説明

半導体封止用樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置

【課題】半導体素子を成形、封止等する際の樹脂の充填性を向上させることができる半導体封止用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記の(A)〜(D)成分を含有し、成形温度におけるゲル化時間が15秒以上27秒以下で、かつ、(D)成分の含有量が、半導体封止用樹脂組成物全体の86〜95重量%の範囲内に設定されている半導体封止用樹脂組成物である。
(A)熱硬化性樹脂。
(B)硬化剤。
(C)硬化促進剤。
(D)無機質充填剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止用樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置に関し、詳しくは、半導体素子をトランスファー成形、封止等する際の樹脂充填性を向上させ、成形後、封止樹脂内におけるボイドの発生を少なくすることができる、半導体封止用樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置は薄型化され、封止に用いられる樹脂の流動部の厚みが薄くなってきている。このような状況の下、成形時の封止用樹脂組成物の粘度が高いと、樹脂流動部の狭い隙間を流れる樹脂の速度が低下することによって、流動性が低下し、微小な気泡を巻き込むという問題がある。この場合、樹脂の硬化が遅いと、樹脂流動部の隙間部分を樹脂が埋める際に、溶融樹脂中に存在する微小な気泡が、樹脂の硬化前に合泡して、半導体素子上に巨視的(マクロ)な未充填部分が発生するという問題が起こる。
【0003】
特に、半導体素子と基板とを金属ワイヤーにより接続する、BGA(ボールグリッドアレイ)と呼ばれる手法を用いた片面封止構造の半導体装置の場合、半導体素子の積層化や半導体装置自体の薄型化等により、半導体素子上部の樹脂流動部の隙間が狭くなってきており、流動性がより低下しやすいため、より多くの微小な気泡を巻き込みやすくなっている。
【0004】
また、半導体素子と基板との接続を、上記のような金属ワイヤーにより接続するのではなく、金属バンプにより接続する、いわゆるフリップチップ接続がなされる場合、この接合の強度維持のために、アンダーフィル剤をその隙間に注入することが行われている。また、半導体装置を樹脂封止する際に、アンダーフィル剤の注入を同時に行うことも行われる。このような封止方法は、トランスファーアンダーフィルと呼ばれている。この場合には、その隙間が狭いことに加えて、バンプ接続部分が障壁となるため、半導体素子と基板との間の樹脂の流動性はさらに低下し、さらに多くの微小気泡を樹脂中に巻き込む。このような封止隙間の狭小化によって、巻き込まれた微小な気泡が合泡することで発生する未充填部の存在は、加熱時には気泡中の気体圧力が高まることによる周辺樹脂を破壊させてしまうことがある。
【0005】
特に、樹脂封止後のものを吸湿させた場合、液状の水が気化膨張する効果も加わって、半田取付け時にパッケージが割れ、電気接続が切れて半導体素子の動作が起こらないという不具合が生じてしまう。
【0006】
このような不都合を回避する目的で、気泡を巻き込まないように流動させるために、充填材量を少なくすることも行われるが、充填材量を少なくすると、樹脂組成部の線膨張係数が増大して、半導体素子、基板との差が大きくなることにより、温度の変化により発生する応力が大きくなり、樹脂、半導体素子の破壊、フレームと樹脂の剥離等の不具合を生じる。この場合、充填材の粒子径が大きい方が、同一量の充填材を添加しても、そのトータル表面積が小さくなるため粘度が低下するが、充填材の粒子径が大きくなると、狭い隙間に充填材がうまく入ることができず、隙間の入口で目詰まりを起こしてしまう。
【0007】
そこで、上記のような問題を解決するため、例えば、(a)一分子中に少なくとも二つのエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、一分子中に少なくとも二つのフェノール性水酸基を有するフェノール樹脂硬化剤、または(b)一分子中にシアネートエステル基を少なくとも二つ有するシアネートエステル樹脂と、平均粒径が30μm以下のシリコーン樹脂のゴム粒子を全組成中に5〜70重量%含み、ゲル化前の最低溶融粘度が5〜300Pa・s、硬化温度でのゲル化時間が300秒以下、硬化物のガラス転移温度が150℃以上で、かつ、−50℃〜+150℃における弾性率が100〜1000MPaである半導体封止用熱硬化性樹脂組成物が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−30050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載の半導体封止用熱硬化性樹脂組成物を用いた場合でも、樹脂流動部の隙間が狭い部分では、隙間部分を樹脂が埋める際に、半導体素子上に巨視的な未充填部分が発生するという問題を解決することはできず、依然として樹脂の狭い部分での充填性が不充分であった。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、無機質充填剤の含有量が組成物全体の86重量%以上の場合であっても、半導体素子を成形、封止等する際の樹脂の充填性を向上させることができる、半導体封止用樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、下記の(A)〜(D)成分を含有し、成形温度におけるゲル化時間が15秒以上27秒以下で、かつ、(D)成分の含有量が、半導体封止用樹脂組成物全体の86〜95重量%の範囲内に設定されている半導体封止用樹脂組成物を第1の要旨とする。また、本発明は、上記半導体封止用樹脂組成物を用いて、半導体素子を封止してなる半導体装置を第2の要旨とする。
(A)熱硬化性樹脂。
(B)硬化剤。
(C)硬化促進剤。
(D)無機質充填剤。
【0011】
すなわち、本発明者らは、上記課題を解決するため、半導体封止用樹脂組成物の成形温度におけるゲル化時間に着目し、ゲル化時間の好適範囲について実験を重ねた。その実験の過程で、熱硬化性樹脂(A成分)と、硬化剤(B成分)と、硬化促進剤(C成分)と、無機質充填剤(D成分)とを含有する半導体封止用樹脂組成物であって、無機質充填剤(D成分)の含有量が半導体封止用樹脂組成物全体の86〜95重量%の範囲内に設定された半導体封止用樹脂組成物を用い、その半導体封止用樹脂組成物の成形温度におけるゲル化時間を15秒以上27秒以下の範囲に設定すると、溶融樹脂中に存在する微小な気泡が合泡して巨視的な気泡となることを抑制でき、半導体素子を樹脂封止する際、特に半導体素子と基板との間の狭ギャップに充填する場合にも、巨視的な気泡の発生がなく確実に密封充填することができることを見いだし、本発明に到達した。ここで、上記成形温度は、通常、165〜185℃であり、好適には175±3℃である。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明の半導体封止用樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(A成分)と、硬化剤(B成分)と、硬化促進剤(C成分)と、無機質充填剤(D成分)とを含有するとともに、無機質充填剤(D成分)の含有量が半導体封止用樹脂組成物全体の86〜95重量%の範囲内に設定され、かつ、成形温度におけるゲル化時間が15秒以上27秒以下の範囲に設定されているため、溶融樹脂中に存在する微小な気泡が合泡して巨視的な気泡となることを抑制でき、半導体素子を樹脂封止する際、特に半導体素子と基板との間の狭ギャップに充填する場合にも、巨視的な気泡の発生がなく確実に密封充填することができるという効果が得られる。
【0013】
また、上記熱硬化性樹脂(A成分)がビフェニル型エポキシ樹脂で、かつ、上記硬化剤(B成分)が上記特定の一般式(1)で表されるフェノール樹脂であるか、もしくは上記熱硬化性樹脂(A成分)がメラミン樹脂で、かつ、上記硬化剤(B成分)がレゾール型フェノール樹脂である場合には、半導体素子を成形、封止等する際の樹脂の充填性をより向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0015】
本発明の半導体封止用樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(A成分)と、硬化剤(B成分)と、硬化促進剤(C成分)と、無機質充填剤(D成分)とを用いて得ることができる。そして、本発明の半導体封止用樹脂組成物は、通常、粉末状もしくはこれを打錠したタブレット状になっている。
【0016】
本発明の半導体封止用樹脂組成物は、上記A〜D成分を含有し、D成分の含有量が半導体封止用樹脂組成物全体の86〜95重量%の範囲内に設定され、かつ、成形温度におけるゲル化時間が15秒以上27秒以下であって、これらが最大の特徴である。
【0017】
本発明において、成形温度におけるゲル化時間の測定は、例えば、175±3℃(成形温度)に保った熱板上で、約2gの粉末状樹脂を溶融させ、薄く伸ばした後、伸ばした樹脂を、先の尖った鉄製金棒の先でゆっくりと引き掻き、樹脂が溶融してから硬化し、金棒の先に樹脂が絡みつくことが確認されるまでの時間(ゲル化時間)を測定することよって行われる。
【0018】
上記熱硬化性樹脂(A成分)としては、特に限定されるものではないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリールフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、成形性や硬化物物性、耐湿信頼性、耐半田特性の点から、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0019】
上記エポキシ樹脂としては、例えば、ジシクロペンタジエン型、クレゾールノボラック型、フェノールノボラック型、ビスフェノール型、ビフェニル型、トリスヒドロキシフェニルメタン型等の各種のエポキシ樹脂を用いることができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。そして、これらのなかでも、特に融点または軟化点が室温を超えているものが好ましい。例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、エポキシ当量180〜210、軟化点60〜110℃のものが好適に用いられる。また、上記ビフェニル型エポキシ樹脂としては、エポキシ当量180〜210、融点80〜120℃のものが好適に用いられる。
【0020】
また、上記硬化剤(B成分)としては、上記熱硬化性樹脂(A成分)を硬化させるものであれば特に限定はないが、上記熱硬化性樹脂(A成分)としてエポキシ樹脂を用いた場合は、フェノール樹脂が好適に用いられる。
【0021】
上記フェノール樹脂としては、例えば、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、下記の一般式(1)で表されるフェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、水酸基当量が70〜250、軟化点が50〜110℃のものを用いることが好ましい。
【0022】
【化1】

【0023】
具体的には、上記熱硬化性樹脂(A成分)として、下記の構造式(2)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂を用いる場合は、上記硬化剤(B成分)として、上記一般式(1)で表されるフェノール樹脂を用いることが好ましい。また、上記熱硬化性樹脂(A成分)として、グレゾール型エポキシ樹脂を用いる場合は、上記硬化剤(B成分)として、フェノールノボラック樹脂を用いることが好ましい。さらに、上記熱硬化性樹脂(A成分)として、メラミン樹脂を用いる場合は、上記硬化剤(B成分)として、レゾール型フェノール樹脂を用いることが好ましい。
【0024】
【化2】

【0025】
なお、上記エポキシ樹脂に対するフェノール樹脂の配合割合は、エポキシ樹脂を硬化させるに充分な量であれば特に限定はないが、一般的には、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して、フェノール樹脂の水酸基の合計が0.7〜1.5当量となるように配合することが好ましく、より好ましくは0.9〜1.2当量である。
【0026】
つぎに、上記硬化促進剤(C成分)としては、特に限定されるものではないが、例えば、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレートや、トリフェニルホスフィン等の有機リン系化合物、フェニルイミダゾール等のイミダゾール系化合物、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5等のジアザビシクロアルケン系化合物等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0027】
上記硬化促進剤(C成分)の配合量は、半導体封止用樹脂組成物の成形温度におけるゲル化時間が上記所定の範囲となる量であれば特に限定はないが、例えば、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレートの場合、硬化剤(B成分)100重量部(以下「部」と略す)に対して、8〜15部の範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは9〜12部の範囲である。
【0028】
また、上記無機質充填剤(D成分)としては、特に限定されるものではないが、例えば、石英ガラス粉末、タルク、シリカ粉末(溶融シリカ粉末や結晶性シリカ粉末等)、アルミナ粉末、窒化アルミニウム粉末、窒化珪素粉末等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、得られる硬化物の線膨張係数を低減できるという点から、シリカ粉末が好適に用いられる。そして、上記シリカ粉末のなかでも、高充填、高流動性という点から、溶融シリカ粉末が特に好ましい。この溶融シリカ粉末としては、例えば、球状溶融シリカ粉末や破砕溶融シリカ粉末等があげられるが、流動性という点から、球状溶融シリカ粉末を用いることが好ましい。この球状溶融シリカ粉末としては、平均粒径が1〜15μmの範囲、特に平均粒径が2〜10μmの範囲のものを使用することが好ましく、さらに平均粒径が0.5〜2μmの範囲のものを併用すると、流動性の向上という点から、さらに好ましい。なお、上記平均粒径は、例えば、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
【0029】
上記無機質充填剤(D成分)の配合割合は、半導体封止用樹脂組成物全体の86〜95重量%の範囲に設定する必要があり、好ましくは86〜90重量%である。すなわち、無機質充填剤(D成分)の配合割合が86重量%未満であると、半導体封止用樹脂組成物中の有機成分の占める割合が多くなり、硬化物の難燃効果が劣り、逆に95重量%を超えると、半導体封止用樹脂組成物の流動性が著しく低下し、巻き込みボイドの抑制効果を奏することが困難となるからである。
【0030】
なお、本発明の半導体封止用樹脂組成物には、上記A〜D成分以外に、必要に応じて、離型剤、低応力化剤、シランカップリング剤、難燃剤、顔料(カーボンブラック等)等の添加剤を適宜配合しても差し支えない。
【0031】
上記離型剤としては、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸カルシウム等があげられ、具体的には、カルナバワックスやポリエチレン系ワックス等が用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0032】
また、上記低応力化剤としては、例えば、アクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体,メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体等のブタジエン系ゴムや、シリコーン化合物等があげられる。
【0033】
また、上記シランカップリング剤としては、例えば、アクリル基またはメタクリル基を有する有機ケイ素化合物等があげられる。
【0034】
また、上記難燃剤としては、例えば、有機リン化合物、酸化アチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等があげられる。
【0035】
なお、本発明の半導体封止用樹脂組成物には、耐湿信頼性テストにおける信頼性向上を目的として、ハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス等のイオントラップ剤を配合しても差し支えない。
【0036】
本発明の半導体封止用樹脂組成物は、例えば、つぎのようにして製造することができる。すなわち、前記熱硬化性樹脂(A成分)、硬化剤(B成分)、硬化促進剤(C成分)、無機質充填剤(D成分)および必要に応じて他の添加剤を常法に準じて適宜配合し、ミキシングロール等の混練機を用いて、加熱状態で溶融混練した後、これを室温下で冷却固化させる。その後、公知の方法により粉砕し、必要に応じて打錠するという一連の工程により、目的とする半導体封止用樹脂組成物を製造することができる。
【0037】
本発明の半導体封止用樹脂組成物は、前述のように、成形温度におけるゲル化時間が15秒以上27秒以下であることが必要であり、ゲル化時間が15〜22秒の範囲にあることが好ましい。すなわち、ゲル化時間が15秒未満であると、硬化が速すぎるため、充填性が劣り、逆にゲル化時間が27秒を超えると、一旦拡散された微小気泡が、樹脂の硬化前に再び合泡するため、未充填率が高く、充填性に劣るからである。
【0038】
このようにして得られる半導体封止用樹脂組成物を用いての半導体素子の封止は、特に限定するものではなく、例えば、通常のトランスファー成形等の公知のモールド方法により行うことができる。このようにして得られる半導体装置としては、例えば、BGAのような片面封止型半導体装置やフリップチップ型半導体装置等があげられる。
【0039】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0040】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
【0041】
〔熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)〕
前記構造式(2)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ当量:195、融点:106℃)
【0042】
〔硬化剤a〕
前記一般式(1)で表されるフェノール樹脂(水酸基当量:206、軟化点:75.8℃)
【0043】
〔硬化剤b〕
フェノールノボラック樹脂(三井化学社製、VR8210、水酸基当量:107、軟化点:61℃)
【0044】
〔硬化促進剤a〕
テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート(北興化学社製、TPPK)
【0045】
〔離型剤〕
酸化ポリエチレンワックス(クリアラントジャパン社製、PED521)
【0046】
〔シランカップリング剤〕
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
【0047】
〔シリカ粉末a〕
平均粒径13.2μmの球状溶融シリカ粉末(電気化学工業社製、FB5702FC)
【0048】
〔シリカ粉末b〕
平均粒径0.6μmの球状溶融シリカ粉末(アドマファイン社製、SO25R)
【0049】
〔シリカ粉末c〕
平均粒径1.6μmの球状溶融シリカ粉末(アドマファイン社製、SO32R)
【0050】
〔カーボンブラック〕
三菱化学社製、♯3030B
【0051】
〔難燃剤〕
Sb2 3
【実施例】
【0052】
まず、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂を用いた場合について説明する。
【0053】
〔実施例1〜5、比較例1〜6〕
後記の表1および表2に示す各成分を、同表に示す割合で配合し、80〜120℃に加熱したロール混練機にかけて溶融混練(5分間)することにより、エポキシ樹脂組成物を作製した。つぎに、この溶融物を冷却後粉砕し、さらにタブレット状に打錠することにより、エポキシ樹脂組成物を作製した。なお、得られたエポキシ樹脂組成物のゲル化時間を、つぎのようにして測定し、その結果を後記の表1および表2に併せて示した。
【0054】
〔ゲル化時間の測定〕
175±3℃に保った熱板上で、約2gの粉末状樹脂を溶融させ、薄く伸ばした後、伸ばした樹脂を、先の尖った鉄製金棒の先でゆっくりと引き掻き、樹脂が溶融してから硬化し、金棒の先に樹脂が絡みつくことが確認されるまでの時間(ゲル化時間)を測定した。
【0055】
このようにして得られた実施例および比較例の各エポキシ樹脂組成物を用い、つぎのようにして狭ギャップへの充填性を観察、評価した。これらの結果を、後記の表1および表2に併せて示した。
【0056】
〔狭ギャップへの充填性〕
24mm×24mmのシリコンチップを実装したガラスエポキシ基板を、プレス機(TOWA社製)を用いて、成形温度175℃×成形圧力5kNの条件で封止した。なお、ガラスエポキシ基板上と、シリコンチップ底面との隙間は、65μmに調整した。封止後、隙間内を超音波内部探査装置で観察し、その画像から未充填部の面積を見積もり、シリコンチップ全体の面積に対する比率から未充填率を見積もった。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
上記結果から、成形温度におけるゲル化時間が15秒以上27秒以下である実施例品はいずれも、未充填率が低く、密封充填性に優れていた。これに対して、ゲル化時間が15秒未満、もしくは27秒を超えている比較例1〜5品は、未充填率が高く、充填性に劣っていた。また、比較例6品は、無機質充填剤の含有量が95重量%を超えているため、未充填率が高かった。
【0060】
つぎに、熱硬化性樹脂として、メラミン樹脂を用いた場合について説明する。
【0061】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
【0062】
〔熱硬化性樹脂(メラミン樹脂)〕
イソブチルアルコール変性メラミン樹脂(日立化成工業社製、メラン265)
【0063】
〔硬化剤c〕
レゾール型フェノール樹脂(三菱ガス化学社製、PR−1440)
【0064】
〔硬化促進剤b〕
イミダゾール型硬化促進剤(四国化成社製、キュアゾール2P4MHZ−PW)
【0065】
〔離型剤〕
酸化ポリエチレンワックス(クリアラントジャパン社製、PED521)
【0066】
〔シランカップリング剤〕
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
【0067】
〔シリカ粉末a〕
平均粒径13.2μmの球状溶融シリカ粉末(電気化学工業社製、FB5702FC)
【0068】
〔シリカ粉末b〕
平均粒径0.6μmの球状溶融シリカ粉末(アドマファイン社製、SO25R)
【0069】
〔シリカ粉末c〕
平均粒径1.6μmの球状溶融シリカ粉末(アドマファイン社製、SO32R)
【0070】
〔カーボンブラック〕
三菱化学社製、♯3030B
【0071】
〔難燃剤〕
Sb2 3
【0072】
〔実施例6〜9、比較例7〜12〕
後記の表3および表4に示す各成分を、同表に示す割合で配合し、80〜120℃に加熱したロール混練機にかけて溶融混練(5分間)することにより、メラミン樹脂組成物を作製した。つぎに、この溶融物を冷却後粉砕し、さらにタブレット状に打錠することにより、メラミン樹脂組成物を作製した。
【0073】
このようにして得られた、実施例および比較例のメラミン樹脂組成物を用い、前述の実施例と同様にして、成形温度におけるゲル化時間、および狭ギャップへの充填性を評価した。これらの結果を、下記の表3および表4に併せて示した。
【0074】
【表3】

【0075】
【表4】

【0076】
上記結果から、成形温度におけるゲル化時間が15秒以上27秒以下である実施例品はいずれも、未充填率が低く、密封充填性に優れていた。これに対して、ゲル化時間が15秒未満、もしくは27秒を超えている比較例7〜11品は、未充填率が高く、充填性に劣っていた。また、比較例12品は、無機質充填剤の含有量が95重量%を超えているため、未充填率が高かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)〜(D)成分を含有し、成形温度におけるゲル化時間が15秒以上27秒以下で、かつ、(D)成分の含有量が、半導体封止用樹脂組成物全体の86〜95重量%の範囲内に設定されていることを特徴とする半導体封止用樹脂組成物。
(A)熱硬化性樹脂。
(B)硬化剤。
(C)硬化促進剤。
(D)無機質充填剤。
【請求項2】
上記(A)成分の熱硬化性樹脂が、ビフェニル型エポキシ樹脂であり、かつ、上記(B)成分の硬化剤が、下記の一般式(1)で表されるフェノール樹脂である請求項1記載の半導体封止用樹脂組成物。
【化1】

【請求項3】
上記(A)成分の熱硬化性樹脂が、メラミン樹脂であり、かつ、上記(B)成分の硬化剤が、レゾール型フェノール樹脂である請求項1記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項4】
上記(C)成分の硬化促進剤が、有機リン系化合物、イミダゾール系化合物、およびジアザビシクロアルケン系化合物からなる群から選ばれた少なくとも1つである請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項5】
ボールグリッドアレイ用封止材料またはトランスファーアンダーフィル用封止材料である請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体封止用樹脂組成物を用いて、半導体素子を封止してなる半導体装置。
【請求項7】
上記半導体素子を封止してなる半導体装置が、ボールグリッドアレイ構造の半導体装置またはトランスファーアンダーフィルによる半導体装置である請求項6記載の半導体装置。

【公開番号】特開2006−8955(P2006−8955A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−192068(P2004−192068)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】