説明

半導体用洗浄剤

【課題】 金属配線を腐食することなく、化学的機械研磨工程で発生した結晶シリコンやアモルファスシリコンシリコン表面に残留した金属残渣や砥粒残渣を除去することができる洗浄剤を提供することを目的とする
【解決手段】 表面に単結晶シリコン、多結晶シリコンもしくはアモルファスシリコンと銅配線を同一面に有する半導体用洗浄剤であって、4級アンモニウムヒドロキシド(A)、オキシエチレン鎖を有する脂肪族アミンのアルキレンオキサイド付加物(B)および水を必須成分として含み、そのpHが12.5〜14.0であり、かつ単結晶シリコンの表面に滴下したときの接触角が30°以下であることを特徴とする銅配線半導体用洗浄剤を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのベアシリコンと銅配線を同一面に有する半導体に用いられる洗浄剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子デバイスは性能向上のため素子の微細化、高密度化が進んでいるが、半導体デバイスでは微細化技術が限界に近づきつつあり、さらなる高密度化の技術としてシリコン貫通電極(以下、TSVと略称することがある。)という実装パッケージ技術がある。
TSVは銅やタングステンなどの金属配線を貫通させたシリコン薄膜を重ね合わせてデバイスを作成する技術(図1)であり、従来技術であるワイヤチップを金属製のワイヤでつなげてデバイスを作成するワイヤボンディング法(図2)と比べて小型化、高周波動作、省力化できる可能性がある(非特許文献1)。
【0003】
TSVを用いた薄型チップは、単結晶シリコンウエハに貫通した穴を作成し、穴中に金属配線を埋め込んだあと、ウエハを化学機械研磨(以下、CMPを略称することがある。)で研磨、薄膜化して作成される。金属配線としては銅やタングステンが使用されることが多い。
【0004】
しかし、CMP後のウエハには金属研磨くずやCMPで用いる砥粒が薄膜上に残っており、残留物が残ったまま半導体デバイスを作成すると配線の短絡や電気抵抗が上がる原因となるためウエハを洗浄し、表面を清浄化する必要がある。
【0005】
CMP後の残渣洗浄に用いる洗浄方法としては、シリコンや金属残渣をオゾンで参加した後にフッ化水素酸で洗浄する方法や、酸性洗浄剤で洗浄する方法(特許文献1)、酸化性の洗浄液で処理した後に超音波振動を付与しつつ還元性の洗浄液で洗浄する方法(特許文献2)が知られている。
【0006】
しかし、オゾンで酸化した後にフッ化水素酸で洗浄する方法では金属配線を腐食する問題がある。また、特許文献1や特許文献2では金属配線は腐食しないが単結晶シリコン表面への濡れ性が悪いためにシリコン上の金属残渣の除去が不充分な場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−307725号公報
【特許文献2】特開2003−289060号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「三次元実装のためのTSV技術」(傳田精一著、2009年、工業調査会発行)の12〜16頁、29〜34頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は金属配線を腐食することなく、化学的機械研磨工程で発生した結晶シリコンやアモルファスシリコンシリコン表面に残留した金属残渣や砥粒残渣を除去することができる洗浄剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、表面に単結晶シリコン、多結晶シリコンもしくはアモルファスシリコンと銅配線を同一面に有する半導体用洗浄剤であって、4級アンモニウムヒドロキシド(A)、オキシエチレン鎖を有する脂肪族アミンのアルキレンオキサイド付加物(B)および水を必須成分として含み、そのpHが12.5〜14.0であり、かつ単結晶シリコンの表面に滴下したときの接触角が30°以下であることを特徴とする銅配線半導体用洗浄剤である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の半導体用洗浄剤は、表面に結晶シリコンもしくはアモルファスシリコンと銅配線を同時に有する電子基板において、金属配線を腐食させることなく結晶シリコンやアモルファスシリコン上の金属残渣を除去できる。
また、本発明の半導体基板又は半導体素子の製造方法によると、接触抵抗に優れ、かつ配線の短絡がない半導体基板又は半導体素子が容易に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1はシリコン貫通電極を用いたデバイスの接続原理図である。
【図2】図2はワイヤボンディング法を用いたデバイスの接続原理図である。
【図3】図3は表面に単結晶シリコン、多結晶シリコンもしくはアモルファスシリコンと銅配線を同一面に有する半導体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の銅配線半導体用洗浄剤は、表面に単結晶シリコン、多結晶シリコンまたはアモルファスシリコンと銅配線を同時に有する半導体用洗浄剤であり、4級アンモニウムヒドロキシド(A)、オキシエチレン鎖を有する脂肪族アミンのアルキレンオキサイド付加物(B)および水を必須成分として含み、そのpHが12.5〜14.0である。
さらに、単結晶シリコン表面に洗浄剤を滴下したときの接触角が30°以下であることを必要要件とする。
【0014】
本発明において、第1の必須成分である4級アンモニウムヒドロキシド(A)は、たとえば下記一般式(2)で表されるものが挙げられる。
【0015】
【化1】

【0016】
[式(2)中のR〜Rはそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基またはヒドロキシアルキル基を表す。]
【0017】
具体例としては、炭素数1〜4のアルキル基またはヒドロキシアルキル基を有するテトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキル−ヒドロキシアルキルアンモニウム塩、ジアルキル−ビス(ヒドロキシアルキル)アンモニウム塩及びトリス(ヒドロキシアルキル)アルキルアンモニウム塩などが挙げられる。

【0018】
これらの第4級アンモニウムヒドロキシド(A)のうち、銅残渣除去性の観点から、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド(A1)、(ヒドロキシアルキル)トリアルキルアンモニウムヒドロキシド(A2)、ビス(ヒドロキシアルキル)ジアルキルアンモニウムヒドロキシド(A3)及びトリス(ヒドロキシアルキル)アルキルアンモニウムヒドロキシド(A4)が好ましい。
【0019】
また、銅配線耐腐食性の観点から、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド(A1)及び(ヒドロキシアルキル)トリアルキルアンモニウムヒドロキシド(A2)が好ましい。
より好ましくは、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、(ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド(コリン)が好ましく、特に好ましくは、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドである。
【0020】
本発明の洗浄剤は、そのまま、あるいは使用時にさらに水で希釈して使用されるが、使用時の洗浄剤中の4級アンモニウムヒドロキシド(A)の含有量は、通常0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜5.0重量%、さらに好ましくは0.5〜3.0重量%である。
0.05重量%未満であると銅残渣除去性が不充分であり、10.0重量%を超えても経済的にメリットがない。
【0021】
本発明において、第2の必須成分であるオキシエチレン鎖を有する脂肪族アミンのアルキレンオキサイド付加物(B)としては、脂肪族アミンにアルキレンオキサイドの付加物であって、少なくともアルキレンオキサイドとして全部または一部にエチレンオキサイドを用いた付加物である。
このようなアルキレンオキサイド付加物(B)としては、たとえば下記一般式(1)で表されるものが挙げられる。
【0022】
【化2】

【0023】
[式(1)中Rは炭素数8〜18の直鎖もしくは分岐のアルキル基またはアルケニル基を表す。m1、m2はそれぞれ独立してエチレンオキサイドの平均付加モル数を表し、1〜20の数である。n1、n2はそれぞれ独立にプロピレンオキサイドの平均付加モル数を表し、0〜6の数である。エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを併用する場合は付加形式はブロック状でもランダム状でも差しつかえない。]
【0024】
式(1)中Rは炭素数8〜18の直鎖もしくは分岐のアルキル基またはアルケニル基を表す。
これらのRのうち、銅残渣除去性の観点から炭素数8〜15の直鎖アルキル基が好ましく、より好ましくは炭素数8〜12の直鎖アルキル基である。
炭素数が7以下の場合銅残渣除去性が不充分であり、炭素数が19以上の場合単結晶シリコン上に残留して新たな残渣の原因となる。
【0025】
オキシエチレン鎖を有する脂肪族アミンのアルキレンオキサイド付加物(B)の原料である脂肪族アミン(a)としては、飽和又は不飽和の炭素数8〜18の脂肪族炭化水素基を有する1級アミンが挙げられる。
具体的にはオクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、ステアリルアミン等の飽和脂肪族アミン;オレイルアミン等の不飽和脂肪族アミンが挙げられ、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。また、牛脂等の動物油や、ヤシ油、パーム油等の植物油等から誘導された脂肪族アミンも用いることができる。
【0026】
これらの1級アミンのうち、結晶シリコンもしくはアモルファスシリコン上への残留の観点からオクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヤシ油誘導脂肪族アミンが好ましい。
【0027】
また、銅残渣除去性の観点からオクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、ヤシ油誘導脂肪族アミンが好ましい。
より好ましくは、ドデシルアミン、ヤシ油誘導脂肪族アミン。特に好ましくは、ヤシ油誘導脂肪族アミンである。
【0028】
m1、m2はそれぞれ独立してエチレンオキサイドの平均付加モル数を表し、1〜20の数である。n1、n2はそれぞれ独立にプロピレンオキサイドの平均付加モル数を表し、0〜6の数である。
m1、m2は、脂肪族アミンのアルキレンオキサイド付加物(B)の水への溶解性の観点から3〜20が好ましい。また、銅残渣除去性の観点から3〜14が好ましく、さらに好ましくは3〜10である。
m1、m2が1以下の場合水に溶解せず、20以上の場合は銅残渣除去性が不充分である。
n1、n2は脂肪族アミンのアルキレンオキサイド付加物(B)の水への溶解性の観点から0〜4が好ましい。また、銅配線耐腐食性の観点から0〜2が好ましい。
【0029】
また、水への溶解性の観点から脂肪族アミンのアルキレンオキサイド付加物(B)のオキシアルキレン鎖中に含まれるオキシエチレン鎖の含有量が70〜100モル%であることが好ましい
銅残渣除去性の観点からオキシアルキレン鎖中に含まれるオキシエチレン鎖の含有量は80〜100モル%が好ましく、より好ましくは85〜100モル%、特に好ましくは90〜100モル%である。
オキシアルキレン鎖中に含まれるオキシエチレン鎖の含有量が70モル%未満であると水への溶解性が不充分である。
【0030】
エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを併用する場合は付加形式はブロック状でもランダム状でも差しつかえない。
【0031】
本発明の洗浄剤は、そのまま、あるいは使用時にさらに水で希釈して使用されるが、使用時の洗浄剤中の脂肪族アミンのアルキレンオキサイド付加物(B)の含有量は、通常0.001〜1重量%、好ましくは0.005〜0.5重量%、さらに好ましくは0.01〜0.2重量%である。
0.001重量%未満であると接触角が30°以下にならないため銅残渣除去性が不充分であり、1.0重量%を超えても経済的にメリットがない。
【0032】
本発明の洗浄剤は、必須成分の第4級アンモニウムヒドロキシド(A)、脂肪族アミンのアルキレンオキサイド付加物(B)、水以外に、銅残渣除去性を向上の目的で、脂肪族アミン(C)をさらに含有することが好ましい。
【0033】
脂肪族アミンとしては銅残渣除去性の観点から脂肪族モノアミン(C1)、アルカノールアミン(C2)、アミノ基を2個以上有する脂肪族ポリアミン(C3)が好ましい。
【0034】
脂肪族モノアミン(C1)としてはメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ヘキシルアミン等のモノアルキルアミン;ジメチルアミン、エチルメチルアミン、プロピルメチルアミン、ブチルメチルアミン、ジエチルアミン、プロピルエチルアミン、ジイソプロピルアミン等のジアルキルアミン;トリメチルアミン、エチルジメチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリn−ブチルアミン等のトリアルキルアミン等が挙げられる。
【0035】
アルカノールアミン(C2)としてはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−(アミノエチル)エタノールアミン、N,N−ジメチル−2−アミノエタノール、2−(2−アミノエチルアミノエタノール)等が挙げられる。
【0036】
アミノ基を2個以上有する脂肪族ポリアミン(C3)としてはエチレンジアミン、1,2‐プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ジアミノヘキサン、1,2−ビス(2-アミノエトキシ)エタン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、ペンタエチレンヘキサミン等が挙げられる。
【0037】
本発明の洗浄剤は、そのまま、あるいは使用時にさらに水で希釈して使用されるが、使用時の洗浄剤中の脂肪族アミン(C)の含有量は、通常0.01〜5.0重量%、好ましくは0.05〜2.0重量%、さらに好ましくは0.1〜1.0重量%である。
0.01重量%未満であると銅残渣除去性に対して効果がみられず、5.0重量%を超えると銅配線耐腐食性が低下する。
【0038】
本発明の洗浄剤に用いられる水としては、半導体への再汚染(水中の金属イオンや有機物の再付着)防止の観点から電気伝導率(μS/cm:25℃)が0.067μS/cm以下の超純水、好ましくは0.057μS/cm以下のものが好ましい。
なお、電気伝導率は、JIS K0400−13−10:1999に準拠して測定される。
【0039】
本発明の洗浄剤のpHは、通常12.5〜14.0、好ましくは13.0〜14.0である。
pHが12.5未満では金属残渣除去性が不充分である。
【0040】
本発明の洗浄剤の接触角は、通常30°以下、好ましくは25°以下、さらに好ましくは20°以下である。
接触角が30°より高い場合単結晶シリコンへの濡れ性が不充分であるため、金属残渣除去性が不充分となる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0042】
実施例1〜7、および比較例1〜6
ポリエチレン製容器内で表1に記載の配合を行い、本発明の銅配線半導体用洗浄剤および比較のための洗浄剤を得た。
【0043】
【表1】

【0044】
実施例1〜7および比較例1〜6の洗浄剤のpHと接触角を測定し、銅残渣除去性と銅表面粗さの性能評価を行った。
【0045】
<接触角の測定>
単結晶シリコンの表面に、洗浄剤を滴下したときの接触角は以下に示す手順で測定した。
(1)単結晶シリコンウエハの前処理
8インチ単結晶シリコンウエハ(アドバンテック社製、導電型P、結晶方位100、厚み72±25μm)を、縦2.0cm×横2.0cmの切片に切断し、イソプロピルアルコールに1分間浸漬し表面の有機物を除去した後、さらに0.5%フッ化水素酸水溶液に3分間浸漬して表面のシリコン酸化物を除去した。純水を10秒間流して表面のフッ化水素酸水溶液を洗い流した後、窒素気流で素早く乾燥させた。
(2)接触角の測定
単結晶シリコンウエハ表面は酸化されやすいので、前処理を行なった後1分間以内に単結晶シリコンウエハ上に、洗浄剤0.2μlを滴下して、25℃での接触角を測定した。接触角計は協和界面科学製「C XDROP MASTER DH−350」を用いた。
【0046】
<銅残渣除去性>
シリコン上の銅残渣除去性は銅残渣の残留量を、以下に示す手順により測定した。
(1)単結晶シリコンウェハの前処理
接触角の測定手順で行ったのと同じ操作で8インチベアシリコンウェハの前処理を行った。
【0047】
(2)銅汚染液の調製
銅粉(1級銅粉325メッシュ、キシダ化学製)1部、ポリエチレングリコール(分子量1000、和光純薬製)10部に超純水89部を加え銅汚染液を調製した。
【0048】
(3)銅汚染液による単結晶シリコンウェハの汚染処理
前処理した単結晶シリコンウエハを、上記の銅汚染液に1分間浸漬した後、窒素気流で乾燥させることにより、ウエハの表面に均一に銅粉を付着させた。
【0049】
(4)汚染後の単結晶シリコンウェハの洗浄
汚染処理した単結晶シリコンウェハの切片を、洗浄剤100gに浸漬した。25℃で3分間静置した後に洗浄剤から取り出し、超純水で洗浄した後、窒素気流 でウエハ表面を乾燥させた。
【0050】
(5)銅残渣残留量の測定と判定
ベアシリコン上に残留した銅の量を全反射蛍光X線分析装置(TXRF)装置(「TREX−630III、テクノス社製)を用いて測定することによって、ベアシリコンウエハ上に渣量した銅残留量を測定した。
具体的には、TXRFを用いて、電圧40kV、電流40mAで測定を行い、銅のKα線に由来する8.04KeVにおけるピーク面積値を求めた。ターゲットはタングステンを使用した。
TXRF測定で得られた銅残渣残留量の結果から、以下の判定基準でシリコン上の銅残渣除去性を判定した。
【0051】
◎ :1.0×1010atoms/cm2未満
○ :1.0×1010〜1.0×1011atoms/cm2
△ :1.0×1011〜1.0×1012atoms/cm2
× :1.0×1012atoms/cm2以上
【0052】
<銅表面粗さ>
洗浄後の銅表面粗さは、以下に示す手順により行った。
(1)銅メッキされたシリコンウエハの前処理
単結晶シリコンウエハに銅メッキが施されたウエハ(アドバンスマテリアルテクノロジー社製、「Cuメッキ10000A Wafer」、銅メッキの膜厚=1.0μm)を研磨した後、縦1.5cm×横1.5cmに切断し、10%酢酸水溶液中に1分間浸漬した後、超純水で洗い流した後、窒素気流で素早く乾燥させた。
【0053】
(2)銅メッキシリコンウェハの洗浄
銅メッキされたシリコンウェハの切片を、半導体用洗浄剤100gに浸漬した。25℃で1分間静置した後洗浄剤から取り出し、超純水で洗浄した後、窒素気流でウェハ表面を乾燥させた。
【0054】
(3)銅表面粗さの測定と判定
前処理後の銅メッキされたシリコンウエハと、前処理洗浄後の銅メッキされたシリコンウエハのそれぞれを原子間力顕微鏡(AFM)(SIIナノテクノロジー社製;「E−Sweep」)を用いて、それぞれのウエハ表面の二乗平均粗さ(RSM)値を測定した。
【0055】
AFM測定で得られた二乗平均粗さ(RSM)値の測定結果から、以下の数式で銅表面粗さ増加率を算出し、下記の判定基準で銅表面粗さを評価した。
銅表面粗さ増加率 = RSM/RSM
但し、RSMは洗浄後ウエハの二乗平均粗さ(nm)、RSMは洗浄前のウエハの二乗平均粗さ(nm)を表す。
【0056】
◎:3未満
○:3〜5
△:5〜10
×:10以上
【0057】
本発明の実施例1〜7の洗浄液は、銅残渣除去性、銅表面粗さのいずれも優れた性能を示した。
一方、4級アンモニウムヒドロキシド(A)を用いない比較例1は銅残渣除去性、銅表面粗さが不良であった。また、本発明のアルキレンオキサイド付加物(B)を用いない比較例2は銅残渣除去性が不充分である。
pHが12.5未満の比較例3は銅残渣除去性が不充分である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の半導体用洗浄剤は、銅配線の耐腐食性と単結晶シリコン、多結晶シリコンもしくはアモルファスシリコン上の金属残渣の除去性に優れているため、表面に結晶シリコン、多結晶シリコンもしくはアモルファスシリコンと銅配線を同時に有する半導体製造工程においてCMP工程の後に続く工程において使用される洗浄剤として好適に使用できる。
【符号の説明】
【0059】
図1中、
A:薄型チップ
B:シリコン貫通電極
図2中、
C:ワイヤチップ
D:ワイヤ
E:インターポーター
F:フリップチップ
G:パッケージインターポーター
H:洗浄面
I:金属配線
J:単結晶シリコン、多結晶シリコンもしくはアモルファスシリコン
K:トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に単結晶シリコン、多結晶シリコンもしくはアモルファスシリコンと銅配線を同一面に有する半導体用洗浄剤であって、4級アンモニウムヒドロキシド(A)、オキシエチレン鎖を有する脂肪族アミンのアルキレンオキサイド付加物(B)および水を必須成分として含み、そのpHが12.5〜14.0であり、かつ単結晶シリコンの表面に滴下したときの接触角が30°以下であることを特徴とする銅配線半導体用洗浄剤。
【請求項2】
該アルキレンオキサイド付加物(B)のオキシアルキレン鎖中に含まれるオキシエチレン鎖の含有量が70〜100モル%である請求項1記載の銅配線半導体用洗浄剤。
【請求項3】
該アルキレンオキサイド付加物(B)が下記化学式(1)で表される請求項1または2記載の銅配線半導体用洗浄剤。
【化1】

[式(1)中Rは炭素数8〜18の直鎖もしくは分岐のアルキル基またはアルケニル基を表す。m1、m2はそれぞれ独立してエチレンオキサイドの平均付加モル数を表し、1〜20の数である。n1、n2はそれぞれ独立にプロピレンオキサイドの平均付加モル数を表し、0〜6の数である。エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを併用する場合は付加形式はブロック状でもランダム状でも差しつかえない。]
【請求項4】
さらに、脂肪族アミン(C)を含有する請求項1〜3いずれか記載の銅配線半導体用洗浄剤。
【請求項5】
脂肪族アミン(C)が、脂肪族モノアミン(C1)、アルカノールアミン(C2)、アミノ基を2個以上有する脂肪族ポリアミン(C3)から選ばれる請求項4記載の銅配線半導体用洗浄剤。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−251026(P2012−251026A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122873(P2011−122873)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】