説明

半導体回路の作製方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、薄膜トランジスタ(TFT)、薄膜ダイオード等の薄膜状の半導体素子を複数個有する半導体回路およびその作製方法に関するものである。特に本発明は、結晶性の半導体材料を用いる薄膜トランジスタ素子と、アモルファス状態の半導体材料を用いる薄膜ダイオード素子を組み合わせた半導体回路(例えば、集積化イメージセンサー回路)およびその作製方法に関する。本発明によって作製される半導体回路は、ガラス等の絶縁基板上、単結晶シリコン等の半導体基板上、いずれにも形成される。
【0002】
【従来の技術】薄膜トランジスタ、薄膜ダイオード等の薄膜半導体素子は、使用されるシリコンの種類によって、アモルファス系素子と結晶系素子に分かれていた。アモルファスシリコンは電界効果移動度や導電率等の物性で結晶性シリコンに劣るので、高い動作特性を得るには結晶系の半導体素子が求められていた。一方、アモルファス半導体は、一般に光導電率の変化が大きいので光センサー等に使用できることが知られていた。そして、最近では、アモルファスシリコンダイオードを用いた光センサーを、高速動作が可能な結晶系シリコンを用いた薄膜トランジスタによって駆動する回路(例えば、集積化イメージセンサー回路)が提唱されている。
【0003】
【発明が解決しようする課題】従来のアモルファスシリコンダイオードと結晶シリコンTFTを組み合わせた回路の作製手順の例を図4に示す。ガラス基板60上に下地絶縁膜61を形成し、その上にアモルファスシリコン膜を形成して、これを600℃以上の温度で長時間アニールすることにより結晶化させ、パターニングして島状シリコン領域62を得る。そして、ゲイト絶縁膜63を形成し、さらに、ゲイト電極64N、64Pを形成する。(図4(A))
【0004】そして、公知のCMOS作製技術を使用してN型不純物領域65NとP型不純物領域65Pを形成する。この不純物導入工程においてはゲイト電極に対して自己整合的に不純物が導入される。不純物注入後は、レーザーアニール、熱アニール等の手段で不純物の活性化がおこなわれる。(図4(B))
【0005】次に、第1の層間絶縁物66を形成して、これにコンタクトホールを形成し、TFTのソース、ドレインに電極・配線67a、67b、67cおよびアモルファスシリコンダイオードの電極67dが形成される。(図4(C))
次に、P型、I型(真性)、N型のアモルファスシリコン膜68P、68I、68Nを順次積層して、これをパターニングし、ダイオードの接合部を形成する。(図4(D))
【0006】最後に、第2の層間絶縁物69を形成し、これにコンタクトホールを形成して、アモルファスシリコンダイオードの電極70を形成して、回路が完成する。(図4(E))
【0007】このような手順を要する従来の方法では、長時間の成膜が要求される(厚い)I層シリコン膜および層間絶縁物がそれぞれ2層も必要であるので、スループットが低下するという問題点を抱えていた。しかも、これらの成膜において使用されるプラズマCVD法、減圧CVD法では、メンテナンスのための装置のデッドタイムが大きく、これらの工程が余分に存在することは一層のスループット低下をもたらす。
【0008】また、結晶シリコンTFTに用いるシリコン膜の結晶化をおこなうにも600℃以上の温度が必要であり、かつ、その結晶化に24時間以上の長い時間が必要であったので、実際に量産する場合には、結晶化装置の設備がいくつも必要とされ、巨額の設備投資がコストに跳ね返ってくるという問題を抱えていた。本発明は、結晶シリコンTFTに用いるシリコン膜とアモルファスシリコンダイオードに用いるシリコン膜とを同時に形成し、かつ、層間絶縁物も1層のみとすることによって、上記の問題点を克服し、また、600℃以下の温度で、かつ、実質的に問題にならない程度の短時間でシリコン膜の結晶化をおこなう技術を提供する。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者の研究の結果、実質的にアモルファス状態のシリコン被膜に微量の触媒材料を添加することによって結晶化を促進させ、結晶化温度を低下させ、結晶化時間を短縮できることが明らかになった。触媒材料としては、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、白金(Pt)の単体、もしくはそれらの珪化物等の化合物が適している。具体的には、これらの元素を有する膜、粒子、クラスター等をアモルファスシリコン膜の下、もしくは上に密着して形成し、あるいはイオン注入法等の方法によってアモルファスシリコン膜中にこれらの元素を導入し、その後、これを適当な温度、典型的には580℃以下の温度で熱アニールすることによって結晶化させることができる。
【0010】さらに化学的気相成長法(CVD法)によってアモルファスシリコン膜を形成する際には原料ガス中に、また、スパッタリング等の物理的気相法でアモルファスシリコン膜を形成する際には、ターゲットや蒸着源等の成膜材料中に、これらの触媒材料を添加しておいてもよい。当然のことであるが、アニール温度が高いほど結晶化時間は短いという関係がある。また、ニッケル、鉄、コバルト、白金の濃度が大きいほど結晶化温度が低く、結晶化時間が短いという関係がある。本発明人の研究では、これらのうちの少なくとも1つの元素の濃度が1×1017cm-3以上存在することが望ましいことがわかった。
【0011】なお、上記触媒材料はいずれもシリコンにとっては好ましくない材料であるので、できるだけその濃度が低いことが望まれる。本発明人の研究では、これらの触媒材料の濃度は合計して1×1020cm-3を越えないことが望まれる。
【0012】さらに、注目すべき事柄は、このような触媒材料の存在しない領域では、全く結晶化を進行させることなく、アモルファス状態を維持できることである。例えば、通常、このような触媒材料を有しないアモルファスシリコンの結晶化は600℃以上の温度で開始されるが、580℃以下では全く進行しない。ただし、300℃以上の雰囲気ではアモルファスシリコン中のダングリングボンドを中和するのに必要な水素が離脱するので、良好な光感度を得るにはアニールは水素雰囲気でおこなわれることが望まれる。
【0013】本発明では、上記の触媒材料による結晶化の特徴を生かして、1層のアモルファスシリコン膜を形成して、一部を選択的に結晶化させて、結晶シリコンTFTに用い、アモルファス状態の部分をアモルファスシリコンダイオードとして用いることを特徴とする。この結果、例えば、従来であればTFTのソース、ドレイン電極と同じ層内に存在していたアモルファスシリコンダイオードの下方電極(図4中の67dに対応)を、TFTのゲイト電極よりも下層の配線で形成することが可能となるので、層間絶縁物も1層のみでよい。以下に実施例を用いて、より詳細に本発明を説明する。
【0014】
【実施例】〔実施例1〕 図1に本実施例の作製工程の断面図を示す。まず、基板(コーニング7059)10上にスパッタリング法によって厚さ2000Åの酸化珪素の下地膜11を形成した。さらに、タンタル、モリブテン、チタン、タングステン等の比較的耐熱性に優れた金属によって、アモルファスシリコンダイオードの電極12を形成した。そして、厚さ100〜500Å、例えば200Åの燐をドープされたN型のアモルファスシリコン膜13NをプラズマCVD法によって成膜し、これをパターニングした。続いて、プラズマCVD法によって、厚さ500〜1500Å、例えば1500Åの真性(I型)のアモルファスシリコン膜13Iを堆積した。連続して、スパッタリング法によって、厚さ5〜200Å、例えば20Åの珪化ニッケル膜(化学式NiSix 、0.4≦x≦2.5、例えば、x=2.0)14を図に示すように選択的に形成した。(図1(A))
【0015】そして、これを水素還元雰囲気下(好ましくは、水素の分圧が0.1〜1気圧)、500℃で4時間アニールして結晶化させた。この結果、珪化ニッケル膜14の下方のアモルファスシリコン膜は結晶化して結晶シリコン膜13aとなった。一方、珪化ニッケル膜の存在しなかった領域のシリコン膜はアモルファス状態のまま(13b)であった。その後、リフトオフ法によって、選択的に厚さ100〜500Å、例えば200Åのホウ素のドープされたP型アモルファスシリコン膜13Pを形成した。(図1(B))
【0016】次に得られたシリコン膜をフォトリソグラフィー法によってパターニングし、島状シリコン領域を形成した。さらに、スパッタリング法によって厚さ1000Åの酸化珪素膜15 をゲイト絶縁膜として堆積した。スパッタリングには、ターゲットとして酸化珪素を用い、スパッタリング時の基板温度は200〜400℃、例えば350℃、スパッタリング雰囲気は酸素とアルゴンで、アルゴン/酸素=0〜0.5、例えば0.1以下とした。引き続いて、減圧CVD法によって、厚さ6000〜8000Å、例えば6000Åのシリコン膜(0.1〜2%の燐を含む)を堆積した。なお、この酸化珪素とシリコン膜の成膜工程は連続的におこなうことが望ましい。そして、シリコン膜をパターニングして、ゲイト電極16N、16Pを形成した。(図1(C))
【0017】次に、プラズマドーピング法によって、シリコン領域にゲイト電極をマスクとして不純物(燐およびホウ素)を注入した。ドーピングガスとして、フォスフィン(PH3 )およびジボラン(B2 6 )を用い、前者の場合は、加速電圧を60〜90kV、例えば80kV、後者の場合は、40〜80kV、例えば65kVとした。ドース量は1×1015〜8×1015cm-2、例えば、燐を2×1015cm-2、ホウ素を5×1015とした。この結果、N型の不純物領域17N、P型の不純物領域17Pが形成された。なお、この不純物導入の際には、アモルファスシリコンダイオードには不純物が注入されないようにマスクすることが必要である。(図1(D))
【0018】その後、水素還元雰囲気中、500℃で4時間アニールすることによって、不純物を活性化させた。このとき、先に結晶化された領域14a(17Nおよび17Pを含む)にはニッケルが拡散しているので、このアニールによって再結晶化が容易に進行し、不純物領域17N、17Pが活性化した。一方、アモルファスシリコンダイオードの領域のシリコン中にはニッケルが存在しないので結晶化しなかった。続いて、厚さ6000Åの酸化珪素膜18を層間絶縁物としてプラズマCVD法によって形成し、これにコンタクトホールを形成して、金属材料、例えば、窒化チタンとアルミニウムの多層膜によってTFTの電極・配線19a、19b、19c、ダイオードの電極・配線19d、19eを形成した。最後に、1気圧の水素雰囲気で350℃、30分のアニールをおこなった。以上の工程によって半導体回路が完成した。(図1(E))
【0019】本工程では、図から明らかなようにシリコン膜(ただし、N型シリコン層、P型シリコン層を除く)、層間絶縁物を共に1層とすることができた。その結果、成膜プロセスは大きく削減された。また、TFTの活性領域およびダイオードのI層のニッケルの濃度を2次イオン質量分析(SIMS)法によって測定したところ、前者は1×1018〜5×1018cm-3、後者は測定限界(1×1016cm-3)以下であった。
【0020】〔実施例2〕 図2に本実施例の作製工程の断面図を示す。基板(コーニング7059)20上にスパッタリングによって厚さ2000Åの酸化珪素の下地膜21を形成した。さらに、厚さ500〜2000Å、例えば1000Åのクロム被膜および厚さ100〜500ÅのN型のアモルファスシリコン被膜を堆積し、これをパターニングして、ダイオードの電極22およびN層23Nを形成した。さらに、プラズマCVD法によって、厚さ500〜1500Å、例えば1500Åのアモルファスシリコン膜24を堆積した。そして、アモルファスシリコン膜24をフォトレジスト25でマスクして、イオン注入法によって選択的にニッケルイオンを注入し、ニッケルが1×1018〜2×1019cm-3、例えば、5×1018cm-3だけ含まれるような領域26を作製した。
【0021】この領域26の深さは200〜1500Åとし、加速エネルギーはそれに合わせて最適なものを選択した。また、TFTにおいてチャネル形成領域となるべき領域にはニッケルが注入されないようにした。ただし、チャネル長は20μm以下、好ましくは10μm以下とした。それ以上のチャネル長ではチャネル形成領域全体を結晶化させることができなかった。(図2(A))
【0022】そして、これを0.1〜1気圧の水素雰囲気下、550℃で8時間アニールして結晶化させた。この結晶化工程によって、ニッケルの注入された領域はもちろん、その領域に挟まれた領域やその周囲(図2(B)において24aで示す)も結晶化した。550℃、8時間のアニールでは横方向に約10μmの結晶化が進行した。一方、ニッケルが注入されなかった領域24bはアモルファス状態のままであった。結晶化工程後、リフトオフ法によって、100〜500Å、例えば200ÅのP型のアモルファスシリコン膜23Pおよびその上に密着して、厚さ500〜1000Å、例えば800Åのインジウム錫酸化膜(ITO)27を形成した。(図2(B))
【0023】その後、このシリコン膜24をパターニングして、島状シリコン領域28を形成した。さらに、テトラ・エトキシ・シラン(Si(OC2 5 4 、TEOS)と酸素を原料として、プラズマCVD法によってゲイト絶縁膜として、厚さ1000Åの酸化珪素29を形成した。原料には、上記ガスに加えて、トリクロロエチレン(C2 HCl3 )を用いた。成膜前にチャンバーに酸素を400SCCM流し、基板温度300℃、全圧5Pa、RFパワー150Wでプラズマを発生させ、この状態を10分保った。その後、チャンバーに酸素300SCCM、TEOSを15SCCM、トリクロロエチレンを2SCCMを導入して、酸化珪素膜の成膜をおこなった。基板温度、RFパワー、全圧は、それぞれ300℃、75W、5Paであった。成膜完了後、チャンバーに100Torrの水素を導入し、350℃で35分の水素アニールをおこなった。
【0024】引き続いて、スパッタリング法によって、厚さ6000〜8000Å、例えば6000Åのアルミニウム膜(2%のシリコンを含む)を堆積した。なお、この酸化珪素29とアルミニウム膜の成膜工程は連続的におこなうことが望ましい。そして、アルミニウム膜をパターニングして、TFTのゲイト電極30N、30Pを形成した。さらに、このアルミニウム配線の表面を陽極酸化して、表面に酸化物層31N、31Pを形成した。陽極酸化は、酒石酸の1〜5%エチレングリコール溶液中でおこなった。得られた酸化物層の厚さは2000Åであった。(図2(C))
【0025】次に、プラズマドーピング法によって、シリコン領域に不純物(燐)を注入した。ドーピングガスとして、フォスフィン(PH3 )を用い、加速電圧を60〜90kV、例えば80kVとした。ドース量は1×1015〜8×1015cm-2、例えば、2×1015cm-2とした。このようにしてN型の不純物領域33Nを形成した。さらに、今度は左側のTFT(Nチャネル型TFT)のみをフォトレジストでマスクして、再び、プラズマドーピング法で右側のTFT(PチャネルTFT)のシリコン領域に不純物(ホウ素)を注入した。ドーピングガスとして、ジボラン(B2 6 )を用い、加速電圧を50〜80kV、例えば65kVとした。ドース量は1×1015〜8×1015cm-2、例えば、先に注入された燐より多い5×1015cm-2とした。このようにしてP型の不純物領域33Pを形成した。実施例1と同様、この不純物ドーピングの際に、ダイオード領域に不純物が注入されることは好ましくないので、マスクしておくことが必要である。
【0026】その後、レーザーアニール法によって不純物の活性化をおこなった。レーザーとしてはKrFエキシマーレーザー(波長248nm、パルス幅20nsec)を用いたが、その他のレーザー、例えば、XeFエキシマーレーザー(波長353nm)、XeClエキシマーレーザー(波長308nm)、ArFエキシマーレーザー(波長193nm)等を用いてもよい。レーザーのエネルギー密度は、200〜400mJ/cm2 、例えば250mJ/cm2 とし、1か所につき2〜10ショット、例えば2ショット照射した。レーザー照射時に、基板を200〜450℃程度に加熱してもよい。基板を加熱した場合には最適なレーザーエネルギー密度が変わることに注意しなければならない。なお、レーザー照射時にはダイオード領域がレーザーによって結晶化するのを防止するためにフォトレジストのマスク32によってダイオード領域をマスクした。この結果、不純物領域33N、33Pが活性化された。(図2(D))
【0027】続いて、層間絶縁物として厚さ2000Åの酸化珪素膜34をTEOSを原料とするプラズマCVD法によって形成し、これにコンタクトホールを形成して、金属材料、例えば、窒化チタンとアルミニウムの多層膜によってTFTのソース、ドレイン電極・配線35a、35b、35cおよびダイオードの電極・配線35dを形成した。以上の工程によって半導体回路が完成した。(図2(E))
【0028】作製されたTFTの特性は従来の600℃のアニールによって結晶化する工程によって作製されたものとは何ら劣るところはなかった。例えば、本実施例によって作成したシフトレジスタは、ドレイン電圧15Vで11MHz、17Vで16MHzの動作を確認できた。また、信頼性の試験においても従来のものとの差を見出せなかった。
【0029】〔実施例3〕 図3に本実施例の作製工程の断面図を示す。基板(コーニング7059)40上にスパッタリング法によって厚さ2000Åの酸化珪素の下地膜41を形成した。さらに、厚さ500〜2000Å、例えば1000Åのクロム被膜および厚さ100〜500ÅのN型のアモルファスシリコン被膜によってダイオードの電極42およびN層43Nを形成した。さらに、プラズマCVD法によって、厚さ500〜1500Å、例えば1500Åの実質的に真性なアモルファスシリコン膜44を堆積した。そして、アモルファスシリコン膜44をフォトレジスト45でマスクして、イオン注入法によって選択的にニッケルイオンを注入し、ニッケルが1×1018〜2×1019cm-3、例えば、5×1018cm-3だけ含まれるような領域46を作製した。(図3R>3(A))
【0030】そして、これを0.1〜1気圧の水素雰囲気下、550℃で8時間アニールして結晶化させた。この結晶化工程によって、ニッケルの注入された領域はもちろん、その領域に挟まれた領域やその周囲も結晶化した(図3(B)において44aで示す)。一方、ニッケルが注入されなかった領域44bはアモルファス状態のままであった。結晶化工程後、リフトオフ法によって、100〜500Å、例えば200ÅのP型のアモルファスシリコン膜43Pおよびその上に密着して、厚さ500〜1000Å、例えば800Åのインジウム錫酸化膜(ITO)47を形成した。(図3(B))
【0031】その後、このシリコン膜をパターニングして、島状結晶シリコン領域48aおよびアモルファスシリコン領域48bを形成した。さらに、TEOSと酸素を原料として、プラズマCVD法によってゲイト絶縁膜として、厚さ1000Åの酸化珪素49を形成した。
【0032】引き続いて、スパッタリング法によって、厚さ6000〜8000Å、例えば6000Åのアルミニウム膜(2%のシリコンを含む)を堆積した。そして、アルミニウム膜をパターニングして、TFTのゲイト電極50N、50Pを形成した。さらに、このアルミニウム配線の表面を陽極酸化して、表面に酸化物層51N、51Pを形成した。得られた酸化物層の厚さは2000Åであった。(図3(C))
【0033】次に、実施例2に示したようにプラズマドーピング法によって、シリコン領域に不純物(燐およびホウ素)を注入し、N型の不純物領域33NとP型の不純物領域33Pを形成した。実施例1と同様、この不純物ドーピングの際に、ダイオード領域に不純物が注入されることは好ましくないので、マスクしておくことが必要である。
【0034】その後、レーザーアニール法によって不純物の活性化をおこなった。実施例2とは異なり裏面からレーザー光を照射した。基板を透過する必要から、レーザーとしてはXeFエキシマーレーザー(波長353nm、パルス幅40nsec)を用いたが、基板材料に応じて、その他のレーザー、例えば、KrFエキシマーレーザー(波長248nm)、XeClエキシマーレーザー(波長308nm)、ArFエキシマーレーザー(波長193nm)等を用いてもよい。レーザーのエネルギー密度は、200〜400mJ/cm2 、例えば250mJ/cm2 とし、1か所につき2〜10ショット、例えば2ショット照射した。本実施例のように裏面からレーザーを照射する場合には、電極42によってレーザー光が遮られるのでダイオード領域はレーザーによって結晶化しない。(図3(D))
【0035】続いて、層間絶縁物として厚さ2000Åの酸化珪素膜54をTEOSを原料とするプラズマCVD法によって形成し、これにコンタクトホールを形成して、金属材料、例えば、窒化チタンとアルミニウムの多層膜によってTFTのソース、ドレイン電極・配線55a、55b、55cおよびダイオードの電極・配線55dを形成した。最後に0.1〜1気圧の水素雰囲気、350℃で30分の水素化をおこなった。以上の工程によって半導体回路が完成した。(図3(E))
【0036】
【発明の効果】本発明によって、結晶性シリコンTFTとアモルファスシリコンダイオードを有する半導体回路を作製するプロセスを削減し、量産性を高めることができた。また、本発明は、例えば、500℃というような低温、かつ、4時間という短時間でシリコンの結晶化をおこなうことによっても、スループットを向上させることができる。加えて、従来、600℃以上のプロセスを採用した場合にはガラス基板の縮みやソリが歩留り低下の原因として問題となっていたが、本発明を利用することによってそのような問題点は一気に解消してしまう。
【0037】このことは、大面積の基板を一度に処理できることを意味するものである。すなわち、大面積基板を処理することによって、1枚の基板から多くの集積回路等を切りだすことによって単価を大幅に低下させることができる。このように本発明は工業上有益な発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1の作製工程断面図を示す。
【図2】 実施例2の作製工程断面図を示す。
【図3】 実施例3の作製工程断面図を示す。
【図4】 従来の作製工程例(断面図)を示す。
【符号の説明】
10・・・基板
11・・・下地絶縁膜(酸化珪素)
12・・・アモルファスシリコンダイオードの電極
13・・・アモルファスシリコン膜
14・・・珪化ニッケル膜
15・・・ゲイト絶縁膜(酸化珪素)
16・・・ゲイト電極(燐ドープされたシリコン)
17・・・ソース、ドレイン領域
18・・・層間絶縁物
19・・・金属配線・電極(窒化チタン/アルミニウム)

【特許請求の範囲】
【請求項1】基板上にアモルファス状態のシリコン膜を形成する第1の工程と、前記シリコン膜に選択的にニッケル、鉄、コバルト、白金の少なくとも1つを導入する第2の工程と、前記シリコン膜を580℃以下の温度でアニールすることによって、前記ニッケル、鉄、コバルト、白金の少なくとも1つが導入された第1の領域のシリコン膜を選択的に結晶化させる第3の工程と、前記第3の工程において結晶化しなかった第2の領域シリコン膜上に選択的にP型もしくはN型のシリコン膜を形成する第4の工程と、前記第1の領域のシリコン膜及び前記第2の領域のシリコン膜上に絶縁被膜と前記絶縁被膜上に導電性材料によって配線を形成する第5の工程とを有することを特徴とする半導体回路の作製方法。
【請求項2】基板上にアモルファス状態のシリコン膜と前記シリコン膜に密着して選択的にニッケル、鉄、コバルト、白金の少なくとも1つを有する材料とを形成する第1の工程と、前記シリコン膜を580℃以下の温度でアニールすることによって、前記ニッケル、鉄、コバルト、白金の少なくとも1つを有する材料が密着した第1の領域のシリコン膜を中心として選択的に結晶化させる第2の工程と、前記第2の工程において結晶化しなかった第2の領域シリコン膜上に選択的にP型もしくはN型のシリコン膜を形成する第3の工程と、前記第1の領域のシリコン膜及び前記第2の領域のシリコン膜上に絶縁被膜と前記絶縁被膜上に導電性材料によって配線を形成する第4の工程とを有することを特徴とする半導体回路の作製方法。
【請求項3】請求項又はにおいて、前記基板は、ガラス又は単結晶シリコンであることを特徴とする半導体回路の作製方法。
【請求項4】請求項又はにおいて、前記基板は、絶縁基板であることを特徴とする半導体回路の作製方法。
【請求項5】請求項又はにおいて、前記基板は、半導体基板であることを特徴とする半導体回路の作製方法。
【請求項6】請求項又はにおいて、前記絶縁被膜は、TEOSを用いて形成されたことを特徴とする半導体回路の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】特許第3433966号(P3433966)
【登録日】平成15年5月30日(2003.5.30)
【発行日】平成15年8月4日(2003.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−79003
【出願日】平成5年3月12日(1993.3.12)
【公開番号】特開平6−268185
【公開日】平成6年9月22日(1994.9.22)
【審査請求日】平成12年3月7日(2000.3.7)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【参考文献】
【文献】特開 平5−48065(JP,A)
【文献】特開 平1−217966(JP,A)
【文献】特開 平5−63172(JP,A)
【文献】特開 平6−275807(JP,A)
【文献】特開 平6−275805(JP,A)
【文献】特開 昭63−142807(JP,A)