説明

半導体封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いてなる半導体装置

【課題】ボイドの発生を抑制することができる、半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記の(A)および(B)成分とともに、下記の(C)成分を含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物である。(A)エポキシ樹脂。(B)フェノール樹脂および酸無水物の少なくとも一方である硬化剤。(C)特定の構造で(メタ)アクリル基を有するヘミアセタールエステル化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いてなる半導体装置に関するものであり、詳しくは、半導体封止用のシート状エポキシ樹脂組成物およびそれを用いてなるフェイスダウン構造の半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、半田接合時には、酸化膜の除去や金属表面の再酸化の防止等のために、接合部にフラックスが塗布されている。従来、このフラックスとしては、ロジン等の熱可塑性フラックスが使用されている。しかし、上記熱可塑性フラックスは接合部等に残存しやすく、熱可塑性フラックスが残存すると、基板の腐食や電気特性の低下等の問題があるため、熱可塑性フラックスを洗浄する必要がある。
【0003】
そこで、この問題を解決するため、ロジン等の熱可塑性フラックスに代えて、ヘミアセタールエステル化合物を使用した、半導体封止用樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1)。ヘミアセタールエステル化合物を熱分解すると、カルボン酸が発生し、このカルボン酸がフラックスとして機能するとともに、熱分解により発生するカルボン酸は、樹脂成分と反応して接合部等に残存しないため、洗浄の必要もなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−146159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のヘミアセタールエステル化合物は、熱分解してフラックス成分(=カルボン酸)を放出する際に、ビニルエーテルが発生し、このビニルエーテルが、アウトガスとなりボイドが発生するという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、ボイドの発生を抑制することができる、半導体封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いてなる半導体装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、下記の(A)および(B)成分とともに、下記の(C)成分を含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物を第1の要旨とする。
(A)エポキシ樹脂。
(B)硬化剤。
(C)下記の一般式(1)で表される、(メタ)アクリル基を有するヘミアセタールエステル化合物。
【化1】

【0008】
また、本発明は、半導体素子に設けられた接続用電極部と配線回路基板に設けられた回路電極部とを対向させた状態で上記配線回路基板上に半導体素子が搭載され、上記配線回路基板と半導体素子との空隙が封止樹脂層によって封止されてなる半導体装置であって、上記封止樹脂層が上記半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて形成されてなる半導体装置を第2の要旨とする。
【0009】
すなわち、本発明者は、ボイドの発生を抑制することができる、半導体封止用エポキシ樹脂組成物を得るため、鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、1分子内に(メタ)アクリル基を有するヘミアセタールエステル化合物に着目し、実験を続けた結果、(メタ)アクリル基を有するヘミアセタールエステル化合物を使用すると、熱分解してフラックス成分(=カルボン酸)を放出する際に、(メタ)アクリル基が架橋反応により高分子量化し、(メタ)アクリルポリマーとなるため、ビニルエーテルが発生することがない。そのため、上記(メタ)アクリル基を有するヘミアセタールエステル化合物を使用すると、ビニルエーテルに起因するアウトガスおよびボイド化を抑制することができることを見いだし、本発明に到達した。
【0010】
なお、本発明において、(メタ)アクリル基とは、アクリル基あるいはメタクリル基を意味する。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、上記一般式(1)で表される、(メタ)アクリル基を有するヘミアセタールエステル化合物(C成分)を含有するため、フラックス機能を発現しつつ、ボイドの発生を抑えた熱硬化が可能となる。そして、本発明の半導体装置は、配線回路基板と半導体素子との空隙が、本発明のエポキシ樹脂組成物からなる封止樹脂層によって形成されているため、実装時にボイドが発生することがなく、半導体素子と配線回路基板間との電気的接続が安定し、信頼性に優れている。
【0012】
また、上記硬化剤(B成分)が、フェノール樹脂および酸無水物の少なくとも一方であると、半導体装置の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の半導体装置を示す断面図である。
【図2】本発明の半導体装置の製造工程を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の半導体装置の製造工程を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
【0015】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物(以下、「エポキシ樹脂組成物」と略す。)は、エポキシ樹脂(A成分)と、硬化剤(B成分)と、上記一般式(1)で表される、(メタ)アクリル基を有するヘミアセタールエステル化合物(C成分)とを用いて得られるものであり、通常、液状、粉末状、もしくはシート状にして封止材料に供される。
【0016】
つぎに、これらの成分について説明する。
《エポキシ樹脂(A成分)》
上記エポキシ樹脂(A成分)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、テルペン型エポキシ樹脂等のような1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。中でも、フラックス活性の向上、接着性、ボイドの低減という点から、150℃で0.5Pa・s以下の溶融粘度であるものが好ましい。
【0017】
《硬化剤(B成分)》
上記硬化剤(B成分)としては、例えば、フェノール樹脂、酸無水物、アミン化合物等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。中でも、信頼性等の点で、フェノール樹脂、酸無水物が好ましい。
【0018】
上記フェノール樹脂とは、1分子内に2個以上のフェノール性水酸基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般をいい、例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビフェニル型ノボラック、トリフェニルメタン型、ナフトールノボラック、キシリレンノボラック、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。中でも、フェノールアラルキル樹脂やビフェニルアラルキル樹脂のような低吸湿性のものを用いることが成形性および信頼性の点から好ましい。
【0019】
また、上記フェノール樹脂としては、150℃で0.5Pa・s以下の溶融粘度であるものが好ましく、また、水酸基当量が60〜200のものが好ましく、80〜180のものが特に好ましい。
【0020】
上記硬化剤(B成分)としてフェノール樹脂を用いる場合、フェノール樹脂の含有量は、硬化性や耐熱性、耐湿信頼性の観点から、エポキシ樹脂(A成分)中のエポキシ基1当量あたり、フェノール樹脂中の水酸基当量が0.6〜1.4当量となるように配合することが好ましく、特に好ましくは0.7〜1.1当量である。
【0021】
また、上記酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0022】
上記硬化剤(B成分)として酸無水物を用いる場合、酸無水物の含有量は、上記エポキシ樹脂(A成分)中のエポキシ基1当量に対して、酸無水物中の酸無水基が0.5〜1.5当量となるような割合に設定することが好ましく、より好ましくは0.7〜1.2当量である。
【0023】
《特定の化合物(C成分)》
上記特定の化合物(C成分)としては、上記一般式(1)で表される、(メタ)アクリル基を有するヘミアセタールエステル化合物が使用される。
【0024】
上記一般式(1)において、R2で表される2価の有機基としては、例えば、炭化水素基があげられ、エーテル結合を有していても有していなくても良いが、エーテル結合を有する炭化水素基が特に好ましい。上記R2で表されるは2価の有機基の炭素数は16以下であるが、好ましくは炭素数2〜8である。上記R2で表される2価の有機基の具体例としては、−CH2−CH2−O−CH2−CH2−、−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−CH2−O−CH2−CH2−CH2−CH2−等があげられる。
【0025】
また、上記一般式(1)において、R3で表される1〜4価の有機基としては、例えば、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基(アルキル基、アルキレン基等)、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基、または芳香族炭化水素基(フェニル基、フェニレン基等)等があげられる。上記R3で表される1〜4価の有機の炭素数は、20以下であるが、特に好ましくは炭素数4〜16である。
【0026】
上記一般式(1)におけるnは、1〜4の整数を示すが、好ましくは1〜3の整数である。
【0027】
つぎに、上記一般式(1)で表される、(メタ)アクリル基を有するヘミアセタールエステル化合物(C成分)の製法について説明する。上記特定の化合物(C成分)は、例えば、下記に示すように、(メタ)アクリル基を有するビニルエーテルと、カルボン酸とを、室温〜150℃の温度範囲で反応させることにより得ることができる。
【0028】
【化2】

【0029】
上記(メタ)アクリル基を有するビニルエーテルとしては、例えば、1分子内に(メタ)アクリル基とビニルエーテル基とを有するものがあげられ、市販品として入手可能なものとしては、下記に示すアクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)や、メタクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(VEEM)等があげられる。
【0030】
【化3】

【0031】
また、上記カルボン酸としては、例えば、酢酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、スペリン酸、セバシン酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、コハク酸等があげられる。これらの中でも、入手性の観点から、5官能以下のものが好ましく、硬化物の物性等の点から、2官能以上のものが特に好ましい。
【0032】
なお、上記特定の化合物(C成分)の合成の際には、反応を促進させる目的で、リン酸ジブチル等のリン酸エステルを添加してもよく、また反応を促進させる目的で、アゾビスイソブチロニトリルや過酸化ベンソイル等のような、熱または光でラジカルを発生させる化合物を添加しても差し支えない。
【0033】
上記特定の化合物(C成分)の含有量は、半田接続性、耐熱性および耐湿信頼性の観点から、全樹脂量100重量部に対して0.1〜20重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは0.5〜15重量部、最も好ましくは1〜10重量部の範囲である。すなわち、C成分が少なすぎると、フラックス機能を充分に発揮することができなくなり、逆にC成分が多すぎると、エポキシ樹脂組成物のタック性が上昇することにより、取り扱い性が悪くなる傾向がみられるからである。
【0034】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、上記A〜C成分以外に、必要に応じて、硬化促進剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、表面調整剤、酸化防止剤、粘着付与剤や、無機材料等を配合しても差し支えない。
【0035】
上記硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、2−メチルイミダゾール、DBU〔1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7〕、DBN〔1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノネン−5〕、4P4B(テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート)等のアミン系、リン系、ホウ素系、リン−ホウ素系等の硬化促進剤があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。中でも、保存性、溶解粘度の低下という観点から、リン系、リン−ホウ素系の硬化促進剤が好ましい。
【0036】
上記硬化促進剤の含有量は、上記硬化剤(B成分)100重量部に対して1〜20重量部が好ましく、特に好ましくは2〜10重量部である。
【0037】
また、上記無機材料としては、例えば、アルミナ、シリカ、窒化珪素等の各種充填剤、銅、銀、アルミ、ニッケル、半田等の金属粒子、その他、顔料、染料等があげられる。上記無機材料の含有量は、半導体素子の電極と配線回路基板の電極との電気的接合性の観点から、組成物中の85重量%以下が好ましく、特に好ましくは80重量%以下である。
【0038】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、先に述べたように、通常、液状、粉末状、もしくはシート状にして封止材料に供されるが、シート状とする場合には、エラストマー成分を配合することが好ましい。上記エラストマー成分としては、アクリル酸エステル共重合体が好ましく、その共重合体成分としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリロニトリルやスチレン、ブタジエン等があげられる。エラストマー成分の配合割合は、シート化が可能であれば特に限定されるものではない。
【0039】
本発明のエポキシ樹脂組成物をシート化したもの(以下、「シート状エポキシ樹脂組成物」、もしくは「樹脂シート」という。)は、例えば、つぎのようにして製造することができる。すなわち、上記A〜C成分を所定量配合し、これに硬化促進剤等を必要に応じて所定量配合する。これをトルエン,メチルエチルケトン,酢酸エチル等の有機溶剤に混合溶解し、この混合溶液を離型処理したポリエステルフィルム等の基材フィルム上に塗布する。つぎに、この混合溶液を塗布した基材フィルムを50〜160℃で乾燥させ、上記トルエン等の有機溶剤を除去することにより、上記基材フィルム上に目的とするシート状エポキシ樹脂組成物を製造することができる。
【0040】
また、他の製法として、トルエン等の有機溶剤を用いることなく、各成分を配合したものを加熱溶融してシート状に押出成形することによっても目的とするシート状エポキシ樹脂組成物を製造することができる。
【0041】
そして、上記シート状エポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物は、例えば、つぎのようにして製造することができる。すなわち、上記のようにして得られたシート状エポキシ樹脂組成物を、100〜225℃、より好ましくは120〜200℃で、2〜300分間、より好ましくは3〜180分間加熱硬化することにより、目的とする硬化物を製造することができる。
【0042】
つぎに、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いた半導体装置について説明する。本発明の半導体装置は、例えば、図1に示すように、回路電極部4が形成された配線回路基板1面に、複数の接続用電極部2を介して半導体素子3が搭載された構造をとる。そして、上記配線回路基板1と半導体素子3との空隙には、本発明のエポキシ樹脂組成物からなる封止樹脂層5が形成され樹脂封止されている。
【0043】
なお、上記配線回路基板1と半導体素子3とを電気的に接続する上記複数の接続用電極部2は、予め配線回路基板1面に配設されていてもよいし、半導体素子3面に配設されていてもよい。さらには、予め配線回路基板1面および半導体素子3面の双方にそれぞれ配設されていてもよい。
【0044】
上記配線回路基板1の材質としては、例えば、セラミック基板やプラスチック基板が用いられる。上記プラスチック基板としては、例えば、エポキシ基板、ビスマレイミドトリアジン基板、ポリイミド基板等があげられる。
【0045】
上記複数の接続用電極部2の材質としては、例えば、錫−鉛バンプ、錫−銀バンプ、錫−銀−銅バンプ、錫−亜鉛バンプ、錫−亜鉛−ビスマス等の半田バンプや、金バンプ、銅バンプ等があげられる。
【0046】
上記半導体素子3としては、例えば、シリコン、ゲルマニウム等の元素半導体、ガリウムヒ素、インジウムリン等の化合物半導体等の各種の半導体が使用される。半導体素子3の大きさは、通常、幅2〜20mm×長さ2〜20mm×厚み0.1〜0.6mmに設定される。また、半導体素子3を搭載する配線回路が形成された配線回路基板1の大きさは通常、半導体素子3のサイズに合わせて、幅10〜70mm×長さ10〜70mm×厚み0.05〜3.0mmの範囲に設定される。また、マップタイプの基板(1つの配線回路基板に多くの半導体素子を実装するもの)の場合は、幅及び長さとも40mm以上に設定することができる。そして、溶解した封止樹脂が充填される、半導体素子3と配線回路基板1との間の距離は、通常、5〜100μmである。
【0047】
つぎに、本発明の半導体装置の製法の態様の一例を図面に基づき順を追って説明する。
【0048】
まず、図2に示すように、回路電極部4が形成された配線回路基板1上に、本発明のシート状エポキシ樹脂組成物6を載置する。つぎに、図3に示すように、上記シート状エポキシ樹脂組成物6上の所定位置に、複数の接続用電極部(突起電極)2が設けられた半導体素子3を載置する。つぎに、上記シート状エポキシ樹脂組成物6を加熱溶融して溶融状態とし、加圧することにより上記半導体素子3の接続用電極部2が上記溶融状態のシート状エポキシ樹脂組成物6を押しのけ、配線回路基板1の回路電極部4と接続用電極部2が接触し、かつ上記半導体素子3と配線回路基板1との間の空隙内に上記溶融状態のエポキシ樹脂組成物が充填され樹脂封止される。なお、当接する各電極間の電気的接合は、空隙部の樹脂充填を行った後、半田リフローによる金属接合により電気的導通を確保してもよく、また樹脂充填後、継続して加熱加圧し樹脂成形を行うことにより電気的導通を確保してもよい。その後、必要に応じて、エポキシ樹脂組成物の完全硬化を行うことにより、図1に示すように、半導体素子3に設けられた接続用電極部2と配線回路基板1に設けられた回路電極部4とを対向させた状態で、配線回路基板1上に半導体素子3が搭載され、かつ上記配線回路基板1と半導体素子3との空隙が上記シート状エポキシ樹脂組成物6からなる封止樹脂層5によって樹脂封止された半導体装置を製造することができる。
【0049】
なお、本発明の半導体装置の製法の他の態様としては、例えば、複数の接続用電極部(突起電極)2が設けられた半導体素子3を準備し、これに本発明のシート状エポキシ樹脂組成物6をラミネートし、ついでこれらを回路電極部4が設けられた配線回路基板1に実装した後、上記態様と同様にして、上記シート状エポキシ樹脂組成物6を加熱溶融等することにより、本発明の半導体装置(図1)を作製しても差し支えない。
【0050】
上記シート状エポキシ樹脂組成物6の大きさとしては、上記搭載される半導体素子3の大きさ(面積)に応じて適宜に設定され、通常、半導体素子3の大きさと略同じに設定することが好ましい。
【0051】
また、上記シート状エポキシ樹脂組成物6の厚みおよび重量は、上記と同様、搭載される半導体素子3の大きさおよび半導体素子3に設けられた接続用電極部2の大きさ、すなわち、半導体素子3と配線回路基板1との空隙を充填し封止することにより形成される上記封止樹脂層5の占める容積により適宜に設定される。
【0052】
このようにして得られる本発明の半導体装置の、半導体素子3と配線回路基板1との空隙間距離は、一般に、30〜300μm程度である。
【0053】
そして、上記半導体装置の製造方法において、上記シート状エポキシ樹脂組成物6を加熱溶融して溶融状態とする際の加熱温度としては、半導体素子3および配線回路基板1の耐熱性、接続用電極部2の融点、およびシート状エポキシ樹脂組成物6の軟化点と耐熱性を考慮して適宜に設定される。例えば、200〜280℃程度に設定される。
【0054】
さらに、上記溶融状態としたシート状エポキシ樹脂組成物6を上記半導体素子3と配線回路基板1との間の空隙内に充填する際には、先に述べたように加圧することが好ましく、その加圧条件としては、接続用電極部2の材質および設けられた個数等によって適宜に設定されるが、具体的には、0.98×10-3〜490×10-3N/個の範囲に設定することが好ましく、より好ましくは1.96×10-3〜196×10-3N/個である。
【実施例】
【0055】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0056】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
【0057】
〔エポキシ樹脂(A成分)〕
エポキシ樹脂A〔ナフタレン型エポキシ樹脂(エポキシ基当量142g/eg)(DIC社製、HP4032D)
エポキシ樹脂B〔トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂(エポキシ基当量169g/eg)(日本化薬社製、EPPN501HY)〕
【0058】
〔硬化剤(B成分)〕
アラルキル型フェノール樹脂(明和化成社製、MEH−7800M)と、アラルキル型フェノール樹脂(明和化成社製、MEH−7800SS)とを、3:1(重量比)で混合してなるアラルキル型フェノール樹脂(水酸基当量175g/eg)
【0059】
〔エラストマー成分〕
アクリル酸エステル共重合体〔アクリル酸エチルとアクリル酸ブチルとアクリロニトリルの共重合体(重量平均分子量450,000)(ナガセケムテックス社製、テイサンレジンSG−P3)〕
【0060】
〔硬化促進剤〕
テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート(北興化学社製、TPP−K)
【0061】
また、下記のようにして、(メタ)アクリル基を有するヘミアセタールエステル化合物A〜F(C成分)、および(メタ)アクリル基を有しないヘミアセタールエステル化合物G,H(C′成分)を調製した。
【0062】
〔ヘミアセタールエステル化合物A(C成分)〕
窒素置換した100mlの3つ口フラスコに、VEEA〔アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル〕37.2g(200mmol)、セバシン酸〔HOOC−(CH28−COOH〕20.2g(100mmol)、リン酸ジブチル0.056gを添加し、オイルバスで撹拌しながら90℃で、酸価が5mgKOH/g以下になるまで撹拌した。その後室温まで冷まし、ヘキサン/トルエン混合溶媒と5wt%炭酸水素ナトリウム水溶液とを用いて5回洗浄した後、溶液を濃縮し、下記の化学式で表されるヘミアセタールエステル化合物Aを製造した。
【0063】
【化4】

【0064】
〔ヘミアセタールエステル化合物B(C成分)〕
セバシン酸に代えて、スベリン酸〔HOOC−(CH26−COOH〕17.4g(100mmol)〕を使用する以外は、ヘミアセタールエステル化合物Aの製法と同様にして、ヘミアセタールエステル化合物Bを製造した。
【0065】
〔ヘミアセタールエステル化合物C(C成分)〕
セバシン酸に代えて、コハク酸〔HOOC−(CH22−COOH〕11.8g(100mmol)を使用する以外は、ヘミアセタールエステル化合物Aの製法と同様にして、ヘミアセタールエステル化合物Cを製造した。
【0066】
〔ヘミアセタールエステル化合物D(C成分)〕
セバシン酸に代えて、n−ヘプタン酸〔CH3(CH25COOH〕26.0g(200mmol)を使用する以外は、ヘミアセタールエステル化合物Aの製法と同様にして、ヘミアセタールエステル化合物Dを製造した。
【0067】
〔ヘミアセタールエステル化合物E(C成分)〕
セバシン酸に代えて、1,2,4−トリメリット酸14.0g(66.7mmol)を使用する以外は、ヘミアセタールエステル化合物Aの製法と同様にして、ヘミアセタールエステル化合物Eを製造した。
【0068】
〔ヘミアセタールエステル化合物F(C成分)〕
VEEAに代えて、VEEM〔メタクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル〕40.4g(200mmol)を使用する以外は、ヘミアセタールエステル化合物Aの製法と同様にして、ヘミアセタールエステル化合物Fを製造した。
【0069】
〔ヘミアセタールエステル化合物G(C′成分)〕
VEEAに代えて、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル19.6g(100mmol)を使用するとともに、セバシン酸に代えて、アジピン酸〔HOOC−(CH24−COOH〕14.6g(100mmol)を使用する以外は、ヘミアセタールエステル化合物Aの製法と同様にして、ヘミアセタールエステル化合物Gを製造した。
【0070】
〔ヘミアセタールエステル化合物H(C′成分)〕
VEEAに代えて、n−プロピルビニルエーテル17.2g(100mmol)を使用する以外は、ヘミアセタールエステル化合物Aの製法と同様にして、ヘミアセタールエステル化合物Hを製造した。
【0071】
つぎに、上記材料を用いて、以下のようにしてエポキシ樹脂組成物を調製した。
【0072】
〔実施例1〜6、比較例1〜3〕
下記の表1に示す各成分を同表に示す割合で配合したエポキシ樹脂組成物を、メチルエチルケトンに混合溶解した。この混合溶液を離型処理したポリエステルフィルム上に塗布した後、110℃で乾燥して、メチルエチルケトンを除去した。このようにして、上記ポリエステルフィルム上に、エポキシ樹脂組成物からなる樹脂シート(厚み60μm)を作製した。
【0073】
【表1】

【0074】
このようにして得られた実施例および比較例の樹脂シートを用いて、下記の基準に従い、各特性の評価を行った。これらの結果を、上記表1に併せて示した。
【0075】
〔ボイド試験〕
得られた樹脂シートをスライドガラス(厚さ1.25mm)上に積層し、さらにその上にカバーガラス(大きさ5mm×12mm×0.15mm)を積層した後、真空プレス機を用いて、減圧下、90℃、2.0kNの荷重でプレスすることにより、スライドガラスとカバーガラスとの間に樹脂シートを挟んだ評価用サンプルを作製した。つぎに、各サンプルを最大温度260℃、20secのコンベア式鉛フリー半田リフロー装置に投入し、各サンプルにボイドが発生したかどうかを目視にて評価した。評価は、ボイドが発生しなかったものを○、ボイドが発生したものを×とした。
【0076】
〔導通試験〕
配線回路基板(ガラスエポキシ基板:厚みlmm)上に、各樹脂シートを搭載した後、上記樹脂シート上の位置に接続用電極部(Sn−3.0Ag共晶半田、電極高さ60μm)を設けた半導体素子(厚み750μm、大きさ1cm×1cm)を搭載し、加熱温度185℃、荷重3g/電極個数20秒の条件で樹脂シートを加熱溶融して、基板と半導体素子とを圧着した。つぎに、270℃で荷重0.5g/電極個数、10秒加熱し、その後200℃×1時間の樹脂キュアーを行うことより半導体装置を作製した。得られた各半導体装置を基板と素子間で剥離し、目視により評価した。素子上の電極部の半田が溶融し基板側が濡れていた場合を○(合格)とし、電極の半田が基板側に濡れ広がっていない場合を×(不合格)とした。
【0077】
〔ガラス転移温度:Tg(℃)の測定〕
樹脂シートを150℃×30分加熱し、さらに200℃×30分加熱したものを、TAインスツルメント社製RSA3装置を用い、10℃/minで昇温しながらTgを測定した。
【0078】
上記表1の結果から、実施例1〜6は、(メタ)アクリル基を有するヘミアセタールエステル化合物A〜F(C成分)を含有するため、リフロー時のボイド発生も無く、通電試験においても不良なく良好な接続が形成されていることが確認された。
【0079】
これに対して、比較例1,2は、(メタ)アクリル基を有するヘミアセタールエステル化合物A〜F(C成分)に代えて、(メタ)アクリル基を有しないヘミアセタールエステル化合物G,H(C′成分)を含有するため、ヘミアセタールエステル化合物G,H由来のアウトガスによると考えられるボイドが発生した。また、比較例3はヘミアセタールエステル化合物を使用しておらず、フラックス成分(カルボン酸)が発生しないため、半田電極部の表面酸化膜を除去できず通電することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、例えば、フェイスダウン構造の半導体装置における記配線回路基板と半導体素子との空隙を樹脂封止する、シート状エポキシ樹脂組成物として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 配線回路基板
2 接続用電極部
3 半導体素子
4 回路電極部
5 封止樹脂層
6 シート状エポキシ樹脂組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)および(B)成分とともに、下記の(C)成分を含有することを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
(A)エポキシ樹脂。
(B)硬化剤。
(C)下記の一般式(1)で表される、(メタ)アクリル基を有するヘミアセタールエステル化合物。
【化1】

【請求項2】
(B)成分が、フェノール樹脂および酸無水物の少なくとも一方である請求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
半導体素子に設けられた接続用電極部と配線回路基板に設けられた回路電極部とを対向させた状態で上記配線回路基板上に半導体素子が搭載され、上記配線回路基板と半導体素子との空隙が封止樹脂層によって封止されてなる半導体装置であって、上記封止樹脂層が請求項1または2記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて形成されてなることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−131903(P2012−131903A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285198(P2010−285198)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】