説明

半導体封止用樹脂組成物およびこれを用いた半導体装置

硬化性を損なうことなく流動性に優れた特性を有する半導体封止用樹脂組成物を提供する。ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(A)、フェニレン骨格またはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂(B)、全エポキシ樹脂組成物中に対し84重量%以上90重量%以下の無機充填剤(C)および硬化促進剤(D)を主成分とする半導体封止用樹脂組成物において、シランカップリング剤(E)を全エポキシ樹脂組成物中に0.01重量%以上1重量%以下、芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(F)を全エポキシ樹脂組成物中に0.01重量%以上含む構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、半導体封止用樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置に関するものである。
【背景技術】
近年、半導体装置は生産性、コスト、信頼性等のバランスに優れることからエポキシ樹脂組成物を用いて封止されるのが主流となっている。半導体装置の小型化、薄型化に伴い、封止用エポキシ樹脂組成物に対しては、より一層の低粘度化、高強度化が要求されている。また、環境問題からBr化合物や酸化アンチモン等の難燃剤を使わずに難燃化する要求が高まってきている。このような背景から、最近のエポキシ樹脂組成物の動向は、より低粘度の樹脂を適用し、より多くの無機充填剤を配合する傾向が強くなっている。
また新たな動きとして、半導体装置を実装する際、従来よりも融点の高い無鉛半田の使用が高まってきている。この半田の適用により実装温度を従来に比べ約20℃高くする必要があり、実装後の半導体装置の信頼性が現状に比べ著しく低下する問題が生じている。このようなことからエポキシ樹脂組成物のレベルアップによる半導体装置の信頼性の向上要求が加速的に強くなってきており、樹脂の低粘度化と無機充填剤の高充填化に拍車がかかっている。
成形時に低粘度で高流動性を維持するためには、溶融粘度の低い樹脂を用いたり(特許文献1)、また無機充填剤の配合量を高めるために無機充填剤をシランカップリング剤で表面処理する方法が知られている(特許文献2)。
ところが、これらの方法だけでは耐クラック性、流動性および難燃性のすべてを満足する手法は未だ見出されていない。耐クラック性、難燃性に優れた樹脂を用いて、さらに無機充填剤の配合量を高めて信頼性を満足させ、流動性と硬化性を損なわないさらなる技術が求められていた。
【特許文献1】 特開平7−130919号公報(第2〜5頁)
【特許文献2】 特開平8−20673号公報(第2〜4頁)
【発明の開示】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、半導体封止用樹脂組成物の成形時の硬化性を損なうことなく流動性を向上させる技術を提供することにある。
本発明によれば、下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)と、下記一般式(2)で表されるフェノール樹脂(B)と、無機充填剤(C)と、硬化促進剤(D)と、シランカップリング剤(E)と、芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(F)と、を含むことを特徴とする半導体封止用樹脂組成物が提供される。

(ただし、上記一般式(1)において、Rは水素または炭素数4以下のアルキル基である。また、nは平均値で、1〜10の正数である。)

(ただし、上記一般式(2)において、Rはフェニレン基またはビフェニレン基、Rは炭素数4以下のアルキル基である。また、nは平均値で、1〜10の正数である。)
本発明の半導体封止樹脂組成物は、上記一般式(1)および(2)で示される樹脂を含み、化合物(F)を必須の成分として含むため、成形時の硬化性および流動性を充分に確保することができる。
本発明の半導体封止樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂(A)、前記フェノール樹脂(B)、前記無機充填剤(C)、および硬化促進剤(D)を主成分とすることができる。
本発明の半導体封止用樹脂組成物において、前記化合物(F)を当該樹脂組成物全体の0.01重量%以上含んでもよい。こうすることにより、半導体封止用樹脂組成物の成形時の硬化性を低下させることなく流動性を向上させることができる。
また、本発明の半導体封止用樹脂組成物において、前記シランカップリング剤(E)を当該樹脂組成物全体の0.01重量%以上1.0重量%以下含んでもよい。こうすることにより、半導体封止用樹脂組成物の成形時の硬化性および流動性をさらに向上させることができる。
本発明の半導体封止用樹脂組成物において、前記無機充填剤(C)を当該樹脂組成物全体の84重量%以上90重量%以下含んでもよい。こうすることにより、樹脂組成物を確実に低粘度化し、また高強度化することができる。
本発明の半導体封止用樹脂組成物において、前記化合物(F)は、芳香環を構成する2個の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物であってもよい。こうすることにより、成形時の硬化性および流動性を好適に確保することができる。
本発明の半導体封止用樹脂組成物において、前記芳香環がナフタレン環である構成とすることができる。こうすることにより、成形時の硬化性および流動性をさらに向上させることができる。
本発明の半導体封止用樹脂組成物において、前記化合物(F)は、ナフタレン環を構成する2個の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物であってもよい。こうすることにより、成形時の硬化性および流動性のバランスをより一層向上させることができる。
本発明によれば、前記半導体封止用樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置が提供される。本発明に係る半導体装置は、上述の半導体封止用樹脂組成物を用いて封止されるため、製造安定性を充分に確保することができる。
以上説明したように本発明によれば、硬化性を維持しつつ成形時の流動性に優れたエポキシ樹脂組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
図1は、本発明の実施の形態に係る半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明に係る樹脂組成物は、
下記一般式(1)で示されるエポキシ樹脂(A)

(ただし、上記一般式(1)において、Rは水素または炭素数4以下のアルキル基である。また、nは平均値で、1〜10の正数である。)
下記一般式(2)で示されるフェノール樹脂(B)

(ただし、上記一般式(2)において、Rはフェニレン基またはビフェニレン基、Rは炭素数4以下のアルキル基である。また、nは平均値で、1〜10の正数である。)
無機充填剤(C)
硬化促進剤(D)
シランカップリング剤(E)
芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(F)
を必須成分とする。
エポキシ樹脂組成物全体を基準として、(A)〜(F)成分の含有量は、たとえば以下のようにすることができる。
(A):1〜40重量%、
(B):1〜40重量%、
(C):40〜97重量%、
(D):0.001〜5重量%、
(E):0.01〜1重量%
(F):0.01〜1重量%
以下、本発明に係る半導体封止用エポキシ樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
上記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂は、主鎖に疎水性で剛直なビフェニレン骨格を有しており、これを用いたエポキシ樹脂組成物の硬化物は吸湿率が低く、ガラス転移温度(以下、Tgという。)を越えた高温域での弾性率が低く、半導体素子、有機基板、及び金属基板との密着性に優れる。また、難燃性にも優れ、架橋密度が低い割には耐熱性が高いという特徴を有している。
一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)としては、たとえばフェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂などが挙げられるが、式(1)の構造であれば特に限定するものではない。
また、一般式(1)で表されるエポキシ樹脂による効果が損なわれない範囲で、他のエポキシ樹脂と併用することができる。併用できるエポキシ樹脂としては、たとえばビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
半導体封止用エポキシ樹脂組成物としての耐湿信頼性を考慮すると、イオン性不純物であるNaイオンやClイオンが極力少ない方が好ましく、硬化性の点からエポキシ当量を、たとえば100g/eq以上500g/eq以下とすることができる。
上記一般式(2)で表されるフェノール樹脂(B)は、主鎖に疎水性のフェニレン基または疎水性で剛直なビフェニレン骨格を有しており、これを用いたエポキシ樹脂組成物の硬化物は吸湿率が低く、Tgを越えた高温域での弾性率が低く、半導体素子、有機基板、及び金属基板との密着性に優れる。また、難燃性にも優れ、架橋密度が低い割には耐熱性が高いという特徴を有している。
一般式(2)で表されるフェノール樹脂(B)としては、たとえばフェノールビフェニルアラルキル樹脂やフェノールアラルキル樹脂などが挙げられるが、式(2)の構造であれば特に限定するものではない。
本発明では、一般式(2)で表されるフェノール樹脂による効果が損なわれない範囲で、他のフェノール樹脂と併用することができる。併用できるフェノール樹脂としては、たとえばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、トリフェノールメタン樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、ナフトールアラルキル樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格を含む)等が挙げられる。硬化性の点から水酸基当量、たとえば90g/eq以上250g/eq以下とすることが好ましい。
無機充填剤(C)の材料としては、一般に封止材料に用いられている溶融シリカ、球状シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミ等が挙げられる。無機充填剤の粒径としては、金型への充填性を考慮するとたとえば0.01μm以上150μm以下とすることができる。
また無機充填剤(C)の充填量を、たとえばエポキシ樹脂組成物全体の84重量%以上90重量%以下とすることができる。充填量が小さすぎるとエポキシ樹脂組成物の硬化物の吸水量が増加し、強度が低下するため耐半田性が不満足となるおそれがある。また、充填量が大きすぎると、流動性が損なわれるために成形性が低下するおそれがある。
硬化促進剤(D)の材料は、エポキシ樹脂のエポキシ基とフェノール樹脂の水酸基との反応を促進するものであればよく、一般に半導体素子の封止材であるエポキシ樹脂組成物に使用されているものを利用することができる。具体例として有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物等のリン原子含有化合物、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、ベンジルジメチルアミン、2−メチルイミダゾール等の窒素原子含有化合物が挙げられる。
有機ホスフィンとしては、たとえばエチルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン;
ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の第2ホスフィン;および
トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第3ホスフィン;
等が挙げられる。
テトラ置換ホスホニウム化合物としては、下記一般式(3)に示す化合物が挙げられる。

(上記一般式(3)において、Pはリン原子、R、R、RおよびRは置換もしくは無置換の芳香族基、またはアルキル基、Aはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸のアニオン、AHはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸を表す。a、bは1以上3以下の整数、cは0以上3以下の整数であり、かつa=bである。)
上記一般式(3)に示す化合物は、たとえば以下のようにして得られる。まず、テトラ置換ホスホニウムブロマイドと芳香族有機酸と塩基を有機溶剤に混ぜ均一に混合し、その溶液系内に芳香族有機酸アニオンを発生させる。次いで水を加える。すると、上記一般式(3)に示す化合物を沈殿させることができる。
上記一般式(3)に示す化合物において、リン原子に結合するR、R、RおよびRがフェニル基であり、かつAHはヒドロキシル基を芳香環に有する化合物、すなわちフェノール類であり、かつAは該フェノール類のアニオンであるのが好ましい。
ホスホベタイン化合物としては、下記一般式(4)に示す化合物が挙げられる。

(上記一般式(4)において、Xは水素または炭素数1〜3のアルキル基、Yは水素またはヒドロキシル基を表す。m、nは1〜3の整数。)
上記一般式(4)に示す化合物は、たとえば以下のようにして得られる。まず、沃化フェノール類とトリ芳香族置換ホスフィンを有機溶媒に均一に混合し、ニッケル触媒によりヨードニウム塩として沈殿させる。このヨードニウム塩と塩基を有機溶剤に均一に混合し、必要により水を加えると、上記一般式(4)に示す化合物を沈殿させることができる。
上記一般式(4)に示す化合物としては、好ましくはXが水素またはメチル基であり、かつYが水素またはヒドロキシル基であるのが好ましい。しかしこれらに限定されるものではなく、単独でも併用してもよい。
硬化促進剤(D)の配合量は、たとえばエポキシ樹脂組成物全体の0.1重量%以上1重量%以下とすることができ、0.1重量%以上0.6重量%以下とすることが好ましい。硬化促進剤(D)の配合量が少なすぎると目的とする硬化性が得られないおそれがある。また、多すぎると流動性が損なわれるおそれがある。
シランカップリング剤(E)は、エポキシシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、メルカプトシラン等特に限定せず、エポキシ樹脂組成物と無機充填剤との間で反応し、エポキシ樹脂組成物と無機充填剤の界面強度を向上させるものであればよい。
芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(F)(以下、化合物(F)と称する。)は、シランカップリング剤(E)との相乗効果により、粘度特性と流動特性を著しく改善させるため、シランカップリング剤(E)は化合物(F)の効果を充分に得るためには必須である。
これらのシランカップリング剤(E)は単独でも併用してもよい。シランカップリング剤(E)の配合量は、たとえばエポキシ樹脂組成物全体の0.01重量%以上1重量%以下、好ましくは0.05重量%以上0.8重量%以下、特に好ましくは0.1重量%以上0.6重量%以下とすることができる。配合量が小さすぎると化合物(F)の効果が充分に得られず、また半導体パッケージにおける耐半田性が低下するおそれがある。また、大きすぎるとエポキシ樹脂組成物の吸水性が大きくなり、やはり半導体パッケージにおける耐半田性が低下するおそれがある。
芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(F)は、水酸基以外の置換基を有していてもよい。化合物(F)として、下記一般式(5)で示される単環式化合物または下記一般式(6)で示される多環式化合物を用いることができる。

(上記一般式(5)において、R、Rはどちらか一方が水酸基であり、片方が水酸基のとき他方は水素、水酸基または水酸基以外の置換基。R、R、Rは水素、水酸基または水酸基以外の置換基。)

(上記一般式(6)において、R、Rはどちらか一方が水酸基であり、片方が水酸基のとき他方は水素、水酸基または水酸基以外の置換基。R、R、R、R、Rは水素、水酸基または水酸基以外の置換基。)
上記一般式(5)で示される単環式化合物の具体例として、たとえば、カテコール、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステルまたはこれらの誘導体等が挙げられる。また、上記一般式(6)で示される多環式化合物の具体例として、たとえば、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレンおよびこれらの誘導体等が挙げられる。
そのうち、流動性と硬化性の制御のしやすさから芳香環に隣接する水酸基は2個がより好ましい。また、混練工程での揮発を考慮した場合、母核は低揮発性で秤量安定性の高いナフタレン環である化合物とすることが好ましい。
この場合、化合物(F)を、具体的には、たとえば、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレンおよびその誘導体等のナフタレン環を有する化合物とすることができる。このような化合物を用いることにより、エポキシ樹脂組成物のハンドリングの際の制御性をより一層向上させることができる。また、エポキシ樹脂組成物の揮発性を低下させることができる。
これらの化合物(F)は2種以上併用してもよい。
かかる化合物(F)の配合量はエポキシ樹脂組成物全体の0.01重量%以上0.5重量%以下、好ましくは0.02重量%以上0.3重量%以下である。小さすぎると、シランカップリング剤(E)との相乗効果による期待するような粘度特性および流動特性が得られない。また、大きすぎると、エポキシ樹脂組成物の硬化が阻害され、また硬化物の物性が劣り、半導体封止樹脂としての性能が低下する。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記(A)〜(F)成分を必須成分とするが、これ以外に必要に応じて臭素化エポキシ樹脂、三酸化アンチモン等の難燃剤、離型剤、カーボンブラック等の着色剤、シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力添加剤、無機イオン交換体等の添加剤を適宜配合してもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、(A)〜(F)成分およびその他の添加剤等をミキサー等で用いて常温で均一に混合した後、加熱ロールまたはニーダー、押出機等で溶融混練し、冷却後粉砕して製造することができる。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、半導体素子を封止し、半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の成形方法で成形硬化すればよい。
本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、種々の半導体装置の封止に好適に用いられる。たとえば、QFP(クワッドフラットパッケージ)、TSOP(スィンスモールアウトラインパッケージ)等の表面実装型半導体装置の封止材料として用いることができる。図1は、本発明に係るエポキシ樹脂組成物を用いた半導体装置の構成の一例を示す断面図である。ダイパッド2上に、ダイボンド材硬化体6を介して半導体素子1が固定されている。半導体素子1とリードフレーム4との間は金線3によって接続されている。半導体素子1は、封止樹脂5によって封止されている。
図1に示される半導体装置は、封止樹脂5として上述したエポキシ樹脂組成物を用いてトランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の方法で硬化成形し、半導体素子1を封止することによって得ることができる。
図1に示した半導体装置は、芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(F)を含む封止樹脂組成物により封止されるため、封止樹脂組成物の粘度特性と流動特性を好適なものとすることができる。このため、成形性にすぐれた半導体装置を安定的に得ることができる。
また、一般式(1)で表されるエポキシ樹脂および一般式(2)で表されるフェノール樹脂を含むエポキシ樹脂組成物により封止することにより、難燃性、耐半田性にさらにすぐれた半導体装置をより一層安定的に得ることができる。
以下、本発明を実施例にて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。配合割合は重量部とする。
【実施例1】
フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)・製、NC3000P、エポキシ当量274、上記式(1)におけるnは平均値で2.8、軟化点58℃) 7.35重量部、
フェノールビフェニルアラルキル樹脂(明和化成(株)・製、MEH−7851SS、水酸基当量203、上記式(2)におけるnは平均値で2.5、軟化点65℃) 5.5重量部、
球状溶融シリカ(平均粒径30μm) 86.0重量部、
γ−グリシジルプロピルトリメトキシシラン 0.4重量部、
トリフェニルホスフィン 0.2重量部、
2,3−ジヒドロキシナフタレン(試薬) 0.05重量部、
カルナバワックス 0.2重量部、および
カーボンブラック 0.3重量部、
をミキサーにて常温混合し、80〜100℃の加熱ロールで溶融混練し、冷却後粉砕し、エポキシ樹脂組成物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を、以下の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
スパイラルフロー:EMMI−1−66に準じた金型を用い、前記エポキシ樹脂組成物を低圧トランスファー成形機にて175℃、成形圧6.9MPa、保圧時間120秒の条件で成形し測定した。スパイラルフローは、流動性のパラメータであり、数値が大きい方が流動性が良好である。単位はcm。
硬化トルク比:キュラストメーター(オリエンテック(株)・製、JSRキュラストメーターIVPS型)を用い、金型温度175℃、加熱開始90秒後、300秒後のトルクを求め、硬化トルク比=(90秒後のトルク)/(300秒後のトルク)を計算した。キュラストメーターにおけるトルクは熱剛性のパラメータであり、硬化トルク比の大きい方が硬化性が良好である。単位は%。
耐半田リフロークラック性:低圧トランスファー成形機を用いて、ボディーサイズ14×14×1.4mmの100pQFP(Cuフレーム)に6×6×0.30mmのSiチップを接着したフレームを金型温度175℃、注入時間10sec、硬化時間90sec、注入圧9.8MPaで成形し、175℃8hrの条件で後硬化後85℃85%48hrの条件で加湿処理し、ピーク温度260℃のIRリフローに連続3回(255℃以上が10秒×3回)通し、超音波探傷機を用いて内部クラック、剥離の有無を測定し、10パッケージ中のチップ剥離と内部クラックの数で判定した。
難燃性:低圧トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入時間15sec、硬化時間120sec、注入圧9.8MPaで3.2mm厚の難燃試験片を成形し、UL94の規格に則り難燃試験を行った。
(実施例2〜13、比較例1〜15)
表1および表2の配合に従い、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を製造し、実施例1と同様にして評価した。評価結果を表1および表2に示す。
実施例1以外で用いた成分について、以下に示す。
ビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)・製、YX4000H、エポキシ当量195、融点105℃)、
フェノールアラルキル樹脂(三井化学(株)・製、XLC−LL、水酸基当量174、上記式(2)におけるnは平均値で3.6、軟化点79℃)、
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製EOCN1020−55、エポキシ当量198、軟化点55℃)、
フェノールノボラック樹脂(水酸基当量104、軟化点80℃)、
γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、
1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(以下、DBUと略す)、
下記式(7)で示される硬化促進剤、

下記式(8)で示される硬化促進剤、

1,2−ジヒドロキシナフタレン(試薬)、
カテコール(試薬)、
ピロガロール(試薬)、
1,6−ジヒドロキシナフタレン(試薬)、
レゾルシノール(試薬)。


【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂(A)と、下記一般式(2)で表されるフェノール樹脂(B)と、無機充填剤(C)と、硬化促進剤(D)と、シランカップリング剤(E)と、芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(F)と、を含むことを特徴とする半導体封止用樹脂組成物。

(ただし、上記一般式(1)において、Rは水素または炭素数4以下のアルキル基である。また、nは平均値で、1〜10の正数である。)

(ただし、上記一般式(2)において、Rはフェニレン基またはビフェニレン基、Rは炭素数4以下のアルキル基である。また、nは平均値で、1〜10の正数である。)
【請求項2】
請求の範囲第1項に記載の半導体封止用樹脂組成物において、前記化合物(F)を当該樹脂組成物全体の0.01重量%以上含むことを特徴とする半導体封止用樹脂組成物。
【請求項3】
請求の範囲第1項に記載の半導体封止用樹脂組成物において、前記シランカップリング剤(E)を当該樹脂組成物全体の0.01重量%以上1.0重量%以下含むことを特徴とする半導体封止用樹脂組成物。
【請求項4】
請求の範囲第1項に記載の半導体封止用樹脂組成物において、前記化合物(F)は、前記芳香環を構成する2個の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物であることを特徴とする半導体封止用樹脂組成物。
【請求項5】
請求の範囲第1項に記載の半導体封止用樹脂組成物において、前記芳香環がナフタレン環であることを特徴とする半導体封止用樹脂組成物。
【請求項6】
請求の範囲第5項に記載の半導体封止用樹脂組成物において、前記化合物(F)は、前記ナフタレン環を構成する2個の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物であることを特徴とする半導体封止用樹脂組成物。
【請求項7】
請求の範囲第1項に記載の半導体封止用樹脂組成物において、当該樹脂組成物中に84重量%以上90重量%以下の無機充填剤(C)を含むことを特徴とする半導体封止用樹脂組成物。
【請求項8】
請求の範囲第1項に記載の半導体封止用樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置。

【国際公開番号】WO2004/085511
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【発行日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503995(P2005−503995)
【国際出願番号】PCT/JP2004/003105
【国際出願日】平成16年3月10日(2004.3.10)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】