説明

半導体封止用エポキシ樹脂組成物及び半導体装置

【課題】 半導体素子を搭載した半導体装置を封止する際に使用される半導体封止用エポキシ樹脂組成物、詳細には、耐熱性、耐湿性に優れた硬化物を与えることができ、室温保管時の流動性低下が少なく、封止時の流動時間が長いために、ボイド等の発生や金線流れが少ないといった特徴を有する半導体封止用潜在性エポキシ樹脂組成物の提供、及び該組成物で封止された高信頼性の半導体装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 少なくとも、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び(C)硬化促進剤を含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物において、
前記(C)成分である硬化促進材が、カルボキシル基を有するモノビニル単量体(c1)単位と多官能性単量体(c2)単位からなる重合体(c3)の粒子と、イミダゾール化合物(c4)との反応生成物であることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及び、該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物で封止された半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体デバイスは樹脂封止型のダイオード、トランジスター、IC、LSI、超LSIが主流であるが、エポキシ樹脂が他の熱硬化性樹脂に比べ成形性、接着性、電気特性、機械特性、耐湿性等に優れているため、エポキシ樹脂組成物で半導体装置を封止することが一般的である。これらの用途に用いられるエポキシ樹脂組成物は、特に信頼性の面からフェノール樹脂硬化性組成物が使用されている。フェノール樹脂硬化性組成物は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、および硬化触媒が主成分であり、硬化触媒としてはリン系化合物、イミダゾール系化合物、ジアザビシクロウンデセンなどの3級アミンなどが主に幅広く使用されている。中でもイミダゾール化合物を用いたものは、エポキシ樹脂組成物の架橋度が上がり、高いガラス転移温度(Tg)を有する高耐熱性樹脂硬化物を与えることから、幅広く利用されている。
【0003】
一方でここ数年、電子機器の小型化、軽量化、高性能化へと進む市場に伴い、半導体素子の高集積化がますます進み、また半導体装置の実装技術が促進される中で、半導体封止材として用いられているエポキシ樹脂への要求はますます厳しくなってきている。半導体デバイスのパッケージ構造は、TSOP、TQFP、BGA、オーバーモールドアンダーフィルタイプなど、薄型化、小型化しており、更には配線として使用される金線の直径も従来の25μmから20μm以下、例えば15μmと細線化しかつ配線数も200線を越える微細な構造となってきている。
このような薄型化、小型化している半導体装置では、封止時の少しの金線変形がショート不良等の原因となり、歩留りよくパッケージを生産するためには、成形中の金線変形を抑制する必要があり、封止材には高流動性、高潜在性が要求される。また、パッケージ反りの抑制のために、低い線膨張係数や高いガラス転位温度が要求されている。
【0004】
このように、半導体デバイスを封止するには、潜在性に優れ、かつ流動性に優れるエポキシ樹脂組成物が必要であるが、従来のイミダゾール触媒を使用した組成物では十分な成型性を得ることができず、高耐熱性と高流動性を兼ね備えた樹脂組成物の開発が必要とされていた。
【0005】
このような問題に対処するため、イミダゾール化合物にエポキシ樹脂用硬化剤としての潜在性を付与させる方法として、特許文献1では、酢酸等の脂肪族モノカルボン酸、乳酸等の脂肪族ヒドロキシモノカルボン酸、又はサリチル酸等の芳香族ヒドロキシモノカルボン酸とイミダゾール化合物との反応生成物が提案されている。また、特許文献2では、カルボキシル基を含有するミクロゲルとイミダゾール化合物との反応生成物が提案されている。しかしながら、これらの方法においても、エポキシ樹脂と混合した場合に、充分な潜在性が付与されているとはいえないのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−84426号公報
【特許文献2】特開平10−67819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、半導体素子を搭載した半導体装置、特には薄型の半導体装置を封止する際に使用される半導体封止用エポキシ樹脂組成物、詳細には、耐熱性、耐湿性に優れた硬化物を与えることができ、室温保管時の流動性低下が少なく、封止時の流動時間が長いために、ボイド等の発生や金線流れが少ないといった特徴を有する半導体封止用潜在性エポキシ樹脂組成物の提供、及び該組成物で封止された高信頼性の半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明によれば、少なくとも、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び(C)硬化促進剤を含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物において、前記(C)成分である硬化促進材が、カルボキシル基を有するモノビニル単量体(c1)単位と多官能性単量体(c2)単位からなる重合体(c3)の粒子と、イミダゾール化合物(c4)との反応生成物であることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0009】
このような半導体封止用エポキシ樹脂組成物であれば、潜在性及び流動性に優れ、耐熱性に優れる硬化物を与えることができる。即ち、室温保管時の流動性低下が少なく、封止時の流動時間が長いために、ボイド等の発生や金線流れが少ないといった特徴を有するため、高信頼性の半導体装置を製造するための半導体封止用として用いることができる。
【0010】
また、前記(C)成分である硬化促進剤において、カルボキシル基を有するモノビニル単量体(c1)が、フタル酸−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル又はヘキサヒドロフタル酸−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルを50質量%以上含有するものであることが好ましい。
【0011】
カルボキシル基を有するモノビニル単量体(c1)の中でも、重合安定性の観点から、(メタ)アクリル酸、フタル酸−2−メタクリロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸−2−メタクリロイルオキシエチルが好ましく、特に、カルボキシル基を有するモノビニル単量体(c1)がフタル酸−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル又はヘキサヒドロフタル酸−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルを50質量%以上含有するものであれば、より流動性及び潜在性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物を得ることができる。
【0012】
また、前記半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、前記(C)成分である硬化促進剤を、前記(A)成分と前記(B)成分の合計量100質量部に対し、0.5〜10質量部含有するものであることが好ましい。
【0013】
このように、(C)成分である硬化促進剤が、(A)成分と(B)成分の合計量100質量部に対し、0.5質量部以上であれば充分にエポキシ樹脂を硬化させることができ、また、10質量部以下であればエポキシ樹脂組成物の著しい粘度上昇が起きる恐れがないために好ましい。
【0014】
また、前記半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、更に、(D)無機質充填剤を、前記(A)成分と前記(B)成分の合計量100質量部に対し、200〜1000質量部含有するものであることが好ましい。
【0015】
このように、(D)無機質充填剤を、硬化物の機械的強度を向上するために添加することができ、この(D)無機質充填剤の配合量が200質量部以上であれば、目的の線膨張係数を得ることができない恐れがなく、1000質量部以下であれば、増粘によるモールドの未充填不良や柔軟性が失われることで、半導体装置内の素子の剥離等が発生する恐れがない。
【0016】
また、前記半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、更に、(E)イオン捕捉剤を、前記(A)成分と前記(B)成分の合計量100質量部に対し、2〜20質量部含有するものであることが好ましい。
【0017】
このように、半導体封止用として、更に、(E)イオン捕捉剤(イオントラップ剤)を含有することが好ましく、(E)イオン捕捉剤の添加量が、2質量部以上であれば十分なイオントラップ効果を得ることができ、また20質量部以下であれば、流動性の低下を引き起こす恐れがないために好ましい。
【0018】
また、本発明では、前記半導体封止用エポキシ樹脂組成物にて封止されたものであることを特徴とする半導体装置を提供する。
【0019】
このように、前記半導体封止用エポキシ樹脂組成物にて封止された半導体装置であれば、前記半導体封止用エポキシ樹脂組成物が室温保管時の流動性低下が少なく貯蔵安定性に優れているのに加え、封止時の流動時間が長いために、ボイドなどの発生が少なく、金線流れが少ないといった高信頼性の半導体パッケージを得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の半導体封止用樹脂組成物であれば、潜在性に優れるため、室温保管時の流動性低下が少なく貯蔵安定性に優れている。そして、封止時の流動時間が長いためにボイドなどの発生が少なく、金線流れが少ないといった高信頼性の半導体パッケージを得るのに有用である。また、本発明の半導体封止用樹脂組成物は、線膨張係数が小さく、高いガラス転移温度を有しながら、耐湿信頼性にも優れるという特徴をも有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いた片面封止型エリア実装型半導体装置の一例の断面図を示す。
【図2】本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いたQFP型半導体装置の一例の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明をより詳細に説明する。
上記のように、半導体装置を封止するための封止材として、エポキシ樹脂と混合した場合に、耐熱性、耐湿性に優れる硬化物を与えることができ、高い流動性及び充分な潜在性が付与されている半導体封止用エポキシ樹脂組成物の開発が望まれていた。
【0023】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、少なくとも、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び(C)硬化促進剤を含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物において、(C)成分である硬化促進材が、カルボキシル基を有するモノビニル単量体(c1)単位と多官能性単量体(c2)単位からなる重合体(c3)の粒子と、イミダゾール化合物(c4)との反応生成物である半導体封止用エポキシ樹脂組成物が、潜在性および流動性に優れ、耐熱性に優れる硬化物を与えることを見出し本発明に至った。
【0024】
即ち、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、少なくとも、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び(C)硬化促進剤を含有し、この他にも(D)無機質充填剤、(E)イオン捕捉剤、その他の添加剤を配合することができる。以下に本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物について詳細に説明する。
【0025】
(A)エポキシ樹脂
(A)エポキシ樹脂成分としては、特に限定するものではなく、従来公知のエポキシ樹脂、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールプロパン型エポキシ樹脂等のトリフェノールアルカン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を使用することができる。エポキシ樹脂としては、上記したものを適宜組み合わせてもよいが、特に、以下に示す(D)無機質充填剤を高充填しかつ高流動化するためにはビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂が望ましい。なお、これらエポキシ樹脂は、軟化点が50〜100℃でエポキシ当量が100〜400(単位:g/eq)であることが望ましい。
【0026】
(B)硬化剤
(B)硬化剤としては、フェノール樹脂、酸無水物化合物、アミン系化合物等が用いられるが、信頼性を上げるためにはフェノール樹脂が広く使われる。フェノール樹脂としては特に限定されるものではなく、従来公知のフェノール樹脂、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、フェノールアラルキル型フェノール樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、トリフェノールメタン型フェノール樹脂、トリフェノールプロパン型フェノール樹脂等のトリフェノールアルカン型フェノール樹脂、脂環式フェノール樹脂、複素環型フェノール樹脂、ビスフェノールA型フェノール樹脂、ビスフェノールF型フェノール樹脂等のビスフェノール型フェノール樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を使用することができる。これらフェノール樹脂としては、軟化点が60〜120℃であり、フェノール性水酸基当量が90〜300の範囲のものが望ましい。
上記フェノール樹脂の使用量は、(A)エポキシ樹脂中のエポキシ基と(B)硬化剤としてのフェノール樹脂中の水酸基との当量比が0.5〜2、特に0.8〜1.3の範囲となる量が好ましいが、通常エポキシ樹脂100質量部に対してフェノール樹脂を30〜100質量部、特に40〜70質量部の範囲で使用することが好適である。フェノール樹脂の使用量が30質量部以上であれば、十分な強度を確実に得ることができ、100質量部以下であれば未反応のフェノール樹脂が残って耐湿性が低下してしまう恐れがないために好ましい。
【0027】
(C)硬化促進剤
(C)成分である硬化促進剤は、カルボキシル基を有するモノビニル単量体(c1)単位と多官能性単量体(c2)単位からなる重合体(c3)の粒子と、イミダゾール化合物(c4)との反応生成物である。以下、(C)硬化促進剤について詳細に説明する。
【0028】
本発明の重合体(c3)は、カルボキシル基を有するモノビニル単量体(c1)単位を含有する。
カルボキシル基を有するモノビニル単量体(c1)単位を構成するための原料であるカルボキシル基を有するモノビニル単量体(c1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、マレイン酸、モノメチルマレート、モノエチルマレート、フマル酸、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、イタコン酸、桂皮酸、クロトン酸、4−ビニルフェニル酢酸、p−ビニル安息香酸等が挙げられる。これらのカルボキシル基を有するモノビニル単量体(c1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
これらのカルボキシル基を有するモノビニル単量体(c1)の中でも、重合安定性の観点から、(メタ)アクリル酸、フタル酸−2−メタクリロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸−2−メタクリロイルオキシエチルが好ましい。尚、本発明において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」又は「メタクリレート」を表す。
【0030】
カルボキシル基を有するモノビニル単量体(c1)の組成としては、特に制限されるも
のではないが、カルボキシル基を有するモノビニル単量体(c1)100質量%中、フタ
ル酸−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル又はヘキサヒドロフタル酸−2−(メタ)
アクリロイルオキシエチルの含有率が50質量%以上であることが好ましく、70質量%
以上であることがより好ましい。フタル酸−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル又はヘキサヒドロフタル酸−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルを50質量%以上含有するものであれば、より流動性及び潜在性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂組成物を得ることができる。
【0031】
本発明の重合体(c3)は、多官能性単量体(c2)単位を含有する。多官能性単量体(c2)単位を構成するための原料である多官能性単量体(c2)としては、例えば、アリル(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジビニルアジペート、ジビニルベンゼン、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの多官能性単量体(c2)の中でも、重合安定性の観点から、アリル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0032】
重合体(c3)100質量%中の単量体単位の含有率としては、(c1)単位が1〜99.9質量%、(c2)単位が0.1〜99質量%であることが好ましく、(c1)単位が20〜99.7質量%、(c2)単位が0.3〜80質量%であることがより好ましく、(c1)単位が25〜99.5質量%、(c2)単位が0.5〜75質量%であることが更に好ましい。また、カルボキシル基を有するモノビニル単量体(c1)単位及び多官能単量体(c2)単位以外のその他の単量体(c’)単位は、重合体(c3)中に含まない。重合体(c3)100質量%中のカルボキシル基を有するモノビニル単量体(c1)単位の含有率が1質量%以上であると、重合体(c3)とイミダゾール化合物(c4)との反応点が得られ、エポキシ樹脂へ配合した際に貯蔵安定性が良好となる。また、重合体(c3)100質量%中のカルボキシル基を有するモノビニル単量体(c1)単位の含有率が99.9質量%以下であると、重合体(c3)が架橋粒子となり、エポキシ樹脂へ配合した際にエポキシ樹脂組成物の増粘が抑制できる。
重合体(c3)100質量%中の多官能単量体(c2)単位の含有率が0.1質量%以上であると、重合体(c3)が架橋粒子となり、エポキシ樹脂へ配合した際にエポキシ樹脂組成物の増粘が抑制できる。また、重合体(c3)100質量%中の多官能単量体(c2)単位の含有率が99質量%以下であると重合体(c3)とイミダゾール化合物(c4)との反応点が得られ、エポキシ樹脂へ配合した際に貯蔵安定性が良好となる。
【0033】
重合体(c3)の粒子の質量平均一次粒子径としては、10〜10000nmであることが好ましく、50〜5000nmがより好ましく、100〜3000nmが更に好ましい。重合体(c3)の粒子の質量平均一次粒子径が10nm以上であると、エポキシ樹脂へ配合した際にエポキシ樹脂組成物の増粘や分散不良を抑制することができる。また、重合体(c3)の粒子の平均一次粒子径が10000nm以下であると、カルボキシル基の含有量が多い重合体(c3)を合成する際の分散安定性が良好となる。重合体(c3)の重合方法としては、粒子の形状を有する重合体(c3)が得られれば特に制限はなく、乳化重合法、ソープフリー重合法、懸濁重合法、微細懸濁重合法等の公知の重合方法が挙げられる。これらの重合方法の中でも、イミダゾール化合物(c4)との反応の観点から、乳化重合法であることが好ましい。
【0034】
イミダゾール化合物(c4)は、イミダゾール環を有するものであれば特に制限されない。イミダゾール化合物(c4)としては、例えば、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2’−ウンデシルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2’−エチル,4−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾールが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中で、水溶性が高い、2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールが好ましい。
【0035】
イミダゾール化合物(c4)の使用量は、本エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性の観点から、重合体(c3)が含有するカルボキシル基の化学量論量1に対し、イミダゾール化合物(c4)が含有するイミダゾール環の化学量論量が0.1〜1.2であることが好ましく、0.3〜1.0であることがより好ましい。
【0036】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物に含有される(C)硬化促進剤は、重合体(c3)の粒子中のカルボキシル基とイミダゾール化合物(c4)のイミダゾール環を反応させて得られる。重合体(c3)の粒子中のカルボキシル基とイミダゾール化合物(c4)のイミダゾール環を反応させる方法としては、例えば、10〜80℃で重合体(c3)の粒子とイミダゾール化合物(c4)を接触・混合させることにより達成できる。具体的には、重合体(c3)を乳化重合法で製造し、得られたラテックスに室温で撹拌しながらイミダゾール化合物(c4)を添加する方法が挙げられる。尚、前記方法において、イミダゾール化合物(c4)は、予め水又はイソプロピルアルコール等の溶媒に溶解した溶液の状態で添加する方法が好ましい。得られた硬化促進剤のラテックスは、公知の方法によって粉体として回収することができる。例えば、塩析又は酸析による方法、凍結乾燥、噴霧乾燥による方法が挙げられるが、噴霧乾燥による方法が好ましい。噴霧乾燥による方法であれば硬化促進剤にかかる熱履歴が少ないため硬化促進剤の特性を損なうことが少ない。
【0037】
(A)エポキシ樹脂への(C)硬化促進剤の配合量は、(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤の合計量100質量部に対して0.5質量部〜10質量部であり、好ましくは2〜10質量部である。(C)硬化促進剤が、0.5質量部以上であれば充分にエポキシ樹脂を硬化させることができ、また、10質量部以下であればエポキシ樹脂組成物の著しい粘度上昇が起きる恐れがないために好ましい。
【0038】
(D)無機質充填剤
(D)無機質充填剤は、硬化物の機械的強度を向上するために添加することができる。
(D)無機質充填剤として、例えば、溶融シリカ、溶融球状シリカ、結晶性シリカ等のシリカ類、窒化珪素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、三酸化アンチモン等が挙げられる。これら無機質充填剤の平均粒径や形状は特に限定されないが、平均粒径は通常5〜50μmである。なお、平均粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D50(又はメジアン径)として求めることができる。
【0039】
特に、溶融シリカ、溶融球状シリカが好ましく、成形性、流動性からみて、平均粒径の上限値が50μm、好ましくは45μmであり、平均粒径の下限値が5μm、好ましくは7μm、より好ましくは10μmである溶融シリカ、または溶融球状シリカがよい。また、樹脂組成物の高流動化を得るためには、平均粒径が3μm以下の微細領域、4〜8μmの中粒径領域、10〜50μmの粗領域のものを組み合わせて使用し、上記平均粒径とすることが望ましい。特に狭部を有するプレモールドパッケージを成形する場合やアンダーフィル材として使用する場合は、狭部の厚みに対し平均粒径が1/2である無機質充填剤を使用することが好ましい。
【0040】
上記(D)無機質充填剤は、シリコーン樹脂との結合強度を強くするため、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などのカップリング剤で予め表面処理したものを配合してもよい。
このようなカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性アルコキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ官能性アルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性アルコキシシランなどを用いることが好ましい。なお、表面処理に用いるカップリング剤の配合量及び表面処理方法については特に制限されるものではない。
【0041】
(D)無機質充填剤の配合量は、(A)成分と(B)成分の合計量100重量部に対し、200〜1000質量部が好ましい。200質量部以上であれば、より確実に目的の線膨張係数を得ることができ、1000質量部以下であれば、増粘によるモールドの未充填不良や柔軟性が失われることで、半導体装置内の素子の剥離等が発生する恐れがないために好ましい。
【0042】
(E)イオン捕捉剤
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物に含有することができる(E)イオン捕捉剤は、希土類酸化物もしくはハイドロタルサイト化合物より選ばれる少なくとも1種の化合物を用いることができる。
ハイドロタルサイト化合物は、従来公知のものを使用することができる。具体的には、下記一般式で表される化合物が、半導体封止材料のイオントラップ材として好ましい。
MgAl(OH)2x+3y+2z(CO・mH
(x,y,zはそれぞれ0<y/x≦1,0≦z/y<1.5なる関係を有し、mは整数を示す。)
希土類酸化物は、リン酸イオン、有機酸イオン等のトラップ能力に優れ、かつ高温、高湿下においても金属イオンが溶出する恐れがなく、しかも、エポキシ樹脂組成物の硬化性にも影響する恐れがないために好ましい。希土類酸化物としては、酸化ランタン、酸化ガドリニウム、酸化サマリウム、酸化ツリウム、酸化ユーロピウム、酸化ネオジム、酸化エルビウム、酸化テルビウム、酸化プラセオジウム、酸化ジスプロジウム、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム、酸化ホルミウム等が挙げられる。
【0043】
本発明では、前述のハイドロタルサイト化合物及び希土類酸化物の中から少なくとも1種、好ましくは2種類以上を使用することが望ましい。添加量としては特に制限はないが、(A)、(B)成分の合計量100質量部に対し、2〜20質量部であることが好ましく、特に3〜10質量部が好ましい。添加量が2質量部以上であれば十分なイオントラップ効果を得ることができ、また20質量部以下であれば、流動性の低下を引き起こす恐れがないために好ましい。
【0044】
その他の配合成分
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、更に必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。例えば、種々のガラスパウダーやウィスカー、シリコーンパウダー、シランカップリング剤、モリブデン酸亜鉛担持酸化亜鉛、モリブデン酸亜鉛担持タルク、ホスファゼン化合物、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の難燃剤、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、有機合成ゴム、シリコーン系等の低応力剤、カルナバワックス、酸化ポリエチレン、モンタン酸エステル等のワックス類、カーボンブラック、ケッチェンブラック等の着色剤、等の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で添加配合することができる。
【0045】
尚、前述した(C)成分以外の硬化促進剤として、(C)成分の他にトリフェニルホスフィン、トリス−p−メトキシフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等のホスフィン誘導体、ジアザビシクロウンデセン(DBU)等のシクロアミジン誘導体等の触媒を併用して添加することも可能である。これら硬化促進剤の配合量は、本発明の目的を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0046】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を成型材料として調製する場合の一般的な方法としては、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)無機質充填剤、(E)イオン捕捉剤、その他の添加剤を所定の組成比で配合し、これをミキサー等によって十分均一に混合した後、熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等による溶融混合処理を行い、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕して成形される。
【0047】
このようにして得られる本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の最も一般的な成形方法としては、低圧トランスファー成形法や圧縮成形法が挙げられる。トランスファー成形法では、トランスファー成形機を用い、成形圧力5〜20N/mm、成形温度120〜190℃で成形時間30〜500秒、特に成形温度150〜185℃で成形時間30〜180秒で行うことが好ましい。また、圧縮成形法では、コンプレッション成形機を用い、成形温度は120〜190℃で成形時間30〜600秒、特に成形温度130〜160℃で成形時間120〜300秒で行うことが好ましい。更に、いずれの成形法においても、後硬化を150〜185℃で2〜20時間行ってもよい。
【0048】
このように得られた本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、流動性、潜在性に優れ、また成形性に優れているため薄型パッケージ用の封止材として最適である。
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は半導体装置の封止材として有効に利用でき、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物で封止される半導体素子としては、特に限定されるものではなく、例えば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子等が挙げられる。本発明の半導体装置のパッケージ形態としては、特に限定されないが、例えば、デュアル・インライン・パッケージ(DIP)、プラスチック・リード付きチップ・キャリヤ(PLCC)、クワッド・フラット・パッケージ(QFP)、ロー・プロファイル・クワッド・フラット・パッケージ(LQFP)、スモール・アウトライン・パッケージ(SOP)、スモール・アウトライン・Jリード・パッケージ(SOJ)、薄型スモール・アウトライン・パッケージ(TSOP)、薄型クワッド・フラット・パッケージ(TQFP)、テープ・キャリア・パッケージ(TCP)、ボール・グリッド・アレイ(BGA)、チップ・サイズ・パッケージ(CSP)等が挙げられる。
【0049】
図1及び図2に本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物にて封止された半導体装置の一例の断面図を示す。
図1は、本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いた片面封止型エリア実装型半導体装置の一例の断面図である。基板1上にダイボンド材硬化体2を介して半導体素子3が固定されている。半導体素子3の電極パッドと基板1上の電極パッドとの間は金線4によって接続されている。本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物5によって、基板1の半導体素子3が搭載された片面側のみが封止されている。基板1上の電極パッドは基板1上の非封止面側の半田ボール6と内部で接合されている。
【0050】
図2は、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いたQFP型半導体装置の一例の断面図である。図2において、ダイパッド7上に、ダイボンド材硬化体8を介して半導体素子9が固定されている。半導体素子9の電極パッドとリードフレーム10との間は金線11によって接続されている。半導体素子9は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物12によって封止されている。
【実施例】
【0051】
以下、実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。また、下記において室温とは25℃を示す。
(実施例1〜6、比較例1〜5)
表1に記載の原料を、表1に記載した配合量で加え、連続混練機にて均一に溶融混合し、冷却、粉砕して得られたものを実施例1〜6及び比較例1〜5の半導体封止用エポキシ樹脂組成物とした。
【0052】
【表1】

(※)(A)成分と(B)成分の合計量100質量部に対するEMI量(質量部)
【0053】
上記表1中の、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)無機質充填剤、(E)イオン捕捉剤、その他添加剤を以下に示す。
【0054】
(A)エポキシ樹脂 (1) NC−3000 エポキシ当量 272(日本化薬製)
(2) YX−4000 エポキシ当量 190(JER製)
【0055】
(B)硬化剤 (1) MEH7851 フェノール当量 199(明和化成製)
(2) MEHC7800S フェノール当量175(明和化成製)
【0056】
(C)硬化促進剤 下記表2記載の、単量体(c1)、(c2)、(c’)及びイミダゾール化合物(c4)の比率を変えた硬化促進剤(1)、(2)、(3)、及び2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成製)
【0057】
【表2】

【0058】
表2中の略号は以下の化合物を示す。
MAA:メタクリル酸
PA:フタル酸−2−メタクリロイルオキシエチル
HH:ヘキサヒドロフタル酸−2−メタクリロイルオキシエチル
EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート
TMPTMA:トリメチロールプロパントリメタクリレート
MMA:メチルメタクリレート
EA:エチルアクリレート
EMI:2−エチル−4−メチルイミダゾール
尚、(C)硬化促進剤の配合量は、(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤の合計量100質量部に対して2−エチル−4−メチルイミダゾールが1.8質量部及び2.5質量部になるように配合した(※)。
また、硬化促進剤(1)、(2)、(3)においては、10質量%濃度の2−エチル−4−メチルイミダゾール水溶液の添加量は、重合体(c3)中のカルボキシル基の化学量論量1に対し、イミダゾール環の化学量論量がそれぞれ0.4、0.4、0.8となるよう添加した。
また、硬化促進剤のアミン価を、JIS K7237に従い、指示薬滴定法により測定した。
【0059】
(D)無機質充填剤(1)溶融球状シリカ:平均粒径30μm
(FB−570:電気化学工業(株)製)
無機質充填剤(2)溶融球状シリカ:平均粒径2μm
(SO−32R:アドマテック製)
無機質充填剤(3)溶融球状シリカ::平均粒径0.5μm
(SO−25R:アドマテック製)
【0060】
(E)イオン捕捉剤 DHT−4A−2 (協和化学工業(株)製)
【0061】
(その他)
カップリング材 KBM803(信越化学工業(株)製
離型材 カルナバワックス、TOWAX132(東亜化成株式会社製)
着色剤:デンカブラック(電気化学工業(株)製)
難燃剤:FP−100 ((株)伏見製薬所製)
【0062】
上記半導体封止用エポキシ樹脂組成物(実施例1〜6、比較例1〜5)について、各種特性を以下の方法により測定した。
《スパイラルフロー》
EMMI規格に準じたスパイラルフロー金型を使用して、180℃、6.9N/mm、成形時間120秒の条件でエポキシ樹脂組成物作成直後、25℃で24時間(1日)放置後、72時間(3日)放置後に各々測定した。
【0063】
《溶融粘度》
高化式フローテスターを用いて、180℃、10Kgf、ダイス径1mmの条件で、エポキシ樹脂組成物作成直後、25℃で24時間放置後、72時間放置後に各々溶融粘度を測定した。
【0064】
《熱時硬度》
エポキシ樹脂組成物を用いて、トランスファー成形(180℃×60秒)により厚み4mmの試験片を作製し、この試験片の180℃における熱時硬度をバーコール硬度計935(バーバーコールマン社製)により測定した。
【0065】
《連続成形性》
エポキシ樹脂組成物を用いて、トランスファー成形(180℃×120秒)により、ゲートサイズが2mm×0.2mm、直径50×3mmの試験片を連続して成形し、ゲート部に樹脂が残るまでの成形数をカウントした。
【0066】
《ガラス転移温度》
180℃,6.9N/mm、成形時間120秒の条件で成形した5×5×15mmの試験片を用い、TMA装置を用いでガラス転移温度を測定した。
【0067】
《金線流れ率》
10×10×0.35mmのチップがマウントされた20×20×1mmのフラットパッケージを用い、チップとリードフレームのボンディングパッドとを金線間隔50μm、金線径20μm、金線長さ5mmで配線したデバイスに175℃、70kgf/cm、120秒の条件でエポキシ樹脂組成物を成形し、軟X線透視装置で観察し、金線の変形率を(流れ量)/(金線長)の比率で表した。単位は%である。
更に、室温で72時間放置した後のエポキシ樹脂組成物を用い、同様の金線流れ率を測定した。
【0068】
《耐湿信頼性》
5μm幅、5μm間隔のアルミニウム配線を形成した6×6mmの大きさのシリコンチップを14pin−DIPフレーム(42アロイ)に接着し、更にチップ表面のアルミニウム電極とリードフレームとを25μmφの金線でワイヤボンディングした後、これにエポキシ樹脂組成物を成形条件175℃、6.9N/mm、成形時間120秒で成形し、180℃で4時間ポストキュアした。このパッケージ100個を130℃/85%RHの雰囲気中−20Vの直流バイアス電圧をかけて200時間、500時間放置した後、アルミニウム腐食が発生したパッケージ数を調べた。
【0069】
《反り量》
0.40mm厚のBT(ビスマレイミド・トリアジン)樹脂基板を用い、パッケージサイズが32×32mmで厚みが1.2mm、10×10×0.3mmのシリコンチップを搭載し175℃、6.9N/mm、キュア時間2分のトランスファー条件で成形し、その後175℃で5時間、ポストキュアを行って、サイズが32×32mmで厚みが1.2mmのパッケージを作製し、これをレーザー三次元測定機を用いてパッケージの対角線方向に高さの変位を測定し、変位差の最も大きい値を反り量とした。
【0070】
上記各種特性試験結果を以下表3に示す。
【表3】

【0071】
本発明の、モノビニル単量体(c1)単位と多官能性単量体(c2)単位のみからなる重合体(c3)とイミダゾール化合物(c4)との反応生成物である(C)硬化促進剤を含む半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、潜在性に優れるため、室温保管時の流動性低下が少なく貯蔵安定性に優れていることが判った。そして、封止時の流動時間が長いために金線流れが少ない高信頼性の半導体パッケージを得ることができ、また、反り量を小さく抑制することができた(実施例1〜6)、本発明のエポキシ樹脂組成物は半導体封止用として有効に利用することができた。一方、(C)硬化促進剤が、モノビニル単量体(c1)単位と多官能性単量体(c2)単位以外の(c’)単位を含んでいる重合体を用いたものである半導体封止用エポキシ樹脂組成物や、2−エチル−4−メチルイミダゾールを単独で加えた半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、流動性の低下、金線の断線等が観察され、反り量を小さく抑制することができなかった(比較例1〜5)。
【0072】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に含有される。
【符号の説明】
【0073】
1…基板、 2…ダイボンド材硬化体、 3…半導体素子、 4…金線、 5…硬化物、 6…半田ボール、 7…ダイパッド、 8…ダイボンド材硬化体、 9…半導体素子、 10…リードフレーム、 11…金線、 12…硬化物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び(C)硬化促進剤を含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物において、
前記(C)成分である硬化促進材が、カルボキシル基を有するモノビニル単量体(c1)単位と多官能性単量体(c2)単位からなる重合体(c3)の粒子と、イミダゾール化合物(c4)との反応生成物であることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記(C)成分である硬化促進剤において、カルボキシル基を有するモノビニル単量体(c1)が、フタル酸−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル又はヘキサヒドロフタル酸−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルを50質量%以上含有するものであることを特徴とする請求項1に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、前記(C)成分である硬化促進剤を、前記(A)成分と前記(B)成分の合計量100質量部に対し、0.5〜10質量部含有するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、更に、(D)無機質充填剤を、前記(A)成分と前記(B)成分の合計量100質量部に対し、200〜1000質量部含有するものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、更に、(E)イオン捕捉剤を、前記(A)成分と前記(B)成分の合計量100質量部に対し、2〜20質量部含有するものであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物にて封止されたものであることを特徴とする半導体装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−25805(P2012−25805A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163570(P2010−163570)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】