説明

半導体封止用エポキシ樹脂組成物及び半導体装置

【課題】 配線幅の狭い半導体装置においても漏れ電流が発生し難い高誘電率特性を有し、かつ成形性も良好な半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 (A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、及び(D)1〜10重量%の酸化ネオジムを含有するチタン酸バリウムを必須成分として含むことを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物、好ましくは前記酸化ネオジムを含有するチタン酸バリウムの含有量が、エポキシ樹脂組成物全体に対して75〜95重量%である半導体封止用エポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI、トランジスター等の半導体素子の封止には金属缶、セラミック、エポキシ樹脂組成物等が用いられている。中でもエポキシ樹脂組成物のトランスファー成形は、低コストで且つ大量生産に適しており広く用いられている。また、信頼性の点でもエポキシ樹脂や硬化剤であるフェノール樹脂の改良により、耐湿性の向上や、半田リフローへの対応などが図られてきた。
近年の半導体の小型化への要求に応えるためチップの小型化が進んでいる。しかしチップの小型化に伴いチップ上の配線幅がより細くなり漏れ電流が増大するため、充分な小型化が出来ない問題が発生している。この問題への対応として、チップ上の保護膜の誘電率を上げ漏れ電流を抑えながらチップの小型化を図る技術が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)が、チップ製造のコストアップに繋がるという問題があった。このため通常の保護膜を用いたチップを用いても漏れ電流を防ぐことの出来る誘電率の高い封止材料が求められていた。
【0003】
【非特許文献1】木村雅秀著「特集50nm時代のLSI技術・経営”異質”の難しさに挑む Part2デバイス技術 見えてきた開発の方向性歪みSiやhigh−kを駆使」日経マイクロデバイス、2002年8月号、p44
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、配線幅の狭い半導体装置においても漏れ電流が発生し難い高誘電率な半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた半導体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
[1](A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、及び(D)1〜10重量%の酸化ネオジムを含有するチタン酸バリウムを必須成分として含むことを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
[2]前記酸化ネオジムを含有するチタン酸バリウムの含有量が、エポキシ樹脂組成物全体に対して75〜95重量%である第[1]項記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
[3]前記エポキシ樹脂組成物の硬化物の誘電率が20以上である第[1]又は[2]項記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
[4]第[1]ないし[3]項のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置、
である。
【発明の効果】
【0006】
本発明に従うと、高誘電率で且つ成形性も良好な半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及び配線幅の狭い場合においても漏れ電流が発生し難い半導体装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、硬化促進剤、及び1〜10重量%の酸化ネオジムを含有するチタン酸バリウムを必須成分として含むことにより、高誘電率で且つ、成形性も良好な半導体封止用エポキシ樹脂組成物が得られるものである。更に前記樹脂組成物はその硬化物の誘電率が高いため、チップの漏れ電流を防ぎ、PKGを小型化することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0008】
本発明に用いるエポキシ樹脂は、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造は特に限定するものではない。例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)等を用いることができる。また、これらのエポキシ樹脂は単独でも2種類以上混合して用いても良い。
【0009】
本発明に用いるフェノール樹脂は、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではない。例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有する)等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いても差し支えない。
【0010】
エポキシ樹脂とフェノール樹脂の含有割合は、全エポキシ樹脂のエポキシ基数と全フェノール樹脂のフェノール性水酸基数の比が0.8〜1.3であることが好ましく、この範囲を外れると、エポキシ樹脂組成物の硬化性の低下、或いは硬化物のガラス転移温度の低下、耐湿信頼性の低下等が生じる可能性がある。
【0011】
本発明に用いる硬化促進剤としては、エポキシ基とフェノール性水酸基との硬化反応を促進させるものであればよく、一般に封止材料に使用するものを使用することができる。例えば、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のジアザビシクロアルケン及びその誘導体、トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラ安息香酸ボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフトイックアシッドボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフトイルオキシボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフチルオキシボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、ベンゾキノンをアダクトしたトリフェニルホスフィン等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いても差し支えない。
【0012】
本発明に用いる酸化ネオジムを1〜10重量%含有するチタン酸バリウムは、樹脂組成物の硬化物において誘電率を大幅に上げることが出来る。通常のチタン酸バリウムは単体の誘電率が8000〜40000と高いが樹脂組成物に添加した場合、樹脂組成物の硬化物では高誘電化の効果が著しく低下する。しかし、チタン酸バリウムが酸化ネオジムを含有することにより樹脂組成物の硬化物での誘電率を上げる事が出来る。酸化ネオジムを含有したチタン酸バリウムは、チタン酸バリウムと酸化ネオジムを予め均一に混合し、混合物を700℃以上で仮焼成又は焼成後、粉砕することにより得ることが出来るが、製造方法としてはこれに限らない。本発明に用いる酸化ネオジムを含有するチタン酸バリウムは樹脂組成物全体に対して75〜95重量%が好ましく、より望ましくは83〜95重量%用いる。酸化ネオジムを含有するチタン酸バリウムの含有量が下限値を下回ると十分な高誘電化の効果が得られず、上限値を上回ると流動性が大幅に低下し成形性に問題が発生する恐れがある。酸化ネオジムを含有するチタン酸バリウムはシランカップリング材等により表面処理をしてもかまわない。表面処理の方法としては、他の配合原料と混合する前に酸化ネオジムを含有するチタン酸バリウムとシランカップリング剤を混合する等して表面処理しても、或いは他の配合原料との混合時に同時に表面処理してもかまわない。
【0013】
また、本発明で用いる酸化ネオジムを含有するチタン酸バリウム以外に、他種の無機充填材を併用しても差し支えない。併用する無機充填材としては、誘電率の大幅な低下が無い範囲で一般に半導体封止用エポキシ樹脂組成物に使用されているものを用いることができる。例えば、球状溶融シリカ、破砕状溶融シリカ、結晶シリカ、タルク、アルミナ、窒化珪素等が挙げられ、最も好適に使用されるものとしては、球状溶融シリカ、破砕状溶融シリカである。これらの無機充填剤は、単独でも混合して用いても差し支えない。また、これらがカップリング剤により表面処理されていてもかまわない。
【0014】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、フェノール硬化剤、硬化促進剤、酸化ネオジムを含有するチタン酸バリウムを必須成分とするが、更にこれ以外に必要に応じて、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等のシランカップリング剤や、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、アルミニウム/ジルコニウムカップリング剤等のカップリング剤、カーボンブラック、ベンガラ等の着色剤、カルナバワックス等の天然ワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス、ステアリン酸やステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸及びその金属塩類若しくはパラフィン等の離型剤、シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力添加剤、臭素化エポキシ樹脂や三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム等の難燃剤等、種々の添加剤を適宜配合しても差し支えない。
【0015】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、ミキサー等を用いて原料を充分に均一に混合した後、更に熱ロール又はニーダー等の混練機で溶融混練し、冷却、粉砕しパウダー状にする。更に得られたパウダーを必要に応じ加圧してタブレット化する。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、半導体素子等の各種の電子部品を封止し、半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の従来からの成形方法で硬化成形すればよい。
【実施例】
【0016】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。配合割合は重量部とする。
実施例1
ビフェニル型エポキシ樹脂[エポキシ当量195g/eq、軟化点55℃]
8.3重量部
フェノールノボラック樹脂A[水酸基当量105g/eq、軟化点80℃]
4.5重量部
トリフェニルホスフィン(以下TPPと言う) 0.3重量部
チタン酸バリウム1(酸化ネオジム3.5重量%含有、平均粒径27μm)
77.2重量部
溶融球状シリカ(平均粒径23μm) 8.6重量部
シランカップリング剤(γ−グリシジルトリメトキシシラン) 0.4重量部
カルナバワックス 0.4重量部
カーボンブラック 0.3重量部
をミキサーにて混合した後、熱ロールを用いて95℃で8分間混練して、冷却後粉砕しエポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を、以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0017】
評価方法
スパイラルフロー:EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、金型温度175℃、圧力6.9MPa、硬化時間120秒で測定した。単位はcm。
誘電率:低圧トランスファー成形機を用いて、成形温度175℃、圧力9.8MPa、硬化時間180秒で、直径50mm、厚さ3mmのテストピースを成形した。テストピースは175℃/4hrにてポストキュアー後、横川ヒューレットパッカード株式会社製Qメータmodel4342Aにて誘電率を測定した。測定周波数は1MHz。
【0018】
実施例2〜8、比較例1〜2
表1の配合に従い、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を得て、実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
実施例1以外で用いた成分について、以下に示す。
フェノールノボラック樹脂B[水酸基当量105g/eq、軟化点63℃]
チタン酸バリウム2(酸化ネオジム1.5重量%含有、平均粒径30μm)
チタン酸バリウム3(酸化ネオジム7.5重量%含有、平均粒径27μm)
チタン酸バリウム4(酸化ネオジム0.1重量%含有、平均粒径31μm)
【0019】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の樹脂組成物は、その硬化物の誘電率が高く、チップの漏れ電流を防ぎ、PKGを小型化することができるため、メモリー、ASIC等、小型化への要求が強い半導体装置用として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)硬化促進剤、及び(D)1〜10重量%の酸化ネオジムを含有するチタン酸バリウムを必須成分として含むことを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記酸化ネオジムを含有するチタン酸バリウムの含有量が、エポキシ樹脂組成物全体に対して75〜95重量%である請求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂組成物の硬化物の誘電率が20以上である請求項1又は2記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置。

【公開番号】特開2006−1986(P2006−1986A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177821(P2004−177821)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】