説明

半導体搬送装置

【課題】半導体搬送装置が外部ユニットにアクセスするときに発生する恐れのある気流の乱れ、それによるウェーハへの異物の付着を抑制する。
【解決手段】ファンフィルタユニット4からのダウンフローによって、半導体搬送装置2内の風量は矢印24のようになる。半導体製造装置1のチャンバー内の状態によって、シャッター22を開けたときに気流が乱れ、矢印25,26,27の気流が生じ、その影響でウェーハカセット5内のウェーハ6を汚染するおそれがある。そこでロボットアーム29の上面及び下面に風量測定器23を設け、気流の乱れ25,26を検出して、シャッター21を閉じることで、ウェーハ6に異物が付着することを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハ搬送を行う半導体搬送装置に係り、特にウェーハカセットと半導体製造検査装置との間でウェーハの搬送を行う半導体搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置又は半導体検査装置(以下、総称して半導体製造検査装置と略記するが、本発明はその一方の装置のみをも含む概念として使用する)へウェーハを供給、排出する半導体搬送装置は、ウェーハカセットからウェーハを取出して半導体製造検査装置に供給し、半導体製造検査装置で処理・検査されたウェーハを取出してウェーハカセットに収納する。
【0003】
このような半導体搬送装置では、搬送途中のウェーハに異物が付着しないように、搬送エリアを高クリーン化することが求められている。そこで、搬送エリア全体のクリーン度を保つため、ファンフィルタユニットからのダウンフローや、気流シミュレーションによる内部構造設計の最適化などを行って、ウェーハへの異物の付着を低減させている。
【0004】
特にファンフィルタユニットからのダウンフローが異物の付着防止に有効であることから、装置据付やメンテナンス時には装置を止め、人が風量計測器を使用し、ファンフィルタユニットのダウンフローに対して、搬送エリア内の特定位置の風量を測定して環境状態を確認している。
しかし、上記確認方法では半導体搬送装置単体で、かつ装置を停止して行っているため、実際の稼動状況と異なる環境での測定とならざるを得なかった。
【0005】
特許文献1および2に開示された先行技術のように、半導体搬送装置のロボットに風量測定器を設置し、ファンフィルタユニットを作動させてダウンフローを監視し、ファンフィルタユニットの自動風量調整や、半導体搬送装置床面及び側面の開口部自動調整による差圧調整を行う技術があるが、あくまで半導体搬送装置単体によるクリーン環境管理であり、半導体搬送装置にアクセスするウェーハカセットや半導体製造検査装置による影響までは考慮されていなかった。
【0006】
また、特許文献3にはウェーハカセットのカバー開閉動作時に異物がウェーハに付着することを防ぐ技術が開示されているが、これも装置単体での動作に着目したものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-171937号公報
【特許文献2】特開2009-016743号公報
【特許文献3】特開2009-212282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、半導体搬送装置をウェーハカセットと半導体製造検査装置との間に設置し、半導体製造ラインとして稼働する場合には、一般的にウェーハ処理時間向上のためウェーハカセットのシャッターが開口した状態で、半導体製造検査装置のウェーハ受け渡し口のシャッターを開口する。半導体製造検査装置側のチャンバー内の状態にもよるが、ウェーハ受け渡し口のシャッターが開口したとき、搬送装置内の気流に乱れが生じ、その影響でウェーハカセット内にあるウェーハに異物が付着する恐れがあることが解った。ウェーハカセット内には製造検査前或いは後のウェーハが多数収納されていることから、その影響は大きく、特に製造検査後のウェーハに異物が付着する事態は徹底して防止しなければならない。
【0009】
本発明はウェーハカセットと半導体製造検査装置との間に設置される半導体搬送装置において、その目的とするところは、半導体製造検査装置にアクセスするときに発生するおそれのある搬送装置内の気流の乱れ、それによるウェーハへの異物の付着を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するための本発明の特徴は、ウェーハカセットと半導体製造検査装置との間で夫々シャッターを介してウェーハを搬送する半導体搬送装置において、前記シャッターの開閉によって影響される搬送装置内の風量を測定する風量測定器と、前記風量測定器で測定した風量に応じて前記シャッターを開閉する制御手段とを設けることにより、気流の乱れ或いは気流の乱れによる異物の付着をシャッターの開閉により抑制したところにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、半導体搬送装置が半導体製造検査装置にアクセスするときに発生するおそれのある気流の乱れ、それによるウェーハへの異物の付着を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を適用する半導体設備の一概観図。
【図2】本発明の一実施例に係る半導体搬送装置部の側断面図。
【図3】本発明の一実施例に係るシャッター開閉制御手段の機能ブロック図
【図4】本発明の一実施例に係るシャッター開閉制御のフロー図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態を、図面する一実施例を用いて詳細に説明する。尚、以下述べる一実施例では、半導体製造検査装置の一つとして、エッチャー或いは露光装置等の半導体製造装置を例に挙げて説明するが、CD−SEM或いは異物検査装置等の検査装置であっても同様に適用できる。
【0014】
また、前記風量測定器で測定した風量に応じてシャッターを開閉する制御手段として、ウェーハカセット側のシャッターを制御する例を述べるが、半導体製造装置側のシャッターを制御して気流の乱れ自体を防止して異物の付着を防止することもできる。また、以下述べる実施例では、前記特徴に加えて風量測定器の設置場所等についても工夫しているが、それらの特徴にいては実施例の中で詳述する。
【0015】
図1に本発明を適用する半導体設備の一実施例を示す。図において、半導体搬送装置2は、半導体製造装置1でウェーハ6へ一定の処理を行うために、ウェーハカセット5に収納されているウェーハ6を内蔵された搬送ロボット8を作動して半導体製造装置(1)へと搬入する。半導体製造装置1での処理が終了すると、搬送ロボット8によりウェーハ6を回収し、ウェーハカセット5へ戻し入れする。
【0016】
半導体搬送装置2の構成は、図2の側断面図にも示すように、半導体製造装置1とウェーハカセット5との間でウェーハ6を受け渡すため、側壁2a,2bに囲まれた搬送エリア内を高クリーン化するファンフィルタユニット4,ウェーハを受け渡す搬送ロボット8,ウェーハカセット5のシャッター21を開閉するロードポート部7、及びこれらを制御するコントローラ3を備えている。半導体製造装置1側の側壁2bにはシャッター22が有り、通常は半導体製造装置1側のコントローラで開閉制御されているが、本発明のシャッター制御の為にこのシャッター22の開閉指令を前記コントローラ3で連係させることもできる。
【0017】
次に、本実施例の特徴をなす風量測定器23、及びその働きについて図2を参照して説明する。ファンフィルタユニット4からのダウンフローによって、半導体搬送装置2内の風量は実線の矢印24のようになっている。また、ウェーハカセット5や半導体製造装置24へアクセスし、シャッター21、22が開いた場合においても、正常であれば実線の矢印24となっている。
【0018】
しかし、半導体製造装置1のチャンバー内の状態によって、シャッター22を開けたときに気流が乱れ、点線の矢印25,26の気流が生じ、その影響でウェーハカセット5内の気流が乱れて点線の矢印27となることがある。このような気流の乱れ25〜27は想定されたものではないことから、粉塵等の異物を巻き込み、ウェーハカセット5内のウェーハカ6等に付着するおそれがある。
【0019】
そこで本実施例では、搬送ロボット8のロボットアーム29の上面及び下面に風量測定器23を設け、この気流の乱れ25,26を測定するようにしている。このようにロボットアーム29に設けることで、気流の乱れの大きいシャッター22(又は21)付近の気流を敏感に測定できるようにし、その上面及び下面に設置することで、通常は生じない異常な気流25を高感度に検出可能としている。
【0020】
図3にコントローラ33で構成されるシャッター開閉制御手段の機能ブロック図を示す。図に示すように、 風量測定器23からのデータを取込み、データ比較するIOブロック31、 風量測定器23を搭載した搬送ロボット8の動作制御を行うモータ制御機能ブロック32、 ロードポート7のシャッター開閉制御や、半導体製造装置1へシャッター開閉要求を出力する通信ポートブロック34、 IOブロック31からの警報情報を保管するメモリブロック35、 これらを機能ブロックを統括制御するCPU(制御)ブロック33からなっている。
【0021】
本実施例では、風量測定器23からの測定データをIOブロック31でA/D変換、データ比較して気流の乱れを判断している。図2に例示したように、点線の矢印25,26
の風量は正常ではあり得ないことから、ここでは風量測定器23からの風量データが所定値を超えたことをデータ比較で判定し、所定値を超えたときに異常と判断してその警報履歴をメモリ35へ記憶する。
【0022】
しかしながら、搬送装置内の気流の乱れをより精度よく測定する必要がある場合は、風量測定器2の設置数を多くし、各風量測定器の風量データ分布等を分析して異常警報を発生するように応用することも可能である。
【0023】
このようにして気流の乱れを測定して、シャッターの開閉制御を行うCPU33の処理フローを図4に示す。図において、先ず前記メモリ35内の警報履歴の有無を判断し(ステップ41)、 警報履歴が有のときはシャッター21の閉指令を発生する(ステップ42)。
【0024】
前記警報履歴がないとき、およびステップ42を実行した後、半導体製造装置1側のシャッター22の開指令を発生する(ステップ43)。
【0025】
次に、 ロボットアーム29に設置してある風量測定器23の風量データを監視しつつ(ステップ44)、ウェーハ6の搬送動作を行う。このようにして搬送動作を行っている間 も、風量測定器23からの風量データが規定値以上か否かを判断し(ステップ45)、 規定値以上となれば、シャッター21の閉指令を発生し(ステップ46)、上位装置へ警報を出力するとともに、メモリ35に警報履歴を書き込み(ステップ47)、気流の乱れが収まるまで監視を続ける(ステップ44)。
【0026】
ステップ45で風量が規定値以下であれば、警報履歴を解消して(ステップ48)終了し、次の動作シーケンスへ移行する。
【0027】
これにより、本実施例では、気流の乱れが生じると直ちにウェーハカセット5側のシャッター21を閉じることで、ウェーハカセット5内に収納された多数のウェーハ6が汚染されることを防止している。本発明はこれに限るのもでないことは勿論であり、ステップ46では、半導体製造装置1側にシャッター22の閉指令を出すように要求することで、気流の乱れ自体の発生を防ぐようにすることもできる。
【符号の説明】
【0028】
1・・・半導体製造装置
2・・・半導体搬送装置
3・・・コントローラ
4・・・ファンフィルタユニット
5・・・ウェーハカセット
6・・・ウェーハ
7・・・ロードポート
8・・・搬送ロボット
21、22・・・シャッター
23・・・風量測定器
24・・・ファンフィルタユニットからの気流
25,26,27・・・気流の乱れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハを供給及び収納するウェーハカセットとの間、及びウェーハを加工又は検査する半導体製造検査装置との間に夫々シャッターを介して配置され、前記シャッターを開閉して前記ウェーハカセット及び前記半導体製造検査装置との間でウェーハを搬送する半導体搬送装置において、前記シャッターの開閉によって影響される搬送装置内の風量を測定する風量測定器と、前記風量測定器で測定した風量に応じて前記シャッターを開閉する制御手段とを備えることを特徴とする半導体搬送装置。
【請求項2】
請求項1において、前記シャッターの開閉を制限する手段は、前記風量測定器で測定した風量の乱れに応じて少なくとも前記ウェーハカセット側のシャッターを閉じることを特徴とする半導体搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記両シャッター間でウェーハを搬送する搬送ロボットを内蔵し、この搬送ロボットのロボットアームの上面及び下面に前記風量測定器を設置したことを特徴とする半導体搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−243759(P2011−243759A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114917(P2010−114917)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000233549)株式会社日立ハイテクコントロールシステムズ (130)
【Fターム(参考)】