説明

半導体反射多層膜および反射型空間光変調器

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高度な高速処理を行う光情報処理システムの重要な構成要素となる光書き込み型空間光変調器への応用や投射型ディスプレイに代表される、反射型空間光変調器等への応用を目的とした半導体反射多層膜およびそれを備えた反射型空間光変調器に関するものであり、特に高速化、素子動作の安定化、光の高利用効率化を容易ににできるような半導体反射多層膜の構造設計に関するものである。
【0002】
【従来の技術】空間光変調器は、光の空間的強度分布や位相分布を変調して、2次元並列情報を光に乗せる機能を有する素子である。
【0003】この空間光変調器、特に2次元並列情報を光によって書き込み、かつ光によって読み出すことのできる光書込み型空間光変調器は、光演算システムや光情報処理システムのキーデバイスの一つである。
【0004】この空間光変調器の変調方法にはさまざまな方式が提案されているが、高速な応答を可能にするためには、半導体の利用が最も適していると考えられる。半導体によるデバイスは、作製する上でも技術が確立されており、特に化合物半導体においては光学材料として優れた特性を持つ物も多く、都合がいい。このため、化合物半導体を反射多層膜として利用する反射型の空間光変調器が提案されており、実際に作製もされている。
【0005】このような反射型空間光変調器としては、反射多層膜を利用しかつバルクにおけるフランツ−ケルデッシュ効果や多重量子井戸における量子シュタルク効果を用いたものがある。
【0006】多重量子井戸を利用せず、単なるバルクにおけるフランツ−ケルディシュ効果を利用して吸収端をずらすことを考えた場合、電圧印加によって吸収端のずれる範囲が狭く変調度は小さい。さらには多重量子井戸によって得られるほどの急峻な吸収端が得られないため、十分な吸収端制御ができない。以上の理由から、反射型空間光変調器の吸収端制御層には、多重量子井戸を用いた量子シュタルク効果が用いられることが多い。
【0007】以下、現在、試作または生産されており、多重量子井戸における量子シュタルク効果を用いた反射型空間光変調器について、図8を用いて説明する。この素子は、下部電極606を形成した半導体基板601と上部電極605との間に高反射多層膜層602、多重量子井戸光吸収制御層603、低反射多層膜層604を順次積層した構成になっている。ここで、低反射多層膜層604の反射率は10%〜20%程度、高反射多層膜層602の反射率はほぼ100%である。
【0008】上部電極605の側からの入射光607は、低反射多層膜層604と高反射多層膜層602との間で反射を繰り返すとともに、低反射多層膜層604側から反射光608として出射する。電極間605と606の間に電圧を印加しない状態では、多重量子井戸層603での吸収はほとんどなく、全体としてQ値の高い共振器として働く。この結果、入射した光のほとんどが反射され、高い反射率で反射光608が得られる。
【0009】次に、電極間605と606の間に電圧を印加すると、多重量子井戸層603の実効バンドギャップが変化し、励起子吸収ピークの吸収端が長波長側へシフトする。多重量子井戸の励起子吸収ピークを共振器の共振波長近傍の短波長側に設定しておくと、共振波長に励起子吸収ピークが重なってくる。すなわち、多重量子井戸層603が光吸収層として働くようになる。このため、共振器のQ値が低下し、反射率は低くなる。この励起子吸収ピークのシフト量は印加電圧の大きさによって制御されるので、電圧によって反射光608の強度を変えることができる。以上のような動作原理によって、印加電圧の変化による反射率の制御ができる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の構成は、いくつかの問題を有している。まず、上記の反射型空間光変調器が有する技術的課題について説明する。上記のように、量子シュタルク効果を利用して材料の吸収端を変化させる方法を用いると、使用できる波長が吸収端付近に制限されてしまう。また、上記のような使用目的で利用できる材料は吸収端の立ち上がりが鋭い直接遷移型の半導体でなくてはならない。直接遷移型半導体であり、なおかつ基板や他の材料との格子整合もとれ、熱的にも比較的安定で、結晶成長においてもその結晶性が優れている材料としては、GaAs,InPを基板とした、(Ga,Al,In)As系や(Ga,Al,In)P系のIII−V族化合物半導体があげられる。しかし、それらの代表的材料の吸収端はどれも赤外光領域にあり、可視光領域では吸収が大きく、光の利用効率を極端に低下させるだけでなく、これらを使った可視光領域での吸収端制御は不可能である。吸収端制御による反射型空間光変調器を可視光領域に適合させようとすれば、構成する材料系を根本的に変えねばならない。
【0011】さらに、上記のような光吸収層を利用した反射型空間光変調器には、作製する上での課題もある。この構造では厚い多重量子井戸光吸収層を作製する必要があり、多重量子井戸層を構成する各半導体層が極めて薄いため、各半導体層を多数積層しなければならない。このため、素子作製に膨大な工数がかかることになる。さらに、上記のように低反射膜層と高反射膜層との間に多重量子井戸光吸収層を作製する場合、多重量子井戸を含む共振器を作るためには高い製作精度が要求され、膜厚や不純物濃度などの制御を高精度に行わなくてはならない(Journalof Crystal Growth 107(1991)860-866 North Holland参照)。
【0012】吸収端制御層の利用は、共振器構造作製時には設計値に各半導体層の膜厚を厳密に一致させる必要性の他に、光の利用効率や作製するまでの工数を考えると決して好ましい方式ではないが、現在までのところ、反射多層膜の反射スペクトルそのものを変化させることはむずかしいと考えられていたため、吸収端制御層の利用による上記の変調方式が主流となってきた。
【0013】本発明は、このような従来の技術の抱える課題を解決し、なおかつ高速応答性、可視光における高利用効率化、低電圧駆動を同時に達成するような半導体反射多層膜およびそれを備えた反射型空間光変調器を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明では、大きく分けて二種類の構成の反射多層膜を有する。
【0015】第1の構成は、図1に示すように、三つの部位、すなわち、第1の反射多層膜層ML1、第2の反射多層膜層ML2、第3の反射多層膜層ML3から構成されている。第1の反射多層膜層ML1は、第1の電極E1に接したp型化合物半導体基板BPに接し、第1の化合物半導体層SL1と第1の化合物半導体層SL1とは屈折率とバンドギャップエネルギーが異なる第2の化合物半導体層SL2とのそれぞれにp型不純物を添加したものを、目的波長の4分の1の膜厚となるように交互に積層させた構造からなる。第2の反射多層膜層ML2は、p型不純物を多量に含み、前記第1の反射多層膜ML1を構成している二種類の化合物半導体層のうちどちらか一方に屈折率とバンドギャップエネルギーが等しい第3の化合物半導体層ML3と、その化合物半導体層ML3の屈折率とバンドギャップエネルギーに等しい化合物半導体へ多量のn型不純物を添加した第4の化合物半導体層SL4とによって構成される。また、第2の反射多層膜層ML2は、屈折率とバンドギャップエネルギーが互いに等しく不純物の種類だけが異なる二種類の化合物半導体層によって構成されるが、その合計の膜厚は0より大きく、目的波長の3/4以下の範囲に定めておけばよい。第3の反射多層膜層ML3は、第2の電極E2に接し、前記第1の化合物半導体層SL1と第1の化合物半導体層SL1とは屈折率とバンドギャップエネルギーが異なる第2の化合物半導体層SL2のそれぞれにn型不純物を添加したものを、目的波長の4分の1の膜厚となるように交互に積層させた構造からなる。このとき、第1の反射多層膜層ML1と第2の反射多層膜層ML2の隣接部にあたる化合物半導体層どうしは、互いに屈折率とバンドギャップエネルギーが異なる化合物半導体層に、また第3の反射多層膜層ML3と第2の反射多層膜層ML2の隣接部にあたる化合物半導体層どうしも、互いに屈折率とバンドギャップエネルギーが異なる化合物半導体層にしておく。また、この条件を満たしていれば、第2の反射多層膜層ML2は、屈折率とバンドギャップの異なる二種類の化合物半導体によって構成してもよいし、第1の反射多層膜層ML1を構成している化合物半導体層のうちの任意の一層かまたは第3の反射多層膜層ML3を構成している化合物半導体層のうちの任意の一層が目的波長の4分の1以外の膜厚になっていても良い。さらには、p型不純物の添加されている部位とn型不純物の添加されている部位との配置は逆になっていてもよい。
【0016】これら第1、第2、第3の反射多層膜層ML1、ML2、ML3を順次積層することによって、本発明の第1の構成の半導体反射多層膜が構成されている。
【0017】本発明の第2の構成の半導体反射多層膜は、図2に示すように、第1の電極E1に接したp型化合物半導体基板BP上にn型不純物が多量に添加されている第1の化合物半導体層SL1と、第1の化合物半導体層SL1とは屈折率とバンドギャップエネルギーが異なり、多量にp型不純物を含む第2の化合物半導体層SL2とを、目的波長の4分の1の膜厚となるように交互に積層させて反射多層膜層MLを作製し、第2の電極E2をその反射多層膜層MLの最上部に接するよう設けた構造である。第1の化合物半導体層SL1と第2の化合物半導体層SL2とのヘテロバンド構造は、p型およびn型の不純物添加がなかったとしても、第1の化合物半導体層SL1の伝導帯底が第2の化合物半導体層SL2の伝導帯底よりもエネルギー的に下に位置すると同時に、第1の化合物半導体層SL1の価電子帯頂上が、第2の化合物半導体層SL2の価電子帯頂上よりもエネルギー的に上に位置する。この構成では、多量のp型およびn型の不純物添加のため、第1の化合物半導体層SL1の伝導帯底と第2の化合物半導体層SL2の価電子帯頂上がフェルミ準位に近い位置にくるようなヘテロバンド構造となっている。
【0018】
【作用】上記二種類の構成の半導体反射多層膜は、第1の電極E1と第2の電極E2に接した化合物半導体基板との間に、吸収端制御層を含まず、印加電圧によって直接反射率制御を行えるような反射多層膜構造を有する。すなわち、反射多層膜層中の任意の部分にpn接合などのように印加電圧の変化によって屈折率分布の変化が生じる層を設け、反射多層膜での多重反射効果を利用して反射多層膜の反射スペクトル自身を変える方式と、材料特有のヘテロバンド構造を用いることで素子自体の材料物性を変化させ、反射多層膜としての機能自体を変えてしまう方式の二種類である。
【0019】第1の構成の反動体反射多層膜の場合、電圧印加が無ければ第1の反射多層膜層ML1および第2の反射多層膜層ML2では、多層膜の光波長に対する反射率変化、すなわち反射スペクトルの形状は複数のピークおよびバレイを持ち、目的波長付近におけるピークが最も反射率が高く、目的波長にたいして単純なミラーとして働く。いま、第2の反射多層膜層ML2の層厚が目的波長の4分の1であるとすると、第2の反射多層膜層ML2は、反射多層膜を構成する任意の半導体層と等価な働きをし、反射スペクトルの形状には影響を与えない。第2の反射多層膜層ML2の層厚が0から目的波長の4分の3の間にあるとき、反射スペクトルにおける目的波長付近のメインピークにバレイが現れる。また、その位置とバレイの深さは合計の膜厚を任意に設定することによって一意的に決めることができる。
【0020】ところで、第2の反射多層膜層ML2を構成している二つの化合物半導体層の間には、キャリア濃度が極めて低い空乏層が自然にできている。このため、屈折率の分布は、p+ 型化合物半導体層とn+ 型化合物半導体層との間に不純物を含まない化合物半導体層が挿入されているのと等価になる。この空乏層の膜厚は4nmと非常に薄い。また、この空乏層においては、p+ 型化合物半導体層およびn+ 型化合物半導体層との屈折率の差異が10%程度であり、第2の反射多層膜層ML2の層厚を設定するときに,この空乏層の効果を考慮しておき、目的波長の何倍の膜厚にするのかを決めればよい。
【0021】第1の電極E1と、第2の電極E2との間にpn接合への逆方向電圧を印加すると、前述の空乏層幅が増え、10ないし20Vの電圧で約20nmに達する。空乏層幅が大きくなると、第2の反射多層膜層の実効光学長が変わると同時に反射多層膜の周期構造も局所的に崩れる。実効光学長の変化が反射スペクトルに与える影響は大きいので、逆方向電圧の印加によって反射スペクトルの形状が大きく変化する。このとき、前述の反射スペクトルにおけるバレイやピークの鋭い立ち上がり部分は、変化の影響を受けやすいので、その部分の波長に相当する入射光に対する反射率が大きく変わる。以上によって、印加電圧の変化にともなった反射光強度の制御が可能となる。
【0022】第2の構成の半導体反射多層膜の場合においても、反射多層膜層MLは、目的波長での反射率を最大にするために、第1の化合物半導体層SL1と第2の化合物半導体層SL2の膜厚が目的波長の4分の1となるように設計されている。また、この多層膜のヘテロバンド構造は,TypeIIと呼ばれる構造になっており、第2の化合物半導体層SL2の伝導帯底が第1の化合物半導体層SL1の伝導帯底よりも上にあり、なおかつ第2の化合物半導体層SL2の価電子帯頂上が第1の化合物半導体層SL1の価電子帯頂上よりも上にある。
【0023】第2の化合物半導体層SL2へ多量のp型不純物を添加し、第1の化合物半導体層SL1へ多量のn型不純物を添加すると、第1の化合物半導体層SL1の伝導帯底と第2の化合物半導体層SL2の価電子帯頂上はフェルミ準位に近づく。
【0024】この高反射多層膜MLに電圧がかかると、第1の化合物半導体層SL1および第2の化合物半導体層SL2にドーピングされているキャリアが電界の向きに従って移動しようとするが、第2の化合物半導体層SL2内の正孔は、第1の化合物半導体層SL1の価電子帯障壁に、第1の化合物半導体層SL1内の電子は、第2の化合物半導体層SL2の伝導帯障壁に遮られ、これらのキャリアは互いに逆方向へ偏った状態となる。このように、各領域での不純物濃度の分布が大きく異なる場所が多層膜の周期数だけ存在することになる。この不純物濃度分布の変化からプラズマ効果を介して屈折率の変化が生じ、その変化に対応した反射多層膜の反射条件のずれが重畳された形で多重反射が行われ、反射スペクトルの変化が生じる。
【0025】第2の構成の半導体反射多層膜にさらにより大きな電圧を印加した場合、第1の化合物半導体層SL1の価電子帯障壁に遮られていた第2の化合物半導体層SL2内の少数キャリアである電子は、トンネル効果によって障壁をすり抜ける。また、第2の化合物半導体層SL2の伝導帯障壁は、印加電界が順方向バイアスの働きをするため、第1の化合物半導体層SL1の価電子帯障壁をトンネルした電子に対しては障壁にはならない。これにより、素子全体として電流が流れ出す。このようにTepeIIのヘテロバンド構造で電流が流れだすと、材料が持つ本来の光学的特性は変わってしまい、屈折率も大きく変わってしまう。これにより、反射スペクトルも大きく変化し、印加電圧による反射率の制御が行える。
【0026】以上で、本発明における半導体反射多層膜による光強度の変調方法について説明した。上記二種類の構成の半導体反射多層膜において、どちらの方式によるものも、可視光領域において透明、すなわちバンドギャップエネルギーの大きい二種類の材料を用いることによって反射多層膜を作製し、その内部にpn接合を設けることによって電圧印加による屈折率変化を局所的に起こし、多層膜の反射スペクトルを変化させる方式をとっている。
【0027】本発明による半導体多層膜および反射型空間光変調器は、吸収端制御層を含まないため、直接遷移型の半導体を用いる必要はなく、透明領域を利用する点から、バンドギャップエネルギーが大きい材料であればよい。このことから間接遷移型の半導体材料を用いることができる上に、吸収端制御型の変調方式のように吸収端近傍の波長でなくとも利用でき、波長の適用領域が広いという長所がある。
【0028】また、本発明による半導体反射多層膜および反射型空間光変調器は、透明領域を利用した反射多層膜の反射スペクトル自身を変調することにより、全反射に近い反射率から透過に近い反射率までの変調を行うことができ、変調度が大きくとれ、光吸収層を用いることなく光強度の変調ができるので、光の高利用効率化が実現される。また、作製する上でも多重量子井戸層の利用をしないため、厳密な設計や膜厚の制御が必要なくなり、比較的簡素な構造の素子で光強度の変調が実現される。さらに、反射率の変化速度は、すべてnsec以下と考えて良く、高速動作性をも確保できる。
【0029】以上のように、本発明の半導体反射多層膜および反射型空間光変調器によれば、高速応答性、素子作製時の簡易性を同時に達成するとともに、可視光領域の光に対する光強度変調を実現することができる。
【0030】
【実施例】
(実施例1)以下、本発明の第1の実施例について、図面を参照しながら説明する。図3は本発明の第1の実施例における反射型空間光変調器の概略断面図である(請求項1対応)。
【0031】図3において、101は図1のBPに相当するp型不純物がドープされたp−GaP基板、102は図1のSL1に相当するp型不純物がドープされたp−Aly Ga1-y P層、103は図1のSL2に相当するp型不純物がドープされたp−Gax Al1-x P層であり、xは式(1)、yは式(2)の範囲にある。
1≧x>0.5 ・・・(1)
1≧y>0.5 ・・・(2)
104は図1のML1に相当する第1の反射多層膜層であり、p−Aly Ga1-y P層102で始まり、p−Aly Ga1-y P層102で終わるp−Gax Al1-x P/Aly Ga1-y P多層膜である。105は図1のSL3に相当するp型不純物のキャリア濃度が1019〜1020cm-3と極めて高いp+ −Gax Al1-x P層、106は図1のSL4に相当するn型不純物のキャリア濃度が1019〜1020cm-3と極めて高いn+ −Gax Al1-x P層であり、これらにより図1の第2の反射多層膜ML2が構成される。107は図1のSL5に相当するn型不純物がドープされたn−Aly Ga1-y P層、108は図1のSL6に相当する。n型不純物がドープされたn−Gax Al1-x P層であり、109は図1のML3に相当する第3の反射多層膜層であり、n−Aly Ga1-y P層107で始まり、n−Gax Al1-x P層108で終わるn−Gax Al1-x P/AlyGa1-y P多層膜である。110は図1のE1に相当する下部電極、111は図1のE2に相当する上部電極である。
【0032】p−Aly Ga1-y P層102、p−Gax Al1-x P層103、n−AlyGa1-y P層107、n−Gax Al1-x P層108は、それぞれ反射多層膜を形成する半導体層であり、その膜厚は目的波長の1/4の膜厚となるように設定する。また、上部電極111は円筒型または透明電極であり、n−Gax Al1-x P/Aly Ga1-y P多層膜109の最上部において、入射光112および出射光113が遮断および吸収されずに多層膜内に侵入していける構造にする。下部電極110の形状は任意である。また、下部電極110は、p型不純物濃度が1020cm-3程度のp++−GaPであってもよく、上部電極直下のn−Gax Al1-x P層108は、n型不純物濃度が1020cm-3程度のn++−Gax Al1-x Pであってもよい。
【0033】以上のように構成された反射型空間光変調器における半導体反射多層膜について、図3を参照しながらその動作を説明する。まず、電圧印加が無い状態の多層膜内での光の反射/透過の特性を説明する。p−Gax Al1-x P/Aly Ga1-y P多層膜104およびn−Gax Al1-x P/Aly Ga1-y P多層膜109では、多層膜の光波長に対する反射率変化、すなわち反射スペクトルの形状は複数のピークおよびバレイを持ち、目的波長付近におけるピークが最も反射率が高く、目的波長に対して単純なミラーとして働く。なお、目的波長付近でのピークは二種類の材料の屈折率差に依存する幅を持つ。いま、p+ −Gax Al1-xP層105とn+ −Gax Al1-x P層106との膜厚の合計が実効目的波長の4分の1であれば、p+ −Gax Al1-x P層105とn+ −Gax Al1-x P層106は、半導体反射多層膜内の任意の一層であるにすぎないので、反射スペクトルの形状にはほとんど影響を与えない。その合計の膜厚が0から実効目的波長の4分の3の間にあるとき、反射スペクトルにおける目的波長付近のメインピークにバレイが現れる。また、その位置とバレイの深さは、合計の膜厚を任意に設定することによって一意的に決めることができる。
【0034】ところで、p+ −Gax Al1-x P層105とn+ −Gax Al1-x P層106との間にはキャリアが枯渇し、キャリア濃度が1016cm-3以下と極めて低いi−Gax Al1-x P層が自然にできている。このため、屈折率の分布は、p+−Gax Al1-x P層105とn+ −Gax Al1-x P層106との間に不純物を含まないGax Al1-x P層が挿入されているのと等価になる。このキャリア濃度が極端に少なくなっている層、すなわち空乏層の膜厚は、キャリア濃度1019〜1020cm-3程度のpn接合においては4nmと非常に薄い。また、プラズマ効果を介した屈折率の減少は、1019〜1020cm-3のキャリア濃度においては10%程度である。このため、p+ −Gax Al1-x P層105とn+ −Gax Al1-x P層106との膜厚の合計を設定するときに、この空乏層の効果を考慮しておき、実効目的波長の何倍の膜厚にするのかを決めればよい。
【0035】次に上部電極111と下部電極110との間にpn接合に対して逆方向電圧を印加する。この逆方向電圧の印加によって、前述の空乏層幅が増え、10ないし20Vの電圧で約20nmに達する。半導体反射多層膜を構成している二種類の材料のうち、ある任意の一層の膜厚変化、すなわち実効光学長の変化は反射スペクトルに対して大きな影響を与える。前述のように空乏層幅が大きくなると、実効光学長が変わると同時に反射多層膜の周期構造も局所的に崩れる。実効光学長の変化が反射スペクトルに与える影響は大きいので、逆方向電圧の印加によって反射スペクトルの形状が大きく変化する。このとき、反射スペクトルにおける前述したようなバレイや鋭い立ち上がりを持った部分は変化の影響を受けやすいので、その部分の波長に相当する入射光112は、その強度を変えて反射光113となる。この強度変化は空乏層幅に比例し、空乏層幅は印加電圧の平方根に比例する。以上によって、印加電圧の変化にともなった反射光強度の制御が可能となる。このときの具体的な変調度としては、pn接合への印加電圧が15Vのとき、反射率は0.1%から30%まで変化する。その変化量は30%になり、変調伝達関数MTFは0.99が得られる。
【0036】上記実施例において、p型およびp+ 型領域とn型およびn+ 型との配置を入れ替えても、逆電圧の方向が変わるだけで動作原理は同じままである(請求項2対応)。
【0037】また、p+ −Gax Al1-x P層105およびn+ −Gax Al1-x P層106を,それぞれp+ −Aly Ga1-y P層およびn+ −Aly Ga1-y P層に置き換え、p−Gax Al1-x P/Aly Ga1-y P多層膜104は,p−GaxAl1-x P層で終端し、n−Gax Al1-x P/Aly Ga1-y P多層膜109はn−Gax Al1-x P層で始める構造でも、同様の動作原理となる(請求項3対応)。
【0038】また、この場合にも、p型およびp+ 型領域とn型およびn+ 型との配置入れ替えが可能である(請求項4対応)。
【0039】(実施例2)次に、本発明の第2の実施例について、図面を参照しながら説明する。図4は本発明の第2の実施例における反射形光変調器の概略断面図である(請求項8対応)。
【0040】図4において、201は図1のBPに相当するp型不純物がドープされたp−GaP基板、202は図1のSL1に相当するp型不純物がドープされたp−Aly Ga1-y P層、203は図1のSL2に相当するp型不純物がドープされたp−Gax Al1-x P層であり、添字のxとyはそれぞれ前述の式(1)および式(2)の範囲にある。204は図1のML1に相当する第1の反射多層膜層であり、p−Aly Ga1-y P層202で始まり、p−Aly Ga1-y P層202で終わるp−Gax Al1-x P/Aly Ga1-y P多層膜である。205は図1のSL3に相当するp型不純物のキャリア濃度が1019〜1020cm-3と極めて高いp+ −Gax Al1-x P層、206は図1のSL4に相当するn型不純物のキャリア濃度が1019〜1020cm-3と極めて高いn+ −Aly Ga1-y P層であり、これらにより図1の第2の反射多層膜層ML2が構成される。207は図1のSL5に相当するn型不純物がドープされたn−Gax Al1-x P層、208は図1のSL6に相当するn型不純物がドープされたn−Aly Ga1-y P層であり、209は図1のML3に相当する第3の反射多層膜層であり、n−Gax Al1-x P層207で始まり、n−Gax Al1-x P層207で終わるn−Gax Al1-x P/Aly Ga1-y P多層膜である。210は図1のE1に相当する下部電極、211は図1のE2に相当する上部電極である。この上部電極211は、円筒型または透明電極であり、n−Gax Al1-x P/Aly Ga1-y P多層膜209の最上部において、入射光212および出射光213が遮断および吸収されずに多層膜内に侵入していける構造にする。下部電極210の形状は任意である。なお、本実施例においても、実施例1と同様にその構成を種々に変更することができる(請求項9、10、11、12対応)。
【0041】次に、本実施例の動作について説明する。本実施例の場合も、上記実施例1の場合と同じように、電圧印加によるp+ −Gax Al1-x P層205とn+ −Aly Ga1-y P層206における空乏層変化を利用した反射率変調であるが、大きく異なる点は、多層膜を構成している一方の材料内にpn接合を作ることをせず、ヘテロpn接合を作ることで、両方の材料にまたがって空乏層を生じさせている点である。空乏層部分はキャリアが枯渇しているため屈折率が異なり、この部分における屈折率の周期的構造が局所的に崩れる。また、ヘテロpn接合であるので、抵抗値はホモpn接合に比べて高く、実施例1の場合に比べて電圧がこの部分に集中してかかりやすくなっている。もちろん、この場合も実施例1の場合と同様に実効的光学長も変わっている。周期的構造の局所的なずれと実効光学長の局所的なずれとが同時にこの場所で生じ、結果として実施例1同様に反射スペクトル形状が印加電圧の変化にともなって変化する。
【0042】(実施例3)次に、本発明の第3の実施例について、図面を参照しながら説明する。図5は本発明の第3の実施例における反射型空間光変調器の概略断面図である(請求項13対応)。
【0043】図5において、301は図2のBPに相当するp型不純物がドープされたp−GaP基板、302は図2のSL1に相当するn型不純物がキャリア濃度1019〜1020cm-3と極めて高くドープされたn+ −Aly Ga1-y P層、303は図2のSL2に相当するp型不純物がキャリア濃度1019〜1020cm-3と極めて高くドープされたp+ −Gax Al1-x P層であり、xとyについては、それぞれ前述の式(1)および式(2)に示した範囲と同じである。304はn+ −Aly Ga1-y P層302とp+ −Gax Al1-x P層303とを交互に積層した図2の反射多層膜層MLに相当するp+ −Gax Al1-x P/n+ −Aly Ga1-y P多層膜層であり、305は図2のE1に相当する下部電極、306は図2のE1に相当する上部電極である。上部電極316は、円筒型または透明電極であり、p+ −Gax Al1-x P/n+ −Aly Ga1-y P多層膜304の最上部において、入射光307および出射光308が遮断および吸収されずに多層膜内に侵入していける構造にする。下部電極305の形状は任意である。
【0044】次に、本実施例の動作について説明する。本実施例におけるp+ −Gax Al1-x P/n+ −Aly Ga1-y P多層膜層304は、目的波長に反射率の最大値がくるように、各半導体層302および303は目的波長の4分の1の膜厚となるよう設計されている。また、この多層膜のヘテロバンド構造はTypeIIと呼ばれる構造になっており、そのバンド構造の模式図を図6R>6に示す。TypeIIと呼ばれるヘテロバンド構造の特徴は、Gax Al1-x P層401の伝導帯の底403が、Aly Ga1-y P層402の伝導帯の底405よりも上にあり、なおかつGax Al1-x P層401の価電子帯の頂上404がAly Ga1-y P層402の価電子帯の頂上406よりも上にある点である。このように一方の材料の伝導帯底と価電子帯頂上とがともに他方の材料の伝導帯底と価電子帯頂上の準位よりも上に来るのがTypeIIと呼ばれるヘテロバンド構造の特徴である。
【0045】Gax Al1-x P層401にp型不純物を多量に添加し、Aly Ga1-y P層402にn型不純物を多量添加すると、Gax Al1-x P価電子帯頂上404はフェルミ準位409に近づき、Aly Ga1-y P伝導帯底405もフェルミ準位409に近づく。この近づきの度合いは、ドープ量によって大きくも小さくもなる。本実施例の場合、ドープ量はキャリア濃度1019〜1020cm-3と極めて高いので、Gax Al1-x P価電子帯頂上404とAly Ga1-y P伝導帯底405のフェルミ準位409との隔たりは数meVまで近づいている。
【0046】この高反射多層膜に電圧がかかると、p+ −Gax Al1-x P層401およびn+ −Aly Ga1-y P層402にドーピングされているキャリアが電界の向きに従って移動しようとするが、p+ −Gax Al1-x P層401内の多数キャリアである正孔は、n+ −Aly Ga1-y P層402の価電子帯障壁408に、n+ −Aly Ga1-y P層内の多数キャリアである電子はp+ −Gax Al1-x Pの伝導帯障壁407に遮られ、これらのキャリアは互いに逆方向へ偏った状態となる。このように、各領域での不純物濃度の分布が、電圧印加前とは大きく異なる場所が多層膜の周期数だけ存在することになる。この不純物濃度分布の変化からプラズマ効果を介して屈折率の変化が生じ、その変化に対応した反射多層膜の反射条件のずれが重畳された形で多重反射が行われ、反射スペクトルの変化が生じる。
【0047】さらにより大きな電圧を印加した場合のヘテロバンド構造を図7に示す。この時、n+ −Aly Ga1-y P層502の価電子帯障壁504に遮られていたp+−Gax Al1-x P層501内の少数キャリアであった電子は、トンネル効果によって障壁をすり抜け、トンネル電流507が発生する。また、p+ −Gax Al1-x P層501の伝導帯障壁503は、印加電界506が順方向バイアスの働きをするため、n+ −Aly Ga1-y P層502の価電子帯障壁504をトンネルした電子に対しては、障壁としての効果を失っている。これにより、素子全体として電流が流れ出す。このようにTypeIIのヘテロバンド構造で電流が流れ出すと、材料が持つ本来の光学的特性は相変換的大きくに変わってしまい、屈折率も大きく変わってしまう。これにより反射スペクトルも大きく変化し、印加電圧による反射率の制御が行える。
【0048】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、可視光領域で透明なGax Al1-x P/Aly Ga1-y P多層膜を材料として選ぶことによって、可視光領域で使用可能な半導体反射型空間光変調器が実現することができる。また、従来、困難とされていた反射多層膜自体の屈折率変化を利用できるような構成をとることによって、光吸収制御を用いない反射型空間光変調器が実現し、作製上の手間も同時に省ける。
【0049】また、電圧制御型の反射型空間光変調器でもあるため、反射多層膜下部には基板と電極しかなく、p−i−nフォトダイオードなどとの積層を可能にするだけの余地があり、より多くの付加機能を設けることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の概念を説明するための反射型空間光変調器の概略断面図
【図2】本発明の概念を説明するための別の反射型空間光変調器の概略断面図
【図3】本発明の第1の実施例にかかる反射型空間光変調器の概略断面図
【図4】本発明の第2の実施例にかかる反射型空間光変調器の概略断面図
【図5】本発明の第3の実施例にかかる反射型空間光変調器の概略断面図
【図6】第3の実施例における多層膜のヘテロバンド構造を示す模式図
【図7】第3の実施例における多層膜に電圧が印加されているときののヘテロバンド構造を示す模式図
【図8】従来例における反射型空間光変調器の概略断面図
【符号の説明】
BP 半導体基板
E1 第1の電極
E2 第2の電極
ML 反射多層膜層
ML1 第1の反射多層膜層
ML2 第2の反射多層膜層
ML3 第3の反射多層膜層
SL1 第1の半導体層
SL2 第2の半導体層
SL3 第3の半導体層
SL4 第4の半導体層
SL5 第5の半導体層
SL6 第6の半導体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 p型不純物を含む第1の半導体層とp型不純物を含み前記第1の半導体層とは屈折率とバンドギャップエネルギーが異なる第2の半導体層とを前記第1の半導体層で始め、前記第1の半導体層で終端するよう交互に積層した第1の反射多層膜層と、前記第2の半導体層と屈折率およびバンドギャップエネルギーが同じ材料かつ前記第2の半導体層よりも多量のp型不純物を含む第3の半導体層と、前記第2の半導体層と屈折率およびバンドギャップエネルギーが同じ材料かつ前記第3の半導体層のp型不純物濃度に匹敵するほどの多量のn型不純物を含む第4の半導体層とを積層し、前記第3の半導体層と前記第4の半導体層との合計の膜厚が0よりは大きくかつ前記第2の半導体層の3倍以下の膜厚を有する第2の反射多層膜層と、n型不純物を含み前記第1の半導体層と同じ屈折率およびバンドギャップエネルギーを有する第5の半導体層とn型不純物を含み前記第2の半導体層と同じ屈折率およびバンドギャップエネルギーを有する第6の半導体層とを第5の半導体層から始め、第6の半導体層で終端するように交互に積層した第3の反射多層膜層とを積層した構造を有する半導体反射多層膜。
【請求項2】 n型不純物を含む第1の半導体層とn型不純物を含み前記第1の半導体層とは屈折率とバンドギャップエネルギーが異なる第2の半導体層とを前記第1の半導体層で始め、前記第1の半導体層で終端するよう交互に積層した第1の反射多層膜層と、前記第2の半導体層と屈折率およびバンドギャップエネルギーが同じ材料かつ前記第2の半導体層よりも多量のn型不純物を含む第3の半導体層と、前記第2の半導体層と屈折率およびバンドギャップエネルギーが同じ材料かつ前記第3の半導体層のn型不純物濃度に匹敵するほどの多量のp型不純物を含む第4の半導体層とを積層し、前記第3の半導体層と前記第4の半導体層との合計の膜厚が0よりは大きくかつ前記第2の半導体層の3倍以下の膜厚を有する第2の反射多層膜層と、p型不純物を含み前記第1の半導体層と同じ屈折率およびバンドギャップエネルギーを有する第5の半導体層とp型不純物を含み前記第2の半導体層と同じ屈折率およびバンドギャップエネルギーを有する第6の半導体層とを第5の半導体層から始め、第6の半導体層で終端するように交互に積層した第3の反射多層膜層とを積層した構造を有する半導体反射多層膜。
【請求項3】 p型不純物を含む第1の半導体層とp型不純物を含み前記第1の半導体層とは屈折率とバンドギャップエネルギーが異なる第2の半導体層とを前記第1の半導体層で始め、前記第2の半導体層で終端するよう交互に積層した第1の反射多層膜層と、前記第1の半導体層と屈折率およびバンドギャップエネルギーが同じ材料かつ前記第1の半導体層よりも多量のp型不純物を含む第3の半導体層と、前記第1の半導体層と屈折率およびバンドギャップエネルギーが同じ材料かつ前記第3の半導体層のp型不純物濃度に匹敵するほどの多量のn型不純物を含む第4の半導体層とを積層し、前記第3の半導体層と前記第4の半導体層との合計の膜厚が0よりは大きくかつ前記第1の半導体層の3倍以下の膜厚を有する第2の反射多層膜層と、n型不純物を含み前記第1の半導体層と同じ屈折率およびバンドギャップエネルギーを有する第5の半導体層とn型不純物を含み前記第2の半導体層と同じ屈折率およびバンドギャップエネルギーを有する第6の半導体層とを第6の半導体層から始め、第6の半導体層で終端するように交互に積層した第3の反射多層膜層とを積層した構造を有する半導体反射多層膜。
【請求項4】 n型不純物を含む第1の半導体層とn型不純物を含み前記第1の半導体層とは屈折率とバンドギャップエネルギーが異なる第2の半導体層とを前記第1の半導体層で始め、前記第2の半導体層で終端するよう交互に積層した第1の反射多層膜層と、前記第1の半導体層と屈折率およびバンドギャップエネルギーが同じ材料かつ前記第1の半導体層よりも多量のn型不純物を含む第3の半導体層と、前記第1の半導体層と屈折率およびバンドギャップエネルギーが同じ材料かつ前記第3の半導体層のn型不純物濃度に匹敵するほどの多量のp型不純物を含む第4の半導体層とを積層し、前記第3の半導体層と前記第4の半導体層との合計の膜厚が0よりは大きくかつ前記第1の半導体層の3倍以下の膜厚を有する第2の反射多層膜層と、p型不純物を含み前記第1の半導体層と同じ屈折率およびバンドギャップエネルギーを有する第5の半導体層とp型不純物を含み前記第2の半導体層と同じ屈折率およびバンドギャップエネルギーを有する第6の半導体層とを第6の半導体層から始め、第6の半導体層で終端するように交互に積層した第3の反射多層膜層とを積層した構造を有する半導体反射多層膜。
【請求項5】 第1の反射多層膜層内の第1の半導体層のうちある任意の一つを除いて他の膜厚が等しいかまたは第2の半導体層のうちある任意の一つを除いて他の膜厚が等しく、または第3の反射多層膜層内の第5の半導体層のうちある任意の一つを除いて他の膜厚が等しいかまたは第6の半導体層のうちある任意の一つを除いて他の膜厚が等しい構造を有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の半導体反射多層膜。
【請求項6】 第1の半導体層の半導体がAly Ga1-y P(1≧y>0.5)であり、第2の半導体層の半導体がGax Al1-x P(1≧x>0.5) であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の半導体反射多層膜。
【請求項7】 請求項1から6のいずれかに記載の半導体反射多層膜を有し、さらに第1の反射多層膜層が半導体基板の上に積層され、前記半導体基板に接して第1の電極が積層され、第3の反射多層膜層に接して第2の電極が積層された構造を有する反射型空間光変調器。
【請求項8】 p型不純物を含む第1の半導体層とp型不純物を含み前記第1の半導体層とは屈折率とバンドギャップエネルギーが異なる第2の半導体層とを前記第1の半導体層で始め、前記第1の半導体層で終端するよう交互に積層した第1の反射多層膜層と、前記第2の半導体層と屈折率およびバンドギャップエネルギーが同じ材料かつ前記第2の半導体層よりも多量のp型不純物を含む第3の半導体層と、前記第1の半導体層と屈折率およびバンドギャップエネルギーが同じ材料かつ前記第3の半導体層のp型不純物濃度に匹敵するほどの多量のn型不純物を含む第4の半導体層とを積層した第2の反射多層膜層と、n型不純物を含み前記第2の半導体層と同じ屈折率およびバンドギャップエネルギーを有する第5の半導体層とn型不純物を含み前記第1の半導体層と同じ屈折率およびバンドギャップエネルギーを有する第6の半導体層とを第5の半導体層から始め、第5の半導体層で終端するように交互に積層した第3の反射多層膜層とを積層した構造を有する半導体反射多層膜。
【請求項9】 n型不純物を含む第1の半導体層とn型不純物を含み前記第1の半導体層とは屈折率とバンドギャップエネルギーが異なる第2の半導体層とを前記第1の半導体層で始め、前記第1の半導体層で終端するよう交互に積層した第1の反射多層膜層と、前記第2の半導体層と屈折率およびバンドギャップエネルギーが同じ材料かつ前記第2の半導体層よりも多量のn型不純物を含む第3の半導体層と、前記第1の半導体層と屈折率およびバンドギャップエネルギーが同じ材料かつ前記第3の半導体層のn型不純物濃度に匹敵するほどの多量のp型不純物を含む第4の半導体層とを積層した第2の反射多層膜層と、p型不純物を含み前記第2の半導体層と同じ屈折率およびバンドギャップエネルギーを有する第5の半導体層とp型不純物を含み前記第1の半導体層と同じ屈折率およびバンドギャップエネルギーを有する第6の半導体層とを第5の半導体層から始め、第5の半導体層で終端するよう交互に積層した第3の反射多層膜層とを積層した構造を特徴とする反射多層膜。
【請求項10】 第1の反射多層膜層内の第1の半導体層のうちある任意の一つを除いて他の膜厚が等しいかまたは第2の半導体層のうちある任意の一つを除いて他の膜厚が等しく、または第3の反射多層膜層内の第5の半導体層のうちある任意の一つを除いて他の膜厚が等しいかまたは第6の半導体層のうちある任意の一つを除いて他の膜厚が等しい構造を有することを特徴とする請求項8または9記載の半導体反射多層膜。
【請求項11】 第1の半導体層の半導体がAly Ga1-y P(1≧y>0.5)であり、第2の半導体層の半導体がGax Al1-x P(1≧x>0.5)であることを特徴とする請求項8から10のいずれかに記載の半導体反射多層膜。
【請求項12】 請求項8から11のいずれかに記載の半導体反射多層膜を有し、さらに第1の反射多層膜層が半導体基板の上に積層され、前記半導体基板に接して第1の電極が積層され、第2の反射多層膜層に接して第2の電極が積層された構造を有する反射型空間光変調器。
【請求項13】 n型不純物を多量に含む第1の半導体層とp型不純物を多量に含み前記第1の半導体層とは屈折率とバンドギャップエネルギーが異なる第2の半導体層とを交互に積層した構造を有する半導体反射多層膜。
【請求項14】 第1の半導体層の半導体と第2の半導体層の半導体のヘテロバンド構造として、前記第1の半導体層の半導体の伝導帯底が、前記第2の半導体層の半導体の伝導帯底よりもエネルギー的に下に位置し、かつ前記第1の半導体層の半導体の価電子帯頂上が、前記第2の半導体層の半導体の価電子帯頂上よりも下に位置する構造であることを特徴とする請求項13記載の半導体反射多層膜。
【請求項15】 各層の積層方向に対して平行に電界が印加されることによって、第2の半導体層の半導体の価電子帯頂上が第1の半導体層の半導体の伝導帯底よりも上に位置するか、またはそれに近い状態に変化する多層膜であることを特徴とする請求項13または14記載の半導体反射多層膜。
【請求項16】 第1の半導体層の半導体がAly Ga1-y P(1≧y>0.5)であり、第2の半導体層の半導体がGax Al1-x P(1≧x>0.5)であることを特徴とする請求項13から15のいずれかに記載の半導体反射多層膜。
【請求項17】 請求項13から16のいずれかに記載の半導体反射多層膜を有し、さらに前記半導体反射多層膜の最下位の第1の半導体層が半導体基板の上に積層され、前記半導体基板に接して第1の電極が積層され、前記半導体反射多層膜の最上位の第2の半導体層に接して第2の電極が積層された構造を有する反射型空間光変調器。
【請求項18】 半導体基板がp−GaPであることを特徴とする請求項7または12または17記載の反射型空間光変調器。

【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図8】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【特許番号】特許第3369778号(P3369778)
【登録日】平成14年11月15日(2002.11.15)
【発行日】平成15年1月20日(2003.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−64277
【出願日】平成7年3月23日(1995.3.23)
【公開番号】特開平8−262379
【公開日】平成8年10月11日(1996.10.11)
【審査請求日】平成12年3月13日(2000.3.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【参考文献】
【文献】特開 平7−15093(JP,A)