説明

半導体基板表面の処理方法

【課題】半導体基板や金属配線の腐食や酸化を起こすことなく、基板表面の微細粒子や金属不純物を除去し得、金属腐食防止剤-Cu皮膜の除去せずに基板表面のカーボン・ディフェクトをも同時に除去し得る処理方法。
【解決手段】ベンゾトリアゾール又はその誘導体含有スラリーで処理された半導体基板を、〔I〕カルボキシル基を少なくとも1個有する有機酸0.05〜50重量%、〔II〕ポリホスホン酸類、アリールホスホン酸類、及びこれらのアンモニウム塩又はアルカリ金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の錯化剤0.01〜30重量%、〔III〕炭素数1〜5の飽和脂肪族1価アルコール、炭素数3〜10のアルコキシアルコール、炭素数2〜16のグリコール、炭素数3〜20のグリコールエーテル、炭素数3〜10のケトン及び炭素数2〜4のニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種の有機溶媒0.05〜50重量%を含んでなる洗浄剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板表面、特に、表面に銅配線が施された半導体基板表面の洗浄剤及び洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体基板表面の多層配線化に伴い、デバイスを製造する際には、物理的に半導体基板を研磨して平坦化する所謂化学的物理的研磨(CMP)技術が利用されている。
特に、近年のLSIの高集積化に伴い、使用される配線も従来のアルミニウムから、より電気抵抗の低い銅(Cu)に変更されてきており、表面に銅配線が多層に亘って施された多層構造を有する半導体を製造する場合には、CMP技術(Cu-CMP)が必須となっている。
【0003】
CMPは、シリカやアルミナ、セリア等の砥粒を含むスラリーを用いて半導体基板表面を平坦化する方法であり、研磨の対象はシリコン酸化膜や配線、プラグなどである。
そして、CMP工程後の半導体表面は、使用した砥粒自身やスラリー中に含まれる金属、研磨された金属配線やプラグの金属に由来する金属不純物、更には各種パーティクルにより多量に汚染されている。
半導体基板表面が金属不純物やパーティクルによる汚染を受けると半導体の電気特性に影響を与え、デバイスの信頼性が低下する。更に、金属汚染が著しい場合、デバイスが破壊されてしまうため、CMP工程後に洗浄工程を導入し、半導体基板表面から金属不純物やパーティクルを除去する必要がある。
これまで、CMP後洗浄工程等の各種洗浄工程に使用される洗浄剤が各種開発され、使用に供されている。
【0004】
一方、半導体表面の金属銅は、活性が高く、僅かな酸化力によって容易に腐蝕されて、配線抵抗が増大したり、断線を引き起こしてしまう。このため、種々の金属腐蝕防止剤〔例えばベンゾトリアゾール(BTA)類やイミダゾール類を代表とする芳香族系化合物、メルカプトイミダゾールやメルカプトチアゾール等の環状化合物、メルカプトエタノールやメルカプトグリセロール等の、分子中にメルカプト基を有し且つ当該メルカプト基が結合している炭素と水酸基が結合している炭素とが隣接して結合している脂肪族アルコール系化合物等〕を添加することにより、半導体表面上の金属銅の腐蝕を防止し得ることが知られている。特に、前述した如きCu-CMP工程で使用されるスラリー中には、研磨後の金属表面が腐食されるのを防ぐために上記した如き金属腐食防止剤が添加されている。
金属腐食防止剤は、半導体表面の金属(例えばCu)表面に吸着して金属腐食防止膜(例えばCu-BTA皮膜等の金属腐食防止剤-Cu皮膜)を形成し、金属(例えばCu)の腐食を防止していると考えられている。
【0005】
しかしながら、これらの金属腐食防止剤は、所謂カーボン・ディフェクトとして半導体表面に残存する場合がある。
このカーボン・ディフェクトが半導体表面に残存したまま、後の工程やデバイス作動時等に於いて半導体が熱処理を受けると、当該カーボン・ディフェクトが燃焼して配線材を酸化し、デバイス性能を低下させてしまうという問題や、当該カーボン・ディフェクトを除去せずに多層配線化を行った場合、上層部の平坦度が乱れ、正しく積層させることが困難となり、デバイスの作動時に重大な欠陥が生じるおそれがあった。
【0006】
しかしながら、従来、CMP後洗浄工程等の各種洗浄工程に使用されている洗浄剤では、カーボン・ディフェクトを十分に除去し得ないか、上記した如き金属表面の腐食防止に必要な金属腐食防止膜をも除去してしまい、上記した如き金属腐食防止剤-Cu皮膜、特にCu-BTA皮膜を除去することなく、金属腐食防止効果を保持させたまま、カーボン・ディフェクトのみを除去し得る有効な手段は未だ見出されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−130100号公報(請求項1〜3)
【特許文献2】特開平7−79061号公報(請求項1)
【特許文献3】特開平10−72594号公報([0007]段落)
【特許文献4】特開平10−26832号公報(請求項1〜15)
【特許文献5】特開平11−316464号公報(請求項1〜6)
【特許文献6】特開2002−20787号公報(請求項1〜36)
【特許文献7】特開2003−13266号公報(請求項1〜42)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した如き状況に鑑みなされたものであり、基板、特に半導体基板の表面荒れを起こすことなく、また、基板表面に施された金属配線、特に銅配線の腐食や酸化を起こすことなく、基板表面に存在する微細粒子(パーティクル)や各種金属由来の不純物(金属不純物)を有効に除去し得、更には、金属腐食防止剤-Cu皮膜、特にCu-BTA皮膜を除去することなく、基板表面に存在するカーボン・ディフェクトをも同時に除去し得る、基板用洗浄剤及び洗浄方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の構成よりなる。
(A)半導体基板をベンゾトリアゾール又はその誘導体含有スラリーで処理する工程と、(B)上記(A)工程で処理された半導体基板を、〔I〕カルボキシル基を少なくとも1個有する有機酸0.05〜50重量%、〔II〕(1)下記一般式[1]、[2]又は[4]で示されるポリホスホン酸類、(2)アリールホスホン酸類、及び(3)これらのアンモニウム塩又はアルカリ金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の錯化剤0.01〜30重量%、並びに〔III〕(1)炭素数1〜5の飽和脂肪族1価アルコール、(2)炭素数3〜10のアルコキシアルコール、(3)炭素数2〜16のグリコール、(4)炭素数3〜20のグリコールエーテル、(5)炭素数3〜10のケトン及び(6)炭素数2〜4のニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種の有機溶媒0.05〜50重量%を含んでなる洗浄剤で処理する工程と、を有する半導体基板表面の処理方法。

(式中、Xは水素原子又は水酸基を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表す。)

(式中、Qは水素原子又は−R−POを表し、R及びRはそれぞれ独立してアルキレン基を表し、Yは水素原子、−R−PO又は下記一般式[3]を表す。)

(式中、Q及びRは上記に同じ。)

(式中、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、nは1〜4の整数を表し、Z〜Zとn個のZのうち少なくとも4個はホスホン酸基を有するアルキル基、残りはアルキル基を表す。)
【発明の効果】
【0010】
本発明の洗浄剤を使用することにより、基板表面に施された金属配線、特に銅配線の腐食や酸化を起こすことなく、基板表面に存在する微細粒子(パーティクル)や各種金属由来の不純物(金属不純物)を有効に除去し得、更には、金属腐食防止剤-Cu皮膜、特にCu-BTA皮膜を除去することなく、基板表面に存在するカーボン・ディフェクトをも同時に除去し得る。
【0011】
即ち、本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、〔I〕カルボキシル基を少なくとも1個有する有機酸又は/及び〔II〕錯化剤と、〔III〕特定の有機溶媒とを含んでなる洗浄剤、特に、〔I〕カルボキシル基を少なくとも1個有する有機酸、〔II〕錯化剤及び〔III〕特定の有機溶媒とを含んでなる洗浄剤を用いて基板表面を洗浄することにより、半導体基板の表面荒れや半導体基板に施された金属配線、特に銅配線の腐食や酸化を起こさずに、当該表面のパーティクルや金属不純物を除去し得るだけでなく、金属腐食防止剤-Cu皮膜、特にCu-BTA皮膜を除去せずに、基板表面に残存するカーボン・ディフェクトをも同時且つ容易に除去し得ること、更に、このような効果は、有機溶媒のなかでも特定のものが特に優れていること並びに特定の有機溶媒と錯化剤として分子中に1以上のホスホン酸基を有する化合物(ホスホン酸系錯化剤)とを併用するのが特に好ましいことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
本発明の方法により上記目的を達成し得る理由は定かではないが、例えばカーボン・ディフェクトは、有機酸により作り出された最適なpHによって不安定化され、有機溶媒によって溶解される一方、金属腐食防止膜(例えばCu-BTA皮膜等の金属腐食防止剤-Cu皮膜)は、当該pHでは有機溶媒や水に対して溶解せず、カーボン・ディフェクトと金属腐食防止膜(例えばCu-BTA皮膜)の溶解選択比が増大し、金属腐食防止膜(特にCu-BTA皮膜)を除去することなく、金属腐食防止効果を保持させたまま、カーボン・ディフェクトのみを除去し得るのではないかと、考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る有機溶媒は、水溶性であるが、水溶性有機溶媒であれば全て使用可能というわけではなく、本発明の目的を達成し得るものとしては、例えば、炭素数1〜10、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜5の飽和脂肪族1価アルコール、炭素数2〜12、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜6の不飽和脂肪族1価アルコール等の1価アルコール類;炭素数3〜20、好ましくは3〜16、より好ましくは3〜10のアルコキシアルコール類;炭素数2〜40、好ましくは2〜20、より好ましくは2〜16のグリコール類;炭素数3〜40、好ましくは3〜30、より好ましくは3〜20のグリコールエーテル類;炭素数3〜40、好ましくは3〜30、より好ましくは3〜10のケトン類;炭素数2〜10、好ましくは2〜8、より好ましくは2〜4の単純なニトリル類、炭素数4〜20、好ましくは4〜15、より好ましくは4〜10のα-アミノニトリル類、炭素数4〜20、好ましくは4〜15、より好ましくは4〜10のα-ヒドロキシルニトリル類、炭素数4〜20、好ましくは4〜15、より好ましくは4〜10のβ-アミノニトリル類、炭素数4〜20、好ましくは4〜15、より好ましくは4〜10のジニトリル類、炭素数5〜30、好ましくは5〜20、より好ましくは5〜18のα-不飽和ニトリル類、炭素数8〜30、好ましくは8〜20、より好ましくは8〜15のα-ベンゼンニトリル類、炭素数5〜30、好ましくは5〜20、より好ましくは5〜15の複素環式ニトリル類等のニトリル類等が挙げられる。
その具体例としては、1価アルコール類としては、例えばメタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、イソペンチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ペンチルアルコール、3-メチル-2-ブタノール、ネオペンチルアルコール、1-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、1-ノナノール、3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノール、1-デカノール、1-ウンデカノール、1-ドデカノール、シクロヘキサノール、1-メチルシクロヘキサノール、2-メチルシクロヘキサノール、3-メチルシクロヘキサノール、4-メチルシクロヘキサノール、2-エチルヘキシルアルコール、カプリルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、イソセチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、オクチルドデシルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、α-テレピネオール、アビエチノール、フーゼル油等の飽和脂肪族1価アルコール;例えばアリルアルコール、プロパルギルアルコール、ベンジルアルコール、メタリルアルコール、2-または3-ブテニルアルコール、2-ペンテニルアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等の不飽和脂肪族1価アルコール等が挙げられる。
アルコキシアルコール類としては、例えば2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-(2-メトキシ)エトキシエタノール、2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール、2-プロポキシエタノール、2-ブトキシエタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、2-(メトキシメトキシ)エタノール、2-イソプロポキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-イソペンチルオキシエタノール等が挙げられる。
グリコール類としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール等が挙げられる。
グリコールエーテル類としては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn-プロピルエーテル、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール等が挙げられる。
ケトン類としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、ジイソブチルケトン、アセチルアセトン、メシチルオキシド、ホロン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、ショウノウ、シクロペンタノン、ヘキサフルオロアセチルアセトン等が挙げられる。
ニトリル類としては、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル、n-ブチロニトリル、イソブチロニトリル等の単純なニトリル類;例えばα-アミノプロピオニトリル、α-アミノメチルチオブチロニトリル、α-アミノブチロニトリル、アミノアセトニトリル等のα-アミノニトリル類;例えばラクトニトリル、ヒドロキシアセトニトリル、α-ヒドロキシ-γ-メチルチオブチロニトリル等のα-ヒドロキシルニトリル類;例えばアミノ-3-プロピオニトリル等のβ-アミノニトリル類;例えばマロンニトリル、スクシノニトリル、アジポニトリル等のジニトリル類;例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα-不飽和ニトリル類;例えばホモベラトリンニトリル、ベンゾニトリル等のα-ベンゼンニトリル類;例えばニコチノニトリル、イソニコチノニトリル等の複素環式ニトリル類等が挙げられる。
【0014】
これらの中でも、カーボン・ディフェクト除去能が優れている、飽和脂肪族1価アルコール類、アルコキシアルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類又は単純なニトリル類が好ましく、更にメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、2−メトキシエタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、アセトン又はアセトニトリルがより好ましい。
本発明に係る有機溶媒は、単独で使用しても、また、2種以上適宜組合せて用いてもよい。
【0015】
本発明に係る有機溶媒は、基板表面、特に、CMP処理等において金属腐食防止剤含有スラリー処理を施され、Cu等の金属配線が施された半導体基板表面に残存しているカーボン・ディフェクトを除去するために含有される。
本発明に係る有機溶媒は、半導体基板表面に形成された金属腐食防止膜(例えばCu-BTA皮膜等の金属腐食防止剤-Cu皮膜)を除去することなく、カーボン・ディフェクトを除去することができ、また、半導体部材、配線材、プラグ材等のデバイス製造に関わる装置部材を溶解、侵食、酸化又は分解させること無く、カーボン・ディフェクトを除去することができる。
【0016】
カーボン・ディフェクトとは、スラリー中のスラリー添加物質、例えば金属腐食防止剤〔例えばBTA類やベンゾイミダゾール類(特開平7−79061号公報等)等の芳香族化合物等に由来するものであり、特に、BTA又はBTA誘導体〔例えばベンゾトリアゾール、低級アルキルベンゾトリアゾール(例えば4−又は5−メチルベンゾトリアゾール、4−又は5−エチルベンゾトリアゾール、4−又は5−プロピルベンゾトリアゾール、4−又は5−イソプロピルベンゾトリアゾール、4−又は5−n−ブチルベンゾトリアゾール、4−又は5−イソブチルベンゾトリアゾール、4−又は5−ペンチルトリアゾール、4−又は5−へキシルトリアゾール等)、5−メトキシベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、5−ヒドロキシベンゾトリアゾール、ジヒドロキシプロピルベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、2,3−ジカルボキシプロピルベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(2−エチルへキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、1−[マレイン酸]ベンゾトリアゾール、1−(置換アミノメチル)−トリルトリアゾール(チバ・ガイギーアクチェンゲゼルシャフト製、商品名:IRGAMET 42)、[1,2,3−ベンゾトリアゾール−1−メチル]、[1,2,4−トリアゾール−1−メチル]、[2−エチルへキシル]アミン、ビス[(1−ベンゾトリアゾール)メチル]スルホン酸3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、4−又は5−クロルベンゾトリアゾール、4−又は5−ニトロベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾールモノエタノールアミン塩、ベンゾトリアゾールジエチルアミン塩、ベンゾトリアゾールシクロヘキシルアミン塩、ベンゾトリアゾールモルホリン塩、ベンゾトリアゾールイソプロピルアミン塩、メチルベンゾトリアゾールシクロヘキシルアミン塩、o−トリルトリアゾール、m−トリルトリアゾール、p−トリルトリアゾール等〕等のBTA類に由来するものである。
このようなスラリー添加物質(例えばBTA類)が、例えばCuやAg等の金属配線が施された半導体基板上に形成された金属腐食防止膜(例えばCu-BTA膜)上に、CMP工程における加圧等により融解し、その後冷却され固化することによりカーボン・ディフェクトが生成するものと考えられる。
【0017】
本発明に係る錯化剤としては、金属不純物と錯化合物を形成するものであればよく、特に限定されないが、例えば分子中に1以上のカルボキシル基を有する化合物、分子中に1以上のホスホン酸基を有する化合物、N-置換アミノ酸類、縮合リン酸類、及びこれらのアンモニウム塩又はアルカリ金属塩等が挙げられる。
【0018】
分子中に1以上のカルボキシル基を有する化合物としては、分子中に1〜4個の窒素原子と2〜6個のカルボキシル基を有する含窒素ポリカルボン酸類が好ましく、具体的には、例えばヒドロキシエチルイミノ二酢酸〔HIDA〕、イミノ二酢酸〔IDA〕等のヒドロキシ基を有していてもよいアルキルイミノポリカルボン酸;例えばニトリロ三酢酸〔NTA〕、ニトリロ三プロピオン酸〔NTP〕等のニトリロポリカルボン酸;例えばエチレンジアミン四酢酸〔EDTA〕、エチレンジアミン二酢酸〔EDDA〕、エチレンジアミン二プロピオン酸二塩酸塩〔EDDP〕、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸〔EDTA−OH〕、1,6-ヘキサメチレンジアミン-N,N,N',N'-四酢酸〔HDTA〕、トリエチレンテトラミン六酢酸〔TTHA〕、ジエチレントリアミン-N,N,N',N'',N''-五酢酸〔DTPA〕、N,N-ビス(2-ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン-N,N-二酢酸〔HBED〕等のヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアリール基又はヒドロキシアラルキル基を有していてもよいモノ又はポリアルキレンポリアミンポリカルボン酸;例えばジアミノプロパン四酢酸〔Methyl−EDTA〕、trans-1,2-ジアミノシクロヘキサン-N,N,N',N'-四酢酸〔CyDTA〕等のポリアミノアルカンポリカルボン酸;例えばジアミノプロパノール四酢酸〔DPTA−OH〕等のポリアミノアルカノールポリカルボン酸;例えばグリコールエーテルジアミン四酢酸〔GEDTA〕等のヒドロキシアルキルエーテルポリアミンポリカルボン酸等が挙げられる。
【0019】
分子中に1以上のホスホン酸基を有する化合物としては、例えばアルキルアミノポリ(アルキルホスホン酸)、モノ又はポリアルキレンポリアミンポリ(アルキルホスホン酸)、ニトリロポリ(アルキルホスホン酸)等の分子中に1〜6個の窒素原子と1〜8個のホスホン酸基を有する含窒素ポリホスホン酸類;アリールホスホン酸;アルキレンポリホスホン酸;ヒドロキシ基を有していてもよいアルカンポリホスホン酸等が挙げられる。
このような分子中に1以上のホスホン酸基を有する化合物としては、下記一般式[1]、[2]又は[4]で示される化合物がより好ましい。
【0020】

【0021】
(式中、Xは水素原子又は水酸基を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表す。)
【0022】

【0023】
(式中、Qは水素原子又は−R−POを表し、R及びRはそれぞれ独立してアルキレン基を表し、Yは水素原子、−R−PO又は下記一般式[3]を表す。)
【0024】

【0025】
(式中、Q及びRは前記と同じ。)
【0026】

【0027】
(式中、R及びRはそれぞれ独立して低級アルキレン基を表し、nは1〜4の整数を表し、Z〜Zとn個のZのうち少なくとも4個はホスホン酸基を有するアルキル基、残りはアルキル基を表す。)
【0028】
一般式[1]において、Rで示されるアルキル基は、炭素数が1〜10の直鎖状又は分枝状のものが好ましく、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
一般式[2]及び一般式[3]において、R及びRで示されるアルキレン基は、炭素数1〜10の直鎖状又は分枝状のものが好ましく、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、エチルメチレン基、ブチレン基、2-メチルプロピレン基、エチルエチレン基、ペンチレン基、2,2-ジメチルプロピレン基、2-エチルプロピレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、2-エチルヘキシレン基、ノニレン基、デシレン基等が挙げられる。
一般式[4]において、R及びRで示される低級アルキレン基は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のものが好ましく、具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、メチルメチレン基、メチルエチレン基、エチルメチレン基、ブチレン基、メチルプロピレン基、エチルエチレン基等が挙げられる。
また、一般式[4]において、Z〜Zで示されるアルキル基及びホスホン酸基を有するアルキル基のアルキル基としては、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。これらアルキル基が有するホスホン酸基の数は、通常1〜2個であり、好ましくは1個である。
なかでも、上記一般式[4]の式中のZ〜Zとn個のZの全てがホスホン酸基を有するアルキル基であるものが、金属不純物と錯形成する能力が高いことから好ましい。
また、容易に製造することができることから、上記一般式[4]の式中のnは1〜2の整数が好ましい。
【0029】
本発明において用いられる、分子中に1以上のホスホン酸基を有する化合物の具体例としては、例えばエチルアミノビス(メチレンホスホン酸)、ドデシルアミノビス(メチレンホスホン酸)等のアルキルアミノポリ(アルキルホスホン酸);例えばエチレンジアミンビス(メチレンホスホン酸)〔EDDPO〕、エチレンジアミンテトラキス(エチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)〔EDTPO〕、ヘキサメチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、イソプロピレンジアミンビス(メチレンホスホン酸)、イソプロピレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、プロパンジアミンテトラ(エチレンホスホン酸)〔PDTMP〕、ジアミノプロパンテトラ(メチレンホスホン酸)〔PDTPO〕、ジエチレントリアミンペンタ(エチレンホスホン酸)〔DEPPO〕、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)〔DETPPO〕、トリエチレンテトラミンヘキサ(エチレンホスホン酸)〔TETHP〕、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)〔TTHPO〕等のモノ又はポリアルキレンポリアミンポリ(アルキルホスホン酸);例えばニトリロトリス(メチレンホスホン酸)〔NTPO〕等のニトリロポリ(アルキルホスホン酸);例えばフェニルホスホン酸等のアリールホスホン酸;例えばアルキレンジホスホン酸(メチレンジホスホン酸等)等のアルキレンポリホスホン酸;例えばヒドロキシ基を有していてもよいアルカンジホスホン酸(エチリデンジホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1'-ジホスホン酸〔HEDPO〕、1-ヒドロキシプロピリデン-1,1'-ジホスホン酸、1-ヒドロキシブチリデン-1,1'-ジホスホン酸等)等のアルカンポリホスホン酸等が挙げられる。
N-置換アミノ酸類としては、例えばジヒドロキシエチルグリシン〔DHEG〕、N-アセチルグリシン等が、縮合リン酸類としては、例えばトリポリリン酸、ヘキサメタリン酸等がそれぞれ挙げられる。
【0030】
上記した如き本発明に係る錯化剤のなかでも、水への溶解度、錯化係数等の理由から、分子中に1以上のホスホン酸基を有する化合物が好ましく、なかでも分子中に1〜6個の窒素原子と1〜8個のホスホン酸基を有する含窒素ポリホスホン酸類及びヒドロキシ基を有していてもよいアルカンポリホスホン酸が好ましく、特に、モノ又はポリアルキレンポリアミンポリ(アルキルホスホン酸)、ニトリロポリ(アルキルホスホン酸)及びヒドロキシ基を有していてもよいアルカンポリホスホン酸がより好ましい。
また、上記一般式[1]、[2]及び[4]で示される化合物のなかでは、一般式[2]で示される化合物及び一般式[4]で示される化合物が好ましく、特に一般式[4]で示される化合物がより好ましい。
より具体的には、エチレンジアミンビス(メチレンホスホン酸)〔EDDPO〕、エチレンジアミンテトラキス(エチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)〔EDTPO〕、ヘキサメチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、イソプロピレンジアミンビス(メチレンホスホン酸)、イソプロピレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、プロパンジアミンテトラ(エチレンホスホン酸)〔PDTMP〕、ジアミノプロパンテトラ(メチレンホスホン酸)〔PDTPO〕、ジエチレントリアミンペンタ(エチレンホスホン酸)〔DEPPO〕、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)〔DETPPO〕、トリエチレンテトラミンヘキサ(エチレンホスホン酸)〔TETHP〕、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)〔TTHPO〕、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)〔NTPO〕、エチリデンジホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1'-ジホスホン酸〔HEDPO〕、1-ヒドロキシプロピリデン-1,1'-ジホスホン酸、及び1-ヒドロキシブチリデン-1,1'-ジホスホン酸がより好ましい。
本発明に係る錯化剤は、単独で使用しても、また、2種以上適宜組合せて用いてもよい。
【0031】
本発明に係る錯化剤は、基板表面、特に、研磨処理、エッチング処理、CMP処理等を施され、金属配線が施された半導体基板表面に付着、残存している金属不純物を補足し、除去するために含有される。金属不純物としては、例えば鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)等の遷移金属、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)等のアルカリ土類金属に由来するものが挙げられ、例えばこれら金属そのもの、その水酸化物、その酸化物等である。
本発明に係る錯化剤は、これら金属と安定した錯イオンを形成することにより金属不純物を除去することができる。
【0032】
本発明に係る有機酸は、カルボキシル基を少なくとも1個、好ましくは1〜3個、より好ましくは2〜3個有する有機酸であり、さらに、1〜3個の水酸基及び/または1〜3個のアミノ基を有していても良い。
【0033】
これら本発明に係る有機酸の具体例としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、n-吉草酸、1-メチル酪酸、2-メチル酪酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、trans-2-メチル-2-ペンテン酸、フェニル酢酸、3-フェニル吉草酸、4-フェニル吉草酸、安息香酸、ω-シクロヘキシルブチリックアシッド、α-ナフタレン酢酸、ジフェニル酢酸等のモノカルボン酸類;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、スベリン酸、2-n-ブチルマロン酸、シトラコン酸、メサコン酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸類;トリメリット酸、トリカルバリル酸、ベンゼントリカルボン酸等のトリカルボン酸類;オキシモノカルボン酸類〔ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシ酪酸、乳酸、サリチル酸〕、オキシジカルボン酸類〔リンゴ酸、酒石酸、タルトロン酸〕、オキシトリカルボン酸類〔クエン酸〕等のオキシカルボン酸;アスパラギン酸、グルタミン酸等のアミノカルボン酸類等が挙げられる。
上記した如き有機酸の中でも、ジカルボン酸類又はオキシカルボン酸類が好ましい。
また、オキシカルボン酸類のなかでは、オキシジカルボン酸類又はオキシトリカルボン酸類が好ましい。
より具体的には、シュウ酸、マロン酸、フマル酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸が特に好ましい。
本発明に係る有機酸は、単独で使用しても、また、2種以上適宜組合せて用いてもよい。
【0034】
本発明に係る有機酸は、わずかではあるがFeやAlの金属酸化物や金属水酸化物を溶解し、溶解した金属イオンが錯化剤と金属錯体を形成すれば金属が溶解する方向に平衡が移動して有機酸の金属溶解力が向上し、基板表面に吸着又は付着した金属の除去が可能となるのではないかと考えられる。
【0035】
本発明の基板用洗浄剤(以下、「本発明の洗浄剤」と略記する。)は、本発明に係る有機酸又は/及び錯化剤と、有機溶媒とを含むものであるが、特に、有機酸、錯化剤及び有機溶媒の3成分を全て含むものが好ましい。また、本発明の洗浄剤は、通常溶液、好ましくは水溶液の状態であり、上記した如き本発明に係る有機酸又は/及び錯化剤と、有機溶媒とを水に溶解させることにより調製される。
【0036】
本発明に係る有機溶媒の使用濃度が低すぎると、カーボン・ディフェクトを十分に除去することができなくなる。逆に、本発明に係る有機溶媒を多量に使用すると、上記した如き錯化剤や有機酸、或いは界面活性剤等の作用が十分に発揮されなくなり、不純物金属やパーティクルの除去効果が低下するという問題が起こるし、また、コスト面からも好ましくない。
また、本発明に係る有機酸及び本発明に係る錯化剤それぞれの使用濃度が低すぎると、洗浄効果が充分でなく、基板表面に予想以上の汚染があった場合などには効果が薄れてしまう場合がある。一方、本発明に係る有機酸の使用濃度が高すぎる場合は洗浄効果には特に不都合はないが、コストの面から好ましくない。また、本発明に係る錯化剤の使用濃度が高すぎる場合は洗浄効果には特に不都合はないが、錯化剤を多量に使用することは半導体基板表面に有害な炭素汚染を生ぜしめ電気的特性に問題が起こるし、また、コストの面から好ましくない。
【0037】
通常、本発明に係る有機酸は、下限が洗浄剤全量の通常0.05重量%以上、好ましくは0.025重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、上限が洗浄剤全量の通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、更に好ましくは10重量%以下の濃度範囲になるように用いられる。
本発明に係る錯化剤は、下限が洗浄剤全量の通常0.01重量%以上、好ましくは0.025重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.1重量%以上、上限が洗浄剤全量の通常30重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、更に好ましくは1重量%以下の濃度範囲になるように用いられる。
本発明に係る有機溶媒は、下限が洗浄剤全量の通常0.05重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、上限が洗浄剤全量の通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは20重量%以下、更に好ましくは10重量%以下の濃度範囲になるように用いられる。
【0038】
本発明に係る有機酸又は/及び錯化剤と、有機溶媒とを水に溶解させる方法としては、最終的にこれら成分を含有する溶液を調製し得る方法であればよく特に限定されない。
具体的には、例えば(1)本発明に係る有機酸又は/及び錯化剤と有機溶媒とを直接水に添加し、攪拌、溶解する方法、(2)本発明に係る有機酸又は/及び錯化剤と有機溶媒とをそれぞれ別途水に溶解した本発明に係る有機酸含有溶液又は/及び錯化剤含有溶液と有機溶媒含有溶液とを混合する方法、或いは、要すれば、(3)本発明に係る有機酸及び錯化剤を直接水に添加し、攪拌、溶解して得られた本発明に係る有機酸及び錯化剤含有溶液と、水に別途溶解して得られた本発明に係る有機溶媒含有溶液とを混合する方法、(4)本発明に係る有機溶媒及び錯化剤を直接水に添加し、攪拌、溶解して得られた本発明に係る有機溶媒及び錯化剤含有溶液と、水に別途溶解して得られた本発明に係る有機酸含有溶液とを混合する方法、(5)本発明に係る有機酸及び有機溶媒を直接水に添加し、攪拌、溶解して得られた本発明に係る有機酸及び有機溶媒含有溶液と、水に別途溶解して得られた本発明に係る錯化剤含有溶液とを混合する方法等が挙げられる。
【0039】
このようにして調製した本発明の洗浄剤は、使用前に濾過処理等を行うのが好ましい。
また、ここで用いる水は、蒸留、イオン交換処理等によりある程度精製されたものであればよいが、この分野で用いられる所謂超純水がより好ましい。
【0040】
本発明の洗浄剤は、酸性が好ましく、下限が通常pH0.5以上、好ましくは0.7以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは2以上であり、上限が通常6.5以下、好ましくは5以下、より好ましくは3以下である。
【0041】
本発明の洗浄剤中には、上記した如き本発明に係る有機酸、錯化剤及び有機溶媒の他に、本発明の効果を阻害しない範囲で各種補助成分が含まれていてもよい。
このような補助成分としては、通常この分野で用いられるものを使用することができ、例えば配線のCuを保護し、Cuの腐食を防止する目的で用いられる、例えば還元剤、金属腐食防止剤等、半導体表面に対する洗浄剤の濡れ性を改善し、洗浄効果を向上させる目的で用いられる、界面活性剤等である。
【0042】
還元剤としては、例えばヒドラジン又はその誘導体、アスコルビン酸、ホルマリン等が挙げられ、これら還元剤は、単独で使用しても、2種以上適宜組み合わせて用いてもよい。
【0043】
また、金属腐食防止剤としては、上記した如き、ベンゾトリアゾール又はその誘導体(特開昭51−29338号公報、特開平1−195292号公報、特開平10−265979号公報等)、ベンゾイミダゾール類(特開平7−79061号公報等)等の芳香族化合物、メルカプトイミダゾール、メルカプトチアゾール等の環状化合物(特開2000−87268号公報、特開2000−282096号公報等)、メルカプトエタノール、メルカプトグリセロール等の分子中にメルカプト基を有し且つ当該メルカプト基が結合している炭素と水酸基が結合している炭素とが隣接して結合している脂肪族アルコール系化合物(特開2000−273663号公報等)、システイン、N-アセチルシステイン等の分子中にチオール基を有するアミノ酸類(特開2003−13266号公報等)、チオ尿素類等が挙げられ、これら界面活性剤は、単独で使用しても、2種以上適宜組み合わせて用いてもよい。
【0044】
界面活性剤としては、例えば分子中にポリオキシアルキレン基を有するノニオン系界面活性剤;分子中にスルホン酸基、カルボキシル基、ホスホン酸基、スルホキシル基及びホスホノキシル基から選ばれる基を有するアニオン系界面活性剤;例えばアルキルベタイン誘導体、イミダゾリニウムベタイン誘導体、スルホベタイン誘導体、アミノカルボン酸誘導体、イミダゾリン誘導体、アミンオキサイド誘導体等の両性界面活性剤等が挙げられる。
分子中にポリオキシアルキレン基を有するノニオン系界面活性剤としては、例えばポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンポリアルキルアリールエーテル等が挙げられ、より具体的には、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の分子中にポリオキシエチレン基を有するノニオン系界面活性剤、例えばポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルフェニルエーテル等の分子中にポリオキシプロピレン基を有するノニオン系界面活性剤、例えばポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルフェニルエーテル等の分子中にポリオキシエチレン基及びポリオキシプロピレン基を有するノニオン系界面活性剤等が挙げられる。
なかでもノニオン系界面活性剤としてはポリオキシアルキレンアルキルエーテルが特に好ましく、より具体的にはポリオキシエチレンアルキルエーテル等の分子中にポリオキシエチレン基を有するノニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等の分子中にポリオキシエチレン基及びポリオキシプロピレン基を有するノニオン系界面活性剤、が特に好ましい。
また、分子中にポリオキシエチレン基及びポリオキシプロピレン基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテルのなかでは、CH(CH−O−(CHCHO)−(CHCH(CH)O)−H(k=7〜20、好ましくは11、l=4〜20、好ましくは13〜14、m=1〜6、好ましくは1〜2である。)で示される化合物が特に好ましい。
より具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、2-メトキシエタノール、2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、アセトン、アセトニトリル又はポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(特にCH(CH11−O−(CHCHO)13〜14−(CHCH(CH)O)1〜2−H)が好ましく、なかでもメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、2-メトキシエタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、アセトニトリル又はポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(特にCH(CH11−O−(CHCHO)13〜14−(CHCH(CH)O)1〜2−H)が特に好ましい。
分子中にスルホン酸基、カルボキシル基、ホスホン酸基、スルホキシル基及びホスホノキシル基から選ばれる基を有するアニオン系界面活性剤としては、例えばアルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、これらの塩(例えばナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、例えばアンモニウム塩等)等の分子中にスルホン酸基を有するアニオン系界面活性剤、例えばアルキルカルボン酸、アルキルベンゼンカルボン酸、アルキルナフタレンカルボン酸、これらの塩(例えばナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、例えばアンモニウム塩)等の分子中にカルボキシル基を有するアニオン系界面活性剤、例えばアルキルホスホン酸、アルキルベンゼンホスホン酸、アルキルナフタレンホスホン酸、これらの塩(例えばナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、例えばアンモニウム塩等)等の分子中にホスホン酸基を有するアニオン系界面活性剤、例えばアルキル硫酸エステル、アルキルベンゼン硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルベンゼン硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルナフタレン硫酸エステル、これらの塩(例えばナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、例えばアンモニウム塩等)等の分子中にスルホキシル基を有するアニオン系界面活性剤等が挙げられる。
なかでもアニオン系界面活性剤としては、分子中にスルホン酸基を有するもの、分子中にスルホキシル基を有するものが特に好ましい。より具体的にはアルキルベンゼンスルホン酸等の分子中にカルボキシル基を有するアニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル等の分子中にスルホキシル基を有するアニオン系界面活性剤が特に好ましい。
上記した界面活性剤のなかでも、ノニオン系界面活性剤及びアニオン系界面活性剤が好ましい。
これら界面活性剤は、単独で使用しても、2種以上適宜組み合わせて用いてもよい。
【0045】
これら補助成分は、通常この分野で使用される濃度範囲で用いればよい。
例えば還元剤の使用量は、金属Cuの酸化を防止し得る量であればよく、下限が洗浄剤全量の通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.07重量%以上であり、上限が洗浄剤全量の通常5重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下である。また、金属腐食防止剤の使用量は、金属Cuと弱い結合を形成し、Cuに対する洗浄剤の溶解力を抑制し得る量であればよく、下限が洗浄剤全量の通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上であり、上限が洗浄剤全量の通常5重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下であり、界面活性剤の使用量は、洗浄剤の表面張力を低下させ得る量であればよく、下限が洗浄剤全量の通常0.0001重量%以上、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.005重量%以上であり、上限が洗浄剤全量の通常1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下である。
【0046】
尚、本発明においては、洗浄剤のpHを下げて基板表面上に形成された金属腐食防止膜(特にCu-BTA皮膜)を溶解させてしまうもの〔例えば無機酸(塩酸、硝酸、硫酸、りん酸、ふっ酸等)等〕、金属腐食防止膜を酸化してしまうもの〔例えば酸化剤(亜リン酸等)等〕、或いはCuイオンと特異的に反応してCuとの錯体を形成することによりCu配線荒れやCuを溶解してしまうもの(例えばフェナントロリン又はその誘導体等)の使用は望ましくない。
【0047】
本発明の洗浄剤は常温においても有効な洗浄効果を示すが、高温の方が微粒子の除去効率が高いため、適度に加温して使用してもよい。加温する場合は、下限が通常30℃以上、好ましくは35℃以上、より好ましくは40℃以上、上限が通常80℃以下、好ましくは70℃以下、より好ましくは60℃以下で使用される。
【0048】
本発明の基板表面の洗浄方法は、半導体表面を、上記した如き本発明の洗浄剤で処理すればよい。
基板表面を、本発明の洗浄剤で処理する方法としては、本発明の洗浄剤が基板表面と接触できる方法であれば良く、通常この分野で行われる自体公知の基板表面を洗浄する方法が用いられる。
具体的には、単に基板表面に本発明の洗浄剤を塗布する方法や、基板を本発明の洗浄剤中に浸漬する方法(ディップ処理)、基板表面に本発明の洗浄剤をシャワー状に振りかけたり噴霧したりする方法(枚葉処理)等が挙げられる。
更に、本発明に於いては、洗浄時に物理的洗浄を併用することにより、より効果的にパーティクルや金属不純物、カーボン・ディフェクトを除去することができる。
併用の具体的方法としては、基板表面を、本発明の洗浄剤の存在下、物理的洗浄工程に付すこと等が挙げられる。
【0049】
上記方法に於いて、本発明の洗浄剤を存在させる方法としては、具体的には、上記した如き基板表面を洗浄する方法(塗布する方法、ディップ処理、枚葉処理)等により本発明の洗浄剤を基板表面に存在させた状態として、物理的洗浄工程に付す方法等が挙げられる。
また、物理的洗浄(工程)としては、例えば高速回転のポリビニルアルコール製ブラシ等を用いて基板表面を洗浄するブラシスクラブ洗浄、高周波を用いるメガソニック洗浄等が挙げられる。
【0050】
物理的洗浄を併用する場合のより具体的な手法としては、例えば基板表面に本発明の洗浄剤を塗布して基板表面に当該洗浄剤を存在させた状態とした後に物理的洗浄を行う方法、基板を本発明の洗浄剤中に浸漬した後、当該洗浄剤中から取り出して基板表面に当該洗浄剤を存在させた状態とした後に物理的洗浄を行う方法、基板を本発明の洗浄剤中に浸漬させたまま物理的洗浄を行う方法、基板表面に本発明の洗浄剤を振りかけて基板表面に当該洗浄剤を存在させた状態とした後に物理的洗浄を行う方法、或いは基板表面に本発明の洗浄剤を振りかけながら物理的洗浄を行う方法等が挙げられる。
【0051】
本発明の洗浄剤は、カーボン・ディフェクト除去能のみではなく、パーティクル及び金属不純物除去能をも有しているため、本発明の除去剤を用いて基板表面を処理すれば、基板表面に残存・付着しているカーボン・ディフェクトだけでなく、パーティクル及び金属不純物除をも同時に除去(洗浄)することができる。
従って、本発明の洗浄剤のみの使用で基板表面を十分に洗浄し得るが、上記した如き本発明の洗浄剤を用いた洗浄方法を行った後に、更に、基板表面を自体公知の基板洗浄剤で洗浄してもよい。
このようにすることにより、基板表面をより高精度に洗浄することが可能となる。
尚、この場合に使用される自体公知の基板洗浄剤としては、例えば特開平4−130100号公報、特開平5−263275号公報、特開平6−112646号公報、特開平6−287774号公報、特開平7−79061号公報、特開平7−166381号公報、特開平7−267933号公報、特開平7−292483号公報、特開平7−54169号公報、特開平10−26832号公報、特開平10−72594号公報、特開平10−251867号公報、特開平11−50275号公報、特開2000−8185号公報、特開2002−20787号公報等に開示されているような、通常この分野で用いられる洗浄剤が使用可能である。なかでも、所謂酸性の洗浄剤が好ましい。
【0052】
本発明の洗浄剤は、例えば所謂シリコンウェーハ、GaAs、GaP等の化合物半導体等の半導体基板、ポリイミド樹脂等のプリント基板、LCD用及びPDP用ガラス基板等に使用し得るが、半導体基板に特に有用である。
また、本発明の洗浄剤は、このような基板のうち、表面に、例えば銅、銀、アルミニウム、タングステン・プラグ、クロム、金等の金属配線が施された基板、なかでも表面に銅又は銀配線が施された基板、特に表面に銅配線が施された基板に有用であり、銅配線が施された半導体基板に最も有用である。
【0053】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらにより何等限定されるものではない。
【実施例】
【0054】
本実施例及び比較例に於いて使用した金属Cu堆積ウェーハ、Cu-BTA皮膜付きウェーハ、カーボン・ディフェクト汚染ウェーハ及び金属汚染ウェーハは夫々以下の方法により調製したものを使用し、また、金属Cu堆積ウェーハ表面のCuの膜厚、Cu-BTA皮膜付きウェーハ表面のCu-BTA皮膜の膜厚及び金属汚染ウェーハ表面に吸着残存している金属(Fe原子、Al原子、Cu原子)の吸着量(残存金属濃度)は夫々以下の方法により測定した。
【0055】
〔金属Cu堆積ウェーハ〕
4インチシリコンウェーハの表面にスパッタ法により金属Cuを堆積させたものを銅堆積ウェーハとした。
尚、下記に示す方法により当該金属Cu堆積ウェーハ表面の銅の膜厚は、1000nmであることを確認した。
【0056】
〔Cu-BTA皮膜付きウェーハ〕
金属Cu堆積ウェーハのCu表面を0.1%Hで15分間酸化した後、これを1%BTA水溶液に20分間浸漬したものをCu-BTA皮膜付きウェーハとした。
尚、下記に示す方法により当該Cu-BTA皮膜付きウェーハ表面のCu-BTA被膜厚は、100nmであることを確認した。
【0057】
〔カーボン・ディフェクト汚染ウェーハ〕
Cu-BTA皮膜付きウェーハを80℃の飽和BTA水溶液に40分間浸漬し、窒素雰囲気下、10℃で冷却したものをカーボン・ディフェクト汚染ウェーハとした。
尚、オージェ光電子分光分析装置による直接測定によりCu-BTA被膜上にカーボン・ディフェクトがウェーハ表面に吸着・残存していることを確認した。
【0058】
〔金属汚染ウェーハ〕
熱酸化法により表面をSiOとした6インチシリコンウェーハを、0.1ppmとなるようにFeイオンを添加したスラリー水溶液(1%シリカ含有0.1%過酸化水素水)1L、0.1ppmとなるようにAlイオンを添加したスラリー水溶液(1%シリカ含有0.1%過酸化水素水)1L、又は0.1ppmとなるようにCuイオンを添加したスラリー水溶液(1%シリカ含有0.1%過酸化水素水)1Lにそれぞれ1分間浸漬し、超純水により10分間流水洗浄した後、スピン乾燥したものを金属汚染ウェーハとした。
尚、下記に示す方法により、当該金属汚染ウェーハには、Fe(鉄原子)が5×1013原子/cm、Al(アルミニウム原子)が8×1013原子/cm、Cu(銅原子)が3×1014原子/cmそれぞれ吸着残存していることを確認した。
【0059】
〔パーティクル汚染ウェーハ〕
Cu-BTA皮膜付きウェーハを、平均粒径0.2μmの3%アルミナスラリー水溶液に1分間浸漬し、超純水により10分間流水洗浄した後、スピン乾燥したものをパーティクル汚染ウェーハとした。
尚、下記に示す方法により、当該ウェーハには、パーティクルが約8000個/6インチウェーハ吸着残存していることを確認した。
【0060】
〔金属Cu膜厚測定法〕
ウェーハを半分に割り、断面を電子顕微鏡により観察し、金属Cu膜厚を測定した。
【0061】
〔Cu-BTA皮膜厚測定法〕
ウェーハを半分に割り、断面をSEM(走査電子顕微鏡)により観察し、Cu-BTA皮膜厚を測定した。
【0062】
〔金属濃度測定法〕
ウェーハ表面に吸着残存した金属(Fe、Al、Cu)を、フッ酸−硝酸水溶液で溶解回収した後、該回収液中の金属濃度を、原子吸光法(黒鉛炉原子吸光分光分析装置)により測定した。得られた測定値に基づいて金属原子(Fe原子、Al原子、Cu原子)の吸着量(残存金属濃度)を求めた。
【0063】
〔パーティクル数測定法〕
ウェーハ表面に吸着・残存しているパーティクルを表面異物検査装置(パーティクルカウンター)により測定した。
【0064】
尚、本実施例及び比較例に於いては、特に断りのない限り濃度を表す%、ppm、ppbは全て重量比を示す。また、使用する水は全て超純水であり、Fe、Al、及びCuがそれぞれ0.01ppb以下であることを確認してから使用した。
【0065】
実施例1〜44
表1に記載の各洗浄剤1Lに、上記方法で作製したカーボン・ディフェクト汚染ウェーハ、Cu-BTA皮膜付きウェーハ又は金属Cu堆積ウェーハを室温下、5時間浸漬した。その後、各ウェーハを取り出し、超純水で10分間リンスし、スピン乾燥させた。
このように処理したカーボン・ディフェクト汚染ウェーハについては、カーボン・ディフェクト除去能力を評価するため、当該ウェーハ表面に吸着・残存しているカーボン・ディフェクトの有無をオージェ光電子分光分析装置による直接測定により確認した。
また、Cu-BTA皮膜付きウェーハについては、Cu-BTA皮膜への影響(溶解溶出)の有無を確認するため、ウェーハ表面のCu-BTA皮膜厚を測定した。
更に、金属Cu堆積ウェーハについては、金属Cuの酸化の有無を確認するため、ウェーハ表面のCu膜表面の色調を目視で観察し、また、金属Cuの腐蝕の有無を確認するため、ウェーハ表面の金属Cuの膜厚を測定した。
結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
比較例1〜82
表2に記載の各種溶液を用いた以外は、実施例1〜44と同様の方法でカーボン・ディフェクト汚染ウェーハ、Cu-BTA皮膜付きウェーハ又は金属Cu堆積ウェーハを処理した後、各ウェーハについて実施例1〜44と同様の測定、評価を行った。
結果を表2及び表3に示す。
【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

【0070】
表1と表2及び表3から明らかなように、本発明の洗浄剤(実施例1〜44)を用いた場合には、(1)カーボン・ディフェクトを良好に除去し得ること、(2)ウェーハ表面のCu膜表面の色調に変化はなく、金属Cuが酸化されていないこと、(3)Cu膜厚に殆ど変化が無く、金属Cuが腐蝕されていないこと、(4)Cu-BTA皮膜厚に殆ど変化はなく、Cu-BTA皮膜は殆ど除去されていないこと、が判る。
これに対して、有機酸のみ(比較例2〜4)、錯化剤のみ(比較例5〜8)、有機溶媒のみ(比較例9〜12)、或いは、有機酸と錯化剤のみ(比較例13〜22及び比較例78〜82)を使用した場合は、何れもカーボン・ディフェクトを除去し得ないことが判る。
また、実施例1〜14と比較例23〜30との比較、実施例15〜20と比較例31〜38との比較、及び実施例39〜48と比較例69〜77との比較から明らかなように、本発明に係る有機溶媒以外の有機溶媒を含む洗浄剤を使用した場合には、カーボン・ディフェクトを除去し得ないことがそれぞれ判る。
更に、実施例21〜44と比較例39〜68との比較から明らかなように、本発明に係る有機酸以外の酸を含む洗浄剤を使用した場合には、カーボン・ディフェクトを除去し得ないか、Cu-BTA皮膜やCu膜を溶解してしまうことが判る。
以上のことから明らかなように本発明に係る特定の有機酸又は/及び錯化剤と、本発明に係る特定の有機溶媒を組合せた場合のみ、Cuの腐食や酸化を起こすことなく、更には、Cu-BTA皮膜を除去することなく、カーボン・ディフェクトを良好に除去し得ることが判る。
【0071】
実施例45〜76
表4に記載の各洗浄剤1Lに、上記方法で作製した金属汚染ウェーハを室温下、1時間浸漬した。その後、ウェーハを取り出し、超純水で10分間リンスし、スピン乾燥させた。
このように処理した金属汚染ウェーハについて、金属不純物除去能力を評価するため、ウェーハ表面に吸着残存している残存金属濃度(残存Fe濃度、残存Al濃度、及び残存Cu濃度)を測定した。
結果を表4に示す。
【0072】
【表4】

【0073】
比較例83〜95
表5に記載の各種溶液を用いた以外は、実施例45〜76と同様の方法で金属汚染ウェーハを処理した後、金属汚染ウェーハについて実施例45〜76と同様の測定、評価を行った。
結果を表5に示す。
【0074】
【表5】

【0075】
表4及び表5の結果から明らかなように、本発明の洗浄剤を用いた場合、ウェーハ表面の金属残存量を大幅に減少させることができ、その能力は従来用いられている洗浄剤と同等以上であることが判る。
以上のことから明らかなように、本発明に係る洗浄剤は、基板表面に存在するカーボン・ディフェクトを良好に除去し得るだけでなく、同時に各種金属由来の不純物(金属不純物)をも有効に除去し得ることが判る。
【0076】
実施例77〜108
上記方法で作製した金属汚染ウェーハをポリビニルアルコール製のブラシを用いてブラシスクラブ洗浄を行う際に、表6に記載の各洗浄剤を当該ウェーハ表面に噴霧した。処理温度は25℃、洗浄時間は1分間とした。洗浄後、ウェーハを超純水で10分間リンスし、スピン乾燥させた。
このように処理した金属汚染ウェーハについて、金属不純物除去能力を評価するため、ウェーハ表面に吸着残存している残存金属濃度(残存Fe濃度、残存Al濃度、及び残存Cu濃度)を測定した。
結果を表6に示す。
【0077】
【表6】

【0078】
比較例96〜108
表7に記載の各種溶液を用いた以外は、実施例77〜108と同様の方法で金属汚染ウェーハを処理した後、金属汚染ウェーハについて実施例77〜108と同様の測定、評価を行った。
結果を表7に示す。
【0079】
【表7】

【0080】
表6及び表7の結果から明らかなように、本発明の洗浄剤を用いて物理的洗浄を行った場合も、ウェーハ表面の金属の残存量が顕著に減少することが判る。
【0081】
実施例109〜140
表8に記載の各洗浄剤1Lに、上記方法で作製したパーティクル汚染ウェーハを室温下、5時間浸漬した。その後、当該ウェーハを取り出し、超純水で10分間リンスし、スピン乾燥させた。
このように処理したパーティクル汚染ウェーハについて、パーティクル除去能力を評価するため、当該ウェーハ表面に吸着・残存しているパーティクル数を測定した。
結果を表8に示す
【0082】
【表8】

【0083】
比較例109〜121
表9に記載の各種溶液を用いた以外は、実施例109〜140と同様の方法でパーティクル汚染ウェーハを処理した後、パーティクル汚染ウェーハについて実施例109〜140と同様の測定、評価を行った。
結果を表9に示す。
【0084】
【表9】

【0085】
表8及び表9の結果から明らかなように、本発明の洗浄剤を用いた場合、ウェーハ表面のパーティクルをも除去し得ることができ、その能力は従来用いられている洗浄剤と同等以上であることが判る。
以上のことから明らかなように、本発明に係る洗浄剤は、基板表面に存在するカーボン・ディフェクトを良好に除去し得るだけでなく、各種金属由来の不純物(金属不純物)と同時に基板表面に存在する微細粒子(パーティクル)をも有効に除去し得ることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)半導体基板をベンゾトリアゾール又はその誘導体含有スラリーで処理する工程と、
(B)前記(A)工程で処理された半導体基板を、〔I〕カルボキシル基を少なくとも1個有する有機酸0.05〜50重量%、〔II〕(1)下記一般式[1]、[2]又は[4]で示されるポリホスホン酸類、(2)アリールホスホン酸類、及び(3)これらのアンモニウム塩又はアルカリ金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の錯化剤0.01〜30重量%、並びに〔III〕(1)炭素数1〜5の飽和脂肪族1価アルコール、(2)炭素数3〜10のアルコキシアルコール、(3)炭素数2〜16のグリコール、(4)炭素数3〜20のグリコールエーテル、(5)炭素数3〜10のケトン及び(6)炭素数2〜4のニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種の有機溶媒0.05〜50重量%を含んでなる洗浄剤で処理する工程と、
を有する半導体基板表面の処理方法。
【化1】

(式中、Xは水素原子又は水酸基を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表す。)
【化2】

(式中、Qは水素原子又は−R−POを表し、R及びRはそれぞれ独立してアルキレン基を表し、Yは水素原子、−R−PO又は下記一般式[3]を表す。)
【化3】

(式中、Q及びRは前記に同じ。)
【化4】

(式中、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、nは1〜4の整数を表し、Z〜Zとn個のZのうち少なくとも4個はホスホン酸基を有するアルキル基、残りはアルキル基を表す。)
【請求項2】
前記(A)工程が、半導体基板をベンゾトリアゾール又はその誘導体含有スラリーで、化学的物理的研磨する工程である、請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記半導体基板が、金属配線が施されたものである、請求項1に記載の処理方法。
【請求項4】
前記金属配線が、銅配線である、請求項3に記載の処理方法。
【請求項5】
前記(B)工程が、半導体基板表面を前記洗浄剤に浸漬するか、基板表面に前記洗浄剤を噴霧する工程である、請求項1に記載の処理方法。
【請求項6】
前記(B)工程が、更に物理的洗浄を併用する工程である、請求項5に記載の処理方法。
【請求項7】
前記(B)工程における前記洗浄剤が、水溶液である、請求項1に記載の処理方法。
【請求項8】
前記(B)工程における前記有機溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、2-メトキシエタノール、2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、アセトン及びアセトニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種のものである、請求項1に記載の処理方法。
【請求項9】
前記(B)工程における前記錯化剤が、エチレンジアミンビス(メチレンホスホン酸)〔EDDPO〕、エチレンジアミンテトラキス(エチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)〔EDTPO〕、ヘキサメチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、イソプロピレンジアミンビス(メチレンホスホン酸)、イソプロピレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、プロパンジアミンテトラ(エチレンホスホン酸)〔PDTMP〕、ジアミノプロパンテトラ(メチレンホスホン酸)〔PDTPO〕、ジエチレントリアミンペンタ(エチレンホスホン酸)〔DEPPO〕、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)〔DETPPO〕、トリエチレンテトラミンヘキサ(エチレンホスホン酸)〔TETHP〕、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)〔TTHPO〕、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)〔NTPO〕、エチリデンジホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1'-ジホスホン酸〔HEDPO〕、1-ヒドロキシプロピリデン-1,1'-ジホスホン酸、及び1-ヒドロキシブチリデン-1,1'-ジホスホン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種のものである、請求項1に記載の処理方法。
【請求項10】
前記(B)工程における前記有機酸が、2又は3個のカルボキシル基を有するものである、請求項1に記載の処理方法。
【請求項11】
前記(B)工程における前記有機酸が、ジカルボン酸又はオキシカルボン酸である、請求項1に記載の処理方法。
【請求項12】
前記オキシカルボン酸が、オキシジカルボン酸又はオキシトリカルボン酸である、請求項11に記載の処理方法。
【請求項13】
前記ジカルボン酸が、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸からなる群より選ばれる少なくとも1種のものである、請求項11に記載の処理方法。
【請求項14】
前記オキシカルボン酸が、リンゴ酸、酒石酸又はクエン酸である、請求項11に記載の処理方法。
【請求項15】
前記(B)工程における前記〔I〕有機酸がジカルボン酸又はオキシカルボン酸であり、前記〔II〕錯化剤が(1)前記一般式[1]、[2]又は[4]で示されるポリホスホン酸類、(2)アリールホスホン酸類、及び(3)これらのアンモニウム塩又はアルカリ金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のものであり、前記〔III〕有機溶媒が(1)炭素数1〜5の飽和脂肪族1価アルコール、(2)炭素数3〜10のアルコキシアルコール、(3)炭素数2〜16のグリコール、(4)炭素数3〜20のグリコールエーテル、(5)炭素数3〜10のケトン及び(6)炭素数2〜4のニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種のものである、請求項1に記載の処理方法。
【請求項16】
前記(B)工程における前記洗浄剤のpHが、0.5〜6.5である、請求項1に記載の処理方法。
【請求項17】
前記(B)工程における前記洗浄剤が、更に還元剤、金属腐食防止剤及び界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでなるものである、請求項1に記載の処理方法。
【請求項18】
前記還元剤が、ヒドラジン又はその誘導体、アスコルビン酸及びホルマリンからなる群より選ばれる少なくとも1種のものであり、前記金属腐食防止剤が、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、ベンゾイミダゾール類、メルカプトイミダゾール、メルカプトチアゾール、メルカプトエタノール、メルカプトグリセロール、システイン、N-アセチルシステイン及びチオ尿素類からなる群より選ばれる少なくとも1種のものであり、前記界面活性剤が、分子中にポリオキシアルキレン基を有するノニオン系界面活性剤、分子中にスルホン酸基、カルボキシル基、ホスホン酸基、スルホキシル基及びホスホノキシル基から選ばれる基を有するアニオン系界面活性剤、及び両性界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1種のものである、請求項17に記載の処理方法。
【請求項19】
前記(B)工程における前記洗浄剤が、下記〔I〕〜〔IV〕のみからなるものである、請求項1に記載の処理方法。
〔I〕カルボキシル基を少なくとも1個有する有機酸0.05〜50重量%
〔II〕(1)前記一般式[1]、[2]又は[4]で示されるポリホスホン酸類、(2)アリールホスホン酸類、及び(3)これらのアンモニウム塩又はアルカリ金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の錯化剤0.01〜30重量%
〔III〕(1)炭素数1〜5の飽和脂肪族1価アルコール、(2)炭素数3〜10のアルコキシアルコール、(3)炭素数2〜16のグリコール、(4)炭素数3〜20のグリコールエーテル、(5)炭素数3〜10のケトン及び(6)炭素数2〜4のニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種の有機溶媒0.05〜50重量%
〔IV〕水
【請求項20】
前記(B)工程における前記洗浄剤が、下記〔I〕〜〔V〕のみからなるものである、請求項1に記載の処理方法。
〔I〕カルボキシル基を少なくとも1個有する有機酸0.05〜50重量%
〔II〕(1)前記一般式[1]、[2]又は[4]で示されるポリホスホン酸類、(2)アリールホスホン酸類、及び(3)これらのアンモニウム塩又はアルカリ金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の錯化剤0.01〜30重量%
〔III〕(1)炭素数1〜5の飽和脂肪族1価アルコール、(2)炭素数3〜10のアルコキシアルコール、(3)炭素数2〜16のグリコール、(4)炭素数3〜20のグリコールエーテル、(5)炭素数3〜10のケトン及び(6)炭素数2〜4のニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種の有機溶媒0.05〜50重量%
〔IV〕水
〔V〕還元剤0.01〜5重量%、金属腐食防止剤0.01〜5重量%及び界面活性剤0.0001〜1重量%からなる群より選ばれる少なくとも1種

【公開番号】特開2012−186480(P2012−186480A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−88705(P2012−88705)
【出願日】平成24年4月9日(2012.4.9)
【分割の表示】特願2005−514927(P2005−514927)の分割
【原出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(000252300)和光純薬工業株式会社 (105)
【Fターム(参考)】