説明

半導体封止用材料およびその樹脂組成物およびその成型品

【課題】 難燃性、耐水性および熱伝導性が優れた半導体封止用樹脂組成物および成形品を提供する。
【解決手段】 合成樹脂100重量部に対し、酸化マグネシウム粒子50〜1500重量部を配合した樹脂組成物であって、該酸化マグネシウム粒子は、下記(i)〜(v)の要件(i)平均2次粒子径が0.1〜130μm(ii)BET法比表面積が0.1〜5m2/g(iii)Fe化合物およびMn化合物の含有量の合計量が金属として0.01重量%以下(iv)Na含有量が0.001重量%以下かつ(v)Cl含有量が0.005重量%以下を満足することを特徴とする半導体封止用樹脂組成物並びにそれから形成された成形品。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は半導体封止用樹脂組成物に関し、特に難燃性、耐水性および熱伝導性に優れた半導体封止用樹脂組成物に関する。また本発明は、かかる樹脂組成物に使用される半導体封止材料にも関する。
【0002】
【従来の技術】半導体素子や集積回路素子は、外部の振動、衝撃、塵埃、水分、雰囲気ガス、等からの影響を受けないように、各種の封止材料による封止が行われている。封止材料としては、金属材料、セラミック、ガラス等が使用されてきたが、コスト、量産性の観点から最近ではほとんどがプラスチックを用いた樹脂封止が行われている。従来からエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂等が用いられており、良好な成績を納めている。しかし、半導体分野の技術革新により集積度の向上、素子サイズの小型化、配線の微細化が進み、パッッケージも小型で薄型になる傾向にあり、これに伴って封止材料に対し高い信頼性が必要となってきた。
【0003】さらに半導体装置等の電子部品は高度の難燃性が必要とされ、臭素化エポキシ樹脂および酸化アンチモンを添加する方法が行われている。しかしながら三酸化アンチモン使用の場合、燃焼時に臭化水素、ブロム系ガス、臭素化アンチモン等の発生による人体への有害性や機器への腐食性と、半導体素子封止過程で産出する産業廃棄物や使用後の半導体装置の処分の問題等環境上の安全性が問題となっている。
【0004】さらに上記難燃剤を添加した半導体装置を高温で長時間放置すると、遊離した臭素の影響で半導体素子上のアルミニュウム配線が腐食し、半導体装置の故障の原因となり高温信頼性の低下が問題となる。上記の問題点を解決するために、難燃剤として、金属水酸化物を添加する方法が提案されている。しかしながら、この方法では金属水酸化物を大量(40重量%以上)配合しなければならないので、また半導体装置が高温(通常215−260℃)に曝され吸水量が多い金属水酸化物は吸湿した水分の急激な気化により、半導体装置の膨れやクラックが発生するという、耐半田性の低下という問題が生じている。
【0005】また、80〜200℃、相対湿度70〜100%の高温高湿環境下での半導体素子機能が低下するという問題がある。再公表公報平成7年第806085号公報には熱硬化性樹脂および硬化剤とともに、金属水酸化物と金属酸化物とを併用した半導体封止用熱硬化性樹脂組成物が提案されているが、近年の半導体分野の技術革新により、より高い難燃性とより高い耐湿性および安全性が必要とされている。さらに酸化マグネシウム粒子中の不純物、特にFe化合物、Mn化合物が多い場合は、金型や半導体素子が錆びる原因となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明の目的は、高温高湿条件下においても充分な耐水性を有し、金型や半導体素子に対して耐食性を有しかつ難燃性に優れた半導体封止用樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らの研究によれば、前記本発明の目的は、合成樹脂に配合される酸化マグネシウム粒子として、特定の2次粒子径および特定のBET法比表面積を有し、またFe化合物およびMn化合物が一定量以下でありさらにNa含量およびCl含量が極めて少ない酸化マグネシウム粒子を選択することにより達成されることが見出された。
【0008】すなわち、本発明によれば、合成樹脂100重量部に対し、酸化マグネシウム粒子50〜1500重量部を配合した樹脂組成物であって、該酸化マグネシウム粒子は、下記(i)〜(v)の要件(i)平均2次粒子径が0.1〜130μm(ii)BET法比表面積が0.1〜5m2/g(iii)Fe化合物およびMn化合物の含有量の合計量が金属として0.01重量%以下(iv)Na含有量が0.001重量%以下かつ(v)Cl含有量が0.005重量%以下を満足することを特徴とする半導体封止用樹脂組成物が提供される。
【0009】以下、本発明についてさらに詳細に説明する。本発明に使用される酸化マグネシウム粒子は下記(i)〜(v)の要件を満足している。
(i)平均2次粒子径が0.1〜130μm、好ましくは0.5〜50μm(ii)BET法比表面積が0.1〜5m2/g、好ましくは0.1〜3m2/g(iii)Fe化合物およびMn化合物の含有量の合計量が金属として0.01重量%以下、好ましくは0.005重量%以下(iv)Na含有量が0.001重量%以下、好ましくは0.0005重量%以下かつ(v)Cl含有量が0.005重量%以下、好ましくは0.002重量%以下。
【0010】酸化マグネシウム粒子は熱伝導性のみならず酸化マグネシウム中の鉄化合物およびマンガン化合物の含有量が多いほど、配合した樹脂の熱安定性を著しく低下させる原因となる。しかし、鉄化合物およびマンガン化合物の合計量が前記範囲を満足するのみで樹脂の物性低下が損なわれないというわけではなく、その上に前記平均2次粒子径および比表面積がそれぞれ前記範囲を満足することが必要である。粒子の平均2次粒子径が大きくなるほど、樹脂との接触面が減り熱安定性は良くなるが、機械的強度が低下したり、外観不良という問題が生じてくる。
【0011】前記したように、酸化マグネシウム粒子は平均2次粒子径、比表面積、鉄化合物およびマンガン化合物の合計含量、NaおよびCl含有量が前記範囲であれば、樹脂との相溶性、分散性、成形および加工性、成形品の外観、機械的強度および難燃性等の諸特性を満足する樹脂組成物が得られる。
【0012】酸化マグネシウム粒子は従来のいかなる方法で製造されたものでもよい。例えば特開平6−171928号公報に記載の方法、すなわち、高分散性水酸化マグネシウムを所定の温度で焼成し、ついで該焼成物の結晶を実質的に破壊しないように所定粒径に粉砕分級することにより、高流動性、高充填性、高耐水和性を有する酸化マグネシウム粒子が得られることを見いだし完成されたものである。この酸化マグネシウム粒子は高分散性水酸化マグネシウムスラリーを、噴霧乾燥などにより造粒乾燥し、所定の温度で焼成することにより得られる球状の形状を有する酸化マグネシウム粒子であってもよく、その方が好ましい。
【0013】酸化マグネシウム粒子のFe化合物、Mn化合物、NaおよびClの含有量が前記範囲となるように、Mg原料およびアルカリ原料は高純度のものを選択し、また耐食性の反応装置を選択すべきである。
【0014】上記工程で使用される高分散性水酸化マグネシウムの合成は、水溶性マグネシウム塩1当量に対しアルカリ性物質0.95等量以下特に好ましくは0.5〜0.90等量を、40℃以下特に好ましくは30℃以下で混合して反応させ、その後反応物を反応母液とともに約5〜30kg/cm2の加圧下に約0.5〜数時間加熱させて行うことにより調製することができる。
【0015】本発明の酸化マグネシウム粒子は、樹脂に配合した場合、既存の他の充填材に比べて流動性がよく、粘度も低くなるので加工の作業性に優れている。また、酸化マグネシウム粒子の粒子径の範囲(粒度分布)を前記平均粒径の範囲内において広くすることによって、樹脂に配合した場合、組成物の溶融粘度を下げることができる。具体的には、酸化マグネシウム粒子は、粒子径10μm以上の粒子が30〜80重量%、好ましくは55〜75重量%であり、粒子径10μm未満の粒子が20〜70重量%、好ましくは25〜45重量%である粒度分布を有するものが有利である。
【0016】本発明で使用の酸化マグネシウム粒子は高級脂肪酸、アニオン系界面活性剤、リン酸エステル類、カップリング剤および多価アルコールの脂肪酸エステル類よりなる群から選ばれた少なくとも一種類の表面処理剤で表面処理されてもよい。これら表面処理剤としては、リン酸エステル類が好ましく、殊に下記式で表されるリン酸エステル類が特に適当である。
【0017】
【化1】


(式中、nは1または2、RはC4〜C30のアルキル基またはアルケニル基を示す、)
【0018】リン酸エステルとしては、モノエステル型、ジエステル型あるいはこれらの混合型のいずれでもよいが、1つのエステルに付属する直鎖または分岐したアルキル基の炭素原子数が4〜30のものが好ましい。リン酸エステルの例としては、ブチルアシッドフォスフェイト、2−エチルヘキシルアシッドフォスフェイト、ラウリルアシッドフォスフェイト、トリデシルアシッドフォスフェイト、ステアリルアシッドフォスフェイト、ジ−2−エチルヘキシルフォスフェイト、オレイルアシッドフォスフェイト等が挙げられる。より好ましくは、1つのエステルに付随する直鎖または分岐したアルキル基の炭素原子数が8〜20のものであり、ステアリルアシッドフォスフェイトが最も好ましい。
【0019】前記表面処理剤による酸化マグネシウム粒子の表面処理方法は酸化マグネシウム粒子と表面処理剤を直接加熱する方法、有機溶剤に溶解させた表面処理剤を、酸化マグネシウム粒子に直接噴霧または混合処理後、有機溶剤を揮発除去する方法、有機溶剤に懸濁させた酸化マグネシウムスラリーに有機溶剤に溶解した表面処理剤を加え、混合処理後、有機溶剤を分離、揮発除去する方法等を用いることが出来る。また前記表面処理剤は、合成樹脂と酸化マグネシウム粒子との混練時に添加することもできる。
【0020】前記表面処理量は酸化マグネシウム粒子に対し0.01〜10.00重量%、好ましくは0.05〜5.00重量%である。合成樹脂としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、アクリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、オレフィン系エラストマーまたはフッ素樹脂等が挙げられる。
【0021】エポキシ樹脂の具体例としては、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)3,3’5,5’−テトラメチルビフェニル、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3’5,5’−テトラエチルビフェニル、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3.3’5,5’−テトラメチル−2−クロロビフェニルなど、ビフェニル骨格を有するビフェニル型エポキシ樹脂、1,5−ジ(2,3−エポキシプロポキシ)ナフタレン、1,6−ジ(2,3−エポキシプロポキシ)ナフタレンなどのナフタレン型エポキシ樹脂、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)スチルベン、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3’5,5’−テトラメチルスチルベンなどのスチルベン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA骨格含有ノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂などのアリールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂、トリス(2,3−エポキシプロポキシ)フェニルメタンなどの多官能エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中で、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂が特に好ましく用いられる。
【0022】またシリコーン樹脂の具体例としては、ポリオルガノシロキサンと硬化剤を含む組成物が挙げられる。このポリオルガノシロキサン組成物は、(a)ポリオルガノシロキサンベースポリマーと、(b)硬化剤と、必要に応じて各種添加剤等とを均一に分散させたものである。このような組成物に用いられる各種成分のうち、(a)ポリオルガノシロキサンベースポリマーと(b)硬化剤とは、ゴム弾性体を得るための反応機構に応じて適宜選択されるものである。その反応機構としては、(1)有機過酸化物加硫剤による架橋方法、(2)縮合反応による方法、(3)付加反応による方法等が知られており、その反応機構によって、(a)成分と(b)成分すなわち硬化用触媒もしくは架橋剤との好ましい組合せが決まることは周知である。このような各種の反応機構において用いられる(a)成分のベースポリマーとしてのポリガノシロキサンにおける有機基は、1価の置換または非置換の炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基のようなアルキル基、フェニル基のようなアリール基、β−フェニルエチル基、β−フェニルプロピル基のようなアラルキル基等の非置換の炭化水素基や、クロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等の置換炭化水素基が例示される。シリコーン樹脂のうち、シリコンゴムが好ましい。
【0023】本発明の樹脂組成物において、前記合成樹脂と酸化マグネシウム粒子との割合は、合成樹脂100重量部に対して、酸化マグネシウム粒子50〜1500重量部、好ましくは70〜1000重量部、特に好ましくは90〜800重量部の範囲が適当である。
【0024】本発明の樹脂組成物において、その他必要に応じて硬化剤天然ワックス、合成ワックス、高級脂肪酸およびその金属塩類、若しくはパラフィン等の離型剤;カーボンブラックのような着色剤等を添加してもよい。また、三酸化アンチモン、リン化合物、ブロム化エポキシ樹脂等の難燃剤を加えてもよい。また、低応力化するために、各種エラストマーを添加またはあらかじめ反応して用いてもよい。具体的には、ポリブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、シリコーンゴム、シリコーンオイルなどの添加型あるいは反応型のエラストマー等が挙げられる。
【0025】本発明の半導体封止用樹脂組成物は各成分を溶融混練することにより混合するのが好ましく、例えばニーダー、ロール単軸もしくは二軸の押し出し機またはコニーダーなどの公知の混練方法を用いて溶融混練することにより製造される。
【0026】本発明の半導体封止用樹脂組成物は、通常粉末またはタブレット状態で半導体の封止に供される。半導体を基板に固定した部材を半導体封止用樹脂組成物により成形する方法としては、低圧トランスファー成形法が一般的であり、インジェクション成形法や圧縮成形法も可能である。成形条件としては、例えば封止用樹脂組成物を成形温度150〜200℃、圧力5〜15MPa、成形時間30〜300秒で成形し、封止用樹脂組成物の硬化物とすることによって封止された半導体成形物が製造される。また、必要に応じて上記成形物を100〜200℃で2〜15時間、追加加熱処理をしてもかまわない。
【0027】本発明の樹脂組成物の硬化に使用される硬化剤は樹脂と反応する化合物であれば任意であるが、硬化物とした場合に吸水率が低い化合物として分子中にヒドロキシル基を有するフェノール化合物が好ましく用いられる。フェノール化合物の具体例としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、トリス(ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2−トリス(ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,3−トリス(ヒドロキシフェニル)プロパン、テルペンとフェノールの縮合化合物、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ピロガロール、フロログルシノールなどが挙げられる。その中でも、水酸基当量が130以上の硬化剤が特に好ましく、またフェノールアラルキル樹脂やテルペン骨格含有フェノール樹脂が特に好ましく用いられる。硬化剤の配合量は合成樹脂100重量部に対し50〜200重量部、好ましくは70〜150重量部である。
【0028】
【実施例】実施例中、%および部とあるのは、特に断らない限り、重量%および重量部を意味する。実施例中、酸化マグネシウム粒子の特性および成形物の物性の測定は下記の方法で行った。
【0029】(1)酸化マグネシウム粒子の平均2次粒子径MICROTRAC粒度分析計SPAタイプ[LEEDS & NORTHRUP INSTRUMENTS 社製]を用いて測定決定する。試料粉末700mgを70mlの水に加えて、超音波(NISSEI 社製、MODEL US−300、電流300μA)で3分間分散処理した後、その分散液の2−4mlを採って、250mlの脱気水を収容した上記粒度分析計の試料室に加え、分析計を作動させて8分間その懸濁液を循環した後、粒度分布を測定する。合計2回の測定を行ない、それぞれの測定について得られた50%累積2次粒子径の算術平均値を算出して、試料の平均2次粒子径とする。
【0030】(2)酸化マグネシウム粒子のBET法比表面積液体窒素の吸着法により測定した。
(3)難燃性UL 94VE法に準じて測定した。
(4)吸水率恒温恒湿槽(アドバンテック東洋 AGX−326)を用い85℃、85%RHの条件で重量変化を測定した。
(5)熱伝導率京都電子工業(株)製のQTM迅速熱伝導率計を用いて、プローブ法にて測定した。
【0031】[I]酸化マグネシウム粒子サンプルの調製(1)MgO粒子−a:下記表1のIに示した組成(MgO含有量、Cl、Na、MnおよびFe元素含有量)を有し、平均2次粒子径1.0μm、BET法比表面積1.8m2/gを有する酸化マグネシウム粒子を2.5倍(質量比)の水と混合し、105℃で、2.5時間乾燥した後の吸水率を測定した。その結果を表2に示す。
【0032】(2)MgO粒子−b:前記(1)MgO粒子−aの酸化マグネシウム粒子100Kgを、三井三池製作所(株)製ヘンシェルミキサーに投入し、撹拌下にステアリルアシッドフォスフェイト1kgを60℃エタノール20リットルに溶解した液を徐々に加え、5分間撹拌した後、80℃以上に加熱し溶媒のエタノールを除去して、表面処理をした。このステアリルアシッドフォスフェイト処理した酸化マグネシウム粒子を前記と同様の方法で吸水率を測定した。その結果を表2に示す。
【0033】(3)MgO粒子−c:下記表1のIIに示した組成(MgO含有量、Cl、Na、MnおよびFe元素含有量)を有し、平均2次粒子径20μm、BET法比表面積0.4m2/gの酸化マグネシウム粒子を前記(1)MgO粒子−aと同様の処理をし、吸水率を測定した。その結果を表2に示す。
【0034】(4)MgO粒子−d:前記(3)MgO粒子−cの酸化マグネシウム粒子を前記(2)MgO粒子−bと同様に表面処理をし、吸水率を測定した。その結果を表2に示す。
【0035】(5)MgO粒子−e:前記(1)MgO粒子−aの酸化マグネシウム粒子にビニルトリエトキシシラン1%を前記(2)MgO粒子−bと同様の方法で表面処理をし、吸水率を測定した。その結果を表2に示す。
【0036】(6)MgO粒子−f:前記(3)MgO粒子−cの酸化マグネシウム粒子に前記MgO粒子−eと同様の処理をし、吸水率を測定した。その結果を表2に示す。
【0037】
【表1】


【0038】
【表2】


【0039】II樹脂組成物の調製(1)実施例A−1〜A−6および比較例1前記Iで調製したそれぞれの酸化マグネシウム粒子を下記配合条件となる割合でエポキシ樹脂に配合し、得られた組成物を真空ポンプで引きながら攪拌し混練した。次いでステンレスバッド(8cm×12cm×3cm)に流し込み、前硬化(110℃、2時間)させ、さらに後硬化(150℃、3時間)させた。)させた。得られた成形物の熱伝導率、吸水率および難燃性を測定し、表3に示す。なお、酸化マグネシウム粒子を配合しない場合を比較例1として示した。
【0040】
配合条件エポキシ樹脂(エピコート828、油化シエル製) 100部硬化剤(リカミッドMH−700、新日本理化製) 80部硬化促進剤(BDMA、広栄化学製) 1部酸化マグネシウム粒子 100部
【0041】
【表3】


【0042】(2)実施例B−1〜B−6前記実施例A−1〜A−6において、酸化マグネシウム粒子の配合割合を100部から300部に変更する以外同様にして成形物を得た。その測定結果を表4に示す。
【0043】
【表4】


【0044】(3)実施例C−1〜C−6前記実施例A−1〜A−6において、酸化マグネシウム粒子の配合割合を100部から600部に変更する以外同様にして成形物を得た。その測定結果を表5に示す。
【0045】
【表5】


【0046】(4)実施例D−1〜D−6前記実施例A−1〜A−6において、酸化マグネシウム粒子の配合割合を100部から1400部に変更する以外同様にして成形物を得た。その測定結果を表6に示す。
【0047】
【表6】


【0048】(5)実施例E平均粒子径1.1μmの酸化マグネシウム粒子と平均粒子径22.3μmの酸化マグネシウム粒子を表7の割合で配合し、シリコーンオイルに添加し、真空脱泡しながら混合撹拌した後、粘度と熱伝導率を測定した。表7に粒度分布も示した。結果を表7に示す。
【0049】
【表7】


【0050】(6)実施例F平均粒子径25.1μmの酸化マグネシウム粒子と平均粒子径0.9μmの酸化マグネシウム粒子を6:4(重量)の割合で混合し、表8に示した量をシリコーンオイル100重量部に配合し、真空脱泡しながら混合撹拌した後、粘度を測定した。なお、粘度(cps)は、東機産業(株)製 B型粘度計を使用し、ロータNo.4、回転数4rpmで測定した。また、150℃ 30’ プレス架橋で加熱硬化した成形物の熱伝導率を測定した。結果を表8に示す。
【0051】
【表8】


【0052】
【発明の効果】本発明によれば、難燃性、耐水性および熱伝導性がいずれも優れた半導体封止用樹脂組成物および成形品が提供できた。また本発明の樹脂組成物は、熱伝導性が優れているので半導体用の放熱シートにも有利に適用することができる。さらに本発明の樹脂組成物は、熱伝導性が優れていることを利用して、種々の樹脂成形品(シート、フィルム成形物)の接合あるいはこれらと金属との接合のための接着剤として使用した場合、熱の除去や伝熱に優れた効果を発現する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 合成樹脂100重量部に対し、酸化マグネシウム粒子50〜1500重量部を配合した樹脂組成物であって、該酸化マグネシウム粒子は、下記(i)〜(v)の要件(i)平均2次粒子径が0.1〜130μm(ii)BET法比表面積が0.1〜5m2/g(iii)Fe化合物およびMn化合物の含有量の合計量が金属として0.01重量%以下(iv)Na含有量が0.001重量%以下かつ(v)Cl含有量が0.005重量%以下を満足することを特徴とする半導体封止用樹脂組成物。
【請求項2】 該酸化マグネシウム粒子が、高級脂肪酸類、アニオン系界面活性剤、リン酸エステル類、カップリング剤および多価アルコールの脂肪酸エステル類よりなる群から選ばれた少なくとも一種類の表面処理剤により表面処理されたものであることを特徴とする請求項1記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項3】 該酸化マグネシウム粒子が、高級脂肪酸、アニオン系界面活性剤、リン酸エステル類、カップリング剤、多価アルコールの脂肪酸エステル類よりなる群から選ばれた少なくとも一種類の表面処理剤に表面処理され、その表面処理剤は、該酸化マグネシウムに対し0.001〜10重量%であることを特徴とする請求項1記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項4】 該酸化マグネシウム粒子中のNa含量が0.0005重量%以下かつCl含量が0.002重量%以下である請求項1記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項5】 該酸化マグネシウム粒子はFe化合物およびMn化合物の含有量が合計で金属に換算して0.005重量%以下である請求項1記載の合成樹脂組成物。
【請求項6】 さらに硬化剤を合成樹脂100重量部に対し50〜200重量部配合したことを特徴とする請求項1記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項7】 合成樹脂がエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、アクリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、オレフィン系エラストマーまたはフッ素樹脂である請求項1記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項8】 該シリコーン樹脂がシリコンゴムである請求項7記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項9】 該酸化マグネシウム粒子は、粒子径10μm以上の粒子が30〜80重量%であり、粒子径10μm未満の粒子が20〜70重量%である粒度分布を有する請求項1記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項10】 酸化マグネシウム粒子が、下記(i)〜(v)の要件(i)平均2次粒子径が0.1〜130μm(ii)BET法比表面積が0.1〜5m2/g(iii)Fe化合物およびMn化合物の含有量の合計量が金属として0.01重量%以下(iv)Na含有量が0.001重量%以下かつ(v)Cl含有量が0.005重量%以下を満足することを特徴とする半導体封止用材料。
【請求項11】 該酸化マグネシウム粒子中のNa含量が0.0005重量%以下かつCl含量が0.002重量%以下である請求項10記載の半導体用封止材料。
【請求項12】 該酸化マグネシウム粒子は、Fe化合物およびMn化合物の含有量が合計で金属に換算して0.005重量%以下である請求項10記載の半導体用封止材料。
【請求項13】 酸化マグネシウム粒子が球状の形状を有する請求項10記載の半導体封止用材料。
【請求項14】 請求項1に記載の半導体封止用樹脂組成物より形成された成型品。
【請求項15】 合成樹脂100重量部に対し、酸化マグネシウム粒子50〜1500重量部を配合した樹脂組成物であって、該酸化マグネシウム粒子は、下記(i)〜(v)の要件(i)平均2次粒子径が0.1〜130μm(ii)BET法比表面積が0.1〜5m2/g(iii)Fe化合物およびMn化合物の含有量の合計量が金属として0.01重量%以下(iv)Na含有量が0.001重量%以下かつ(v)Cl含有量が0.005重量%以下を満足する樹脂組成物より形成された半導体用放熱シート。
【請求項16】 酸化マグネシウム粒子が、下記(i)〜(v)の要件(i)平均2次粒子径が0.1〜130μm(ii)BET法比表面積が0.1〜5m2/g(iii)Fe化合物およびMn化合物の含有量の合計量が金属として0.01重量%以下(iv)Na含有量が0.001重量%以下かつ(v)Cl含有量が0.005重量%以下を満足することを特徴とする半導体用放熱材。
【請求項17】 合成樹脂100重量部に対し、酸化マグネシウム粒子50〜1500重量部を配合した樹脂組成物であって、該酸化マグネシウム粒子は、下記(i)〜(v)の要件(i)平均2次粒子径が0.1〜130μm(ii)BET法比表面積が0.1〜5m2/g(iii)Fe化合物およびMn化合物の含有量の合計量が金属として0.01重量%以下(iv)Na含有量が0.001重量%以下かつ(v)Cl含有量が0.005重量%以下を満足する樹脂組成物よりなることを特徴とする熱伝導性接着剤。

【公開番号】特開2001−214065(P2001−214065A)
【公開日】平成13年8月7日(2001.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−354346
【出願日】平成11年12月14日(1999.12.14)
【出願人】(000162489)協和化学工業株式会社 (66)
【Fターム(参考)】