説明

半導体基板装置およびその装置を用いた半導体装置の配線構造

【目的】 半導体基板1の両面に形成された回路パターン等を導通性を備えた多結晶シリコン層6を用いて接続する。
【構成】 シリコン半導体基板1に設けられた貫通孔2は、内壁面3にシリコン酸化膜5および導電性を備えた多結晶シリコン膜6を積層した構造である。半導体基板1上に作製された加速度センシングエレメント12と信号処理素子13とは、配線層10,11および前記貫通孔に形成された導電体として機能する多結晶シリコン膜6を介して接続する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は半導体基板の表裏両面の導通手段を設けてなる半導体基板装置およびその装置を用いた半導体装置の配線構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】シリコン等の半導体基板の表裏両面を導通する手段を設けた半導体基板装置の基本構造断面図を図4に示す。図4には特開平4−208846号公報に開示されているもので、半導体基板1に貫通孔2を設け、接続導電体としての導電ペースト17を介して半導体基板1の表面側8と裏面側9に形成された回路を接続している。前記接続導電体は液状の導電ペースト17を貫通孔2に流し込み、約200 ℃〜300 ℃で効果処理を行うことによって構成される。なお、前記貫通孔2の表面側8には前記液状の導電ペースト17の注入をし易くするために、表面側8を拡径したテーパが形成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図4のように貫通孔壁面3を傾斜(テーパ)にして、液状導電ペーストの流動をスムーズにするよう工夫されているが、未だ十分ではなく、貫通孔2に注入口(表面側8)から注入した導電ペーストは貫通孔壁面3に沿って完全に行き渡らず、特に、貫通孔2下端のくさび形の開口縁部4に導電ペースト17が充填されていない気泡の巣14が発生し、硬化後の導電ペースト17に応力が加わったときに、前記気泡の巣14の部分から破断する等して接続の信頼性が損なわれるという問題があった。
【0004】また、貫通孔壁面3にテーパをつけているため、基板表面側8における開口頭部15の面積占有率が高くなり、半導体基板1上の回路パターン等を作製する有効面積が小さくなってしまうという問題があった。
【0005】また、有効面積の狭小を解決するために本発明は、半導体基板表裏両面8,9上に半導体装置等の作製を試みたが、その半導体基板1の作製時に導電ペースト17の劣化が起こる400 ℃の温度をはるかに越える、例えば、1000℃以上の高温雰囲気中に晒されるため、導電ペースト17の劣化損傷が生じ、半導体基板の表裏両面8,9に半導体装置等を形成する立体実装を展開するのは困難であった。
【0006】本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、貫通孔に通された半導体基板の表面側と裏面側とを接続する導電体の不良による断線を防止し、かつ、貫通孔の形状により回路パターン等を形成する半導体基板上の有効面積を拡大し、かつ、半導体基板装置の耐熱性を向上できる半導体基板装置およびその装置を用いた半導体装置の配線構造を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は次のように構成されている。すなわち、本発明の半導体基板装置は、半導体基板に表面と裏面を繋ぐ貫通孔が形成され、この貫通孔の表面には絶縁膜が、その絶縁膜の表面側には多結晶シリコンに不純物をドープした低抵抗層が形成され、この低抵抗層を介して半導体基板の表面側と裏面側とが導通接続されていることを特徴として構成されている。
【0008】また、本発明の半導体装置の配線構造は、上述のように作製した半導体基板装置の半導体基板の表裏両面には各々半導体装置が設けられ、この表裏両面の半導体装置は貫通孔に形成された低抵抗層を介して導通接続されていることを特徴として構成されており、また、前記半導体基板の表裏両面に設けられる半導体装置の一方側は加速度検出のセンシングエレメントであり、半導体装置の他方側は該センシングエレメントの信号処理素子であることも本発明の特徴的な構成とするところである。
【0009】
【作用】上記構成の本発明において、半導体基板に開けられた貫通孔は、その表面上に絶縁膜が、さらに、その表面に多結晶シリコン膜を積層し構成されている。前記多結晶シリコン膜は、不純物がドープされていることで低抵抗の導通手段として機能し、半導体基板の表面側と裏面側に形成された回路等は、前記導通手段を介して導通接続される。
【0010】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1には本発明の半導体装置の配線構造の実施例が示されている。図1において、シリコン半導体基板1に開けられたストレートの(テーパのない)円形貫通孔2の壁面3上に絶縁膜であるシリコン酸化膜5が、さらに、その膜上には、例えば、リンP、ホウ素B、アンチモンSb等の不純物がドープされ低抵抗となった多結晶シリコン膜6が積層され、さらに、その表面に多結晶シリコン膜7を形成して開孔部が埋められている。半導体基板1の表面側8には半導体装置である加速度センシングエレメント12が、裏面側9には他の半導体装置である該センシングエレメントの信号処理素子13が形成されており、加速度センシングエレメント12と信号処理素子13とが、表面側配線層10、裏面側配線層11および導電体として機能する多結晶シリコン膜6を介して接続されている。
【0011】なお、加速度センシングエレメント12は様々な形態で構成されるが、その一例を図3に示す。加速度センシングエレメント12はエッチング処理等によって形成される可動電極19と固定電極18等とから構成されている。
【0012】次に、半導体基板1に設けられた貫通孔2の壁面3に形成する酸化膜5および多結晶シリコン膜6,7の製造工程を図2に示す。
【0013】まず、図2(A)の工程では、シリコン半導体基板1に真直の貫通孔2を穿つ。ここでは円形であるが、特に貫通孔の形状は問わない。
【0014】(B)工程において、半導体基板1を加熱し、シリコン半導体基板表裏両面8,9上および貫通孔壁面3を酸化させ、絶縁体であるシリコン酸化膜5を形成する。
【0015】次に(C)工程で前記シリコン酸化膜5上に多結晶シリコンを積層し、さらに、多結晶シリコン膜6は、リンP、ホウ素B、アンチモンSb等の不純物を熱拡散にてドープする。このことで、多結晶シリコン膜6は低抵抗層となり、半導体基板表面側8と裏面側9上に形成された回路等を導通接続する導電体の役割をもつ層となる。
【0016】さらに、(D)工程で、多結晶シリコン膜6上に他の多結晶シリコン7あるいは予め不純物をドープした多結晶シリコン7を形成し、開孔部を埋める。
【0017】最後に、(E)工程で、シリコン半導体基板表裏両面8,9上に堆積したシリコン酸化膜5および導電体としての役割をなす多結晶シリコン膜6および多結晶シリコン膜7をドライエッチング法等で除去する。
【0018】従来技術では、貫通孔2に注入した液状導電ペースト17は完全に行き渡らず、貫通孔下端4等に充填されていない気泡の巣14が発生し、硬化後の導電ペースト17は、応力が加わったときに気泡の巣14の部分から破断していたが、上述のように構成された半導体装置では、半導体基板1上に形成された加速度センシングエレメント12と信号処理素子13とを導通接続する導電体の役割をなす多結晶シリコン膜6に破断の原因となる巣が起こらないため、接続の信頼性が高い。
【0019】また、酸化膜5および多結晶シリコン膜6,7を積層する本実施例では、液状導電ペースト17の流動をスムーズにするための貫通孔2の注入口(表面側8)を拡径するテーパを形成することを要しないから、貫通孔2の表面側8の開口面積を縮小でき、半導体基板1上の有効面積が拡大される。
【0020】さらに、導電ペースト17は400 ℃以上で劣化が始まるが、本実施例の酸化膜5および多結晶シリコン膜6,7は耐熱性があり、400 ℃以上の高温で作製される半導体装置である加速度センシングエレメント12や信号処理素子13等を半導体基板1上に形成でき、立体実装への展開が可能となる。
【0021】なお、本発明では実施例に限定されることなく、様々な形態を採ることができる。例えば、半導体基板として、シリコン以外にゲルマニウムやガリウムヒ素等の半導体基板を用いることもできる。
【0022】また、シリコン酸化膜5上に多結晶シリコン6を積層させる図2(C)の工程で、予めリンP、ホウ素B、アンチモンSb等の不純物をドープした多結晶シリコン6をシリコン酸化膜5上に積層してもよい。
【0023】さらに、貫通孔2にシリコン酸化膜5および多結晶シリコン膜6を積層した後の図2(E)の工程で、多結晶シリコン膜6上に他の多結晶シリコン7を形成し開孔部を埋めるが、前記工程は、半導体基板1上に加速度センシングエレメント12や信号処理素子13や配線層10,11を形成し易くするためになされるものであり、開孔された状態でもよい。
【0024】さらに、ここでは、半導体基板表面側8上に加速度センシングエレメント12を形成しているが、同様に共振子を形成することもできる。
【0025】
【発明の効果】本発明により、次のような効果が得られる。まず、本発明は、半導体基板に貫通孔を設け、この貫通孔に不純物をドープし低抵抗となった多結晶シリコンを積層して、半導体基板の表面側と裏面側上に形成された回路パターン等を接続する接続導電体とするものであるから、接続導電体の多結晶シリコン層中に破断の原因となる巣が発生せず、接続の信頼性が向上する。
【0026】また、貫通孔は表面側を拡径するテーパを形成することを要しないから、テーパの拡径部を設けない分だけ半導体基板の有効面積が拡大され、より多くの回路パターン等を半導体基板上に形成することができる。
【0027】また、半導体基板に設けられた貫通孔を構成している絶縁膜および多結晶シリコン膜は耐熱性に優れており、高温雰囲気中で半導体基板上に半導体装置を作製することができ、半導体基板上の立体実装への展開が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す半導体装置の配線構造図である。
【図2】実施例の半導体基板装置製造工程を示す説明図である。
【図3】加速度センシングエレメントの構成例を示す説明図である。
【図4】従来の導電ペーストを用いた半導体基板装置の基本部分を示す説明図である。
【符号の説明】
1 半導体基板
2 貫通孔
5 酸化膜
6,7 多結晶シリコン
12 加速度センシングエレメント
13 信号処理素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】 半導体基板に表面と裏面を繋ぐ貫通孔が形成され、この貫通孔の表面には絶縁膜が、その絶縁膜の表面側には多結晶シリコンに不純物をドープした低抵抗層が形成され、この低抵抗層を介して半導体基板の表面側と裏面側とが導通接続されている半導体基板装置。
【請求項2】 請求項1記載の半導体基板装置の半導体基板の表裏両面にはそれぞれ半導体装置が設けられ、この表裏両面の半導体装置は貫通孔に形成された低抵抗層を介して導通接続されている半導体装置の配線構造。
【請求項3】 半導体基板の表裏両面に設けられている半導体装置の一方側は加速度検出のセンシングエレメントであり、半導体装置の他方側は該センシングエレメントの信号処理素子である請求項2記載の半導体装置の配線構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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