説明

半導体封止用フィルム状接着剤、半導体装置及びその製造方法

【課題】半導体装置の封止用に用いた場合に作業性に十分優れ、高温加熱に伴うボイドの発生を十分に抑制することによって接続信頼性に十分優れた半導体装置を製造可能な半導体封止用フィルム状接着剤を提供すること。
【解決手段】本発明の半導体封止用フィルム状接着剤は、(a)エポキシ樹脂、(b)フェノール樹脂を含有し、温度350℃で0.5秒間加熱した場合の溶融粘度をV1(Pa・s)、温度350℃で1秒間加熱した場合の溶融粘度をV2(Pa・s)、としたときに、V1及びV2が、下記式(1)及び式(2)を満たす。
V2/V1≧1.5 (1)
V1≦700 (2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止用フィルム状接着剤、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップと基板とを接続するには金ワイヤなどの金属細線を用いるワイヤボンディング方式が広く用いられてきた。しかし、最近、半導体装置は、小型化、薄型化及び高機能化することが要求される。このような要求に対応するため、半導体装置の製造プロセスとして、半導体チップにバンプと呼ばれる導電性突起を形成して、半導体チップと基板の電極とを直接接続するフリップチップ接続方式が採用されるようになってきている。
【0003】
フリップチップ接続方式によるバンプと電極との接続方法としては、はんだやスズを用いて金属接合する方法、超音波振動を印加して金属接合する方法、樹脂の収縮力によって機械的接触を保持する方法などが知られている。これらの接続方法のうち、接続部の信頼性に優れていることから、はんだやスズを用いて金属接合させる方法が主流となっている。
【0004】
最近、小型化、高機能化が進展している液晶表示モジュールは、上述のフリップチップ接続方式を採用したCOF(Chip On Film)と呼ばれる半導体装置が用いられている。そのような半導体装置では、スズめっき配線を形成したポリイミド基板上に金バンプを形成した液晶駆動用半導体チップが搭載されており、金バンプとスズめっき配線とは、金−スズ共晶の金属接合で接続されている。
【0005】
このCOFの接続では、金−スズ共晶を形成するために、接続部を共晶温度である278℃以上に加熱する必要がある。一方で、生産性向上の観点から、接続時間は例えば5秒間以内と短い時間で接続できることが求められている。このように、短時間で共晶温度(278℃)以上に加熱する必要があるために、製造装置の設定温度は300〜400℃の高温になる。
【0006】
ところで、COFでは、通常、半導体チップと基板との間の空隙部に封止樹脂を充填して、接続部を外部環境から保護し外部応力が接続部に集中することを防止するとともに、狭ピッチ配線間の絶縁信頼性を確保している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−188573公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在、封止樹脂の充填方法としては、半導体チップと基板とを接続した後に、液状樹脂を毛細管現象によって注入して樹脂硬化させる方法が一般的である。しかしながら、COFの狭ピッチ接続化に伴ってチップ−基板間の空隙部が小さくなっているために、上述の方法では、液状樹脂の注入に長時間を要することが問題となってきている。このため、チップ−基板間の空隙部が小さい場合でも、生産性に十分優れる封止樹脂の形成方法が求められている。
【0009】
そのような封止樹脂の形成方法として、チップ又は基板に接着剤を供給した後、チップと基板とを接続する方法が挙げられる。しかし、この方法は、上述の通りCOFでは300℃以上の高温に加熱して接続を行うため、接着剤に含まれる揮発成分等の発泡やスプリングバック等によるボイド(気泡)が発生することが懸念される。このようなボイドは、狭ピッチ配線間の絶縁信頼性を低下させる原因になる。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、半導体装置の封止用に用いた場合に作業性に十分優れ、高温加熱に伴うボイドの発生を十分に抑制することによって接続信頼性に十分優れた半導体装置を製造可能な半導体封止用フィルム状接着剤及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。また、封止樹脂中のボイドの量が十分に低減されており、接続信頼性に十分優れる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、(a)エポキシ樹脂、(b)フェノール樹脂を含有し、温度350℃で0.5秒間加熱した場合の溶融粘度をV1(Pa・s)、温度350℃で1秒間加熱した場合の溶融粘度をV2(Pa・s)、としたときに、V1及びV2が、下記式(1)及び式(2)を満たす半導体封止用フィルム状接着剤を提供する。
V2/V1≧1.5 (1)
V1≦700 (2)
【0012】
上述の半導体封止用フィルム状接着剤は、フィルム形状を有しているため半導体装置製造の作業性に十分優れている。また、半導体チップを基板上に実装する際の接続温度付近で、低い溶融粘度V1(700Pa・s以下)を有するため、バンプや金属電極などの埋め込み性に優れる。したがって、良好な作業性とボイド低減とを両立することができる。また、温度350℃で0.5秒間加熱した場合の溶融粘度をV1(Pa・s)、温度350℃で1秒間加熱した場合の溶融粘度をV2(Pa・s)としたときに、V2/V1で表わされる粘度増加率が1.5以上である。このため、半導体装置の製造時において、圧着ヘッドが半導体装置から離れるまでに、半導体封止用フィルムの硬化反応が十分に進行して溶融粘度が増加し、スプリングバック等に伴うボイドの発生を抑制することが可能となる。
【0013】
一方、V2/V1が1.5未満の場合、圧着ヘッドが半導体装置から離れるまでに、硬化反応が十分に進行せず、溶融粘度が増加しないため、スプリングバック等によってボイドが発生してしまう。
【0014】
すなわち、本発明は、加熱初期における低い溶融粘度(V1)と、加熱に伴う大きな増粘性とを両立することによって、半導体装置を製造するために特に好適なフィルム状接着剤を提供するものである。このような半導体封止用フィルム状接着剤は耐HAST性(超加速温湿度ストレス試験)にも十分優れている。
【0015】
本発明の半導体封止用フィルム状接着剤は、(c)ポリイミド樹脂を含有することが好ましい。また、本発明の半導体封止用フィルム状接着剤は、(d)フィラーを含有することが好ましい。これによって、良好な絶縁性と耐熱性とを兼ね備える半導体封止用フィルム状接着剤を得ることができる。
【0016】
本発明の半導体封止用フィルム状接着剤において、(c)ポリイミド樹脂の重量平均分子量が30000以上であり、ガラス転移温度が100℃以下であることが好ましい。これによって、半導体チップや基板への貼付性に優れるとともに、フィルム形成性を良好にすることができる。
【0017】
また、本発明の半導体封止用フィルム状接着剤において、(a)エポキシ樹脂及び(b)フェノール樹脂の少なくとも一方が、25℃、1気圧において固形であることが好ましい。
【0018】
本発明ではまた、バンプを有する半導体チップと金属配線を有する基板とを備える半導体装置の製造方法であって、半導体チップと基板とを、上述の半導体封止用フィルム状接着剤を介してバンプと金属配線とが互いに対向するように配置し、半導体チップと基板とを対向する方向に加圧するとともに加熱して半導体封止用フィルム状接着剤を硬化させ、バンプと金属配線とを電気的に接続する接続工程を有する半導体装置の製造方法、及び係る製造方法によって得られる半導体装置を提供する。
【0019】
この製造方法では、上記特徴を有する半導体封止用フィルム状接着剤を用いて半導体チップと基板とを接続しているため、半導体装置の製造時における作業性を十分優れたものとすることができる。また、ボイドの発生を十分に抑制することができるため、接続信頼性に十分優れる半導体装置を製造することが可能となる。
【0020】
本発明の半導体装置の製造方法における接続工程では、半導体チップと基板とを対向する方向に加圧するとともに300℃以上に加熱して、金を含有するバンプとスズめっき層を有する金属配線との間に金−スズ共晶を形成し、バンプと金属配線とを電気的に接続することが好ましい。これによって、一層接続信頼性に優れる半導体装置を製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、半導体装置の封止用に用いた場合に作業性に十分優れ、300℃以上に加熱した場合であってもボイドの発生を十分に抑制することによって、接続信頼性に十分優れた半導体装置を製造可能な半導体封止用フィルム状接着剤及び半導体装置の製造方法を提供することができる。また、封止樹脂中のボイドの量が十分に低減されており、接続信頼性に十分優れる半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の好適な実施形態に係る半導体装置の製造方法の第1工程を模式的に示す工程断面図である。
【図2】本発明の好適な実施形態に係る半導体装置の製造方法の第2工程を模式的に示す工程断面図である。
【図3】溶融粘度測定用の試料Aの作製方法を説明するための説明図である。
【図4】接続抵抗の評価に用いた半導体装置の写真である。
【図5】ボイド発生率測定用の試料Bの作製方法を説明するための説明図である。
【図6】絶縁信頼性試験に用いた試料Cを上方から撮影した写真である。
【図7】実施例1、実施例7、比較例7、実施例1−(2)、実施例7−(2)、比較例7−(2)の接続時間による溶融粘度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、場合により図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図面において、同一または同等の要素には同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。
【0024】
本実施形態に係る半導体封止用フィルム状接着剤(以下、場合により「フィルム状接着剤」という。)は、(a)エポキシ樹脂、(b)フェノール樹脂を含有し、温度350℃で0.5秒間加熱した場合の溶融粘度をV1(Pa・s)、温度350℃で1秒間加熱した場合の溶融粘度をV2(Pa・s)、としたときに、V1及びV2が、上記式(1)及び上記式(2)を満たす。
【0025】
このようなフィルム状接着剤を用いて接続した半導体装置は、半導体チップや基板と接着剤の硬化物との界面において、ボイドの量が十分に低減されていることから、良好な初期導通が得られ、接続安定性に十分に優れている。以下、フィルム状接着剤に含まれる各成分の詳細について以下に説明する。
【0026】
[(a)エポキシ樹脂]
(a)エポキシ樹脂は、分子内に2個以上のエポキシ基を有するものであることが好ましい。例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ナフタレン型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、フェノールアラルキル型、ビフェニル型、トリフェニルメタン型、ジシクロペンタジエン型、各種多官能エポキシ樹脂などが好ましい。これらのエポキシ樹脂の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
ビスフェノールA型やビスフェノールF型の液状エポキシ樹脂は、1%熱重量減少温度が250℃以下であるため、高温加熱時に分解して揮発成分が発生する恐れがある。このため、室温(1気圧、25℃)で固形のエポキシ樹脂を用いることが好ましい。なお、1%熱重量減少温度は、TG−DTA法により、セイコーインスツルメンツ社製のTG−DTA−6200(昇温速度:10℃/分)を用いて測定することができる。
【0028】
フィルム状接着剤の粘度増加率(V2/V1)を向上させる観点から、エポキシの重量平均分子量は好ましくは700〜4000である。当該重量平均分子量が700未満の場合、粘度増加率が低くなる傾向があり、4000を超えるとフィルム状接着剤の調製時の溶媒乾燥中に増粘して、V1が過大となる傾向がある。
【0029】
(a)エポキシ樹脂は、分子構造における繰り返し単位の数が2以上であることが好ましい。繰り返し単位が2未満の場合、半導体チップと基板との接続工程中に、フィルム状接着剤が十分に増粘せず、粘度増加率(V2/V1)が小さくなる傾向がある。
【0030】
(a)エポキシ樹脂の一分子中における官能基数は3以上であることが好ましい。当該官能基数が3未満の場合、半導体チップと基板との接続工程中に、フィルム状接着剤が十分に増粘せず、粘度増加率(V2/V1)が小さくなる傾向がある。
【0031】
[(b)フェノール樹脂]
(b)フェノール樹脂は、分子内に2個以上のフェノール性水酸基を有するものが好ましい。例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールナフトールホルムアルデヒド重縮合物、トリフェニルメタン型多官能フェノール、各種多官能フェノール樹脂などが挙げられる。これらのフェノール樹脂の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
高温加熱時に、分解によって揮発成分が発生することを抑制する観点から、室温(1気圧、25℃)で固形のフェノール樹脂を用いることが好ましい。フィルム状接着剤の粘度増加率(V2/V1)を向上させる観点から、フェノール樹脂の重量平均分子量は、好ましくは500〜4000である。当該重量平均分子量が500未満の場合、粘度増加率(V2/V1)が小さくなる傾向がある。一方、当該重量平均分子量が4000を超えると、フィルム状接着剤調製時において、溶媒乾燥中に増粘して、V1が過大となる傾向がある。
【0033】
(b)フェノール樹脂は、分子構造における繰り返し単位の数が2以上であることが好ましい。繰り返し単位が2未満の場合、半導体チップと基板との接続工程中に、フィルム状接着剤が十分に増粘せず、粘度増加率(V2/V1)が小さくなる傾向がある。
【0034】
(b)フェノール樹脂の一分子中における官能基数は3以上であることが好ましい。当該官能基数が3未満の場合、半導体チップと基板との接続工程中に、フィルム状接着剤が十分に増粘せず、粘度増加率(V2/V1)が小さくなる傾向がある。また、大きい粘度増加率(V2/V1)を得る観点から、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1.0に近いほうが好ましい。
【0035】
(a)エポキシ樹脂のエポキシ基と(b)フェノール樹脂の水酸基との当量比(水酸基/エポキシ基)は、フィルム状接着剤の硬化性や接着性、保存安定性などの観点から、0.4〜1.2となるように調整することが好ましい。該当量比は、0.4〜1.0であることがより好ましく、0.4〜0.9であることがさらに好ましい。該当量比が0.4未満の場合、フィルム状接着剤の硬化性が低下して接着力が損なわれる傾向がある。一方、該当量比が1.2を超えると、フィルム状接着剤を硬化させた後も未反応のフェノール性水酸基が過剰に残存することとなり、その結果、吸水率が高くなって十分優れた絶縁信頼性が損なわれる傾向がある。
【0036】
粘度増加率(V2/V1)を一層高くするために、以下の点を考慮して、(a)エポキシ樹脂と(b)フェノール樹脂とを選択することが好ましい。
【0037】
[1](a)エポキシ樹脂及び(b)フェノール樹脂の少なくとも一方が、繰り返し単位を2以上含むものとする。
【0038】
[2](a)エポキシ樹脂及び(b)フェノール樹脂の双方の官能基数が3以上であるものとする。
【0039】
本実施形態のフィルム状接着剤は、粘度や硬化物の物性を制御するために硬化促進剤を含んでいてもよい。硬化促進剤の種類に特に制限はなく、フィルム状接着剤の組成に応じて選択することができる。例えば、350℃以上の温度におけるフィルム状接着剤の溶融粘度が250Pa・s以下であり、350℃で1秒間以上圧着した際のボイド発生率が3%以下になるように選定することが好ましい。
【0040】
硬化促進剤としては、ホスフィン類やイミダゾール類が挙げられる。ホスフィン類としては、例えば、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ(4−メチルフェニル)ボレート、テトラフェニルホスホニウム(4−フルオロフェニル)ボレートなどが挙げられる。
【0041】
イミダゾール類としては、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノ−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールトリメリテート、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加体、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、エポキシ樹脂とイミダゾール類の付加体などが挙げられる。
【0042】
中でも、硬化性や保存安定性の観点から、イミダゾール類と有機酸との付加体である、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールトリメリテート、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加体、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体や、高融点イミダゾールである2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾールが好ましい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらをマイクロカプセル化して潜在性を高めたものを用いてもよい。
【0043】
硬化促進剤の配合量としては、質量比で(a)エポキシ樹脂に対して0.001〜0.1の比率であることが好ましく、0.001〜0.05の比率であることがより好ましく、0.001〜0.03の比率であることがさらに好ましい。該質量比が0.001未満の場合、フィルム状接着剤の優れた硬化性が損なわれる傾向があり、0.1を超える場合、金−スズ共晶による接続部が形成される前にフィルム状接着剤が硬化してしまい、接続不良が発生する傾向がある。
【0044】
本実施形態のフィルム状接着剤は、例えば半導体チップとポリアミド基板との間に介在させて、350℃の温度で1秒間以上の圧着を行った場合に、ボイド発生率が3%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましい。ボイド発生率が3%より大きいと、狭ピッチ配線間にボイドが残存し、優れた絶縁信頼性が損なわれる傾向がある。なお、ボイド発生率とは、圧着部分において、半導体チップやポリイミド基板などの部材とフィルム状接着剤との接触部分の面積全体に対する、ボイドが発生した面積の比率として求めることができる。
【0045】
[(c)ポリイミド樹脂]
(c)ポリイミド樹脂は、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを公知の方法で縮合反応させて得ることができる。より具体的には、有機溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを等モルの比率又はほぼ等モルの比率で配合し(各成分の添加順序は任意)、80℃以下、好ましくは0〜60℃の温度で付加反応させる。反応が進行するにつれて反応液の粘度が徐々に上昇し、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が生成する。なお、フィルム状接着剤の諸特性の低下を抑えるため、上記のテトラカルボン酸二無水物は無水酢酸で再結晶精製処理を施しておくことが好ましい。
【0046】
生成したポリアミド酸は、50〜80℃の温度で加熱して解重合させることによって、その分子量を調整することができる。ポリイミド樹脂は、上述の反応物すなわちポリアミド酸を脱水閉環させて得ることができる。脱水閉環は、加熱処理する熱閉環法と、脱水剤を使用する化学閉環法とで行うことができる。
【0047】
ポリイミド樹脂の原料として用いられるテトラカルボン酸二無水物に特に制限はなく、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2’,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メチルフェニルシラン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニルジメチルシリル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシクロヘキサン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリテート無水物)、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(エキソ−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタン−2,3−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ−〔2,2,2〕−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2、−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル〕プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェニル)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、1,3−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼンビス(トリメリット酸無水物)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物を用いることができる。
【0048】
また、下記一般式(I)及び(II)で表されるテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。
【0049】
【化1】

【0050】
上記一般式(I)中、rは2〜20の整数を示す。
【0051】
上記一般式(I)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、例えば、無水トリメリット酸モノクロライド及び対応するジオールから合成することができる。具体的には1,2−(エチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,3−(トリメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,4−(テトラメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,5−(ペンタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,6−(ヘキサメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,7−(ヘプタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,8−(オクタメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,9−(ノナメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,10−(デカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,12−(ドデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,16−(ヘキサデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)、1,18−(オクタデカメチレン)ビス(トリメリテート無水物)等が挙げられる。
【0052】
これらの中でも、フィルム状接着剤に優れた耐湿信頼性を付与できる点から、下記一般式(II)で表されるテトラカルボン酸二無水物が好ましい。これらのテトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0053】
【化2】

【0054】
上記式(II)で表されるテトラカルボン酸二無水物の配合量は、テトラカルボン酸二無水物全体に対して40モル%以上であることが好ましく、50モル%以上があることがより好ましく、70モル%以上であることがさらに好ましい。該配合量が、40モル%未満の場合、上記式(II)で表されるテトラカルボン酸二無水物を使用したことによる耐湿信頼性の効果を十分に得ることが困難になる傾向がある。
【0055】
ポリイミド樹脂の原料に用いられるジアミンとしては特に制限はなく、例えば、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジイソプロピルフェニル)メタン、3,3’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、4,4’−ジアミノジフェニルジフルオロメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルケトン、3,4’−ジアミノジフェニルケトン、4,4’−ジアミノジフェニルケトン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−(3,4’−ジアミノジフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−(3,4’−ジアミノジフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、3,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、4,4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフィド、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、3,5−ジアミノ安息香酸等の芳香族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパンを用いることができる。
【0056】
ジアミンとしては、下記一般式(III)で表される脂肪族エーテルジアミン、下記一般式(IV)で表される脂肪族ジアミン又は下記一般式(V)で表されるシロキサンジアミンも用いることができる。
【化3】

【0057】
上記一般式(III)中、Q、Q及びQは各々独立に炭素数1〜10のアルキレン基を示し、sは2〜80の整数を示す。
【化4】

【0058】
上記一般式(IV)中、kは5〜20の整数を示す。
【0059】
【化5】

【0060】
上記一般式(V)中、Q及びQは各々独立に炭素数1〜5のアルキレン基又は置換基を有してもよいフェニレン基を示し、Q、Q、Q、及びQは各々独立に炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基又はフェノキシ基を示し、pは1〜5の整数を示す。
【0061】
上述したジアミンのうち、優れた低応力性、ラミネート性、接着性を有するフィルム状接着剤を得る観点から、上記一般式(III)、又は(IV)で表されるジアミンが好ましい。また、良好な低吸水性、低吸湿性を有するフィルム状接着剤を得る観点から、上記一般式(V)で表されるジアミンが好ましい。これらのジアミンは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。この場合、上記一般式(III)で表される脂肪族エーテルジアミンがジアミン全体の1〜50モル%、上記一般式(IV)で表される脂肪族ジアミンがジアミン全体の20〜80モル%、または上記一般式(V)で表されるシロキサンジアミンがジアミン全体の20〜80モル%であることが好ましい。上記各ジアミンが上記モル%の数値範囲外である場合、良好なラミネート性、低吸水性が得られ難くなる傾向がある。
【0062】
また、上記一般式(III)で表される脂肪族エーテルジアミンとしては、具体的には、式(III−1)〜(III−5)の脂肪族エーテルジアミンを挙げることができる。なお、一般式(III−4)及び(III−5)中、aは1以上の整数を表す。
【0063】
【化6】

【0064】
上記一般式(III−4)で表される脂肪族エーテルジアミンの重量平均分子量は、例えば、350、750、1100又は2100であることが好ましい。また、上記一般式(III−5)で表される脂肪族エーテルジアミンの重量平均分子量は、例えば230、400又は2000であることが好ましい。
【0065】
上記脂肪族エーテルジアミンのうち、低温ラミネート性と有機レジスト付き基板に対する良好な接着性とを確保できる点で、下記一般式(VI)で表される脂肪族エーテルジアミンがより好ましい。
【化7】

【0066】
上記一般式(VI)中、mは2〜80の整数を示す)
【0067】
上記一般式(VI)で表される脂肪族エーテルジアミンとしては、具体的には、サン テクノケミカル株式会社製のジェファーミン D−230,D−400,D−2000,D−4000,ED−600,ED−900,ED−2001及びEDR−148(以上、商品名)、並びにBASF製ポリエーテルアミンD−230,D−400及びD−2000(以上、商品名)等のポリオキシアルキレンジアミン等の脂肪族ジアミンが挙げられる。
【0068】
また、上記一般式(IV)で表される脂肪族ジアミンとしては、例えば、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン等が挙げられる。これらの中でも、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカンが好ましい。
【0069】
上記一般式(V)で表されるシロキサンジアミンとしては、例えば、一般式(V)中、<pが1のとき>、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェノキシ−1,3−ビス(4−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノブチル)ジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジメトキシ−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサン等が挙げられる。
【0070】
また、<pが2のとき>、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(4−アミノフェニル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(2−アミノエチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサプロピル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン等が挙げられる。
【0071】
上記ポリイミド樹脂は1種を単独又は必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
(c)ポリイミド樹脂のガラス転移温度(Tg)は、基板や半導体チップへの貼付性に一層優れるフィルム状接着剤を得る観点から、100℃以下であることが好ましく、75℃以下であることがより好ましい。該ガラス転移温度が100℃を超える場合、半導体チップに形成されたバンプや基板に形成された電極や配線パターンなどの凹凸を、フィルム状接着剤に十分に埋め込むことが困難になる傾向がある。このため、形成した接続部に気泡が残存して、ボイド発生の原因となる場合がある。
【0073】
上記ガラス転移温度は、DSC(示差走査熱分析、パーキンエルマー社製、商品名:DSC−7型)を用いて、サンプル量:10mg、昇温速度:5℃/min、測定雰囲気:空気の条件で測定される値である。
【0074】
(c)ポリイミド樹脂の重量平均分子量は、良好なフィルム形成性を有するものとするために、ポリスチレン換算で30000以上であることが好ましく、40000以上であることがより好ましく、50000以上であることがさらに好ましい。該重量平均分子量30000未満の場合、フィルム状接着剤を形成する際に、良好なフィルム形成性が損なわれる傾向がある。なお、上述の重量平均分子量は、高速液体クロマトグラフィー(株式会社島津製作所製、商品名:C−R4A)を用いて、ポリスチレン換算で測定される値である。
【0075】
(c)ポリイミド樹脂の含有量は特に制限されない。ただし、フィルム形状の保持性を向上させる観点から、(c)ポリイミド樹脂に対する(a)エポキシ樹脂の質量比率が0.01〜4であることが好ましく、0.1〜4であることがより好ましく、0.1〜3であることがさらに好ましい。該質量比率が0.01未満の場合、フィルム状接着剤の硬化性が低下して、優れた接着力が損なわれる傾向があり、4を超える場合、フィルム状接着剤の形成時におけるフィルム形成性が低下する傾向がある。
【0076】
本実施形態の半導体封止用フィルム状接着剤は、粘度や硬化物の物性を制御するために(d)フィラーを含有してもよい。(d)フィラーとしては、絶縁性無機フィラーやウィスカー、樹脂フィラーを用いることができる。絶縁性無機フィラーとしては、例えば、ガラス、シリカ、アルミナ、酸化チタン、カーボンブラック、マイカ、窒化ホウ素等が挙げられる。これらの中でも、シリカ、アルミナ、酸化チタン、窒化ホウ素等が好ましく、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素がより好ましい。
【0077】
ウィスカーとしてはホウ酸アルミニウム、チタン酸アルミニウム、酸化亜鉛、珪酸カルシウム、硫酸マグネシウム、窒化ホウ素等が挙げられる。樹脂フィラーとしては、ポリウレタン、ポリイミドなどを用いることができる。これらのフィラーおよびウィスカーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。(d)フィラーの形状、粒径、および配合量は、特に制限されない。ただし、優れた接着性を有するフィルム状接着剤を得る観点から、(d)フィラーの含有量は、(a)エポキシ樹脂に対して質量比で0.5〜4であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。
【0078】
[(e)重量平均分子量10000以上の高分子成分]
本実施形態のフィルム状接着剤は、(e)重量平均分子量10000以上の高分子成分(以下、便宜上「(e)高分子成分」という。)を含むことが好ましい。(e)高分子成分は、(a)エポキシ樹脂とは異なる樹脂であり、例えば、(a)エポキシ樹脂とは異なるエポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、フェノール樹脂、シアネートエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、アクリルゴム等が挙げられる。その中でも、耐熱性及びフィルム形成性に優れるフィルム状接着剤を得る観点から、(a)エポキシ樹脂とは異なるエポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリカルボジイミド樹脂等が好ましく、(a)エポキシ樹脂とは異なるエポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂がより好ましい。これらの高分子成分は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて、或いは2種以上の共重合体として使用することができる。
【0079】
本実施形態のフィルム状接着剤は、上述の(a)〜(e)成分の他に、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、レベリング剤、酸化防止剤、又はイオントラップ剤などの添加剤を含有していてもよい。これらは、1種を単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。配合量については、各添加剤の効果が発現するように調整すればよい。
【0080】
本実施形態の半導体封止用フィルム状接着剤の製造方法を以下に説明する。まず、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂と、必要に応じてポリイミド樹脂及び/又は添加剤(硬化促進剤やフィラーなど)とを有機溶媒中に加え、攪拌混合、混錬などにより、溶解または分散させて、樹脂ワニスを調製する。離型処理を施した基材フィルム上に、調製した樹脂ワニスをナイフコーター、ロールコーター又はアプリケーターを用いて塗布した後、加熱により有機溶媒を除去して、基材フィルム上にフィルム状接着剤を形成する。なお、ポリイミド樹脂を配合する場合、ポリイミド樹脂を合成した後に単離することなく、ポリイミド樹脂を含むワニスの状態でそのまま使用し、このワニス中に各成分を加えて樹脂ワニスを調製してもよい。
【0081】
樹脂ワニスの調製に用いる有機溶媒としては、各成分を均一に溶解又は分散し得る特性を有するものが好ましい。そのような有機溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ジオキサン、シクロヘキサノン、酢酸エチル等が挙げられる。これらの有機溶媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。樹脂ワニス調製の際の混合や混錬等は、攪拌機、らいかい機、3本ロール、ボールミル、ホモディスパー等を用いて行うことができる。
【0082】
基材フィルムとしては、有機溶媒を揮発させる際の加熱条件に耐え得る耐熱性を有するものであるものを用いることができる。このような基材フィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエーテルナフタレートフィルム、メチルペンテンフィルム等が挙げられる。基材フィルムは、上述のフィルム材料の1種のみからなる単層フィルムに限られず、2種以上のフィルム材料が積層された多層フィルムであってもよい。
【0083】
基材フィルムに塗布された樹脂ワニスから有機溶媒を揮発させる際の条件は、有機溶媒が十分に揮発する条件とすることが好ましく、具体的には、50〜200℃の温度で0.1〜90分間の加熱を行うことが好ましい。この際の加熱温度は、硬化反応があまり進行しない程度の温度とすることが好ましい。
【0084】
上述の製造方法によって得られるフィルム状接着剤の溶融粘度は、一対の基材と基材の間に挟まれたフィルム状接着剤とを有する積層体を2つ用いて、平行板プラストメータ法により、以下の通りにして求めることができる。
【0085】
積層体を市販の圧縮器に設置し、温度350℃、圧力1MPa、加熱(加圧)時間0.5秒間及び1.0秒間の条件でそれぞれ圧着させて、加熱(加圧)時間の異なる2種類の圧着体を作製する。そして、それぞれの圧着体の圧着前後のフィルム状接着剤の体積変化を測定し、下記の粘度算出式により溶融粘度V1及びV2をそれぞれ算出することができる。
【0086】
μ=8πFtZ/[3V(Z−Z)]
μ:溶融粘度(Pa・s)
F:荷重(N)
t:加熱(加圧)時間(秒)
:初期厚み(m)
Z:加圧後厚み(m)
V:樹脂体積(m
【0087】
加熱時間0.5秒間の条件で圧着することにより算出される溶融粘度V1は、700Pa・s以下であり、500Pa・s以下であることが好ましく、250Pa・s以下であることがより好ましい。溶融粘度V1を250Pa・s以下にすることによって、初期導通が一層確実に得られる。
【0088】
溶融粘度V1が250Pa・sを超える場合、半導体封止用フィルム状接着剤を得るための溶媒乾燥(80℃/30分、120℃/30分)中に、反応があまり進行しないことが好ましい。
【0089】
圧着時間1秒間の条件で圧着することにより算出される溶融粘度V2は、1500Pa・s以下であることが好ましく、800Pa・s以下であることが好ましく、500Pa・s以下であることがより好ましい。
【0090】
粘度増加率(V2/V1)は、1.5以上であり、1.7以上であることが好ましい。溶融粘度V1が高すぎる場合や、(a)エポキシ樹脂と(b)フェノール樹脂の反応が遅い場合、または(a)エポキシ樹脂や(b)フェノール樹脂の重量平均分子量が小さい場合、溶融粘度が接続時間中にそれほど増加せず、粘度増加率(V2/V1)が低くなる傾向がある。
【0091】
粘度増加率を1.7以上にすることによって、耐HAST性を一層向上させることができる。耐HAST性とは、超加速温湿度ストレス試験による耐久性を意味する。耐HAST性に優れるフィルム状接着剤は、高温多湿雰囲気下でも劣化せず、長期に亘って接続信頼性を確保することが可能となる。
【0092】
粘度増加率(V2/V1)は、フィルム状接着剤形成時における溶媒乾燥(80℃/30分、120℃/30分)中に、(a)エポキシ樹脂と(b)フェノール樹脂との硬化反応が進行してしまうと、低くなる傾向がある。
【0093】
溶融粘度V1及びV2並びに粘度増加率(V2/V1)は、(a)エポキシ樹脂や(b)フェノール樹脂など各成分の配合量を変えることによって調製することができる。例えば、フィラーの含有量を増やせば、溶融粘度V1を低減することができる。
【0094】
なお、(a)エポキシ樹脂や(b)フェノール樹脂の樹脂成分の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が十分に低い場合、溶融粘度の調整が容易であり、加熱によって大きく増粘させることができる。このため分散度が1.00に限りなく近い樹脂成分を用いることが好ましい。
【0095】
また、フロー量(接続時間1秒間時の円面積から算出された半径と接続時間0.5秒間時の円面積とから算出される半径の差)が0.15mm以下、より好ましくは0.1mm以下であると、ボイドを一層減少させることが可能となる。
【0096】
次に、半導体封止用フィルム状接着剤を用いた半導体装置の製造方法の好適な実施形態について説明する。
【0097】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、半導体チップと基板との間に、上述の半導体封止用フィルム状接着剤を介在させ、半導体チップ上のバンプと基板上の金属配線とが互いに対向するように配置して仮接続する第1工程と、半導体チップと基板とをバンプと金属配線とが対向する方向に加圧するとともに加熱して半導体封止用フィルム状接着剤を硬化させ、バンプと金属配線とを電気的に接続する第2工程とを有する。各工程の詳細について、以下に説明する。
【0098】
(第1工程)
図1は、本発明の好適な実施形態に係る半導体装置の製造方法の第1工程を模式的に示す工程断面図である。第1工程では、まず、半導体チップ14と基板16との間に、半導体封止用フィルム状接着剤12を介在させる。
【0099】
半導体チップ14の一面上にはバンプ15が形成されている。半導体チップ14に形成されているバンプ15の材質は特に制限されないが、金、低融点はんだ、高融点はんだ、ニッケル、スズ等を含むものが挙げられる。これらの中でも、COFの場合には金を含有することが好ましい。
【0100】
基板16の一面上には金属配線18が形成されている。基板16の材質は特に制限されず、セラミックなどの無機基板やエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリイミド樹脂などの有機基板を用いることができる。中でも、COFの場合には、ポリイミド樹脂が好適である。金属配線18の材質としては、銅、アルミ、銀、金、ニッケルなどが挙げられる。配線は、エッチングまたはパターンめっきによって形成される。金属配線18は、金、ニッケル、スズ等でめっき処理を施すことによって、表面にめっき層を有していてもよい。COFの場合には、スズめっき処理によって表面にスズめっき層を有する銅配線が好適に用いられる。
【0101】
なお、半導体封止用フィルム状接着剤12は所定の大きさに切り出した後、基板16に貼り付けてもよいし、半導体チップ14のバンプ15形成面に貼り付けた後、ダイシングして個片化することによって、半導体封止用フィルム状接着剤12が貼り付いた半導体チップ14を作製してもよい。半導体封止用フィルム状接着剤12の面積や厚みは、半導体チップ14のサイズやバンプ15の高さなどによって適宜設定される。
【0102】
第1工程では、基板16の金属配線18と半導体チップ14のバンプ15との位置合わせを行い、金属配線18とバンプ15とが対向する方向(矢印A,B方向)に、半導体チップ14及び基板16を加圧ヘッド30及びステージ32を用いて加圧する。これによって、バンプ15が半導体封止用フィルム状接着剤12内に圧入される。
【0103】
図2は、本発明の好適な実施形態に係る半導体装置の製造方法の第2工程を模式的に示す工程断面図である。第2工程では、加圧ヘッド30及びステージ32によって、バンプ15と金属配線18とが対向する方向(矢印A,B方向)に加圧するとともに、300〜450℃の接続温度で0.5〜5秒間加圧する。これによって、バンプ15と金属配線18とが直接接触して電気的に導通するとともに、半導体封止用フィルム状接着剤12は硬化して硬化樹脂22となる。
【0104】
上述のとおり、半導体チップ14及び金属配線18は、それぞれ300〜450℃に加熱されることから、半導体チップ14が金を含有するとともに、金属配線18の表面にスズめっき層がある場合は、金とスズとが反応して、バンプ15と金属配線18との接触部分に金−スズ共晶が形成される。これによって、バンプ15と金属配線18との接合が一層強固なものとなり、接続信頼性を一層向上することができる。
【0105】
半導体封止用フィルム状接着剤12は、300〜450℃の高温で加熱されても、ボイドが発生し難い材料で構成されているため、絶縁信頼性を十分に維持することができる。上記実施形態の製造方法によって得られる半導体装置のボイド発生率は、好ましくは3%以下であり、より好ましくは1%以下である。ボイド発生率を十分低減することによって、より接続安定性に優れた半導体装置とすることができる。
【0106】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、半導体装置の製造方法においては、上記第2工程でバンプ15と金属配線18とを電気的に接続した後に、半導体装置全体をオーブン中などで加熱する加熱処理工程を行ってもよい。
【実施例】
【0107】
以下、実施例及び比較例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0108】
(実施例1)
<(c)ポリイミド樹脂の合成>
温度計、攪拌機及び塩化カルシウム管を備えた300mlフラスコに、1,12−ジアミノドデカン2.10g(0.035モル)、ポリエーテルジアミン(BASF製、ED2000〈分子量:1923〉)17.31g(0.03モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(信越化学工業株式会社製、商品名:LP−7100)2.61g(0.035モル)、及びN−メチル−2−ピロリドン(関東化学株式会社製)150gを仕込んで攪拌を行い、溶液を得た。
【0109】
その後、フラスコを氷浴中で冷却しながら、当該溶液に、無水酢酸で再結晶精製した4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸二無水物)(ALDRICH製、商品名:BPADA)15.62g(0.10モル)を少量ずつ添加した。
【0110】
室温(25℃)で8時間反応させた後、キシレン100gを加え、窒素ガスを吹き込みながら180℃で加熱して水と共にキシレンを共沸除去し、合成ポリイミド樹脂の溶液を得た。合成ポリイミド樹脂のTgは22℃,重量平均分子量は47000、SP(溶解度パラメータ)値は10.2であった。
【0111】
<原材料の準備>
次に、フィルム状接着剤製造用の原材料として、以下の化合物を準備した。各々の化合物の物性を表1に纏めて示す。
【0112】
(a)エポキシ樹脂
・クレゾールノボラック型エポキシ(東都化成株式会社製、商品名:YDCN−702、以下「YDCN」という。)
・多官能特殊エポキシ樹脂(株式会社プリンテック製、商品名:VG3101L、以下「VG」という。)
・トリフェノールメタン骨格含有多官能エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名:EP1032)
・ナフタレン骨格含有多官能エポキシ(新日鐵化学株式会社製、商品名:ESN−375)
・ナフタレン骨格含有多官能エポキシ(新日鐵化学株式会社製、商品名:ESN−175)
【0113】
(b)フェノール樹脂
・クレゾールナフトールホルムアルデヒド重縮合物(日本化薬株式会社製、商品名:カヤハードNHN、以下「NHN」という。)
・トリフェノールメタン骨格含有多官能フェノール(明和化成株式会社製、商品名:MEH7500、以下「MEH」という。)
・フェノールノボラック(日立化成工業株式会社製、商品名:HP850)
・多官能特殊フェノール樹脂(本州化学工業株式会社製、商品名:TrisP−PA)
・ビスフェノールAノボラック樹脂(旭有機材工業株式会社製、商品名:PAPS−BPAN、以下「PAPS」という。)
・ナフタレン骨格含有多官能フェノール(新日鐵化学株式会社製、商品名:SN−180)
【0114】
(d)フィラー
・窒化ホウ素(水島合金鉄株式会社製、商品名:HPP1−HJ、平均粒子径:1.0μm、最大粒子径:5.1μm)
・シリカフィラー(日本アエロジル株式会社製、商品名:R972、平均粒径:20nm)
【0115】
(f)硬化促進剤
・2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加体(四国化成工業株式会社製、商品名:2MAOK−PW、以下「2MAOK」という。)
【0116】
【表1】

【0117】
表1における「重量平均分子量(Mw)」及び「分散度」は以下の通りにして測定した。
【0118】
エポキシ樹脂及びフェノール樹脂を、それぞれTHF溶媒を用いて希釈し、樹脂濃度が1質量%の溶液を作製した。当該溶液を用いて、高速液体クロマトグラフにRI検出器をセットし(株式会社日立製作所製、商品名:L−3300、FLOW:1.0mml/min)重量平均分子量及び数平均分子量を測定した。カラムはTSKgel−G1000HXL(排除限界分子量:1×10)とTSKgel−G2000HXL(排除限界分子量1×10)とを直列に繋いで使用した。また、カラムオーブンは30℃で測定した。得られた重量平均分子量及び数平均分子量から分散度(重量平均分子量/数平均分子量)を算出した。
【0119】
また、表1における「官能基数」及び「繰り返し単位n」は、以下の計算式によって求めた。
・官能基数=重量平均分子量(Mw)÷繰り返し単位の分子量×繰り返し単位中の官能基数
・繰り返し単位n=重量平均分子量(Mw)÷繰り返し単位の分子量
【0120】
上記繰り返し単位nとは、樹脂を構成する高分子鎖中における繰り返し単位の一分子当たりの個数をいい、例えば、EP1032でいえば、下記一般式(VII)の[ ]内の構造で表わされる繰り返し単位の個数をいう。下記一般式(VII)中、nは1以上の整数を示す。
【0121】
【化8】

【0122】
<フィルム状接着剤の作製>
上述の通り調製した合成ポリイミド樹脂100質量部(1.6g)に対して、エポキシ樹脂(EP1032)を10.0質量部、エポキシ樹脂(VG)を12.0質量部、フェノール樹脂(NHN)を8.0質量部、フィラー(HPP1−HJ)を43質量部、硬化促進剤を0.2質量部準備した。これらの原料とN−メチル−2−ピロリドン(関東化学株式会社製)とを、固形分濃度が40質量%となる比率で、ガラス製スクリュー管(20ml)に仕込み、撹拌・脱泡装置(株式会社シンキー製、商品名:AR−250)で撹拌して脱泡して樹脂ワニスを得た。
【0123】
得られた樹脂ワニスを、基材フィルム(帝人デュポンフィルム(株)製、商品名:ピューレックスA53)に、塗工機(テスター産業株式会社製、商品名:PI1210FILMCOATER)で塗工し、クリーンオーブン(エスペツク株式会社製)中で乾燥させてフィルム状接着剤を得た。乾燥は、80℃で30分間及び120℃で30分間行った。
【0124】
得られたフィルム状接着剤の評価試験を以下の通りにして行った。
【0125】
<溶融粘度の測定>
図3は、溶融粘度測定用の試料Aの作製方法を説明するための説明図である。まず、作製したフィルム状接着剤12を、所定のサイズ(直径6mm、厚み約0.1mm)に切断して厚み0.7mmのガラスチップ11(サイズ:15mm×15mm)上に貼付した。その後、図3に示すように、厚み0.12〜0.17mmのカバーガラス13(サイズ:18mm×18mm)を被せて、ガラスチップ11、フィルム状接着剤12及びカバーガラス13が順次積層された試料Aを作製した。
【0126】
次に、試料Aをフリップチップボンダー(松下電器産業株式会社製、商品名:FCB3)を用いて、圧着温度350℃、圧着圧力1MPa、圧着時間0.5秒間又は1.0秒間の条件で圧着させて、圧着時間の異なる2種類の圧着体を作製した。そして、圧着前後のフィルム状接着剤の体積変化をそれぞれ測定した。平行板プラストメータ法により、測定した体積変化から上述の粘度算出式により溶融粘度(粘度)を算出した。結果を表2に示す。
【0127】
<接続抵抗(初期導通)の評価>
図4(A)は接続抵抗の評価に用いた半導体装置を上方(半導体チップ側)から撮影した写真であり、図4(B)は接続抵抗の評価に用いた半導体装置の断面を撮影した写真である。接続抵抗評価用の半導体装置は次の通りにして作製した。
【0128】
作製したフィルム状接着剤を所定のサイズ(2.5mm×15.5mm×厚み0.03mm)に切断し、ポリイミド基板16(株式会社日立超LSIシステムズ製、商品名:JKIT COF TEG_30−B、ポリイミド基材の厚み:38μm、銅配線の厚み:8μm、配線スズめっきの厚み:0.2μm)上に貼付した。
【0129】
上述のフリップチップボンダーを用いて、ポリイミド基板上に貼付したフィルム状接着剤の該ポリイミド基板とは反対側の面上に、金バンプ15が形成されたチップ14(株式会社日立超LSIシステムズ製、商品名:JTEG PHASE6_30、チップサイズ:1.6mm×15.1mm×厚み0.4mm、バンプサイズ:20μm×100μm×高さ15μm、バンプ数726)を圧着して実装した。圧着条件は、ヘッド温度:350℃、ステージ温度:100℃、圧着時間:1秒間、圧着圧力:50Nとした。これによって、図4(A)及び(B)に示すようなポリイミド基板16と金バンプ付きチップ14とがデイジーチェーン接続された半導体装置(図4)を得た。
【0130】
得られた半導体装置のデイジーチェーン接続における接続抵抗値を、マルチメータ(ADVANTEST製)を用いて測定した。フィルム状接着剤を用いずに作製した半導体装置のデイジーチェーン接続における接続抵抗値が160Ω前後であったことから、接続抵抗値が120〜190Ωの場合を「A」、120Ω未満又は190Ωを超える場合を「B」と評価した。評価結果を表2に示す。
【0131】
(実施例2〜15及び比較例1〜7)
フィルム状接着剤の作製に用いる原材料を、表2〜4に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルム状接着剤を作製して評価を行った。評価結果を表2〜4に示す。
【0132】
【表2】

【0133】
【表3】

【0134】
【表4】

【0135】
実施例1〜15は、粘度増加率(粘度2/粘度1)が全て1.5以上で、かつ粘度1の値が700Pa・s以下となっており、良好な初期導通を示した。
【0136】
比較例2、4、6は、溶媒乾燥(80℃/30分、120℃/30分)中に硬化が進み、接続抵抗値が高かった。
【0137】
(実施例1−(2)、実施例7−(2))
次に、実施例1、実施例7とそれぞれ同じ原料を用い、配合量の異なるフィルム状接着材を調製した(それぞれ、実施例1−(2)、実施例7−(2)とする。)。表5に原材料の配合比を示す。調製したフィルム状接着剤の溶融粘度V1,V2,及び接続抵抗の測定を行った。結果を表5に示す。また、以下の通り、ボイド発生率及び絶縁信頼性試験を行った。
【0138】
<ボイド発生率の測定>
図5は、ボイド発生率測定用の試料Bの作製方法を説明するための説明図である。作製したフィルム状接着剤を所定のサイズ(5mm×5mm×厚み0.03mm)に切断し、図5に示すように、フィルム状接着剤12をガラスチップ11(15mm×15mm×厚み0.7mm)上に貼付した。フィルム状接着剤12の上に、金バンプ15が形成されたチップ14(4.26mm×4.26mm×厚み0.27mm、バンプ高さ:0.02mm)を被せて、試料Bを作製した。
【0139】
試料Bをフリップチップボンダー(松下電器産業株式会社製、商品名:FCB3)を用いて、所定の条件(ヘッド温度:350℃、ステージ温度:100℃、圧着時間:5秒間、圧着圧力:1MPa)で圧着させて、圧着体を得た。
【0140】
圧着体のボイド発生率を、圧着部分における金バンプ付チップ14面積全体に対する、ボイドが発生した面積の比率として算出した。ボイド発生率が1%未満の場合を「A」、1〜3%以下を「B」、3%を超える場合を「C」として評価した。結果を表5に示す。
【0141】
<絶縁信頼性試験(HAST試験:Highly Accelerated Sto
rage Test)>
図6は、絶縁信頼性試験に用いた試料Cを上方から撮影した写真である。試料Cは以下の通りにして作製した。
【0142】
上記の通り作製したフィルム状接着剤12(厚み30μm)を、ポリイミド基板16上にスズめっきされた銅配線18を有するくし型電極評価TEG(30μmピッチ)の外銅配線18を有する面上に貼付した。貼付後、クリーンオーブン(エスペツク株式会社製)中に入れて、180℃、1時間の条件で硬化させて図6に示すような試料Cを得た。
【0143】
クリーンオーブンから試料Cを取り出し、加速寿命試験装置(株式会社平山製作所製、商品名:PL−422R8、110℃、85%RH、100時間)に設置し、絶縁抵抗を測定した。
【0144】
100時間の測定期間中、10Ω以上の絶縁抵抗を維持できた場合を「A」、維持できなかった場合を「B」として評価した。評価結果を表5に示す。
【0145】
(比較例7−2)
比較例7の原材料に、さらにシリカフィラー(R972、商品名)を加えてフィルム状接着剤を調製し、実施例1−(2)と同様にして評価を行った。原材料の配合比及び評価結果を表5に示す。
【0146】
【表5】

【0147】
実施例1、実施例7、比較例7、実施例1−(2)、実施例7−(2)、比較例7−(2)の接続時間(加熱時間)による溶融粘度の変化を図7に示す。
【0148】
実施例1−(2)、実施例7−(2)、比較例7−(2)は、それぞれ実施例1、実施例7、比較例7の原材料の比率を変えて、粘度調整を行ったものである。比較例7及び比較例7−(2)は、粘度増加率が1.5以下であり、接続中に増粘せず、ボイド発生率を減少させることができなかった。
【符号の説明】
【0149】
11…ガラスチップ、12…半導体封止用フィルム状接着剤(フィルム状接着剤)、13…カバーガラス、14…チップ(半導体チップ)、15…金バンプ(バンプ)、16…基板(ポリイミド基板)、18…金属配線(銅配線)、22…硬化樹脂、30…加圧ヘッド、32…ステージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エポキシ樹脂、(b)フェノール樹脂を含有し、
温度350℃で0.5秒間加熱した場合の溶融粘度をV1(Pa・s)、
温度350℃で1秒間加熱した場合の溶融粘度をV2(Pa・s)、としたときに、
前記V1及び前記V2が、下記式(1)及び式(2)を満たす半導体封止用フィルム状接着剤。
V2/V1≧1.5 (1)
V1≦700 (2)
【請求項2】
(c)ポリイミド樹脂を含有する請求項1記載の半導体封止用フィルム状接着剤。
【請求項3】
(d)フィラーを含有する請求項1又は2記載の半導体封止用フィルム状接着剤。
【請求項4】
前記(c)ポリイミド樹脂の重量平均分子量が30000以上であり、
ガラス転移温度が100℃以下である請求項2又は3記載の半導体封止用フィルム状接着剤。
【請求項5】
(a)エポキシ樹脂及び(b)フェノール樹脂の少なくとも一方が、25℃、1気圧において固形である請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体封止用フィルム状接着剤。
【請求項6】
バンプを有する半導体チップと金属配線を有する基板とを備える半導体装置の製造方法であって、
前記半導体チップと前記基板とを、請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体封止用フィルム状接着剤を介して前記バンプと前記金属配線とが互いに対向するように配置し、
前記半導体チップと前記基板とを対向する方向に加圧するとともに加熱して前記半導体封止用フィルム状接着剤を硬化させ、前記バンプと前記金属配線とを電気的に接続する接続工程を有する製造方法。
【請求項7】
前記接続工程では、前記半導体チップと前記基板とを対向する方向に加圧するとともに300℃以上に加熱して、金を含有する前記バンプとスズめっき層を有する前記金属配線との間に金−スズ共晶を形成し、前記バンプと前記金属配線とを電気的に接続する請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の製造方法によって得られる半導体装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−260331(P2009−260331A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76339(P2009−76339)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】