説明

半導体封止用樹脂組成物

【課題】
バンプ電極と基板電極などの金属表面酸化皮膜に対して、優れたフラックス効果を発揮し、リフロー後の部品のリペアが可能であるとともに、さらに、アフターキュァーで本硬化させた樹脂硬化物が優れた機械的物性を有し熱的歪応力によるクラックの発生や剥離などの封止特性上の不良発生を防止できる半導体封止用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
下記の成分(A)、(B)をそれぞれ、(A)35〜75重量%、(B)25〜65重量%含有する半導体封止用樹脂組成物。
(A)芳香族ジカルボン酸化合物(a1)と芳香族トリカルボン酸化合物(a2)をa1:a2が70:30〜95:5の割合で混合した混合物に対して、ジビニルエーテル化合物を付加反応させて得られる重量平均分子量1,500〜100,000の芳香族分岐状ポリへミアセタールエステル縮合体
(B)エポキシ樹脂(b1)またはオキセタン樹脂(b2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置における配線回路基板と半導体装置との間の空隙を封止するために用いられる半導体封止用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の軽量化、小型化ならびに薄型化が盛んに行われ、その際に、回路配線基板上に半導体チップ部品を実装する方法として、フリップチップ実装方式の採用が進められている。このフリップチップ実装方式では、チップ部品と回路配線基板上に形成されている基板用電極との導通を達成するためにバンプ電極が用いられている。例えば、チップ部品の実装面(裏面)に形成されるチップ部品用電極に、予め球形状のはんだで作製されるバンプ電極を設け、このバンプ電極を基板用電極の所定の領域(実装領域)に接触させる。その配置において、はんだを溶融させると、基板用電極と接触させた所望の位置にはんだ付けがなされる。これによりバンプ電極を介して、チップ部品と回路配線基板の両電極間に所望の導通が達成される。あるいは、逆に、バンプ電極を回路配線基板の電極上に設けて、チップ部品の電極部分を接触させてはんだ付けする手法を用いることもある。
【0003】
このフリップチップ実装方式では、チップ部品と回路配線基板の両電極間を接続するバンプ電極のみによってチップ部品は固着されることになるが、チップ部品の小型・軽量・薄型化の要求により、バンプ電極は可能な限り小さくされる。チップ部品と回路配線基板は、その熱膨張係数が異なっており、動作時の温度変化に伴い、相対的に回路配線基板の熱膨張あるいは熱収縮が生じた際、バンプ電極は、その熱変位を吸収・緩和できない。従って、温度変化(熱サイクル)が繰り返されると、前記の熱変位に由来する応力歪みが反復された結果、バンプ電極と基板電極間の接合箇所(はんだ付け箇所)にクラック・剥離を引き起こすことがある。
【0004】
この熱サイクル劣化を抑制するために、チップ部品と回路配線基板との間隙に相互を接着・固定し、相対的な熱変位を低減する役割を有する樹脂による充填・封止が行われる。この封止剤は、アンダーフィル剤とも呼ばれ、毛細管現象を用いて、チップ部品と回路配線基板との間の狭いギャップに充填される。しかしながら、この手法では、
(1)バンプ電極や基板用電極の酸化被膜を除去するためにフラックスを塗布する工程、(2)パッケージを組み立てる工程、(3)フラックス残渣を除去する工程、(4)アンダーフィル剤を注入する工程、(5)アンダーフィル剤の硬化工程等のプロセス数が多く、その短縮化・効率化は大きな問題であった。
【0005】
また、フリップチップ実装方式で実装するチップ部品は、一般的に高価なものであるので、通常は、接合後に導通不良が確認された場合、接合部を局所加熱することで、部品を剥離し、アンダーフィル剤の残渣を溶剤等で除去した後に再利用される。これは、リペア性と呼ばれる特性のひとつであり、熱硬化性樹脂を使用した場合、硬化物は強固な架橋構造を形成しているために、加熱するだけでは部品を剥離することができない。すなわち、熱硬化性樹脂を使用する限りは、リペア性を付与させることが困難であり、一般的には、熱硬化性樹脂に一定割合の熱可塑性樹脂を配合させる等の手法が用いられている。しかしながら、熱可塑性樹脂を配合すると硬化物の機械特性が低下するといった問題がある。
【0006】
このような問題を解決するために、封止剤自体にフラックス作用を持たせ、フリップチップ接合と樹脂封止を同時に行う手法が提案されている。例えば、特許文献1、特許文献2には、エポキシ樹脂と酸無水物からなる半導体封止用樹脂組成物が開示されている。これらの技術は、酸無水物が、硬化剤としての機能と金属表面の酸化被膜を除去するフラックスとしての機能を同時に有することから、プロセスの短縮化・効率化に有効である。また、特許文献3、特許文献4には、フラックス成分として潜在化されたカルボン酸化合物を配合した、フェノール樹脂とエポキシ樹脂からなる半導体封止用樹脂組成物が開示されている。しかしながら、これらの技術では、リフロー中に熱硬化が進行、リフロー後には樹脂成分が完全に硬化してしまうために、接合後に導通不良が確認された場合、部品のリペアが困難である。
【0007】
一方、特許文献5には、潜在化されたカルボン酸化合物とエポキシ樹脂がフラックス成分として配合された熱硬化性フラックスが開示されている。ここで開示された技術を用いた熱硬化性フラックスは、はんだペーストとの共用が可能な設計となっている。しかしながら、はんだ粉末の未溶融を防止する(はんだの凝集を阻害しないようにする)ために、得られる硬化物はTgが低く、優れた機械的物性を有しているとは言いがたい。
このように、フラックス活性を有しながら、リフロー中には硬化せず、部品のはんだバンプ接合のみが進行し、部品のリペアを可能とする半導体封止用樹脂組成物が求められているのである。
【0008】
【特許文献1】特開2001−329041号公報
【特許文献2】特開2001−302765号公報
【特許文献3】特開2002−241472号公報
【特許文献4】特開2003−171535号公報
【特許文献5】特開2001−239395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記の課題を解決するものであり、本発明の目的は、フラックス活性を有した半導体封止用樹脂組成物であって、リフロー中には樹脂は硬化せず(部品のはんだバンプ接合のみが進行)、部品のリペアが可能な半導体封止用樹脂組成物を提供することにある。より具体的には、はんだのぬれ不良に起因する、はんだ付け不良、導通不良が発生した場合でも、リペアが容易にでき、さらに、リフロー後のアフターキュアーで本硬化させる樹脂硬化物は、優れた機械的物性を有する半導体封止用樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記の問題に鑑み、鋭意検討した結果、芳香族ジカルボン酸化合物と芳香族トリカルボン酸化合物との混合物に対してジビニルエーテル化合物を付加反応させて得られる芳香族分岐状ポリへミアセタールエステル縮合体と、エポキシ樹脂またはオキセタン樹脂とを含有する半導体封止用樹脂組成物が、前記の課題を解決するとの知見を得て本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、次の〔1〕および〔2〕である。
〔1〕 下記の成分(A)、(B)をそれぞれ、(A)35〜75重量%、(B)25〜65重量%含有する半導体封止用樹脂組成物。
(A)芳香族ジカルボン酸化合物(a1)と芳香族トリカルボン酸化合物(a2)をa1:a2が70:30〜95:5の割合で混合した混合物に対して、ジビニルエーテル化合物を付加反応させて得られる重量平均分子量1,500〜100,000の芳香族分岐状ポリへミアセタールエステル縮合体
(B)エポキシ樹脂(b1)またはオキセタン樹脂(b2)
〔2〕 前記(B)成分が、エポキシ樹脂(b1)とオキセタン樹脂(b2)をb1:b2が50:50〜90:10の割合で混合した混合物である前記の〔1〕に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明の半導体封止用樹脂組成物は、優れたフラックス特性を有し、バンプ電極や基板電極などの金属表面酸化皮膜を効果的に除去できる。また、本発明の半導体封止用樹脂組成物は、加熱により適度な反応速度で樹脂の硬化反応が進行するので、リフロー工程中には樹脂は硬化せず(部品のはんだバンプ接合のみが進行)、部品のリペアが可能となる。さらに、リフロー後のアフターキュアーで本硬化させた樹脂硬化物は、優れた機械的物性を有するので、熱的歪応力によるクラックの発生や剥離などの封止特性上の不良発生を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の半導体封止用樹脂組成物は、下記の成分(A)、(B)をそれぞれ、(A)35〜75重量%、(B)25〜65重量%含有することを特徴とする。
(A)芳香族分岐状ポリへミアセタールエステル縮合体
(B)エポキシ樹脂(b1)またはオキセタン樹脂(b2)
【0014】
<(A)芳香族分岐状ポリへミアセタールエステル縮合体>
本発明の半導体封止用樹脂組成物に用いる、芳香族分岐状ポリへミアセタールエステル縮合体(A)は、芳香族ジカルボン酸化合物(a1)と芳香族トリカルボン酸化合物(a2)をa1:a2が70:30〜95:5の割合で混合した混合物に対して、ジビニルエーテル化合物を付加反応させて得られる重量平均分子量1,500〜100,000の芳香族分岐状ポリへミアセタールエステル縮合体である。
【0015】
<芳香族ジカルボン酸化合物(a1)>
芳香族分岐状ポリへミアセタールエステル縮合体(A)の製造に用いる芳香族ジカルボン酸化合物(a1)は下記式(1)で表される。
【0016】
HOOC−R−COOH (1)
ここで、Rは、炭素数6〜50の2価の芳香族基であり置換または非置換の芳香環を1個または2個有することを特徴とする。Rは、より詳しくは、下記のの式(2)または式(3)で表される。
【0017】
【化1】

【0018】
ここで、Rは、水素原子または炭素数1〜10の直鎖または分岐状のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、メトキシ基等が挙げられる。
【0019】
【化2】

【0020】
ここで、Rは炭素数2〜20の2価の脂肪族ジオール残基であり、Rは水素原子または炭素数1〜10の直鎖または分岐状のアルキル基である。
前記式(3)で表されるRを有する芳香族ジカルボン酸化合物(a1)は、具体的には、1モルの脂肪族ジオールと2モルの芳香族ジカルボン酸無水物とをハーフエステル化反応することによって得られる。
【0021】
そのようなジオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−および1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−メチル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。ハーフエステル体に使用される酸無水物としては、例えばフタル酸などのジカルボン酸の酸無水物が挙げられる。これらのジカルボン酸型化合物の原料は、1種単独で、または2種以上を配合して使用してもよい。
【0022】
<芳香族トリカルボン酸化合物(a2)>
芳香族分岐状ポリへミアセタールエステル縮合体(A)の製造に用いる芳香族トリカルボン酸化合物(a2)は、下記式(4)で表される。
【0023】
【化3】

【0024】
ここで、Rは、炭素数6〜50の3価の芳香族基であり、置換または非置換の芳香環を1〜3個有することを特徴とする。Rは、より詳しくは、下記の式(5)または式(6)で表される。
【0025】
【化4】

【0026】
ここで、Rは、水素原子または炭素数1〜10の直鎖または分岐状のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、メトキシ基等が挙げられる。
【0027】
【化5】

【0028】
ここで、Rは炭素数3〜20の3価の脂肪族トリオール残基であり、Rは水素原子または炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキル基である。前記式(6)で表されるRを有する芳香族トリカルボン酸化合物(a2)は、具体的には、1モルのトリオールと3モルの芳香族ジカルボン酸無水物とをハーフエステル化反応することによって得られる。
【0029】
そのようなトリオールとしては、例えばグリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,7−ヘプタントリオール、1,2,8−オクタントリオール、1,2,9−ノナントリオール、1,2,10−デカントリオール、1,3,5−シクロヘキサントリオール、1,2,4−シクロヘキサントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。ハーフエステル体に使用される酸無水物としては、例えばフタル酸などのジカルボン酸の酸無水物が挙げられる。これらのトリカルボン酸型化合物の原料は、1種単独で、または2種以上を配合して使用してもよい。
【0030】
<ジビニルエーテル化合物>
芳香族分岐状ポリへミアセタールエステル縮合体(A)の製造に用いるジビニルエーテル化合物は下記式(7)で表される。
【0031】
C=CH−O−R−O−CH=CH (7)
ここで、Rは、炭素数2〜50の2価のアルキル基またはアルケニル基である。
前記式(7)で表される化合物としては、脂肪族ジビニルエーテル、芳香族ジビニルエーテルが挙げられ、具体的には例えば、トリメチレングリコールジビニルエーテル、1,4−ビスビニルオキシメチルシクロへキセン、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,5−ペンタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,9−ノナンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、1,4−ベンゼンジビニルエーテル、ビスフェノールAジビニルエーテル、ビスフェノールFジビニルエーテルが挙げられる。
【0032】
前記のジビニルエーテル化合物の中でも、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルが入手性および反応性の点から好ましく挙げられる。前記の原料は、1種単独で、または2種以上を混合して使用できる。
【0033】
本発明の半導体封止用樹脂組成物に用いる芳香族分岐状ポリへミアセタールエステル縮合体(A)は、下記式(8)、(9)で示される構造単位を有し、重量平均分子量が1,500〜100,000であり、好ましくは、8,000〜80,000、より好ましくは3,0000〜70,000である。
【0034】
【化6】

【0035】
ここで、Rは、前記式(1)におけるRと同じであり、Rは、前記式(7)におけるRと同じである。
【0036】
【化7】

【0037】
ここで、Rは、前記式(4)におけるRと同じであり、Rは、前記式(7)におけるRと同じである。
芳香族ジカルボン酸化合物(a1)と芳香族トリカルボン酸化合物(a2)の混合比は、芳香族ジカルボン酸化合物/芳香族トリカルボン酸化合物=70/30〜95/5(重量%)である。好ましくは、芳香族ジカルボン酸化合物/芳香族トリカルボン酸化合物=65/35〜90/10(重量%)であり、より好ましくは、芳香族ジカルボン酸化合物/芳香族トリカルボン酸化合物=65/35〜80/20(重量%)である。このような混合比で合成した分岐状ポリへミアセタールエステル縮合体(A)を使用することで、アンダーフィル剤として使用可能な機械的物性が得られるのみならず、リフロー後の導通試験が容易に行うことができ、さらに、所定のアフター硬化時間内での完全硬化が可能となる。本発明の半導体封止用樹脂組成物を使用することで、部品のリペアが可能となり、リフロー後に完全硬化させた(封止を完了させた)硬化物は、実使用に耐えるに十分な機械的物性を有する。芳香族トリカルボン酸化合物(a2)を35重量%を越えて混合させると内部架橋によりゲル化してしまうので好ましくない。5重量%未満であると、合成上は問題とならないが、硬化物の物性が低下するので好ましくない。
【0038】
本発明に用いる芳香族分岐状ポリへミアセタールエステル縮合体を得るための付加反応においては、芳香族ジカルボン酸化合物(a1)と芳香族トリカルボン酸化合物(a2)の混合物と、ジビニルエーテル化合物の反応が、カルボキシル基とビニルエーテル二重結合とが等モル反応するべく、当モル〜ビニルエーテル二重結合過剰の条件になるよう、仕込み比率を調整する。すなわち、芳香族ジカルボン酸化合物(a1)と芳香族トリカルボン酸化合物(a2)の混合物に対して、ジビニルエーテル(a3)は、ビニルエーテル二重結合/カルボキシル基のモル比が1〜5、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜1.5モルである。芳香族分岐状ポリへミアセタールエステル縮合体の構造中に導入されない過剰のビニルエーテル化合物は、反応後にエバポレーション等の操作により除去することができる。上記モル比が5を越えると、除去できないジビニルエーテル成分が残存することになり、チップ部品と回路配線基板との隙間に発泡が発生しボイドとなり、信頼性が低下するおそれがある。上記モル比が1未満であると、酸価が高くなり、半導体封止用樹脂組成物の保存安定性が低下するおそれがある。
【0039】
また、反応温度は、通常室温ないし200℃の範囲の温度であればよく、好ましくは50〜150℃である。また、この反応の反応時間は、反応進行状況に応じて適宜選定すればよいが、通常1〜100時間でよい。この際、反応を促進させる目的で酸触媒を使用することができる。そのような触媒としては、例えば、下記式(10)で表される酸性リン酸エステルが挙げられる。
【0040】
【化8】

【0041】
(式中のR10は炭素数3〜10のアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基、mは1または2である。)
より具体的には、n−プロパノール、n−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノールといった第一級アルコール類、およびイソプロパノール、2−ブタノール、2−ヘキサノール、2−オクタノール、シクロヘキサノール等の第二級アルコール類のリン酸モノエステル類あるいはリン酸ジエステル類が挙げられる。
【0042】
また、反応系を均一にし、反応を容易にする目的で有機溶媒も使用することができる。そのような有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、芳香族石油ナフサ、テトラリン、テレビン油、ソルベッソ#100(エクソン化学(株)登録商標)、ソルベッソ#150(エクソン化学(株)登録商標)等の芳香族炭化水素;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸第二ブチル、酢酸アミル、モノメチルエーテル、酢酸メトキシブチル等のエステルおよびエーテルエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、メシチルオキサイド、メチルイソアミルケトン、エチルブチルケトン、エチルアミルケトン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジイソプロピルケトン等のケトン類;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル類、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
これらの溶媒量としては、特に限定されないが、原料である芳香族ジカルボン酸化合物(a1)と芳香族トリカルボン酸化合物(a2)の混合物とジビニルエーテル化合物との合計量100重量部に対して、5〜95重量部、より好ましくは20〜80重量部が挙げられる。
【0043】
前記(A)成分の重量平均分子量は、通常1,500〜100,000の範囲のものである。また、(A)成分の酸価は、本発明の半導体封止用樹脂組成物の保存安定性の面から、好ましくは30mgKOH/g以下、より好ましくは10mgKOH/g以下、さらに好ましくは3mgKOH/g以下である。
本発明の半導体封止用樹脂組成物中の(A)成分の配合量は35〜75重量%、好ましくは45〜65重量%、より好ましくは50〜60重量%である。(A)成分の配合量が35重量%未満であると、フラックスとしての機能が低下し、はんだのぬれ不良に起因する、はんだ付け不良、導通不良が発生する。(A)成分の配合量が75重量%を越えると、アフターキュアー後の硬化物中にカルボキシル基が多量に存在することになり、耐水性やその他硬化物の機械特性が低下する。
【0044】
<(B)エポキシ樹脂(b1)またはオキセタン樹脂(b2)>
本発明の半導体封止用樹脂組成物には、(B)エポキシ樹脂(b1)またはオキセタン樹脂(b2)が用いられる。(B)成分は、1分子中に2個以上のエポキシ基またはオキセタニル基の含酸素3員環または4員環構造の開環反応性を有しており、これらの基団が(A)成分を加熱して生じるカルボキシル基とエステル化反応して架橋構造を生じせしめることを特徴とする。
【0045】
エポキシ樹脂(b1)としては、硬化時の樹脂強度、接着性などから、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、テルペン型エポキシ樹脂などが挙げられる。その際、1種のエポキシ樹脂を利用してもよいし、2種類以上のエポキシ樹脂を利用してもよい。
【0046】
より具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂として、エピコート828(ジャパンエポキシレジン(株)製商品名、エポキシ当量190)、同1001(エポキシ当量500)、同1002(エポキシ当量700)、同1004(エポキシ当量975)が挙げられ、ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、エピコート806(ジャパンエポキシレジン(株)製商品名、エポキシ当量170)、同807(エポキシ当量190)、同4004P(エポキシ当量880)、同4007P(エポキシ当量2270)が挙げられる。また、ビフェニル型エポキシ樹脂としては、エピコートYX−4000(ジャパンエポキシレジン(株)製商品名、エポキシ当量185)、同YX−4000H(エポキシ当量193)が挙げられる。クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、エポトートYDCN−701(商品名;東都化成(株)製、エポキシ当量200)が挙げられる。フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、エピコート154(商品名;ジャパンエポキシレジン(株)製、エポキシ当量180)、エポトートYDPN−638(商品名;東都化成(株)製、エポキシ当量180)が挙げられる。さらに、脂環式エポキシ樹脂としては、エピコートYX−8000(ジャパンエポキシレジン(株)製商品名、エポキシ当量205)、同YL6834(エポキシ当量280)、セロキサイド2021P(商品名;ダイセル化学工業(株)製、エポキシ当量130)が挙げられる。ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂としては、EPICRON HP−7200L(大日本インキ化学工業(株)製商品名、エポキシ当量250)、同HP−7200(エポキシ当量260)、同HP−7200H(エポキシ当量280)、同HP−7200HH(エポキシ当量280)が挙げられる。ナフタレン型エポキシ樹脂としては、EPICRON HP−4032(大日本インキ化学工業(株)製商品名、エポキシ当量150)、同EXA−4700(エポキシ当量250)、ESN−165(新日鐵化学(株)製商品名、エポキシ当量250)、同ESN−175(エポキシ当量260)、同ESN−185(エポキシ当量270)、同ESN−195(エポキシ当量280)、同ESN−355(エポキシ当量160)、同ESN−375(エポキシ当量170)が挙げられる。トリフェノールメタン型エポキシ樹脂としては、EPPN−501H(日本化薬(株)製商品名、エポキシ当量172)、同EPPN−502H(エポキシ当量178)が挙げられる。
【0047】
また、硬化物の可とう性、柔軟性を向上させるために、微粒子状の熱可塑性樹脂の分散、熱可塑性樹脂分子の付加修飾による変性のいずれかの処理を施したエポキシ樹脂を部分的に利用してもよい。微粒子状の熱可塑性樹脂の分散を行ったエポキシ樹脂としては、例えば、熱硬化を行う際、かかる微粒子状の熱可塑性樹脂の形状を保持するように、コアシェル型の微粒子とし、コア部にゴム質の熱可塑性樹脂を、それを覆うシェル部にガラス転移温度Tgがより高い熱可塑性樹脂を用いたものが、かかる目的に好適である。具体的には、コアシェル型の平均粒径0.5μmのゴム成分微粒子を分散したエポキシ樹脂であるYR−628(商品名;東都化成(株)製、エポキシ当量225)やEPR−21(商品名;旭電化工業(株)製、エポキシ当量210)が挙げられる。また、熱可塑性樹脂分子の付加修飾による変性を施したエポキシ樹脂としては、ニトリルゴム分子を付加修飾して変性を施したものなどが挙げられる。具体的には、CTBN変性エポキシ樹脂であるEPR−4023(商品名;旭電化工業(株)製、エポキシ当量230)やYR−450(商品名;東都化成(株)製、エポキシ当量450)、NBR変性エポキシ樹脂であるEPR−4026(商品名;旭電化工業(株)製、エポキシ当量280)や同−1309(エポキシ当量280)、ならびに樹脂骨格に柔軟性を示すアルキレン鎖を含むエポキシ樹脂である同−4000S(エポキシ当量260)を挙げることができる。
【0048】
微粒子状の熱可塑性樹脂で分散処理されているエポキシ樹脂や熱可塑性樹脂分子の付加修飾による変性を施したエポキシ樹脂を部分的に利用すると、得られる硬化物全体として、熱可塑性樹脂に由来する強靭性、柔軟性、可とう性の向上効果が得られ、また、エポキシ樹脂本来の接着性の利点も保持することができる。特に、氷点以下の温度へと冷却した際、冷却温度とともに、急速に脆さを増すエポキシ樹脂の難点は、変性されている熱可塑性樹脂成分に起因する柔軟性、靭性によって大幅に改善できる。結果として、得られる硬化物は、靭性を増し、特に、低温靭性が改善された、接着性、可とう性に富み、特に、冷却した際、せん断強度、剥離強度の低下が緩和されたものとなる。
【0049】
オキセタン樹脂(b2)としては、3−メチル−3−メトキシメチルオキセタンや3−エチル−3−メトキシメチルオキセタン等の炭素数1〜8のアルキル基を有する3−アルキル−3−ヒドロキシメチルオキセタン類から誘導される、次の(i)および(ii)のオキセタン化合物が好適に用いることができる。
(i)ヒドロキシル化合物と、3−アルキル−3−ヒドロキシメチルオキセタン類とのエーテル化物
具体的には例えば、炭素数1〜6のアルキル基からなる脂肪族モノアルコール、炭素数2〜8のアルキレン基からなる脂肪族グリコール、炭素数2〜18の芳香族アルコール、フェノールノボラック樹脂、重合単位が第4級構造で重合度2〜8のポリシロキサン等のヒドロキシル化合物と、3−エチル−3−メトキシメチルオキセタン等のオキセタン類をエーテル縮合した化合物等が挙げられる。より具体的には例えば、1,4−ビス(((3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ)メチル)ベンゼン、1,4−ビス(((3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ)メチル)ベンゼン、4,4´−ビス(((3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ)メチル)ビフェニル、3,3´,5,5´−メチル−4,4´−ビス(((3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ)メチル)ビフェニル、1,4−ビス((3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ)ベンゼン、4,4´−ビス((3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ)ビフェニル、3,3´,5,5´−メチル−4,4´−ビス((3−エチル−3−オキセタニル)メチル)ビフェニル等が挙げられる。
【0050】
(ii)カルボキシル化合物と3−アルキル−3−ヒドロキシメチルオキセタン類とのエステル化物
具体的には例えば、炭酸、アジピン酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸等のカルボキシル化合物と、3−エチル−3−メトキシメチルオキセタン等のオキセタン類をエステル化した化合物等が挙げられ、より具体的には例えば、ビス((3−エチル−3−オキセタニル)メチル)カーボネート、ビス((3−エチル−3−オキセタニル)メチル)アジペート、ビス((3−エチル−3−オキセタニル)メチル)ベンゼン−1,4−ジカルボキシレート、ビス((3−エチル−3−オキセタニル)メチル)シクロヘキサン−1,4−ジカルボキシレート等が挙げられる。
これらの、オキセタン基を含有する化合物の中でも、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ビフェニルが、樹脂硬化物の物性の点から好ましく挙げられる。
前記のオキセタン基を含有する化合物は、1種単独でまたは2種以上を混合して使用することできる。
【0051】
本発明の半導体封止用樹脂組成物において、用いる(B)成分を、エポキシ樹脂とオキセタン樹脂(b2)をエポキシ樹脂(b1)/オキセタン樹脂(b2)の重量比率として、好ましくは50/50〜90/10、より好ましくは75/25〜85/15の割合で混合して使用することによって、さらに熱的歪応力によるクラックの発生や剥離などの封止特性上の不良発生も抑制することができる。エポキシ樹脂(b1)は硬化反応が早く、使用するエポキシ樹脂(b1)のタイプによってはリフロー中に硬化が完了し、部品のリペアが出来なくなる場合がある。そういった場合に、オキセタン樹脂(b2)を一部配合することで硬化反応を遅くすることが可能であり、リフロー後の導通を確認した後に、アフターキュアーで本硬化させることが可能になるのである。また、理由は定かではないが、オキセタン樹脂を一部配合することで、ジビニルエーテル化合物成分の揮発を抑制することが可能となり、チップ部品と回路配線基板間のボイドの発生が無くなる。
上記混合比率を越えてオキセタン樹脂(b2)を配合すると、本硬化させるアフターキュアー時間が長くなり、また、硬化物の機械特性が低下してしまうので好ましくない。
【0052】
本発明の半導体封止用樹脂組成物中の(B)成分の配合量は25〜65重量%、好ましくは35〜55重量%である。(B)成分の配合量が25重量%未満あるいは65重量%を越えると、アフターキュアー後の硬化物の機械特性が低下する。
本発明の半導体封止用樹脂組成物中における、必須成分(A)、(B)の合計量は、全体の70重量%以上、好ましくは80重量%である。合計量が70重量%未満であると、本発明の効果が得られない場合が出てくる。
【0053】
本発明の半導体封止用樹脂組成物は、場合により長期にわたる貯蔵安定性を良好に保ち、かつ低温にて短時間で硬化する際に、硬化反応を促進し、硬化物に良好な化学性能および物理性能を付与する目的で、加熱硬化時に活性を示す熱潜在性酸触媒を含有させることができる。この熱潜在性酸触媒は、60℃以上の温度において、酸触媒活性を示す化合物が望ましい。この熱潜在性酸触媒が60℃未満の温度で酸触媒活性を示す場合、得られる半導体封止用樹脂組成物は貯蔵中に増粘したり、ゲル化するなど、好ましくない事態を招来する恐れがある。熱潜在性酸触媒としては、プロトン酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸とトリアルキルホスフェートの混合物、スルホン酸エステル類、リン酸エステル類、およびオニウム化合物類が好ましく挙げられる。
【0054】
該プロトン酸をルイス酸で中和した化合物としては、例えばハロゲノカルボン酸類、スルホン酸類、硫酸モノエステル類、リン酸モノおよびジエステル類、ポリリン酸エステル類、ホウ酸モノおよびジエステル類、等を、アンモニア、モノエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピペリジン、アニリン、モルホリン、シクロへキシルアミン、n−ブチルアミン、モノエチノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種アミンもしくはトリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、トリアルキルホスファイト、トリアリールホスファイトで中和した化合物、さらには、酸−塩基ブロック化触媒として市販されているネイキュアー2500X、X−47−110、3525、5225(商品名、キングインダストリー社製)などが挙げられる。また、ルイス酸をルイス塩基で中和した化合物としては、例えばBF3、FeCl3、SnCl4、AlCl3、ZnCl2などのルイス酸を前記のルイス塩基で中和した化合物が挙げられる。あるいは上記ルイス酸とトリアルキルホスフェートとの混合物も挙げられる。該スルホン酸エステル類としては、例えば式(11)で表される化合物が挙げられる。
【0055】
【化9】

【0056】
(式中のR11はフェニル基、置換フェニル基、ナフチル基、置換ナフチル基またはアルキル基、R12は一級炭素または二級炭素を介してスルホニルオキシ基と結合している炭素数3〜18のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルカリール基、アルカノール基、飽和もしくは不飽和のシクロアルキルまたはヒドロキシシクロアルキル基である)
前記の化合物としては、具体的には例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ノニルナフタレンスルホン酸などのスルホン酸類とn−プロパノール、n−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノ−ルなどの第一級アルコール類またはイソプロパノール、2−ブタノール、2−ヘキサノール、2−オクタノ−ル、シクロヘキサノールなどの第二級アルコール類とのエステル化物、さらには前記スルホン酸類とオキシラン基含有化合物との反応により得られるβ‐ヒドロキシアルキルスルホン酸エステル類などが挙げられる。
該リン酸エステル類としては、例えば下記式(12)で表される化合物が挙げられる。
【0057】
【化10】

【0058】
(式中のR13は、炭素数3〜10のアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基、sは1または2である)で表される化合物が挙げられる。
前記の化合物としては、具体的には例えば、n−プロパノール、n−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノ−ル、2−エチルヘキサノ−ル等の第一級アルコール類、およびイソプロパノール、2−ブタノール、2−ヘキサノール、2−オクタノ−ル、シクロヘキサノール等の第二級アルコール類のリン酸モノエステル類あるいはリン酸ジエステル類が挙げられる。
【0059】
また該オニウム化合物としては、例えば一般式(13)〜(16)で表される化合物などが挙げられる。
〔R14NR15 ・・・・・ (13)
〔R16PR17 ・・・・・ (14)
〔R18OR19 ・・・・・ (15)
〔R20SR21 ・・・・・ (16)
(式中のR14、R16、R18、R20は炭素数1〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルカリール基、アルカノール基またはシクロアルキル基であって、2個のR14、R16、R18、R20は互いに結合してN、P、OまたはSをヘテロ原子とする複素環を形成していてもよく、R15、R17、R19、R21は水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルカリール基、XはSbF、AsF、PFまたはBFである。)
【0060】
前記の熱潜在性酸触媒は、単独でも、2種以上を組み合わせてもよく、またその添加量は本発明の半導体封止用樹脂組成物の総固形分量100重量部あたり、通常0.01〜10重量部の範囲で選ばれる。熱潜在性酸触媒の量が0.01重量部未満では触媒効果が十分に発揮されないし、10重量部を超える場合には、最終的に得られる硬化物が着色したり、耐水性が低下したり、発泡することがあり好ましくない。
また、本発明の半導体封止用樹脂組成物は、要求性能に応じて、応力緩和剤、レべリング剤、カップリング剤、酸化防止剤、可塑剤、チクソトロピー性付与剤、無機充填剤、シリコーンオイル、シリコーンゴム、合成ゴム、反応性希釈剤、つや消し剤、着色剤、分散安定剤等の成分を配合してもよい。また、耐湿信頼性向上を目的としたハイドロタルサイト類やイオントラップ剤としての水素化ビスマスなどを配合してもよい。さらに、アルミナ、シリカ、窒化ケイ素等の無機充填剤や銅、銀、アルミ、ニッケル、はんだ等の金属粒子、顔料、染料等も必要に応じて配合してもよい。
本発明の半導体封止用樹脂組成物は、例えば、以下のようにして製造することができる。すなわち、(A)成分と(B)成分、ならびに、必要に応じて、上述の慣用される副次的な成分とを十分に混合した後、その調製工程の攪拌等により内部に発生したあるいは取り込まれた気泡を減圧脱泡して製造することができる。製造に用いる機械としては、例えば、三本ロール、混練装置、真空攪拌装置、ホモディスパー、スリーワンモーター、プラネタリーミキサー等の公知の装置が挙げられる。
【0061】
本発明の半導体封止用樹脂組成物の塗布は、配線回路基板上に行ってもよいし、半導体素子上に行ってもよい。半導体素子側に半導体封止用樹脂組成物を塗布する場合、個片チップにダイシングされる前のウエハに行ってもよいし、ダイシングされた後の個片チップに行ってもよい。ウエハに半導体封止用樹脂組成物を塗布し、次いで、個片チップにダイシングした後にチップ実装する方法は、ウエハレベルで一括して樹脂を塗布できるので生産性向上の点から好しい。樹脂塗布方法としては、印刷方法やスピンコート方式のいずれでもよいが、印刷方式において真空差圧を利用した印刷封止法は、樹脂封止層に気泡が入りにくいのでより好ましい。
配線回路基板に半導体封止用樹脂組成物を塗布する方法では、まず、配線回路基板上に、例えば、60℃に加温した溶融状態の半導体封止用樹脂組成物をポッティングする。次いで、半導体封止用樹脂組成物上の所定位置に、複数の球状の接続用電極(ジョイントボール)が設けられた半導体素子を載置し、加熱ステージ上で半導体封止用樹脂組成物をさらに溶融状態として、半導体素子の接続用電極が溶融状態の半導体封止用樹脂組成物を押しのけ配線回路基板と接続用電極とが接触するようにし、かつ、半導体素子と配線回路基板との間の空隙内に溶融状態の半導体封止用樹脂組成物を充填させた後、はんだリフローによる金属接合を行い、導通確認後、アフターキュアーで半導体封止用樹脂組成物を硬化させることにより、封止樹脂層を形成して空隙を封止する。アフターキュアー温度は、通常、130〜200℃が好適である。この時、はんだリフロー方式は、リフロー炉を用いた接合方式であっても、チップ搭載と同時にはんだ融点以上にヒーター部を加熱し、はんだ溶融を行う接合方式であってもよい。
【0062】
なお、半導体装置の製法は、複数の球状の接続用電極(ジョイントボール)が設けられた半導体素子を用いた場合について述べたが、これに限定するものではなく、予め配線回路基板に複数の球状の接続用電極が配置されたものを用いてもよい。
半導体封止用樹脂組成物の厚さおよび重量は、搭載される半導体素子の大きさおよび半導体素子に設けられた接続用電極の大きさ、すなわち、半導体素子と配線回路基板との空隙を充填し封止することにより形成される封止樹脂層の占める容積により適宜設定される。
本発明の半導体封止用樹脂組成物は、フリップチップ実装における封止充填に用いてその効果を発揮するものである。具体的には、フリップチップ実装において、はんだ製のバンプ電極の溶融をリフロー炉を通すことで、さらに、本硬化をリフロー後のアフターキュアーで行う方式においてその効果を発揮する。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。なお、例中の酸価はJIS K 0070:1992「化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法」に準じて、テトラヒドロフラン(THF)溶液に、一定量の樹脂を溶解させ、フェノールフタレインを指示薬として、KOH/エタノール溶液にて滴定し、測定された酸当量より算出した。樹脂のガラス転移温度は、セイコーインスツルメント(株)製「DSC220」により、昇温速度10℃/分、窒素流量50ml/分の条件で測定した。重量平均分子量(Mw)は、東ソー(株)製のゲル浸透クロマトグラフィーSC−8010(GPC)を用い、カラムとして、昭和電工(株)製「SHODEX K−801」を用い、THFを溶離液とし、RI検出器により測定してポリスチレン換算により求めた。
【0064】
次に、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
〈合成例1;ジカルボン酸化合物ハーフエステル体αの製造〉
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた4つ口フラスコに、それぞれ表1記載の組成の単量体を仕込み、30分かけて常温から140℃まで昇温させた後、同温度を維持しながら反応を続け、反応率が98%以上になったところで反応を終了した。反応終了後、減圧下において、反応生成物から溶媒を除去し、ジオールと酸無水物のハーフエステル体であるジカルボン酸ハーフエステル体αを得た。
【0065】
【表1】

【0066】
〈合成例2;トリカルボン酸ハーフエステル体βの製造〉
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた4つ口フラスコに、それぞれ表1記載の組成の単量体を仕込み、30分かけて常温から140℃まで昇温させた後、同温度を維持しながら反応を続け、反応率が98%以上になったところで反応を終了した。反応終了後、減圧下において、反応生成物から溶媒を除去し、トリオールと酸無水物のハーフエステル体であるトリカルボン酸ハーフエステル体βを得た。
【0067】
〈重合例1〜4;分岐状ポリヘミアセタールエステル縮合体(A)の製造〉
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた4つ口フラスコに、それぞれ表2記載の組成の単量体を仕込み、30分かけて常温から90℃まで上昇させた後、同温度で8時間反応させた。この後、ヘキサン/アセトン=8/2の混合溶剤により、ポリマー分の再沈精製を行った。さらに、ロータリーエバポレーターを用い、混合液から溶剤を留去し、その後、真空ポンプにより真空乾燥することにより、表2記載の特性を有する樹脂A−1〜4およびA’−1を得た。
【0068】
【表2】

【0069】
また、重合例2で得られた分岐状ポリへミアセタールエステル縮合体(A)について赤外線吸収スペクトル測定を行ったところ、イソフタル酸と1,3,5−ベンゼントリカルボン酸のカルボキシル基に由来する2500〜3500cm−1付近のブロードな吸収が消失していた。また、エステル基に由来する1730cm−1の吸収が新たに観測された。また、13C−NMRの測定も行い、同樹脂の構造を確認した。得られたスペクトル値を以下に示す。
13C−NMR spectrum(CDCl):δ/ppm
20.4(−COOCH()O−)
25.9、26.0、33.3、33.4(シクロへキサン環)
68.3(−−O−)
89.2(−O−CH=
98.2(−COO−H(CH)O−)
128.3、130.9、134.0(イソフタル酸由来の芳香環)
130.3、135.2(1,3,5−ベンゼントリカルボン酸由来の芳香環)
151.4(−O−H=CH
167.0(C=O)
なお、その他の重合例で得られた分岐状ポリへミアセタールエステル縮合体についてもIRスペクトル、13C−NMRにより構造を確認した。
【0070】
次に用いた分析方法、評価方法を示す。
1.<重量平均分子量(Mw)の測定>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)より、ポリスチレン換算にて求めた。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定条件は次のとおり
機種;東ソー(株)製、ゲル浸透クロマトグラフィーSC−8010、
カラム;昭和電工(株)製SHODEX K−801、
溶離液;THF液、
検出器;RI、
2.<IRの測定条件>
機種;日本分光(株)製、FT/IR−600、
セル;臭化カリウムを用いた錠剤法、
分解;4cm-1
積算回数;16回。
3.<13C−NMRの測定条件>
機種;日本ブルカー(株)製、400MHzのAdvance400、
積算回数;128、
溶媒;CDCl、TMS基準。
【0071】
4.<樹脂組成の分析方法>
樹脂中のジカルボン酸化合物とトリカルボン酸化合物の割合は、重合例で調製されたポリへミアセタールエステル縮合体のへミアセタールエステル結合部分を分解し、カルボキシル化合物の構成を調べる、次方法で求めた。
分岐状ポリへミアセタールエステル縮合体0.3gにメタノール7g、イオン交換水3g、THF5gを添加、均一になるように撹拌混合後、50℃のオーブンで2日間熱処理することによりカルボキシル化合物への分解を行った。
液体クロマトグラフィーを用いて、ジカルボン酸化合物とトリカルボン酸化合物を分離定量し、精製物標品により校正し重量換算した。液体クロマトグラフィーの測定条件は以下の通り。
カラム;ジーエルサイエンス(株)製、イナートシルODS−3
溶離液;メタノール/プロピオン酸=4/1の混合液
結果を表2にあわせて示す。
【0072】
表2の結果より重合例1〜4で得られた分岐状ポリへミアセタールエステル縮合体は、樹脂中にほぼ配合通りのジカルボン酸化合物とトリカルボン酸化合物が組み込まれていることがわかる。
【0073】
〈実施例1〜8〉
表3に示す各成分を、それぞれの割合で配合し、プラネタリーミキサーにて混練し、さらに、溶融混練を行った。次に、これを300メッシュのフィルターを用いて、50℃でろ過した後、さらに、同温度で30分間減圧脱泡し、これを室温にて冷却することにより目的とする半導体封止用樹脂組成物を得た。得られた半導体封止用樹脂組成物について以下の試験方法・評価方法で評価を行った。
結果を表3に示す。
【0074】
【表3】

【0075】
〈比較例1〜5〉
表4に示す各成分を、それぞれの割合で配合し、プラネタリーミキサーにて混練し、さらに、溶融混練を行った。次に、これを300メッシュのフィルターを用いて、50℃でろ過した後、さらに、同温度で30分間減圧脱泡し、これを室温にて冷却することにより目的とする半導体封止用樹脂組成物を得た。得られた半導体封止用樹脂組成物について以下の試験方法・評価方法で評価を行った。
結果を表4に示す。
【0076】
【表4】

【0077】
表3、表4中の成分および略号は、以下のものを示す。
【0078】
Ep807:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート807(商品名)、エポキシ当量190)
HP4032:ナフタレン型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業(株)製EPICRON HP−4032、エポキシ当量150)
2021P:3,3’−エポキシシクロへキシル−3’,4’−シクロヘキサンカルボキシレート(脂環式エポキシ樹脂、ダイセル化学工業(株)製セロキサイド2021P(商品名))
OXBP:4,4’−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル〕ビフェニル(宇部興産(株)製「ETERNACOLL OXBP」(商品名))
PMA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
・ 1) オクチル酸亜鉛とトリエタノールアミンを等モルで反応させた亜鉛錯体の80重量%シクロヘキサノン溶液
・ 2) マイクロカプセル化トリフェニルフォスフィン(シェル/触媒比:50/50重量%)
・ 3) 球状シリカ(平均粒径:0.5μm、最大粒径:1.0μm)
・ 4) アクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重合物
・ 5) 1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン
・ 6) ST80PA(商品名;東レ・ダウ=コーニング・シリコーン(株)製)
・ 7) γ−グリシジロトリメトキシシラン
【0079】
〔試験方法〕
実施例1〜8、比較例1〜5について得られた半導体封止用樹脂組成物に対して、通電試験、はんだぬれ性、リペア性、硬化物の熱サイクル疲労特性について調べた。試験方法は、以下の通りである。
1.〔通電試験の可否〕
アドバンテスト製デジタルマルチメーター(TR6847)にて、リフロー後の半導体装置の電気抵抗値を測定した。作業性の問題で測定できる場合を「可」とし、できない場合を「否」として判定した。
2.〔通電試験〕
アドバンテスト製デジタルマルチメーター(TR6847)にて、室温および125℃で電気抵抗値を測定し、2バンプ当たりの接続抵抗値が20mmΩ以下の時に、合格と判定し、半導体装置10個当たりの不良品の個数を表した。
3.〔はんだぬれ広がり率〕
はんだのぬれ広がり率とは、直径0.76mmのはんだボールを厚膜銅導体上に測定対象である半導体封止用樹脂組成物と共に配置し、大気中でピーク温度220℃(Sn63/Pb37のはんだボールを使用した場合)、あるいは大気中でピーク温度237℃(Sn/3.0Ag/0.5Cuのはんだボールを使用した場合)でリフローさせ、その結果広がったはんだボールの直径の平均Zを基にしてパーセンテージとした。なお、はんだボールの広がりは均一とは限らないので、広がり具合の平均値Z(Z=(X+Y)/2)を算出して、広がり率((Z−0.76)/0.76×100)にて定義した。
【0080】
4.〔リペア性(1)〕
試験片は、以下の方法により作成した。すなわち、25mm×25mmの銅板を#120の紙やすりで研磨、アセトン脱脂した後、半導体封止用樹脂組成物を塗布して銅板同士を貼り合わせた。その後、貼り合わせた銅板を、プレヒート条件:160℃×100秒、ピーク温度:237℃で大気リフローさせ、室温まで冷却させたものを試験片とした。
試験片を150℃のホットプレート上にて1分間静置し、接着剤層が再溶融し、銅板が剥離できるかどうかを確認した。評価は以下の基準に従い行った。
◎ : 再溶融し、容易に剥がせる。
○ : ゲル状になり、弱い力で剥がせる。
△ : 相当強い力でしか剥がせない。
× : 剥がせない。
5.〔リペア性(2)〕
試験片は、以下の方法により作成した。すなわち、半導体封止用樹脂組成物を注入した、BGA搭載基板を、プレヒート条件:160℃×100秒、ピーク温度:237℃で大気リフローさせ、その後、室温まで冷却させたものを試験片とした。
試験片を230℃のホットプレート上にて1分間静置し、BGA部品が剥離できるかどうかを確認した。評価は以下の基準に従って行った。
◎ : 容易に剥がせる。
○ : 樹脂がゲル状になり、弱い力で剥がせる。
△ : 樹脂の硬化がある程度進行しており、相当強い力でしか剥がせない。
× : 樹脂が完全に硬化し、剥がせない。
6.〔熱疲労特性〕
半導体封止用樹脂組成物を注入した、BGA搭載基板を、プレヒート条件:160℃×100秒、ピーク温度:237℃で大気リフローさせ、その後、150℃のオーブン中で1時間、加熱・硬化させたものを試験片とした。
試験片を、−50℃×60分/125℃×60分の熱サイクルに1000回施した時の硬化物中に発生するクラックを、BGA搭載基板10個当たりの不良数で表した。
【0081】
表3、表4より、実施例1〜8の半導体封止用樹脂組成物は、バンプ電極と基板電極などの金属表面酸化皮膜に対して、優れたフラックス効果を発揮し、リフロー後の部品のリペアが可能であった。さらに、本硬化させた樹脂硬化物は、熱的歪応力によるクラックの発生が確認されず、高い信頼性を有していることが確認できた。一方、本発明に用いる(A)成分とは構造の異なるポリへミアセタールエステル縮合体を用いた比較例1、2では、バンプ電極と基板電極などの金属表面酸化皮膜に対して、優れたフラックス効果を発揮し、リフロー後の部品のリペアが可能であったものの、導通試験ができず、また、硬化物の機械特性に問題があり、熱サイクル試験後に硬化物にクラックが発生した。本発明に用いる(B)成分に替えて酸無水物を使用した比較例3では、リフロー中に樹脂の硬化が完結し、部品のリペアが困難となった。さらに、金属表面酸化皮膜に対するフラックス効果が弱く、ぬれ広がりが低下した。その結果、導通試験後の不良数が多くなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)、(B)をそれぞれ、(A)35〜75重量%、(B)25〜65重量%含有する半導体封止用樹脂組成物。
(A)芳香族ジカルボン酸化合物(a1)と芳香族トリカルボン酸化合物(a2)をa1:a2が70:30〜95:5の割合で混合した混合物に対して、ジビニルエーテル化合物を付加反応させて得られる重量平均分子量1,500〜100,000の芳香族分岐状ポリへミアセタールエステル縮合体
(B)エポキシ樹脂(b1)またはオキセタン樹脂(b2)
【請求項2】
前記(B)成分が、エポキシ樹脂(b1)とオキセタン樹脂(b2)をb1:b2が50:50〜90:10の割合で混合した混合物である請求項1に記載の半導体封止用樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−246553(P2007−246553A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−67809(P2006−67809)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【出願人】(000004341)日本油脂株式会社 (896)
【Fターム(参考)】