な電流伝導性、すなわち、高い導電性または充分に高い導電体トラック断面積を有していなければならない。
【0003】
太陽電池の裏面を被覆する金属について、上記要求を満たす多くのプロセスが存在する。例えば、太陽電池の裏面で電流伝導を向上させるために、その裏面直下のpドーピングが強化される。通常、この目的にはアルミニウムが使用される。アルミニウムは、例えば、蒸着によるか、または、その裏面上に印刷されおよび打ち込まれることによるか、もしくは合金化されることにより適用される。その前面または光入射面を金属被覆する場合、その目的は光子を捕捉するためのできるだけ多くの表面を使用するために、活性半導体表面を影にする最も少ない量を達成することである。
【0004】
厚膜技術を使用する金属コーティングは導電トラックを金属化するための従来法である。使用されるペーストは金属粒子を含み、その結果として電気伝導性である。そのペーストはスクリーン、マスク、パッド印刷またはペーストライティングによって適用される。一般に使用される方法は、最小線幅が80μm〜100μmの指形の金属コーティングが製造されるスクリーン印刷方法である。このグリッド幅においてさえ、電気伝導性損失は純粋な金属構造と比べて明らかである。このことは、直列抵抗に、並びに太陽電池の充填率(filling factor)および効率に悪影響を有しうる。この効果はより小さな印刷導電トラック幅で増強される、なぜならその方法は導電トラックをより平坦にさせるからである。金属粒子間の非導電性酸化物およびガラス成分は、この低減された導電性の根本的要因を構成する。
【0005】
前面接点を製造するより複雑な方法は、導電トラック構造の画定のためのレーザーまたは写真技術を使用する。導電トラックは次いで金属化される。一般に、電気伝導性のために充分な接着強度および所望の厚みを達成しようとして金属コーティングを適用するために、様々な金属コーティング工程が多くの場合使用される。例えば、湿潤化学金属コーティング方法が使用される場合には、パラジウム触媒を用いて、最初の微細な金属コーティングが電流トラック上に堆積される。これは多くの場合ニッケルの無電解堆積で強化される。導電性を増大させるために、無電解または電解堆積によってニッケル上に銅が堆積されることができる。次いで、その銅は酸化からそれを保護するために、スズまたは銀の微細層で被覆されうる。
【0006】
ドープ半導体ウェハの銅めっきについての課題の1つは、銅がn型ドープおよびp型ドープ半導体ウェハを劣化させ、よってその寿命を短くすることが認められていることである。銅汚染とウェハドーピングとの間に相乗効果が認められてきた。鉄のような他の金属と比較すると、寿命の劇的な低下を生じさせるのに必要とされる銅のレベルは比較的高く、かつかなり汚染されたシリコンについて比較的許容可能な寿命が依然として認められている。例えば、1Ωcmのp型シリコンの寿命は、3×1014cm−3の銅濃度では、ほぼ10μsであり、これは160μmの拡散長さに対応する。より多い銅は寿命をさらに悪化させ、そしてこの傾向の飽和は3×1015cm−3の濃度では未だ見いだされていない。さらに、特定の銅濃度について達成されうるその寿命はウェハの抵抗率に応じて非常に異なり、より短い寿命はより低い抵抗率に対応することに留意することが重要である。銅の用量およびドーパント濃度の双方がこの寿命に強い影響を有するという事実は、シリコン中の銅の将来的な検討のために、並びに光電池製造のための銅めっき浴の開発において重要である。この課題は文献、バーッシュ(Bartsch)らのJournal of The Electrochemical Society,157(10)H942−H946(2010)「シリコン太陽電池に対する銅金属化の長期間の影響の素早い決定(Quick Determination of Copper−Metallization Long−Term Impact on Silicon Solar Cells)」においてより詳細に記載されている。
【0007】
ドープ半導体ウェハの銅めっきについての別の課題は、ウェハの性能を悪化させる、裏面アルミニウム含有電極および銀バスバー上の銅の望まれない堆積である。この望まれない銅めっきは、浴中の銅イオンが第二銅、すなわちCu2+イオンである場合に起こる。この銅めっき浴は典型的には酸性である。この銅堆積は、外部電流の適用なしに、セルの裏面に沿った異種金属によって生じる浸漬プロセスによって起こる。また、裏面に堆積された銅は半導体中に移動して、それを損傷する場合がある。さらに、この第二銅イオン含有銅めっき浴は色が透明でなくて暗く、よってその浴は、光誘起めっきプロセスの際に半導体に到達する光を妨げる。これは不均質な銅めっきを引き起こす場合があり、結果的に、電流トラック上のめっき銅厚さの変動をもたらし、そしてめっき速度を悪化させ、よってこのめっきプロセスの効率を低下させうる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】バーッシュ(Bartsch)らのJournal of The Electrochemical Society,157(10)H942−H946(2010)「シリコン太陽電池に対する銅金属化の長期間の影響の素早い決定(Quick Determination of Copper−Metallization Long−Term Impact on Silicon Solar Cells)」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
よって、前面電流トラックの形成において、半導体ウェハ上に銅をめっきする向上した方法についての必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
方法は、前面、裏面およびPN接合を含む半導体を提供し、下層を含む導電トラックのパターンを前記前面が含み、かつ前記裏面が金属接点を含んでおり;前記半導体を一価銅めっき組成物と接触させ;並びに導電トラックの下層上に銅をめっきする;ことを含む半導体を提供することを含む。
【発明の効果】
【0011】
この方法は裏面の金属接点上に実質的な銅堆積なしに、半導体の前面上の導電トラックの下層層上での銅の堆積を可能にする。さらに、第二銅イオンを含む暗い青〜緑色の銅めっき浴とは対照的に、一価銅めっき組成物は透明であって、よって光誘起銅めっきの際に光がこのめっき組成物通って半導体まで容易に至る。これは半導体上での光の強度を増大させ、そして電流トラックの下層上での銅堆積物均質性を向上させる。一般的には、一価銅めっき組成物は同等の電流密度で、第二銅イオンを含む銅めっき浴よりも速いめっき速度で銅を堆積し、および同じ時間で同等の銅堆積物厚さおよび電流トラック幅を提供する。全体的なめっき効率および銅めっき性能は第二銅イオンを含む銅めっき浴よりも向上される。さらに、この方法は電流トラックの下層を被覆する際に銀が典型的に使用される場合の、よりコスト高な銀を銅で置換えることを可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書を通して使用される場合、用語「堆積」および「めっき」は交換可能に使用される。用語「電流トラック」および「導電トラック」は交換可能に使用される。用語「組成物」および「浴」は交換可能に使用される。用語「選択的に堆積する」は基体上の特定の所望の領域に金属堆積が起こることを意味する。用語「第一銅」=Cuおよび用語「第二銅」=Cu2+。用語「ルクス=lx」は、1ルーメン/mに等しい照明の単位であり;1ルクス=540テトラヘルツの周波数で1.46ミリワットの放射電磁(EM)力(radiant electromagnetic power)である。
【0013】
次の略語は、文脈が他のことをに明確に示さない限りは次の意味を有する:℃=摂氏度;g=グラム;mg=ミリグラム;mL=ミリリットル;L=リットル;A=アンペア;dm=デシメートル;ASD=A/dm;cm=センチメートル;μm=マイクロメートル;nm=ナノメートル;LIP=光誘起めっき(light induced plating)または光アシストめっき;V=ボルト;UV=紫外線;およびIR=赤外線。
【0014】
全てのパーセンテージおよび比率は、他に示されない限りは重量基準である。全ての範囲は包括的であり、数値範囲が合計100%になることを制約されるのが明らかである場合を除き、任意に組み合わせ可能である。
【0015】
方法は、前面、裏面およびPN接合を含む半導体を提供し、下層を含む導電トラックのパターンを前記前面が含み、かつ前記裏面が金属接点を含んでおり;前記半導体を一価銅めっき組成物と接触させ;並びに導電トラックの下層上に銅をめっきする;ことを含む。
【0016】
一価銅めっき組成物は、電流トラックの下層上に様々な厚さ範囲で銅を堆積させるために使用されうる。この一価銅めっき組成物はシアン化物を含まないことが可能である。この一価銅組成物は、銅層が1以上の導電下層と1以上の導電上層との間に挟まれている電流トラックにおいて層を形成するために使用されることができ、または電流トラックを完成させるためのビルドアップ層を形成するために使用されうる。好ましくは、導電金属もしくはケイ化金属シード層、バリア層またはその組み合わせである下層上に薄膜層を堆積させるために、一価銅組成物が使用される。
【0017】
1種以上の銅イオン源はめっき組成物中で可溶性である一価および二価銅化合物の形態で提供されうる。第二銅イオン(Cu2+)を第一銅イオン(Cu)に還元し、そして第一銅イオンを一価の状態に維持するために、1種以上の還元剤がめっき組成物中に含まれる。一価銅めっき組成物に含まれうる銅化合物には、これに限定されないが、ホウフッ化銅、シュウ酸第一銅、塩化第一銅、塩化第二銅、硫酸銅、酸化銅およびメタンスルホン酸銅が挙げられる。塩化第一銅および塩化第二銅は一価銅イオン源として含まれうるが、好ましい銅化合物は酸化銅、硫酸銅、メタンスルホン酸銅および他の従来の非ハロゲン水溶性銅塩である。典型的には、銅化合物は硫酸銅およびメタンスルホン酸銅である。1種以上の銅化合物は一価銅組成物中に1g/L〜40g/L、または例えば、5g/L〜30g/Lの量で含まれうる。
【0018】
めっき組成物中に含まれうる還元剤には、これに限定されないが、アルカリ亜硫酸塩、アルカリ亜硫酸水素塩、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン、ボラン、糖、ヒダントインおよびヒダントイン誘導体、ホルムアルデヒドおよびホルムアルデヒド類似体が挙げられる。この還元剤はめっき組成物中に10g/L〜150g/L、または例えば、15g/L〜60g/Lの量で含まれる。
【0019】
錯化剤も一価銅めっき組成物中に含まれうる。この錯化剤には、これに限定されないがイミドおよびイミド誘導体、並びにヒダントインおよびヒダントイン誘導体が挙げられる。イミド誘導体には、これに限定されないが、スクシンイミド、3−メチル−3−エチルスクシンイミド、1−3メチルスクシンイミド、3−エチルスクシンイミド、3,3,4,4−テトラメチルスクシンイミド、3,3,4−トリメチルスクシンイミドおよびマレイミドが挙げられる。ヒダントイン誘導体には、これに限定されないが、1−メチルヒダントイン、1,3−ジメチルヒダントイン、5,5−ジメチルヒダントインおよびアラントインが挙げられる。錯化剤の量は、組成物中の銅の量に応じてめっき組成物中に含まれる。典型的には、銅:錯化剤のモル比は1:1〜1:5、または例えば、1:2〜1:4である。錯化剤濃度の典型的な範囲は4g/L〜300g/L、または例えば、10g/L〜100g/Lである。
【0020】
一価銅めっき組成物のpHは7〜12、または例えば、7〜10、または例えば、8〜9の範囲である。このpHはめっき組成物に適合性であるあらゆる塩基もしくはアルカリ塩で調節されうる。この塩基には、これに限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムおよび炭酸ナトリウムが挙げられる。
【0021】
場合によっては、めっき組成物は銅めっき浴のための1種以上の従来の浴添加剤、例えば、1種以上の導電性塩、および銅堆積物の均質性もしくは光沢を促進するための1種以上の添加剤を含むことができる。導電性塩はめっき組成物の導電性を向上させるために添加されうる。めっき組成物に可溶性でありかつめっき組成物と適合性であるあらゆる塩が使用されうる。この導電性塩には、これに限定されないが、1種以上の硫酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩および酒石酸塩が挙げられる。この塩の例は、硫酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、およびロッシェル塩、例えば、酒石酸カリウムナトリウムである。これらの塩は5g/L〜75g/L、または例えば、10g/L〜50g/Lの量で含まれうる。好ましくは、塩化物および他のハロゲン化物は銅めっき組成物から除かれている。
【0022】
めっき銅の光沢および均質性を向上させるための添加剤がめっき組成物中に含まれうる。この添加剤には、これに限定されないが、有機アミン化合物、例えば、トリエチレンテトラミンおよびテトラエチレンペンタミン、並びにオキシアルキルポリアミン、例えば、ポリオキシプロピル−トリアミンが挙げられうる。使用されるアミンの量は組成物中でのその活性、すなわち、堆積物を光沢にするその能力に応じて変化する。例えば、トリエチレンテトラミンは典型的にはめっき組成物の0.05mL/Lの濃度で使用され、ポリオキシプロピルトリアミンは0.1g/Lであり得る。よって、この添加剤の量は0.01mL/L〜0.5mL/Lの範囲であり得る。
【0023】
典型的な一価銅めっき組成物は、まず錯化剤を水に溶かし、次いで結晶形態のまたはスラリーとしての銅イオン源を添加することにより調製されうる。次いで、この水溶液は攪拌されて銅化合物を溶解させ、pHが調節され、そして1種以上の還元剤が添加される。次いで、他の添加剤がこのめっき組成物に添加される。このめっき組成物は広い温度範囲にわたって製造されうる。典型的には、それは室温で製造される。銅めっき中の一価銅めっき組成物の温度は15℃〜70℃、または例えば、40℃〜50℃の範囲でありうる。
【0024】
半導体は単結晶または多結晶または非晶質シリコンから構成されていてよい。以下の記載はシリコン半導体ウェハに関するものであるが、他の適切な半導体ウェハ、例えば、ガリウム−ヒ素、シリコン−ゲルマニウムおよびゲルマニウムが使用されてもよい。この半導体は、典型的には、光起電力素子および太陽電池の製造に使用される。シリコンウェハが使用される場合には、それらは典型的にはp型ベースドーピングを有する。
【0025】
半導体ウェハは円形、正方形もしくは矩形の形状であることができ、または如何なる他の適切な形状であることができる。このようなウェハは様々な寸法および表面抵抗を有しうる。例えば、円形ウェハは150nm以上、200nm以上、300nm以上、400nm以上の直径を有しうる。
【0026】
ウェハの裏面は金属化されで、低抵抗性ウェハを提供する。任意の従来の方法が使用されうる。典型的には、半導体ウェハの表面抵抗は、シート抵抗としても知られ、40〜90オーム/スクエア、または例えば40オーム/スクエア〜60オーム/スクエア、または例えば60オーム/スクエア〜80オーム/スクエアである。
【0027】
裏面全体が金属被覆されうるか、または裏面の一部分が、例えばグリッドを形成するように金属被覆されうる。ウェハの裏面上にバスバーが典型的に含まれる。このような裏面金属化は様々な技術によって提供されることができる。ある実施形態においては、金属コーティングは、電気伝導ペースト、例えば、銀含有ペースト、アルミニウム含有ペーストもしくは銀およびアルミニウム含有ペーストの形態で裏面に適用されるが;ニッケル、パラジウム、銅、亜鉛もしくはスズのような金属を含む他のペーストも使用されうる。このような導電性ペーストは典型的にはガラスマトリックスおよび有機バインダー中に埋め込まれた導電性粒子を含む。導電性ペーストは、様々な技術、例えばスクリーン印刷によってウェハに適用されうる。ペーストが適用された後、それは有機バインダーを除去するために焼かれる。アルミニウムを含む導電性ペーストが使用される場合、アルミニウムは部分的にウェハの裏面に拡散するか、または銀も含むペースト中で使用される場合には、銀との合金を形成しうる。このようなアルミニウム含有ペーストの使用は抵抗接触(resistive contact)を向上させることができ、かつ「p+」ドープされた領域を提供しうる。以前のアルミニウムまたはホウ素の適用と、その後の相互拡散により、重度にドープされた「p+」型領域も生産されうる。ある実施形態においては、アルミニウム含有ペーストが裏面に適用されることができ、裏面金属コーティングの適用前に焼かれうる。焼かれたアルミニウム含有ペーストの残留物は場合によっては、裏面金属コーティングの適用前に除去されうる。別の実施形態においては、シード層がウェハの裏面に堆積されることができ、無電解または電解めっきによって金属コーティングがシード層上に堆積されうる。
【0028】
表面に、ピラミッド形成のような、反射を低減させる向上された光入射形状を付与するために、ウェハの前面が場合によって結晶配向テクスチャエッチングにかけられうる。半導体接合を生じさせるため、リン拡散またはイオン注入が、ウェハの前面で起こり、nドープされた(n+もしくはn++)領域を生じさせ、PN接合を有するウェハを提供する。nドープされた領域はエミッタ層と称されうる。
【0029】
反射防止層がウェハの前面もしくはエミッタ層に追加される。さらに、反射防止層は不動態化(passivation)層として機能しうる。適切な反射防止層には、限定されるものではないが、SiOのような酸化ケイ素層、Siのような窒化ケイ素層、酸化ケイ素層と窒化ケイ素層との組み合わせ、酸化ケイ素層と窒化ケイ素層とTiOのような酸化チタン層との組み合わせが挙げられる。上記式において、xは酸素原子の数である。このような反射防止層は、様々な蒸着法、例えば、化学蒸着および物理蒸着をはじめとする多くの技術によって堆積されることができる。エミッタから裏面への電流経路が存在しないことを確実にするために、金属化の前に化学エッジ分離(edge isolation)工程が行われてもよい。エッジ分離は当該技術分野において周知の従来のエッチング液を使用して行われうる。
【0030】
電流トラックおよびバスバー(busbar)の金属化パターンを形成するために、ウェハの前面は金属化される。電流トラックは典型的にはバスバーを横断し、かつ典型的にはこのバスバーと比較して相対的に微細な構造(すなわち、寸法)を有する。
【0031】
銀を含む金属ペーストを用いて電流トラックは形成されうる。この銀ペーストは、最終的に望まれる電流トラックの厚さに応じて、所望の厚さまで、窒化ケイ素のような反射防止層の表面に選択的に適用される。この量は変動することができ、かつこの量は当業者に周知である。銀に加えて、このペーストは、導電性粒子が埋め込まれるガラスマトリックスおよび有機バインダーを含むことができる。このペーストは当該技術分野において周知であり、かつ市販されている。具体的な配合は製造者によって異なり、よってこのペーストの配合は一般的に私有のものである。このペーストは、半導体上の電流トラックの形成において使用される従来の方法によって適用されうる。この方法には、これに限定されないが、スクリーン印刷、テンプレート印刷、ダバー(dabber)印刷、ペーストインスクリプション(paste inscription)およびローリングオン(rolling on)が挙げられる。このペーストはこのような適用方法に適する粘性を有する。
【0032】
このペーストを伴う半導体は焼結オーブン内に配置され、反射防止層をバーンスルー(burn through)させて、ペーストが、ペーストの金属と半導体の前面もしくはエミッタ層との間のフリットまたは接点を形成するのを可能にする。従来の焼結方法が使用されうる。具体的なペースト組成に応じて、焼結は酸化雰囲気で、または最小限の酸素含量の不活性ガス下で行われうる。ほとんど酸素なしに400℃以下での予備燃焼と、不活性ガスまたは還元雰囲気下でのより高い温度でのその後の燃焼を伴う二段階燃焼プロセスが行われてもよい。典型的なペースト燃焼は標準室雰囲気で行われる。このような方法は当該技術分野において周知である。
【0033】
別の方法においては、ウェハの前面またはエミッタ層は窒化ケイ素のような反射防止層で被覆される。次いで、開口またはパターンが前面上に画定される。そのパターンは反射防止層を貫通してウェハの半導体本体の表面を露出させる。様々な方法、例えば、これに限定されないが、その全ては当業者に周知である、レーザーアブレーション、機械的手段およびリソグラフィックプロセスなどが、パターンを形成するために使用されうる。このような機械的手段にはソーイング(sawing)およびスクラッチングが挙げられる。パターン幅は10μm〜90μmの範囲であり得る。
【0034】
この開口は場合によっては、フッ化水素酸のような酸、またはアルカリと接触させられて、半導体の露出したエミッタ層の表面をテクスチャ化または粗化することができる。このエミッタ層の表面を粗化するために、電気化学的エッチングプロセスが使用されてもよい。様々な電気化学的エッチングプロセスが当該技術分野において周知である。このような方法の1つはフッ化物およびビフルオリドの溶液を使用するアノードエッチング(anodic etch)プロセスを伴い、エミッタ層の表面上にナノ多孔質層を形成する。
【0035】
ある方法においては、エミッタ層を粗化するためにアノードエッチングプロセスが使用される。自然酸化物を修復するために、従来の酸化剤が使用されうる。酸化は典型的には1〜3重量%の過酸化水素水溶液を用いて行われる。他の酸化剤には、これに限定されないが、次亜塩素酸塩、過硫酸塩、過酸化有機酸および過マンガン酸塩の水溶液が挙げられる。半導体ウェハが単結晶である場合には、典型的には、酸化溶液はpH7より大きい、または例えば、8〜12のアルカリ性である。半導体ウェハがシリコンからなる場合には、露出した部分上にSiOの層が形成される。典型的には、半導体ウェハは酸化溶液を収容した浸水プロセスチャンバーに沈められまたはそこで処理される。酸化は、半導体ウェハを周囲雰囲気に曝すことによって自然にも起こりうる。
【0036】
次いで、半導体ウェハの電流トラックのエミッタ層はエッチングされて、1種以上のビフルオリド源、1種以上のフッ化物塩またはこの混合物を含む組成物で、酸化表面上にナノ多孔質層を形成する。ビフルオリド源化合物には、これに限定されないが、アルカリ金属ビフルオリド、例えばフッ化水素ナトリウム、およびフッ化水素カリウム、フッ化アンモニウム、フッ化水素アンモニウム、フルオロホウ酸塩、フルオロホウ酸、二フッ化スズ、二フッ化アンチモン、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボラート、アルミニウムヘキサフルオリド、並びに脂肪族アミン、芳香族アミンおよび窒素含有複素環式化合物の第四級塩が挙げられる。フッ化物塩には、これに限定されないが、アルカリ金属フッ化物、例えばフッ化ナトリウムおよびフッ化カリウムが挙げられる。典型的にはビフルオリド源化合物およびフッ化物塩は組成物中に5g/L〜100g/L、または例えば、10g/L〜70g/L、または例えば、20g/L〜50g/Lの量で含まれる。
【0037】
組成物中に含まれうる酸には、これに限定されないが、スルファミン酸、アルカンスルホン酸、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸およびプロパンスルホン酸;アルキロールスルホン酸;アリールスルホン酸、例えば、トルエンスルホン酸、フェニルスルホン酸およびフェノールスルホン酸;アミノ含有スルホン酸、例えば、アミドスルホン酸;鉱酸、例えば硫酸、硝酸および塩酸;アミノ酸、カルボン酸、例えば、モノ−、ジ−およびトリカルボン酸、これらのエステル、アミド並びに未反応無水物が挙げられる。さらに、組成物は酸の混合物を含むことができる。2種以上のカルボン酸が組成物中に含まれる場合には、少なくとも一方は酸性プロトンを含みビフルオリド種を形成する。このような酸は、概して、アルドリッチケミカルカンパニーのような様々なソースから市販されている。概して、酸および酸無水物はこの電気化学組成物中に1g/L〜300g/L、または例えば、10g/L〜200g/L、または例えば、30g/L〜100g/Lの量で含まれる。
【0038】
この電気化学組成物は化学量論量の1種以上の酸と、1種以上のビフルオリド源化合物または1種以上のフッ化物塩またはこれらの混合物とを一緒にすることにより製造される。混合はビフルオリド成分またはフッ化物塩が酸に溶解するまで行われる。未溶解成分を溶かすために、さらに混合しつつ水が添加されうる。
【0039】
あるいは、1種以上の酸無水物が少なくとも1種のビフルオリド源の水溶液に添加されて、水と接触する際に少なくとも1種のカルボン酸を形成する。1種以上のカルボン酸はビフルオリド源化合物水溶液中に存在していてよいが、ただし、1〜5重量%の水分含量を達成するのに充分な酸無水物が化学量論的に使用される。次いで、この組み合わせ物は、酸無水物が加水分解してかつビフルオリド源化合物が溶解するまで混合される。未溶解成分を溶かすために、これら全ての成分が溶けるまで、さらに混合しつつ追加の水が添加されうる。
【0040】
典型的には、この電気化学組成物は1種以上のアルカリ金属ビフルオリド、フッ化アンモニウムおよびフッ化水素アンモニウムをビフルオリド源化合物としてを含む。より典型的には、ビフルオリド源化合物はアルカリ金属ビフルオリド、例えば、フッ化水素ナトリウム、およびフッ化水素カリウムである。ビフルオリド源化合物がアルカリ金属ビフルオリドである場合には、1種以上の無機酸、例えばスルファミン酸がこの電気化学組成物中に含まれる。ビフルオリド源化合物がフッ化水素アンモニウムまたはフッ化アンモニウムである場合には、1種以上のカルボン酸が電気化学組成物中に含まれる。典型的には、酢酸のようなモノカルボン酸が含まれる。
【0041】
場合によっては、この電気化学組成物においては様々な界面活性剤が使用されうる。アニオン性、カチオン性、両性および非イオン性界面活性剤のいずれも、それがエッチングの性能を妨げない限りは、使用されうる。界面活性剤は従来の量で含まれうる。
【0042】
場合によっては、この電気化学組成物は1種以上の追加の成分を含む。この追加の成分には、限定されないが、光沢剤、グレインリファイナー(grain refiner)、および延性向上剤(ductility enhancer)が挙げられる。このような追加の成分は当該技術分野において周知であり、従来の量で使用される。
【0043】
この電気化学組成物は場合によっては、緩衝剤を含む。緩衝剤には、これに限定されないが、ホウ酸塩緩衝剤(例えば、硼砂)、リン酸塩緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤、炭酸塩緩衝剤、および水酸化物緩衝剤が挙げられる。使用される緩衝剤の量はこの電気化学組成物のpHを1〜6、典型的には1〜2の所望の水準に維持するのに充分な量である。
【0044】
半導体ウェハは化学的に不活性なエッチングおよびめっきセル内に収容された電気化学組成物中に浸漬される。この電気化学組成物の操作温度10〜100℃、または例えば、20〜50℃でありうる。裏面電位(整流器)が半導体ウェハに適用される。不活性対電極もこのセルに沈められる。典型的には、対電極は白金ワイヤまたはスクリーン電極である。セル、半導体ウェハ、電気化学組成物および整流器は互いに電気的に連絡している。
【0045】
電気化学組成物中でおよび半導体ウェハにおいてアノード電位(anodic potential)が生じ、そして所定の時間維持され、次いで所定の時間の間電流を停止させ、そしてこのサイクルは、酸化されたエミッタ層上に実質的に均質なナノ多孔質層を提供し、同時に半導体の電気的性能が悪化しないように、酸化されたエミッタ層の表面に侵入するのに充分な回数繰り返される。この方法は実質的に均質なナノ多孔質エミッタ層表面を形成するためのエミッタ層侵入と、金属堆積を可能にして半導体ウェハとの良好な接着およびオーミック接触を有する金属層を生じさせるシート抵抗との間のバランスである。さらに、この方法はエミッタ層上の反射防止コーティングへの攻撃もしくは損傷を最小限にすることと、同時にナノ多孔質エミッタ層を形成することとの間のバランスである。エミッタ層の酸化された部分は、金属がエミッタ層に充分に接着し、同時にエミッタ層の抵抗率が金属をめっきするのに充分導電性であるような深さまでのナノ多孔質にされる。このナノ多孔質層がエミッタ層により深く侵入すると、このエミッタ層のシート抵抗がより大きくなる。概して、実質的に均質なナノ多孔質層は、エミッタ層のシート抵抗が、アノード電位の当初適用の前のエミッタ層のシート抵抗の5%〜40%、または例えば、20%〜30%増大するように充分深くエミッタ層に侵入する。典型的には、均質なナノ多孔質エミッタ層のシート抵抗は200オーム/スクエア以下である。エミッタ厚さおよびドーピングプロファイルのような要因も、エミッタ層ナノ多孔深さおよびエミッタ層抵抗率決定において考慮すべきパラメータである。具体的な半導体ウェハについての金属めっきおよび良好な金属接着を達成するためのエミッタ層ナノ多孔深さおよびエミッタ層抵抗率を決定するために、わずかな実験が行われるだけでよい。
【0046】
概して、アノード電位の適用中の電流密度は0.01A/dm〜2A/dm、または例えば、0.05A/dm〜1A/dmの範囲であり得る。しかし、具体的な半導体ウェハについて好ましい電流密度設定、アノード電位適用のための期間、およびその停止を決定するために、わずかな実験が行われるだけでよい。このパラメータは半導体ウェハの厚さ並びにエミッタ層の開始厚さおよびナノ多孔質エミッタ層の望まれる厚さに応じて変化する。エミッタ層のナノ多孔質部分が非常に深い場合には、そのシート抵抗が増大されるようにこの半導体は損傷を受けうる。高すぎるシート抵抗は、エミッタ層のナノ多孔質セクション上に形成される電流トラックの導電性を悪化させる。さらに、エミッタの表面上の非均質ナノ多孔質層はその後のめっき金属層の劣った接着性をもたらしうる。典型的なアノード電位は、0.5秒以上で、または例えば、0.5秒〜2秒、または例えば、3秒〜8秒間適用される。このサイクル中でアノード電位が停止される時間は1秒以上、または例えば、3秒〜10秒、または例えば、10秒〜50秒の範囲であり得る。サイクル数は5〜80、または例えば、10〜100の範囲であり得る。
【0047】
また、金属めっき前に半導体はエッジマスクされうる。エッジマスキングは、半導体ウェハのn型エミッタ層からp型層への金属堆積物の架橋に起因する、金属化の際の半導体ウェハのシャンティング(shunting)の可能性を低減させる。金属化の前に半導体ウェハのエッジに沿って従来のめっきレジストを適用することにより、エッジマスキングは行われうる。このめっきレジストは、1種以上のワックス、例えば、モンタンワックス、パラフィンワックス、ダイズ、植物ワックスおよび動物ワックスを含むワックスベースの組成物であり得る。さらに、このレジストは1種以上の架橋剤、例えば、従来のアクリラート、ジアクリラートおよびトリアクリラート、並びにUVおよび可視光のような放射線への露光の際にレジストを硬化させる1種以上の硬化剤を含むことができる。硬化剤には、これに限定されないが、フォトレジストおよび他の感光性組成物において使用されている従来の光開始剤が挙げられる。この光開始剤は当該技術分野において周知であり、かつ文献に公開されている。このめっきレジストは従来のスクリーン印刷手順によって、または選択的インクジェットプロセスによって適用されうる。あるいは、半導体ウェハは反射防止層でエッジマスクされうる。これは、反射防止層の形成の際に、反射防止層を製造するために使用される材料を、半導体層のエッジ上に堆積させることによって行われうる。
【0048】
電流トラックが金属ペースト方法によって形成されるか、または上述の別のテクスチャ化および粗化方法の1以上によって形成されるかにかかわらず、シード層、バリア層もしくはその組み合わせとして機能する金属または金属ケイ化物の下層は、次いで、焼かれた金属ペースト上に、またはテクスチャ化および粗化されたエミッタ層上に堆積される。様々な金属が下層を形成するために使用されうる。典型的には、この金属はニッケル、パラジウム、銀、コバルトおよびモリブデンである。これら金属の様々な合金が使用されてもよい。典型的には、金属はニッケル、パラジウムまたはコバルトである。より典型的には、金属はニッケルまたはパラジウムである。最も典型的には、金属はニッケルである。この下層は当該技術分野において周知の従来の無電解、電解、LIP、スパッタリング、化学蒸着および物理蒸着方法を用いることによって堆積されうる。下層を形成するために様々な金属が想定されるが、以下に記載される方法は金属としてニッケルを用いて説明される;しかし、パラジウム、銀およびコバルトのような金属は、従来の無電解および電解金属めっき浴を用いて、この方法においてニッケルと容易に置換えられうる。
【0049】
典型的には、ニッケルは光誘起めっきによって堆積される。ニッケルのソースが無電解ニッケル組成物である場合には、めっきは外部電流の適用なしに行われる。ニッケルのソースが電解ニッケル組成物からのものである場合には、半導体ウェハ基体に裏面電位(整流器)が適用される。典型的な電流密度は0.1A/dm〜2A/dm、より典型的には、0.5A/dm〜1.5A/dmである。この光は連続またはパルスであり得る。めっきに使用されうる光には、これに限定されないが、可視光、赤外線、UVおよびX線が挙げられる。光源には、これに限定されないが、白熱ランプ、LED光(発光ダイオード)、赤外ランプ、蛍光ランプ、ハロゲンランプおよびレーザーが挙げられる。光の強さは400 lx〜20,000 lx、または例えば、500 lx〜7500 lxの範囲でありうる。ニッケルめっきは20nm〜1μm、または例えば、50nm〜150nmの厚さの下層が堆積されるまで行われる;しかし、正確な厚さは半導体サイズ、電流トラックパターン、および半導体の形状のような様々な要因に応じて変化する。所定の半導体について正確なニッケル層厚さを決定するためにわずかな実験が行われるだけでよい。
【0050】
さらなる実施形態においては、ニッケルは上述の電気化学組成物中に含まれうる。多孔質表面を形成するためにエミッタ層がエッチングされた後で、下層を堆積させるために電流はアノードからカソードへ変えられる。このような下層形成のための電流密度は上述のと同じである。光誘起めっきのために、光がウェハの前面に適用されうる。
【0051】
下層を形成するために従来の無電解および電解ニッケル浴が使用されうる。市販の無電解ニッケル浴の例としては、デュラポジット(Duraposit(商標))SMT88、並びにニポジット(NiPosit(商標))PM980およびPM988が挙げられる。これら全ては、米国、マサチューセッツ州マルボロのロームアンドハースエレクトロニックマテリアルズLLCから入手可能である。市販の電解ニッケル浴の例は、ロームアンドハースエレクトロニックマテリアルズLLCから入手可能なニッケルグリーム(Nickel Gleam(商標))シリーズの電解質製品である。適切な電解ニッケルめっき浴の他の例は米国特許第3,041,255号に開示されているワット型浴である。
【0052】
ニッケル下層の形成のための別の実施形態においては、所定の時間量にわたって当初強度で半導体に光が適用され、次いでめっきサイクルの残りについてこの当初光強度を所定の量まで低下させて、ドープ半導体の電流トラック上にニッケルを堆積させる。当初光強度の後で半導体に適用され、およびめっきサイクルの残りについて適用される光強度は常に当初強度より小さい。当初光強度および当初期間の後の低減された光強度の絶対値は変動し、かつ当初光強度がめっきサイクルの残りについての光強度よりも高い限りは、それらは最適なめっき結果を達成するようにめっきプロセスの際に変えられうる。当初期間中に当初光強度が変化する場合には、めっきサイクルの残りに適用された光強度は当初光強度の平均に基づくものであり得うる。適切な当初光強度、当初光強度を適用するのに適する当初期間、およびめっきサイクルの残りについて適用される光強度を決定するために、わずかな実験が行われるだけでよい。当初光強度が非常に長く維持される場合には、相対的に高いニッケル堆積物応力のせいで劣ったニッケル堆積物接着およびフレーキングが起こりうる。光が消される場合には、半導体ウェハの裏面上に望ましくないニッケルめっきが起こりうる。
【0053】
概して、当初光強度を適用する当初期間は0秒より長く、15秒以下である。典型的には、当初光強度は0.25秒〜15秒、より典型的には、2秒〜15秒、最も典型的には5秒〜10秒間で半導体に適用される。
【0054】
概して、低減された光強度は当初光強度の5%〜50%である。典型的には、低減された光強度は当初光強度の20%〜50%、または例えば、30%〜40%である。
【0055】
概して、半導体に当初に適用される光の量は8000 lx〜20,000 lx、または例えば、10000 lx〜15,000 lxでありうる。概して、めっきサイクルの残りについての半導体ウェハに適用される光の量は400 lx〜10,000 lx、または例えば、500 lx〜7500 lxであり得る。
【0056】
さらなる実施形態においては、ニッケルが堆積された後、ケイ化物を形成するためにウェハは焼結される。典型的には、焼結中に、ニッケル堆積物の全てが半導体材料と反応するわけではない。よって、ケイ化ニッケルの頂部上にニッケル層が残る。ケイ化ニッケルはニッケル層と隣接する半導体材料との間にある。焼結は、300℃〜600℃のウェハピーク温度を達成するランプベースの炉(IR)中で行われる。適用される焼結温度がより高くなると、半導体がオーブン内にとどまる焼結サイクルまたは期間はより短くなる。半導体が所定の温度のオーブン内に長くとどまりすぎると、ニッケルはウェハ内に深く拡散しすぎてエミッタ層に侵入し、よってセルを短絡する場合がある。この焼結プロセスは当該技術分野において周知であり、最適な焼結サイクルを達成するためにいくつかのわずかな実験が必要とされるだけでよい。場合によっては、ケイ化ニッケルが形成された後で、硝酸のような無機酸を用いて未反応のニッケルがケイ化ニッケルから剥離されうる。
【0057】
下層が形成された後で、その上に銅層が一価銅浴からめっきされる。銅層は1μm〜50μm、または例えば、5μm〜25μmの範囲で下層上に堆積されうる。銅めっきは電解めっきによってまたはLIPによって行われうる。電気めっきによってめっきが行われる場合には、それは典型的には前面接触(front contact)めっきであり、そしてLIPは典型的には裏面接触(rear contact)めっきである。銅めっき中の電流密度は0.01A/dm〜5A/dm、または例えば、0.5A/dm〜2A/dmの範囲であり得る。銅をめっきするためにLIPが使用される場合には、ウェハの前面に光が適用され、裏面電位(整流器)が半導体ウェハ基体に適用される。半導体ウェハの前面を光エネルギーで照明することにより、前面上でめっきが起こる。衝突する光エネルギーは半導体に電流を生じさせる。この光は連続またはパルスであることができる。パルス照明は、例えば、機械的なチョッパーで光を遮ることにより達成されることができ、または電子デバイスが使用され、所望のサイクルに基づいて電力を間欠的に光にすることができる。めっきに使用されうる光は上述されている。一般的に、めっき中に半導体ウェハに適用される光の量は10,000 lx〜70,000 lx、または例えば、30,000 lx〜50,000 lxでありうる。
【0058】
典型的には、次いで、銅層の酸化を妨げるために、銅上にスズフラッシュ層が堆積される。スズフラッシュ層は0.25μm〜2μmの範囲であり得る。銅上にこのフラッシュ層を堆積させるために従来のスズめっき浴が使用されうる。スズめっきは、光誘起めっきをはじめとする従来の無電解および電解方法によって行われうる。電解スズ浴が使用される場合には、電流密度は0.1A/dm〜3A/dmの範囲であり得る。スズとは別法として、スズ/鉛合金のフラッシュ層がめっきされうる。スズまたはスズ/鉛に加えて、銀または無電解ニッケル浸漬金の層がめっきされうる。また、銅またはスズもしくはスズ/鉛フラッシュ層に有機溶解度保存剤(organic solubility preservative)が適用されうる。この有機溶解度保存剤は当該技術分野において周知である。
【0059】
本方法は、裏面の金属接点上での実質的な銅堆積なしに、半導体の前面上の導電トラックのパターン上への銅の堆積を可能にする。裏面金属接点上の銅は典型的には、バルクシリコンへの望ましくない銅拡散をもたらす。銅は半導体ウェハに対して本質的に毒であり、かつ光起電力素子の製造におけるその使用は好ましくは制限されるが、にもかかわらず、同時に光起電力素子の製造に重要な金属である。さらに、一価銅めっき組成物は、第二銅イオンを含む暗い青から緑色の銅めっき浴とは対照的に透明であり、よって光誘起銅めっき中に光がめっき組成物を容易に通過して半導体に至る。これは半導体上の光強度を増大させ、そして電流トラック上の銅堆積物均質性を向上させる。一般的には、一価銅めっき組成物は同等の電流密度で、第二銅イオンを含む銅めっき浴よりも速いめっき速度で銅を堆積し、および同じ時間で同等の銅堆積物厚さおよび電流トラック幅を提供する。全体的なめっき効率および銅めっき性能は第二銅イオンを含む銅めっき浴よりも向上される。さらに、この方法は電流トラック形成において典型的に銀が使用される場合の、よりコスト高な銀を銅で置換えることを可能にする。
【0060】
以下の実施例は本発明を例示するために含まれるが、本発明の範囲を限定することを意図していない。
【実施例】
【0061】
実施例1〜6
銀ペーストから生じた複数の電流トラックおよびバスバーを前面上に含む6枚の単結晶半導体ウェハが提供された。各ウェハの裏面はアルミニウム電極を含んでいた。これらウェハはドープされてPN接合を提供した。次いで、各ウェハはオハウス(Ohaus)EO2140分析天秤で秤量された。各ウェハの重量は以下の表IIに示されるように記録された。
【0062】
次いで、三枚のウェハはエンライト(ENLIGHT(商標))420電解銅めっき浴(マサチューセッツ州マルボロのロームアンドハースエレクトロニックマテリアルズLLCから入手可能)を収容する別々の化学的に不活性なめっきセル中に沈められた。この浴は第二銅イオン(Cu2+)としての銅イオンを含んでおり、かつ1未満のpHを有していた。この浴は銅イオン還元剤を含んでいなかった。この浴は暗青色であった。対電極は可溶性リン含有銅アノードであった。浴とウェハと対電極との間の電気的連通を提供するために、各ウェハの裏面および対電極は3つの別々の従来の整流器に接続された。浴の温度は30℃に維持され、250ワットハロゲンランプからの光が各ウェハの前面に適用された。0.34ボルトが各浴に適用された。1つの浴に適用された電流密度は2A/dmであり、第二の浴における電流密度は2.3A/dmであり、並びに第三の浴における電流密度は2.5A/dmであった。各ウェハの電流トラック上に銅層を堆積させるためにLIPが7.5分間行われた。これらウェハはそのそれぞれのめっきセルから取り出され、水ですすがれ、次いで室温で空気乾燥させられた。次いで、各ウェハはオハウスEO2140分析天秤上で秤量された。重量は以下の表IIに示される。
【0063】
次いで、第二のグループの3枚のウェハは、以下の表Iに開示される一価銅浴を収容する別々の化学的不活性めっきセルに沈められた。
【0064】
【表1】

【0065】
対電極は可溶性リン含有銅アノードであった。浴とウェハと対電極との間の電気的連通を提供するために、各ウェハの裏面および対電極は3つの別々の従来の整流器に接続された。浴は色が透明であった。浴の温度は30℃に維持され、250ワットハロゲンランプからの光が各ウェハの前面に適用された。0.34ボルトが各浴に適用された。第四の浴に適用された電流密度は2A/dmであり、第五の浴における電流密度は2.3A/dmであり、並びに第六の浴における電流密度は2.5A/dmであった。各ウェハの電流トラック上に銅層を堆積させるためにLIPが7.5分間行われた。これらウェハはそのそれぞれのめっきセルから取り出され、水ですすがれ、次いで室温で空気乾燥させられた。次いで、各ウェハはオハウスEO2140分析天秤上で秤量された。重量は以下の表IIに示される。
【0066】
【表2】

【0067】
酸第二銅浴からの銅の平均めっき速度は6.42mg/分であると決定された。これに対して、アルカリ一価銅めっき浴からの銅の平均めっき速度は12.85mg/分であった。このめっきの結果は、アルカリ一価めっき浴からLIPにより堆積される銅は、酸第二銅浴からの銅LIPと比較して、より速かった。
【0068】
実施例7
銀バスバーを伴い、アルミニウム裏面を含む単結晶半導体ウェハがエンライト(商標)420電解銅めっき浴を収容するめっきセル中に配置された。この浴は酸第二銅イオン浴であった。浴の温度は30℃であった。電流は適用されず、かつ周囲室光をはじめとするあらゆる光へのセルの曝露を妨げるためにめっきセルがマスクされた。8分後、浸漬めっきによってバスバー上にめっきされた銅を示す、銀バスバー上での銅の堆積物が観察された。
【0069】
アルミニウム裏面および銀バスバーを伴う第二の単結晶半導体ウェハが、上記実施例1〜6における表Iに示される一価銅めっき浴中に配置された。浴の温度は30℃であった。電流は適用されず、かつ周囲室光をはじめとするあらゆる光へのセルの曝露を妨げるためにめっきセルがマスクされた。8分間浴中にとどめた後で、銀バスバーまたはアルミニウムコーティング上に観察可能な銅堆積物は存在していなかった。一価銅めっき浴は酸第二銅浴で示されたような観察可能な望まれない浸漬銅めっきを示していなかった。
【0070】
実施例8
その前面上にピラミッド型エレベーションを有するドープされた単結晶シリコンウェハが提供される。このウェハはエミッタ層を形成する前面上にn+ドープ領域を有している。このウェハはエミッタ層の下にPN接合を有している。このウェハの前面は、Siから構成される不動態化または反射防止層で被覆されている。この前面は反射防止層を貫通しウェハの表面を露出させている、電流トラックのためのパターンも有している。この電流トラックはウェハの末端およびウェハの中心でバスバーと結合している。裏面はp+ドープされ、かつアルミニウム電極および銀バスバーを含む。このウェハは、金属めっきラックと直接接触している裏面アルミニウム電極およびバスバーを伴う金属めっきラック上に配置される。セルの裏面とめっきラックとの間の溶液侵入を最小限にするために、セルとラックとの間の界面がウェハの周囲に沿って密封される。次いで、シリコン表面が酸化されるのを確実にするために、電流トラックおよびバスバーは5重量%過酸化水素水溶液で酸化される。
【0071】
ウェハは15g/Lのフッ化水素ナトリウムおよび30g/Lのスルファミン酸を含むめっきセル中の水溶液に浸漬される。ウェハを伴うラックは整流器に接続され、対電極として白金ワイヤが使用される。この水溶液、ウェハおよび白金ワイヤは互いに電気的に連通している。この組成物は穏やかに攪拌され、室温に保持される。1.2Vでの0.1A/dmのアノード電流がウェハに当初、2秒間適用されて、次いでこの電流は1秒間停止させられる。このアノード0電流パルスが30サイクル繰り返される。ウェハの前面上の電流トラックおよびバスバーがエッチングされて、実質的に均質なナノ多孔質エミッタ層を形成した後で、このセルは水溶液から取り出され、脱イオン水ですすがれる。
【0072】
次いで、ドープされた単結晶シリコンウェハはニカル(NIKAL(商標))電解ニッケルめっき化学物質を収容するめっきセルに浸漬される。ウェハを伴うラックは整流器に接続され、固体ニッケルアノードが浴中の対電極として機能する。ウェハはカソードとして機能する。この浴、ウェハおよび対電極は全て電気的に連通しており、1A/dmのカソード電流が1分間適用される。めっきサイクルを通して、ウェハに人工的な光が適用される。この光源は250ワットハロゲンランプである。めっき温度は30℃〜50℃の範囲である。めっきは、300nmのニッケルシード層が電流トラックおよびバスバーに堆積されるまで続けられる。
【0073】
次いで、ニッケルめっきウェハは、以下の表における配合を有する一価銅めっき浴中に配置される。
【0074】
【表3】

浴のpHは水酸化ナトリウムを用いて8に調節される。浴の温度は45℃に維持される。この浴は磁気攪拌装置を用いて攪拌される。
【0075】
ウェハを伴うラックは整流器に接続され、リン含有銅可溶性アノードは浴中の対電極として機能する。この浴、水、および対電極は全て電気的に連通しており、2A/dmのカソード電流が10分間適用されて、各電流トラックおよびバスバーのニッケルシード層上に10μmの銅の層を堆積させる。めっきの際に、ウェハに人工的な光が適用される。この光源は250ワットハロゲンランプである。裏面銀バスバー上に銅めっきがないことが予想される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)前面、裏面およびPN接合を含む半導体を提供し、下層を含む導電トラックのパターンを前記前面が含み、かつ前記裏面が金属接点を含んでおり;
b)前記半導体を一価銅めっき組成物と接触させ;並びに
c)導電トラックの下層上に銅層をめっきする;
ことを含む方法。
【請求項2】
銅が電解めっきまたは光誘起めっきによってめっきされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
下層がニッケル、コバルト、パラジウム、銀またはモリブデンから選択される金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
下層がケイ化金属である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
一価銅めっき組成物が1種以上の還元剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
一価銅めっき組成物が、酸化銅、硫酸銅およびメタンスルホン酸銅から選択される1種以上の銅イオン源を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
銅層が1μm〜50μmの厚さである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
金属フラッシュ層または有機はんだ付け性保存剤を銅層上に堆積させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
一価銅めっき組成物のpHが7〜12である請求項1に記載の方法。

【公開番号】特開2012−237060(P2012−237060A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−92885(P2012−92885)
【出願日】平成24年4月16日(2012.4.16)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【Fターム(参考)】