説明

半導体基板の洗浄乾燥装置及び洗浄乾燥方法

【課題】遠心分離による半導体基板の洗浄乾燥時において半導体基板表面にウォータマークが形成されないようにする。
【解決手段】回転盤11と共に回転する半導体基板12に洗浄水Wを吹き付ける洗浄ノズル20、21を備え、回転盤11及び洗浄ノズル20、21は開閉可能な上カバー4を有するチャンバ2内に設置し、上カバー4には半導体基板12に窒素ガスN2を吹き付ける窒素ガス供給ノズル22を設け、チャンバ2内に窒素ガスN2を充満・増圧させた状態で半導体基板12を洗浄乾燥させる。又、窒素ガスN2は半導体基板12の上面中央部に吹き付け可能とし、窒素ガスN2の圧力又は流速は可変調整可能にする。更に、チャンバ2の下底部には開度調整可能な開閉弁6付きのドレーン5を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体基板の洗浄乾燥装置及び洗浄乾燥装方法に関するものであり、特に、遠心分離作用を利用した洗浄乾燥時において半導体基板の表面にウォータマークが形成されないようにした半導体基板の洗浄乾燥装置及び洗浄乾燥装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、CMP装置等の研磨装置により研磨された半導体基板は、1次洗浄処理を実施した後に、洗浄乾燥装置に搬送して洗浄表面に付着している洗浄水などを除去すべく2次洗浄(リンス)及び乾燥(以下、「洗浄乾燥」という。)処理を実施している。即ち、洗浄水により半導体基板表面を1次洗浄した後、更に、半導体基板を回転(スピン)させながら洗浄乾燥を実施している。例えば、スピン乾燥方式では、半導体基板の表面にリンス液(例えば、超純水など)を供給して、半導体基板を回転させて洗浄水を遠心分離すると共に、洗浄水を蒸発により乾燥させる方法が多く採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平06−126264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来技術による洗浄乾燥では、遠心分離された微小な水玉が半導体基板表面と反応することにより、ウォータマークと呼ばれる水玉の残痕が半導体基板表面に形成される。特に、半導体基板の表面は、撥水性の材料(Low−k材料)により形成されているために、遠心力により分離されない微小な水玉が半導体基板表面に残存してウォータマークが形成され易い。このように半導体基板表面にウォータマークが形成されると、ウォータマークに塵埃が付着して、信号遅延(RC遅延)等が生じてデバイス性能を低下させるので、ウォータマークの形成を抑制することが大きな問題となっている。
【0004】
そこで、遠心分離による半導体基板の洗浄乾燥時において、半導体基板表面にウォータマークが形成されないようにするために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、半導体基板が保持される回転駆動可能な回転盤と、該回転盤により回転する半導体基板に洗浄水を吹き付ける洗浄ノズルとを備えた半導体基板洗浄乾燥装置において、前記回転盤及び洗浄ノズルはチャンバ内に設置されていると共に、該チャンバの上部には半導体基板に不活性ガスを吹き付けるための不活性ガス供給ノズルが設けられ、前記チャンバを密閉状態に保持して該チャンバ内に不活性ガスを充満して増圧させた状態で半導体基板を洗浄乾燥できるように構成してなる半導体基板洗浄乾燥装置を提供する。
【0006】
この構成によれば、半導体基板を洗浄乾燥するときは、先ず、チャンバ内の回転盤に半導体基板を保持した後にチャンバ内を密閉状態に保持する。そして、チャンバ内の回転盤を回転させると共に、回転状態の半導体基板に洗浄ノズルから洗浄水を吹き付けて、半導体基板を所定時間だけ洗浄する。
【0007】
次いで、半導体基板への洗浄水の供給を停止させた後、不活性ガス供給ノズルから半導体基板に不活性ガスを吹き付けながら、チャンバ内に不活性ガスを充満させて、チャンバ内の圧力を増大させる。
【0008】
従って、加圧状態で半導体基板の水分が遠心分離されるので、半導体基板表面の親水性が高くなる。その結果、半導体基板に付着している微小な水玉(水分)の表面張力が低下するため、即ち、微小な水玉が半導体基板表面の撥水性の材料と反応し難くなるため、微小な水玉が半導体基板の半径方向外方へ円滑に移動して遠心分離される。
【0009】
請求項2記載の発明は、上記不活性ガス供給ノズルから供給される不活性ガスは上記半導体基板の上面中央部に吹き付けられるように構成してなる請求項1記載の半導体基板洗浄乾燥装置を提供する。
【0010】
この構成によれば、遠心分離効果の小さい半導体基板の上面中央部に微小な水玉が付着していても、該水玉は不活性ガスの吹き付け作用に除去され、且つ、不活性ガスの加圧力により水分の表面張力の低下作用が促進されるので、不活性ガスが半導体基板の上面中央部に残存することはない。
【0011】
請求項3記載の発明は、上記不活性ガス供給ノズルから供給される不活性ガスの圧力と流速の双方又は一方は調整可能である請求項1又は2記載の半導体基板洗浄乾燥装置を提供する。
【0012】
この構成によれば、不活性ガスの圧力と流速の双方又は一方を可変調整することにより、チャンバ内の圧力が洗浄乾燥条件に応じた適正値に自由に設定変更される。
【0013】
請求項4記載の発明は、上記チャンバの下底部には開閉弁付きのドレーンが設けられ、且つ、該開閉弁の開度は調整可能に形成されている請求項1記載の半導体基板洗浄乾燥装置を提供する。
【0014】
この構成によれば、ドレーンに設けた開閉弁の開度を可変調整することにより、チャンバ内への不活性ガスの供給に伴ってチャンバの内部圧力が変化するため、該内部圧力の変化特性が自由に変更される。
【0015】
請求項5記載の発明は、チャンバ内で回転駆動される回転盤に保持された半導体基板を回転させながら、半導体基板の洗浄及び乾燥を実施する半導体基板洗浄乾燥方法であって、チャンバ内の回転盤に半導体基板を保持した後に、チャンバ内を密閉状態に設定して回転盤を回転させると共に、回転状態の半導体基板に洗浄ノズルから洗浄水を吹き付けて洗浄する工程と、前記洗浄工程の終了後に、半導体基板への洗浄水の供給を停止させて、不活性ガス供給ノズルから半導体基板に不活性ガスを吹き付けながらチャンバ内に不活性ガスを充満させてチャンバ内の圧力を増大させる工程を含み、前記チャンバ内に不活性ガスを充満して増圧させた状態で半導体基板を洗浄乾燥させる半導体基板洗浄乾燥方法を提供する。
【0016】
この方法によれば、半導体基板を洗浄乾燥するときは、先ず、チャンバ内の回転盤に半導体基板を保持した後、チャンバ内を密閉状態に設定する。そして、チャンバ内の回転盤を回転させると共に、回転状態の半導体基板に洗浄ノズルから洗浄水を吹き付けて、半導体基板を所定時間だけ洗浄する。
【0017】
次いで、半導体基板への洗浄水の供給を停止させた後、不活性ガス供給ノズルから半導体基板に不活性ガスを吹き付けながら、チャンバ内に不活性ガスを充満させてチャンバ内の圧力を増大させる。
【0018】
従って、加圧状態で半導体基板の水分が遠心分離されるので、半導体基板に付着してい
る微小な水玉(水分)の表面張力が低下するため、微小な水玉が半導体基板の半径方向外方へ容易に移動して遠心分離される。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の発明は、チャンバ内を不活性ガスの充満により増圧させて遠心分離を実施することにより、半導体基板表面上における水玉の表面張力が低下するため、従来困難であった微小な水玉の遠心分離が可能になる。斯くして、半導体基板表面上にてウォータマークが形成されなくなり、該ウォータマークに起因する信号遅延などが解消されてデバイス性能を向上させることができる。
【0020】
請求項2記載の発明は、半導体基板の上面中央部に微小な水玉が付着していても、不活性ガスの加圧力により水分の表面張力の低下作用が一層増大するので、請求項1記載の発明の効果に加えて、半導体基板の上面中央部におけるウォータマークの発生を効果的に抑制することができる。
【0021】
請求項3記載の発明は、チャンバ内の圧力は洗浄乾燥条件に応じて任意に設定できるので、請求項1又は2記載の発明の効果に加えて、種類の異なる半導体基板に対して、チャンバ内の圧力を迅速かつ最適値に容易に変更でき、洗浄乾燥効果を一層向上させることができる。
【0022】
請求項4記載の発明は、ドレーンの開閉弁の開度調整により、チャンバ内への不活性ガスの供給に伴うチャンバの内圧変化を自由に変更できるので、請求項1記載の発明の効果に加えて、所望の圧力変化特性を容易に得ることができる。又、チャンバ内への不活性ガスの供給によって、チャンバの内圧が適正値に達した後は、ドレーンからチャンバ内の気体が自動的に排出させることができるため、チャンバの内圧を適正値に常に維持することができる。
【0023】
請求項5記載の発明は、チャンバ内を不活性ガスの充満により増圧させて遠心分離を実施することにより、半導体基板表面上における水玉の表面張力が低下して、従来困難であった微小な水玉の遠心分離が可能になる。斯くして、半導体基板表面上にてウォータマークが形成されなくなり、半導体基板のデバイス性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、遠心分離による半導体基板の洗浄乾燥時において半導体基板表面にウォータマークが形成されないようにするという目的を達成するため、半導体基板が保持される回転駆動可能な回転盤と、該回転盤により回転する半導体基板に洗浄水を吹き付ける洗浄ノズルとを備えた半導体基板洗浄乾燥装置において、前記回転盤及び洗浄ノズルはチャンバ内に設置されていると共に、チャンバの上部には半導体基板に不活性ガスを吹き付けるための不活性ガス供給ノズルが設けられ、前記チャンバを密閉状態に保持して該チャンバ内に不活性ガスを充満して増圧させた状態で半導体基板を洗浄乾燥することによって実現した。
【0025】
本発明では、チャンバを密封して形成して成る内部空間に半導体基板を投入し回転盤で回転させながら洗浄水を吹き付けて洗浄し、洗浄後、チャンバ内に不活性ガスを供給して内圧を増大させることにより、半導体基板表面における表面張力を低下させ、その状態でスピン乾燥して、半導体基板表面にウォータマークが形成されないようする。
【実施例】
【0026】
以下、本発明の好適な一実施例を図1乃至図5に従って説明する。本実施例では、CMP装置により研磨された半導体基板は、1次洗浄処理を実施した後に、洗浄表面に付着し
ている洗浄水が除去乾燥される。即ち、洗浄水により半導体基板表面を1次洗浄した後、半導体基板を回転させながら半導体基板の洗浄(リンス)乾燥が実施される。
【0027】
又、窒素ガスを密封状態のチャンバ内に供給しながら、所定の加圧状態の下に遠心分離を行うことにより、半導体基板上の水玉の表面張力が低下し、遠心分離作用によって半導体基板外周方向に水玉が移動する。この場合、微小な水玉が半導体基板上に残存することなく、半導体基板表面の水分が完全に除去乾燥される。
【0028】
更に、チャンバ内が窒素ガスで充満されるため、水玉の移動時に、遠心分離されない微小な水玉は、半導体基板表面の撥水性の材料と反応せず、水玉の残痕であるウォータマークが半導体基板表面に形成されなくなる。
【0029】
本実施例に係る半導体基板乾燥洗浄装置1の全体構成を図1に示す。同図に示すように、半導体基板乾燥洗浄装置1はチャンバ(密閉容器)2を備え、該チャンバ2は箱状の下ケース3と、該下ケース3の上部に気密に装着される上カバー4とから成る。
【0030】
従って、下ケース3に上カバー4を被着することにより、チャンバ2の内部空間は密閉状態に保持される。又、図2に示すように、下ケース3の側壁部3Aにおける最下部、即ち、下ケース3の下底部近傍には、所定の孔径を有するドレーン5が形成されていると共に、該ドレーン5の排出路には流量調整可能な開閉弁6が付設されている。この開閉弁6は制御手段7により電気的に自動制御されるが、手動にて弁開度や開閉時期などの動作条件を調整することも可能である。
【0031】
チャンバ2内には、図1に示すように、モータ8により駆動される鉛直軸9が設置され、鉛直軸9は支持部材10に回転自在に取り付けられている。鉛直軸9の上端部には円形状の回転盤11が一体に固着されている。回転盤11の外径は、半導体基板(ウェハ)12の外径よりも若干大径に設定されている。又、回転盤11の外周縁部にはチャック部(ワーク保持部)13が設けられ、該チャック部13により半導体基板12の外周部を着脱可能に保持することによって、回転盤12に半導体基板12が固定される。
【0032】
従って、チャック部13に半導体基板12を保持した後に、モータ8により鉛直軸9を回転駆動すると、半導体基板12は回転盤11と一体に回転する。また、回転盤11の回転速度は、制御手段7によってモータ8の回転数を調整することにより随時変更することができる。尚、チャック部13は回転盤11の上面から所定寸法だけ離間しているため、該チャック部13に半導体基板12を保持した状態では、半導体基板12と回転盤11の間には所定寸法の隙間Sが形成される。
【0033】
更に、チャンバ2内には洗浄水供給手段14が設けられ、該洗浄水供給手段14により半導体基板12に洗浄水(リンス液)Wが吹き付けられる。洗浄水供給手段14には、洗浄液供給路15を介して洗浄水タンク16が接続されていると共に、該洗浄液供給路15の途中には、制御手段7によって制御される流量調整器17及び圧力調整器18が設置されている。これら流量調整器17、圧力調整器18を介して自動又は手動により洗浄水Wの流速、水圧が可変調整される。
【0034】
又、洗浄水供給手段14の先端側部分には下部洗浄ノズル20及び上部洗浄ノズル21が設けられ、下部洗浄ノズル20及び上部洗浄ノズル21は、半導体基板12の上面及び下面に夫々近接して臨むように配設されている。従って、下部洗浄ノズル20及び上部洗浄ノズル21から噴射された洗浄水Wが、回転する半導体基板12に吹き付けられると、該半導体基盤12の上面及び下面の全域が洗浄されるように構成されている。
【0035】
又、上カバー4の中央部には窒素ガス供給ノズル22が取り付けられ、該窒素ガス供給ノズル22により半導体基板12に窒素ガスN2が吹き付けられる。窒素ガス供給ノズル22には、ガス供給路23を介して窒素ガス貯留タンク24が接続されていると共に、該ガス供給路23の途中には、制御手段7によって制御される流量調整器25及び圧力調整器26が設置されている。これら流量調整器25、圧力調整器26を介して自動又は手動により窒素ガスN2の流速、ガス圧が可変調整される。又、窒素ガス供給ノズル22の先端部は、半導体基板12上面の中央部に近接して臨むように配設されている。
【0036】
次に、図3乃至図5を参照しながら、半導体基板12を洗浄乾燥の手順について説明する。先ず、予め一次洗浄された研磨済みの半導体基板12は、半導体基板乾燥洗浄装置1のチャンバ2内に投入され、
図3に示すように、回転盤11上のチャック部13によって半導体基板12の外周部が保持固定される。これにより、半導体基板12は回転盤11と一体回転可能に取り付けられる。然る後、チャンバ2の下ケース3に上カバー4を気密に被着する。これにより、チャンバ2の内部空間が密閉状態に保持される。
【0037】
次に、図4に示すように、下部洗浄ノズル20及び上部洗浄ノズル21から洗浄水Wを半導体基板12の上面及び下面に夫々吹き付けると共に、モータ8によって鉛直軸9を回転駆動することにより、半導体基板12が回転盤11と一体に回転する。
【0038】
この場合、洗浄水供給手段14に供給される洗浄水Wの流速及び水圧は、必要により、制御手段7を介して流量調整器17及び圧力調整器18により調整される。斯くして、回転する半導体基板12の上下両面に洗浄水Wが吹き付けられることにより、半導体基板12全体が洗浄水Wによって洗浄される。その際、半導体基板12を洗浄した洗浄水Wは、遠心分離作用により半導体基板12の中央部から外周縁部に向かう半径方向外方へ移動して、チャンバ2の下底部に落下するが、落下した洗浄水Wはドレーン5から適宜外部に排出される。
【0039】
そして、所定時間だけ洗浄水Wにより半導体基板12を洗浄処理した後、下部洗浄ノズル20及び上部洗浄ノズル21からの洗浄水Wの供給が自動的に停止される。この後、図5に示すように、窒素ガス供給ノズル22から窒素ガスN2が噴射されることにより、半導体基板12の上面中央部に窒素ガスN2が吹き付けられる。
【0040】
この場合、窒素ガス供給ノズル22に供給される窒素ガスN2の流速及びガス圧は、必要により、制御手段7を介して流量調整器25圧力調整器26により可変調整される。斯くして、回転する半導体基板12の上面に窒素ガスN2が吹き付けられることにより、チャンバ2の内部空間が窒素ガスN2によって充満される。そして、充満後も窒素ガスN2が継続してチャンバ2内に供給され、これにより、チャンバ2の内部空間が所定の加圧状態に設定される。
【0041】
従って、回転状態の半導体基板12上面に所定圧の窒素ガスN2が吹き付けられた状態で、半導体基板12表面に付着していた水分(水玉)は、半導体基板12の回転数に応じた遠心力により、半導体基板12の中央部から半径方向外方へ水分が移動分離し、半導体基板12の表面が効果的に乾燥される。
【0042】
この遠心分離における回転、処理時間などの処理条件は、半導体基板12のサイズ、洗浄水Wの性状又はチャンバ2内の温度などにより異なる。実験によれば、半導体基板12の回転数を1000〜1200rpm、遠心分離時間を30秒に設定して洗浄乾燥を実施したところ、半導体基板12表面にウォータマークは形成されなかった。
【0043】
以上説明したように本実施例によれば、スピン乾燥方式において、密閉状態のもと半導体基板12の表面に洗浄水Wを供給しながら、半導体基板12を回転させ、所定時間経過後に窒素ガスN2を供給充満させることによって、洗浄水Wを遠心分離すると共に、洗浄水Wを蒸発により乾燥させることができる。斯くして、半導体基板12の洗浄乾燥時に、水分の表面張力が低下するため、半導体基板12表面にウォータマークが形成されなくなる。
【0044】
即ち、本実施例においては、先ず、チャンバ2内の回転盤11に半導体基板12を保持固定した後、上カバー4を閉鎖してチャンバ2内を密閉状態に設定する。そして、回転盤11を回転させると共に、回転状態の半導体基板12に洗浄ノズル20、21から洗浄水Wを吹き付けて、半導体基板12を所定時間だけ洗浄する。
【0045】
次いで、半導体基板12への洗浄水Wの供給を停止させた後、窒素ガス供給ノズル22から半導体基板12に窒素ガスN2を吹き付けながら、チャンバ2内に窒素ガスN2を充満させて、チャンバ2内の圧力を増大させる。
【0046】
従って、加圧状態で半導体基板12の水分が遠心分離されるので、半導体基板12に付着している微小な水玉(水分)の表面張力が大幅に低下する。また、チャンバ2内における窒素ガスN2の増圧効果に付随して酸素の分圧が小さくなり、水玉の表面張力が一層低下する。この結果、微小な水玉が半導体基板12表面と反応し難くなるため、従来のスピン乾燥方式と異なり、微小な水玉が半導体基板12の半径方向外方へ円滑に移動して遠心分離される。
【0047】
斯くして、従来除去困難であった微小な水玉の遠心分離が可能になる。半導体基板12表面上にてウォータマークが形成されなくなり、信号遅延などが解消されてデバイス性能が向上し、半導体基板12の歩留りが改善される。
【0048】
又、半導体基板12の上面中央部、即ち、遠心分離効果が発揮され難い箇所に微小な水玉が付着していても、該水玉は窒素ガスN2の吹き付け作用により除去され、且つ、窒素ガスN2の加圧力により水分の表面張力の低下作用が顕著になるので、窒素ガスN2が半導体基板12の上面中央部に残存することはない。従って、半導体基板12の上面中央部におけるウォータマークの発生が効果的に抑制される。
【0049】
更に、窒素ガスN2の圧力又は流速の少なくとも一方を可変調整することにより、チャンバ2内の圧力は、洗浄乾燥条件に応じた適正値に自由に設定変更される。従って、種類の異なる半導体基板12を洗浄乾燥する場合でも、チャンバ2内の圧力を迅速かつ最適値に容易に変更でき、洗浄乾燥効果が一層向上する。
【0050】
更に又、ドレーン5に設けた開閉弁6の開度を可変調整することにより、チャンバ2内への窒素ガスN2の供給に伴うチャンバ2内の圧力の変化が自由に変更される。そのため、所望の圧力変化特性が容易に得られる。この場合、窒素ガスN2の供給によってチャンバ2の内圧が所定値に達した後は、ドレーン5からチャンバ2内の気体が自動的に排出されるため、チャンバ2の内圧は所定値に維持される(作動排気システム)。
【0051】
本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施例を示し、半導体基板洗浄乾燥装置を示す全体構成説明図。
【図2】一実施例に係る半導体基板洗浄乾燥装置のドレーンの構成例示す要部断面図。
【図3】一実施例に係る半導体基板洗浄乾燥装置に半導体基板を取り付けたときの状態を説明する工程図。
【図4】一実施例に係る半導体基板洗浄乾燥装置の洗浄ノズルより半導体基板に洗浄水を吹き付けたときの状態を説明する工程図。
【図5】一実施例に係る半導体基板洗浄乾燥装置の窒素ガス供給ノズルより半導体基板に窒素ガスを吹き付けたときの状態を説明する工程図。
【符号の説明】
【0053】
1 半導体基板乾燥洗浄装置
2 チャンバ(密閉容器)
3 下ケース
4 上カバー
5 ドレーン
6 開閉弁
7 制御手段
8 鉛直軸
11 回転盤
12 半導体基板
14 洗浄水供給手段
W 洗浄水
N2 窒素ガス(不活性ガス)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板が保持される回転駆動可能な回転盤と、該回転盤により回転する半導体基板に洗浄水を吹き付ける洗浄ノズルとを備えた半導体基板洗浄乾燥装置において、
前記回転盤及び洗浄ノズルはチャンバ内に設置されていると共に、該チャンバの上部には半導体基板に不活性ガスを吹き付けるための不活性ガス供給ノズルが設けられ、
前記チャンバを密閉状態に保持して該チャンバ内に前記不活性ガスを充満して増圧させた状態で半導体基板を洗浄乾燥できるように構成したことを特徴とする半導体基板洗浄乾燥装置。
【請求項2】
上記不活性ガス供給ノズルから供給される不活性ガスは上記半導体基板の上面中央部に吹き付けられるように構成したことを特徴とする請求項1記載の半導体基板洗浄乾燥装置。
【請求項3】
上記不活性ガス供給ノズルから供給される不活性ガスの圧力と流速の双方又は一方は調整可能であることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体基板洗浄乾燥装置。
【請求項4】
上記チャンバの下底部には開閉弁付きのドレーンが設けられ、且つ、該開閉弁の開度は調整可能に形成されていることを特徴とする請求項1記載の半導体基板洗浄乾燥装置。
【請求項5】
チャンバ内で回転駆動される回転盤に保持された半導体基板を回転させながら、該半導体基板の洗浄及び乾燥を実施する半導体基板洗浄乾燥方法であって、
前記チャンバ内の回転盤に半導体基板を保持した後に、該チャンバ内を密閉状態に設定して前記回転盤を回転させると共に、回転状態の半導体基板に洗浄ノズルから洗浄水を吹き付けて洗浄する工程と、
前記洗浄工程の終了後に、前記半導体基板への洗浄水の供給を停止させて、不活性ガス供給ノズルから半導体基板に不活性ガスを吹き付けながら前記チャンバ内に不活性ガスを充満させて該チャンバ内の圧力を増大させる工程を含み、
前記チャンバ内に不活性ガスを充満して増圧させた状態で前記半導体基板を洗浄乾燥させることを特徴とする半導体基板洗浄乾燥方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−294307(P2008−294307A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−139673(P2007−139673)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】