説明

半導体光素子

【課題】光導波路を高速光伝送に適した長さにすることが可能で、かつモノリシックに集積することができる半導体光素子及びそれを用いた光送受信装置を提供すること。
【解決手段】半導体基板1上に形成した少なくとも2種類の屈折率の異なる半導体層からなる反射器7と、反射器7の上に形成した下部クラッド層3と上部クラッド層4に挟持された光導波路2と、光導波路2の少なくとも一方の端面に基板1面に対して45°の角度をもって配置された反射鏡5と、反射鏡5に対向した位置の基板1の裏面に形成した反射防止膜6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザやフォトダイオードに代表される半導体光素子、特に高速光伝送に適した半導体光素子及びそれを用いた光送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近のインターネットや通信網、或いはコンピュータ間の情報伝送の高速化及び大容量化に光伝送技術の果たす役割は大きい。その中で中心をなす半導体光素子が、光源となる半導体レーザ、及び受光素子となるフォトダイオード即ち半導体受光素子であり、それぞれ高信頼化、高性能化の面で大きく発展してきた。
【0003】
半導体レーザは、代表的には、端面発光型と面発光型に二分される。端面発光型は、基板に平行に比較的長い光導波路が形成されるので、大出力が得やすい。一方、面発光型は、基板に垂直に光導波路が形成されるので、基板の裏面からレーザが発射され、集積化しやすい特徴がある。いずれも、光導波路は、光を発生する活性層を成す。光導波路の両端を反射鏡で挟んで、レーザ発光に必要な共振器が形成される。
【0004】
一般に、端面発光型の半導体チップは、エピタキャル成長後の基板を適当な厚みにラッピング(研磨)した後に、両面劈開によってチップの切り出しと共振器端面の形成とを同時に行なうことによって得られる。両面劈開は、メスや剃刀、或いは劈開器を用いて行なわれる。しかしながら、両面劈開を行なうことから、端面発光型半導体レーザを光(電子)集積回路の一部として用いることや、レーザの出射端面側に外部反射鏡などを併設することが困難であり、端面発光型は、一般に単体部品としての使用に限定される。また、劈開端面を有する半導体レーザでは素子分離をしないと性能試験ができないなどの理由からも、端面発光型をモノリシックに集積化することが極めて難しい。また、劈開を行なうため、共振器長に下限を設けざるを得ず、200μm以上のものしか製造されないのが現状である。
【0005】
これに対し、基板面に垂直の方向に共振器を形成し、垂直方向にレーザ光を出射する垂直共振器型構成の面発光レーザでは、共振器が垂直方向に構成されるため、逆に、利得領域となる共振器の長さを長くすることが困難であり、従って充分な利得を得ることができず、高い光出力が得られないのが現状である。そのため、面発光レーザは実用化には至っていない。
【0006】
以上の構造の半導体レーザに対して、図9に示す、反射膜からなる傾斜面80で半導体積層81の端面を形成し、光ビームを基板71の裏面に導き、基板71裏面に反射鏡84を設けた構造の半導体レーザが特許文献1に開示されている。
【0007】
次に、半導体受光素子にも、基板に平行に比較的長い光導波路を形成し、劈開端面より光を入射する導波路型と、基板に垂直に光導波路を形成し、光を基板面に対し垂直に入射する面入射型とがある。半導体受光素子では、面入射型が一般的である。光導波路は、光を吸収する吸収層を成す。
【0008】
半導体レーザの場合と同様に、導波路型では、劈開を行なうために導波路の長さに下限があり、一方、面入射型では逆に、導波路を長くすることが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−97514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
端面発光型の半導体レーザでは、共振器の長さに比例して電気容量が増大する。従って、高速光伝送に対応するためには、共振器長を短くして電気的容量を小さくすることが必要になる。例えば、幹線系の伝送速度40Gbpsに対応し得る直接変調の半導体レーザでは、所要の高周波特性を得るために、その共振器長は数10μm程度になると見積もられる。このような短い共振器長を劈開で形成することは困難である。
【0011】
また、端面発光型の一種である分布帰還型半導体レーザ(DFBレーザ)では、単一波長で動作させるために活性層に沿って回折格子が形成される。劈開された回折格子の位置によって端面での回折格子の位相が決まり、これにより発振波長が決まる。回折格子の周期は、通常200nm乃至400nmである。従って、周期の制御は、例えば200μmの長さに対して200nmの精度で行なうことになり、劈開端面を用いる限り、回折格子の位相を制御すること即ち波長の制御は実際上困難である。
【0012】
また、上述したように、劈開端面を共振器反射鏡として用いる半導体レーザではモノリシック集積が困難であるため、光源と受信機を搭載する送受信モジュールでは半導体レーザと半導体受光素子をそれぞれ別個に実装せざるを得ない。そのため、モジュールの小型化が困難であると共に、配線による浮遊容量が高速伝送の妨げとなる。
【0013】
一方、面発光レーザでは、同じく上述したように、共振器長は高々数μm程度にしかならないため十分に大きな利得を得ることができず、大光出力化が困難である。また、共振器を基板面に垂直に形成するため、共振器部分に回折格子を形成することは実際上不可能であり、面発光レーザのDFBレーザは実現されていない。更には、共振器上に光変調器を集積することも困難である。
【0014】
また、45°傾斜反射膜を有し、基板裏面に反射鏡を設けた半導体レーザでは、基板の厚さの2倍の長さが光路に加わる。基板厚さは通常は100μmを超えるので、高速伝送のための短い光導波路を得ることができないばかりでなく、光ビームが基板裏面に近づくにつれて広がりを持つようになるため反射して戻る光ビーム量が減り、レーザ発振に必要な共振が得られなくなることも起こり得る。
【0015】
次に、受光素子においても、現在広く用いられている面入射型では、上述したように、受光層が基板に対し垂直に形成されているため光の吸収される領域が薄く、高速光伝送システムでは感度不足となる傾向がある。また、導波路型では、電気的容量が増大するため、高速光伝送用には採用されない。
【0016】
更に、送信器と受信器を一つのモジュールに組込む光送受信装置では、送信器となる半導体レーザは端面より光を出射し、受信器となる半導体受光素子は基板面より光を入射することになるため、送信器と受信器をモノリシックに作製することが困難である。
【0017】
本発明の目的は、光導波路を高速光伝送に適した長さにすることが可能で、かつモノリシックに集積することができる半導体光素子及びそれを用いた光送受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するための本発明の半導体光素子は、例えば、図1に示すように、半導体基板1上に形成した少なくとも2種類の屈折率の異なる半導体層からなる反射器7と、反射器7の上に形成した下部クラッド層3及び上部クラッド層4に挟持された光導波路2と、光導波路2の少なくとも一方の端面に基板1面に対して45°の角度をもって配置された反射鏡5と、反射鏡5に対向した位置の基板1の裏面に形成した反射防止膜6とを備えていることを特徴とする。
【0019】
このような本発明の半導体光素子においては、有効な光導波路長さは、反射器7より上の光導波路長さになり、基板1の厚さに影響されない。更に、反射器7及び下部クラッド層3の厚さによる長さが基板1の面に水平な光導波路2の長さに比べて著しく短くなるので、反射器7より上の光導波路長さは、ほぼ基板1面に水平な光導波路2の長さで表すことができる。光導波路2の長さはフォトリソグラフィによって決められるので、劈開による場合のような長さの下限はない。即ち、光導波路を高速光伝送に適した長さにすることが可能となる。
【0020】
本発明の半導体光素子において、光導波路2を活性層とし、反射器7による光ビームの反射を用いて共振器を形成することにより半導体レーザが形成される。ブラッグ反射器7が共振器ミラーとなるので、光を活性層領域に閉じ込めることができる。なお、図1では、45°傾斜反射鏡5が光導波路2の片端面にのみ配置され、他方の端面にはエッチング後に形成した反射膜67が配置されているが、後で詳述するように、両端面に45°傾斜反射鏡5を配置することが可能である。
【0021】
共振している光ビームの一部は、反射器7を経て基板1裏面に到達する。このとき、基板1裏面に反射防止膜6が形成されているため、基板1裏面に到達した光ビームは、半導体内部に戻ることなく外部へ出射する。
【0022】
共振器は、上述のようにフォトリソグラフィ技術を用いることにより、数10μmの長さに精度良く作製することができ、高速化への対応が容易となる。また、共振器長さが短い従来型の面発光レーザに比べ、利得領域を大幅に大きくすることができるので高出力化に対応することができる。
【0023】
活性層に沿って回折格子を配置することにより、分布帰還型レーザを形成することが可能である。そのようなレーザの製作において、回折格子をフォトリソグラフィにより形成した後で劈開等の加工を伴わないので、回折格子の位相が変化することはなく波長制御性が改善される。
【0024】
本発明の半導体光素子において、光導波路2を吸収層とし、反射器7の高い反射率を呈する波長を受信を阻止する波長に合わせることにより、波長選択が可能な半導体受光素子が形成される。反射防止膜6から入射した光ビームの内、受信阻止の波長の光ビームは、反射器7で反射されて吸収層に到達しない。即ち、反射器7は光学フイルタとなる。
【0025】
吸収層は、上述のようにフォトリソグラフィ技術を用いることにより、数10μmの長さに精度良く作製することができ、吸収層の長さが短い従来型の半導体受光素子に比べ、高速化高感度化への対応が容易となる。なお、反射器7は、後で詳述するが、省略することが可能である。
【0026】
上記のいずれの素子においても、光を基板裏面より取り出すため、劈開端面を形成する必要は必ずしもなく、素子間を電気的に絶縁していれば素子を物理的に分離せずに動作させることができるので、複数の素子をモノリシックに集積することが可能である。同様に、半絶縁性基板を用いることにより半導体レーザや受光素子とトランジスタなどの電子デバイスをモノリシックに集積することができ、光源とドライバ、受光素子と増幅器を集積することが可能となる。
【0027】
また、本発明による半導体レーザは面発光型となるので、面入射型受光素子と共にモノリシックに集積することも可能である。面入射型受光素子は、本発明による、光を基板に垂直に入射した後、45°傾斜反射鏡により水平光導波路に導く受光素子の他、従来型の受光素子でも良い。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、半導体光素子において光を基板の垂直方向から取り出し、かつ光導波路を目的に合わせた長さにすることが可能となるので、高速大出力の面発光半導体レーザ或いは高速高感度の半導体光受信素子を容易に作製することができる。また、劈開端面を用いずに構成することが可能になるので、モノリシック集積が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る半導体光素子の基本構成を説明するための断面図。
【図2】本発明の第1の実施例を説明するための斜視図。
【図3】本発明の第1の実施例を説明するための断面図。
【図4】本発明の第2の実施例を説明するための断面図。
【図5】本発明の第3の実施例を説明するための断面図。
【図6】本発明の第4の実施例を説明するための断面図。
【図7】本発明の第5の実施例を説明するための断面図。
【図8】本発明の第6の実施例を説明するための断面図。
【図9】従来の半導体レーザの例を説明するための断面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る半導体光素子及びそれを用いた光送受信装置を幾つかの図面に示した実施例による発明の実施の形態を参照して更に詳細に説明する。
【実施例】
【0031】
<実施例1>
半導体光素子を1.3μm帯半導体レーザとして構成した第1の実施例を図2及び図3に示す。図2は半導体レーザの斜視構造を、図3は断面構造を示している。本実施例の構造を素子の作製方法を基にして述べる。
【0032】
n-InP基板8上に、n-InPバッファ層9、及びInPに格子整合する厚さ4分の1波長の光学長を有するブラッグ反射器10を結晶成長によって形成する。ブラッグ反射器10は、n-InGaAsとn-InAlAsの積層膜からなり、反射率が90%である。
【0033】
結晶成長炉より基板8を取出し、絶縁膜などでマスクした後、所望の部位のブラッグ反射器10をエッチングすることにより、反射率50%のブラッグ反射器11を形成する。
【0034】
エッチングマスクを除去した後、基板8を再度結晶成長炉に導入し、n-InPバッファ層12を結晶成長によって形成してからその上面を平坦化し、続いて、InPに格子整合したn-InGaAlAs下側SCH(Separate Confinement Heterostructure)層13、InGaAlAs歪障壁層(バンドギャップ1.32eV、障壁層厚8nm)及びInGaAlAs歪量子井戸層(バンドギャップ0.87eV、井戸層厚6nm)によって構成される歪量子井戸活性層14、InPに格子整合したp-InGaAlAs上側SCH層15、p-InPクラッド層16、p-InGaAsキャップ層17、及びp-InGaAsコンタクト層18の各層をMOVPE(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法による結晶成長により順次形成する。結晶成長にはその他に、ガスソースMBE(Molecular Beam Epitaxy)法又はCBE(Chemical Beam Epitaxy)法を用いることができる。
【0035】
次に、絶縁膜などをマスクにし、ホトエッチング工程により図2に示すようなリッジを形成する。このときのエッチングは方法を問わないので,ホトエッチングの他に、湿式法、RIE(Reactive Ion Etching)、RIBE(Reactive Ion Beam Etching)、イオンミリング等が可能である。エッチングは歪量子井戸活性層14に達しないようにp-InPクラッド層16の途中で止まるようにする。
【0036】
次に、絶縁膜をマスクに共振器を45°の角度で下側SCH層13までメサエッチングして反射面を形成してから、該反射面に非晶質硅素膜と二酸化硅素膜の周期膜からなる高反射率膜21を形成し、反射面を45°傾斜反射鏡とする。
【0037】
その後、コンタクト層18の上面にp側オーミック電極19を、基板8の裏面にn側オーミック電極20を形成する。反射鏡と対向する基板8の裏面の位置に予め酸化物によりマスクをし、リフトオフによりn側オーミック電極20を除去する。電極を除去した部位に酸窒化硅素膜からなる反射防止膜22を形成する。なお、この光の取出し面を球面に加工しておけば、ファイバとの結合効率を改善することができる。
【0038】
ダイシングにより素子分離を行ない、共振器長約80μmの半導体レーザ素子を得る。その後、素子を下にして、ヒートシンク上にボンディングする。
【0039】
本実施例の半導体レーザは、電極19,20間に電圧が印加されると、歪量子井戸活性層14で発光が起こる。発光ビームは、45°反射鏡で反射し、ブラッグ反射器10,11の間で共振して、レーザ光となる。ブラッグ反射器11の方が反射率が低いため、レーザ光の一部がブラッグ反射器11を抜けて基板8裏面に到達し、反射防止膜22を経て外部に出射する。基板8裏面に到達した光ビームが半導体内部に戻って妨害光とならないように、反射防止膜22の反射率は10%以下に設定される。
【0040】
試作した半導体レーザは、閾値電流約10mAで室温連続発振し、発振波長は約1.3μmであり、最大光出力30mWまで安定に横単一モードで発振した。また、光出力を増加させても端面劣化は起こらず、最大光出力30mWは熱飽和により制限された。更に、30個の半導体レーザについて環境温度80℃の条件下で15mW一定で光出力連続駆動させたところ、全ての素子で端面劣化することなく1万時間以上安定に動作した。
【0041】
作製した1.3μm帯半導体レーザは、加入者系光伝送システムの光源に適用して好適である。
【0042】
なお、本発明は光導波路の構造によらないので、例えば、上述した実施例の他に、光導波路構造としてBH(Buried Heterostructure)構造を用いても良い。また、発振波長として上述した1.3μm帯のほか、0.98μm帯、1.55μm帯の半導体レーザに適用可能であることは言うまでもない。
【0043】
反射防止膜22として酸窒化硅素膜からなる単層膜を用いたが、高屈折率膜と低屈折率膜の積層膜を用いても良い。高屈折率膜として窒化硅素膜、非晶質硅素膜、窒化アルミニウム膜、二酸化チタン膜、酸化タンタル膜、酸化ハフニウム膜等の屈折率1.9以上の材料を用いることが望ましい。低屈折率膜として、二酸化硅素膜、酸化アルミニウム膜、弗化マグネシウム膜等の屈折率1.7以下の材料を用いることが望ましい。同様に高反射率膜として非晶質硅素膜と二酸化硅素膜からなる周期膜を用いたが、上述した高屈折率膜と低屈折率膜の組み合わせでも良いことは言うまでもない。
【0044】
また、本実施例では共振器の両端面に45°の反射鏡を形成したが、共振器長をある程度長くすることによって劈開が可能になる場合には、一方の端面は劈開により形成し、端面反射膜を形成しても良い。又は、一方の端面は、エッチングしてから反射膜を形成する図1に示した構造とすることが可能である。
【0045】
更に、n側オーミック電極20を基板8裏面に形成したが、電極20は、素子の一部をバッファ層の途中までエッチングし、露出したバッファ層の表面に形成されるようにしても良い。この場合、反射防止膜22は、基板8裏面の全体に形成しても構わない。このようにして、電極20をp側オーミック電極19と同一の面に形成することができ、半絶縁性基板を用いて半導体レーザを形成することが可能となる。
【0046】
本実施例により、光導波路を高速光伝送に適した80μmの長さにすることが可能で、しかもレーザ光を基板に垂直方向に取り出すことが可能となった。また、ブラッグ反射器10,11を他の結晶層と同じ結晶成長炉を用いて形成することができるので、製作工程が簡単であり、実用性の高い半導体レーザを実現することができた。
<実施例2>
半導体光素子を波長可変レーザ素子として構成した第2の実施例を図4に示す。本素子は1.3μm帯半導体レーザと波長変換素子を集積してなり、図4はその断面構造を示している。
【0047】
SiO等の絶縁膜を用いてInP基板23上をマスクし、所望の部位にのみInPバッファ層24及び格子整合したInGaAs及びInAlAsからなる反射率95%のブラッグ反射器25を形成した後、活性層60を有する発振波長1.3μmの半導体レーザ部61を形成する。
【0048】
次に、半導体レーザ部61に隣接してInPバッファ層24、 格子整合したInGaAs及びInAlAsからなる反射率60%のブラッグ反射器26を形成し、その上に、可変波長変換素子62を選択成長により作製する。波長可変素子62として、多電極分布帰還型レーザを用いても良く、また、多電極分布反射器レーザを用いても良い。光源となるレーザと波長変換素子の活性層60が直接突き当たるように形成しても良く、中間に導波路構造を形成して光を変換素子62に導入しても良い。
【0049】
半導体レーザ61と波長変換素子62の端面を45°にエッチングして反射面を形成し、反射面に高反射率膜27を形成して反射鏡とする。基板裏面には反射防止膜28を形成する。その後、不要部分をエッチング又はリフトオフにより除去し、反射防止膜28部を除いてオーミック電極を形成する。
【0050】
本実施例により、共振器長50μmの半導体レーザ61を形成することができ、これと波長変換素子62を集積することが可能となり、最大40nmの波長範囲で波長掃引する半導体光素子を実現することができた。作製した1.3μm帯半導体レーザ61と波長変換素子62を集積してなる波長可変レーザ素子は、加入者系光伝送システムの光源に適用して好適である。
<実施例3>
半導体光素子を光変調器集積レーザ素子として構成した第3の実施例を図5に示す。本素子は1.55μm帯半導体レーザと光変調器を集積してなり、図5はその断面構造を示している。
【0051】
SiO等の絶縁膜を用いてInP基板23上をマスクし、所望の部位にのみInPバッファ層24及び格子整合したInGaAs及びInAlAsからなる反射率90%のブラッグ反射器29を形成した後、InPバッファ層24を積層して回折格子30を形成する。回折格子30の上に導波路層、活性層63などを積層して共振器を作製し、発振波長1.55μmの分布帰還型半導体レーザ部65を形成する。
【0052】
次に、半導体レーザ部65に隣接してInPバッファ層24、吸収層31などを積層して、光変調器66を選択成長により作製する。光変調器66として、電界吸収型光変調器を用いても良く、また、マッハツェンダ型光変調器を用いても良い。
【0053】
両端面を垂直にエッチングしてから、エッチング部分にInPを埋込んでInP埋込層64を形成し、続いて、InP埋込層64に45°のエッチングを行なって反射面を形成する。電極を形成した後、反射面に高反射率膜27を形成して反射鏡とし、反射鏡に対向する基板裏面に反射防止膜28を形成する。
【0054】
光変調器66の反射鏡部分は窓構造となり、且つ基板23の厚さが凡そ100μmであるので、反射防止膜28の反射率が1%である場合でも光変調器66の戻り光強度は出射光強度の0.01%以下となった。これによりビットレート40Gbpsの光伝送において100Kmの伝送が可能となった。本実施例により、幹線系光伝送システムの光源に適用して好適な、1.55μm帯半導体レーザ65と光変調器66を集積化してなる光変調器集積レーザ素子を実現することができた。
<実施例4>
半導体光素子をInGaAlAs系化合物半導体によるフォトダイオードとして構成した第4の実施例を図6に示す。図6はその断面構造を示している。
【0055】
p-InP基板32上に、p-InAlAs下部クラッド層33を0.5μm、p-InGaAlAs下部第2コア層34を1.5μm、アンドープInGaAlAs光吸収層35を1.5μm、n-InGaAlAs上部第2コア層36を1.5μm、n-InAlAs上部クラッド層37を1.0μm、n-InGaAsコンタクト層38を0.2μm、順次積層した。
【0056】
ここで、上部第2コア層36及び下部第2コア層34のバンドギャップ波長は1.1μmであり、光吸収層35のバンドギャップ波長は1.4μmである。この半導体多層構造を化学エッチングによりメサ構造に形成した。
【0057】
その後、吸収層35の端面に45°の反射面を形成し、そこに高反射率膜39を形成して反射鏡とした。受光部の導波路幅は30μm、長さは100μmである。次に、n側電極40及びp側電極41を形成した。リフトオフにより、反射鏡に対向する位置にある受光面の電極を除去し、反射防止膜42を形成した。
【0058】
作製したフォトダイオードをスポット半径Wfが約4μmのフラットエンド分散シフトファイバからの波長1.3μmの信号光と光結合させたところ、バイアス電圧2Vで受光感度0.98A/Wと高い値が得られた。また、上記信号光の位置ずれ許容値も0.5dB劣化時で垂直方向が±2.0μm、水平方向が±12.0μmとパッシブアライメント法を用いた表面実装時の位置ずれ量を充分にカバーできる値となった。バイアス電圧2Vにおける最大遮断周波数は10GHzであった。なお、上記の構造をInGaAsP系の半導体層で構成しても同様の効果が得られる。
【0059】
本実施例では、光吸収層35に波長1.55μmの信号光に受光感度が無く、波長1.3μmの信号光に対して受光感度を有する半導体層を用いたが、波長1.55μmの信号光に受光感度を有する半導体層を用いても同様の効果を得ることができる。
【0060】
本実施例により、光導波路を長くして受信感度を高め、かつ基板に垂直の方向から光ビームを入射する半導体受光素子を実現することができた。
<実施例5>
半導体光素子をInGaAlAs系化合物半導体によるブラッグ反射器付きフォトダイオードとして構成した第5の実施例を図7に示す。図7はその断面構造を示している。
【0061】
p-InP基板32上に、InGaAsとInAlAsからなるブラッグ反射器43を形成し、p-InAlAs下部クラッド層33、p-InGaAlAs下部第2コア層44、アンドープInGaAs光吸収層45、n-InGaAlAs上部第2コア層46、n-InAlAs上部クラッド層37、n-InGaAsコンタクト層38を順次積層した。
【0062】
ここで,ブラッグ反射器43の反射率は1.3μmの光に対し99.99%となるようにした。また、上部第2コア層46及び下部第2コア層44のバンドギャップ波長は1.3μmである。メサ構造を形成した後、45°反射面をエッチングにより形成し、反射面に高反射率膜47を形成して反射鏡とした。基板裏面に反射防止膜48を形成し、不要部分を除去して電極を形成する。
【0063】
本実施例による半導体受光素子を受信信号の波長が1.55μm、送信信号の波長が1.3μmの送受信モジュールに用いたところ、半導体受光素子の受信信号と送信信号に対する感度比は38dBとなった。このように反射器43が良好な光学フィルタとなるので、受光素子の前段に送信信号を阻止するための前置フィルタを設置する必要がなくなった。
<実施例6>
本発明による半導体レーザと半導体受光素子を用いて構成した光送受信装置(光送受信モジュール)を第6の実施例として図8に示す。
【0064】
半絶縁性基板49上に初めに上述の本発明による発振波長1.3μmの半導体レーザ50を形成する。半導体レーザ50は光変調器を集積していても良く、また、波長可変素子を集積していても良い。
【0065】
次に、半導体レーザ50に隣接して同一半絶縁性基板上にレーザ駆動回路IC(Integrated Circuit)51を形成する。更に、波長1.55μmの光に対して感度を有する半導体受光素子52を形成し、最後に半導体受光素子52に隣接して前置増幅回路IC53を作製する。
【0066】
上記の各素子及び各回路の半導体基板から始まる各層の形成は、半絶縁性基板49上への結晶成長及びフォトリソグラフィによりそれぞれ独立に行なわれる。また、半導体レーザ50及び半導体受光素子52の反射防止膜は両者で共通であり、半絶縁性基板49の裏面全体に形成される。また、半導体レーザ50及び半導体受光素子52共、それぞれ半導体基板又はその上に形成した層の途中までエッチングすることによって露出した表面に一方の電極が形成される。なお、半絶縁性基板49上に形成した各素子及び各回路は、半絶縁性基板49によって互いに電気的に絶縁される。
【0067】
各素子及び各回路間に所望の配線を行なうことにより、光送受信装置の主要部を単一基板上にモノリシックに形成することができた。配線距離が短くなり、配線によるインピーダンスは40Ω以下に低減することができ、ビットレート40Gbpsの光伝送において、10−8の誤り率となる最小受光感度は−38dBと良好であった。
【0068】
本実施形態の光送受信装置は、レーザ光の出射及び入射が半絶縁性基板49の裏面に対していずれも同一の垂直方向になるので、モノリシック集積が容易であり、高集積でコンパクトな装置(モジュール)を実現することができる。
【符号の説明】
【0069】
1,8,23,32…半導体基板、2…光導波路、3,33…下部クラッド層、4,37…上部クラッド層、5…45°反射鏡、6,22,28,42,48…反射防止膜、7,10,11,25,26,29,43…ブラッグ反射器、9,12,24…バッファ層、13…下側SCH層、14…歪量子井戸活性層、15…上側SCH層、16…クラッド層、17…キャップ層、18,38…コンタクト層、19,41…p側電極、20,40…n側電極、21,27,39,47…高反射率膜、30…回折格子、31,35,45…吸収層、34,44…下部第2コア層、36,46…上部第2コア層、49…半絶縁性基板、50…半導体レーザ、51…レーザ駆動回路IC、52…半導体受光素子、53…前置増幅回路IC、67…反射膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の第1主面に形成された半導体レーザを含む光導波路と、
前記光導波路の一端に接続された窓構造である埋込層と、
前記埋込層の前記一端とは逆側である他端に形成された傾斜反射鏡と、を備え、
前記半導体レーザより出力される光は、前記半導体基板と平行であり、前記埋込層を透過し、前記傾斜反射鏡にて光線方向が変化し、前記半導体基板の第2主面側に出射される、
ことを特徴とする半導体光素子。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体光素子において、
前記半導体レーザは、分布帰還型レーザである、
ことを特徴とする半導体光素子。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれかに記載の半導体光素子において、
前記半導体基板の前記第2主面に反射防止膜が形成されており、
前記傾斜反射鏡にて光線方向が変化した光は、前記反射防止膜を透過して出射される、
ことを特徴とする半導体光素子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の半導体光素子において、
前記傾斜反射鏡の傾斜角度は、前記半導体基板の前記第1主面に対して45°である、
ことを特徴とする半導体光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−70105(P2013−70105A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−9258(P2013−9258)
【出願日】平成25年1月22日(2013.1.22)
【分割の表示】特願2009−60604(P2009−60604)の分割
【原出願日】平成15年1月28日(2003.1.28)
【出願人】(301005371)日本オクラロ株式会社 (311)
【Fターム(参考)】